説明

脱水汚泥貯留槽

【課題】槽内で脱水汚泥によるブリッジングが発生することなく、かつ、定量的に安定して汚泥を搬出可能な脱水汚泥貯留槽を提供する。
【解決手段】槽内を昇降自在なフライト式汚泥搬出装置2を備え、該フライト式汚泥搬出装置2の汚泥搬出口24の下方に位置する槽壁4を、前記フライト式汚泥搬出装置2の高さ位置に基づいて伸縮可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に貯留させた脱水汚泥を、必要に応じて搬出させる機構を備えた脱水汚泥貯留槽に関する。
【背景技術】
【0002】
図2に、従来技術に係る脱水汚泥貯留槽の概略構成を示す。図2(a)は、前記脱水汚泥貯留槽の横断面、図2(b)は、前記脱水汚泥貯留槽の縦断面を示す。図2(a)に示すように、一般の脱水汚泥貯留槽は、槽10の下半部に断面形状が逆ハ字形の傾斜壁20a,20bが左右に設けられ、その左右の傾斜壁の下端間の間隔によって前後方向に細長い排泥口20が形成されている。そして、槽10内に上部から脱水汚泥がベルトコンベア30などにより投入される。
【0003】
槽10内の汚泥をダンプトラックの荷台などに積み込む際には、排泥口20に沿って配置したスクリューコンベア40を駆動して汚泥を外に搬出する。尚、図2中の50は、排泥口20に沿って設けられた樋で、スクリューコンベア40はこの樋内で回転し、汚泥はスクリューコンベアの回転によって樋内を移動し、樋の一端部の底に開孔した排出孔60からダンプトラックの荷台などの上に落ちる。
【0004】
脱水汚泥貯留槽の下半部を、断面形状が逆ハ字形となる左右の傾斜壁20a,20bで下向きに絞り込むのは、槽10内の汚泥を、左右の傾斜壁の下端間の間隔によって形成された前後方向に細長い排泥口20内に滑り降ろし、コンベア40による排出を可能にするためである。しかし、コンベア40を運転して槽内の汚泥を排出する際、例えば、左側の傾斜壁20a上を滑って排泥口20に向かう汚泥と、右側の傾斜壁20b上を滑って排泥口20に向かう汚泥とが左右の傾斜壁の途中で、図2(a)に破線で示したようにブリッジングを起こし、汚泥が排泥口に落ちなくなることがある。この場合は、槽10の上から排泥口に向かって棒でつつくなどしてブリッジングを崩してなくす必要があり、非常に手数がかかるという問題がある。
【0005】
そして、脱水汚泥の含水率が低いと、その後の焼却処理等のコスト低減になるので好ましいが、含水率が低い汚泥は流動性も低いため上記のようなブリッジングを起こし易いという問題がある。
【0006】
このような問題に対して、特許文献1には、断面形状が逆ハ字形の左右の傾斜壁の下端に形成された前後方向に細長い排泥口を有し、この排泥口に沿って設けたコンベアにより槽内の汚泥を外に取出す脱水汚泥貯留槽において、この貯留槽の内部に、上端部が貯留槽の前壁と後壁の間に取り付けられ、前記左右の傾斜壁の斜面に向かって垂下する揺動可能な仕切りを設けたブリッジングの発生しにくい脱水汚泥貯留槽が開示されている。図3に、この特許文献1に記載の発明に係る脱水汚泥貯留槽の概略構成を示す。
【特許文献1】特開平11−197693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1に記載の脱水汚泥貯留槽においても、脱水汚泥の物性によっては、なおブリッジングが発生し、また、仕切りへの汚泥の固着などの問題を抱えるものであった。
【0008】
そこで、本発明は、槽内で脱水汚泥によるブリッジングが発生することなく、かつ、定量的に安定して汚泥を搬出可能な脱水汚泥貯留槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を行った。その結果、脱水汚泥の搬出を貯留槽の下部から行うのではなく、貯留槽の上部からフライト式汚泥搬出装置を用いて行うことにより、上記の課題を解決できることを見出した。
【0010】
本発明は、上記の知見に基づきなされたもので、以下のような特徴を有する。
[1]槽内を昇降自在なフライト式汚泥搬出装置を備え、
該フライト式汚泥搬出装置の汚泥搬出口の下方に位置する槽壁を、前記フライト式汚泥搬出装置の高さ位置に基づいて伸縮可能に構成したことを特徴とする脱水汚泥貯留槽。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、槽内で脱水汚泥によるブリッジングが発生することなく、かつ、定量的に安定して汚泥を搬出可能な脱水汚泥貯留槽が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態の一例を説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る脱水汚泥貯留槽の一実施形態を示す概略構成図である。
【0014】
図1に示す実施形態では、方形の脱水汚泥貯留槽1(以下、単に「槽1」と記す。)の上部に、フライト式汚泥搬出装置2が配置された構成となっている。
【0015】
前記フライト式汚泥搬出装置2は、槽1の内上面をほぼ覆うように周回するベルト21と、このベルト21を周回駆動させるためのフライト駆動機22とを有する。前記ベルト21の外表面には、槽1内の脱水汚泥の掻き取りを効率的に行うためのフライト23が所定の間隔で多数設けられている。ここで、前記フライト23は、ベルトの表面に凹凸を持たせたものでもよく、また、板状の部材(掻き取り羽根)をベルト表面に取り付けたものでもよく、特に限定されない。
【0016】
前記フライト式汚泥搬出装置2を構成するフライト駆動機22を稼動させ、ベルト21を回転させることで、前記ベルト21の外表面に設けられたフライト23により槽1内に貯留された脱水汚泥が上部から掻き取られ、槽1外へと搬出される。このとき、前記ベルト21の周回方向の一端を、槽1の槽壁から若干外部に突き出させ、そこを脱水汚泥の排出口24として、掻き取った脱水汚泥を排出させる。
【0017】
前記フライト式汚泥搬出装置2は、例えば、チェーンブロック3のような昇降手段により吊り下げられており、槽1内を昇降自在に配置されている。このような構成とすることで、前記フライト式汚泥搬出装置2は、槽1内に貯留されている脱水汚泥の搬出に伴う減少に従い、順次、槽底面近傍まで降下させることができる。
【0018】
また、前記フライト式汚泥搬出装置2の搬出口24の下方に位置する槽壁(以下、「搬出口側槽壁」と記す。)4は、例えばシャッター状の構造とすることで伸縮可能に構成される。ここで、前記搬出口側槽壁4の上端部は、例えば、前記フライト式汚泥搬出装置2の下部に設けられたフレーム25に連結されており、フライト式汚泥搬出装置2の昇降に連動して伸縮するように構成される。これにより、前記フライト式汚泥搬出装置2の下降に従い、前記搬出口側槽壁4も下降し、脱水汚泥の搬出を連続的に途切れることなく行うことが可能となると共に、槽1内に貯留される脱水汚泥が槽外にこぼれ落ちるのを防止することも可能となる。
【0019】
以下、上記構成の脱水汚泥貯留槽1における脱水汚泥の貯留方法及び搬出方法の一例を説明する。
【0020】
上記脱水汚泥貯留槽1に脱水汚泥を貯留する場合、前記フライト式汚泥搬出装置2と、前記搬出口側槽壁とを槽1の最上部の位置に配置しておき、前記フライト式汚泥搬出装置2の上部から隙間を通して脱水汚泥貯留槽1に汚泥を所定量送入する。
【0021】
その後、前記脱水汚泥貯留槽1から脱水汚泥を搬出する場合は、前記フライト式汚泥搬出装置2を脱水汚泥の最上層に接触するまで下降させた後、フライト駆動機22を稼動させ、ベルト21を回転させてフライト23により最上層の脱水汚泥を掻き取り、搬出口24より掻き取った脱水汚泥を搬出する。その位置での脱水汚泥の搬出が終了したら、フライト式汚泥搬出装置2を降下させ、同様にしてさらに下層の脱水汚泥を搬出する。このような操作を脱水汚泥貯留槽1底面近傍まで繰り返し、槽1内に貯留された脱水汚泥のほぼ全量を搬出する。
【0022】
本発明の脱水汚泥貯留槽1は、上述のように、槽1内に貯留された脱水汚泥を上層から搬出していくため、ブリッジの形成を完全に防止することが可能となる。また、従来技術のようなスクリューコンベアのように大きなトルクと駆動動力を必要とし、搬送の際の強大な摩擦力によりスクリューやケーシングへのこびりつきや駆動不能状態が発生することのある汚泥搬出装置を使用せずに、比較的トルクや駆動動力が小さくても、脱水汚泥の掻き取りが可能なフライト式汚泥搬出装置を使用しているので、円滑かつ定量性よく安定して脱水汚泥を搬出することができる。
【0023】
以上、上記実施形態では、フライト式汚泥搬出装置2は、脱水汚泥貯留槽1の幅とほぼ等しい幅の装置を1台使用しているが、前記フライト式汚泥搬出装置2の設置は1台に限るものではない。脱水汚泥貯留槽1の幅よりも狭い幅のものを複数使用するようにしても良い。
【0024】
また、上記伸縮可能な搬出口側槽壁も、必ずしもフライト式汚泥搬出装置2と連結している必要はなく、フライト式汚泥搬出装置2とは独立に伸縮するものであっても良い。
【0025】
フライト式汚泥搬出装置2の昇降手段も、チェーンブロックのような比較的簡易なものから、油圧駆動で自動的に作動するもの等種々の手段を使用でき、また、フライト式汚泥搬出装置2の上方から吊り下げるものだけでなく、フライト式汚泥搬出装置の下方で支持するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る脱水汚泥貯留槽の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】従来技術に係る脱水汚泥貯留槽の概略構成を示す図である。
【図3】従来技術に係る他の脱水汚泥貯留槽の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 脱水汚泥貯留槽
2 フライト式汚泥搬出装置
21 ベルト
22 フライト駆動機
23 フライト
24 搬出口
25 フレーム
3 チェーンブロック
4 搬出口側槽壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽内を昇降自在なフライト式汚泥搬出装置を備え、
該フライト式汚泥搬出装置の汚泥搬出口の下方に位置する槽壁を、前記フライト式汚泥搬出装置の高さ位置に基づいて伸縮可能に構成したことを特徴とする脱水汚泥貯留槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−175621(P2007−175621A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−376832(P2005−376832)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】