説明

脱水汚泥貯留設備の羽根駆動装置構造

【課題】減速機にスラスト荷重が掛からず、且つ、減速機内に脱水汚泥が侵入せず、しかも、オーバホール時に減速機や減速電動機を容易に取外せるようにする。
【解決手段】枠体53に設置された減速電動機55と、
枠体53に設置されて減速電動機55に接続された、出力軸54bが縦向きの減速機54と、
減速機55の出力軸54bに撓み継手63を介して接続された縦向きの軸体62と、
羽根76が外周に接続された羽根支持体72が取付けられて軸体62に外嵌されたボス部材69と、
底板51aとの間にOリング68を介装させたフランジ67aを介して底板51aに取付けられると共にボス部材69に外嵌され、且つ、ボス部材69外周に外嵌されたシール70が内嵌されたシールケース67と、
枠体53に取付けられて軸体62に掛るスラスト荷重を受けるスラスト軸受61が内嵌されたケーシング57を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水汚泥貯留設備の羽根駆動装置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脱水汚泥貯留設備は、各地域の下水処理施設で下水処理されて生成された脱水汚泥を焼却炉で処理する前に一時的に貯留する施設である。而して、脱水汚泥貯留設備の貯槽本体内に貯留された脱水汚泥は、貯槽本体内の底板近傍に設置した複数枚の水平な羽根を回転駆動することにより、掻寄せられて底板に設けた排出口からスクリュウコンベヤ等の搬送装置へ排出されるようになっている。羽根は貯槽本体の底板外側下部に設置した駆動装置により駆動される。
【0003】
従来の脱水貯留設備の羽根駆動装置構造の一例は図4及び図5に示されている。図中1は貯槽本体であって、図示してないが、地上に立設した架台に設置されている。貯槽本体1の底板1a外側下面には、梁部材2が固設されており、梁部材2には、ブラケット3を介して、駆動装置4が吊り下げ支持されている。駆動装置4は電動機5とコンパワー減速機(遊星歯車減速機)6とを備えており、電動機5及びコンパワー減速機6は撓み継手を介すことなく一体的に組み付けられて縦型に形成されている。而して、コンパワー減速機6は、遊星歯車減速機の一種で、太陽歯車、内歯車、遊星歯車を備えた遊星減速機構をコンパクトに収めた特殊縦型の減速機であり、電動機5の上部に電動機5と一体に組み付けられている。又、コンパワー減速機6における「COMPOWER」は、登録商標である。
【0004】
コンパワー減速機6の出力軸6aには、貯槽本体1の底板1a中心部に形成した孔1bを貫通して貯槽本体1内へ突出する円筒形状のボス部材7が外嵌、固定されており、ボス部材7の頂部には、羽根支持体8が取付けられている。すなわち、羽根支持体8は、短筒状の環体8aと、環体8a内に水平配置されて環体8aと一体的に固設された板体8bとを備え、板体8bの中心部に穿設した孔8cは出力軸6a頂部の突起に嵌入すると共に、板体8bは出力軸6aの上端部に固設されている。又、環体8aの外周には、平面視で約180度の間隔で、貯槽本体1の内周壁近傍まで延びる板状の羽根9が水平状態を保持するよう固定されている。
【0005】
ボス部材7の外周には、孔1bを挿通されて貯槽本体1内に突出するシールケース10が外嵌されており、シールケース10内には、ボス部材7の外周に当接して、脱水汚泥が侵入するのを防止し得るよう、シール11が内嵌されている。又、シールケース10は円板状のフランジ10aを介して底板1a上に固設した環状の座12に取付けられている。なお、図中、13はシールケース10の上端部に、ボス部材7に外嵌されるよう設けられたダストシール、14はフランジ10a下面と座12上面との間に介装されたOリング、15は羽根支持体8の上部に取付けた円錐状のキャップである。
【0006】
図4、図5の駆動装置4においては、電動機5を起動するとコンパワー減速機6が駆動され、動力はコンパワー減速機6の出力軸6a、ボス部材7、羽根支持体8から羽根9に伝達され、羽根9が所定の回転数(約0.5〜1.0rpm)で回転する。このため、貯槽本体1内の脱水汚泥は掻き寄せられて底板1aに設けた図示してない排出口から、スクリュウコンベヤ等の搬送装置へ排出され後工程へと搬送される。
【0007】
従来の脱水貯留設備の羽根駆動装置構造の他の例は図6及び図7に示されている。而して、本例では、駆動装置4は油圧モータ5’、及び減速機6’により、一体的に構成されている。貯槽本体1の底板1a中心部に形成した孔1bの下部には、筒体1cが固設されており、筒体1cと貯槽本体1の底板1a外側下面に固設した梁部材2には、ブラケット16が固設されている。又、ブラケット16には、駆動装置4は吊り下げ支持されている。
【0008】
減速機6’の出力軸6a’には、ボス部材17が外嵌されると共に、ボス部材17が外嵌された出力軸6a’は筒体1c内に挿通されて貯槽本体1内に突出し、ボス部材17の上端に一体的に形成したフランジ17aには、平面視で180度の間隔で羽根9が取付けられている。
【0009】
ボス部材17の下部には、上下二段に環状体18,19が減速機6’の出力軸6a’に外嵌されるように配置されており、環状体18は出力軸6a’と一体的に回転し得るが、環状体19は、減速機6’側に固定されている。而して、環状体18,19の対向面にはラビリンスシール20が形成されている。なお、21は羽根9下面とボス部材17のフランジ17a上面との間に介装されたOリング、22はボス部材17の下端と環状体18の皿状の底面との間に介装されたOリング、23は減速機6aの出力軸6a’上端に設けたカバーである。
【0010】
図6、図7の駆動装置4においては、油圧モータ5’を起動すると減速機6’が駆動され、動力は減速機6’の出力軸6a’、ボス部材17から羽根9に伝達され、羽根9が所定の回転数(約0.5rpm〜1.0rpm)で回転する。このため、貯槽本体1内の脱水汚泥は掻き寄せられて底板1aに設けた図示してない排出口から、スクリュウコンベヤ等の搬送装置へ排出され後工程へと搬送される。
【0011】
脱水汚泥を掻き寄せるための羽根を回転駆動するようにした特許文献としては、特許文献1がある。又、脱水汚泥の掻き寄せとは直接関係はないが、水平配置したスポークを回転駆動し得るようにした縦型の駆動装置を備えた装置としては、特許文献2がある。
【0012】
而して、特許文献1では縦型の駆動装置は貯槽底板の下部に設けた枠体に吊り下げ支持されており、減速機の出力軸の上端は貯槽本体内に位置しており、出力軸には、ボス部材を介して水平配置した羽根が取付けられている。又、特許文献2では、直立回転軸は槽内に突出しており直立回転軸には、ボス部材を介して水平配置したスポークが取付けられている。
【特許文献1】特開平11−59912号公報
【特許文献2】特開平6−64756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図4、図5に示す駆動装置4のコンパワー減速機6は電動機5と一体で、貯槽本体1の底板1a下面に固設した梁部材2に吊り下げ支持され、コンパワー減速機6の出力軸6aは、貯槽本体1内に突出し、出力軸6aには、羽根支持体8や羽根9の重量及び貯槽本体1内の脱水汚泥の重量が直接掛る。このため、常時コンパワー減速機6の出力軸6aにスラスト荷重が作用し、その結果、汎用品としてスラスト軸受を内臓していないコンパワー減速機6の内部の軸や軸受に常時スラスト方向の負荷が掛ることになり、コンパワー減速機6を長期に亘り運転することが困難である。
【0014】
又貯槽本体1内の脱水汚泥は、隙間Gから羽根支持体8の下部に侵入してシールケース10の上部外周部に滞留するが、ボス部材7はコンパワー減速機6の出力軸6aと一体的に回転するため、ダストシール13やシール11が磨耗したり、Oリング14が劣化して損傷すると、脱水汚泥がボス部材7とシール11との間から下方へ漏洩したり、シールケース10のフランジ10aと座12との間から下方へ漏洩する虞がある。このため、漏洩した脱水汚泥は、直接、コンパワー減速機6の出力軸6aとそのケーシングとの間の隙間から直接コンパワー減速機6内に侵入し、コンパワー減速機6が故障する虞がある。
【0015】
更に、コンパワー減速機6は電動機5と一体に組み付けられて、貯槽本体1の底板1aに吊り下げられ、且つコンパワー減速機6の出力軸6aにボス部材7及び羽根支持体8を介して直接的に羽根9が取付けられている。このため、オーバホール時にコンパワー減速機6を取外す際には、貯槽本体1内部において羽根9、羽根支持体8、シールケース10、ボス部材7を取外した後で、底板1aの下において電動機5と一体のコンパワー減速機6を貯槽本体1の底板1aに固設された梁部材2から取外さなければならず、従って、作業が大掛かりとなって時間を要し、能率的に作業を行なうことが困難である。
【0016】
更に又、コンパワー減速機6は特殊縦型の減速機であるため、種々の減速比の減速機が揃っておらず、伝達トルクと減速比との組み合わせによる形式に限りがある。このため、脱水汚泥の掻き寄せのために要求されるトルクと減速比に対応した減速機を適正に選定するのが困難であり、特に減速比の大きい高トルク側では、この傾向が顕著である。
【0017】
又更に、コンパワー減速機6は構造上、過剰なトルクが作用することを制限するための機械的なトルクリミッタを設置できないため、ショックリレーを設けて電流値により伝達されるトルクの制限を行なっているが、羽根9の回転数が0.5rpm〜1.0rpmと低速であるため、コンパワー減速機6の減速比は大きい機種となる。しかし、減速比の大きい機種の場合、トルクの変動に対して電流値の変動が顕著には現れないため、高トルクが要求される場合の減速機保護を確実に行なうことができない。
【0018】
図6、図7に示す駆動装置4においても、駆動装置4の減速機6’は油圧モータ5’と一体で、貯槽本体1の底板1a下面に固設した梁部材2に取付けたブラケット16に吊り下げ支持され、減速機6’の出力軸6a’は、貯槽本体1内に突出し、出力軸6a’には、ボス部材17や羽根9の重量及び貯槽本体1内の脱水汚泥の重量が直接掛る。このため、常時減速機6’の出力軸6a’にスラスト荷重が作用し、その結果、一体化を図られて汎用品としてスラスト軸受を内臓していない減速機6’の内部の軸や軸受に常時スラスト方向の負荷が掛ることになり、減速機6’を長期に亘り運転することが困難である。
【0019】
又貯槽本体1内の脱水汚泥は、ボス部材17の外周部に滞留するが、Oリング21,22が劣化したり、ラビリンスシール20が損傷すると、脱水汚泥は、羽根9とボス部材17のフランジ17aとの間からボス部材17内周と出力軸6a’外周の間に侵入して隙間から下方へ漏洩し、又、ボス部材17下端と環状体18との間やラビリンスシール20から出力軸6a’側へ漏洩する虞がある。このため、漏洩した脱水汚泥は、直接、減速機6’の出力軸6a’と減速機6’ケーシングとの間の隙間から直接減速機6’内に侵入し、減速機6’が故障する虞がある。
【0020】
更に、減速機6’は油圧モータ5’と一体に組み付けられて、貯槽本体1の底板1aに吊り下げられ、且つ減速機6’の出力軸6a’にボス部材17を介して直接的に羽根9が取付けられている。このため、オーバホール時に減速機6’を取外す際には、貯槽本体1の内部において羽根9、ボス部材17、環状体18,19を取外した後で、底板1aの下において油圧モータ5’と一体の減速機6’を、底板1aに固設された梁部材2に取付けられたブラケット16から取外さなければならず、従って、作業が大掛かりとなって時間を要し、能率的に作業を行なうことが困難である。
【0021】
又、特許文献1の駆動装置は、上述の図6、図7の駆動装置4に類似しており、図6、図7に示す駆動装置と同様の問題がある。更に、特許文献2の駆動装置も、脱水汚泥貯留設備に適用した場合は、図6、図7に示す駆動装置と同様の問題があると考えられる。
【0022】
本発明は、上述の実情に鑑み、減速機にスラスト荷重が掛からず、且つ、減速機内に脱水汚泥が侵入せず、しかも、オーバホール時に減速機を軸体から容易に取外せるようにし、更に、機械的なトルクリミッタを設置し得るようにした脱水汚泥貯留設備の羽根駆動装置構造を提供することを目的としてなしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
請求項1の脱水汚泥貯留設備の羽根駆動装置構造は、
脱水汚泥が貯留される貯槽本体に取付けられた枠体に設置された水平型の減速電動機と、
前記枠体に設置され且つ前記減速電動機の水平な出力軸に水平な入力軸が接続された、出力軸が縦向きの減速機と、
該減速機の出力軸に継手を介して下端が接続された縦向きの回転可能な軸体と、
前記貯槽本体内に水平に配置された羽根を外周に接続された羽根支持体が取付けられて前記軸体の上端に外嵌されたボス部材と、
前記枠体の減速機上部の部分に取付けられて軸体に掛るスラスト荷重を受けるよう、軸体に外嵌されたスラスト軸受が内嵌されたケーシングを備えたものである。
【0024】
請求項2の脱水汚泥貯留設備の羽根駆動装置構造は、前記ケーシングよりも上方に位置するよう、貯槽本体の底板との間にシール手段を介装させたフランジを介して底板に取付けられると共に前記軸体の上端に外嵌されたボス部材に外嵌され、且つ、前記ボス部材外周に外嵌されたシール手段が内嵌されたシールケースとを備え、請求項3の脱水汚泥貯留設備の羽根駆動装置構造は、前記シールケースの上端にシール手段を備えたものであり、請求項4の脱水汚泥貯留設備の羽根駆動装置構造においては、減速電動機には、トルクリミッタが設けられている。
【発明の効果】
【0025】
本発明の請求項1〜4の脱水汚泥貯留設備の羽根駆動装置によれば、下記のごとき種々の優れた効果を奏し得る。
I)軸体に掛るスラスト荷重は、スラスト軸受により支持されるため、減速機にスラスト荷重が作用することを防止することができ、減速機のギヤ類や軸受が破損する虞が少ない。
II)貯槽本体の底板とシールケースのフランジとの間や、シールケースと軸体に外嵌されたボス部材との間、シールケースの上端部にはシール手段が設けられているため、脱水汚泥が底板上部側からケーシング側へ漏洩する虞が少なく、従って、スラスト軸受が破損する虞が少ない。
III)各シール手段は劣化して隙間が形成されると、脱水汚泥は底板下方へ漏洩する虞があるが、減速機は貯槽本体の底板から離反して設置されているため、万一、脱水汚泥が底板下方へ漏洩しても、減速機内に侵入する虞がなく、このため、減速機のギヤ類や軸受が破損することを防止することができる。
IV)オーバホール時には、継手を取外すだけで減速機を軸体から取外すことができるため、減速機や減速電動機のオーバホールを容易且つ迅速にしかも確実に行うことができる。
V)減速電動機には、トルクリミッタが設けてあるため、減速電動機に過負荷が作用することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
図1〜図3は本発明を実施する形態の一例である。而して、図中、51は貯槽本体であり、貯槽本体51は、図示してない地上に立設した架台に設置されている。貯槽本体51の底板51a外側下面には、梁部材52が固設されており、梁部材52には、下方へ垂下する枠体53が固設されている。枠体53の下部水平部材53aには、減速機54が搭載されている。減速機54の入力軸54aは水平向き、出力軸54bは縦向きであり、又、入力軸54aと出力軸54bとは90度位相を異ならしめている。更に、枠体53の下部水平部材53aには、減速電動機55が設置されており、減速電動機55の水平な出力軸55aは撓み継手56を介して減速機54の入力軸54aに連結されている。
【0027】
減速電動機55はサイクロ減速機と電動機とが一体に組み付けられた減速電動機である。而して、「サイクロ減速機」は登録商標であるが、その構成は、内歯式遊星機構と円弧系歯型の組み合わせたもので小型、軽量、低騒音であり、又、トルクリミッタを内蔵している。
【0028】
減速機54はパラマックス減速機であり、「パラマックス」は登録商標であるが、その構成は、一段目の減速はべベルギヤで行い、二段目、三段目の減速はヘリカルギヤにより行っている。又、各ギヤの歯の圧力角は通常の歯の圧力角(20度)よりも大きい25度であり、負荷容量が大きく衝撃荷重に強い構造である。
【0029】
枠体53の上部水平部材53bには、中空円筒状のケーシング57が設置されており、ケーシング57の中空部には、上下に所定の間隔で主としてラジアル荷重支持用の軸受58,59が内嵌されている。又、ケーシング57の下端には底部に貫通孔を有する皿形状のケーシング60が接続されており、ケーシング60にはスラスト軸受61が内嵌されている。
【0030】
減速機54の縦向きの出力軸54bの上方には、縦向きの軸体62が配設されている。而して、軸体62は、撓み継手63を介して減速機54の出力軸54bに連結されると共にスラスト軸受61に内嵌支持された小径部62aと、小径部62aの上端に一体に形成されて軸受58,59に内嵌支持された太径部62bと、太径部62bの上端に一体に形成された小径部62cを備えている。
【0031】
軸体62の太径部62bには、軸受58,59を位置保持するための長筒状のスペーサ64が外嵌されており、軸体62の小径部62aには、スラスト軸受61の上面及び軸体62の太径部62b下端段部に当接するよう、座金状のスペーサ65が外嵌されている。而して、軸体62に作用するスラスト荷重は、スペーサ65を介してスラスト軸受61に支持されるようになっている。
【0032】
貯槽本体51の底板1a中央部に設けた孔66には、円筒状のシールケース67が挿通するよう配置されており、シールケース67は外周に一体形成されたフランジ67aを介して底板51aに固設されている。フランジ67a下面と底板51a上面との間にはOリング68が介装されている。又、軸体62の上端における小径部62cに外嵌、固定されたボス部材69は、シールケース67内へ挿通されており、シールケース67に内嵌したシール70は、ボス部材69に外嵌されている。シールケース67の上面には、ボス部材69の外周に嵌合するよう、ダストシール71が取付けられている。而して、貯槽本体1からの脱水汚泥等は、Oリング68、ダストシール71、シール70により遮られてシールケース67の下方へ漏洩しないようになっている。
【0033】
ボス部材69の底板51a上方に突出する上端部には、平板状の蓋板72aを有する環状の羽根支持体72が固設されている。羽根支持体72の上端には円錐状のキャップ73が載置、固定されている。キャップ73外周側の縁板73aと羽根支持体72上端との間には、パッキン74が介装されている。
【0034】
羽根支持体72の外周には平面視で180度位相を異ならしめて2組のブラケット75が固設されており、各ブラケット75には、底板51aに沿って貯槽本体51の内周壁近傍まで径方向へ延在する羽根76が着脱可能に取付けられている。
【0035】
貯槽本体51の底板51aには、軸体62の回転中心を基準として、2組の排出口77が点対称に設けられており、底板51aの外部下面には、図示してないが、排出口77から排出された脱水汚泥を搬送するためのスクリュウコンベヤ等の搬送装置が配置されている。
【0036】
次に、上記図示例の作動を説明する。
貯槽本体51内に所定量の脱水汚泥が貯留され、中央監視装置又は現場の操作盤の所定のスイッチの操作により運転指令が減速電動機55及び搬送装置の駆動装置に指令が与えられる。このため、減速電動機55が起動されると共に搬送装置の駆動装置が起動される。
【0037】
起動された減速電動機55の動力は減速機54、撓み継手63、軸体62、ボス部材69、羽根支持体72を経て羽根76に伝達され、羽根76は所定方向へ向けて0.5rpm〜1.0rpmの低速で回転する。この羽根76の回転により、貯槽本体51内の脱水汚泥のうち、底板51a近傍のものは、排出口77側に掻き寄せられて、排出口77から搬送装置へ排出され、搬送装置により後工程へ搬送される。
【0038】
貯槽本体51の底板51a近傍の脱水汚泥は、羽根支持体72の下端と貯槽本体51の底板51aとの間の隙間Gから羽根支持体72内の空間に侵入してシールケース67外周側へ達する。しかし、シールケース67の上端にはダストシール71が設けられると共に、シールケース67内にはシール70が設けられ、シールケース67のフランジ67aと貯槽本体51の底板51aとの間には、Oリング68が設けられているため、脱水汚泥が孔66から貯槽本体51の底板1a下部外方へ漏洩する虞が少ない。又、キャップ73外周側の縁板73aと羽根支持体72上端との間には、パッキン74が設けられているため、貯槽本体51内の脱水汚泥は、キャップ73内に侵入する虞は少なく、従って、キャップ73内から羽根支持体72の蓋板72aとボス部材69上端との間からシールケース67側へ漏洩する虞も少ない。このため、脱水汚泥は、ケーシング57内へ侵入する虞が少なく、軸受58,59やスラスト軸受61を破損する虞が少ない。
【0039】
又、所定時間の運転により、Oリング68、ダストシール71、シール70が劣化して破損し隙間が形成されると、脱水汚泥が隙間から貯槽本体51の底板51a下方へ漏洩する虞がある。しかし、減速機54は底板51aから下方へ離反して設置されているため、万一、脱水汚泥が貯槽本体51の底板51a下方へ漏洩しても、減速機54内に侵入する虞がなく、このため、減速機54のギヤ類や軸受を破損することがない。更に又、貯槽本体51内の脱水汚泥の重量の一部は、キャップ73、羽根支持体72、ボス部材69から軸体62に掛るが、軸体62に作用するスラスト荷重はスラスト軸受61により支持されるため、減速機54にスラスト荷重が作用することを防止することができる。
【0040】
減速機54としてはパラマックス減速機を使用しているため、低速の場合でも大きな負荷容量を有しており、従って、低速回転の羽根76を駆動するためのトルクが高トルクの場合でも確実に運転することが可能である。又、減速機54の入力側の減速電動機55はトルクリミッタを備えたサイクロ減速電動機を使用しているため、減速電動機55に過負荷が作用した場合には、減速電動機55は停止し、従って、信頼性の高い運転が可能である。
【0041】
又、減速機54や減速電動機55は貯槽本体側から吊り下げてはおらず、枠体53の下部水平部材53aに載置しており、且つ、減速機54の出力軸54bには、貯槽本体51内部に設置されている羽根76は直接接続されてはいない。このため、貯槽本体51の外部である底板51aの下において、撓み継手63を取外すだけで減速機54や減速電動機55を取外すことができ、従って、貯槽本体51内部における羽根9、羽根支持体72、シールケース67等の取外しを行なう必要がなく、オーバホールを行なう際の作業を迅速に能率良く行うことができる。
【0042】
なお、本発明の脱水汚泥貯留設備の羽根駆動装置構造は、上述の実施の形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ること等は勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の脱水汚泥貯留設備の羽根駆動装置構造が適用される脱水汚泥貯留設備全体の概要を示す概略正面図である。
【図2】図1のII−II方向矢視図である。
【図3】図1の羽根駆動装置構造の拡大縦断面図である。
【図4】従来の脱水汚泥貯留設備の羽根駆動装置構造の一例の概要を示す断面図である。
【図5】図4の羽根駆動装置構造の拡大縦断面図である。
【図6】従来の脱水汚泥貯留設備の羽根駆動装置構造の他の例の概要を示す断面図である。
【図7】図6の羽根駆動装置構造の拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0044】
51 貯槽本体
51a 底板
53 枠体
54 減速機
54a 入力軸
54b 出力軸
55 減速電動機
55a 出力軸
57 ケーシング
60 ケーシング
61 スラスト軸受
62 軸体
63 撓み継手(継手)
67 シールケース
67a フランジ
68 Oリング(シール手段)
69 ボス部材
70 シール(シール手段)
71 ダストシール(シール手段)
72 羽根支持体
76 羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱水汚泥が貯留される貯槽本体に取付けられた枠体に設置された水平型の減速電動機と、
前記枠体に設置され且つ前記減速電動機の水平な出力軸に水平な入力軸が接続された、出力軸が縦向きの減速機と、
該減速機の出力軸に継手を介して下端が接続された縦向きの回転可能な軸体と、
前記貯槽本体内に水平に配置された羽根を外周に接続された羽根支持体が取付けられて前記軸体の上端に外嵌されたボス部材と、
前記枠体の減速機上部の部分に取付けられて軸体に掛るスラスト荷重を受けるよう、前記軸体に外嵌されたスラスト軸受が内嵌されたケーシングを備えた
ことを特徴とする脱水汚泥貯留設備の羽根駆動装置構造。
【請求項2】
前記ケーシングよりも上方に位置するよう、貯槽本体の底板との間にシール手段を介装させたフランジを介して前記底板に取付けられると共に前記軸体の上端に外嵌されたボス部材に外嵌され、且つ、前記ボス部材外周に外嵌されたシール手段が内嵌されたシールケースとを備えた請求項1に記載の脱水汚泥貯留設備の羽根駆動装置構造。
【請求項3】
前記シールケースの上端にシール手段を備えた請求項2に記載の脱水汚泥貯留設備の羽根駆動装置構造。
【請求項4】
減速電動機には、トルクリミッタが設けられている請求項1乃至3の何れかに記載の脱水汚泥貯留設備の羽根駆動装置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−116246(P2010−116246A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291173(P2008−291173)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000001834)三機工業株式会社 (316)
【Fターム(参考)】