説明

脱気装置

【課題】小型化、軽量化をしても、減圧時に減圧チャンバーが変形し難い脱気装置を提供する。
【解決手段】脱気装置1は、減圧チャンバー2と、脱気エレメント4と、を備え、柱状の支持部3を有する。減圧チャンバー2は、液体流入口11、液体流出口12および真空吸引口13を有する。脱気エレメント4は、減圧チャンバー2に収容されている。脱気エレメント4は、液体流入口11から流入して液体流出口12から流出する液体が通過する気体透過性チューブ45を有する。柱状の支持部3は、真空吸引口13からの吸引により減圧チャンバー2内が減圧されたときの減圧チャンバー2の変形が緩和されるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体に含まれる気体を脱気する脱気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶存ガスを含む液体が管体を流通すると、管体が腐食することがある。また、溶存ガスは、液体から気泡が発生する原因となり、発生した気泡は、液体と他の媒体との間の熱交換量(全体的な熱交換率)を低下させることがある。このため、液体の使用目的によっては液体の脱気が必要となる。
【0003】
液体(被脱気液体)の脱気には、例えば、特許文献1に開示されている脱気装置(図11を参照)を用いることができる。図11に示す脱気装置901は、減圧チャンバー902と、減圧チャンバー902内に収容された気体透過性チューブ904とを備える。減圧チャンバー902は、気体透過性チューブ904の各端部を減圧チャンバー902に連結するための液体流入口911および液体流出口912と、減圧チャンバー902内を減圧するための外部のポンプなどを取り付けるための真空吸引口913とを有する。この脱気装置901では、被脱気液体を気体透過性チューブ904に流しつつ減圧チャンバー902内を減圧することにより、被脱気液体を脱気できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−333206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような脱気装置を小型化および軽量化することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
脱気装置の小型化および軽量化のためには、減圧チャンバーの厚さを薄くすることが考えられる。また、同目的で、減圧チャンバーの材料を、加工し易くかつ軽い材料(例えば樹脂)から選定することも考えられる。しかし、本発明者らが検討したところ、減圧チャンバーの厚さを薄くすると、減圧チャンバー内を減圧する際に減圧チャンバーが変形し(内側に歪み)、減圧チャンバーのシール性が低下する(気密が低下する)ことがあった。減圧チャンバーの材料として樹脂を採用した場合にも、同様の問題が生じることがあった。
【0007】
本発明者らは、柱状の支持部を利用することにより減圧チャンバーの変形を緩和できることを見出した。本発明は、このような観点からなされたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、液体流入口、液体流出口および真空吸引口を有する減圧チャンバーと、前記減圧チャンバー内に収容され、前記液体流入口から流入して前記液体流出口から流出する液体が通過する気体透過性チューブを有する脱気エレメントと、を備え、前記真空吸引口からの吸引により前記減圧チャンバー内が減圧されたときの前記減圧チャンバーの変形が緩和されるように配置された柱状の支持部を有し、前記柱状の支持部が、前記減圧チャンバーの相対する内面に両端面が接するように前記減圧チャンバー内に配置された柱状の支持部材により構成され、または前記減圧チャンバーの相対する内面の一方の一部が当該相対する内面の他方側へと突出して当該相対する内面の他方と接するように前記減圧チャンバーを構成する壁材が変形して形成されている、脱気装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、柱状の支持部が減圧チャンバーの変形を緩和するように作用する。したがって、本発明の脱気装置によれば、減圧チャンバー(特に小型化および軽量化された減圧チャンバー)内の減圧時であっても、減圧チャンバーの変形に伴うシール性の低下が生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る脱気装置の第1実施形態を示す斜視図
【図2】図1に示す脱気装置の分解斜視図
【図3】図1に示す脱気装置の半断面図
【図4】図1に示す脱気装置の半断面図
【図5】支持部材の一例の斜視図(図5A)および断面図(図5B,C)
【図6】支持部材の別の一例の斜視図(図6A)および断面図(図6B,C)
【図7】本発明に係る脱気装置の第2実施形態を示す斜視図
【図8】図7に示す脱気装置の分解斜視図
【図9】図7に示す脱気装置の半断面図
【図10】図7に示す脱気装置の半断面図
【図11】従来の脱気装置を説明するための模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1〜図4に、本発明の第1実施形態に係る脱気装置である脱気装置1を示す。図1は、脱気装置1の斜視図である。図2は、脱気装置1の分解斜視図である。図3は、図1に示す脱気装置1を直線III−IIIで切断した半断面図である。図4は、図1に示す脱気装置1を直線IV−IVで切断した半断面図である。
【0013】
脱気装置1は、減圧チャンバー2と、支持部材3と、脱気エレメント4とを備えている。減圧チャンバー2には、液体(被脱気液体)が流通する液体流入口11および液体流出口12、ならびに減圧装置を接続する真空吸引口13が形成されている。支持部材3は、減圧チャンバー2内に配置されている。脱気エレメント4は、減圧チャンバー2内に収容されており、筒状のアダプタ141,142を介して液体流入口11および液体流出口12に接続されている。真空ポンプなどの減圧装置を真空吸引口13に接続し、減圧チャンバー2内を排気しながら脱気エレメント4に液体を流すことにより、液体から溶存ガスが除去される。
【0014】
脱気エレメント4は、気体透過性チューブ45を有している(図2参照)。脱気エレメント4は一本の気体透過性チューブ45により構成されていてもよいが、本実施形態では、脱気エレメント4は、多数本の気体透過性チューブ45を束ねたチューブ束40により構成されている。これにより、気体透過性チューブ45全体の大きな表面積を確保し、減圧チャンバー2の単位容積当たりの液体の大きな脱気量を確保している。各気体透過性チューブ45は、フッ素樹脂粉末を介してチューブ束40の両端に被せた樹脂パイプ(図示省略)により互いに熱融着している。
【0015】
気体透過性チューブ45の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などが適している。
【0016】
フッ素樹脂粉末としては、PTFE、PFA、FEP、ETFE、PCTFEなどの粉末が適している。樹脂パイプは、フッ素樹脂粉末の材料と同じ材料から作製することが好ましい。
【0017】
脱気エレメント4は、コイル状に巻回されている。これにより、液体の脱気量の向上を図っている。また、本実施形態では、脱気エレメント4は、支持部材3を取り巻くことにより、減圧チャンバー2内における支持部材3の位置を固定している。また、このような形状を有する脱気エレメント4は、支持部材3に巻き付けることにより作製することもできる。これにより、脱気エレメント4の巻回作業が容易となる。ただし、脱気エレメント4と支持部材3とは離間していてもよい。
【0018】
本実施形態では、脱気エレメント4は、支持部材3の周囲に一周巻回されている。ただし、脱気エレメント4は、支持部材3の周囲に多重に巻回されていてもよい。脱気エレメント4が多重に巻回されていることは、液体の脱気量の向上の観点から好ましい。別の言い方をすれば、所定の脱気量を有する脱気エレメントを作製する場合は、脱気エレメントの巻回数を増やすことにより、脱気エレメント、ひいては脱気装置全体の小型化が可能となる。また、脱気エレメント4が多重に巻回されていることは、支持部材3の位置の安定性の観点からも好ましい。他方、脱気エレメント4の形状の簡素化の観点から、脱気エレメント4は、U字型などの他の形状を有していてもよい。
【0019】
アダプタ141,142は中空の円柱状の形状を有している。アダプタ141,142の材料は限定されないが、これらはPFA、FEPなどの熱可塑性のフッ素樹脂から構成されていることが好ましい。
【0020】
減圧チャンバー2は、開口部26を有するチャンバー本体20と、蓋体25とを含んでいる。蓋体25は、開口部26に嵌め込まれて開口部26を塞いでいる。本実施形態では、減圧チャンバー2は、全体として略直方体の外観形状を有している。
【0021】
チャンバー本体20は、筒状の側部23と、開口部26の反対側に配置されている底部24とから構成されている(図3および図4参照)。側部23の内面には、段部27が設けられている。段部27によれば、蓋体25が開口部26に嵌め込まれた際の蓋体25の位置合わせが容易となる。さらに、段部27によれば、減圧チャンバー2内が減圧されたときに、蓋体25が段部27よりもチャンバー本体20の中央側に引き込まれるおそれが低減する。
【0022】
蓋体25には、液体流入口11、液体流出口12および真空吸引口13が形成されている。液体流入口11には凹部11dが形成され、凹部11dにはOリング51が嵌め込まれている。液体流出口12には凹部12dが形成され、凹部12dにはOリング52が嵌め込まれている。蓋体25の側面には凹部25dが形成され、凹部25dにはOリング60が嵌め込まれている(図2参照)。Oリング51,52,60により、減圧チャンバー2の気密性が向上する。また、真空吸引口13はテーパねじである。
【0023】
本実施形態では、減圧チャンバー2の材料は樹脂である。耐久性や耐薬品性、軽量化の観点から、減圧チャンバー2の材料として好適な樹脂として、PTFE、PFAなどのフッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などが挙げられる。ただし、減圧チャンバー2の材料として、発泡体、金属、ガラスなどを採用してもよい。また、減圧チャンバー2の材料として、上記材料を組み合わせた材料を採用してもよい。なお、本実施形態では、減圧チャンバー2を構成しているチャンバー本体20の材料と蓋体25の材料とが同じであるが、これらの材料は異なっていてもよい。
【0024】
チャンバー本体20の厚さは特に限定されないが、例えば1.5〜6mmである。本実施形態では、支持部材3によりチャンバー本体20の変形が緩和されるため(詳細は後述)、チャンバー本体20の厚さを1.5〜4mmにしてもよい。同様に、蓋体25の厚さは、例えば5〜12mmであるが、本実施形態によれば、5〜10mmにすることもできる。つまり、本実施形態によれば、減圧チャンバー2の厚さを1.5〜10mmにすることができる。
【0025】
減圧チャンバー2の内面は、平面により構成されている。具体的には、チャンバー本体20の底部24は、長方形の内面124を有する。また、側部23は、段部27よりも底部24側において、相対する長方形の内面123a,123bと、相対する長方形の内面173a,173bとを有する。
【0026】
より具体的には、内面124は、短辺の長さがL1であり、長辺の長さがL2である長方形の形状を有する。内面123a,123bは、短辺の長さがL2であり、長辺の長さがL3である長方形の形状を有する。内面173a,173bは、短辺の長さがL1であり、長辺の長さがL3である長方形の形状を有する。L1,L2およびL3は、L1<L2<L3の関係を有する。また、内面124の面積S1、内面123a(123b)の面積S2および内面173a(173b)の面積S3は、S1<S3<S2の関係を有する。つまり、内面123a(123b)は、減圧チャンバー2の内面における面積が最大の平面である。
【0027】
支持部材3は、柱状の部材である。支持部材3の材料は、減圧チャンバー2の材料と同様に選定できる。本実施形態では、支持部材3の材料として、減圧チャンバー2の材料と同じ材料を採用している。支持部材3の両端面103a,103bは、減圧チャンバー2の相対する内面123a,123bに接している。支持部材3は、このように配置されることにより、真空吸引口13からの吸引により減圧チャンバー2内が減圧されたときの減圧チャンバー2の変形を緩和する柱状の支持部として作用する。
【0028】
支持部材3の形状は特に限定されず、角柱状、円柱状などの形状を採ることができる。ただし、軸方向に垂直な方向の剛性の観点からは、支持部材3は、例えば図5に示すような中空の円柱状(筒状)の形状、または、図6に示すような中実の円柱状の形状を有していることが好ましい。本実施形態では、支持部材3は、中空の円柱状の形状を有している。
【0029】
なお、支持部材3が中空の円柱状の形状を有する場合と中実の円柱状の形状を有している場合とを比べると、中空の円柱状の形状を有する場合は、脱気装置1を軽量化できる点で有利である。他方、支持部材3が中実の円柱状の形状を有している場合は、減圧チャンバー2内の空間の体積が小さくなり、減圧すべき気体の体積が小さくなるので、減圧チャンバー2内の減圧に要する時間が短くなる点で有利である。
【0030】
支持部材3の寸法は特に限定されない。減圧チャンバー2の変形の緩和と、脱気エレメント4用の領域の確保とを両立させる観点からは、例えば、支持部材3の両端面103a,103bが、当該両端面103a,103bが接している相対する内面(本実施形態では内面123a,123b)の面積の5〜30%を占める領域を覆うことができるように、支持部材3の寸法を定めればよい。また、減圧チャンバー2の変形の緩和の観点から、支持部材3が中空の形状を有している場合は、支持部材3は、チャンバー本体20の厚さ以上の厚さを有していてもよい。
【0031】
本実施形態では、支持部を構成している支持部材3の両端面103a,103bが接している相対する内面123a,123bがいずれも平面であり、減圧チャンバー2の内面における面積が最大の平面(面積S2の平面)を含んでいる。すなわち、支持部材3は、最も変形し易い平面を支持しているため、減圧チャンバー2の変形を効果的に緩和することができる。
【0032】
本実施形態では、相対する内面123a,123bの各々が同一面積を有する平面であり、相対する内面123a,123bのいずれもが減圧チャンバー2の内面における面積が最大の平面である。したがって、本実施形態では、支持部材3が減圧チャンバー2の変形を緩和する効果が特に顕著に現れる。
【0033】
言い換えると、相対する内面123a,123bは、減圧チャンバー2の内面を構成する相対する平面のうち互いの距離が最も短い一対の平面である。このような場合には、支持部材3が減圧チャンバー2の変形を緩和する効果が顕著に現れる。
【0034】
本実施形態では、支持部を構成している支持部材3が、相対する内面123a,123bの一方である内面123aの重心部と、他方である内面123bの重心部との間に介在している。これにより、内面123a,123bの変形を効果的に緩和している。なお、本明細書では、重心部とは重心を含む領域を指す。
【0035】
また、本実施形態では、支持部を構成する支持部材3が平面からなる底面103a,103bを有し、底面103a,103bが減圧チャンバー2の相対する内面(平面)123a,123bの一部に接している。この好ましい形態によれば、内面123a,123bの変形が効果的に緩和される。
【0036】
なお、支持部材3を採用することは、本実施形態のように、減圧チャンバー2の材料が樹脂などの剛性の小さい材料である場合に特に効果的であるが、他の材料を採用する場合であっても効果的である。
【0037】
また、支持部材3を採用することは、本実施形態のように減圧チャンバー2の内面が、平面のみから構成される場合に特に効果的である。この場合は、減圧チャンバー2の外観形状を略直方体にでき、減圧チャンバー2の外観形状を略直方体にすることは制限されたスペース(装置の内部など)に脱気装置1を配置する際に有利になることが多い。つまり、支持部材3によれば、脱気装置1が占有するスペースの観点で有利な形状を有する減圧チャンバー2を得ながらも、減圧チャンバー2の剛性を確保することができる。ただし、支持部材3を採用することは、減圧チャンバー2の内面が曲面を含む場合(例えば、減圧チャンバー2の側部23が円筒状の形状を有する場合)であっても効果的である。
【0038】
(第2実施形態)
図7〜図10に、本発明の第2実施形態に係る脱気装置である脱気装置301を示す。図7は、脱気装置301の斜視図である。図8は、脱気装置301の分解斜視図である。図9は、図7に示す脱気装置301を直線XI−XIで切断した半断面図である。図10は、図7に示す脱気装置301を直線X−Xで切断した半断面図である。
【0039】
脱気装置301は、減圧チャンバー302と、脱気エレメント304とを備えている。減圧チャンバー302には、液体(被脱気液体)が流通する液体流入口311および液体流出口312、ならびに減圧装置を接続する真空吸引口313が形成されている。また、減圧チャンバー302には、突出部303が形成されている。脱気エレメント304は、減圧チャンバー302内に収容されており、筒状のアダプタ441,442を介して液体流入口311および液体流出口312に接続されている。真空ポンプなどの減圧装置を真空吸引口313に接続し、減圧チャンバー302内を排気しながら脱気エレメント304に液体を流すことにより、液体から溶存ガスが除去される。
【0040】
脱気エレメント304は、気体透過性チューブ345を有している(図8参照)。気体透過性チューブ345は、気体透過性チューブ45と同様のチューブである。脱気エレメント304は、一本の気体透過性チューブ345により構成されていてもよいが、本実施形態では、多数本の気体透過性チューブ345を束ねたチューブ束340により構成されている。各気体透過性チューブ345は、各気体透過性チューブ45と同様に、フッ素樹脂粉末を介して樹脂パイプにより互いに熱融着している(図示省略)。
【0041】
脱気エレメント304は、コイル状に一周巻回されている。本実施形態では、脱気エレメント304は、減圧チャンバー302の突出部303と離間した状態で一周巻回されている。なお、脱気エレメント304は、多重に巻回されていてもよく、U字型などの他の形状を有していてもよい。また、脱気エレメント304は、突出部303に接していてもよく、突出部303に巻き付けられていてもよい。
【0042】
アダプタ441,442は、アダプタ141,142と同様のアダプタである。
【0043】
減圧チャンバー302は、開口部326を有するチャンバー本体320と、蓋体325とを含んでいる。蓋体325は、開口部326に嵌め込まれて開口部326を塞いでいる。本実施形態では、減圧チャンバー302は、全体として略円柱の外観形状を有している。減圧チャンバー302の材料としては、減圧チャンバー2の材料と同様の材料を採用可能である。
【0044】
チャンバー本体320は、円筒状の側部323と、開口部326の反対側に配置されている底部324とから構成されている(図10参照)。側部323には、液体流入口311、液体流出口312および真空吸引口313が形成されている。液体流入口311には凹部311dが形成され、凹部311dにはOリング351が嵌め込まれている。液体流出口312には凹部312dが形成され、凹部312dにはOリング352が嵌め込まれている。また、チャンバー本体320の内面には、蓋体325が開口部326に嵌め込まれた際の蓋体325の位置合わせのための段部327が設けられている。また、真空吸引口313はテーパねじである。
【0045】
蓋体325には、減圧チャンバー302の内側に向かって突出している突出部303が形成されている。突出部303の周囲には周辺部335が形成されている。また、蓋体325の側面には凹部325dが形成され、凹部325dにはOリング360が嵌め込まれている(図8参照)。
【0046】
チャンバー本体320の厚さは特に限定されないが、例えば4〜12mmである。本実施形態では、突出部303によりチャンバー本体320の変形が緩和されるため(詳細は後述)、チャンバー本体320の厚さを4〜8mmにしてもよい。同様に、蓋体325の厚さは、例えば1.5〜6mmであるが、本実施形態によれば、1.5〜4mmにすることもできる。つまり、本実施形態によれば、減圧チャンバー302の厚さを1.5〜8mmにすることができる。
【0047】
また、減圧チャンバー302の内面は、平面と曲面とから構成されている。具体的には、チャンバー本体320の底部324は、円形の平面である内面424を有する。また、側部323は、側部323の中心軸を取り囲む曲面である内面423を有する。
【0048】
蓋体325は、図10に示すような内面425を有する。内面425と内面424とは、相対する内面424,425を構成している。内面425は、突出部303が有する内面403と、周辺部335が有する内面435とを含む。内面435は、環状の形状を有する平面である。
【0049】
図10に示すように、相対する内面424,425の一方である内面425の一部を構成している内面403は、相対する内面424,425の他方側である内面424側へと突出して、相対する内面424,425の他方である内面424に接している。本実施形態では、このように減圧チャンバー302における蓋体325を構成する壁材が変形することにより、真空吸引口313からの吸引により減圧チャンバー302内が減圧されたときの減圧チャンバー302の変形を緩和する柱状の支持部を形成している。つまり、本実施形態では、突出部303が支持部として作用している。
【0050】
突出部303の寸法は特に限定されないが、例えば、突出部303の内面403が、当該内面403が接している、相対する内面の他方(本実施形態では内面424)の面積の5〜30%を占める領域を覆うことができるように、突出部303の寸法を定めればよい。また、減圧チャンバー302の変形の緩和の観点から、突出部303は、チャンバー本体320の厚さ以上の厚さを有していてもよい。
【0051】
減圧チャンバー302では、相対する内面424,425が相対する平面424,435を含む。また、相対する平面424,435は、減圧チャンバー302の内面における面積が最大の平面である平面424(内面424)を含んでいる。すなわち、突出部303は、最も変形し易い平面を支持しているため、減圧チャンバー302の変形を効果的に緩和することができる。
【0052】
本実施形態では、相対する平面424,435が、減圧チャンバー302の内面における面積が最大の平面とその次に面積が大きい平面とを含んでいる。このような場合は、突出部303が減圧チャンバー2の変形を緩和する効果が顕著に現れる。
【0053】
本実施形態では、支持部として作用している突出部303が、相対する平面424,435の一方である平面424の重心部と、他方である内面435の重心部との間に介在している。これにより、底部324および周辺部335の変形を効果的に緩和している。
【0054】
また、本実施形態では、支持部を構成する突出部303の内面403が平面からなる底面403aを有し、底面403aが減圧チャンバー302の相対する内面の他方である平面424(内面424)の一部に接している。これにより、底部324の変形を効果的に緩和している。
【0055】
また、本実施形態では、チャンバー本体320の側部323が円筒状の形状を有する。円筒状の形状は高い剛性を有する。すなわち、本実施形態では、側部323の形状に基づく高い剛性により、側部323の変形が緩和される。ただし、側部323は、中空の角柱(角筒状)の形状を有していてもよい。
【0056】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
【0057】
(実施例1)
実施例1では、図1〜図4に示す構造を有する脱気装置1を作製した。
【0058】
まず、内径0.95mm、厚さ0.13mm、長さ1.0mのPTFEからなる気体透過性チューブ45を17本束ねてチューブ束40を作製した。次に、チューブ束40の両端部にPFA粉末をまぶし、両端部にPFA樹脂パイプを被せた。次に、樹脂パイプを被せた状態のチューブ束40を、370℃の金型内で10分間加熱することにより、各気体透過性チューブ45および樹脂パイプを互いに溶着させた。これにより、脱気エレメント4を作製した。次に、脱気エレメント4の両端を加熱して溶融させたアダプタ141,142につき当てることにより、脱気エレメント4とアダプタ141,142とを一体化させた。
【0059】
次に、ポリプロピレン製のブロックを切削することにより、外寸が横100mm×高さ100mm×奥行き25mmであり、側部23および底部24の厚さが2mmの成形体を作製した。次に、この成形体の開口部を切削加工することにより段部27を設けた。このようにしてチャンバー本体20を作製した。
【0060】
次に、別のポリプロピレン製のブロックを切削することにより、厚さが10mmで、チャンバー本体20の開口部に嵌合する寸法を有する成形体を作製した。次に、この成形体に、凹部25d、φ8.2mmの液体流入口11、φ8.2mmの液体流出口12およびRc1/8の真空吸引口13を形成した。次に、成形体の厚さ方向の中央に凹部11dおよび凹部12dを形成した。これにより、蓋体25を作製した。蓋体25を作製した後に、Oリング60を凹部25dに、Oリング51を凹部11dに、Oリング52を凹部12dに、それぞれ嵌め込んだ。
【0061】
次に、また別のポリプロピレン製のブロックを切削することにより、内径36mm、外形φ40mm、長さ21mmの円筒形状の支持部材3を作製した。
【0062】
次に、脱気エレメント4をコイル状に6周巻回させた。次に、脱気エレメント4のコイル状に巻回させた部分に支持部材3を挿入した。次に、この状態の脱気エレメント4および支持部材3をチャンバー本体20に収容した。最後に、アダプタ141,142が蓋体25から突出するように、蓋体25をチャンバー本体20に嵌め合わせて、脱気装置Aを作製した。
【0063】
(実施例2)
実施例1で用いた支持部材の代わりに、直径φ40mm、長さ21mmの中実の円柱の支持部材を作製し、支持部材3として用いたこと以外は実施例1と同様にして脱気装置Bを作製した。
【0064】
(比較例)
実施例1における支持部材3を省略したこと以外は実施例1と同様にして脱気装置Cを作製した。
【0065】
(脱気実験)
脱気装置A、脱気装置Bおよび脱気装置Cを用いて脱気実験を行った。具体的には、各脱気装置の減圧チャンバー2内を、真空吸引口13に接続した真空ポンプにより圧力5.3KPaまで減圧し、この状態で脱気エレメント4に純水を流し、純水の脱気を行った。
【0066】
脱気実験中の各脱気装置の変形を目視で調べた。脱気装置Aおよび脱気装置Bには変形が見られなかった。他方、脱気装置Cを用いた脱気実験では、減圧チャンバー2が大きく変形した。脱気実験の結果から、本発明によれば、減圧チャンバー2の変形および減圧チャンバー2の変形に伴うシール性の低下を抑制できるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によれば、減圧チャンバーの変形を抑制できる。したがって、減圧チャンバーの厚さを薄くすることができるとともに減圧チャンバーの形状および材料の制約が緩和される。すなわち、本発明によれば、材料コストが低く小型の脱気装置を提供できる。
【符号の説明】
【0068】
1,301 脱気装置
2,302 減圧チャンバー
3 支持部材(支持部)
4,304 脱気エレメント
11,311 液体流入口
11d,12d,25d,311d,312d,325d 凹部
12,312 液体流出口
13,313 真空吸引口
20.320 チャンバー本体
23,323 側部
24,324 底部
25,325 蓋体
26,326 開口部
27,327 段部
40,340 チューブ束
45,345 気体透過性チューブ
51,52,60,351,352,360 Oリング
103a,103b,403a 底面
123a,123b,124,173a、173b,403,423,424,425,435 内面
141,142,441,442 アダプタ
303 突出部(支持部)
335 周辺部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体流入口、液体流出口および真空吸引口を有する減圧チャンバーと、
前記減圧チャンバー内に収容され、前記液体流入口から流入して前記液体流出口から流出する液体が通過する気体透過性チューブを有する脱気エレメントと、を備え、
前記真空吸引口からの吸引により前記減圧チャンバー内が減圧されたときの前記減圧チャンバーの変形が緩和されるように配置された柱状の支持部を有し、
前記柱状の支持部が、
前記減圧チャンバーの相対する内面に両端面が接するように前記減圧チャンバー内に配置された柱状の支持部材により構成され、または
前記減圧チャンバーの相対する内面の一方の一部が当該相対する内面の他方側へと突出して当該相対する内面の他方と接するように前記減圧チャンバーを構成する壁材が変形して形成されている、脱気装置。
【請求項2】
前記相対する内面が、相対する平面を含み、
前記相対する平面が、前記減圧チャンバーの内面における面積が最大の平面を含む、請求項1に記載の脱気装置。
【請求項3】
前記支持部が、前記相対する平面の一方の重心部と前記相対する平面の他方の重心部との間に介在している、請求項2に記載の脱気装置。
【請求項4】
前記支持部が、平面からなる底面を有し、
前記底面が、前記減圧チャンバーの相対する平面の一部に接している、請求項2または3に記載の脱気装置。
【請求項5】
前記減圧チャンバーの材料が樹脂であり、
前記減圧チャンバーが、1.5〜10mmの厚さを有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の脱気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−63370(P2013−63370A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202298(P2011−202298)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】