説明

脱気装置

【課題】液封式真空ポンプを使用した脱気装置において、被処理液体の節約とともに装置の小型化および構成の簡略化を図る。
【解決手段】被処理液ライン2と処理液ライン3とを接続した脱気部4に、真空吸引ライン5を介して液封式真空ポンプ6を接続した脱気装置1であって、前記液封式真空ポンプ6と前記被処理液ライン2とを封液供給ライン13で接続し、前記液封式真空ポンプ6からの使用済封液を回収する封液回収タンク16を設け、この封液回収タンク16と前記被処理液ライン2とを封液還流ライン17で接続したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被処理液中の溶存気体を除去する脱気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラ,温水器および冷却器などの冷熱機器類への給水ラインには、これら機器類の内部腐食防止を目的とした脱気装置が組み込まれている。また、近年では、ビルおよびマンションなどの建造物における給配水管の赤水防止対策としても前記脱気装置が用いられている。
【0003】
前記脱気装置は、脱気膜モジュールや脱気塔などで構成される脱気部に被処理水ラインと処理水ラインとを接続し、前記被処理水ラインから供給された被処理水中の溶存気体を、前記脱気部を真空引きすることによって除去している。
【0004】
前記脱気部は、水封式真空ポンプによって真空引きされており、この水封式真空ポンプで使用される封水は、前記被処理水ラインから供給され、使用済みの封水は系外へ排出されている。
【0005】
ところで、多量の水を使用する大型ボイラやビルの給水系などにおいては、前記脱気装置をフル運転する結果、前記水封式真空ポンプで使用される封水も相当な量となる。そこで、水を節約するため、前記水封式真空ポンプへ封水を供給する封水ラインを接続した封水タンクを設け、この封水タンクと前記被処理水ラインとを封水供給ラインで接続するとともに、前記水封式真空ポンプから排出される排気と使用済封水とを分離する分離タンクを設け、この分離タンクと前記給水ラインとを前記封水還流ラインで接続した脱気装置が特許文献1において提案されている。
【特許文献1】特開平9−269105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載された脱気装置では、前記還流ラインから前記被処理水ラインへ使用済封水を還流させるので、水を節約することができる。しかし、前記封水タンクと前記分離タンクとを備えているため、装置が大型化する。しかも、前記封水タンクには、この封水タンク内の水位を制御するためにボールタップが設けられているため、前記封水タンクを必要以上に大きくせざるを得なかった。
【0007】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、液封式真空ポンプを使用した脱気装置において、被処理液体の節約とともに装置の小型化および構成の簡略化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、被処理液ラインと処理液ラインとを接続した脱気部に、真空吸引ラインを介して液封式真空ポンプを接続した脱気装置であって、前記液封式真空ポンプと前記被処理液ラインとを封液供給ラインで接続し、前記液封式真空ポンプからの使用済封液を回収する封液回収タンクを設け、この封液回収タンクと前記被処理液ラインとを封液還流ラインで接続したことを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明では、前記液封式真空ポンプへは、前記被処理液ラインから前記封液供給ラインを介して封液が供給される。そして、前記液封式真空ポンプからの使用済封液は、排気とともに前記封液回収タンクへ回収され、この封液回収タンクにおいて気液分離される。気液分離された使用済封液は、前記封液還流ラインを介して前記被処理液ラインへ還流される。
【0010】
さらに、請求項2に記載の発明は、請求項1の前記封液回収タンクに液位センサを設け、この液位センサの検出結果に基づいて制御される封液還流ポンプを前記封液還流ラインに設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明では、前記液位センサの検出結果に基づいて、前記封液還流ポンプの運転が制御され、前記封液回収タンク内の使用済封液が前記封液還流ラインを介して前記被処理液ラインへ還流される。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載された発明によれば、使用済封液を前記被処理液ラインへ還流させることにより被処理液体を節約することができるとともに、前記被処理液ラインから前記液封式真空ポンプへの封液の供給を、前記封液供給ラインを介して行うようにしたので、装置の小型化および構成の簡略化を図ることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、前記液位センサの検出結果に基づいて、前記封液還流ポンプの運転を制御することにより、前記封液回収タンク内の液位を制御することができるとともに、前記封液還流ポンプによる消費電力を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
つぎに、この発明の実施の形態について図面に基づいて詳細に説明する。
(第一実施形態)
まず、この発明に係る脱気装置の第一実施形態について説明する。図1は、この発明に係る脱気装置の第一実施形態の構成を示す概略的な説明図であり、ボイラへの給水ラインに配置された脱気装置を例示しており、図2は図1に示す脱気装置の一部拡大図である。
【0015】
図1に示す脱気装置1は、被処理液としての原水が流通する被処理液ライン2と、脱気処理された処理液が流通する処理液ライン3とを接続した脱気部4を備え、この脱気部4に、真空吸引ライン5を介して液封式真空ポンプ6が接続されている。
【0016】
前記脱気部4へは、前記被処理液ライン2に設けられた被処理液供給ポンプ7により、被処理液が供給されるようになっている。前記脱気部4は、特願2006−13552号の第一実施形態と同一構成となっており、その概略構成を説明すると、底部に前記被処理液ライン2と前記処理液ライン3とが接続されるとともに、前記真空吸引ライン5が接続された処理槽8を備えている。前記処理槽8内には、前記被処理液ライン2と接続されて底部から上方へ向かって前記処理槽8の軸方向の中央部付近まで延びる供給管9が配設されている。前記供給管9の先端には、処理槽8内へ被処理液を噴出するノズル10が接続されている。すなわち、前記ノズル10は、前記処理槽8の軸方向の中央部に噴出方向が上向きとなるように配設されている。
【0017】
前記処理槽8内において、前記ノズル10よりも上方の空間は、被処理液の脱気処理部11に設定されている。一方、前記ノズル10よりも下方の空間は、処理液の貯留部12に設定されている。
【0018】
前記脱気部4では、前記処理槽8内が、前記液封式真空ポンプ6によって減圧状態に維持されており、このような状態の前記処理槽8内に、前記ノズル10から上向きに噴出された被処理液が、液滴として前記脱気処理部11を上昇しながら脱気されるようになっている。つぎに、被処理液の液滴は、前記処理槽8の側部または天井部と衝突すると落下液となり、落下液となった被処理液は、流下液として下降しながらさらに脱気された後、前記処理槽8の底部に貯留されるようになっている。そして、貯留された被処理液は、前記貯留部12において、液面付近に存在しているときにさらに脱気され、最終的に処理液として確保されるようになっている。
【0019】
ここで、前記処理槽8内の上部には、前記特願2006−13552号の第二実施形態と同様に、噴出液と落下液とを衝突させ、被処理液の落下を遅延させる脱気促進部が設けられていてもよい(図示省略)。
【0020】
前記液封式真空ポンプ6と前記被処理液ライン2は、封液供給ライン13で接続されている。この封液供給ライン13は、前記被処理液ライン2における前記被処理液供給ポンプ7よりも下流側と接続されており、また前記液封式真空ポンプ6への封液供給圧を一定にするために、定流量弁14が設けられている。
【0021】
前記液封式真空ポンプ6からの使用済封液は、この液封式真空ポンプ6と封液回収ライン15を介して接続された封液回収タンク16へ回収されるようになっている。前記封液回収タンク16は、前記被処理液ライン2と封液還流ライン17で接続されている。前記封液還流ライン17は、前記被処理液ライン2における前記被処理液供給ポンプ7よりも上流側と接続されており、封液還流ポンプ18が設けられている。
【0022】
前記封液回収タンク16には、図2に示すように、液位センサとして第一フロート式スイッチ19と第二フロート式スイッチ20とが設けられている(図1においては図示省略)。前記各フロート式スイッチ19,20は、信号線21,21を介して制御手段22と接続されている。前記制御手段22は、信号線23を介して前記封液還流ポンプ18とも接続されており、前記各フロート式スイッチ19,20からの入力信号に基づいて、前記封液還流ポンプ18を制御するようになっている。
【0023】
さて、前記脱気装置1では、運転時に前記液封式真空ポンプ6で使用する封液が、前記被処理液ライン2から前記封液供給ライン13を介して供給される。そして、前記液封式真空ポンプ6の使用済封液は、排気とともに前記封液回収ライン15を介して前記封液回収タンク16へ回収され、この封液回収タンク16において気液分離される。
【0024】
ここで、前記封液回収タンク16内の液位制御について説明する。前記封液回収ライン15からは、一定量の封液が前記封液回収タンク16内へ流入するようになっており、前記封液回収タンク16内の液位が、前記第一フロート式スイッチ19の位置まで上昇すると、この第一フロート式スイッチ19からの入力信号に基づいて、前記制御手段22が前記封液還流ポンプ18の運転を開始させる。これにより、前記封液回収タンク16内の使用済封液は、前記封液還流ライン17を介して前記被処理液供給ポンプ7よりも上流側の前記被処理液ライン2へ還流する。
【0025】
一方、前記封液回収タンク16内の液位が、前記第二フロート式スイッチ20の位置まで下がると、この第二フロート式スイッチ20からの入力信号に基づいて、前記制御手段22が前記封液還流ポンプ18の運転を停止させる。
【0026】
前記脱気装置1によれば、使用済封液を前記被処理液ライン2へ還流させることにより、被処理液体を節約することができるとともに、前記被処理液ライン2から前記液封式真空ポンプ6への封液の供給を前記封液供給ライン13を介して行うようにしたので、装置の小型化および構成の簡略化を図ることができる。また、前記封液回収タンク16内の液位制御のために必要な液位センサをフロート式スイッチとしたので、前記封液回収タンク16を必要以上に大きくする必要はなく、装置の小型化の妨げとなることはない。
【0027】
また、前記各フロート式スイッチ19,20からの入力信号に基づいて、前記制御手段22が前記封液還流ポンプ18の運転を制御することにより、前記封液回収タンク16内の液位を制御することができ、また前記封液還流ポンプ18による消費電力を抑えることができる。
【0028】
(第二実施形態)
つぎに、この発明に係る脱気装置の第二実施形態について説明する。図3は、この発明に係る脱気装置の第二実施形態の構成を示す概略的な説明図であり、第一実施形態と同様、ボイラへの給水ラインに配置された脱気装置を例示している。図3において、第一実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0029】
この第二実施形態の脱気装置30は膜式脱気装置であり、前記被処理液ライン2,前記処理液ライン3および前記真空吸引ライン5が接続されている脱気部31は、複数の中空糸状脱気膜からなる脱気膜モジュール(図示省略)を備え、各脱気膜へ前記被処理液ライン2から被処理液を流通させて、前記真空吸引ライン5から前記液封式真空ポンプ6によって前記脱気膜モジュール内を真空吸引することで被処理液中の溶存気体を脱気するようになっている。
【0030】
さて、前記脱気装置30においても、前記第一実施形態と同様に、前記被処理液ライン2から供給された封液が前記封液回収タンク16へ回収された後、前記被処理液ライン2へ還流される。また、前記封液回収タンク16内の液位制御も前記第一実施形態と同様に行われる。したがって、前記脱気装置30によっても、前記第一実施形態と同一の効果を得ることができる。
【0031】
ここで、前記各実施形態において、前記封液回収タンク16には、液位センサとして、前記第一フロート式スイッチ19と前記第二フロート式スイッチ20とが設けられているが、フロート式スイッチが一つだけ設けられていてもよい(図示省略)。この場合、前記フロート式スイッチよりも液位が下がったとき、前記制御手段22は前記封液還流ポンプ18の運転を停止させ、一方で前記フロート式スイッチの位置まで液位が上昇したとき、前記制御手段22は前記封液還流ポンプ18の運転を開始させる。また、前記封液回収ライン15から前記封液回収タンク16内への封液の流入量は一定量となっているので、前記制御手段22は、前記フロート式スイッチの位置まで液位が上昇してから所定時間経過後に前記封液還流ポンプ18の運転を開始させてもよい。
【0032】
また、前記封液回収タンク16に設けられる液位センサは、たとえば電極式レベルスイッチおよび超音波式レベルスイッチなどの接点出力式液位センサであってもよく、また静電容量式レベルセンサおよび超音波式レベルセンサなどの伝送出力式液位センサであってもよい。
【0033】
その他、この発明は前記実施の形態に限られるものでないことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明に係る脱気装置の第一実施形態の構成を示す概略的な説明図である。
【図2】図1に示す脱気装置の一部拡大図である。
【図3】この発明に係る脱気装置の第二実施形態の構成を示す概略的な説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1,30 脱気装置
2 被処理液ライン
3 処理液ライン
4,31 脱気部
5 真空吸引ライン
6 液封式真空ポンプ
13 封液供給ライン
16 封液回収タンク
17 封液還流ライン
18 封液還流ポンプ
19 第一フロートスイッチ(液位センサ)
20 第二フロートスイッチ(液位センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液ラインと処理液ラインとを接続した脱気部に、真空吸引ラインを介して液封式真空ポンプを接続した脱気装置であって、
前記液封式真空ポンプと前記被処理液ラインとを封液供給ラインで接続し、前記液封式真空ポンプからの使用済封液を回収する封液回収タンクを設け、この封液回収タンクと前記被処理液ラインとを封液還流ラインで接続したことを特徴とする脱気装置。
【請求項2】
前記封液回収タンクに液位センサを設け、この液位センサの検出結果に基づいて制御される封液還流ポンプを前記封液還流ラインに設けたことを特徴とする請求項1に記載の脱気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−253140(P2007−253140A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84684(P2006−84684)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】