説明

脱水機の汚泥圧入状態制御装置及び汚泥圧入状態制御方法

【課題】汚泥の圧入時間を適正化して、汚泥の脱水処理量の低下を抑制することが可能な、脱水機の圧入状態制御装置及び圧入状態制御方法を提供する。
【解決手段】圧入ポンプ4から濾過室2へ圧入される汚泥の圧入速度を検出する圧入速度検出部36と、濾過室2での汚泥の脱水処理速度を算出する脱水処理速度算出部42と、圧入速度検出部36が検出した圧入速度と脱水処理速度算出部42が算出した脱水処理速度とに基づいて、圧入ポンプ4の動作を制御する圧入状態制御部22を備え、圧入状態制御部22は、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥を圧入しており、且つ圧入速度検出部36が検出した圧入速度と脱水処理速度算出部42が算出した脱水処理速度との速度差が、予め設定した0よりも小さい速度差下限値から予め設定した0よりも大きい速度差上限値の範囲内であると判定すると、濾過室2への汚泥の圧入を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥(スラッジ)を脱水して脱水ケーキを形成する脱水機の制御に関し、汚泥の脱水処理を行う濾過室への汚泥の圧入状態を制御するための、脱水機の汚泥圧入状態制御装置及び汚泥圧入状態制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所等に設置されている設備から排出される汚泥(スラッジ)を処理するために、汚泥を加圧・圧搾して脱水し、汚泥が含む水分を除去した脱水ケーキを形成する脱水機(フィルタープレス機)が用いられている。
このような脱水機では、一般的に、脱水処理を行う濾過室へ汚泥の圧入を開始してから、濾過室への汚泥の圧入を停止するまでの圧入時間を、極端に変更する必要がある場合以外では固定値に設定している。
【0003】
適切な圧入時間は汚泥の性状によって異なるため、汚泥を排出する設備や季節等、汚泥の性状が変化する場合は、汚泥の性状に合わせて、その都度、圧入時間を設定することが好ましい。しかしながら、汚泥の性状が変化する度に最適な圧入時間を設定すると、運転時の作業が煩雑なものとなるという問題が発生するおそれがある。
この問題に対して、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されている技術が提案されている。
【0004】
特許文献1には、脱水機へ供給される汚泥の濃度及び量と、脱水機から排出される濾液(汚泥から脱水した液体)の量を検出し、これらの検出した値に基づいて設定した脱水ケーキの含水率を用いて、圧入時間を自動設定する技術が開示されている。
特許文献2には、濾過室における汚泥圧入時の濃縮汚泥濃度及び圧搾時(脱水時)の濃縮汚泥濃度に基づいて、圧入時間を自動設定する技術が開示されている。ここで、濃縮汚泥濃度は、脱水ケーキの含水率に関する値である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭59‐29282号公報
【特許文献2】特許第2625665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1や2に記載されている技術では、脱水ケーキの含水率に基づいて圧入時間を自動設定しているが、汚泥を脱水処理する脱水処理量に基づく圧入時間の最適化は行われていない。
しかしながら、圧入時間の長さと単位時間当たりの汚泥の脱水処理量との間には、以下の関係がある。
圧入時間が適正値より短いほど1パッチ当たりの脱水処理量が少なくなり、1パッチの運転時間を短縮する効果よりも、脱水処理量が低下する影響の方が大きくなる。このため、圧入時間が適正値より短いと、単位時間当たりの脱水処理量が低下するという問題が発生するおそれがある。
【0007】
一方、圧入時間が適正値より長いほど1パッチ当たりの運転時間が長くなり、1パッチの脱水処理量を増加させる効果よりも、運転時間が長くなる影響の方が大きくなる。このため、圧入時間が適正値より長いと、単位時間当たりの脱水処理量が低下するという問題が発生するおそれがある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、汚泥の圧入状態を制御して圧入時間を適正化することにより、汚泥の脱水処理量の低下を抑制することが可能な、脱水機の圧入状態制御装置及び圧入状態制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のうち、請求項1に記載した発明は、圧入された汚泥の脱水処理を行う濾過室と、前記濾過室へ前記汚泥を圧入可能な汚泥圧入部と、を備える脱水機に対し、前記濾過室への前記汚泥の圧入状態を制御する脱水機の汚泥圧入状態制御装置であって、
前記汚泥圧入部から前記濾過室へ圧入される前記汚泥の圧入速度を検出する圧入速度検出部と、
前記濾過室での前記汚泥の脱水処理速度を算出する脱水処理速度算出部と、
前記圧入速度検出部が検出した圧入速度と前記脱水処理速度算出部が算出した脱水処理速度とに基づいて、前記汚泥圧入部の動作を制御する圧入状態制御部と、を備え、
前記圧入状態制御部は、前記汚泥圧入部が前記濾過室へ前記汚泥を圧入しており、且つ前記圧入速度検出部が検出した圧入速度と前記脱水処理速度算出部が算出した脱水処理速度との速度差が、予め設定した0よりも小さい速度差下限値から予め設定した0よりも大きい速度差上限値の範囲内であると判定すると、前記濾過室への前記汚泥の圧入を停止させることを特徴とするものである。
【0009】
本発明によると、圧入状態制御部が、汚泥圧入部が濾過室へ汚泥を圧入しており、且つ圧入速度検出部が検出した圧入速度と脱水処理速度算出部が算出した脱水処理速度との速度差が、予め設定した0よりも小さい速度差下限値から予め設定した0よりも大きい速度差上限値の範囲内であると判定すると、濾過室への汚泥の圧入を停止させる。
このため、圧入速度と脱水処理速度との速度差が、濾過室への汚泥の圧入を継続するよりも、濾過室への汚泥の圧入を停止して圧搾(脱水)工程へ移行することで、単位時間当たりの脱水処理量が増加する速度差となる状態で、濾過室への汚泥の圧入を停止させることが可能となる。
【0010】
次に、本発明のうち、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明であって、前記圧入状態制御部は、前記汚泥圧入部が前記濾過室へ前記汚泥を圧入しており、且つ前記圧入速度検出部が検出した圧入速度と前記脱水処理速度算出部が算出した脱水処理速度との速度差が0であると判定すると、前記濾過室への前記汚泥の圧入を停止させることを特徴とするものである。
【0011】
本発明によると、圧入状態制御部が、汚泥圧入部が濾過室へ汚泥の圧入を開始しており、且つ圧入速度検出部が検出した圧入速度と脱水処理速度算出部が算出した脱水処理速度との速度差が0であると判定すると、濾過室への汚泥の圧入を停止させる。
このため、圧入速度と脱水処理速度との速度差が、単位時間当たりの脱水処理量が最大値となる状態で、濾過室への汚泥の圧入を停止させることが可能となる。
【0012】
次に、本発明のうち、請求項3に記載した発明は、請求項1または請求項2に記載した発明であって、前記汚泥圧入部から前記濾過室へ圧入された前記汚泥の積算量である圧入量を測定する圧入量測定部と、
前記汚泥圧入部が前記濾過室へ前記汚泥の圧入を開始した時点から経過した経過時間を測定する経過時間測定部と、を備え、
前記脱水処理速度算出部は、前記圧入量測定部が測定した圧入量を前記経過時間測定部が測定した経過時間で除算した値を用いて、前記脱水処理速度を算出することを特徴とするものである。
【0013】
本発明によると、脱水処理速度算出部が、圧入量測定部が測定した圧入量を経過時間測定部が測定した経過時間で除算した値を用いて、脱水処理速度を算出する。
このため、圧入量測定部がリアルタイムで測定した圧入量と、経過時間測定部がリアルタイムで測定した経過時間を用いて、脱水処理速度を算出することが可能となる。
【0014】
次に、本発明のうち、請求項4に記載した発明は、圧入された汚泥の脱水処理を行う濾過室と、前記濾過室へ前記汚泥を圧入可能な汚泥圧入部と、を備える脱水機に対し、前記濾過室への前記汚泥の圧入状態を制御する脱水機の汚泥圧入状態制御方法であって、
前記汚泥圧入部から前記濾過室へ圧入される前記汚泥の圧入速度を検出する圧入速度検出ステップと、
前記濾過室での前記汚泥の脱水処理速度を算出する脱水処理速度算出ステップと、
前記圧入速度検出ステップで検出した圧入速度と前記脱水処理速度算出ステップで算出した脱水処理速度とに基づいて、前記汚泥圧入部の動作を制御する圧入状態制御ステップと、を有し、
前記圧入状態制御ステップでは、前記汚泥圧入部が前記濾過室へ前記汚泥を圧入しており、且つ前記圧入速度検出ステップで検出した圧入速度と前記脱水処理速度算出ステップで算出した脱水処理速度との速度差が、予め設定した0よりも小さい速度差下限値から予め設定した0よりも大きい速度差上限値の範囲内であると判定すると、前記濾過室への前記汚泥の圧入を停止させることを特徴とするものである。
【0015】
本発明によると、圧入状態制御ステップにおいて、汚泥圧入部が濾過室へ汚泥を圧入しており、且つ圧入速度検出ステップで検出した圧入速度と脱水処理速度算出ステップで算出した脱水処理速度との速度差が、予め設定した0よりも小さい速度差下限値から予め設定した0よりも大きい速度差上限値の範囲内であると判定すると、濾過室への汚泥の圧入を停止させる。
このため、圧入速度と脱水処理速度との速度差が、濾過室への汚泥の圧入を継続するよりも圧搾工程へ移行することで、単位時間当たりの脱水処理量が増加する速度差となる状態で、濾過室への汚泥の圧入を停止させることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、圧入速度と脱水処理速度との速度差が、濾過室への汚泥の圧入を継続するよりも圧搾工程へ移行することで、単位時間当たりの脱水処理量が増加する速度差となる状態で、濾過室への汚泥の圧入を停止させることが可能となる。
このため、濾過室への汚泥の圧入状態を制御して、濾過室へ汚泥の圧入を開始してから濾過室への汚泥の圧入を停止させるまでの圧入時間を適正化することが可能となり、汚泥の脱水処理量の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施形態の圧入状態制御装置の概略構成を示す図である。
【図2】濾過室の概略構成を示す断面図である。
【図3】濾過室へ汚泥を圧入した状態を示す断面図である。
【図4】濾過室において汚泥を圧搾している状態を示す断面図である。
【図5】汚泥の性状を示すグラフである。
【図6】脱水処理速度及び圧入速度と経過時間との関係を示す図である。
【図7】図6中に示した脱水処理速度、圧入速度及び経過時間と、圧入量との関係を示す表である。
【図8】二種類の汚泥の性状を示すグラフである。
【図9】脱水処理速度及び圧入速度と経過時間との関係を示す図である。
【図10】図9中に示した脱水処理速度、圧入速度及び経過時間と、圧入量との関係を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図1から図4を用いて、本実施形態の脱水機の圧入状態制御装置(以下、「圧入状態制御装置」と記載する)の構成を説明する。
図1は、本実施形態の圧入状態制御装置1の概略構成を示す図である。
圧入状態制御装置1は、圧入された汚泥の脱水処理を行う複数の濾過室2と、各濾過室2へ汚泥を圧入可能な圧入ポンプ4を備える脱水機6に対し、濾過室2への汚泥の圧入状態を制御する装置である。
【0019】
なお、本実施形態では、一例として、脱水処理の対象である汚泥を、水分を含んだ泥とした場合を説明するが、汚泥の種類は、これに限定するものではなく、例えば、水分を含んだ砂としてもよい。
ここで、脱水機6は、上述した濾過室2及び圧入ポンプ4に加え、汚泥タンク8と、圧入配管10を備えている。
各濾過室2は、圧入された汚泥の脱水処理を行う空間であり、例えば、図2中に示すように、一対の濾板12と、濾布14を備えている。なお、図2は、濾過室2の概略構成を示す断面図である。
【0020】
一対の濾板12は、互いに対向する面に、それぞれ、凹部16を有しており、油圧ポンプ(図示せず)により移動して、互いに近接または離間する。
また、一対の濾板12は、それぞれ、凹部16よりも鉛直方向で上方の位置に、給液口18を有している。
一対の濾板12のうち一方が有する凹部16内には、ダイアフラム20が配置されている。
ダイアフラム20は、板状に形成されており、濾過室2の外部から供給される加圧水により変位して、他方の濾板12が有する凹部16側へ移動する。
【0021】
給液口18は、圧入配管10と連通している。
濾布14は、透水性を有する一体物の布で形成されており、一対の濾板12のうち、互いに対向する面を、覆っている。また、濾布14の両端は、それぞれ、一対の濾板12の下端側に取り付けられている。また、濾布14の中心は、一対の濾板12が互いに近接している状態で、一対の濾板12間から鉛直方向で上方へ突出している。
【0022】
圧入ポンプ4は、後述する圧入状態制御部22が出力した指令信号に基づいて、駆動または停止する。駆動状態の圧入ポンプ4は、汚泥タンク8内に貯蔵されている汚泥を、圧入配管10及び給液口18を介して、濾過室2内へ圧入する。すなわち、圧入ポンプ4は、濾過室2へ汚泥を圧入可能な汚泥圧入部を形成している。
汚泥タンク8は、製鉄所等から排出されて搬送されてきた汚泥(スラッジ)を、一時的に貯蔵するタンクである。
【0023】
また、汚泥タンク8には、貯蔵した汚泥を攪拌可能なインペラ24と、このインペラ24を回転可能なモータ26が設けられている。
圧入配管10は、汚泥タンク8と濾過室2とを連通させる配管である。
また、圧入配管10のうち、汚泥タンク8と濾過室2との間には、汚泥タンク8に連通する残液戻し配管28が分岐している。
残液戻し配管28には、残液戻しバルブ30が設けられている。
残液戻しバルブ30は、通常では閉鎖状態とし、各濾過室2へ汚泥の圧入が困難な状態である場合等に開放状態として、残液戻し配管28を連通させる。これにより、圧入ポンプ4から濾過室2へ圧入される汚泥を、残液戻し配管28を介して汚泥タンク8へ戻す。
【0024】
また、圧入状態制御装置1は、流量計32と、制御盤34を備えている。
流量計32は、圧入配管10に取り付けられており、圧入配管10内を移動する汚泥、すなわち、圧入ポンプ4から濾過室2へ圧入される汚泥の量を、単位時間(例えば、1[秒])当たりで検出する。また、流量計32は、単位時間当たりで検出した汚泥の量を含む情報信号を、制御盤34へ出力する。
制御盤34は、圧入速度検出部36と、圧入量測定部38と、経過時間測定部40と、脱水処理速度算出部42と、圧入状態制御部22を備えている。
【0025】
圧入速度検出部36は、流量計32から圧入状態制御部22へ入力された情報信号に基づき、流量計32が単位時間当たりで検出した汚泥の量を参照して、圧入ポンプ4から濾過室2へ圧入される汚泥の速度である圧入速度を検出する。
圧入量測定部38は、流量計32から圧入状態制御部22へ入力された情報信号に基づき、流量計32が単位時間当たりで検出した汚泥の量を参照して、汚泥タンク8から濾過室2へ圧入された汚泥の積算量である圧入量を測定する。
【0026】
すなわち、圧入量測定部38は、濾過室2へ汚泥の圧入を開始してから圧入配管10内を移動した汚泥の量をリアルタイムに積算して、汚泥タンク8から濾過室2へ圧入された汚泥の積算量である圧入量を測定する。
経過時間測定部40は、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥の圧入を開始した時点から経過した経過時間を測定する。
【0027】
脱水処理速度算出部42は、圧入量測定部38が測定した圧入量と、経過時間測定部40が測定した経過時間を参照するとともに、以下の式(1)を用いて、濾過室2での汚泥の脱水処理速度を算出する。ここで、脱水処理速度とは、濾過室2において、単位時間当たりに汚泥の脱水処理を行う速度である。
脱水処理速度=圧入量/(経過時間+圧搾時間+雑動時間) … (1)
上式(1)において、圧搾時間は、濾過室2において汚泥に対する圧搾(圧搾脱水)を行う時間である。なお、本実施形態では、一例として、圧搾時間を、汚泥の性状に関わらず固定値に設定した場合を示す。
【0028】
濾過室2で行う圧搾とは、まず、図2中に示すように、一対の濾板12を互いに近接させている状態で、互いに対向する凹部16間において、濾布14により囲まれた空間を形成した後に、図3中に示すように、濾布14により囲まれた空間へ、圧入配管10及び給液口18を介して汚泥Sを圧入する。なお、図3は、濾過室2へ汚泥Sを圧入した状態を示す断面図である。
【0029】
そして、図4中に示すように、ダイアフラム20を配置した凹部16内へ加圧水を供給して、ダイアフラム20を、他方の濾板12が有する凹部16側へ移動させることにより、濾布14により囲まれた空間へ圧入された汚泥Sを圧搾する。ダイアフラム20により圧搾された汚泥Sから絞り出された液体(濾液)は、濾布14を通過して排出される。また、圧搾して脱水処理された汚泥Sは、脱水ケーキとして搬送される。なお、図4は、濾過室2において汚泥Sを圧搾している状態を示す断面図である。
【0030】
したがって、本実施形態では、一例として、上式(1)における圧搾時間を、ダイアフラム20を変位させる時間とした場合を示す。
また、上式(1)において、雑動時間は、脱水機6の固有値であり、例えば、濾過室2で汚泥を圧搾して形成した脱水ケーキを濾過室2から取り出す作業に要する時間や、濾過室2で汚泥の脱水に用いる濾過布の洗浄作業に要する時間等の合計値である。
【0031】
すなわち、上式(1)において、圧搾時間と雑動時間は固定値である。したがって、本実施形態の脱水処理速度算出部42は、圧入量測定部38が測定した圧入量を経過時間測定部40が測定した経過時間で除算した値を用いて、脱水処理速度を算出する。
圧入状態制御部22は、脱水機6の使用時に、圧入ポンプ4へ指令信号を出力して、圧入ポンプ4を駆動させる。
【0032】
これに加え、圧入状態制御部22は、圧入速度検出部36が検出した圧入速度と脱水処理速度算出部42が算出した脱水処理速度とに基づいて、圧入ポンプ4へ指令信号を出力して、圧入ポンプ4を停止させる。すなわち、圧入状態制御部22は、圧入速度検出部36が検出した圧入速度と脱水処理速度算出部42が算出した脱水処理速度とに基づいて、圧入ポンプ4の動作を制御する。
具体的には、圧入状態制御部22は、脱水ケーキの形成を開始する際に、圧入ポンプ4を駆動させる指令信号を圧入ポンプ4へ出力する。
【0033】
また、圧入状態制御部22は、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥を圧入しており、且つ圧入速度検出部36が検出した圧入速度と脱水処理速度算出部42が算出した脱水処理速度との速度差が、予め設定した0よりも小さい速度差下限値から予め設定した0よりも大きい速度差上限値の範囲内であると判定すると、圧入ポンプ4を停止させる指令信号を、駆動中の圧入ポンプ4へ出力する。これにより、濾過室2への汚泥の圧入を停止させて、濾過室2へ汚泥の圧入を開始してから濾過室2への汚泥の圧入を停止させるまでの圧入時間を制御する。
【0034】
本実施形態では、一例として、圧入状態制御部22が、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥を圧入しており、且つ圧入速度検出部36が検出した圧入速度と脱水処理速度算出部42が算出した脱水処理速度との速度差が0であると判定すると、圧入ポンプ4を停止させる指令信号を、駆動中の圧入ポンプ4へ出力する場合を示す。
すなわち、本実施形態では、速度差下限値及び速度差上限値を、共に、「0」に設定する。
【0035】
(動作・作用等)
以下、図1から図4を参照しつつ、図5から図7を用いて、上記の構成を備えた圧入状態制御装置1が行う動作・作用等について説明する。
本実施形態の圧入状態制御装置1を用いて、脱水機6に対し、濾過室2への汚泥の圧入状態を制御する際には、まず、圧入状態制御部22から、圧入ポンプ4を駆動させる指令信号を圧入ポンプ4へ出力する。
駆動状態の圧入ポンプ4は、汚泥タンク8内に貯蔵されている汚泥を濾過室2内へ圧入する。
【0036】
本実施形態では、一例として、汚泥の性状が、図5中に示す性状である場合について説明する。
図5は、汚泥の性状を示すグラフであり、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥を圧入する際の、圧入量と経過時間との関係を示すグラフである。なお、図5中では、縦軸に圧入量(m3)を示し、横軸に経過時間(min)を示している。
濾過室2へ汚泥の圧入を開始した直後は、濾布14により囲まれた空間(図3参照)が広いため、汚泥の圧入速度が速くなり、図5中に示すように、時間の経過に応じて圧入量が増加する。
【0037】
しかしながら、濾過室2へ汚泥の圧入を継続すると、濾布14により囲まれた空間(図3参照)が、圧入された汚泥により狭くなるため、汚泥の圧入速度が低下する。これにより、濾過室2へ汚泥の圧入を開始した直後と比較して、図5中に示すように、時間が経過するほど、時間の経過に対する圧入量の増加度合いが低下することとなる。
【0038】
圧入ポンプ4が汚泥を濾過室2内へ圧入すると、流量計32が、圧入配管10内を移動する汚泥の量を単位時間当たりで検出し、この検出した汚泥の量を含む情報信号を、制御盤34へ出力する。
情報信号の入力を受けた制御盤34では、圧入速度検出部36、圧入量測定部38、経過時間測定部40、脱水処理速度算出部42及び圧入状態制御部22が、それぞれ、上述した処理を行う。
【0039】
具体的には、圧入速度検出部36が上述した圧入速度を検出し(圧入速度検出ステップ)、圧入量測定部38が上述し圧入量を測定し(圧入量測定ステップ)、経過時間測定部40が上述した経過時間を測定する(経過時間測定ステップ)。
また、脱水処理速度算出部42が、圧入量測定部38が測定した圧入量と、経過時間測定部40が測定した経過時間を参照するとともに、上式(1)を用いて脱水処理速度を算出する(脱水処理速度算出ステップ)。
【0040】
本実施形態では、一例として、圧搾時間が8分であり、雑動時間が12分である場合について説明する。
したがって、本実施形態では、脱水処理速度算出部42が算出した脱水処理速度及び圧入速度検出部36が検出した圧入速度と、経過時間測定部40が測定した経過時間との関係が、図6及び図7中に示す関係となる。なお、図6は、脱水処理速度及び圧入速度と経過時間との関係を示す図であり、図7は、図6中に示した脱水処理速度、圧入速度及び経過時間と、圧入量との関係を示す表である。また、図6中では、縦軸に脱水処理速度及び圧入速度(m3/h)を示し、横軸に経過時間(min)を示している。
【0041】
本実施形態では、汚泥の性状が、図5中に示す性状であり、圧搾時間が8分であり、雑動時間が12分である。このため、図6中に示すように、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥の圧入を開始した時点から、脱水処理速度算出部42が算出した脱水処理速度と圧入速度検出部36が検出した圧入速度との速度差が0となった時点までに経過した経過時間は、5分40秒程度となる。
【0042】
したがって、本実施形態の圧入状態制御部22は、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥の圧入を開始した時点から、5分40秒程度が経過した時点で、圧入ポンプ4を停止させる指令信号を駆動中の圧入ポンプ4へ出力して、圧入ポンプ4を停止させる(圧入状態制御ステップ)。
すなわち、本実施形態の圧入状態制御部22は、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥を圧入しており、且つ圧入速度検出部36が検出した圧入速度と脱水処理速度算出部42が算出した脱水処理速度との速度差が0であると判定すると、濾過室2への汚泥の圧入を停止させる。
【0043】
ここで、圧入状態制御部22が、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥の圧入を開始した時点から、脱水処理速度と圧入速度が同一速度となった時点で、圧入ポンプ4を停止させる指令信号を、駆動中の圧入ポンプ4へ出力する理由について説明する。
脱水機6による脱水ケーキの形成において濾過室2で行う汚泥の脱水処理では、圧入速度が脱水処理速度よりも大きい場合、濾過室2への汚泥の圧入を継続すると単位時間当たりの脱水処理量が増加する。
一方、脱水処理速度が圧入速度よりも大きい場合、濾過室2への汚泥の圧入を停止して圧搾(脱水)工程へ移行すると、単位時間当たりの脱水処理量が増加する。
【0044】
以上により、脱水機6による脱水ケーキの形成において濾過室2で行う汚泥の脱水処理では、脱水処理速度と圧入速度が同一速度となった時点で、駆動中の圧入ポンプ4を停止させて、濾過室2への汚泥の圧入を停止させることにより、単位時間当たりの脱水処理量が最大値となる。このため、圧入状態制御部22は、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥の圧入を開始した時点から、脱水処理速度と圧入速度が同一速度となった時点で、圧入ポンプ4を停止させる指令信号を、駆動中の圧入ポンプ4へ出力する。
【0045】
駆動中の圧入ポンプ4が停止して、濾過室2へ汚泥の圧入が停止すると、濾過室2内の汚泥は、ダイアフラム等を用いた圧搾工程で圧搾・脱水されて、脱水ケーキが形成される。この形成された脱水ケーキは、濾過室2内から排出されて、二次処理設備等へ搬出される。
そして、上述したように、圧入ポンプ4を駆動させて汚泥を濾過室2内へ圧入し、再び、上述した脱水処理を行う。
【0046】
ここで、汚泥の性状が図5中に示す性状から変化しており、流量計32が単位時間当たりで検出した、圧入配管10内を移動する汚泥の量が変化している場合、この性状が変化した汚泥に応じて、圧入速度検出部36、圧入量測定部38、経過時間測定部40、脱水処理速度算出部42及び圧入状態制御部22が上述した処理を行う。
汚泥タンク8内から濾過室2内へ圧入される汚泥の性状が変化しても、この性状の変化は、流量計32が単位時間当たりで検出した、圧入配管10内を移動する汚泥の量の変化に対応している。
【0047】
したがって、本実施形態の圧入状態制御装置1を用いることにより、汚泥タンク8内から濾過室2内へ圧入される汚泥の性状が変化しても、濾過室2へ汚泥の圧入を開始してから、濾過室2への汚泥の圧入を停止するまでの圧入時間を、適正値に設定することが可能となる。
【0048】
なお、上述したように、本実施形態の圧入状態制御装置1の動作で実施する脱水機の圧入状態制御方法は、脱水機6に対し、濾過室2への汚泥の圧入状態を制御する方法である。具体的には、圧入ポンプ4から濾過室2へ圧入される汚泥の圧入速度を検出する圧入速度検出ステップと、濾過室2での汚泥の脱水処理速度を算出する脱水処理速度算出ステップと、圧入速度検出ステップで検出した圧入速度と脱水処理速度算出ステップで算出した脱水処理速度とに基づいて、圧入ポンプ4の動作を制御する圧入状態制御ステップを有する方法である。
【0049】
これに加え、本実施形態の圧入状態制御方法は、圧入状態制御ステップにおいて、圧入ポンプ4が濾過室へ汚泥を圧入しており、且つ圧入速度検出ステップで検出した圧入速度と脱水処理速度算出ステップで算出した脱水処理速度との速度差が、予め設定した0よりも小さい速度差下限値から予め設定した0よりも大きい速度差上限値の範囲内であると判定すると、濾過室2への汚泥の圧入を停止させる。
【0050】
(第一実施形態の効果)
以下、本実施形態の効果を列挙する。
(1)本実施形態の圧入状態制御装置1では、圧入状態制御部22が、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥を圧入しており、且つ圧入速度検出部36が検出した圧入速度と脱水処理速度算出部42が算出した脱水処理速度との速度差が、予め設定した0よりも小さい速度差下限値から予め設定した0よりも大きい速度差上限値の範囲内であると判定すると、濾過室2への汚泥の圧入を停止させる。
【0051】
このため、圧入速度と脱水処理速度との速度差が、濾過室2への汚泥の圧入を継続するよりも、濾過室2への汚泥の圧入を停止して圧搾(脱水)工程へ移行することで、単位時間当たりの脱水処理量が増加する速度差となる状態で、濾過室2への汚泥の圧入を停止させることが可能となる。
【0052】
その結果、濾過室2への汚泥の圧入状態を制御して、濾過室2へ汚泥の圧入を開始してから濾過室2への汚泥の圧入を停止させるまでの圧入時間を適正化することが可能となり、汚泥の脱水処理量の低下を抑制することが可能となる。
また、濾過室2へ圧入される汚泥の性状が変化しても、この性状が変化した汚泥に応じて、濾過室2へ汚泥の圧入を開始してから、濾過室2への汚泥の圧入を停止するまでの圧入時間を、適正値に設定することが可能となる。
【0053】
(2)本実施形態の圧入状態制御装置1では、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥を圧入しており、且つ圧入速度検出部36が検出した圧入速度と脱水処理速度算出部42が算出した脱水処理速度との速度差が0であると判定すると、濾過室2への汚泥の圧入を停止させる。
このため、圧入速度と脱水処理速度との速度差が、単位時間当たりの脱水処理量が最大値となる状態で、濾過室2への汚泥の圧入を停止させることが可能となる。
その結果、圧入速度と脱水処理速度が同一速度となった時点と異なる時点で圧入ポンプ4を停止させる場合と比較して、圧入時間を更に適正化することが可能となり、汚泥の脱水処理量の低下を、更に抑制することが可能となる。
【0054】
(3)本実施形態の圧入状態制御装置1では、脱水処理速度算出部42が、圧入量測定部38が測定した圧入量を経過時間測定部40が測定した経過時間で除算した値を用いて、脱水処理速度を算出する。
このため、圧入量測定部38がリアルタイムで測定した圧入量と、経過時間測定部40がリアルタイムで測定した経過時間を用いて、脱水処理速度を算出することが可能となる。
その結果、濾過室2へ圧入される汚泥の性状が変化しても、この性状の変化に応じた圧入量と経過時間をリアルタイムで測定して、脱水処理速度を算出することが可能となるため、汚泥の性状の変化に応じて、圧入時間を適正値に設定することが可能となる。
【0055】
(4)本実施形態の脱水機圧入時間制御方法では、圧入状態制御ステップにおいて、圧入ポンプ4が濾過室へ汚泥を圧入しており、且つ圧入速度検出ステップで検出した圧入速度と脱水処理速度算出ステップで算出した脱水処理速度との速度差が、予め設定した0よりも小さい速度差下限値から予め設定した0よりも大きい速度差上限値の範囲内であると判定すると、濾過室2への汚泥の圧入を停止させる。
【0056】
このため、圧入速度と脱水処理速度との速度差が、濾過室2への汚泥の圧入を継続するよりも圧搾工程へ移行することで、単位時間当たりの脱水処理量が増加する速度差となる状態で、濾過室2への汚泥の圧入を停止させることが可能となる。
その結果、濾過室2への汚泥の圧入状態を制御して、圧入時間を適正化することが可能となり、汚泥の脱水処理量の低下を抑制することが可能となる。また、濾過室2へ圧入される汚泥の性状の変化に応じて、圧入時間を適正値に設定することが可能となる。
【0057】
(変形例)
以下、本実施形態の変形例を列挙する。
(1)本実施形態の圧入状態制御装置1では、速度差下限値及び速度差上限値を、共に、「0」に設定したが、速度差下限値及び速度差上限値として設定する値は、これに限定するものではない。すなわち、例えば、0よりも小さい速度差下限値として、圧入速度から脱水処理速度を減算した速度差が約−7[m3/h]である値を設定し、0よりも大きい速度差上限値として、圧入速度から脱水処理速度を減算した速度差が約10[m3/h]である値を設定してもよい。この場合、速度差下限値から速度差上限値の範囲は、速度差「0」を含む約17[m3/h]の範囲となる。
【0058】
(2)本実施形態の圧入状態制御装置1では、圧入状態制御部22が、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥を圧入しており、且つ圧入速度と脱水処理速度との速度差が0であると判定すると、濾過室2へ汚泥の圧入を停止させたが、これに限定するものではない。
すなわち、例えば、速度差下限値を、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥の圧入を開始した時点から圧入速度と脱水処理速度が同一速度となる時点までに経過した時間の、140%における速度差とするとともに、速度差上限値を、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥の圧入を開始した時点から圧入速度と脱水処理速度が同一速度となる時点までに経過した時間の、60%における速度差とする。これに加え、圧入状態制御部22が、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥を圧入しており、且つ圧入速度と脱水処理速度との速度差が、上記のように設定して速度差下限値から速度差上限値の範囲内であると判定すると、濾過室2へ汚泥の圧入を停止させる構成としてもよい。
【0059】
この場合、速度差下限値を、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥の圧入を開始した時点から圧入速度と脱水処理速度が同一速度となる時点までに経過した時間の140%を超える時間における速度差とした場合と比較して、圧入時間を適正化することが可能となり、汚泥の脱水処理量の低下を抑制することが可能となる。
同様に、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥の圧入を開始した時点から圧入速度と脱水処理速度が同一速度となる時点までに経過した時間の60%未満の時間における速度差とした場合と比較して、圧入時間を適正化することが可能となり、汚泥の脱水処理量の低下を抑制することが可能となる。
【0060】
(実施例)
以下、図1から図7を参照しつつ、図8から図10を用いて、比較例及び本発明例の圧入状態制御装置を用いて、本発明例の圧入状態制御装置が奏する効果を検証した結果について説明する。
本発明例の圧入状態制御装置が奏する効果の検証は、脱水機6において、図8中に示すように、性状が異なる二種類の汚泥(汚泥A,汚泥B)を、汚泥Aの後に汚泥Bを濾過室2へ圧入した条件下で行う。
図8は、汚泥Aと汚泥Bの性状を示すグラフであり、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥を圧入する際の、圧入量と経過時間との関係を示すグラフである。なお、図8中では、図5中と同様、縦軸に圧入量(m3)を示し、横軸に経過時間(min)を示している。
【0061】
本発明例の圧入状態制御装置1は、上述した第一実施形態と同様の構成とする。
すなわち、本発明例の圧入状態制御装置1では、汚泥Aを濾過室2へ圧入している状態では、流量計32が、圧入配管10内を移動する汚泥Aの量を単位時間当たりで検出し、この検出した汚泥Aの量を用いて、脱水処理速度算出部42が脱水処理速度を算出する。これに加え、圧入状態制御部22が、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥Aの圧入を開始した時点から、脱水処理速度と圧入速度が同一速度となった時点で、圧入ポンプ4を停止させる指令信号を、駆動中の圧入ポンプ4へ出力する。
【0062】
さらに、本発明例の圧入状態制御装置1では、汚泥Aを濾過室2への圧入を停止した後に、汚泥Bを濾過室2へ圧入している状態では、流量計32が、圧入配管10内を移動する汚泥Bの量を単位時間当たりで検出し、この検出した汚泥Bの量を用いて、脱水処理速度算出部42が脱水処理速度を算出する。これに加え、圧入状態制御部22が、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥Bの圧入を開始した時点から、脱水処理速度と圧入速度が同一速度となった時点で、圧入ポンプ4を停止させる指令信号を、駆動中の圧入ポンプ4へ出力する。
【0063】
一方、比較例の圧入状態制御装置1の構成は、性状が異なる二種類の汚泥Aと汚泥Bのうち、先に濾過室2へ圧入する汚泥Aの性状に応じて圧入時間を設定し、この汚泥Aの性状に応じて設定した圧入時間を固定値とする。すなわち、比較例の圧入状態制御装置1では、汚泥Aを濾過室2への圧入を停止した後に、汚泥Bを濾過室2へ圧入している状態においても、汚泥Aの性状に応じて設定した圧入時間を用いて、濾過室2への汚泥Bの圧入を停止させる。
【0064】
次に、本発明例及び比較例の圧入状態制御装置1を用いて、性状が異なる二種類の汚泥Aと汚泥Bの脱水処理を行い、それぞれの汚泥に対する脱水処理速度と平均値を検出し、その検出した脱水処理速度及び平均値を比較した結果について説明する。
本発明例の圧入状態制御装置1が奏する効果の検証では、上述した第一実施形態と同様、圧搾時間を8分とし、雑動時間を12分とする。
【0065】
したがって、本発明例の圧入状態制御装置1が奏する効果の検証では、脱水処理速度算出部42が算出した脱水処理速度及び圧入速度検出部36が検出した圧入速度と、経過時間測定部40が測定した経過時間との関係が、図9及び図10中に示す関係となる。なお、図9は、脱水処理速度及び圧入速度と経過時間との関係を示す図であり、図10は、図9中に示した脱水処理速度、圧入速度及び経過時間と、圧入量との関係を示す表である。また、図9中では、図6中と同様、縦軸に脱水処理速度及び圧入速度(m3/h)を示し、横軸に経過時間(min)を示している。
【0066】
上述したように、汚泥A及び汚泥Bの性状は、図8中に示す性状であり、圧搾時間は8分であり、雑動時間は12分である。
このため、図8中に示すように、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥Aの圧入を開始した時点から、脱水処理速度算出部42が算出した脱水処理速度と圧入速度検出部36が検出した圧入速度が同一速度となった時点までに経過した経過時間は、5分40秒程度となる。
【0067】
一方、図8中に示すように、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥Bの圧入を開始した時点から、脱水処理速度算出部42が算出した脱水処理速度と圧入速度検出部36が検出した圧入速度が同一速度となった時点までに経過した経過時間は、9分30秒程度となる。
上述したように、本発明例の圧入状態制御装置1を用いて、汚泥Aの脱水処理を行う際には、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥Aの圧入を開始した時点から、5分40秒程度が経過した時点(図9中に示す「運転点A」)で、圧入ポンプ4を停止させて、濾過室2への汚泥Aの圧入を停止させる。
【0068】
そして、汚泥Aの脱水処理を行った後に、汚泥Bの脱水処理を行う際には、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥Bの圧入を開始した時点から、9分30秒程度が経過した時点(図9中に示す「運転点B」)で、圧入ポンプ4を停止させて、濾過室2への汚泥Bの圧入を停止させる。
【0069】
一方、比較例の圧入状態制御装置1を用いて、汚泥Aの脱水処理を行う際には、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥Aの圧入を開始した時点から、5分40秒程度が経過した時点(図9中に示す「運転点A」)で、圧入ポンプ4を停止させて、濾過室2への汚泥Aの圧入を停止させる。そして、汚泥Aの脱水処理を行った後に、汚泥Bの脱水処理を行う際にも、汚泥Aの脱水処理を行う際と同様、圧入ポンプ4が濾過室2へ汚泥Bの圧入を開始した時点から、5分40秒程度が経過した時点(図9中に示す「運転点A」)で、圧入ポンプ4を停止させて、濾過室2への汚泥Bの圧入を停止させる。
【0070】
その結果、比較例の圧入状態制御装置1を用いて、汚泥Aと汚泥Bの脱水処理を行い、それぞれの汚泥に対する脱水処理速度と平均値を検出すると、汚泥Aの脱水処理速度は、11.1[m3/h]となり、汚泥Bの脱水処理速度は、11.3[m3/h]となり、汚泥Aの脱水処理速度と汚泥Bの脱水処理速度との平均値は、11.2[m3/h]となった。
【0071】
これに対し、本発明例の圧入状態制御装置1を用いて、汚泥Aと汚泥Bの脱水処理を行い、それぞれの汚泥に対する脱水処理速度と平均値を検出すると、汚泥Aの脱水処理速度は、11.1[m3/h]となり、汚泥Bの脱水処理速度は、12.5[m3/h]となり、汚泥Aの脱水処理速度と汚泥Bの脱水処理速度との平均値は、11.8[m3/h]となった。
【0072】
すなわち、本発明例の圧入状態制御装置1を用いることにより、比較例の圧入状態制御装置1を用いた場合と比較して、汚泥Bの脱水処理速度を向上させることが可能となり、汚泥Aの脱水処理速度と汚泥Bの脱水処理速度との平均値を、5[%]程度向上させることが可能であることが検出された。なお、図7中には、本発明例の圧入状態制御装置1を用いることにより、比較例の圧入状態制御装置1を用いた場合と比較して向上した平均値を、上向きの矢印(図中に示す「今回発明による処理量向上」)により示している。
したがって、本発明例の圧入状態制御装置1では、比較例の圧入状態制御装置1と比較して、汚泥の脱水処理量を向上させることが可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0073】
1 圧入状態制御装置
2 濾過室
4 圧入ポンプ
6 脱水機
8 汚泥タンク
10 圧入配管
12 濾板
14 濾布
16 凹部
18 給液口
20 ダイアフラム
22 圧入状態制御部
24 インペラ
26 モータ
28 残液戻し配管
30 残液戻しバルブ
32 流量計
34 制御盤
36 圧入速度検出部
38 圧入量測定部
40 経過時間測定部
42 脱水処理速度算出部
S 汚泥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧入された汚泥の脱水処理を行う濾過室と、前記濾過室へ前記汚泥を圧入可能な汚泥圧入部と、を備える脱水機に対し、前記濾過室への前記汚泥の圧入状態を制御する脱水機の汚泥圧入状態制御装置であって、
前記汚泥圧入部から前記濾過室へ圧入される前記汚泥の圧入速度を検出する圧入速度検出部と、
前記濾過室での前記汚泥の脱水処理速度を算出する脱水処理速度算出部と、
前記圧入速度検出部が検出した圧入速度と前記脱水処理速度算出部が算出した脱水処理速度とに基づいて、前記汚泥圧入部の動作を制御する圧入状態制御部と、を備え、
前記圧入状態制御部は、前記汚泥圧入部が前記濾過室へ前記汚泥を圧入しており、且つ前記圧入速度検出部が検出した圧入速度と前記脱水処理速度算出部が算出した脱水処理速度との速度差が、予め設定した0よりも小さい速度差下限値から予め設定した0よりも大きい速度差上限値の範囲内であると判定すると、前記濾過室への前記汚泥の圧入を停止させることを特徴とする脱水機の汚泥圧入状態制御装置。
【請求項2】
前記圧入状態制御部は、前記汚泥圧入部が前記濾過室へ前記汚泥を圧入しており、且つ前記圧入速度検出部が検出した圧入速度と前記脱水処理速度算出部が算出した脱水処理速度との速度差が0であると判定すると、前記濾過室への前記汚泥の圧入を停止させることを特徴とする請求項1に記載した脱水機の汚泥圧入状態制御装置。
【請求項3】
前記汚泥圧入部から前記濾過室へ圧入された前記汚泥の積算量である圧入量を測定する圧入量測定部と、
前記汚泥圧入部が前記濾過室へ前記汚泥の圧入を開始した時点から経過した経過時間を測定する経過時間測定部と、を備え、
前記脱水処理速度算出部は、前記圧入量測定部が測定した圧入量を前記経過時間測定部が測定した経過時間で除算した値を用いて、前記脱水処理速度を算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載した脱水機の汚泥圧入状態制御装置。
【請求項4】
圧入された汚泥の脱水処理を行う濾過室と、前記濾過室へ前記汚泥を圧入可能な汚泥圧入部と、を備える脱水機に対し、前記濾過室への前記汚泥の圧入状態を制御する脱水機の汚泥圧入状態制御方法であって、
前記汚泥圧入部から前記濾過室へ圧入される前記汚泥の圧入速度を検出する圧入速度検出ステップと、
前記濾過室での前記汚泥の脱水処理速度を算出する脱水処理速度算出ステップと、
前記圧入速度検出ステップで検出した圧入速度と前記脱水処理速度算出ステップで算出した脱水処理速度とに基づいて、前記汚泥圧入部の動作を制御する圧入状態制御ステップと、を有し、
前記圧入状態制御ステップでは、前記汚泥圧入部が前記濾過室へ前記汚泥を圧入しており、且つ前記圧入速度検出ステップで検出した圧入速度と前記脱水処理速度算出ステップで算出した脱水処理速度との速度差が、予め設定した0よりも小さい速度差下限値から予め設定した0よりも大きい速度差上限値の範囲内であると判定すると、前記濾過室への前記汚泥の圧入を停止させることを特徴とする脱水機の汚泥圧入状態制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−63392(P2013−63392A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203633(P2011−203633)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】