説明

脱気装置及び脱気・注気装置

【課題】短時間で高い脱気度の液体を生成可能な脱気装置及び脱気・注気装置を提供する。
【解決手段】液体を貯留するタンクと、このタンク内の液体を下流方向に圧送する圧送手段と、タンクに一端を連通連結するとともに他端を圧送手段の吸引部に連通連結する第1配管と、圧送手段の吐出部に一端を連通連結するとともに他端をタンクに連通連結する第2配管と、この第2配管の途中に設けてスーパーキャビテーションによる空洞を生成する空洞生成手段と、タンク内を減圧する減圧手段とを有する脱気装置及び脱気・注気装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の液体の脱気を行う脱気装置、及び脱気した液体に所要の気体を溶解させることにより注気する脱気・注気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者のうちの一人は、先にスーパーキャビテーションを利用した脱気装置、及び脱気・溶解装置を発明した。
【0003】
スーパーキャビテーションを利用した脱気装置では、脱気される液体が送給されている配管の途中に剥離部を設け、この剥離部においてスーパーキャビテーションに特有の空洞を生じさせ、この空洞内が極めて低い圧力となることにより液体に溶存している気体を空洞内に析出させ、析出した気体を真空ポンプなどによって吸引除去することにより脱気するものである。ここで、剥離部では、配管の内面に内側に向けて突出させた剥離点を設けて、配管の内面から液体の剥離を生じさせており、この液体の剥離によって空洞を生成しているものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このように、脱気装置では、スーパーキャビテーションによって剥離部に生じさせた空洞が極めて低い圧力状態であることを利用して脱気を行っているが、空洞内に所定の気体を送給して空洞内を高圧状態とすることにより、空洞内の気体を液体に溶解させることができる。このことを利用して、脱気・溶解装置では、液体に所要の気体を効果的に溶解させている(例えば、特許文献2参照。)。なお、以下においては、液体に気体を溶解させることを「注気」という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3950979号公報
【特許文献2】国際公開第2007/094434号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スーパーキャビテーション現象を利用した脱気装置及び脱気・溶解装置(脱気・注気装置)では、脱気に要する時間が長く、より短時間で脱気することが求められており、しかも、さらに脱気度を高めることが求められていた。
【0007】
本発明者らは、より短時間で高い脱気度の液体を生成可能な脱気装置及び脱気・注気装置を提供すべく研究開発を行って、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の脱気装置では、液体を貯留するタンクと、このタンク内の液体を下流方向に圧送する圧送手段と、タンクに一端を連通連結するとともに他端を圧送手段の吸引部に連通連結する第1配管と、圧送手段の吐出部に一端を連通連結するとともに他端をタンクに連通連結する第2配管と、この第2配管の途中に設けてスーパーキャビテーションによる空洞を生成する空洞生成手段と、タンク内を減圧する減圧手段とを有することとした。
【0009】
さらに、本発明の脱気装置では、減圧手段が、液体を貯留する補助タンクと、この補助タンク内の液体を下流方向に圧送する補助圧送手段と、補助タンクに一端を連通連結するとともに他端を補助圧送手段の吸引部に連通連結する第1補助配管と、補助圧送手段の吐出部に一端を連通連結するとともに他端を補助タンクに連通連結する第2補助配管と、この第2補助配管の途中に設けてスーパーキャビテーションによる空洞を生成する減圧用空洞生成体と、この減圧用空洞生成体で生成した空洞とタンク内における液体の液面上方の空間とを連通連結する連通管とを有することにも特徴を有するものである。
【0010】
しかも、本発明の脱気装置では、空洞生成手段で生成された空洞に所定の気体を送給して、液体に気体を溶解させていることにも特徴を有するものである。
【0011】
また、本発明の脱気・注気装置では、液体を貯留するタンクと、このタンク内の液体を下流方向に圧送する圧送手段と、タンクに一端を連通連結するとともに他端を圧送手段の吸引部に連通連結する第1配管と、圧送手段の吐出部に一端を連通連結するとともに他端をタンクに連通連結する第2配管と、この第2配管の途中に設けてスーパーキャビテーションによる空洞を生成する空洞生成手段と、空洞内に所定の気体を送給する気体送給手段とを有し、第1配管と第2配管に液体を送流させて循環させながら液体を脱気した後に、気体送給手段により空洞内に気体を送給して液体に溶解させる脱気・注気装置であって、液体を脱気する際にタンク内を減圧する減圧手段を設けているものである。
【0012】
さらに、減圧手段が、液体を貯留する補助タンクと、この補助タンク内の液体を下流方向に圧送する補助圧送手段と、補助タンクに一端を連通連結するとともに他端を補助圧送手段の吸引部に連通連結する第1補助配管と、補助圧送手段の吐出部に一端を連通連結するとともに他端を補助タンクに連通連結する第2補助配管と、この第2補助配管の途中に設けてスーパーキャビテーションによる空洞を生成する減圧用空洞生成体と、この減圧用空洞生成体で生成した空洞とタンク内における液体の液面上方の空間とを連通連結する連通管とを有することにも特徴を有し、また、第2配管を空洞生成手段の下流側で脱気時流通配管と注気時流通配管に分岐させて、注気時流通配管は、脱気時流通配管よりもタンクの底側においてタンクに連通連結し、脱気時には、液体を脱気時流通配管に流通させ、注気時には、液体を注気時流通配管に流通させていることにも特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、スーパーキャビテーションによる空洞を生成する空洞生成手段を用いた脱気装置及び脱気・注気装置において、従来の脱気装置などのように空洞内に析出した気体を除去して脱気するのではなく、減圧手段によってタンク内を減圧することにより効果的に脱気を行って、短時間で高い脱気度の液体を生成することができる。
【0014】
特に、液体を貯留する補助タンクと、この補助タンク内の液体を循環させる補助圧送手段と、補助タンクに一端を連通連結するとともに他端を補助圧送手段の吸引部に連通連結する第1補助配管と、補助圧送手段の吐出部に一端を連通連結するとともに他端を補助タンクに連通連結する第2補助配管と、この第2補助配管の途中に設けてスーパーキャビテーションによる空洞を生成する減圧用空洞生成体と、この減圧用空洞生成体で生成した空洞とタンク内における液体の液面上方の空間とを連通連結する連通管とを有する減圧手段を用いることにより、真空ポンプなどの吸引装置を用いる必要がなく、低コスト化及びメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0015】
さらに、脱気装置の場合には、空洞生成手段で生成された空洞に所定の気体を送給して、液体に気体を溶解させることによって、その気体以外で溶解している気体の脱気度をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態にかかる脱気装置の概略説明図である。
【図2】狭小流路の形状の説明図である。
【図3】他の実施形態のタンクの説明図である。
【図4】減圧具の有無での脱気状態のグラフである。
【図5】タンクの減圧度の脱気度への影響を示すグラフである。
【図6】空洞生成体に生成した空洞に窒素を供給しながら脱気した場合の酸素溶解度の測定結果を示すグラフである。
【図7】本発明の実施形態にかかる脱気・注気装置の概略説明図である。
【図8】水に対する二酸化炭素の注気実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の脱気装置及び脱気・注気装置は、液体の流路内に剥離点を設けて、この剥離点に働く張力によって固−液界面のはがれを生じさせることにより生成した空洞において液体を効果的に脱気できることを利用したものであり、特に、空洞に連通連結させた真空ポンプなどの吸引装置で空洞内に析出した気体を除去するのではなく、液体を貯留したタンク内を減圧することによって脱気を促進させているものである。
【0018】
なお、固−液界面のはがれを生じさせることにより大きな空洞が生成される激しいキャビテーション状態は、一般的なキャビテーションとは異なる物理現象であって、本発明者らは「スーパーキャビテーション」と称呼している。
【0019】
ここで、「一般的なキャビテーション」とは、液体中にあらかじめ存在しているキャビテーション核と呼ばれる微小気泡が、超音波振動あるいは液体に生じさせた剪断方向の流れに起因した圧力変動などによって膨張することにより、視認可能な大きさの気泡にまで成長する現象であり、固−液界面のはがれをともなっていない現象である。
【0020】
スーパーキャビテーションでは、剥離点に働く張力によって固−液界面のはがれを生じさせていることにより、固−液界面のはがれによって真空状態が生成されるとともに、液体に接した真空部分に液体に溶存した気体の析出が生じ、この析出した気体が充満した大きな空洞が生成されることとなっている。この考え方については、Proc. IMechE, Vol.222, Part C:J.Mechanical Engineering Science, pp.667-678において、本発明者らが詳細に論じた。
【0021】
そこで、本発明者らは、先に発明した脱気装置において、空洞内に析出された気体を真空ポンプなどによって除去することにより脱気可能と考えていたが、脱気装置の脱気効率の向上、及び脱気・溶解装置での溶解効率の向上を図るべく研究開発を行っている際に、空洞内の気体を除去しない場合でも脱気が生じている現象を発見した。
【0022】
この現象を詳細に調べた結果、スーパーキャビテーションによって生成された空洞の下流端において、液体の流れの勢いによって空洞から気体が引きちぎられることにより気泡が形成されており、形成された気泡はそのまま下流側へと押し流され、下流に設けたタンクに流れ下り、タンク内において液面に浮上することにより消滅する一方で、消滅にともなって気泡内の気体を放出することにより結果として脱気されていることを知見した。
【0023】
しかも、スーパーキャビテーションによって生成された空洞では、空洞に気体が析出する一方で、析出した気体が気泡となって空洞から分離されることにより、ほぼ一定の形状及び大きさが維持されており、空洞と液体との接触面積を大きくすることによって、より効果的に空洞への気体の析出を促して脱気効率を向上させることができる。
【0024】
さらに、本発明の脱気装置及び脱気・注気装置では、空洞から引きちぎられて生成された気泡とともに液体を貯留しているタンク内を減圧することによって、液体から析出した気体を効果的に除去して脱気を促進可能としている。
【0025】
以下において、本発明の実施形態である脱気装置について説明する。
【0026】
本実施形態の脱気装置は、図1の概略模式図に示すように、液体L1を貯留するタンク10と、このタンク10内の液体を下流方向に圧送して循環させる圧送手段としてのポンプ20と、タンク10に一端を連通連結するとともに他端をポンプ20の吸引部における吸引口に連通連結する第1配管30と、ポンプ20の吐出部における吐出口に一端を連通連結するとともに他端をタンク10に連通連結する第2配管40と、この第2配管40の途中に設けてスーパーキャビテーションによる空洞及び気泡を生成する空洞生成体50と、タンク10内を減圧する減圧具60とを備えている。
【0027】
タンク10は、所定量の液体L1を貯留可能とした容器であって、密閉可能としている。特に、タンク10内は減圧するので、所定の耐圧性を有している。液体L1は、水や油などのように気体が溶存している液状物であって、ポンプ20によって送給可能な液状物であれば何であってもよく、粉体や繊維物などの固形物が混ざっている液状物でもよい。
【0028】
タンク10には第1配管30の一端を連通連結して、この第1配管30からタンク10内の液体L1を送出可能としている。
【0029】
第1配管30の他端はポンプ20の吸引口に連通連結して、第1配管30を介してポンプ20によりタンク10内の液体L1を吸引し、ポンプ20の吐出口から下流側に所定の圧力で圧送可能としている。なお、圧送手段はポンプ20に限定するものではなく、タンク10内の液体L1を所定圧力として下流方向に圧送可能となっていればどのようなものであってもよい。
【0030】
ポンプ20の吐出口には第2配管40の一端を連通連結して、この第2配管40の他端をタンク10に連通連結することにより、タンク10→第1配管30→ポンプ20→第2配管40→タンク10の循環流路を構成し、タンク10内の液体L1をポンプ20によって循環可能としている。図示していないが、この循環路には、必要に応じてリリーフ弁や絞りを設けて、液体L1を所定の流量で安定的に送流可能としている。また、場合によっては、循環路またはタンク10に液体L1の温度を一定に維持するクーラーなどの温度調整装置を設け、液体L1の温度が変化することにともなう液体L1の気体の溶解度の変動が生じることを抑制して、安定的に脱気可能としてもよい。本実施形態では、循環路にクーラーを設けて液体L1を一定温度としている。
【0031】
本実施形態において、第2配管40の途中に設けた空洞生成体50は円筒孔絞りであって、図1に示すように、第2配管40の内側面に内側に向けて膨出させた遮蔽壁52によって液体L1の流通面積を絞った狭小流路51を形成している。なお、空洞生成体50は円筒孔絞りに限定するものではなく、後述するように空洞を生成可能であればどのようなものを用いてもよい。
【0032】
本実施形態では、第2配管40は、途中で切断しており、切断端部分に空洞生成体50に連結するための連結具(図示せず)をそれぞれ装着して、この連結具を介して空洞生成体50に連結することにより、第2配管40の途中に空洞生成体50を配設している。
【0033】
また、本実施形態では、図1のX−X端面図である図2(a)に示すように、狭小流路51の端面形状を長孔状としており、空洞53を生成する空洞生成体50の剥離壁面長さをできるだけ大きくしている。なお、狭小流路51の端面形状は長孔状に限定するものではなく、空洞53を生成する空洞生成体50の剥離壁面長さができるだけ大きくなる形状であればどのような形状であってもよく、特に、図2(b)に示すように、2つの狭小流路51',51'を設けてもよいし、2つ以上の狭小流路を設けてもよい。
【0034】
さらに、狭小流路51は、液体L1の流れ方向に沿って一様としており、狭小流路51の長さは、図1に示すように空洞53の下流側端部が狭小流路51内に収まる程度としているが、脱気のみを目的とする場合には、空洞53の下流側端部が狭小流路51よりも下流側にまで達するように、空洞53と比較して狭小流路51を短くしてもよい。
【0035】
空洞生成体50を構成する遮蔽壁52には、図1に示すように上流側の端縁に剥離点54として直角状の角部を設けている。このように、空洞生成体50には剥離点54を設けることにより、液体L1を狭小流路51の流路面から剥離させた固−液界面のはがれを生じさせ、空洞53を容易に生成することができる。なお、剥離点54は、直角状の角部によって構成する場合に限定するものではなく、たとえば鋭角となった先端を有する突起で構成することもできるし、スーパーキャビテーションによる空洞を生じさせることができるのであれば、先端が鈍角となった突起で構成することもできる。
【0036】
空洞生成体50は、この空洞生成体50で生成したスーパーキャビテーションに基づく空洞53から引きちぎられて生成される気泡中の気体が液体L1に再溶解することを抑制するために、空洞生成体50をタンク10に近接させて設けることが望ましい。
【0037】
さらに、タンク10に連通連結した第2配管40は、タンク10側の端部をタンク10内の液体L1の液面近傍に位置させて連通連結させて、タンク10内での気泡の液体L1との接触時間をできるだけ短くすることにより、気泡中の気体が液体L1に再溶解することを抑制することが望ましい。
【0038】
あるいは、例えば図3に示すように、タンク10'の内部には、液体L1の液面よりも上方位置に所定の傾斜角度のスロープ11を設け、このスロープ11の上面に第2配管40からタンク10'に返戻された気泡混じりの液体L1を流すことにより薄い液膜を形成し、気泡を大気に接触しやすくして液体L1に気泡中の気体が再溶解すること抑制してもよい。図3中、12は、第2配管40からタンク10'に返戻した液体L1の飛散を防止する飛散カバーである。
【0039】
タンク10内を減圧する減圧具60は真空ポンプとしてもよいが、本実施形態では、液体L2を貯留する補助タンク61と、この補助タンク61内の液体L2を下流方向に圧送して循環させる補助圧送手段としての補助ポンプ62と、補助タンク61に一端を連通連結するとともに他端を補助ポンプ62の吸引部における吸引口に連通連結する第1補助配管63と、補助ポンプ62の吐出部における吐出口に一端を連通連結するとともに他端を補助タンク61に連通連結する第2補助配管64と、この第2補助配管64の途中に設けてスーパーキャビテーションによる空洞66を生成する減圧用空洞生成体65と、この減圧用空洞生成体65で生成した空洞66とタンク10内における液体L1の液面上方の空間とを連通連結する連通管67とで減圧具60を構成している。
【0040】
補助タンク61は、所定量の液体L2を貯留可能とした容器であり、補助タンク61内に貯留した液体L2は外気に触れる状態となっていることが望ましい。液体L2は、水や油などの液状物であって、補助ポンプ62によって送給可能な液状物であれば何であってもよく、好ましくは、タンク10に収容した液体L1と同一物、あるいは、液体L1と混合しても劣化等の問題の生じない液状物であることが望ましい。
【0041】
補助タンク61には第1補助配管63の一端を連通連結して、この第1補助配管63から補助タンク61内の液体L2を送出可能としている。
【0042】
第1補助配管63の他端は補助ポンプ62の吸引口に連通連結して、第1補助配管63を介して補助ポンプ62により補助タンク61内の液体L2を吸引し、補助ポンプ62の吐出口から下流側に所定の圧力で圧送可能としている。なお、補助圧送手段は補助ポンプ62に限定するものではなく、補助タンク61内の液体L2を所定圧力として下流方向に圧送可能となっていればどのようなものであってもよい。
【0043】
補助ポンプ62の吐出口には第2補助配管64の一端を連通連結して、この第2補助配管64の他端を補助タンク61に連通連結することにより、補助タンク61→第1補助配管63→補助ポンプ62→第2補助配管64→補助タンク61の循環流路を構成し、補助タンク61内の液体L2を補助ポンプ62によって循環可能としている。図示していないが、この循環路にも、必要に応じてリリーフ弁や絞りを設けて、液体L2を所定の流量で安定的に送流可能としている。なお、減圧具60では液体L2を必ずしも循環させる必要はないが、液体L2の使用量をできるだけ少なくするために、液体L2を循環させている。
【0044】
第2補助配管64の途中に設ける減圧用空洞生成体65も、いわゆる円筒孔絞りであって、図1に示すように、第2補助配管64の内側面に内側に向けて膨出させて設けた遮蔽壁65bにより液体L2の流通面積を絞った狭小流路65aを形成している。遮蔽壁65bには、上流側の端縁に剥離点65cとして直角状の角部を設けている。本実施形態では、第2補助配管64は、途中で切断しており、切断端部分に減圧用空洞生成体65に連結するための連結具(図示せず)をそれぞれ装着して、この連結具を介して減圧用空洞生成体65に連結することにより、第2補助配管64の途中に減圧用空洞生成体65を配設している。
【0045】
減圧用空洞生成体65は、本実施例では、狭小流路65aを円筒穴としているが、空洞生成体50と同一構造の長孔状としてもよい。さらに、減圧用空洞生成体65には、狭小流路65aに連通連結させた貫通孔65dを設け、この貫通孔65dを狭小流路65a部分に生成する空洞66に連通可能としている。
【0046】
連通管67の一端は貫通孔65dに連通連結し、連通管67の他端はタンク10に連通連結して、連通管67を介して減圧用空洞生成体65とタンク10を連通連結している。特に、タンク10に連通連結する連通管67の端部は、タンク10のできるだけ上部に連通連結させることにより、タンク10内における液体L1の液面上方の空間と、減圧用空洞生成体65に生成した空洞66とを連通連結することとしている。
【0047】
補助ポンプ62によって補助タンク61内の液体L2を循環させて減圧用空洞生成体65に空洞66を生成すると、この空洞66内は大気圧と比較してはるかに低圧の状態となっており、連通管67を介して空洞66とタンク10内における液体L1の液面上方の空間とを連通させることによりタンク10内を減圧可能としている。
【0048】
このように、構成した脱気装置で液体L1の脱気を行う場合には、ポンプ20によってタンク10内の液体L1を循環させて空洞生成体50にスーパーキャビテーションによる空洞53を生成し、タンク10に空洞53から引きちぎられて形成された気泡を送給する。
【0049】
また、補助ポンプ62によって補助タンク61内の液体L2を循環させて減圧用空洞生成体65に空洞66を生成することにより、この空洞66によってタンク10内を減圧し、タンク10内に送給されて液体L1の液面で消失した気泡から放出された気体をタンク10内から除去することによって脱気効率を向上させている。
【0050】
図4は、減圧具60の有無による脱気効率の向上効果を示すグラフである。ここで、液体L1は水であって、黒丸は減圧具60が無く、タンク10内を大気圧としている場合であり、白丸は減圧具60によってタンク10内を大気圧の約半分の50kPaとした場合である。また図5はタンク10の減圧度を下げることによって水の酸素溶解量が減少すること、すなわち脱気度が向上することを示すグラフであり、タンク10の内圧が40kPaの場合で、酸素溶解量Doは1ppm(質量比)まで減少することがわかる。このように、タンク10内を減圧することにより脱気効率が明らかに向上していることがわかる。
【0051】
特に、タンク10内が減圧されていることによって、第2配管40からタンク10内に流入した気泡は膨張し、この膨張にともなって浮力が増すことから、速やかに液体L1の液面にまで気泡を浮上させることができ、気泡内の気体が液体L1に再溶解することを抑制して、脱気効率を向上させることができるとともに、表面からの溶け込みも抑制できる。
【0052】
なお、タンク10内を減圧する場合には、ポンプ20によって空洞生成体50への液体L1の送給を開始すると同時にタンク10内の減圧を開始してもよいが、この場合、ポンプ20に振動が生じ、騒音が発生することがある。これは、液体L1に溶存した気体の溶存量が多い場合に、脱気の開始直後に大量の気体の析出が生じていることが影響しているものと思われる。
【0053】
そこで、タンク10内の減圧の開始にともなって振動あるいは騒音が生じる場合には、ポンプ20によって空洞生成体50への液体L1の送給を開始して、液体L1が若干脱気されてからタンク10内の減圧を開始することにより、振動及び騒音の発生を低減させることができる。より具体的には、図4に示すように、タンク10内を減圧しなくても5分程度で液体L1を50%程度脱気できるので、その後、タンク10内の減圧を開始するとよい。
【0054】
本実施形態では、タンク10には所定量の液体L1が収容されているだけであるが、例えばタンク10を油圧回路の作動油の貯油タンクとして、タンク10に作動油の送給用配管及び返戻用配管を連通連結させて常に脱気処理されている作動油を利用可能とすることもできるし、あるいは、タンク10に適宜の配管を介して別の貯留タンクを接続して、タンク10内の脱気された液体L1と貯留タンク内の十分に脱気されていない液体L1との入れ替えを行いながら液体L1を利用可能とすることもできる。
【0055】
このように、脱気装置では、タンク10内の減圧手段としてスーパーキャビテーションによる空洞66を利用することにより、真空ポンプなどの高価な機材を用いることなく減圧手段を構成することができ、低コスト化及びメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0056】
また、脱気装置においては、減圧用空洞生成体65において狭小流路65aに連通連結させて設けた貫通孔65dと同様に、空洞生成体50にも空洞53と連通連結される貫通孔(図示せず)を設けて、この貫通孔を介して空洞53に窒素などの不活性な気体を送給してもよい。
【0057】
このように、空洞生成手段である空洞生成体50に生成された空洞に特定の気体を送給することにより、液体にその特定気体を溶解させる一方で、液体に溶解する他の気体の脱気効率を向上させることができる。なお、30Lの水道水に対して、空洞生成体50に生成された空洞に約1気圧の窒素を供給しながら脱気を行った場合、図6に示すように、30分後に酸素溶解度Doを0.5ppm以下とすることができた。なお、この場合、タンク10の減圧を行っておらず、窒素を供給するだけで酸素溶解度Doをさらに低下させることができている。
【0058】
図7は、上述した脱気装置をベースとした脱気・注気装置の概略模式図であり、液体L1に溶解させる所定の気体を送給する気体送給手段を設けている点が異なるだけである。したがって、上述した脱気装置と同一構成物については同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0059】
脱気・注気装置の場合には、液体L1に所定の気体を溶解させるために、空洞生成体50'では、スーパーキャビテーションによって大きくて安定した空洞53を生成できる狭小流路51を設けるとともに、狭小流路51に連通連結させた貫通孔55を設け、この貫通孔55を狭小流路51部分に生成した空洞53に連通可能としている。ここで、大きくて安定した空洞53を生成できる狭小流路51とは、液体L1の粘性や送流条件などによってそれぞれ異なるが、液体L1を所定の流量で流した場合に、スーパーキャビテーションによって生成された空洞53と貫通孔55とが連通していればよい。
【0060】
貫通孔55には、一端を液体L1に溶解させる気体を収容したガスタンク70に連通連結した第1ガス配管71の他端を連通連結して、スーパーキャビテーションによる空洞53に所定の気体を送給可能としている。第1ガス配管71の途中には第1切替弁72を設けており、この第1切替弁72は脱気時には閉弁状態とし、注気時には開弁状態としている。これらが気体送給手段である。なお、第1ガス配管71では、減圧弁などを用いて所定の圧力としながらガスタンク70から所定の気体を送給可能としている。
【0061】
注気時、ガスタンク70から送給された気体が空洞53内に充填されることにより、液流によって空洞53から引きちぎられて形成される気泡中に所定の気体を封入させることができる。特に、気泡中に封入された所定の気体は、脱気の場合に形成される気泡内の気体と比較して圧力が高く、液体L1への気体の溶解が生じやすくなっており、効果的に溶解させることができる。
【0062】
さらに、脱気・注気装置では、第2配管40を空洞生成手段である空洞生成体50'の下流側で脱気時流通配管41と注気時流通配管42に分岐させており、脱気時流通配管41は、注気時流通配管42よりもタンク10内における液体L1の液面に近接させてタンク10に連通連結している。
【0063】
脱気時流通配管41の途中には第2切替弁43を設けており、この第2切替弁43は脱気時には開弁状態とし、注気時には閉弁状態としている。また、注気時流通配管42の途中には第3切替弁44を設けており、この第3切替弁44は脱気時には閉弁状態とし、注気時には開弁状態としている。なお、本実施形態では、第2切替弁43と第3切替弁44とで脱気時と注気時との流路切り替えを行っているが、2方向弁などの1つの切替弁を用いてもよい。
【0064】
脱気時流通配管41を、注気時流通配管42よりもタンク10内における液体L1の液面に近接させてタンク10に連通連結することにより、脱気時には注気時流通配管42からタンク10に流入した気泡を速やかに液体L1の液面まで浮上させて、気泡中の気体が液体L1に再溶解することを抑制する一方で、注気時には、注気時流通配管42からタンク10に流入した気泡が液体L1の液面まで浮上するのに要する時間をできるだけ長くして、気泡中の気体の液体L1への溶解効率を向上させている。
【0065】
さらに、脱気・注気装置では、ガスタンク70とタンク10とを連通連結する第2ガス配管73を設けて、注気時にタンク10内における液体L1の液面上方の空間にガスタンク70から送給された気体を送り込んで、タンク10内の液体L1を所定の圧力まで加圧することとしている。第2ガス配管73でも、減圧弁などを用いて所定の圧力としながらガスタンク70から所定の気体を送給可能としている。第2ガス配管73の途中には第4切替弁74を設けており、この第4切替弁74は脱気時には閉弁状態とし、注気時には開弁状態としている。
【0066】
液体L1に溶解させる気体を用いてタンク10内を加圧することにより、液体L1に溶解させる気体の液体L1への溶解度を向上させて、より短時間で、より多くの気体を溶解させることができ、溶解効率の向上を図ることができる。なお、タンク10は加圧状態となるので、適宜のリリーフ弁などを設けておくことが望ましい。
【0067】
第2ガス配管73からタンク10内に送給する気体の圧力と、第1ガス配管71から空洞53に送給する気体の圧力とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0068】
図7に示すように、タンク10と減圧具60を連通連結した連通管67には第5切替弁75を設けており、脱気時には開弁状態とし、注気時には閉弁状態として、加圧状態としたタンク10の圧力が減圧具60に影響を与えることを防止している。なお、当然ながら、注気時には減圧具60は動作を停止させている。
【0069】
本実施形態では、ガスタンク70から送給した気体を利用してタンク10内の液体L1を加圧しているが、例えばタンク70の気密性を保ちながらタンク70の内容積を減少させることによって液体L1を加圧してもよく、タンク70にピストン状あるいはベローズ状の可動壁を設けて、可動壁を移動させることによりタンク70の内容積を減少させて液体L1を加圧してもよい。
【0070】
脱気・注気装置は、このように短時間で非処理液体を脱気した後に、短時間で所要の気体を溶解させることができ、製造効率の向上を図ることができる。
【0071】
具体的には、本実施形態の脱気・注気装置において、30Lの水に対して異なる圧力で二酸化炭素を溶解させた場合に、図8に示すように、10分以上でpHの変動がほとんどなくなり、二酸化炭素をほぼ飽和溶解させることができている。
【符号の説明】
【0072】
10 タンク
20 ポンプ
30 第1配管
40 第2配管
50 空洞生成体
51 狭小流路
52 遮蔽壁
53 空洞
54 剥離点
60 減圧具
61 補助タンク
62 補助ポンプ
63 第1補助配管
64 第2補助配管
65 減圧用空洞生成体
65a 狭小流路
65b 遮蔽壁
65c 剥離点
65d 貫通孔
66 空洞
67 連通管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留するタンクと、
このタンク内の液体を下流方向に圧送する圧送手段と、
前記タンクに一端を連通連結するとともに他端を前記圧送手段の吸引部に連通連結する第1配管と、
前記圧送手段の吐出部に一端を連通連結するとともに他端を前記タンクに連通連結する第2配管と、
この第2配管の途中に設けてスーパーキャビテーションによる空洞を生成する空洞生成手段と、
前記タンク内を減圧する減圧手段と
を有する脱気装置。
【請求項2】
前記減圧手段は、
液体を貯留する補助タンクと、
この補助タンク内の液体を下流方向に圧送する補助圧送手段と、
前記補助タンクに一端を連通連結するとともに他端を前記補助圧送手段の吸引部に連通連結する第1補助配管と、
前記補助圧送手段の吐出部に一端を連通連結するとともに他端を前記補助タンクに連通連結する第2補助配管と、
この第2補助配管の途中に設けてスーパーキャビテーションによる空洞を生成する減圧用空洞生成体と、
この減圧用空洞生成体で生成した空洞と前記タンク内における前記液体の液面上方の空間とを連通連結する連通管と
を有することを特徴とする請求項1に記載の脱気装置。
【請求項3】
前記空洞生成手段で生成された空洞に所定の気体を送給して、前記液体に前記気体を溶解させていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の脱気装置。
【請求項4】
液体を貯留するタンクと、
このタンク内の液体を下流方向に圧送する圧送手段と、
前記タンクに一端を連通連結するとともに他端を前記圧送手段の吸引部に連通連結する第1配管と、
前記圧送手段の吐出部に一端を連通連結するとともに他端を前記タンクに連通連結する第2配管と、
この第2配管の途中に設けてスーパーキャビテーションによる空洞を生成する空洞生成手段と、
前記空洞内に所定の気体を送給する気体送給手段と
を有し、前記第1配管と前記第2配管に前記液体を送流させて循環させながら前記液体を脱気した後に、前記気体送給手段により前記空洞内に前記気体を送給して前記液体に溶解させる脱気・注気装置であって、
前記液体を脱気する際に前記タンク内を減圧する減圧手段を設けた脱気・注気装置。
【請求項5】
前記減圧手段は、
液体を貯留する補助タンクと、
この補助タンク内の液体を下流方向に圧送する補助圧送手段と、
前記補助タンクに一端を連通連結するとともに他端を前記補助圧送手段の吸引部に連通連結する第1補助配管と、
前記補助圧送手段の吐出部に一端を連通連結するとともに他端を前記補助タンクに連通連結する第2補助配管と、
この第2補助配管の途中に設けてスーパーキャビテーションによる空洞を生成する減圧用空洞生成体と、
この減圧用空洞生成体で生成した空洞と前記タンク内における前記液体の液面上方の空間とを連通連結する連通管と
を有することを特徴とする請求項4に記載の脱気・注気装置。
【請求項6】
前記第2配管は、前記空洞生成手段の下流側で脱気時流通配管と注気時流通配管に分岐させて、前記注気時流通配管は、前記脱気時流通配管よりも前記タンクの底側において前記タンクに連通連結し、脱気時には、前記液体を前記脱気時流通配管に流通させ、注気時には、前記液体を前記注気時流通配管に流通させていることを特徴とする請求項5に記載の脱気・注気装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−17704(P2010−17704A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135673(P2009−135673)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(308014260)
【出願人】(308015267)
【Fターム(参考)】