説明

脱塩水を使用して原子炉冷却水サンプルの酸素濃度を調節する方法

【課題】原子力発電所内の原子炉冷却水側流の酸素濃度を調節する方法を提供する。
【解決手段】脱塩水を使用して原子炉冷却水サンプルの酸素濃度を調節する。原子炉冷却水側流202中に脱塩水214を注入して、酸素濃度の上昇した酸化流224を作る。原子炉冷却水側流202より酸素が少なくとも20倍多い、既知の酸素濃度の前記脱塩水214を添加する。原子炉の下流かつ浄化システムまたは再循環システムの上流の位置で、脱塩水214を添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、原子炉冷却水サンプル流に酸素を添加する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある原子炉状況では、原子炉冷却水サンプル流に酸素を添加することが望ましい。従来、そのような状況における酸素の添加は、原子炉冷却水サンプル流中に入る酸素ガスの泡立ちを含み、酸素ガスは、圧縮された源(例えば、ボンベ入り酸素)から供給される。しかし、ボンベ入り酸素の使用により、その比較的高圧な状態が原因で、深刻な安全上の懸念が生じる。
【発明の概要】
【0003】
本発明の例示実施形態が、原子力発電所内の原子炉冷却水側流の酸素濃度を調節する方法に関する。本方法は、原子炉冷却水側流中に脱塩水を注入して、酸素濃度の上昇した酸化流を作り出すステップを含んでいてもよい。
【0004】
脱塩水を注入するステップは、原子炉冷却水側流より酸素が少なくとも20倍多い、既知の酸素濃度の脱塩水を添加することを含んでいてもよい。脱塩水を注入するステップは、原子炉冷却水側流に脱塩水を添加することを含んでいてもよく、原子炉冷却水側流は、100ppb未満の酸素を有する。脱塩水を注入するステップは、原子炉冷却水側流に、少なくとも2000ppbの酸素を有する脱塩水を添加することを含んでいてもよい。
【0005】
脱塩水を注入するステップは、脱塩水の注入後に酸化流の温度が少なくとも400°F(204.4℃)であるように、脱塩水の流量を調節することを含んでいてもよい。脱塩水を注入するステップは、脱塩水の注入後に酸化流中の水素対酸素のモル比が2より大きいように、脱塩水の流量を調節することを含んでいてもよい。
【0006】
脱塩水を注入するステップは、原子炉の下流かつ浄化システムの上流の位置で、脱塩水を添加することを含んでいてもよい。脱塩水を注入するステップは、原子炉の下流かつ再循環システムの上流の位置で、脱塩水を添加することを含んでいてもよい。脱塩水を注入するステップは、触媒軽減監視システム(MMS:mitigation monitoring system)の上流の位置で、脱塩水を添加することを含んでいてもよい。
【0007】
脱塩水を注入するステップは、電気化学的腐食電位(ECP:electrochemical corrosion potential)センサの上流の、管の直径の少なくとも10倍の距離の位置で、原子炉冷却水側流を送る管内に脱塩水を添加することを含んでいてもよい。脱塩水を注入するステップは、原子炉冷却水側流の流量の10%以下の流量で、脱塩水を添加することを含んでいてもよい。
【0008】
脱塩水を注入するステップは、貴金属注入前に、かつ貴金属の触媒効果を判定するために電気化学的腐食電位(ECP)が測定されている間に、脱塩水を添加することを含んでいてもよい。脱塩水を注入するステップは、貴金属注入中に、かつ貴金属の触媒効果を判定するために電気化学的腐食電位(ECP)が測定されている間に、脱塩水を添加することを含んでいてもよい。脱塩水を注入するステップは、貴金属注入後にかつ貴金属の触媒効果を判定するために電気化学的腐食電位(ECP)が測定されている間に、脱塩水を添加することを含んでいてもよい。
【0009】
脱塩水を注入するステップは、液体形態で脱塩水を添加することを含んでいてもよい。脱塩水を注入するステップは、原子力発電所の施設内で生成された脱塩水を添加することを含んでいてもよい。脱塩水を注入するステップは、容積式ポンプを用いて、原子炉冷却水側流中に、脱塩水をポンプで送り込むことを含んでいてもよい。
【0010】
また、本発明の例示実施形態が、原子炉システム内に沈殿する貴金属の触媒効果を判定する方法に関する。本方法は、原子炉冷却水側流中に脱塩水を注入して、酸化流の水素対酸素のモル比が無限大より小さいように、酸素濃度の上昇した酸化流を作り出すステップと、酸化流に関して複数の電気化学的腐食電位(ECP)測定を実施して、原子炉システム内に沈殿している貴金属の触媒効果を判定するステップとを含んでいてもよい。
【0011】
本明細書の非限定的実施形態の種々の特徴および利点は、添付図面と併せて詳細な説明を精査すると、より明らかになる可能性がある。添付図面は、例示目的で提供されているに過ぎず、特許請求の範囲の範囲を限定すると見なされるべきではない。添付図面は、明示的に言及されていない限り、縮尺通りに描かれていると見なされるべきではない。明確にするために、図面の種々の寸法は誇張されている可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の非限定的実施形態による、原子炉冷却水側流の酸素濃度を調節する方法を示す流れ図である。
【図2】本発明の非限定的実施形態による、原子炉冷却水側流の酸素濃度を調節する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ある要素もしくは層が別の要素もしくは層の「上にある」、それに「接続されている」、それに「連結されている」、またはそれを「覆っている」と言及されている場合、該要素もしくは層は、他方の要素もしくは層の直接上にあり、それに直接接続されており、それに直接連結されており、またはそれを直接覆っている可能性があり、あるいは介在要素または介在層が存在している可能性があることを理解すべきである。対照的に、要素が、別の要素もしくは層の「直接上にある」、それに「直接接続されている」、またはそれに「直接連結されている」と言及されている場合、介在要素または介在層は存在しない。本明細書を通じて、同様の番号は同様の要素を指す。本明細書に用いられている用語「および/または」は、関連する列挙された事項の1つまたは複数の任意のかつ全ての組合せを含む。
【0014】
種々の要素、構成要素、領域、層、および/または部分を説明するために、用語「第1の」、「第2の」、「第3の」等が本明細書に用いられている場合があるが、これらの要素、構成要素、領域、層、および/または部分は、これらの用語により限定されるべきではないことを理解すべきである。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、層、または部分を、別の要素、構成要素、領域、層、または部分と区別するために用いられているに過ぎない。したがって、以下に検討されている第1の要素、構成要素、領域、層、または部分が、例示実施形態の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層、または部分と称される可能性があるであろう。
【0015】
図面に示されている、別の要素(複数可)または特徴(複数可)に対する1つの要素または特徴の関係を説明し易くするために、空間関連の用語(例えば、「真下に」、「下方に」、「下部に」、「上方に」、「上部に」等)が本明細書に用いられる可能性がある。空間関連の用語は、図に示されている配置に加えて、使用中または動作中の装置の様々な配置を包含するものであることを理解すべきである。例えば、図中の装置が反転されている場合、他の要素または特徴の「下方に」または「真下に」と記載されている要素は、他方の要素または特徴の「上方に」配置されていることになるであろう。このように、用語「下方に」は、「上方に」かつ「下方に」の配置の両方を包含し得る。装置は、別の方法で配置されている(90度回転してまたは他の配置で)可能性があり、本明細書に用いられている空間関連の記述子は、然るべく解釈され得る。
【0016】
本明細書に用いられている専門用語は、種々の実施形態を説明するためのものに過ぎず、例示実施形態を限定することを目的としていない。本明細書に用いられている単数形「a」、「an」、および「the」は、別途明示されている場合を除き、複数形もまた含むものとする。さらに当然のことながら、用語「含む」(「includes」、「including」、「comprises」、および/または「comprising」)は、本明細書に用いられている場合、提示された特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を明細に記述するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素および/またはそれらの群の存在または追加を排除しない。
【0017】
例示実施形態の理想的実施形態(および中間構造)の概略図である横断面図を参照して、例示実施形態が本明細書に記載されている。したがって、例えば製造技法および/または公差の結果として、図の形状からの変形形態が予期されることになる。したがって、例示実施形態は、本明細書に示されている領域の形状に限定されると見なされるべきではなく、例えば製造に起因する形状の逸脱を含むことになる。例えば、矩形として示されている注入領域が、通常、丸いもしくは曲線状の特徴、および/または注入領域から非注入領域までの2値の変化ではなくその縁部に注入濃度の勾配を有する。同様に、注入により形成される埋込み領域が、埋込み領域と注入がそれを通して起こる表面との間の領域内にいくらかの注入をもたらす可能性がある。したがって、図に示されている領域は本来概略的であり、それらの形状は、装置の領域の実際の形状を示すことを目的としておらず、例示実施形態の範囲を制限することも目的としていない。
【0018】
別途定義されていない限り、本明細書に用いられている(技術用語および科学用語を含む)全ての用語は、例示実施形態が属する技術分野の当業者により一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。さらに当然のことながら、一般的に使用されている辞書に定義されているものを含めて、用語は、関連する技術の場合におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書において明示的にそのように定義されていない限り、理想的な意味にまたは過度に正式な意味に解釈されないものとする。
【0019】
本発明の例示実施形態は、原子炉冷却水サンプルへの酸素の添加に関する。詳細には、例示実施形態による方法は、脱塩水を利用して、原子炉冷却水側流の酸素濃度を調節し、原子炉冷却水側流は原子炉冷却水サンプル流であってもよい。脱塩水は脱イオン(DI:deionized)水としても当業者に既知であることを理解すべきである。脱塩水または脱イオン水は、その無機イオン(ナトリウム、カルシウム、鉄、銅からのカチオンならびに塩化物および臭化物などのアニオンなど)が除去された水である。水は、無機塩に結合しかつ水から無機塩を濾過して除去するイオン交換樹脂を使用して、脱塩されるかまたは脱イオンされる。本明細書において使用されている通り、脱塩水は脱イオン水を意味し、逆もまた同様であることを理解すべきである。
【0020】
図1は、本発明の非限定的実施形態による、原子炉冷却水側流の酸素濃度を調節する方法を示す流れ図である。図1のステップS100を参照すると、原子炉冷却水側流中に脱塩水が注入されて、酸化流を作り出してもよい。脱塩水は、(気体状態とは対照的に)液体形態で注入されることを理解すべきである。脱塩水は、原子炉の下流かつ浄化システムの上流の位置で注入されてもよい。脱塩水はまた、原子炉の下流かつ再循環システムの上流の位置で注入されてもよい。脱塩水により導入される追加の酸素の存在、およびその酸素の濃度の後続の変化が、測定され、分析されてもよい。図1のステップS120に指示されている通り、酸化流が試験されて、原子炉システムに対するプロセス処理の効果を判定してもよい。
【0021】
図2は、本発明の非限定的実施形態による、原子炉冷却水側流の酸素濃度を調節する方法を示す図である。原子力発電所では、原子炉冷却水側流の酸素濃度を調節する方法が、原子炉冷却水側流中に脱塩水を注入して、酸素濃度の上昇した酸化流を作り出すステップを含んでいてもよい。
【0022】
図2を参照すると、原子力発電所が、原子炉(図示せず)から監視システム230まで伸びている原子炉冷却水配管200を含んでいてもよい。例えば、原子炉冷却水配管200は、原子炉(図示せず)の底部に接続されていてもよい。原子炉冷却水側流202が、原子炉冷却水配管200により、原子炉(図示せず)から監視システム230まで流動する。原子炉冷却水側流202は、サンプル流として使用されてもよい。
【0023】
脱塩水配管212が、脱塩水供給源(図示せず)から原子炉冷却水配管200まで伸びている。脱塩水供給源(図示せず)は、原子力発電所の施設内で製造される。脱塩水供給源(図示せず)は、具体的には脱塩水配管212内に脱塩水流214を供給するように製造されてもよい。あるいは、脱塩水供給源(図示せず)は、原子力発電所内で種々の用途のために脱塩水を供給する既存の供給源であってもよく、供給源の一部分が、脱塩水配管212により迂回している。
【0024】
未処理水と比較して、脱塩水は、その中の無機イオンの除去により、より高い抵抗性およびより低い導電率を有する。例えば、脱塩水は、少なくとも0.1MΩ・cmの抵抗性および最大10μS・cm-1の導電率を有していてもよい。別の例では、脱塩水は、少なくとも1.0MΩ・cmの抵抗性および最大1μS・cm-1の導電率を有していてもよい。脱塩水はまた、未処理水と比較して、比較的高い酸素含有量を有する。例えば、脱塩水は、空気が飽和された場合、少なくとも2000ppbのO2と最大8000ppbのO2とを有している可能性がある。
【0025】
脱塩水配管212は、注入位置220において原子炉冷却水配管200に接続されている。脱塩水の注入中、脱塩水流214は、ポンプ210を用いて、原子炉冷却水側流202中に導入されてもよい。ポンプ210は容積式ポンプであってもよいが、例示実施形態はそれに限定されない。脱塩水は、100psigから1000psig超(例えば、1100psig)までの圧力で、原子炉冷却水配管200内にポンプで送り込まれてもよい。
【0026】
原子炉冷却水配管200が注入位置220において一定の直径を有すると仮定すれば、原子炉冷却水側流202と脱塩水流214との混合は、注入位置220から直径約10から20個分下流で完全である可能性があり、酸化流224を生成する。したがって、該混合は、注入位置220の下流かつ監視システム230の上流の酸化位置222において完全である可能性がある。そうは言っても、注入位置220から監視システム230まで延在している原子炉冷却水配管200の長さは、注入位置220から酸化位置222まで延在している原子炉冷却水配管200の長さより長いであろう。より明確に言及すると、注入位置220の下流の、原子炉冷却水配管200の部分の最小限の長さが、注入位置220と酸化位置222との間の距離である。
【0027】
原子炉冷却水側流202は、約100ppb未満の酸素濃度を有していてもよい。対照的に、脱塩水流214は、約2000ppbから8000ppb(例えば、5000ppb)までの酸素濃度を有していてもよい。このように、脱塩水流214は、原子炉冷却水側流202の酸素濃度より20倍から80倍高い既知の酸素濃度を有していてもよい。そうは言っても、原子炉冷却水側流202への比較的少量の脱塩水の添加が、結果として得られる混合物の酸素濃度をかなり著しく上昇させる可能性がある。例えば、脱塩水流214は、原子炉冷却水側流202の流量の10%以下の流量で添加されてもよい。非限定的実施形態では、原子炉冷却水側流202に100ppbの酸素を添加するために、8000ppbの酸素を有する脱塩水流214が、原子炉冷却水側流202の流量の約1.25%の流量で添加されてもよい。
【0028】
また、監視システム230の適正な機能を確実にするために、酸化流224の結果としてもたらされる温度が考慮されてもよい。例えば、脱塩水流214の流量は、脱塩水の注入後に、酸化流224の温度が少なくとも400°F(204.4℃)であるように調節されてもよいが、例示実施形態はそれに限定されない。非限定的実施形態では、原子炉冷却水側流202の温度は、約520°F(271.1℃)である可能性があるが、脱塩水流214の温度は、約200°F(93.33℃)未満(例えば、100°F(37.78℃))である可能性がある。したがって、脱塩水流214の流量は、酸化流224の結果としてもたらされる温度が、監視システム230の適切な動作に必要な温度を超過するように調節されてもよい。
【0029】
監視システム230は、触媒軽減監視システム(MMS)であってもよい。沸騰水型原子炉(BWR)システムなどの原子炉システム内には、酸素イオン(O2-)が原子炉環境の結果として存在し、応力腐食割れを生じるようにシステム内の金属配管と反応する可能性がある。応力腐食割れの問題に対処するための1つの解決策が、オンラインノーブルケム(OLNC:On−line NobleChem)法である。
【0030】
オンラインノーブルケム法の間、プラチナなどの貴金属を含有する化学薬品が原子炉冷却水中に注入され、そこで該化学薬品は分解し、システム配管の内面上にプラチナ沈殿物を形成するようにプラチナを解放する。結果として、プラチナは、水(H2O)を形成する水素イオン(H+)と酸素イオン(O2-)との再結合のための触媒として作用し、それにより、システム内の酸素イオン(O2-)量を減少させ、それにより、応力腐食割れの発生を軽減し、防止する。システム配管の内面(および新しい割れ目)がプラチナで適切に被覆されることを確実にするために、オンラインノーブルケム法が、必要に応じて頻繁に(例えば、毎年)実施されてもよい。
【0031】
オンラインノーブルケム法の有効性を評価するために、監視システム230が使用されてもよく、該システムは、触媒軽減監視システムの形であってもよい。監視システム230が、原子炉冷却水の電気化学的腐食電位(ECP)を含む種々の特性を測定するセンサを含んでいてもよい。例えば、原子炉冷却水の電気化学的腐食電位は、プラチナ注入前は−200mVであり、プラチナ注入後は−500mVである可能性があるが、例示実施形態はそれらに限定されない。
【0032】
しかし、ある状況では、電気化学的腐食電位は、プラチナ注入前に既に−500mVである可能性がある。他の状況では、電気化学的腐食電位は、プラチナ注入後でも変化しないままである可能性がある。上記の状況では、管路長および/または流量が、酸素が監視システムに到達する機会を有する前に(例えば、配管により)原子炉冷却水中の酸素の大部分または全てが既に消費されてしまっている可能性があるようなものであることが考えられる。したがって、監視システムによる次の電気化学的腐食電位の測定値が、酸素の水素との触媒再結合とは対照的に、原子炉冷却水中の酸素不足により、比較的低い可能性がある。
【0033】
上記を考慮して、原子炉冷却水側流202の電気化学的腐食電位測定値を軽減の直接評価として用いることができることを確実にするために、脱塩水流214により、原子炉冷却水側流202に酸素が添加されてもよい。詳細には、酸素の添加は、プラチナ注入前に酸化流224の電気化学的腐食電位を上昇させ、それにより、プラチナ注入によりもたらされる触媒効果に関連する電気化学的腐食電位の後続の低下を可能にすると考えられる。結果として、オンラインノーブルケム法の有効性は評価され得る。
【0034】
脱塩水流214は、貴金属の注入前に、かつ貴金属の触媒効果を判定するために電気化学的腐食電位が測定されている間に、原子炉冷却水側流202中に導入されてもよい。さらに、脱塩水流214は、貴金属の注入中に、かつ貴金属の触媒効果を判定するために電気化学的腐食電位(ECP)が測定されている間に、原子炉冷却水側流202中に導入されてもよい。さらに、脱塩水流214は、貴金属の注入後に、かつ貴金属の触媒効果を判定するために電気化学的腐食電位(ECP)が測定されている間に、原子炉冷却水側流202中に導入されてもよい。脱塩水の添加が、通常動作中に、毎週もしくは毎月所望の継続時間(例えば、2〜3分)で実施されてもよく、かつ/または貴金属注入中に、継続的にもしくは1時間ごとに実施されてもよいことを理解すべきである。上記の例はオンラインノーブルケム法に関連して記載されているが、例示実施形態がそれに限定されないこと、および酸素の添加が必要とされる他の事例で適用されてもよいことを理解すべきである。
【0035】
脱塩水流214の流量は、酸化流224の水素対酸素のモル比が2より大きい(例えば、3または4の比)ように調節されてもよい。非限定的実施形態では、水素対酸素のモル比が5から10までであってもよく、さらには最大15から20までであってもよい。適切な混合を確実にするために、注入位置220が、監視システム230内の電気化学的腐食電位センサの上流の、原子炉冷却水配管200の直径の少なくとも10倍の距離の所にあるように、脱塩水流214は原子炉冷却水配管200内に導入されてもよい。監視システム230内への酸化流224の流量は約5gpmであってもよいが、例示実施形態はそれに限定されない。
【0036】
原子炉システム内に沈殿した貴金属の触媒効果を判定する方法が、原子炉冷却水側流202中に脱塩水流214を注入して、酸化流224の水素対酸素のモル比が無限大より小さいように、酸素濃度の上昇した酸化流224を作り出すステップを含んでいてもよい。複数の電気化学的腐食電位測定が、次いで、酸化流224において実施されて、原子炉システム内に沈殿した貴金属の触媒効果を判定してもよい。
【0037】
上記を考慮して、本発明の例示実施形態が、原子力発電所の原子炉冷却水流に酸素を添加する、比較的安全で、簡単で、効果的な方法を提供する。
【0038】
複数の例示実施形態が本明細書に開示されているが、他の変形形態が可能であってもよいことを理解すべきである。そのような変形形態は、本開示の精神および範囲からの逸脱と見なされるべきではなく、当業者に明らかであろう全てのそのような変形は、以下の特許請求の範囲の範囲内に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0039】
S100 注入するステップ
S120 試験するステップ
200 原子炉冷却水配管
202 原子炉冷却水側流
210 ポンプ
212 脱塩水配管
214 脱塩水流
220 注入位置
222 酸化位置
224 酸化流
230 監視システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電所内の原子炉冷却水側流の酸素濃度を調節する方法であって、
前記原子炉冷却水側流(202)中に脱塩水(214)を注入して、酸素濃度の上昇した酸化流(224)を作り出すステップ
を含む、方法。
【請求項2】
脱塩水を注入する前記ステップは、前記原子炉冷却水側流(202)より酸素が少なくとも20倍多い、既知の酸素濃度の前記脱塩水(214)を添加することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
脱塩水を注入する前記ステップは、前記原子炉冷却水側流(202)に前記脱塩水(214)を添加することを含み、前記原子炉冷却水側流(202)は100ppb未満の酸素を有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
脱塩水を注入する前記ステップは、前記原子炉冷却水側流(202)に、少なくとも2000ppbの酸素を有する前記脱塩水(214)を添加することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
脱塩水を注入する前記ステップは、前記脱塩水(214)の注入後に前記酸化流(224)の温度が少なくとも400°F(204.4℃)であるように、前記脱塩水(214)の流量を調節することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
脱塩水を注入する前記ステップは、前記脱塩水(214)の注入後に前記酸化流(224)中の水素対酸素のモル比が2より大きいように、前記脱塩水(214)の流量を調節することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
脱塩水を注入する前記ステップは、原子炉の下流かつ浄化システムまたは再循環システムの上流の位置で、前記脱塩水(214)を添加することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
脱塩水を注入する前記ステップは、前記原子炉冷却水側流(202)を送る管(200)内に、電気化学的腐食電位(ECP)センサの上流の、前記管(200)の直径の少なくとも10倍の距離である位置で、前記脱塩水(214)を添加することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
脱塩水を注入する前記ステップは、前記原子炉冷却水側流(202)の流量の10%以下の流量で、前記脱塩水(214)を添加することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
脱塩水を注入する前記ステップは、貴金属の注入の前、最中、もしくは後に、かつ前記貴金属の触媒効果を判定するために電気化学的腐食電位(ECP)が測定されている間に、前記脱塩水(214)を添加することを含む、請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−68614(P2013−68614A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−201049(P2012−201049)
【出願日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【出願人】(508177046)ジーイー−ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシー (101)
【氏名又は名称原語表記】GE−HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC