説明

脱気膜の製造方法、封筒状物、および該封筒状物を用いた脱気装置

【課題】製造が容易であり、かつ液体流路の形状が安定しやすい脱気膜の製造方法および該方法により製造される脱気装置を提供する。
【解決手段】第1の通気膜上にホットメルト樹脂を吐出することにより前記第1の通気膜に突出部を形成し、前記突出部の樹脂が硬化した後、前記第1の通気膜上に、前記突出部を覆うように第2の通気膜を形成することにより脱気膜を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に溶存する気体を脱気させる脱気膜の製造方法および、その方法により製造される封筒状物、および該封筒状物を用いた脱気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学品製造、食品製造、医療、電気機器、半導体製造装置等の様々な分野において、液体中に溶存している気体の脱気(気液分離)が必要となることが多い。上記液体が機能性粒子のような固体懸濁物を含む場合、従来からある中空糸タイプの脱気モジュールでは中空糸開口部の径が小さいため容易に目詰まりを起こしてしまう。
【0003】
他の脱気装置として、溶存気体を透過させる多孔質高分子膜材をロール状(スパイラル状)、あるいはプリーツ状に重ねてモジュール化したものが知られている。このタイプの装置では、膜材の片側を液体流路とし、膜材の他の片側を減圧とした除去気体流路を構成して脱気を行っている(特許文献1〜4)。
【0004】
例えば、特許文献1の図8〜図11には、ケーシング内に合成樹脂の薄膜からなり周囲が閉じられた封筒状の膜構造体が、被脱気液体を通液させる液体流路を形成するための液体流路形成材を介してスパイラル状又はプリーツ状に重ねられてなる脱気装置が記載されている。また特許文献1の図10(本明細書に添付した図面の図13)に示されるように、この膜構造体(封筒状脱気膜)51はその内部に、除去気体の流路を形成するための気体流路形成材52を有し、膜構造体51の外側には液体流路形成材53により液体流路が形成され、かつ、液体流路形成材53は膜構造体51の内部が減圧になるとき膜構造体1を構成する薄膜と密着することにより液体流路が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−76106号公報(図8〜11)
【特許文献2】特開平8−332306号公報(図5〜7)
【特許文献3】特開平9−225206号公報(図7〜10)
【特許文献4】特開平10−216403号公報(図8〜11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の脱気装置では、液流路のためのスペーサーとして用いているスクリーンネットの交点に徐々に機能性粒子が堆積し、圧力損失が上昇し、最悪の場合は目詰まりによる閉塞を起こしてしまう。
【0007】
また本明細書の図13に示すように液体流路形成材を用いてリブ状(畝状)の立体構造を予め形成する場合は膜構造体の製造工程自体が複雑である。また、図13から判断する限り、液体流路形成材は糸状物(或いは繊維状物)で構成されているため、(1)これをリブ状に形成することは容易ではないと考えられ、また、(2)外部応力に対して極めて容易に変形するものと考えられる。変形しやすいため膜構造体内の減圧の度合いや気圧むらによって薄膜表面に反映されるリブ形状が必ずしも一定せず、液体の流れが不安定になる。本発明は、製造が容易であり、かつ液体流路の形状が安定しやすい脱気膜の製造方法および該方法により製造される脱気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達し得た本発明の脱気膜の製造方法は、第1の通気膜上に樹脂を吐出することにより前記第1の通気膜に突出部を形成する工程と、前記突出部の樹脂を硬化させた後、前記第1の通気膜上に、前記突出部を覆うように第2の通気膜を形成する工程とを有するものである。
【0009】
上記製造方法において、前記突出部の樹脂としてホットメルト樹脂を用いることが望ましい。
【0010】
上記製造方法において、突出部をリブ状に形成することが望ましい。
【0011】
上記製造方法において、リブ状の突出部を蛇行させることが望ましい。
【0012】
上記製造方法において、突出部をドット状に形成することが望ましい。
【0013】
上記目的を達し得た本発明の封筒状物は、シート状の気体流路形成材の一側面を上記脱気膜で覆い、他側面を通気膜で覆うことにより該気体流路形成材を内包するものである。
【0014】
上記封筒状物において、他側面に用いる通気膜に代えて上記脱気膜を用いることが望ましい。
【0015】
上記封筒状物において、前記気体流路形成材の一側面に形成された突出部と、他側面に形成された突出部とを前記気体流路形成材の表裏の同じ位置に形成することが望ましい。
【0016】
上記封筒状物において、前記気体流路形成材の一側面に形成された突出部と、他側面に形成された突出部とを前記気体流路形成材の表裏の異なる位置に形成することが望ましい。
【0017】
上記目的を達し得た本発明の脱気装置は、液体流入口および液体流出口を有する筐体内に上記の製造方法により製造された脱気膜をスパイラル状またはプリーツ状に重ねて収納したものである。
【0018】
上記脱気装置において、筐体における液体の流通方向に対して、突出部のリブが5〜85度の角度をなして形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の脱気膜の製造方法、および該方法により製造される脱気装置により、製造が容易であり、かつ液体流路の形状が安定な脱気膜の製造方法を提供することが可能となる。また、該方法により製造される脱気装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態における封筒状物の一部斜視図である。
【図2】上記封筒状物のスパイラル状積層物を示す図である。
【図3】上記封筒状物のプリーツ状積層物を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における脱気装置を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態における脱気膜の製造工程を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態における突出部の変形例を示すものである。
【図7】本発明の実施の形態における突出部の変形例を示すものである。
【図8】本発明の実施の形態における突出部の変形例を示すものである。
【図9】本発明の実施の形態における突出部の変形例を示すものである。
【図10】本発明の実施の形態における突出部の変形例を示すものである。
【図11】本発明の実施の形態における封筒状物の一例を示すものである。
【図12】本発明の実施の形態における他の封筒状物を示すものである。
【図13】従来の脱気膜の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態にかかる脱気膜の製造方法について図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態における脱気膜を有する封筒状物1の一部斜視図である。図1に示すように、封筒状物1はPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)膜5,10により構成され、その内部にはナイロンやポリエステル等で構成される気体流路形成材であるニット材2、ニット材2の一側面に形成された多孔質PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)膜3、ニット材2の他側面に形成された第1の通気膜である多孔質PTFE膜4、この多孔質PTFE膜4上に突出部として形成されたリブ6を備えている。第2の通気膜であるPFA膜5は、リブ6の上を覆うため、リブ6の立体形状を反映した凸部5aを有している。
【0023】
本明細書では、少なくとも第1の通気膜である多孔質PTFE膜4、リブ6、第2の通気膜であるPFA膜5を含む積層構造を脱気膜と記載している。さらにPFA膜5とPFA膜10とにより封筒状を成し、封筒の内部に、ニット材2の両面に多孔質PTFE膜3,4を積層したものを挿入した構造を封筒状物1と記載している。
【0024】
被脱気液体中の気体は、次のような方法で脱気されている。図1において封筒状物1の外側が被脱気液体の流路であり、被脱気液体を矢印Aの方向に流す。一方、封筒状物1の内側は減圧状態にする。これにより、液中に溶存している気体は透過可能なPFA膜5及び多孔質PTFE膜4を介して、ニット材2側に移行する。そしてこの気体は矢印Bの方向に排気される。
【0025】
以上、封筒状物1の説明では気体流路形成材としてニット材2及び多孔質PTFE膜3を用いたが、これらはいずれも本発明において製造される脱気膜の必須の構成要件ではなく、脱気膜自体はあくまでも第1の通気膜(多孔質PTFE膜4)、突出部(リブ6)、第2の通気膜(PFA膜5)を含む積層構造を少なくとも含むものであればよい。
【0026】
上記のように好ましくは気体流路形成材を形成するが、必ずしもニット材を用いる必要はなく、気体の内部移動を可能とする材料を用いればよい。例えばナイロンのクロス織布、ウレタンスポンジ、ポリエステル、ポリプロピレンのネット、金属ネット等からなる布帛を用いることができ、この布帛の形態は織物、編物、スポンジ、不織布、ネット等の気体流路形成材とすることができる。この気体流路形成材の厚さは0.1〜5mm(好ましくは0.3〜2mm)とすることが望ましい。
【0027】
以上の説明では、第1の通気膜として防水性に優れた多孔質PTFE膜4を用いた場合について説明したが、PTFEに限らず、液体の透過を防止し、気体を透過させることができるものであればよく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド等を使用することもできる。なお、第1の通気膜は、本発明で使用されるホットメルト樹脂に対して濡れ性が低いことが好ましい。ホットメルト樹脂は、第1の通気膜上に突起物を形成する役割を有するためである。
【0028】
第1の通気膜として多孔質PTFE膜を用いる場合は、多孔質PTFE膜の空孔率を20〜90%(好ましくは50〜80%)とすることが望ましい。厚さは5〜100μm(好ましくは10〜50μm)とすることが望ましい。
【0029】
以上の説明では、第2の通気膜としてPFA膜5を用いた場合について説明したが、液体の透過を防止し、気体を透過させることができるものであればよく、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、その他、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの各種樹脂を、単独あるいは2種以上の混合物として適宜用いることができる。これらの材料は、液体の透過を防止し、気体を透過させる機能(防液・通気性)を付与できる他、高い耐薬品(有機溶剤、酸、アルカリ)性、および高い耐熱性を有する。
【0030】
本発明で用いる封筒状物1は、その内部が減圧になるように、末端部或いは中央部等の適所に真空引きのための排気用部材(図示せず)が取り付けられることが好ましい。この排気用部材としては、適宜の材料からなるチューブ状のものを用いることができる。好ましい材料の一例はPFAである。PFAを排気用部材として用いた場合、PFA膜5と同材質であり、熱融着が容易であるという利点がある。排気用部材の外径は4〜10mm、肉厚は0.5〜1mm程度が好ましい。
【0031】
排気用部材の好ましい取付け方法の他の一例は、封筒状物1の折り目に穴を開け、この穴にパイプ状の軸を通して封筒状物1に取り付ける方法である。取り付けのため、封筒状物1の内部に設けたリング状パーツと、軸の内部に設けたOリングを用いて、封筒状物1と軸とを挟み込む構成とした。
【0032】
本発明では、封筒状物1を約5層〜100層重ねて積層体を構成し、この積層体を合成樹脂あるいは金属等からなる筐体内に収容して脱気装置を構成する。その積層体の形態としては、例えば図2に示すように封筒状物1をスパイラル状に積層してもよいし、図3に示すようにプリーツ状に積層してもよい。いずれの形態の場合も、封筒状物1の表面にリブ6の存在による突起が存在するため、この突起がスペーサーの役割を果たして封筒状物1同士の間に隙間が形成され、これが被脱気液体を流すための流路となる。
【0033】
図4は、上記積層体を筐体内に収納した脱気装置の構成例を示すものである。図4において筐体12の内部に、例えば図3のプリーツ状の積層体が収納される(収納される積層体は、勿論、図2に示したスパイラル状の積層体であってもよい)。封筒状物1の適所には排気用部材15の一端が取り付けられ、該排気用部材15の他端は筐体12の外部に引き出されている。筐体12には、被脱気液体の液体流入口13、被脱気液体の液体流出口14、脱気開始時の空気抜きのための空気孔16がそれぞれ設けられている。また筐体12内には、封筒状物1が液体流入口13、被脱気液体の液体流出口14、空気孔16等を塞いでしまうことを防止するための合成樹脂ネット17が配置されている。このような構成において、液体流入口13から被脱気液体を供給し、排気用部材15の他端に連結された図示しない真空ラインにより封筒状物1が減圧状態にされると、液体流路内に通液された被脱気液体に溶存している気体が封筒状物1のPFA膜5及び多孔質PTFE膜4を透過して脱気が行われ、除去された気体はニット材2で形成される気体流路を通り、排気用部材15から筐体12の外部に排気される。
【0034】
但し、本発明において使用される筐体構造はここに例示したものに限定されるものではなく、その他の公知の構造を採用することができる。
【0035】
また、本発明による第1の脱気装置は、通常の水、水溶液、溶剤液等に溶存する気体の脱気のみならず、濃度が高い溶剤液、油脂液、界面活性剤を含む液、半導体製造で使用される特殊液等に対しても効率よく脱気が行えるものである。また、液体中に溶存する気体は、酸素、炭酸ガス、窒素ガス、炭化水素ガス等の常温常圧でガス状を示す各種の気体であってもよい。
【0036】
本発明の脱気膜の製造方法は、まず第1の通気膜である多孔質PTFE膜4上にホットメルト樹脂を吐出することにより多孔質PTFE膜4にリブ6を形成するものである。図5は、ホットメルト樹脂の吐出工程を示す図である。図5に示されるように、溶融したホットメルト樹脂を一定量吐出できるホットメルトアプリケーター18を矢印Cの方向に平行移動させながら、多孔質PTFE膜4上に軟化したホットメルト樹脂をライン状に吐出してゆき、リブ6を形成する。図5に示されたホットメルトアプリケーター18は4つの吐出ノズルを有するため、リブ6を4本ずつ並行して同時に形成することができる。
【0037】
次に、リブ6が固化した後、多孔質PTFE膜4上に、リブ6を覆うように第2の通気膜であるPFA膜5を形成する(図1参照)。PFA膜5は多孔質PTFE膜4に接着させてもよいが、固着せずともニット材2側を減圧にした際にはPFA膜5は多孔質PTFE膜4に密着する。PFA膜5を多孔質PTFE膜4に接着する場合には、接着の方法は、熱融着であっても接着剤によるものであっても良いが、通気性と柔軟性を損なわないようにするため、熱融着によるものが好ましい。
【0038】
なお、多孔質PTFE膜4には、ニット材2および多孔質PTFE膜3を積層しておいてもよい。多孔質PTFE膜3とニット材2、ニット材2と多孔質PTFE膜4は熱融着により互いに接着させることができる。もちろん、接着剤を用いて接着させてもよい。
【0039】
本発明の突出部であるリブ6の形状は、以下の条件を満足することが一層望ましい。例えばリブ6の幅は0.1〜3mm、好ましくは0.2〜1mm、より好ましくは0.3〜0.7mmとすることが望ましい。リブ6の高さは0.2〜2mm、好ましくは0.3〜0.7mmとすることが望ましい。リブ6のピッチ(隣り合うリブ6の間の距離)1〜20mm、好ましくは3〜10mmとすることが望ましい。
【0040】
以上、リブ6を構成する材料としてホットメルト樹脂を用いた場合について説明したが、本発明ではホットメルト樹脂に限らず、液体の状態から冷却することにより硬化する樹脂、もしくは化学反応(光反応を含む)させることにより硬化する樹脂を用いることができる。
【0041】
液体の状態から硬化する樹脂の具体例としては、(1)反応硬化型の樹脂としてエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂など、(2)光硬化型の樹脂としてアクリル樹脂、シアノアクリレート樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など、(3)溶剤溶解型の樹脂として天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、ABS、PVA、ニトロセルロースなどを挙げることができる。
【0042】
リブ6を構成するホットメルト樹脂としては、変性オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂またはそのコポリマー系樹脂を用いることが望ましい。その他にも、ポリエステル系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂またはその共重合体系樹脂、セルロース誘導体系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などの各種樹脂を、単独あるいは2種以上の混合物として適宜用いることができる。
【0043】
以上の説明では、多孔質PTFE膜4の上に突出部を設けるために直線状のリブ6を形成した場合について説明したが、突出部の形状は特に限定されず、適宜種々の形状を採用することも可能である。
【0044】
図6〜図10は、突出部の変形例を示すものである。ただし、突出部の形状を表すため、いずれも第2の通気膜(図1のPFA膜5)を省略して記載している。図6は、突出部であるリブ6に途切れ部を形成したものである。リブ6が途中で途切れている形状を有するために、被脱気液体がリブ6間で相互に行き来することが可能となる。したがって、液体流路の圧力損失を低減することができる。
【0045】
図7は、突出部をドット状にしたものである。被脱気液体の流れを遮るものが少ないため、圧力損失の一層の低減になる。しかし、ドットの密度が少な過ぎる場合は、封筒状物1と封筒状物1との間のスペーサーの役割を十分に果たせないため逆に圧力損失が上昇してしまうこともある。圧力損失を低く抑えるためには、ドットの密度は、0.1〜10個/cm(好ましくは1〜5個/cm)であることが望ましい。
【0046】
図8は、図6に示した途切れ部を有するリブ6を用いた場合であって、かつ、途切れ部を1列おきに互い違いに配置したものである。このような配置にすることにより、被脱気液体が攪拌され乱流を起こすことで脱気効果が促進されることが期待できる。
【0047】
図9は、直線状のリブ6を用いたものであるが、リブ6が筐体12における被脱気液体の流通方向(筐体12に平行である矢印A(図4))に対して、5〜85度(好ましくは30〜60度、より好ましくは30〜45度)の角度をなして形成されているものである。角度をなす方向は、矢印Aの方向に対して左右どちらの方向でもよい。このようにリブ6を斜めに設けることにより、被脱気液体の流路の道のりが増えるため、いっそう十分な脱気を行うことができる。
【0048】
図10は、リブ6が蛇行形状を有する場合を示したものである。リブ6が蛇行している場合も、被脱気液体の流路の道のりが増えるため、いっそう十分な脱気を行うことができる。蛇行形状は、図10に示すような曲線状の蛇行でもよいし、折れ線が連続する直線的な蛇行でもよい。
【0049】
図11は、気体流路形成材であるニット材2の表裏両側に上述した脱気膜を形成することにより該ニット材2を内包する封筒状物1を示したものである。すなわち、図6〜図10に示した封筒状物1と異なるのは、気体流路形成材の両側側面に本発明にかかるリブ6を配置しているところである。図6〜図10の封筒状物1では、ニット材2の表裏にある第2の通気膜(PFA膜5とPFA膜10(図1参照))の長さが異なるため、脱気のため封筒状物1内を減圧した際に封筒状物1が所望の変形を起こさず、かなり複雑な変形を起こしてしまう場合がある。そこで、PFA膜5とPFA膜10の長さをニット材2の表裏で同等にするため、図11に示すようにニット材2の表裏両側にリブ6を配置する構成とすることが一層望ましい。
【0050】
なお、裏側のリブ6を配置する位置は、上記図11のように表側のリブ6に対応する真裏側の位置、すなわち表裏の同じ位置でもよいし、図12に示すように、ニット材2表裏の互いに異なる位置(例えば互い違いの位置(半波長分ずれた位置))としてもよい。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0052】
なお、本発明の脱気膜の突出部はホットメルト樹脂の吐出により形成されるため、図13に示す従来の脱気膜と比較して製造が容易であることは明らかであり、また、液体流路の形状が安定的であることも明らかであるため、図13に示す従来の脱気膜と本発明の脱気膜とを直接比較する実験は行っていない。
【0053】
(実施例)
1.試験用サンプルの作製
幅32cm×長さ10mの多孔質PTFE膜、ニット材、もう一枚の多孔質PTFE膜を熱融着で積層することによって3層ラミネート材を作製した。この3層ラミネート材の上に幅1.5mm、高さ0.5mm、ピッチ6mmでホットメルト樹脂のリブを形成した。リブの長手方向は、3層ラミネート材の長手方向とは直角を為す方向(短手方向)に平行とした。リブの形成方法は次の通りである。
【0054】
マルチヘッドノズル(H200ミニビードノズル(1個のノズルに対して6穴))を有するノードソン株式会社製のホットメルトアプリケーター(ホットメルト多重ビードシステム)を用い、変性オレフィン系ホットメルト樹脂(積水フーラー社製、商品名:エスダイン8515DA−1)のリブを、幅1.5mm、高さ0.5mm、ピッチ6mmで配置した。ホットメルトアプリケーターによるホットメルト樹脂の吐出条件は次の通りである。
【0055】
ヒーター温度:
(タンク部及びホース部:165℃)
(ガン部:170℃)
液体状樹脂の液圧(加熱溶融シリンダー部):
100psi(=0.69Mpa)
検量:30cmビード1本あたり0.13g
ノズル距離(ノズル先端から多孔質PTFE膜4までの距離):約2mm
【0056】
リブが形成された3層ラミネート材を、厚さ25μmのPFA膜により形成された封筒の内部に挿入し、封筒の一端に真空引き用の中空軸を取り付け、両端を熱融着によりシールした。中空軸を通してPFA封筒内部を真空引きすると、PFA膜は薄くて柔軟な為、リブに沿って密着し、そのまま軸を中心に巻き上げることにより、スパイラル状の積層物を形成した。この積層物をステンレス製の筐体12に収容し、フランジ中心部から中空軸を貫通させ筐体外部へと導出し、脱気装置(脱気モジュール)を作製した。
【0057】
2.脱気試験
2種類の流量条件で被脱気液体として純水を脱気モジュールに流通させ、液体流出口における溶存酸素濃度および圧力損失を測定したところ下記表1の通りとなった。ただし、液体流入口において純水の温度は25℃、大気圧で飽和した溶存酸素の濃度は8.1mg/リットルであった。
【0058】
【表1】

【0059】
(比較例)
基本的には、実施例と同様にPFA封筒内に3層ラミネート材を封入した封筒状物を用いてロール積層物を形成した。実施例との違いは、比較例では3層ラミネート材上にリブを形成していないこと、及び、比較例では、封筒状物の外側にPFA製メッシュ(60メッシュ、厚さ0.5mm)を置き、中空軸を通してPFA封筒内部を真空引きしながら巻き上げる事で、円筒形の脱気モジュールを形成したことである。
【0060】
比較例においても同様に、2種類の流量条件で脱気モジュールに純水を流通させ、液体流出口における溶存酸素濃度および圧力損失を測定した。結果は、下記表2の通りとなった。液体流入口における純水の諸条件は実施例と同じである。
【0061】
【表2】

【0062】
表1及び2から分かるように、比較例の脱気装置では、液体流入口と液体流出口の間で大きな圧力損失が存在していたが(試験3,4)、実施例の脱気装置では、圧力損失は目標値である1kPaを大きく下回り、測定限界以下であった。なお、実施例でも比較例でも、流量を減らせば液体流出口での溶存酸素濃度が低くなっており、脱気機能が一層高く発揮されることがわかる。
【符号の説明】
【0063】
1 封筒状物
2 ニット材
3、4 多孔質PTFE膜
5、10 PFA膜
5a 凸部
6 リブ
7 ロール体
8 プリーツ体
11 脱気装置
12 筐体
13 液体流入口
14 液体流出口
15 排気用部材
16 空気孔
17 合成樹脂ネット
18 ホットメルトアプリケーター


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通気膜上に樹脂を吐出することにより前記第1の通気膜に突出部を形成する工程と、前記突出部の樹脂を硬化させた後、前記第1の通気膜上に、前記突出部を覆うように第2の通気膜を形成する工程とを有する脱気膜の製造方法。
【請求項2】
前記突出部の樹脂がホットメルト樹脂である請求項1に記載の脱気膜の製造方法。
【請求項3】
前記突出部をリブ状に形成する請求項1または2に記載の脱気膜の製造方法。
【請求項4】
前記リブ状の突出部を蛇行して形成する請求項3に記載の脱気膜の製造方法。
【請求項5】
前記突出部をドット状に形成する請求項1または2に記載の脱気膜の製造方法。
【請求項6】
シート状の気体流路形成材の一側面を請求項1〜5のいずれかに記載された方法により製造された脱気膜で覆い、他側面を通気膜で覆うことにより該気体流路形成材を内包する封筒状物。
【請求項7】
前記他側面に用いる通気膜として請求項1〜5のいずれかに記載された方法により製造された脱気膜を用いる請求項6に記載の封筒状物。
【請求項8】
前記気体流路形成材の一側面に形成された突出部と、前記他側面に形成された突出部とが前記気体流路形成材の表裏の同じ位置に形成されている請求項7に記載の封筒状物。
【請求項9】
前記気体流路形成材の一側面に形成された突出部と、前記他側面に形成された突出部とが前記気体流路形成材の表裏の異なる位置に形成されている請求項7に記載の封筒状物。
【請求項10】
液体流入口および液体流出口を有する筐体内に請求項6〜9のいずれかに記載された封筒状物をスパイラル状またはプリーツ状に重ねて収納した脱気装置。
【請求項11】
前記筐体における液体の流通方向に対して、前記突出部のリブが5〜85度の角度をなして形成されている請求項10に記載の脱気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−92905(P2011−92905A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251402(P2009−251402)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000107387)ジャパンゴアテックス株式会社 (121)
【Fターム(参考)】