説明

脱水処理システムと方法

【課題】固体粒子と液体の混合物を含む汚泥、スラリ、パルプ、尾鉱などの物質の液体量を減らすため、それらから液体を除去する装置と方法を提供すること。
【解決手段】下水汚泥または鉱山尾鉱のような粒子/液分散の液体量を減らす装置および方法を開示する。本装置は、物質を格納する格納手段とそこに格納した物質に圧力をかける手段を備え、そして該格納手段は物質中に含まれる液体を透過するが、少なくともいくつかの、より好ましくは実質的に全ての固形物を透過しない、特に連続したベルトフィルタプレスとして構成される、第1の濾過膜によって部分的に定められる。前記濾過膜は、第1の電極と共に導体素子に密接に結合されるテキスタイルまたはその他の合成材料から構成される。第2のシート材料は、これも濾過膜であることが好ましく、物質を横断する方向に電位差を与え、脱水処理を動電学的に推進する第2の電極を構成するために、同様に導体素子に結合される。好ましくは、本装置はベルトフィルタプレスであり、連続した移動ベルトとして構成される2つの電極に可変かつ断続的な電圧を印加し、相互を絶縁させる手段を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体粒子と液体の混合物を含む汚泥(sludges)、スラリ、パルプ、鉱物廃棄物、ヘドロ、泥、浚渫(dredgings)、尾鉱(tailings)などの物質(materials)を処理してその液体量を減らすシステムと方法、特に下水汚泥や鉱山尾鉱(mine tailings)を脱水するシステムと方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業プロセスは多量の汚泥、スラリ、パルプ、尾鉱などの物質を発生させ、例えばそのような廃棄物の処理を円滑にするために水分量を減らすこと、および/または再利用するためにその水分量を回復することへの要求が生まれる。
【0003】
例えば下水処理工程には下水汚泥処理が必要である。これらの物質の初期の固形分割合は、通常0.01〜10%である。従って、脱水によって当該固形分割合を増加できれば、これらの物質の体積を大幅に減らすことができるのは明らかである。
【0004】
鉱山尾鉱の場合、固形分は比較的高く、廃棄物の体積は非常に大きい。大きな尾鉱ラグーン(lagoons)に貯留して処理する。体積の減少は採鉱コストを削減し、また、乾燥地帯では重要な水の再生を可能にする。
【0005】
現在汚泥などの物質の脱水に使用されている方法には、ベルトフィルタプレスなどの連続処理と、プレートフィルタプレスなどのバッチ処理が含まれる。これらのシステムは、固定的なセル(static cell)のフィルタシート若しくはプレートの中、または機械的または水圧手段を利用する連続的なベルトフィルタプレスのフィルタベルトの間に含まれる廃棄物に正圧を与えることによって作用する。一例として、以下に、下水脱水システムと尾鉱脱水に焦点を絞って考察するが、本発明は、固体と液体の混合物を含む一連の物質から水などの液体を除去して、固体粒子と液体の分散体(dispersement)または混合物を生成することにも一般的に応用可能である。なお、当該液体は、混合物が主に固体として振る舞うか、または主に液体として振る舞うかを問わない。
【0006】
ダルシーの法則(即ち、除去される水/流体の量は、物質の適用圧力、動水勾配(hydraulic gradient)、表面積および透水係数の関数である)に基づいて、適用圧力は水力排水(hydraulic drainage)を引き起こす。場合によって、排水は、一般的に固定的なプレートフィルタプレスの1つ以上の圧力セル壁若しくはベルトフィルタプレスの1つ以上のベルトとして、またはそれらの一部として構成されるポリマーベルト若しくはシートの形をとる排水媒体を通してなされる。排水はバッチ処理として作動可能であるが、ベルトフィルタプレス処理は連続してなすことができるので好ましいことが多い。このベルトフィルタプレス処理は汚泥管(sludge conduit)として構成されるベルトフィルタプレスを備えていて、比較的低固形分の汚泥が完全に濡れた状態(watered state)で該管の一端に投入され、該管に沿って徐々に増加する圧力下で送られ(便宜上ベルトとベルトの間の距離を小さくすることによって)、そしてもう一方の端部において部分的に脱水された状態で、ある排出量で提供される。圧力は、通常ローラによって加えられる。ベルトの配置は直線的または幾何学的で比較的複雑であってもよい。
【0007】
脱水効果を高めるため、例えば有機または無機の凝集剤または凝固剤などを添加するなど、汚泥に化学的な前処理を行ってもよい。
【特許文献1】WO95/21965
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在の主な技術の限界は、排水が進むと廃棄物の透水係数が小さくなり、排水を維持するのに外圧をかけ続ける必要があることである。これが、汚泥、スラリ、尾鉱などの物質を圧力だけに頼る実用システムを用いて脱水することができる程度の現実的な限界となる。実際のところ、例えば従来の下水汚泥ベルトプレスで通常達成可能な脱水の最大値では、15〜20%の間の種々の乾燥固体割合で産出される脱水汚泥が得られる。これは、初期の十分に水分を含んだ汚泥よりもかなり濃縮されてはいるものの、液体量は多いままである。依然として、これをさらに減らすことが望まれる。
【0009】
本発明の目的は、前記液体除去システムの限界のいくつかまたは全てを緩和することである。
【0010】
本発明の特定の目的は、固体粒子と液体の混合物を含む汚泥、スラリ、パルプ、尾鉱などの物質の液体量を減らすため、それらから液体を除去する装置と方法を提供することであり、そして当該方法は現在の圧力ベースの装置と方法に基づき、特に既存の圧力ベースの装置をレトロフィット可能であるが、高い液体除去率を提供する。
【0011】
本発明の特定の目的は、下水汚泥を脱水するための既存の圧力ベースの装置と方法に適応でき、脱水処理を強化することである。
【0012】
本発明のさらなる特定の目的は、処理される廃棄物量を減らしたり、さらに/または、例えば乾燥地帯で採鉱を行うとき再利用を目的として水を除去するように鉱山尾鉱を処理する手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、第1の態様の本発明によれば、微粒子/液分散を含む物質(material)の液体量を減らす装置が提供され、この装置は該物質を格納する格納手段(containment means)とそこに格納した物質に圧力をかける手段を備え、該格納手段は該物質中に含まれる液体を透過するが、少なくともいくつかの、より好ましくは実質的に全ての固形物(solids)を透過しない第1の濾過膜を備える少なくとも1つの第1のシート部材によって部分的に定められ(partly defined)、該濾過膜は第1の複合電極と共に少なくともその一部と一体的に結合された少なくとも1つの導体素子(at least one conductive element in integral association with at least a part thereof so as to constitute where so associated a composite first electrode)を有するテキスタイルまたはその他の合成材料から構成され、そしてさらに、第2の複合電極と共に少なくともその一部と一体的に結合された少なくとも1つの導体素子(at least one conductive element in integral association with at least a part thereof so as to constitute where so associated a composite second electrode)を有するテキスタイルまたはその他の合成材料から構成される、少なくとも1つの第2のシート部材によって部分的に定められて(partly defined)、該第1と第2の電極は物質を横断する方向に電位差を与えられるように物質と接触して互いに離して配置される。
【0014】
本発明によれば、前記装置は、上述のような一定の排水を実現するために依然として従来の方法で圧力をかける。特に、圧力をかける手段が前記第1と第2の部材がより近接して結合することを促す働きをするように圧力をかけて、該部材間の距離を小さくし、該部材間に保持された脱水される物質に水圧をかけ、第1の水力学的な脱水処理を推進する。この点で、フィルタ膜は上述のような従来の排水媒体として機能する。
【0015】
しかしながら、前記濾過膜は、導電性のエレクトロカイネティックテキスタイル(界面動電テキスタイル)(conducting electrokinetic textile)またはその他の合成材料と同様に作用し、少なくとも1つ以上の領域に、第1の電極として使用時に機能するように導電材料(conductive material)と一体的に接触(integral contact)して設けられる。このことが、前記第2のシート状の第2の電極の存在と合わせて、脱水される物質(以下、「被脱水物質」という。)を横断する方向に電圧を印加することを可能にする。得られた電気浸透効果は、脱水を促進するために機械的にかけた圧力によって生じた排水効果と一致する。電気浸透脱水効果は、従来の水圧/機械脱水と同時に、及び/または、その後に得られる。例えば、初期の最も湿っている物質の脱水は水力学的に、その後の脱水は電気浸透により行ってもよく、あるいは電気浸透圧と水圧の効果を組み合わせて行ってもよい。
【0016】
前記システムの界面動電性の増大の更なる利点は、湿った物質の性質を変えて、通常はコンベヤーベルトシステムによって、より簡便に輸送できることである。この場合、特に鉱山尾鉱などの非常に湿っている懸濁液に適用し、もはや液体として作用しない程度まで尾鉱から水分を除去することが行われる。鉱山尾鉱の特徴は、大量に発生することである。本発明はこの点で、特に同時にまたは連続して作動する複数のベルトフィルタプレス装置を用いて大量処理するのに適している。
【0017】
界面動電現象が、微粒子状の低浸透性基板を通して、水、荷電粒子およびフリーイオンを移動させる能力は確立されている。5つの主要な界面動電現象がある。すなわち、流動電位、移動電位、電気浸透、イオン移動、電気泳動である。最後の3つは、大基板(substrate mass)を横断する方向に電界を印加する際に構築された移動のメカニズムに関係があり、そして特に電気浸透を利用する本発明に関連する。
【0018】
電気浸透効果を得るため、大基板(substrate mass)を横断する方向に電界を印加する。陽イオンは陰極に、陰イオンは陽極に引き付けられる。3つの移動のメカニズムについて以下説明する。電気浸透では、イオンは移動するときに一緒に水和水を運び、周囲の水に摩擦力を出す。従って、水の流れが陽極と陰極の両方にある。しかしながら、電荷的中性を保つために、マイナスに帯電した粒子を含む基板の間隙流体には陰イオンより多くの陽イオンがある。従って、通常、陰極への水の正味の流れがある。この電気浸透流は、基板の印加電圧勾配と電気浸透性(electro-osmotic permeability)によって定まる。
【0019】
本発明によれば、従来の圧力排水と電気浸透誘発排水との組み合わせによって液体除去処理が強化される。所定の装置と適用圧力の場合、液体が除去される速度と、実際に得ることができる最大乾燥度の両方に関連する利益を得ることができる。前記装置は、確立された原理から大きく逸脱することを要求しない。むしろ、濾過膜に適用した圧力を用いて汚泥などの物質から液体を除去するための確立された原理を利用するが、濾過膜または少なくともその一部を導電性のエレクトロカイネティックテキスタイルまたはその他の材料として使用中に機能させることによって前記効果が高まる。電気浸透を用いると、その他の従来技術を利用する物質の処理が著しく推進することが分かった。
【0020】
本発明による電気浸透の強化に関する限り、除去される液体は、一方の電極、通常は陰極に動かされるだけである。従って、第1の電極だけは濾過膜でなければならない。例えば、水は陰極に動かされ、陰極は濾過膜であることが唯一絶対に必要である。とは言っても、第2の電極を備えるシート材料も、陽極目的の使用時には、同様にまた、物質中に含まれる液体を透過するが、少なくともいくつかの、より好ましくは実質的にすべての固形物を透過しない第2の濾過膜であるのが好ましい。このように、第1と第2の濾過膜の両方が水力脱水(hydraulic dewatering)に寄与することができる。
【0021】
フィルタ膜またはその他のシート材料は、テキスタイルまたは合成材料と称されるが、この文脈では主としてポリマーベースの構造を持つシート状の材料を意味する。テキスタイルは、織られるか、編まれるか、ニードル・パンチされるか、不織りか、あるいは別の方法で製造されてもよい。織り編まれた構造は特に好ましい。テキスタイルは、シート構造内または構造上に緊密に結合した導体素子を例えば構造内に備え、そして特に織りシートまたは編みシートに織り込まれるか編み込まれる。この導体素子は、複合材料組成では金属でもよいが、シートは完全にまたは主として金属のみで作られない。特に適当な材料には、導電性ジオシンセンティック材としての使用で知られている材料が含まれる。
【0022】
従って、好ましいケースでは、エレクトロカイネティック・ジオシンセティックタイプの材料が用いられる。これは、電極として機能するだけでなく、従来のジオシンセティック材の全ての機能(例えば、排水、濾過、補強)を提供することができる。
【0023】
本発明のカギは、濾過膜を構成するテキスタイルなどの合成材料が、少なくともその範囲の一部において(at least over a part of the area thereof )、電気浸透脱水作用段階の間はエレクトロカイネティックテキスタイル/合成材料として、且つ従来の水力脱水作用段階の間は従来の濾過材として、使用時に機能し得ることである。
【0024】
これを実行するために、濾過膜やその他のシート電極の材料は本質的に導電性であるか、あるいは導電材料を構造の中または構造面上に一体的に組み込むので、濾過膜やその他のシート電極は本質的に導電材料であるか、あるいは少なくとも一部が導電材料から構成される。例えば、濾過膜の材料は、ジオシンセティック材である。
【0025】
濾過膜全体が、導電性のエレクトロカイネティックテキスタイル/合成材料から一体的に構成されてもよい。しかしながら、便宜的に、濾過膜が複数の電気的に別々の導電領域を構成するのは好ましい。これにより使用中の適用電流を個別の領域に限定したり、あるいは必要に応じて領域毎に変えることができる。
【0026】
本発明は、バッチ運転であるか連続運転であるかを問わず、いかなる圧力ベースの汚泥や尾鉱などの物質の脱水処理システムにも適している。しかしながら、その特定の利点は、ベルトフィルタプレスなどの連続処理に関して得られる。従って、本発明の好ましい実施例では、装置はベルトフィルタプレスであり、その少なくとも1つのベルト(使用時、陰極である)は、前記態様で少なくともその長さの一部が第1の電極として機能するようにコンダクタと前記のように結合された第1の濾過膜であり、そして好ましくは各ベルトは、前記態様で少なくともその長さの一部が電極として機能するようにコンダクタと前記のように結合された濾過膜である。各ベルトは、前記のように、少なくとも一部が導電性のエレクトロカイネティックテキスタイル/合成材料(例えばジオシンセティック(EKG)など)から構成されるのが好ましい。
【0027】
すなわち、前記装置は、その格納手段がスラッジ/尾鉱などの脱水される物質の投入部、スラッジ/尾鉱などの脱水された物質の排出部、導管に沿って圧力をかける手段(特に、投入部から排出部までの距離と共に徐々に増大する)、ほぼ導管の長さに沿う濾過膜を備える第1のベルト部材(この濾過膜は、第1の電極を形成するために、少なくともその長さの一部がコンダクタに結合された濾過膜である)、およびそれらの間の被脱水物質を保持するために第1のベルト部材から離して配置された第2のベルト部材(この第2のベルト部材は、導管内の被脱水物質を横断する方向に電位差を与えられるような第2の電極を形成するために、少なくともその長さの一部がコンダクタに結合されている)を有する導管からなる(define)ように構成される。
【0028】
水力による脱水圧力と同様に界面動電的な脱水圧力をかけることが求められるとき、電位差は前記導管の長さの一部に沿って与えられる。これは、原則的に導管の全長に沿って水力による脱水圧力と同様に界面動電的な脱水圧力を確実にかけるために、原則的に導管の長さに沿って与えられてもよい。多くの実際の適用では、初期の脱水は原則的には水力により、そして脱水が下流で界面動電によりさらに促進されるように、導管の一部だけに(特に下流部に向かって)電位差を与えることが好まれるであろう。また、前記第2のベルト部材は濾過膜であるのが好ましい。
【0029】
単一のベルトプレス機は、例えば使用時に陽極と陰極を交替する、2つ以上の第1のベルトおよび/または第2のベルトを備えてもよい。このプレス機の適当な実施態様では、中心に配置した陽極ベルトと対の外側(例えば、上下)の陰極ベルトを有し、それらの間に被脱水物質を含む、ベルトプレスを備えてもよい。従って、水を各陰極に移動させる2つの電気浸透回路が使用時に設定される。
【0030】
前記圧力をかける手段は、ベルト間の被脱水物質に水圧を発生させるためにベルトを互いの方向に移動させるように作動する。連続ベルト処理では、前記物質が本システムに沿って進むにつれて圧力が高くなると、例えばベルト間の隙間が小さくなるという点で、都合が良いことが多い。
【0031】
最も好都合なことに、各ベルトは複数の加圧ローラおよび/またはガイドローラまたはその他のサポートの周りに連続したベルトとして配置される。また都合が良いことに、そのような連続したベルトは、例えば投入ゾーンから脱水ゾーンを通り排出ゾーンまで物質を運ぶなど、被脱水物質用のコンベアとしての機能を果たす。後述の通り、前記ローラ/サポートは少なくともその接触面上が絶縁体である。
【0032】
濾過膜の一部だけに関わる領域の被脱水物質を横断する方向に電位差を与えることが求められる場合、これはコンダクタが濾過膜のその部分だけに設けられる(be associated)ので達成できる。あるいは、コンダクタをほぼ濾過膜全域(例えば複数の別個の領域)に設けてもよい(may be associated)が、所望の領域に電荷を与える(be electrically supplied)だけでよい。前記装置が連続したベルト装置で、より特定的にはそのベルトがEKG材から構成される場合は、後者の手法が好ましい。
【0033】
上記のいずれも、第1の濾過膜または第2の濾過膜などのシートのどちらかのコンダクタが設けられる(be associated)領域が、電位差が与えられる領域で連続している必要はないことが理解されるであろう。それよりむしろ、アレンジにより濾過膜の領域で脱水される汚泥その他の物質を横断する方向に必要な電位差を与えて必要な界面動電効果を発生させることが可能であれば、どちらか一方または両方が不連続の複数アレイとして配置されてもよい。
【0034】
記載した通り、前記濾過膜全体が導電性であり(integrally conducting)、特に導電性のエレクトロカイネティック・ジオシンセティック(EKG)材から構成されるのが好ましい。導電性のエレクトロカイネティック・ジオシンセティック材の原理は既に確立されていて、例えば参照することにより本書で援用されるジョーンズらの国際出願番号WO95/21965に記載された。
【0035】
前記EKG材は、導電性を与えるのにどのような適当な組成を有してもよい。例えば導電性ジオシンセティック材は、複合導電性ジオシンセティック材を作り出すために、少なくとも1つの導体素子と組み合わせた、一般に本質的に絶縁性のジオシンセティック材から構成されてもよい。あるいは、前記ジオシンセティック材は本質的に導電性でもよく、例えば導電性粒子を含み、そしてさらに例えば炭素を含んだポリマー材料を有してもよい。また、そのような本質的に導電性のジオシンセティック材を、更に少なくとも1つの別の導体素子と組み合わせて、複合導電性ジオシンセティックを提供してもよい。
【0036】
可能な電気伝導性ジオシンセティック材は、単に、単撚りのまたは複撚りの電気伝導性フィラメントまたは糸が織り込まれたまたは縫い込まれた、従来のジオシンセティック材から構成することができる。前記フィラメントまたは糸は導体素子を備える。電気伝導性ジオシンセティックが織られる場合、電気伝導性の糸またはフィラメントは従来のジオシンセティック材と撚り合わせ(intertwined with)ても該材内に網の目に絡ませ(enmeshed within)てもよく、そして前記電気伝導性ジオシンセティックが縫われた形態で提供される場合、ユーザの必要性に応じて、予め選択した数の糸を該材に通すことができる。
【0037】
その結果、エレクトロカイネティック・ジオシンセティックは、水圧を提供する手段を用いて排水処理の電気浸透を強化推進する電極としての役割と、従来の濾過膜の役割の中の排水/フィルタ媒体として機能することを兼ね備える。また、これらの利点の多くが、第2の電極に関係することも明らかになる。好ましい実施態様によれば、第2の電極もまた、導電性ジオシンセティック材である。
【0038】
好ましい実施態様では、前記エレクトロカイネティックベルトまたはシート媒体は、織りまたは不織りのポリマーで、且つ、例えばジオシンセティックの、シート内またはその表面上に複数の細長い導体素子を特に1つ以上の平行アレイで組み込んだ材料から構成される。2つ以上のアレイを異なる方向に配置して、ネットワーク構造を形成してもよい。細長い導体素子は便宜的に糸、テープ、ワイヤなどから構成される。導体素子はシート構造内に一体化されるのが好ましい。例えば、前記導体素子は基本的なテキスタイル/ジオシンセティック材に縫い込まれても、織り込まれても、または編み込まれても(threaded through or woven or knitted into)よい。例えば、前記シートは織り構造で、導体素子は織りシート構造の縦糸要素および/または横糸要素(warp and/or weft elements)を含む。
【0039】
前記濾過膜または他のシート電極はシート材料から構成され、細長い導体素子は一般にその中に横方向に配置され、かつ/またはその表面上に配置される。ジオシンセティック材がアレイなどのベルトプレスタイプのデバイス用のベルトまたはその一部を構成する場合、ベルトの縦方向に対して、一般に平行でも垂直でも角度を形成する状態(angled)であってもよい。
【0040】
好ましくは、前記ベルトは全体的に縦糸方向と横糸方向(warp and weft direction)に対応する縦方向と横方向のある織布であり、細長い導体素子は織りベルト内の縦糸要素および/または横糸要素を含む。特に、細長い導体素子は全体的にベルトに対して横向きに配置された一連の横糸要素(weft elements)を含み、そして付加的な移動要素(transfer elements)は、横糸要素(weft elements)に電気接触するように縦糸(the warp)に組み込まれているが、ベルトの表面上に部分的に露出するように織られていて、全体的にベルトの両端の一方の端部に向かって配置され(located)、且つそれに沿って縦方向に伸びている。
【0041】
このアレンジは都合の良い電力供給システムを提供する。突出したブラシ(例えば、カーボンブラシ)を適当な電力供給システムにつなげて、前記移動要素の領域のベルトと接触させる。縦間隔の不連続(discontinuities)がベルトセグメントを電気的に絶縁して、例えばそのようなセクション間で区別を付けて電流を印加するのに役立つ。
【0042】
導体素子は金属材料でもよい。多くの被脱水物質によってもたらされる環境は特に腐食性が厳しく、満足できるシートの寿命を得るため、金属の導体素子は環境のために慎重に選択されなければならない。電気浸透脱水の間、陽極として機能する電極における環境は非常に厳しいものになりやすい。従って、使用時に陽極として機能することが意図された電極シートを構成する導体素子用に選択された金属材料は、特に化学的耐性を有することを要し、例えば使用時に陰極として機能することが意図された電極シートを構成する導体素子用に選択された金属材料よりも化学的耐性を有する場合がある。
【0043】
特定の実施態様では、特に腐食性が厳しくなる可能性がある物質を脱水するため、少なくとも陽極は、例えばシート、テープ、ワイヤまたは糸状の、複合金属酸化物で被覆された金属から作られた導体素子を備える。複合金属酸化物で被覆する技術は確立されていて、当業者であればこの言葉が含む材料を容易に理解するであろう。特に被覆には、タンタル、ニオブ、イリジウム、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、および、それらの混合物の酸化物から選択された材料が含まれる。金属コアは、対象とする用途に関わる適当な金属から形成することができる。例えば厳しい腐食環境で、および/または欠陥および/または被覆へのダメージを見越して、コアを形成する金属材料は、有効な保護酸化層(例えば、チタニウム、ニオブ、ジルコニウム、またはそれらの合金)を形成することができる材料であるのが好ましい。環境的考慮および/または耐用年数への考慮が許せば、ステンレス鋼または銅などの腐食環境での安定性は比較的少ないがそれでもなお合理的な安定度を示す金属から形成されるコアは許容範囲にある。
【0044】
それほど厳しくない陰極環境では、ステンレス鋼成分などの耐性が比較的低い成分(elements)から作られた導体素子を用いてもよい。
【0045】
本発明により提供される電極は容易に腐食しない。ベルトプレスや他の下水、鉱山尾鉱などの下水技術にエレクトロカイネティック処理を導入する従前の試みは、電極が急速に劣化したため、しばしば不成功に終わった。対照的に、環境劣化に耐性のある材料を提供する確立されたEKGなどの技術群がある。MMOで被覆した金属から構成された導体素子を組み込んだテキスタイルシートの形状で電極を提供する本分野からの技術的原理の改良版は、特に耐食性がある。
【0046】
本発明はベルトフィルタプレスに関して特定の利点を提供する。通常のベルトフィルタプレスでは、ベルトは排水が起こると互いに接近する。ベルト(電極)間の距離の狭まりは、印加電圧の増加を必要とせずに処理中の電位勾配を増加させる。その結果、物質が乾燥しているとき、付与される界面動電力(electrokinetic force)は自動的に増加する。これは従来の水力脱水と正反対である。それにもかかわらず、各電極がベルトの長さに沿って複数の電気的に絶縁された領域を持つようにベルトを構成すると、例えばこの勾配の効果をさらに高めるために、ベルトの間の被脱水物質を横断する方向に印加した電圧をベルトの長さに沿ってさらに変えることができる。
【0047】
従って、印加電圧は一定または可変でもよく、連続的または断続的に印加してもよく、そして印加可能な場合にはベルトの電気的に絶縁された領域に個別に印加してもよい。可変かつ断続的な電圧をベルトに(特に、ベルトの電気的に絶縁された領域に個別に)印加する手段が提供される。
【0048】
通常の水力脱水処理では、乾燥固形分(%)が増加すると、透水率が低下して脱水がより困難になる。従来の水力脱水では、適用最大圧力はベルトがローラを通り過ぎるときである。ローラから離れると、ベルトは少し離れて動けるので、圧力が緩和される。粒子状物質の性質から、微小運動だけが有効な水圧の大幅な低下をもたらすのに必要とされる。電気浸透圧的に(electro-osmotically)かけた圧力の場合、ベルト間の距離の微増が界面動電力(electrokinetic force)にごくわずかな影響を与える。
【0049】
ベルトプレスのベルト間の標準的な距離は通常50mmで、処理が進むにつれて20mm、10mmまたはそれ以下に減少する。600から2000若しくは3000V/mまたはそれ以上の電位の電圧勾配は30ボルトの直流電流を印加することによってベルト全体に発生させることができる。電圧が低いので処理は本質的に安全である。
【0050】
EKGなどの材料を用いてベルトプレスを形成することの予想外の特徴は、病原体(pathogens)の大幅な減少が処理される汚泥に起こり得ることである。下水汚泥ケーキに関する研究は、病原体の6ログ減少(6-log reduction)を示した。病原体の減少は、以下の事項を含む多数の要因によって引き起こされる:(a)不利なpH条件での病原菌の細胞壁の化学分解(特に陰極の周りの高pH)、(b)バクテリア(例えば、大腸菌)の細胞壁の表面電荷が電界下で粒子群に高移動性を与える、(c)汚泥の温度の上昇。その結果、病原体は迅速に陰極に運ばれて、そこで不利なpHによって破壊されるか、または温度の上昇に起因する付加的な殺菌効果がある電気浸透流で除去される。
【0051】
ベルトフィルタプレスのベルトまたは固定のシート(the sheets of a static)を形成するために本発明による電極シート材料を用いる別の利点には、脱水物質の炭素率(C/N比)と生分解性の強化(increased biodegradability)を向上させるのに役立つアンモニアを発生させることが含まれる。また、活性汚泥などの脱水の強化が促進される。
【0052】
別の利点は、ベルトの一部だけに導電性を持たせる必要があるということである。対向するベルトの端部が導電性でないことは有利になる。なぜならば、そのことによって対向するベルトがショート・サーキットを作らなくとも接触可能となるからである。これは、導体素子を単に端部に設けないこと、または絶縁表面コーティングすることのいずれかで達成される。
【0053】
そのような材料をベルトの形成に用いる別の利点は、脱水された汚泥の分離が、金属ベルトを使用するよりも比較的簡単であるということである。また、ジオシンセティックのフィルタ・脱水特性が利用できて、ベルトは弾性要素を提供し得る。
【0054】
ベルトは疎水性または親水性の材料から作ることができる。このことは、ベルトを脱水しまたは濡れた状態に保ち、それ故に導電性があるという点で有利になる。
【0055】
金属ベルトはベルトフィルタプレス脱水システム向けに提案されてきたが、毒性の可能性がある金属イオンの腐食と放出を含む界面動電処理に使用した場合、それらには本質的な弱点がある。
【0056】
含有物質に圧力をかけて水力脱水を行う手段は、含有物質に水圧を発生させるために第1の濾過膜と第2のシート(例えば、第2の濾過膜)がより密接するように促す手段を便宜的に備えることが多い。シート膜は少なくとも部分的に電極を備えるため、そのような促進手段は少なくともいずれかの接触面が絶縁体であることが必要になる。例えば脱水装置が前記のようなベルトフィルタプレスの場合、ベルトは通常、複数の加圧ローラの周りに連続したベルトとして配置される。これらの加圧ローラは、少なくともベルトのいずれかの接触面が絶縁体でなければならないので、例えばローラの表面をゴムなどで絶縁処理する。
【0057】
前記シートまたはベルトを既存の脱水装置の改良に利用し、界面動電脱水(electrokinetic dewartering)を水力脱水の代替手段として、または、より一般的には水力脱水の補助手段として利用することができる。
【0058】
処理候補には、下水汚泥、鉱山尾鉱、有機スラリなどを含む、液体中に固体浮遊物(solid suspension)を含有する様々な物質が含まれる。これまで研究された汚水物質はすべて、電気浸透処理をサポートするために提示された。また、ダイヤモンド、金、プラチナ、石炭、およびその他の鉱物の廃石(mineral tailings)が処理候補である。
【0059】
ここでの考察の多くはベルトフィルタプレスに関するものであったが、そのようなシステムのベルトフィルタに適する上述のEKGなどの材料やその他の電極シート材料はバッチプロセス脱水システムにも利用することができて、EKGまたはその他のシートはテキスタイルフィルタ/ドレーンの代わりをして、さらに電極としても機能する。前記に示した利益は、下水汚泥などの脱水に利用されるバッチ処理方法にも同様に当てはまる。
【0060】
本発明による更なる態様では、固体粒子と液体の混合物を含む物質(例えば、下水、スラリ、または尾鉱など)からその液体量を減らすために液体を除去する方法が提供され、当該方法には以下のステップが含まれる:
格納手段の中に物質を格納することであり、この格納手段は物質中の液体を透過するが、少なくともいくつかの、好ましくは実質的に全ての物質中の固形成分(solid components)を透過しない第1の濾過膜を備える少なくとも1つの第1のシート部材によって少なくとも部分的に定められ(at least partially defined)、該濾過膜は、第1の複合電極として機能するように少なくともその一部と一体的に結合される少なくとも1つの導体素子を有する濾過材を備え;そしてさらに第2の複合電極と共に少なくともその一部と一体的に結合された少なくとも1つの導体素子(at least one conductive element in integral association with at least a part thereof so as to constitute where so associated a composite second electrode)を有するテキスタイルまたはその他の合成材料から構成される少なくとも1つの第2のシート部材によって部分的に定められる(partly defined);
該濾過膜を通して水力排水を引き起すために物質に圧力をかけること;
同時にまたはそうでなければ例えばその後に、該濾過膜を通して電気浸透排水を引き起すために電極間に電位差を与えること。
【0061】
排水効果の強化は、水力と電気浸透の排水効果が補足し合い増強するように圧力と電位差を与えることによって達成される。
【0062】
好ましくは、圧力は、前記第1と第2のシート部材が互いにより近づくように促し、該部材間の距離を小さくし、該部材間に保持されている被脱水物質に水圧をかけて、そして第1の水力脱水段階を推進することによって行われる。
【0063】
好ましくは、電位差は、汚泥スラリ、尾鉱またはその他の被脱水物質を制御する領域を横断する方向にだけ与えられ、そして/または断続的に且つ/または個別にいくつかの制御領域に与えられる。そしてこのことは、制御領域だけが確実に導電性であるようにすること、または、濾過膜の導電領域の一部だけ若しくは複数の別個の導電ゾーン(conduction zones)の1カ所または2、3カ所に電源を印加することのいずれかによって達成される。
【0064】
好ましくは、第2の電極を備えるシート材料は、同様に、前記物質中に含まれる液体を透過するが、少なくともいくつかの、より好ましくは実質的に全ての固形物(solids)を透過しない第2の濾過膜である。このように、第1と第2の濾過膜は共に水力脱水に寄与することができる。
【0065】
前記のより詳細に示した理由から分かる通り、前記処理は特に連続ベルトフィルタ処理であり、その格納手段は十分な液体量を有する物質の投入部(input)と液体量が低減された物質の排出部(output)のある導管、およびそれに沿って圧力をかける手段として提供される。そして特に圧力は、例えば断面積を適当な程度小さくすることによって、距離が脱水方向にベルトに沿って進むにつれて増大する。また、本方法は、汚泥スラリや尾鉱などの被脱水物質を前記投入部に供給すること、該物質を導管に沿って移動させること、水力と電気浸透の排水効果を同時に且つ/又は順次に生じさせることによって液体量を減らすために上述の圧力と電位差をベルトを横断する方向に与えること、および前記排出部で水分量を減らした物質を取り除くことを含む。
【0066】
特に本方法は、汚泥、スラリ、鉱物廃棄物、ヘドロ、泥、浚渫、尾鉱を処理する方法で、例えば脱水によって下水汚泥と鉱山尾鉱を処理する方法である。
【0067】
本発明は、脱水セル(dewatering cells)とベルトフィルタプレスの基本構造の改良をほとんど必要としない。装備された(fitted)導電性のフィルタ膜または導体素子(conductor element)と現場で(in situ)結合することによって現場で導電性になるようにした既存のフィルタ膜を用いることで、既存の設計を簡単に利用することができる。更なる態様の本発明は、現場で改良された変更点である(as an in situ, retrofitted modification)導電性のフィルタ膜を組み込むことによって、ベルトフィルタプレスなどの従来の水力脱水装置を改良する方法を含む。その結果、前記装置は上述の発明として機能し、さらにそのように改良されたベルトフィルタプレスなどの脱水装置を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
これより本発明について、図1〜図5を参照してほんの一例として説明する。ここで、図1〜図3は、本発明による濾過膜の適当な材料を示したものである;
図4は、従来の水力排水原理と本発明のエレクトロカイネティック原理の両方を利用する可能なベルトフィルタプレスのアレンジの断面図である;
図5は、他の可能なベルトフィルタプレスのアレンジの側面図である。
【0069】
図1〜図3は、本発明による使用に適したシート材料を、例えばベルトフィルタプレスのベルトとして、またはバッチシステム用のセルの濾過シートとして示す。いずれの場合にも、織りシートまたはベルト1は、例えば排水機能と濾過機能を提供する従来のジオテキスタイルまたはジオテキスタイルのような材料から構成される限り、ポリマー材料の織物2を基礎として形成される。適当な材料には、ポリエステル、ポリプロピレン、およびポリアミドが含まれる。
【0070】
細長いコンダクタの平行アレイはシートまたはベルト1に結合して提供される。適当な材料には、炭素、被覆金属、特に複合金属酸化物で被覆された金属、および導電性ポリマーが含まれる。
【0071】
2つの別のアレンジを示す。図1aでは、第1の細長いコンダクタ3aのアレイはシートまたはベルト1の上面2に密着して配置されていて、また第2の細長いコンダクタのアレイ(図示せず)は下面に配置されている。図1bでは、細長いコンダクタ3の単一アレイがシートまたはベルト1の中に配置されている。
【0072】
排水材と濾過材が、ベルトプレスのベルトであるのは都合が良い。ベルトプレスは、例えば図1のように、ベルトの中またはその表面上にコンダクタが備えられた導電性ベルト素子から形成される。図2は、細長いベルトへの適用に関連してコンダクタジオメトリの例を示すが、そのようなジオメトリは他の濾過アレンジに簡単に応用することができる。
【0073】
図2aでは、織りまたは編みテキスタイルベルト11は、所定の使用時のベルトの進行方向(矢印Dで示す)に平行して位置する細長いコンダクタ13の平行アレイが組み込まれた、好ましくは構造に織り込まれたまたは編み込まれた、ポリマー材料12を基礎に形成される。図2bでは、細長いコンダクタ14の平行アレイはベルト11に織り込まれるか編み込まれて、全体的に所定の使用時のベルトの進行方向(矢印Dで示す)に対して垂直に位置している。図2cでは、細長いコンダクタ15は所定の使用時のベルトの進行方向に対して斜めに位置することで2次元ネットワークを形成する。
【0074】
ベルトのある部分だけが常時導電性であることは使用目的によっては有利となる。典型的な汚泥脱水システムではベルトフィルタプレスの脱水処理の当初において、ベルト同士は約50mm離れ、主脱水処理は電気浸透を高める限定的な必要性または可能性がある水圧流である。処理される物質の水レベルが低下すると、透水率が低下して、脱水率が低下する。そして脱水サイクルの、この後者の時点で(at this later point)電気浸透圧を印加することが有効な場合がある。対向するベルトは次に縮減された距離だけ離され、電圧勾配が最適化されるので、このアプローチを用いることはより有効になる。この場合、ベルトはそのように配置され、そして特に導体素子がそのように配置されるので、複数の個々の電気的に絶縁された領域がベルトに沿って縦に存在する。
【0075】
図2bの垂直方向に導体素子のアレイを配置することは、実施可能な1つの方法である。図2bのアレイを基礎にそのようにして導電性のゾーン分けをする2つの別のアレンジ例が示される。
【0076】
第1に、電力を印加するための接続手段を設けるために各導体素子がベルト端の外に突き出るようにしてベルトを形成する。これは図3aに示される。導体素子14(例えばテープやワイヤ導体)は、排水機能用のポリマー材料で織ったベルト11に組み込まれる。導体素子14は全体的にベルト11の進行方向に対して垂直に位置する。なお、導体素子14は横糸要素として組み込まれるので、当該進行方向は横方向であると都合が良い。
【0077】
ベルト外の導体素子14の一連の突出部16は、ベルトの長さに沿って1つ以上の選択されたゾーンを横断する方向に電位差を与える1つの方法例を提供する。ベルト端の外に突き出るが内部の導体素子に導電的に結合した横方向に突出するコネクタを設ける原理は、導電ゾーンが別々の導電領域としてベルトの長さに沿って電気的に絶縁可能であれば、導電ゾーンを作り出すために一般に応用することができる。図3aに示した横方向の導体素子を利用することは、これを有効にする1つの方法例である。
【0078】
同等の効果を実現する別の方法は図3bに示される。この場合もやはり、ベルト11は全体的にベルトに対して横向きに配置された一連の横導体素子を有する。付加的な一対の縦移動要素(warp transfer element)17はベルトに沿って縁方向に(しかし縁ではない、縁はショート防止のため便宜上絶縁される)縦に伸びる。縦移動要素は横糸要素14と電気接触するように縦糸に組み込まれるが、表面でも繰返して露出されるように構造中に織り込む。
【0079】
都合の良い表面接触のメカニズムが得られる。突き出たブラシ(例えば、カーボンブラシ)は適当な電源系につながれ、前記移動要素17の領域のベルトと接触させる。軟質のカーボンブラシは好ましく、それはベルトを擦り減らすのではなく、むしろ時間と共に電気接触を改善する働きをするカーボン導電層を固着する。
【0080】
ベルト部は、ベルト長さに沿って別々の導電領域として電気的に絶縁可能な導電性のゾーンを作り出すために、縦移動要素の長さに沿って絶縁体(breaks)を設けて分離してもよい。
【0081】
図4は、簡単な2ベルトプレスの汚泥ゾーンの断面図であり、本発明のシステムの更なる利点を示す。汚泥21は上部ベルト22と下部ベルト27の間に保持される。上部ベルトのコンダクタ23は端部の外に突き出し、突出部24は外部の電源と接続される。下部ベルトのコンダクタ28は反対側の端部の外に突き出し、突出部29は同様に外部の電源と接続される。また各導体素子は、実施例に示すように、ベルトが突出する端部と対向する側の端部で短くされてもよい。このように絶縁性のゾーンZは、ショートを避けるため、接触可能なベルトの端部で作り出される。
【0082】
ベルトの端部でショートを避ける別の方法は、ショート接触が起こる可能性のある全長に沿って、ベルトの端部に絶縁材を被覆することである。同様にクリッパシーム(clipper seam)で絶縁してもよい。例えば、エポキシなどの絶縁体のフレキシブルな層を製造されたベルトに被覆する。
【0083】
図1aの構造のような作用をするように導体素子をベルトに密着させることによって、既存のベルトをEKGベルトなどの本発明による電極ベルトに簡単に変えることができる。あるいは、さらに好ましくは、特別に製造した導体素子を組み込むベルトを、標準のベルトプレスに容易にレトロフィットする(retrofitted)ことができる。従って、本発明によるレトロフィットされたベルトプレスは既存の原理から離れることなく作り出すことができる。同様の考慮が圧力セルなどにも適用される。
【0084】
特に好ましいベルトの仕様(例えば固定のプレートフィルタプレスなど、他の濾過/電極シートにも適用可能)について、以下に詳細に説明する。
ここに含まれる4つの仕様の要素がある;
1.ベルトの織りデザイン
2.ベルトの電気的なコンポーネントの絶縁
3.陽極ベルトと陰極ベルトの導体素子の材料選択
4.電気移動方法
【0085】
織りとWTS(縦糸移動帯(WARP TRANSFER STRIP))のデザイン
0.65/0.80および15/6の1003織り(a 1003 weave)に基づく
・総ベルト幅=2200mm
・WTS幅=60mm
・対のWTS幅=20mm
・WTSの90本の縦ワイヤなどの、金属ワイヤだけで形成したWTS
・20mm幅の15本の金属ワイヤなどの、金属とポリエステルを互い違いにして形成した対のWTS
・5mm間隔で離れた横ワイヤ
【0086】
ベルトの絶縁
ベルトを絶縁する目的は、陽極ベルトと陰極ベルトの間の全電流が、ベルトと直接接触してショートするのではなく、確実に汚泥を通るようにすることである。
【0087】
実際、時折起こるベルトとの接触を防ぐことが必ずしも可能なわけではない。接触は端部で最も起こりやすい。従って、我々は、現在クリッパシーム(連続ベルトを形成するためにベルトの両端を繋ぐ継ぎ目)の周りで使用されるものに似ている、端部に沿うある種の絶縁形態を提案した。正確な仕組みは本発明には重要ではない。
【0088】
ベルトの絶縁に用いる材料は、高電気抵抗、即ち絶縁体としての機能を持つべきである。0〜40Vの電圧を提案する。たいていの絶縁体はこれよりもずっと高い動作電圧を対象に設計されているので、絶縁体からの電流の漏れは問題とはならない。
【0089】
絶縁体片(insulator strips)が原型を保持し、破裂しないとすると、電気ショートが起きた場合、その後に絶縁体の表面を被覆する液膜を介して起こる可能性が高い。この点を考慮に入れると、絶縁体もまた、非濡れ表面(non-wetting surface)を形成して水滴の分離を促すため、疎水性であるべき、即ち水との高接触角が維持されるべきである。基本的に接触角が90度より大きいと水滴は形成され、90度より小さいと水滴は広がる。従って、接触角が大きくなればなるほど水の連続膜(continuous film of water)が形成される可能性は低くなる。
【0090】
材料
陽極ワイヤ
直径0.8mmと0.65mmの陽極ワイヤは、複合金属酸化物(MMO)で被覆されたチタニウム、ステンレス鋼、または銅である。このMMOは、陰極を保護する用途で酸素を発生させるのに用いられるタイプのイリジウムタンタルをベースとする材料である。
【0091】
陰極ワイヤ
陰極ワイヤは、ステンレス鋼、または電気抵抗と耐腐食性を同様に兼ね備える金属材料を利用すべきである。
【0092】
電気移動
前述の織りデザインのところで説明したように、電気移動は1つまたはそれ以上の縦糸移動帯(WTS)を介して実現される。これらは、炭素または炭素銅複合材料を含有する複数の電気ブラシと電気接触する。電気浸透の効果を最適化して消費電力を制御するために、異なる電圧をベルトの長さに沿ってかける。この電気移動法によって移動ベルトへの集電と放電を行う。
【0093】
図5は、3つのベルトシステムの使用を示す。中央ベルト31は陽極で、上部と下部の外側ベルト32,33は陰極である。ベルトは前記と同様のデザインである。使用の際、汚泥やその他の材料は前記中央ベルトと各外側ベルトの間の注入口35を介して挿入される。ベルトはM方向に動く。2つの電気浸透サーキット(electro-osmotic circuits)は中央の陽極とその外側の陰極の間に配置される。
【0094】
この配置の利点は以下の通りである:
i.陰極ベルトはそれほど高価ではない導体素子を用いて形成することができる。
ii.中央の陽極ベルトは、陰極ベルトよりも寿命が長くなるように形成され、通常は混合金属酸化物で被覆したチタニウムを用いて形成される。
iii.処理される汚泥、スラリーまたは尾鉱の量は、水の移動が2つの陰極に向かうにつれて増加するが、電圧勾配はベルトを2つだけ使用した場合と同様である。
【0095】
従って、本発明は、適当な抑制下で、界面動電効果を利用することで得られる向上した効率性を活用するために、水力排水だけに基づく既存の脱水装置を改良するか、あるいは水力排水に一部基づくと共に既存の排水原理を利用する新規の装置を作り出すための優れた方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明による濾過膜の適当な材料を示す。
【図2】本発明による濾過膜の適当な材料を示す。
【図3】本発明による濾過膜の適当な材料を示す。
【図4】従来の水力排水原理と本発明のエレクトロカイネティック原理の両方を利用する可能なベルトフィルタプレスのアレンジの断面図を示す。
【図5】他の可能なベルトフィルタプレスのアレンジの側面図を示す。
【符号の説明】
【0097】
1 シートまたはベルト 2 織物
3、3a、3b、13、15、23、28 コンダクタ
11 ベルト 12 ポリマー材料
14 コンダクタ(導体素子、横糸要素)
16、24、29 突出部
17 縦移動要素 21 汚泥
22 上部ベルト 27 下部ベルト
31 中央ベルト 32、33 外側ベルト
35 注入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子/液体の混合物を含む物質(material)の液体量を減らす装置であり、この装置は該物質を格納する格納手段(containment means)とそこに格納した物質に圧力をかける手段を備え、該格納手段は該物質中に含まれる液体を透過するが、少なくともいくつかの、より好ましくは実質的に全ての固形物(solids)を透過しない第1の濾過膜を備える少なくとも1つの第1のシート部材によって部分的に定められ(partly defined)、該濾過膜は第1の複合電極と共に少なくともその一部と一体的に結合された少なくとも1つの導体素子(at least one conductive element in intergral association with at least a part thereof so as to constitute where so associated a composite first electrode)を有するテキスタイルまたはその他の合成材料から構成され、そしてさらに、第2の複合電極と共に少なくともその一部と一体的に結合された少なくとも1つの導体素子(at least one conductive element in intergral association with at least a part thereof so as to constitute where so associated a composite second electrode)を有するテキスタイルまたはその他の合成材料から構成される、少なくとも1つの第2のシート部材によって部分的に定められ(partly defined)、該第1と第2の電極は該物質を横断する方向に電位差を与えられるように該物質と接触して互いに離して配置される物質の液体量を減らす装置。
【請求項2】
前記圧力をかける手段は、第1と第2のシート部材が互いにより近接して結合することを促す働きをして、脱水される物質に水圧をかけるために該部材間の距離を小さくする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
第2の電極を備えるシート材料は、前記物質中に含まれる液体を透過するが、少なくともいくつかの、好ましくは実質的に全ての固形物を透過しない第2の濾過膜である請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
少なくともベルトの長さの一部が第1の電極として作用するようにコンダクタに一体的に結合された先行するいずれかの請求項に基づき、少なくとも1つのベルトは第1の濾過膜である、ベルトフィルタプレスとして構成された先行するいずれかの請求項に記載の装置。
【請求項5】
各ベルトは、少なくともその長さの一部が電極として作用するようにコンダクタに一体的に結合された濾過膜である請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記格納手段は、脱水される物質の投入部(input)、脱水された物質の排出部(out put)、導管に沿って圧力をかける手段、ほぼ導管の長さに沿う濾過膜(この濾過膜は、第1の電極を形成するために、少なくともその長さの一部がコンダクタに結合された濾過膜である)を備える第1のベルト部材、および第1と第2のベルト部材の間の被脱水物質を保持するために第1のベルト部材から離して配置された第2のベルト部材(この第2のベルト部材は、導管内の被脱水物質を横断する方向に電位差を与えられるような第2の電極を形成するために、少なくともその長さの一部がコンダクタに結合されている)を有する導管(a conduit)からなる(define)ように構成された請求項4または5に記載の装置。
【請求項7】
前記導管に沿って圧力をかける手段は、ベルト間の被脱水物質に水圧を発生させるためにベルトを互いの方向に移動させるように(to urge)作動し、該物質が導管に沿って進むにつれて圧力が高くなるようにアレンジされた請求項4から6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
各ベルトは複数の加圧ローラおよび/またはガイドローラの周りに連続したベルト(continuous belt)として配置されて、該各ローラは少なくともその接触面上が絶縁体である請求項4から7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
各ベルトの端部は、対向するベルトの端部がショート・サーキットを作らなくても接触可能なように絶縁表面コーティングされる請求項4から8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記ベルトは織りベルトであり、前記導体素子は全体的にベルトに対して横向きに(generally transversely)配置された一連の横糸要素(weft elements)を含み、そして追加の移動要素(transfer elements)は該横糸要素に電気接触するように縦糸(the warp)に組み込まれているが、ベルト表面上に部分的に露出するように織られていて、全体的にベルトの両端の一方の端部に向かって配置され(located)、且つそれに沿って縦方向に伸びている請求項4から9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記濾過膜は、織られるか、編まれるか、ニードル・パンチされるか、不織りか、あるいは別の方法で製造された、主として絶縁性のポリマーベースの構造を持つ、シート構造内または構造上に緊密に結合した導体素子を備えるシート材料である先行するいずれかの請求項に記載の装置。
【請求項12】
前記導体素子は、糸、テープまたはワイヤなどから構成される細長い導体素子である請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記シート構造は、織られるか、編まれていて、前記細長い導体素子は該シートに織り込まれるか、編み込まれた請求項12に記載の装置。
【請求項14】
少なくとも電極シートの1つを構成する前記導体素子は、複合金属酸化物で被覆した金属素子から構成される請求項11から13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
前記フィルタ膜は、本質的に導電性の材料から構成される請求項1から10のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
前記フィルタ膜は、炭素を含んだポリマー材料から構成される請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記濾過膜は、複数の別個の導電領域を有する先行するいずれかの請求項に記載の装置。
【請求項18】
固体粒子と液体の混合物を含む物質から液体を除去する方法は、以下のステップを含む方法である:
格納手段(containment means)の中に該物質を格納することであり、この格納手段は物質中の液体を透過するが、少なくともいくつかの、好ましくは実質的に全ての汚泥スラリまたは尾鉱の固形成分(solid components)を透過しない第1の濾過膜を備える少なくとも1つの第1のシート部材によって少なくとも部分的に定められ(at least partially defined)、該濾過膜は、第1の電極として機能するように少なくともその一部と一体的に結合される少なくとも1つの導体素子を有する濾過材を備え;
そしてさらに第2の電極と共に少なくともその一部と一体的に結合された少なくとも1つの導体素子(at least one conductive element in intergral association with at least a part thereof so as to constitute where so associated a second electrode)を有するテキスタイルまたはその他の合成材料から構成される少なくとも1つの第2のシート部材によって部分的に定められる(partly defined);
該濾過膜を通して水力排水を引き起すために該物質に圧力をかけること;
該濾過膜を通して電気浸透排水を引き起すために該電極間に電位差を与えること。
【請求項19】
前記電位差は、濾過膜の導電領域(conductive area)の一部だけ、または複数の別個の導電ゾーン(conductive zones)の1カ所または2、3カ所に電源を印加することによって、前記物質を制御する領域を横断する方向にだけ与えられる請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記格納手段は、十分な液体量を有する被脱水物質の投入部(input)と液体量が低減された被脱水物質の排出部(output)のある導管、およびそれに沿って圧力をかける手段として提供される、連続ベルト処理を含む請求項18または19に記載の方法であって、被脱水物質を該投入部に供給すること、該物質を導管(a conduit)に沿って移動させること、水力と電気浸透の排水効果を同時に生じさせることによって液体量を減らすために圧力と電位差を被脱水物質を横断する方向に(thereacross)与えること、および該排出部で汚泥スラリまたは尾鉱を取り除くことを含む方法。
【請求項21】
汚泥、スラリ、鉱物廃棄物、ヘドロ、泥、浚渫または尾鉱の脱水による処理に適用される請求項18から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
現場で改良された変更点である(as an in situ, retorofitted modification)導電性のフィルタ膜を組み込むことによって、従来の水力脱水装置を改良する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−507338(P2007−507338A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530579(P2006−530579)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004181
【国際公開番号】WO2005/033024
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(506110760)エレクトロカイネティック リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】ELECTROKINETIC LIMITED
【住所又は居所原語表記】Nanotechnology Centre,Herschel Building,Newcastle University,Newcastle Upon Tyne NE1 7RU,United Kingdom
【Fターム(参考)】