説明

脱水汚泥貯留設備

【課題】脱水汚泥のブリッジングの防止、脱水汚泥の排出を確実に行い得るようにすると共に、羽根にしさ分が絡み付くことを防止し得るようにする。
【解決手段】貯槽本体3内に、回転方向を正転及び逆転し得るよう設けた板状の羽根28を設ける。羽根28には、貯槽本体3内に貯留した脱水汚泥を攪拌してブリッジングを防止すると共に脱水汚泥を貯槽本体3の底板3aに設けた排出口29から排出する場合に回転方向前方となる側の上面に、回転方向に向けて下り勾配となる傾斜をを付し且つ回転中心側から離反した端部を回転方向後方へ向けて円弧状に形成し、貯槽本体3内に貯留した脱水汚泥を排出口29に掻き寄せる場合に回転方向前方となる側の端部は、垂直に形成すると共に、回転方向前方となる端部を平面視で凹んだ凹状に形成する。脱水汚泥の攪拌によるブリッジングの防止及び掻き寄せは運転方向の切り替えによる羽根28の回転方向の変更及び羽根28の形状により行なう。又、回転方向の変更によりしさ分が絡むのを防止することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脱水汚泥貯留設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各地域の下水処理施設で下水汚泥が処理されて生成された脱水汚泥は、焼却炉で処理される前に一時的に脱水汚泥貯留設備に貯留される。而して、従来の脱水汚泥貯留設備には、特許文献1、2等に示すものがある。
【0003】
特許文献1では、サイロの底面を貫通してサイロ内に突出する縦向きの回転軸に、サイロの径方向へ延在する複数の回転羽根が固設され、回転軸を介して回転羽根が回転することにより、サイロ内の脱水ケーキである脱水汚泥は、底面に設けた排出口に向かって掻き寄せられ、押出されるようになっている。
【0004】
特許文献2では、貯留槽の底面を貫通して貯留槽内に突出する縦向きの揺動軸に、貯留槽の径方向へ延在する複数のアームが固設され、該アームがシリンダにより揺動軸を介して正逆転を繰返すことにより、貯留槽内の粉粒体若しくは粘稠物といった脱水汚泥は、貯留槽底面に設けた排出口に掻き寄せらて排出口から排出トラフに送込まれ、スクリュウコンベヤにより搬送される。
【特許文献1】特開平11−11680号公報
【特許文献2】特公昭62−22886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
脱水汚泥貯留設備の場合、回転羽根或はアームにより、貯留された脱水汚泥のブリッジングを防止すると共に、サイロ若しくは貯留槽に貯留された脱水汚泥を排出口に向け掻き寄せ、排出する必要がある。
【0006】
しかし、特許文献1の設備では、回転羽根は一方向へのみ回転するようにしており、且つ、排出口は回転羽根の先端側と基端側の略中間位置に設けられ、しかも、回転羽根の前面は先端側では内側に、基端側では外側に傾斜させている。このため、特許文献1の設備では、サイロ内に貯留されている脱水汚泥は排出口に向け掻き寄せられ排出されるが、回転羽根の先端側部分と基端側部分の夫々が、上方に積層した脱水汚泥を掻き寄せる力は弱く、従って、脱水汚泥は結局そのままサイロ内に残留し、貯留されている脱水汚泥にブリッジングが生じる虞を解消することはできない。ここで、ブリッジングとは、貯留されている脱水汚泥の下面に、縦断面がアーチ型の空洞ができる現象をいう。又、回転羽根の回転方向が一方向の場合、ブリッジングの防止を目的とした場合には、掻き寄せが不十分になる虞がある。更に、回転羽根の回転方向が一方向の場合、脱水汚泥に含まれる髪の毛や繊維質のしさ分が回転羽根に絡み付き、最終的には運転停止の虞がある。
【0007】
特許文献2の装置では、アームは正逆転を繰返すため、貯留槽内でのブリッジングの防止、脱水汚泥の排出口への掻き寄せ及び排出をある程度は行うことができる。しかし、アームは360度以上の範囲に亘り回転することは出来ないため、例えば、平面視で貯留槽の排出口や排出トラフが、該貯留槽の片側に偏って設けられていたりすると、180度以下の移動範囲の揺動羽根では、脱水汚泥の掻き寄せを十分に行うことはできず、又、脱水汚泥の排出、ブリッジングの防止についても、揺動羽根が動作しても切り崩すことができない死に領域が生じてしまう。このため特許文献2の装置では、脱水汚泥の掻き寄せ、ブリッジングの防止の何れも不完全で、十分に行うことができない虞がある。
【0008】
本発明は、上述の実情に鑑み、貯留槽に貯留された脱水汚泥の排出口に対する掻き寄せ及び排出、ブリッジングの防止を確実に行い得るようにすると共に、羽根にしさ分が絡み付くことを防止し得るようにした脱水汚泥貯留設備を提供することを目的としてなしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の脱水汚泥貯留設備は、
貯槽本体内の底板近傍に、回転方向を正転及び逆転し得るようにした板状の羽根を水平方向へ駆動可能に設け、
前記羽根には、
貯槽本体内に貯留した脱水汚泥を攪拌してブリッジングを防止すると共に脱水汚泥を貯槽本体の底板に設けた排出口から排出する場合に、正回転方向前方となる側の端面に、正回転方向前方へ向けて下り勾配となる傾斜を付し、且つ回転中心側から離反した端部を平面視で正回転方向後方へ向けて円弧状に形成し、
前記貯槽本体内に貯留した脱水汚泥を前記排出口に掻き寄せる場合に逆回転方向前方となる側の端面を、垂直に形成すると共に、平面視で逆回転方向後方へ向けて凹んだ凹状に形成したものである。
【0010】
請求項2の脱水汚泥貯留設備においては、貯槽本体の底板下面には、排出口から排出された脱水汚泥を搬送するための搬送装置が設けられているものであり、請求項3の脱水汚泥貯留設備においては、貯槽本体内の脱水汚泥が所定量よりも多い場合は、羽根は脱水汚泥を攪拌してブリッジングを防止する正転方回転方向へ回転し、所定量よりも少ない場合は、羽根は脱水汚泥を掻き寄せる逆回転方向へ回転するよう構成されている。又、請求項4の脱水汚泥貯留装置は、貯槽本体に取付けられた枠体に設置された水平形の減速電動機及び水平な入力軸が前記減速電動機に接続され且つ出力軸が垂直の減速機と、該減速機の出力軸に継ぎ手を介し下端が接続された縦形の軸体と、前記羽根が外周に接続された環体が取付けられて前記軸体の上端に外嵌されたボスとを備え、前記軸体には、前記枠体の前記減速機上方の部分に設置されたケーシングに内嵌した軸受及びスラスト軸受が外嵌されているものであり、請求項5の脱水汚泥設備においては、ボスには貯槽本体の底板に固設されたシールケースが外嵌されており、該シールケースには、前記ボスに外嵌する第一のシール手段が内嵌さており、シールケースのフランジと貯槽本体の底板の間には、第二のシール手段が介装されているものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1〜5に記載の脱水汚泥貯留設備によれば、貯留槽からの脱水汚泥の排出中に、貯留槽内部の脱水汚泥にブリッジングが生じることがなく、且つ、貯留槽内の脱水汚泥が少量となっても確実に下部の排出口や排出トラフへ排出することが可能であり、しかも、羽根にしさ分が付着することを防止することができるので、安定した操業を行うことができ、又、羽根が支持される軸体に掛かるスラスト荷重はスラスト軸受により支持され、減速機には掛からず、且つ、貯留槽本体からの脱水汚泥は減速機側に漏洩しないため減速機内に侵入することを防止でき、これらのことから、減速機の破損を防止することができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
図1〜図8は本発明を実施する形態の一例である。而して、図中、1は床面上に立設された架台であり、該架台1上端部の横梁1aに設置した4個のロードセルのような荷重検出器2には、円筒形の貯槽本体3がブラケット4を介して搭載され、支持されている。
【0013】
貯槽本体3の底板3aの下面に固設した横梁5(図3参照)には、下方へ垂下する枠体6が固設されており、枠体6には、減速機7が搭載されている。減速機7の入力軸7aは水平向きであり、出力軸7bは縦向きであり、又、入力軸7aと出力軸7bとは90度位相を異ならしめている。
【0014】
枠体6には、減速電動機8が設置されており、減速電動機8はカップリング9を介して減速機7の入力軸7aに連結されている。枠体6の上部側には、中空円筒状のケーシング10が設置されており、ケーシング10の中空部には、上下に所定の間隔で主としてラジアル荷重支持用の軸受11が内嵌されている。又、ケーシング10の下端には底部に貫通孔を有する皿形状のケーシング12が接続されており、ケーシング12にはスラスト軸受13が内嵌されている。
【0015】
減速機7の出力軸7bの上方には、縦向きの軸体14が配設されている。而して、軸体14は、カップリング15を介して減速機7の出力軸7bに連結されると共にスラスト軸受13に内嵌支持された小径部14aと、小径部14aの上端に一体に形成されて軸受11に内嵌支持された太径部14bと、太径部14bの上端に一体に形成された小径部14cを備えている。
【0016】
軸体14の太径部14bには、軸受11,11を位置保持するための長筒状のスペーサ16が外嵌されており、軸体14の小径部14aには、スラスト軸受13の上面及び軸体14の太径部14b下端段部に当接するよう、座金状のスペーサ17が外嵌されている。而して、軸体14に作用するスラスト荷重は、スペーサ17を介してスラスト軸受13に支持されるようになっている。
【0017】
貯槽本体3の底板3a中央部に設けた孔18には、円筒状のシールケース19が配置されており、シールケース19はフランジ19aを介して底板3aに固設されている。フランジ19aと底板3aとの間にはOリング20が介装されている。又、軸体14の上端における小径部14cに外嵌、固定したボス21は、シールケース19内へ挿通されており、シールケース19に内嵌したシール22は、ボス21に外嵌されている。ボス21の上面には、ダストシール23が取付けられている。而して、貯槽本体3からの脱水汚泥等は、Oリング20、ダストシール23、シール22により遮られてシールケース19の下方へ漏洩しないようになっている。
【0018】
ボス21の底板3a上方に突出する上端部には、平板状の蓋板24aを有する円環状の環体24が固設されている。環体24の上端には円錐状のキャップ25が載置、固定されている。キャップ25の底板25a外周と環体24上端との間には、パッキン26が介装されている。
【0019】
環体24の外周には、平面視で180度位相を異ならしめて2組のブラケット27が固設されており、各ブラケット27には、底板3aに沿って貯槽本体3の内周壁近傍まで径方向へ延在する羽根28が着脱可能に取付けられている。
【0020】
羽根28は、平板状で、平面視では、基端側(ブラケット27側)から長手方向中間部よりも若干外側の位置X(図5参照)に向かって徐々に幅が狭くなり且つ位置Xにおいて最も幅が狭くなるよう形成されている。又、羽根28の幅は、位置Xから貯槽本体3の径方向外方に向かい僅かではあるが徐々に広くなり、先端部において回転方向D1に向いた端面は絞られて、小さな半径R1の1/4の円弧状に形成されている。なお、便宜上、回転方向D1を正回転方向とする。
【0021】
羽根28の回転方向D1とは反対方向の回転方向D2に向いた端面は、半径R1よりも約20倍ほど大きい半径R2の円弧状に形成されている。而して、羽根28の長手方向における位置X若しくはその近傍に半径R2の頂部が位置しており、羽根28は平面視で、回転方向D2側の端面が凹形状に凹んだ形状に形成されている。又、図7に示すように、羽根28の回転方向D1に面した側の端面には、基端側から先端部近傍まで、回転方向D1に向かって下り傾斜の斜面28aが形成されており、羽根28の回転方向D2に面した端面は垂直に形成されている。なお、便宜上、回転方向D2を逆回転方向とする。
【0022】
底板3aの径方向中間部には、脱水汚泥Wを排出するための2個の排出口29が、羽根28の回転中心を挟んで平行且つ点対称となるよう設けられており、底板3aの下面には、各排出口29から排出された脱水汚泥Wを搬送するための2組のスクリュウコンベヤ30が設置されている。
【0023】
羽根28の基端側及び先端側の下面には、SUS410製のシュー31,32が着脱可能に取付けられており、貯槽本体3の底板3a上面には、羽根28の回転時にシュー31,32が摺動し得るよう、炭素鋼製のレール33,34が設けられている。
【0024】
羽根28の回転方向D1は、攪拌運転方向であり、貯槽本体3内に貯留された脱水汚泥Wが所定の量よりも多い場合に、羽根28の斜面28aにより脱水汚泥Wに上向きの力を付与して脱水汚泥Wを崩し、且つ斜面28aの法線方向へ向けて脱水汚泥Wを攪拌し、更に、羽根28上面の滑り摩擦によっても脱水汚泥Wを攪拌しつつ羽根28の回転方向D1前端に沿い貯槽本体3の内周壁側に送り出し、ブリッジングの脚を形成しがちな前記貯槽本体3の内周壁側部分の脱水汚泥Wを激しく動かすことで脱水汚泥Wにブリッジングが生じないようにし、底板3aの径方向中間部に形成した排出口29から脱水汚泥Wを排出するための回転方向である。この回転方向D1を便宜上、羽根28の正回転方向とする。又、羽根28の回転方向D2は、掻き寄せ運転方向であり、貯槽本体3内の脱水汚泥Wが所定の量よりも少なくなった場合に、攪拌運転方向での上記運転で、貯槽本体3の内周壁側へ寄りがちの脱水汚泥Wを、底板3aの径方向中間部に集まるように掻き寄せ、底板3aの径方向中間部に形成した排出口29から脱水汚泥Wを排出するための回転方向である。この回転方向D2を便宜上、羽根28の逆回転方向とする。
【0025】
なお、図1、図8中、35は脱水汚泥Wを貯槽本体3内に投入する投入管、36は貯槽本体3を支持する荷重検出器2からの荷重信号V1を基に、羽根28の回転方向D1,D2を決定し、減速電動機8に回転方向指令V2を与えると共に、スクリュウコンベヤ30の電動機37に運転指令V3を与えるようにしたコントローラである。
【0026】
次に、上記図示例の作動を説明する。
前工程で脱水された脱水汚泥Wは、投入管35から貯槽本体3内に投入され貯留される。脱水汚泥Wがある程度貯留されると、貯槽本体3内の脱水汚泥Wの頂部の状態は、脱水汚泥Wの安息角で決まり、断面は、図1の二点鎖線イのような山形状になる。
【0027】
貯槽本体3内に所定量の脱水汚泥Wが貯留された場合は、中央監視装置からの指令又は現場の操作盤のスイッチをオンにすることにより、羽根28の回転及びスクリュウコンベヤ30の運転が開始される。この際、荷重検出器2により検出した貯槽本体3内の脱水汚泥Wの重量は、荷重信号V1としてコントローラ36に与えられる。而して、例えば、貯槽本体3内に貯留された脱水汚泥Wの重量が予め設定した所定の重量よりも多い場合は、減速電動機8には、回転方向指令V2が与えられて、羽根28の回転方向はD1となる。
【0028】
すなわち、減速電動機8の動力は減速機7、カップリング15、軸体14、ボス21,環体24を経て羽根28に伝達され、羽根28は回転方向D1(図2、図4、図5において時計方向回り)へ向けて回転する。このため、貯槽本体3内の脱水汚泥Wの底板3a近傍のものは、羽根28の回転方向D1に向いた斜面28aに沿い上側の力を受けて攪拌されると共に、羽根28の回転方向D1側の端面形状に沿って貯槽本体3内周壁側へ送られつつ、排出口29からスクリュウコンベヤ30へ排出され、スクリュウコンベヤ30により搬送されて後工程へ送給される。貯槽本体3内の脱水汚泥Wの底板3a近傍部分は攪拌されるため、容易に崩落させることができ、脱水汚泥Wにブリッジングが生じることを防止することができる。
【0029】
貯槽本体3内の脱水汚泥Wが所定の重量まで排出されて、脱水汚泥Wの貯留状態が、例えば、図1の二点鎖線ロに示すように擂鉢状になると、荷重検出器2からコントローラ36へ与えられる荷重信号V1により羽根28の回転方向はD2と判断され、コントローラ36から減速電動機8へ回転方向指令V2が与えられて、羽根28は回転方向D2(図2、図4、図5において反時計方向回り)へ向けて回転する。このため、貯槽本体3内の脱水汚泥Wは羽根28の垂直面により押されると共に、羽根28の回転方向D2側の端面は平面視で、回転方向D2に向かって凹状に形成されているため、脱水汚泥Wは羽根28の凹状の端面に沿って貯槽本体3内周壁側及び中心側から底板3aの径方向中心側へ送られ、排出口29に掻き寄せられて排出口29からスクリュウコンベヤ30へ排出され、スクリュウコンベヤ30により搬送されて後工程へ送給される。
【0030】
貯槽本体3内の脱水汚泥Wの量が少ない場合にも、貯槽本体3内の脱水汚泥Wは排出口29側へ掻き寄せられるため、脱水汚泥Wは確実に排出口29からスクリュウコンベヤ30へ送出され、効率的な作業を行うことができる。又、脱水汚泥Wの残量が少なくなった場合には、キャップ25上の脱水汚泥Wは、キャップ25の斜面に対し滑落して羽根28側へ移動する。更に、羽根28は回転する際に、シュー31,32がレール33,34上を摺動するため、安定した回転を得ることができる。更に、羽根28は攪拌時と掻き寄せ時では、回転方向が逆方向となるため、羽根28の端面で引っかかっていた髪の毛や繊維質等のしさ分が脱水汚泥Wとの摩擦で外れることにより、羽根28に髪の毛や繊維質等のしさ分が絡み付き難く、安定して操業を継続することができる。
【0031】
貯槽本体3の底板3a近傍の脱水汚泥Wは、環体24下端と貯槽本体3の底板3aとの間の隙間Gから環体24内の空間に侵入する。しかし、シールケース19の上端にはダストシール23が設けられると共に、シールケース19内にはシール22が設けられ、シールケース19のフランジ19aと貯槽本体3の底板3aとの間には、Oリング20が設けられているため、脱水汚泥Wが孔18から貯槽本体3の下部外方へ漏洩する虞が少なく、軸受11やスラスト軸受13を破損する虞が少ない。又、所定時間の運転により、Oリング20、シール22、ダストシール23が劣化、破損し隙間が形成されると、脱水汚泥Wが隙間から貯槽本体3の底板3a下方へ漏洩する虞がある。しかし、減速機7は底板3aから下方へ離反して設置されているため、万一、脱水汚泥Wが貯槽本体3の底板3a下方へ漏洩しても、減速機7内に侵入する虞がなく、このため、減速機7の歯車や軸受を破損することがない。更に又、貯槽本体3内の脱水汚泥Wの重量の一部は、キャップ25、環体24、ボス21から軸体14に作用するが、軸体14に作用したスラスト荷重はスラスト軸受13により支持される。このため、減速機7にスラスト荷重が作用せず、減速機7としては汎用的な減速機を使用することができる。
【0032】
羽根28には、シュー31,32が取付けられているため、円滑に回転できると共に、
シュー31,32が磨耗したらこのシュー31,32を交換することで羽根28を交換する必要がなく、従って、羽根28の長期間の使用が可能となり、ランニングコストを押さえることができる。
【0033】
なお、本発明の脱水汚泥貯留設備は、貯槽本体内の脱水汚泥の量をロードセルのような荷重検出器により検出する場合について説明したが、貯槽本体内に堆積した脱水汚泥の高さにより貯槽本体内の脱水汚泥の量を検出するようにもできること、羽根の駆動に電動機と減速機を組み合わせた減速電動機、及び減速機を使用しているが、特にこのような構成に限定されるものではないこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の脱水汚泥貯留設備の概要を示す正面図である。
【図2】図1のII−II方向矢視図である。
【図3】図1に示す脱水汚泥貯留設備の駆動系統の拡大縦断面図である。
【図4】図1に示す脱水汚泥貯留設備における貯槽本体の底板付近の羽根を含む平面図である。
【図5】図1に示す脱水汚泥貯留設備に適用する羽根の詳細平面図である。
【図6】図5のVI−VI方向矢視図である。
【図7】図6のVII−VII方向矢視図である。
【図8】図1に示す脱水汚泥貯留設備の羽根の駆動系及びスクリュウコンベヤの駆動系に対する制御系の概要図である。
【符号の説明】
【0035】
3 貯槽本体
3a 底板
6 枠体
7 減速機
7a 入力軸
7b 出力軸
8 減速電動機
10 ケーシング
11 軸受
12 ケーシング
13 スラスト軸受
14 軸体
15 カップリング(継ぎ手)
19 シールケース
19a フランジ
20 Oリング(第二のシール手段)
21 ボス
22 シール(第一のシール手段)
24 環体
28 羽根
29 排出口
30 スクリュウコンベヤ(搬送装置)
D1 回転方向(正回転方向)
D2 回転方向(逆回転方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯槽本体内の底板近傍に、回転方向を正転及び逆転し得るようにした板状の羽根を水平方向へ駆動可能に設け、
前記羽根には、
貯槽本体内に貯留した脱水汚泥を攪拌してブリッジングを防止すると共に脱水汚泥を貯槽本体の底板に設けた排出口から排出する場合に、正回転方向前方となる側の端面に、正回転方向前方へ向けて下り勾配となる傾斜を付し、且つ回転中心側から離反した端部を平面視で正回転方向後方へ向けて円弧状に形成し、
前記貯槽本体内に貯留した脱水汚泥を前記排出口に掻き寄せる場合に逆回転方向前方となる側の端面を、垂直に形成すると共に、平面視で逆回転方向後方へ向けて凹んだ凹状に形成することを特徴とする脱水汚泥貯留設備。
【請求項2】
貯槽本体の底板下面には、排出口から排出された脱水汚泥を搬送するための搬送装置が設けられている請求項1に記載の脱水汚泥貯留設備。
【請求項3】
貯槽本体内の脱水汚泥が所定量よりも多い場合は、羽根は脱水汚泥を攪拌してブリッジングを防止する正転方回転方向へ回転し、所定量よりも少ない場合は、羽根は脱水汚泥を掻き寄せる逆回転方向へ回転するよう構成した請求項1又は2の何れかに記載の脱水汚泥貯留設備。
【請求項4】
貯槽本体に取付けられた枠体に設置された水平形の減速電動機及び水平な入力軸が前記減速電動機に接続され且つ出力軸が垂直の減速機と、該減速機の出力軸に継ぎ手を介し下端が接続された縦形の軸体と、前記羽根が外周に接続された環体が取付けられて前記軸体の上端に外嵌されたボスとを備え、前記軸体には、前記枠体の前記減速機上方の部分に設置されたケーシングに内嵌した軸受及びスラスト軸受が外嵌されている請求項1乃至3の何れかに記載の脱水汚泥貯留設備。
【請求項5】
ボスには貯槽本体の底板に固設されたシールケースが外嵌されており、該シールケースには、前記ボスに外嵌する第一のシール手段が内嵌さており、シールケースのフランジと貯槽本体の底板の間には、第二のシール手段が介装されている請求項4に記載の脱水汚泥貯留設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−116245(P2010−116245A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291172(P2008−291172)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000001834)三機工業株式会社 (316)
【Fターム(参考)】