脱水装置及び脱水方法
【課題】沈殿槽で水(上澄液)と分離された沈殿汚泥の含水率を低下させて、搬送中の沈殿汚泥から水が落下することを防止し、且つ、沈殿汚泥に含有される水の再利用を可能にせしめるような脱水装置と脱水方法の提供。
【解決手段】沈殿槽(1)と、当該沈殿槽(1)の底部(1b)が連通するシリンダ(3)と、シリンダ(31)内を仕切り且つシリンダ(31)内を往復動するピストン(4)及びピストンロッド(5)を備え、ピストン(4)は、ピストン(4)により仕切られたシリンダ(3)内の領域の一方の圧力が所定値よりも高圧になると水を透過する部分(4f)を設けており、前記シリンダ(3)の長手方向両端部には、開閉可能な蓋体(32)が設けられている。
【解決手段】沈殿槽(1)と、当該沈殿槽(1)の底部(1b)が連通するシリンダ(3)と、シリンダ(31)内を仕切り且つシリンダ(31)内を往復動するピストン(4)及びピストンロッド(5)を備え、ピストン(4)は、ピストン(4)により仕切られたシリンダ(3)内の領域の一方の圧力が所定値よりも高圧になると水を透過する部分(4f)を設けており、前記シリンダ(3)の長手方向両端部には、開閉可能な蓋体(32)が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈殿槽における沈殿物を脱水する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
河川、湖沼、海、ダムや貯水池等の貯水設備からの濁水や、土木、建設工事現場からの排水、工場排水等には、微細な土粒子や有機物微粒子が水中に混合、分散している。
その様な濁水や排水等を処理する手法として、処理するべき濁水や排水等を沈殿槽に導入し、当該沈殿槽中に凝集剤(凝集沈降剤)を投入、攪拌して、処理するべき濁水や排水等に混合、分散している各種微粒子を凝集して、巨大な凝集物として槽底部に沈殿せしめ、沈殿物と水(上澄液)とを分離する技術が存在する(例えば、特許文献1参照)。
係る従来技術では、凝集物は疎水性を発揮するため、水の侵入を遮断し、各種微粒子が水中に混合、分散してしまうことがない。
【0003】
しかし、上述した従来技術では、上澄液と分離された沈殿物(或いは、沈殿汚泥)は含水率が高く、重量が大きいため搬送効率が低下してしまう恐れがある。
また、沈殿汚泥の搬送中に、搬送される沈殿汚泥から泥水が落下して、搬送設備周辺を汚染し、作業環境を悪化させてしまうという問題も有している。
さらに、沈殿物(沈殿汚泥)と分離された上澄液は、各種用途に再利用可能であるが、厳密には沈殿物に包含された水については、その様な再利用が困難である。水資源の節約のため、沈殿物に包含される水を再利用することが望まれている。しかしながら、上述した従来技術では、上澄液と分離された沈殿物(或いは、沈殿汚泥)に包含される水を再利用可能な状態にすることは企図されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4653056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、沈殿槽で水(上澄液)と分離された沈殿汚泥の含水率を低下させて、搬送中の沈殿汚泥から水が落下することを防止し、且つ、沈殿汚泥に含有される水の再利用を可能にせしめるような脱水装置と脱水方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の脱水装置は、沈殿槽(原液攪拌槽1)と、当該沈殿槽(1)の底部(1b)が連通するシリンダ(シリンダ装置3)と、シリンダ(シリンダ本体31)内を(二つの領域に)仕切り且つシリンダ(31)内を往復動するピストン(ろ過体4)及びピストンロッド(移動軸5)を備え、
ピストン(4)は、ピストン(4)により仕切られたシリンダ(31)内の領域の一方の圧力が所定値(例えば、原液攪拌槽1の底部1bにおける水圧)よりも高圧になると水を透過する部分(ろ過膜4f)を設けており、
前記シリンダ(3)の長手方向(図1〜図8では左右方向)両端部には、開閉可能な蓋体(フタ32)が設けられており、
制御装置(50)を備え、当該制御装置(50)は、シリンダ(31)内におけるピストン(4)が移動する側の領域内の圧力が上昇した際に、ピストン(4)が移動する側の蓋体(32)を開放する機能と、蓋体(32)が開放した側にピストン(4)が移動してシリンダ(3)内の沈殿物(沈殿汚泥M)を排出した後、蓋体(32)を閉鎖して、ピストン(4)を(それ以前の移動方向に対して)反対方向へ移動する機能を有していることを特徴としている。
【0007】
本発明の脱水装置において、ピストン(ろ過体4)及びピストンロッド(移動軸5)を移動する移動軸移動動力源(移動軸5を移動する電動モータ25)と、当該移動軸移動動力源(移動軸5を移動する電動モータ25)の負荷を検出する検出装置(負荷センサSm)を設け、前記制御装置(50)は、前記検出装置(負荷センサSm)の検出結果(移動軸5を移動させる電動モータ25の負荷)により、シリンダ(31)内におけるピストン(4)が移動する側の領域内の圧力が上昇したか否かを判断する機能を有しているのが好ましい。
ただし、シリンダ(31)内におけるピストン(4)が移動する側の領域内の圧力を示すパラメータは、前記検出装置(負荷センサSm)の検出結果(移動軸5を移動させる電動モータ25の負荷)に限定されるものではない。
【0008】
また、本発明の脱水装置(100)において、計時装置(タイマーT)を設け、前記制御装置(100)は、計時装置(T)により、シリンダ(31)内におけるピストン(4)が移動する側の領域内の圧力が上昇(移動軸5を移動させる電動モータ25の負荷が増大)してからの時間が計測し、計時装置(T)により計測された時間により、シリンダ(31)内の沈殿物(沈殿汚泥M)を排出したか否かを判断する機能を有しているのが好ましい。
ただし、シリンダ(31)内の沈殿物(沈殿汚泥M)を排出したか否かを判断するパラメータとしては、シリンダ(31)内におけるピストン(4)が移動する側の領域内の圧力が上昇(移動軸5を移動させる電動モータ25の負荷が増大)してからの時間に限定されるものではない。
【0009】
本発明の脱水方法は、沈殿槽(原液攪拌槽1)の底部(1b)に連通するシリンダ(3)内をピストン(ろ過体4)及びピストンロッド(移動軸5)が移動し、
ピストン(4)により仕切られたシリンダ(31)内の領域の一方の圧力が所定値(例えば、原液攪拌槽の底部1bにおける水圧)よりも高圧になると、ピストン(4)の一部(ろ過膜4f)から水が透過され、
シリンダ内におけるピストン(4)が移動する側の領域内の圧力が上昇した際に、ピストン(4)が移動する側の蓋体32を開放し、ピストン(4)が移動してシリンダ(31)内の沈殿物(沈殿汚泥M)を排出し、
その後、蓋体(32)を閉鎖して、ピストン(4)をそれ以前の移動方向とは反対側に移動することを特徴としている。
【0010】
本発明の脱水方法において、ピストン(ろ過体4)及びピストンロッド(移動軸5)を移動させる移動軸移動動力源の負荷(移動軸5を移動させる電動モータ25の負荷)を検出し、
検出された負荷(移動軸5を移動させる電動モータ25の負荷)により、シリンダ(31)内におけるピストン(4)が移動する側の領域内の圧力が上昇したか否かを判断するのが好ましい。
ただし、シリンダ(31)内におけるピストン(4)が移動する側の領域内の圧力が上昇したか否かは、前記移動軸移動動力源の負荷(移動軸5を移動させる電動モータ25の負荷)以外のパラメータにより、判断することが出来る。
【0011】
また、本発明の脱水方法において、計時装置計時装置(タイマーT)により、シリンダ(31)内におけるピストン(4)が移動する側の領域内の圧力が上昇(移動軸5を移動させる電動モータ25の負荷が増大)してからの時間を計測し、
当該計測された時間により、シリンダ(31)内の沈殿物(沈殿汚泥M)を排出したか否かを判断するのが好ましい。
ただし、シリンダ(31)内の沈殿物(沈殿汚泥M)を排出したか否かは、シリンダ(31)内におけるピストン(4)が移動する側の領域内の圧力が上昇(移動軸5を移動させる電動モータ25の負荷が増大)してからの時間以外のパラメータにより、判断することが出来る。
【発明の効果】
【0012】
上述する構成を具備する本発明によれば、沈殿槽(原液攪拌槽1)で沈殿して水分と分離された固形物(或いは沈殿汚泥M)は、沈殿槽底部(1b)と連通するシリンダ(31)内に流入する。シリンダ(31)内に流入した沈殿汚泥(M)は、シリンダ(31)内をピストン(ろ過体4)及びピストンロッド(移動軸5)が移動することにより圧縮される。
ここで、ピストン(4)には、圧縮された沈殿汚泥(M)の圧力が所定値(例えば、原液攪拌槽1の底部1bにおける水圧)よりも高圧になると水を透過する部分(ろ過膜4f)が設けられている。そのため、シリンダ(31)内の沈殿汚泥(M)がピストン(ろ過体4)により圧縮されると、沈殿汚泥(M)の含水分がピストン(4)の水透過部分(4f)を透過して、ピストン(4)に対して、沈殿汚泥(M)が圧縮されている領域の反対側に移動する。
これにより、沈殿槽(原液攪拌槽1)で沈殿した沈殿汚泥から、水分が分離される。
【0013】
沈殿汚泥(M)がピストン(4)により圧縮され、沈殿汚泥(M)が圧縮されている側の領域の圧力が上昇すると、シリンダ(31)における沈殿汚泥(M)が圧縮されている側の端部に設けられた蓋体(フタ32)が開放して、蓋体(32)が開放した側にピストン(4)が移動することによりシリンダ(31)内の沈殿物(沈殿汚泥M)は排出される。
上述した様に、シリンダ(31)内でピストン(ろ過体4)により圧縮されることにより、沈殿汚泥(M)から水分が分離されるので、沈殿汚泥(M)の含水率が低くなり、その重量が低減される。そのため、従来技術に比較して、沈殿汚泥の搬送効率が向上する。
また、沈殿汚泥(M)の含水率が低いため、当該汚泥(M)の搬送中に、搬送される沈殿汚泥(M)から泥水が落下することが減少する。そのため、汚泥(M)から落下した泥水が飛散して搬送設備周辺を汚染してしまうことがなくなり、作業環境を悪化させてしまうこともない。
【0014】
本発明によれば、沈殿汚泥(M)をシリンダ(31)内から排出した後、蓋体(32)を閉鎖して、ピストン(4)を(それ以前の移動方向に対して)反対方向へ移動する。これにより、沈殿汚泥(M)を圧縮し排出している間に、沈殿槽(原液攪拌槽1)からシリンダ(31)内に新たに流入した沈殿汚泥(M)は、蓋体(32)を開放して閉鎖したのとは反対側のシリンダ端部に向かって圧縮され、水分が分離され、最終的には当該反対側のシリンダ端部から排出される。
すなわち、シリンダ(31)内をピストン(ろ過体4)及びピストンロッド(移動軸5)が連続して往復運動することにより、シリンダ(31)内に流入した沈殿汚泥(M)を連続して圧縮し、水分を分離して(水分を搾り取って)、シリンダ両端の何れか一方より排出することが出来る。そのため、沈殿汚泥(M)の圧縮、水分の分離(水分の搾り取り)、排出を、連続的に効率良く行うことが出来る。
【0015】
これに加えて本発明によれば、シリンダ(31)内をピストン(ろ過体4)及びピストンロッド(移動軸5)が連続して往復運動するため、ピストン(4)の一部(ろ過膜4f)に異物が付着しても、ピストン(4)が逆方向に移動すると当該異物に対しても逆方向の力が作用するので、ピストン(4)の一部(ろ過膜4f)から異物は容易に除去される。そのため、本発明によれば、ピストン(ろ過膜4f)が閉塞することが防止される。
さらに本発明によれば、シリンダ(31)内が沈殿槽底部(1b)と連通しているので、ピストン(ろ過体4)の水透過部分(4f)を透過して、沈殿汚泥(M)から分離された水分は、シリンダ(31)内と連通している沈殿槽底部(1b)を経由して、沈殿槽(1)上部の領域に到達する。そして、沈殿槽(1)上部における上澄液と合流して、各種用途に再利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態を示す断面正面図である。
【図2】実施形態の要部を示す部分断面正面図である。
【図3】実施形態により沈殿汚泥から水分を分離する工程を示す工程図である。
【図4】実施形態における図3に続く工程を示す工程図である。
【図5】実施形態における図4に続く工程を示す工程図である。
【図6】実施形態における図5に続く工程を示す工程図である。
【図7】実施形態における図6に続く工程を示す工程図である。
【図8】実施形態における図7に続く工程を示す工程図である。
【図9】図3から図8で示す水分分離の手順を示すフローチャートである。
【図10】実施形態における原液攪拌槽の平面図である。
【図11】実施形態における原液攪拌槽の要部を示す部分断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
最初に、図1を参照して、本発明の実施形態に係る脱水装置を説明する。
図1において、全体を符号100で示す脱水装置は、原液攪拌槽(以下、「沈殿槽」と言う)1と、開閉弁2と、シリンダ装置3と、制御手段であるコントロールユニット50を備えている。
沈殿槽1には、図示しない凝集剤投入機構が設けられている。凝集剤投入機構は、公知、市販のものを適用可能である。また、沈殿槽1内に投入される凝集剤も、公知・市販の凝集剤を用いることが出来る。
換言すれば、凝集剤投入機構の構成と、凝集剤については、特に限定するものではない。
【0018】
沈殿槽1の底部1bは、シリンダ装置3のシリンダ本体31における長手方向(図1、図2では左右方向)中央部に連通している。
図示はされていないが、シリンダ装置3の下方には、シリンダ本体31から排出された沈殿汚泥(後述の態様で水分がさらに搾り取られた沈殿汚泥)を搬送するための搬送手段、例えば搬送コンベアが設けられている。搬送手段(搬送コンベア)についても、公知、市販のものが適用可能である。
【0019】
シリンダ装置3は、シリンダ本体31と、シリンダ本体31の長手方向両端部に設けられた蓋部材32、32と、ピストン4と、ピストンロッド5を備えている。
ピストン4は鍔状(円盤状)に構成され、ろ過体として機能する様に構成されている。そしてピストン4は、その両端面に、ろ過膜4fが設けられている(図2参照)。ピストン4の両端面における合計2枚のろ過膜4fは、(シリンダ本体31内において)ピストン4が区画する空間の圧力差が所定値以上に上昇した際に、水のみを圧力の低い側に透過させる性質を有している。或いは、ろ過膜4fは、ピストン4により仕切られたシリンダ本体31内の領域の一方の圧力が、設定圧力(所定値)よりも高圧になると、水を透過する性質を有している。
ろ過膜4fが水分を透過する設定圧力は、原液攪拌槽の底部1bにおける水圧よりも高い圧力である。ろ過膜4fが、原液攪拌槽の底部1bにおける水圧以下の圧力で水分を透過してしまうのであれば、ピストン(ろ過体)4を移動して、沈殿汚泥を圧縮しなくても、沈殿汚泥の含水がろ過膜4fを透過してしまうからである。
ろ過膜4fについては、公知、市販のものを転用することが出来る。
【0020】
シリンダ本体31は両端が開口しており、1対の蓋部材32、32により、シリンダ本体31の両端が閉塞し、一方の端部のみを開放し、或いは、メンテナンスのためにシリンダ本体31の両端を同時に開放する様に、制御可能に構成されている。
蓋部材32、32によるシリンダ本体31端部の開閉制御については後述する。
【0021】
図2において、蓋部材32は、円盤状の蓋本体32aと、ガイド部32bで構成されている。ガイド部32bは中空部材で構成され、蓋本体32aの一方の端面の中心から、シリンダ本体31と離隔する方向に延在している。そしてガイド部32bは、蓋本体32aに固着されている。
明確に図示はされていないが、蓋本体32aの中心には、ガイド部材32bの中空の内径と同じ径の貫通孔(符号なし)が形成されている。
【0022】
図2において、ピストンロッド5は、ピストン4の中心を延在している。ピストンロッド5において、ピストン4の右側部分には符号5Rが付されており、ピストン4の左側部分には符号5Lが付されている。
ピストンロッド5におけるピストン4の右側部分5Rは、図2における右側の蓋部材32の中空ガイド部32b内に挿入され延在している。ピストンロッド5におけるピストン4の左側部分5Lは、図2における左側の蓋部材32の中空ガイド部32bに挿入され延在している。
図2における左右の蓋部材32において、蓋本体32a近傍の内周部には、環状のシール部材6が介装されている。シリンダ本体31内の沈殿汚泥が中空ガイド部32b側へ漏洩することを防止するためである。
【0023】
図1では、ピストンロッド5の右側の延長端にロッド駆動装置20が接続されており、ロッド駆動装置20は、ピストン4及びピストンロッド5を左右方向に往復動させる機能を有している。ここで、ロッド駆動装置20は、図1において、ピストンロッド5における左側の延長端に配置してもよい。
明確に示してはいないが、ロッド駆動装置20としては、例えば、インバータモータ25を有し、インバータモータ25の回転軸先端にリング状部材を接続(固着)し、当該リング状部材に雌ねじを形成し、ピストンロッド5外周に雄ねじを形成し、前記リング状部材の雌ねじにピストンロッド5外周に形成した雄ねじを螺合させた装置を用いることが出来る。係る装置によれば、インバータモータ25を正転させることにより、ピストンロッド5及びピストン4は左側に移動し、インバータモータ25を逆転させればピストンロッド5及びピストン4は右側に移動する。
なお、ピストンロッド5を往復動せしめる機構は、上述の構成に限定するものではない。
【0024】
図1において、シリンダ装置3の左右両端の外方には、一対の蓋開閉機構40が装備されている。蓋開閉機構40は、蓋部材32をシリンダ本体31から閉塞させ、或いは開放させる機能を有している。
蓋開閉機構40は、例えば、中空ガイド部32b(図2参照)の外表面に雄ネジ(図示せず)を形成し、当該雄ネジに螺合する雌ネジ(図示せず)が形成された回転部材(図示せず)と、当該回転部材に回転を伝達する回転伝達部材(図示せず)と、回転駆動源(例えばインバータモータ:図示せず)を備えている。回転駆動源の回転が、図示しない回転伝達部材を介して回転部材(図示せず)に伝達され、当該回転部材の雌ネジが回転することにより、当該雌ネジと螺合する雄ネジを有する中空ガイド部32b(図2参照)が、図1の左右に移動する。
【0025】
或いは、明確に示してはいないが、蓋開閉機構40として、インバータモータ(図示せず)の回転軸の先端にピニオン(図示せず)を取り付け、蓋部材32の中空ガイド部32bの外周に長めのラック(図示せず)を形成して、インバータモータ側のピニオンと蓋部材32側のラックとを噛み合わせても良い。
係る構成によれば、例えば、インバータモータを正転させれば、蓋部材32はシリンダ本体31から離隔し、シリンダ端部が開放される。一方、インバータモータを逆転させれば、蓋部材32はシリンダ本体31に近づき、シリンダ本体31の端部を閉塞する。
なお、蓋部材32を往復動せしめる機構については、上記2例に限定するものではない。
【0026】
図1において、シリンダ本体31の左右両端面から、シリンダ外方(シリンダ本体31の右側端面に対しては右方:シリンダ本体31の左側端面に対しては左方)に所定距離だけ離隔した箇所(2箇所)には、停止部材(ストッパー)7が設けられている。停止部材(ストッパー)7は、蓋部材32が所定量以上シリンダ本体31から離隔するのを防止するために設けられている。
ロッド駆動装置20のインバータモータ25には、負荷センサSmが設けられており、当該負荷センサSm1は入力信号ラインLiを介してコントロールユニット50と接続されている。
蓋開閉機構40とコントロールユニット50は、制御信号ラインLoによって接続されている。コントロールユニット50には、計時装置であるタイマーTが内蔵されている。
【0027】
図示の脱水装置100では、原液攪拌槽1内に凝集剤を添加して、原液と攪拌することにより、原液攪拌槽1内で固形分が沈殿物し、汚泥(沈殿汚泥)として原液攪拌槽1の底部1bに沈殿する。そして、沈殿した汚泥は、シリンダ本体31内に落下する。
原液攪拌槽1の底部1bからシリンダ本体31内に落下した沈殿汚泥Mは、ピストンロッド5が左右いずれかに移動すると、ピストン(ろ過体)4における移動方向側の領域の水分が除去されて、体積が減少する。すなわち、ピストン(ろ過体)4の移動方向側の領域に存在する沈殿汚泥Mは、ピストン(ろ過体)4により、シリンダ31の左右何れかの端部(或いは、そこに設けられた蓋部材32)に向って圧縮される。
【0028】
ピストン(ろ過体)4が移動して、ピストン(ろ過体)4の移動方向側の領域に存在する沈殿汚泥Mの圧力が増加して、原液攪拌槽1の底部1bにおける水圧よりも高圧となり、「設定圧力」以上になると、沈殿汚泥Mに含まれる水分は、ピストン(ろ過体)4を透過する。
換言すれば、ピストンロッド5及びピストン(ろ過体)4が移動することによって、沈殿汚泥Mから水分が分離され、或いは脱水される。別の表現をすると、原液攪拌槽1内で沈殿することにより水分と分離された沈殿汚泥Mから、水分がさらに搾り取られる。その結果、沈殿汚泥Mの含水率が低下する。
【0029】
前述したように、ロッド駆動装置20におけるインバータモータ25は、ピストンロッド5を移動させる動力源である。
図示の実施形態では、ロッド駆動装置20におけるインバータモータ25の負荷を負荷センサSmで計測し、脱水装置100のコントロールユニット50は、負荷が所定値「設定圧力」以上になった場合に、沈殿した汚泥Mが「一定の圧力まで加圧された」と判断するように構成されている。
【0030】
ただし、沈殿した汚泥が一定の圧力まで加圧されたか否かの判断は、インバータモータ25の負荷以外のパラメータを計測することによって行なうことも可能である。
例えば、シリンダ本体31内で圧縮される汚泥の圧力(内圧)を図示しない圧力センサで計測して、計測された圧力により判断することも可能である。
或いは、ピストンロッド5の移動量を計測して、その移動量により、シリンダ本体31内の沈殿汚泥Mが、一定の圧力まで加圧されたか否かを判断することも可能である。
【0031】
負荷センサSmで計測されたインバータモータ25の負荷が所定値以上となり、沈殿汚泥Mが「一定の圧力まで加圧された」と判断された場合には、蓋部材32を開放して、シリンダ本体31から分離する。換言すれば、蓋部材32は開放されて、シリンダ本体31に対して図1、図2における左側へ移動する。
蓋部材32がシリンダ本体31に対して図1、図2における左側へ移動するのと同時に、タイマーTで計時を開始する。
蓋部材32を開放した状態で、ピストンロッド5及びピストン「ろ過体」4を蓋部材32が外れた側へさらに移動し続けると、水分が分離されて濃縮された沈殿汚泥M(水分が搾り取られて濃縮された沈殿汚泥M)が、シリンダ本体31内から排出される(落下する)。
【0032】
蓋部材32を開放してから一定時間が経過したならば、「水分が分離されて濃縮された沈殿汚泥M(水分が搾り取られて濃縮された沈殿汚泥M)がシリンダ本体31内から排出(落下)された」と判断する。
そして、ピストンロッド5及びピストン4と共に、蓋部材32をシリンダ本体31側に移動し、蓋部材32をシリンダ本体31の開口部に嵌合し、以って、開放していたシリンダ本体31端部を閉鎖する。
その後、ピストンロッド5及びピストン4を、図1、図2で右側に向って移動させる。
ここで、、ピストンロッド5及びピストン4が、図1、図2における右側に移動している間にろ過膜4fに異物が付着して、当該異物が除去されなかったとしても、ピストン4及びろ過体4fが左側へ移動する際には、当該異物に対しては逆方向の力が作用する。そのため、付着していた異物は、ピストン4及びろ過体4fが左側へ移動している間に容易に除去されることになる。一方、ピストンロッド5及びピストン4が、図1、図2における左側に移動している間に異物がろ過膜4fに付着した場合には、ピストン4及びろ過体4fが右側へ移動する間に、当該異物は容易に除去される。
そのため、ピストン4のろ過膜4fが異物の付着に起因して閉塞することが防止される。
【0033】
蓋部材32が開放して、水分が分離された沈殿汚泥がシリンダ本体31内から排出(落下)されて、蓋部材32が閉鎖するまでの間も、原液攪拌槽1で凝集、沈殿した汚泥(沈殿汚泥)は、シリンダ本体31内に流入し続ける。
しかし、シリンダ本体31内に新たに流入した沈殿汚泥は、ピストン「ろ過体」4及びろ過膜4fにより遮断されるので、水分が搾り取られて濃縮された沈殿汚泥Mを排出している領域に流入することはない。
【0034】
蓋部材32を開放した後、「水分が搾り取られて濃縮された沈殿汚泥Mがシリンダ本体31内から排出(落下)された」と判断し、蓋部材32を閉鎖して、ピストンロッド5を反対側に向って移動させるに際しては、経過時間のみならず、その他のパラメータにより判断することも可能である。
【0035】
例えば、ピストンロッド5の移動量を計測して、その移動量により、沈殿した汚泥Mがシリンダ本体31外に排出されたか否か(掻き出されたか否か)を判断することも可能である。
或いは、シリンダ3下方にコンベアを配置し、当該コンベアにより排出された汚泥(水分が搾り取られて濃縮された沈殿汚泥M)を搬送する場合には、排出された汚泥が当該コンベアに落下する位置における荷重を計測する荷重計測機器を配置する。そして、荷重計測機器で計測された沈殿汚泥落下位置の荷重がゼロ以外の数値となったならば、「水分が搾り取られて濃縮された沈殿汚泥Mの排出が開始された」と判断し、その後、荷重計測機器で計測された沈殿汚泥落下位置の荷重が再びゼロになった時に「沈殿汚泥Mの排出が終了した」と判断することも出来る。
【0036】
ピストンロッド5が移動し、ピストン(ろ過体)4及びろ過膜4fにより沈殿汚泥Mから搾り取られた水分は、ろ過膜4fを透過して、シリンダ本体31内におけるピストンロッド5が移動する方向とは逆方向の領域に流入する。そして、シリンダ本体31中央に連通している原液攪拌槽底部1bを介して、原液攪拌槽1の上方の領域であって、上澄液が滞留している領域に到達する。
【0037】
ここで、原液攪拌槽底部1bに沈殿している沈殿汚泥Mにより、シリンダ本体31内で搾り取られた水分が、原液攪拌槽1上方の領域に到達するのを妨げられないように、原液攪拌槽1には攪拌用ロッド49が設けられており、攪拌用ロッド49の下端部には複数の突起49tが設けられている。
図1、図10、図11を参照して後述するが、係る突起49tにより、シリンダ本体31内で搾り取られた水分が、原液攪拌槽1上方の領域に到達し易くなっている。
【0038】
図1、図2で説明した様に、シリンダ装置3(シリンダ本体31、ピストン4、ろ過膜4f、ピストンロッド5、蓋部材32)により、シリンダ本体31内に流入した沈殿汚泥Mから水分を搾り取る。
次に図3〜図8を参照して、シリンダ本体31内に流入した沈殿汚泥Mから水分を搾り取る態様について、工程順に説明する。
図3〜図7における符号Mcは、圧縮された沈殿汚泥を示す。
【0039】
先ず、図3において、ピストン(ろ過体)4及びろ過膜4fは、原液攪拌槽1の底部がシリンダに連通している箇所よりも、図3における右側の領域に位置している。
上述した様に、ピストン(ろ過体)4及びろ過膜4fの右側には、汚泥から分離されて、ろ過膜4fを透過した水分が貯溜する。一方、ピストン(ろ過体)4及びろ過膜4fの左側には、原液攪拌槽1から沈殿汚泥が流入する。
図3で示す状態から、駆動装置20(図1参照)によってピストンロッド5が左方に移動させられると、ピストン(ろ過体)4はピストンロッド5と一体に左方へ移動する(図4参照)。
【0040】
図4の工程では、ピストン(ろ過体)4及びピストンロッド5の移動に伴って、ピストン(ろ過体)4は、シリンダ本体31の中心点よりも左方に移動して、ピストン(ろ過体)4と左方の蓋部材32との間の領域に流入した沈殿汚泥が圧縮される。
ピストンロッド5、ピストン(ろ過体)4及びろ過膜4fが左側に移動して、ピストン4よりも左側の領域の沈殿汚泥が圧縮されると、当該領域の圧力が上昇する。そして、ピストン4よりも左側の領域の圧力が、原液攪拌槽の底部1bにおける水圧よりも高い圧力(設定圧力)になると、沈殿汚泥Mc中の水分がろ過膜4fを透過して、ピストン4の右側の領域に流入する。これにより、沈殿汚泥Mcから水分が分離され、濃縮される。
ろ過膜4fの右側の領域では、原液攪拌槽底部1bがシリンダ本体31に連通しているので、原液攪拌槽底部1bから沈殿汚泥が流入している。
【0041】
図4の状態よりも、ピストンロッド5、ピストン(ろ過体)4及びろ過膜4fが、さらに左側に移動すると、図5で示す状態になる。図5の状態では、沈殿汚泥Mcが十分に濃縮され、汚泥が十分に脱水される(水分が十分に搾り取られる)。
そして、ピストン(ろ過体)4及びろ過膜4fの左側の領域における圧力は、所定圧力まで上昇すると、駆動装置20のインバータモータ25に介装した負荷センサSmが作動して、「所定圧力に達した」旨の情報をコントロールユニット50に伝達する。
【0042】
図6において、「所定圧力に達した(インバータモータ25の負荷が所定値に到達した)」旨の情報を受信したコントロールユニット50は、蓋開閉機構40に制御信号を発信して、左側の蓋部材32を開放する。
蓋部材32の開放と同時にコントロールユニット50に内蔵されたタイマーTで計時を開始する。
【0043】
そして図7で示す様に、左側の蓋部材32を開放したまま、ピストンロッド5、ピストン(ろ過体)4及びろ過膜4fが、さらに左側に移動して、シリンダ本体31内の圧縮・脱水されて濃縮された沈殿汚泥Mcを左方に掻き出す。左方に掻き出された沈殿汚泥Mcは、シリンダ本体31の左端の開口部から排出(落下)して、図示しない搬送コンベア上に落下する。
水分が分離されて(脱水されて)濃縮された沈殿汚泥Mcをシリンダ本体31内部から掻き出した後、ピストンロッド5及びピストン(ろ過体)4は、さらに左側に移動して、停止部材(ストッパー)7によって所定の位置で停止する。
【0044】
図8の工程は、タイマーTにより所定時間が経過したことを計時された状態を示している。図8において、コントロールユニット50は、ピストンロッド5及びピストン(ろ過体)4を、図3〜図7とは反対側(図8の右側)に移動する。そして、図3〜図8で説明した工程を、左右を逆にした態様で実行する。
ここで、タイマーTに代えて、停止部材(ストッパー)7におけるシリンダ本体31に対向する面に、例えば接触タイプのセンサを取り付け、蓋部材32の蓋本体32aが当該センサを押圧する際に、ピストンロッド5及びピストン4を反対方向へ移動させる(或いは、ピストンロッド5及びピストン4の移動方向を反転する)ように構成することもできる。その場合、接触センサをシリンダ本体31の端部にも設けても良い。
【0045】
次に図9を参照して、図3〜図8で説明した手順、すなわち、シリンダ3(シリンダ本体31、ピストンロッド5及びピストン4、ろ過膜4f、蓋部材32)により、シリンダ本体31内に流入した沈殿汚泥Mから脱水する操作について、説明する。
【0046】
図9のステップS1では、コントロールユニット50は、インバータモータ25に設けた負荷センサSmの情報から、インバータモータ25の負荷が設定値(所定値)以上となったか否かを判断する。
インバータモータ25の負荷が設定値に満たなければ(ステップS1がNO)、シリンダ本体31内の沈殿汚泥が濃縮されておらず、水分が搾り取られていないと判断して、ピストン4で沈殿汚泥を圧縮し続けるべく、ステップS1を繰り返す(ステップS1がNOのループ)。
インバータモータ25の負荷が設定値(所定値)以上となったならば(ステップS1がYES)、シリンダ本体31内の沈殿汚泥が十分に濃縮され、水分が十分に搾り取られたと判断して、ステップS2に進む。
【0047】
ステップS2では、蓋部材32を開放する側に移動させる。それと同時に、タイマーTで計時を開始する。そしてステップS3に進む。
ステップS3では、コントロールユニット50は、タイマーTによる計時開始後、所定時間が経過したか否かを判断する。
タイマーTで計時してから所定時間が経過していないのならば(ステップS3がNO)、所定時間が経過するまでステップS3のループを繰り返す(ステップS3がNOのループ)。
一方、所定時間が経過したならば(ステップS3がYES)、ステップS4に進む。
【0048】
ステップS4では、蓋部材32によりシリンダ本体31の端部を閉鎖させると同時に、タイマーTをリセットする。そして、ステップS5に進む。
ステップS5では、コントロールユニット50は、シリンダ3により、沈殿汚泥Mから脱水する操作(制御)を終了するか否かを判断する。
操作を終了するのであれば(ステップS5がYES)、そのまま制御を終了する。沈殿汚泥Mから脱水する操作を続行するのであれば(ステップS5がNO)、インバータモータ25の正転・逆転を切り換えて、ステップS1まで戻り、再びステップS1以降を繰り返す。
【0049】
次に、図1、図10、図11を参照して、原液攪拌槽(沈殿槽)1について説明する。
図1及び図10で示すように、原液攪拌槽1は、3つの領域11、12、13に区画されている。
領域11は半径方向で最も内方の領域であり、この領域に固液分離するべき濁水や排水等の「原液」が投入される。領域11は、隔壁11wにより、半径方向外方に位置する領域12と区画されている。
領域12は、隔壁12w及び隔壁12vにより、半径方向で最も外方の領域13と区画されている。
図10で示すように、半径方向で最も外方の領域13には、固液分離された水分(処理水)を排出する排出口13oが設けられている。
【0050】
領域12には、原液から分離された上澄液が貯留している。領域11の上部における上澄液は、公知技術による機構(図示せず)によって領域12に移動される。
図2〜図9を参照して説明した態様で沈殿汚泥から分離された水分は、図1の矢印Faで示すように、原液攪拌槽1の下方から領域12に流入する。第1の領域11底部の連通孔δには、凝集、沈殿した固相分(沈殿汚泥)が滞留する。そのため、ピストン3からの水分は、連通孔δを通過しない。
【0051】
領域11と領域12とを区画する隔壁11wは、原液攪拌槽1の天井部1uまで延在している(図1参照)。
一方、領域12と領域13とを区画する隔壁(隔壁12w、隔壁12v)の内、隔壁12wは、原液攪拌槽1の天井部1uまで延在している。しかし、隔壁12vは、原液攪拌槽の天井部1uまで延在しておらず、隔壁12vの上端部は原液攪拌槽の天井部1uの下方に位置している。従って、領域12の上澄液は、隔壁12vをオーバーフローして(図10の複数の矢印Fov)、領域13に流入する。一方、隔壁12wにおいては、領域12の上澄液はオーバーフローしない。
【0052】
図10において、複数の矢印Fov(上澄液のオーバーフローを示す矢印)が示されているのが、上端部が原液攪拌槽の天井部1uの下方に位置している隔壁12vである。そして、矢印Fovが示されていないのが、上端部が原液攪拌槽の天井部1uに到達している隔壁12wである。
領域13にオーバーフローした上澄液は、矢印Fsで示すように領域13中を流れて、排出口13oから排出される。
【0053】
図1、図10で示すように、領域13には、仕切板13Rと仕切板13rが設けられている。
仕切板13Rは、その上端が原液攪拌槽の天井部1uまで延在している。一方、仕切板13rの上端は原液攪拌槽1の天井部1uまで延在しておらず、仕切板13rの上端は原液攪拌槽の天井部1uの下方に位置している。
図10で示すように、領域13には、1枚の仕切板13Rと、複数(例えば、図10では3枚)の仕切板13rが設けられている。
領域13内において、矢印Fsで示すように上澄液が流れると、当該上澄液の流れFsは、仕切板13rの上端を越えて流れることが出来るが、仕切板13Rは当該流れFsを遮断する。
【0054】
図1で示すように、隔壁12w及び隔壁12vの下端部は、原液攪拌槽1の傾斜した側壁1cには結合されておらず、隙間γが形成されている。
上澄液の流れFsは、仕切板13rの上方を越えて流れることが出来るが、当該上澄液に固形分(沈殿汚泥)が包含されている場合には、当該沈殿汚泥は仕切板13rに沿って沈降する。そして、隙間γを通過して、原液攪拌槽1の下方へ移動(沈殿)することが出来る。
【0055】
図1、図11で示すように、原液攪拌槽1の中心部には、鉛直方向に延在する攪拌用ロッド49が設けられている。攪拌用ロッド49はロッド回転用の電動モータ45により回転駆動され、当該電動モータ45は、原液攪拌槽1の天井部1uに載置されている。
図11で示すように、攪拌用ロッド49は、領域11に相当する箇所に複数の攪拌翼49mを設けている。
【0056】
図11で明確に示されている様に、攪拌用ロッド49の下端部は、シリンダ本体31の近傍まで延在している。
図1、図11で示す様に、原液攪拌槽1の底部1bとシリンダ3とを連通する領域には、開閉用バルブ2が配置されている。
この開閉用バルブ2は、原液攪拌槽1の底部1bとシリンダ3とを連通、遮断する機能を有している。原液攪拌槽1の底部1bとシリンダ3との連通を遮断する場合には、開閉用バルブ2のハンドル2hを回転して、原液攪拌槽1の底部1bとシリンダ3を連通する流路(図示せず)に図示しないバルブ本体を進入させて、当該流路を閉鎖する。原液攪拌槽1の底部1bとシリンダ3とを連通する場合には、開閉用バルブ2のハンドル2hを遮断時とは逆方向に回転して、前記流路(原液攪拌槽の底部とシリンダを連通する図示しない流路)から、バルブ本体(図示せず)を外して、当該流路を開放する。
【0057】
図11で示すように、攪拌用ロッド49の下端部で、原液攪拌槽1の底部1b及び前記開閉用バルブ2を設けた領域に延在している領域には、複数の突起49t(図示では4箇所)が設けられている。
開閉用バルブ2の領域に沈殿汚泥が滞留すると、図2〜図9で説明した態様で沈殿汚泥から分離した水分が、シリンダ3から原液攪拌槽1側に流入し難くなってしまう。その様な場合に、攪拌用ロッド49を回転すれば、複数の突起49tにより滞留した沈殿汚泥が解され、沈殿汚泥はシリンダ3側に流入する。その結果、開閉用バルブ2の領域に沈殿汚泥が滞留する状態が解消されるので、シリンダ3において沈殿汚泥から分離された水が、シリンダ3から原液攪拌槽1側に流過し易くなる。
なお、攪拌翼49m、突起49tは図11でのみ図示されており、図1では図示を省略されている。
【0058】
図1、図11において、原液攪拌槽1の天井部1uには、攪拌用ロッド49を回転するための電動モータ45に加えて、攪拌ロッド49を垂直方向に移動するロッド持ち上げ機構47が設けられている。
図1、図11で示すように、攪拌用ロッド49の下端部は前記開閉用バルブ2を設けた領域まで延在しているので、そのままでは、原液攪拌槽1の底部1bとシリンダ3を、開閉用バルブ2により閉鎖することが出来ない。そのため、汚泥処理作業の終了時等、シリンダ3に沈殿汚泥を供給しない場合には、前記開閉用バルブ2を閉鎖するため、攪拌用ロッド49を垂直方向上方に移動する(持ち上げる)必要がある。
ロッド持ち上げ機構47は、その際に作動するものであり、従来、公知の構造となっている。
【0059】
図示の実施形態によれば、原液攪拌槽1で沈殿して水分と分離された固形物(或いは沈殿汚泥M)は、沈殿槽底部1bと連通するシリンダ本体31内に流入する。シリンダ本体31内に流入した沈殿汚泥Mは、シリンダ本体31内をピストン(ろ過体)4及びピストンロッド5が移動することにより圧縮される。
ここで、ピストン4には、圧縮された沈殿汚泥Mcの圧力が所定値、例えば、原液攪拌槽1の底部1bにおける水圧よりも高圧になると水のみをろ過するろ過膜4fが設けられている。そのため、シリンダ本体31内の沈殿汚泥Mがピストン(ろ過体)4により圧縮されると、沈殿汚泥Mの含水分がピストン4のろ過膜4fを透過して、ピストン4に対して、沈殿汚泥Mが圧縮されている領域の反対側に移動する。
これにより、原液攪拌槽1で沈殿した沈殿汚泥から、水分が分離される。
【0060】
沈殿汚泥Mがピストン4により圧縮され、沈殿汚泥Mが圧縮されている側の領域の圧力が上昇すると、シリンダ本体31における沈殿汚泥Mが圧縮されている側の端部に設けられた蓋体部材32が開放する。そして、蓋体部材32が開放した側にピストン4が移動することにより、シリンダ本体31内の沈殿物(沈殿汚泥)Mは、ピストン4に掻き出されてシリンダ本体31から排出される。
上述した様に、シリンダ本体31内でピストン4により圧縮されることにより、沈殿汚泥Mから水分が分離されるので、シリンダ本体31から排出された沈殿汚泥Mの含水率が低くなり、その重量が低減される。そのため、従来技術に比較して、沈殿汚泥の搬送効率が向上する。
また、沈殿汚泥Mの含水率が低いため、当該汚泥Mの搬送中に、搬送される沈殿汚泥Mから泥水が落下することが減少する。そのため、汚泥Mから落下した泥水が飛散して搬送設備周辺を汚染してしまうことがなくなり、作業環境を悪化させてしまうこともない。
【0061】
図示の実施形態では、沈殿汚泥Mをシリンダ本体31内から排出した後、蓋体部材32を閉鎖して、ピストン4をそれ以前の移動方向に対して反対方向へ移動する。ピストン4を反対方向へ移動することにより、沈殿汚泥Mを圧縮し排出している間に、原液攪拌槽1からシリンダ本体31内に新たに流入した沈殿汚泥Mは、蓋体部材32を開放して閉鎖したのとは反対側のシリンダ端部に向かって圧縮され、水分が分離され、最終的には当該反対側のシリンダ端部から排出される。
すなわち、シリンダ本体31内をピストン4及びピストンロッド5が連続して往復運動することにより、シリンダ本体31内に流入した沈殿汚泥Mを連続して圧縮し、水分を分離して(水分を搾り取って)、シリンダ両端の何れか一方より排出することが出来る。そのため、沈殿汚泥Mの圧縮、水分の分離(水分の搾り取り)、排出を、連続的に効率良く行うことが出来る。
【0062】
これに加えて、シリンダ本体31内が沈殿槽底部1bと連通しているので、ピストン(ろ過体)4のろ過膜4fを透過して、沈殿汚泥Mから分離された水分は、シリンダ本体31内と連通している沈殿槽底部1bを経由して、沈殿槽1上部の領域に到達する。そして、沈殿槽1上部における上澄液と合流して、各種用途に再利用することが可能となる。
【0063】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
【符号の説明】
【0064】
1・・・原液攪拌槽
2・・・開閉用バルブ
3・・・シリンダ装置/シリンダ
4・・・ろ過体/ピストン
5・・・移動軸/ピストンロッド
7・・・停止部材/ストッパー
11〜13・・・領域
20・・・ロッド駆動装置
31・・・シリンダ本体
32・・・蓋部材
40・・・蓋開閉機構
45・・・ロッド回転用の電動モータ
47・・・ロッド持ち上げ機構
49・・・攪拌用ロッド
50・・・制御手段/コントロールユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈殿槽における沈殿物を脱水する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
河川、湖沼、海、ダムや貯水池等の貯水設備からの濁水や、土木、建設工事現場からの排水、工場排水等には、微細な土粒子や有機物微粒子が水中に混合、分散している。
その様な濁水や排水等を処理する手法として、処理するべき濁水や排水等を沈殿槽に導入し、当該沈殿槽中に凝集剤(凝集沈降剤)を投入、攪拌して、処理するべき濁水や排水等に混合、分散している各種微粒子を凝集して、巨大な凝集物として槽底部に沈殿せしめ、沈殿物と水(上澄液)とを分離する技術が存在する(例えば、特許文献1参照)。
係る従来技術では、凝集物は疎水性を発揮するため、水の侵入を遮断し、各種微粒子が水中に混合、分散してしまうことがない。
【0003】
しかし、上述した従来技術では、上澄液と分離された沈殿物(或いは、沈殿汚泥)は含水率が高く、重量が大きいため搬送効率が低下してしまう恐れがある。
また、沈殿汚泥の搬送中に、搬送される沈殿汚泥から泥水が落下して、搬送設備周辺を汚染し、作業環境を悪化させてしまうという問題も有している。
さらに、沈殿物(沈殿汚泥)と分離された上澄液は、各種用途に再利用可能であるが、厳密には沈殿物に包含された水については、その様な再利用が困難である。水資源の節約のため、沈殿物に包含される水を再利用することが望まれている。しかしながら、上述した従来技術では、上澄液と分離された沈殿物(或いは、沈殿汚泥)に包含される水を再利用可能な状態にすることは企図されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4653056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、沈殿槽で水(上澄液)と分離された沈殿汚泥の含水率を低下させて、搬送中の沈殿汚泥から水が落下することを防止し、且つ、沈殿汚泥に含有される水の再利用を可能にせしめるような脱水装置と脱水方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の脱水装置は、沈殿槽(原液攪拌槽1)と、当該沈殿槽(1)の底部(1b)が連通するシリンダ(シリンダ装置3)と、シリンダ(シリンダ本体31)内を(二つの領域に)仕切り且つシリンダ(31)内を往復動するピストン(ろ過体4)及びピストンロッド(移動軸5)を備え、
ピストン(4)は、ピストン(4)により仕切られたシリンダ(31)内の領域の一方の圧力が所定値(例えば、原液攪拌槽1の底部1bにおける水圧)よりも高圧になると水を透過する部分(ろ過膜4f)を設けており、
前記シリンダ(3)の長手方向(図1〜図8では左右方向)両端部には、開閉可能な蓋体(フタ32)が設けられており、
制御装置(50)を備え、当該制御装置(50)は、シリンダ(31)内におけるピストン(4)が移動する側の領域内の圧力が上昇した際に、ピストン(4)が移動する側の蓋体(32)を開放する機能と、蓋体(32)が開放した側にピストン(4)が移動してシリンダ(3)内の沈殿物(沈殿汚泥M)を排出した後、蓋体(32)を閉鎖して、ピストン(4)を(それ以前の移動方向に対して)反対方向へ移動する機能を有していることを特徴としている。
【0007】
本発明の脱水装置において、ピストン(ろ過体4)及びピストンロッド(移動軸5)を移動する移動軸移動動力源(移動軸5を移動する電動モータ25)と、当該移動軸移動動力源(移動軸5を移動する電動モータ25)の負荷を検出する検出装置(負荷センサSm)を設け、前記制御装置(50)は、前記検出装置(負荷センサSm)の検出結果(移動軸5を移動させる電動モータ25の負荷)により、シリンダ(31)内におけるピストン(4)が移動する側の領域内の圧力が上昇したか否かを判断する機能を有しているのが好ましい。
ただし、シリンダ(31)内におけるピストン(4)が移動する側の領域内の圧力を示すパラメータは、前記検出装置(負荷センサSm)の検出結果(移動軸5を移動させる電動モータ25の負荷)に限定されるものではない。
【0008】
また、本発明の脱水装置(100)において、計時装置(タイマーT)を設け、前記制御装置(100)は、計時装置(T)により、シリンダ(31)内におけるピストン(4)が移動する側の領域内の圧力が上昇(移動軸5を移動させる電動モータ25の負荷が増大)してからの時間が計測し、計時装置(T)により計測された時間により、シリンダ(31)内の沈殿物(沈殿汚泥M)を排出したか否かを判断する機能を有しているのが好ましい。
ただし、シリンダ(31)内の沈殿物(沈殿汚泥M)を排出したか否かを判断するパラメータとしては、シリンダ(31)内におけるピストン(4)が移動する側の領域内の圧力が上昇(移動軸5を移動させる電動モータ25の負荷が増大)してからの時間に限定されるものではない。
【0009】
本発明の脱水方法は、沈殿槽(原液攪拌槽1)の底部(1b)に連通するシリンダ(3)内をピストン(ろ過体4)及びピストンロッド(移動軸5)が移動し、
ピストン(4)により仕切られたシリンダ(31)内の領域の一方の圧力が所定値(例えば、原液攪拌槽の底部1bにおける水圧)よりも高圧になると、ピストン(4)の一部(ろ過膜4f)から水が透過され、
シリンダ内におけるピストン(4)が移動する側の領域内の圧力が上昇した際に、ピストン(4)が移動する側の蓋体32を開放し、ピストン(4)が移動してシリンダ(31)内の沈殿物(沈殿汚泥M)を排出し、
その後、蓋体(32)を閉鎖して、ピストン(4)をそれ以前の移動方向とは反対側に移動することを特徴としている。
【0010】
本発明の脱水方法において、ピストン(ろ過体4)及びピストンロッド(移動軸5)を移動させる移動軸移動動力源の負荷(移動軸5を移動させる電動モータ25の負荷)を検出し、
検出された負荷(移動軸5を移動させる電動モータ25の負荷)により、シリンダ(31)内におけるピストン(4)が移動する側の領域内の圧力が上昇したか否かを判断するのが好ましい。
ただし、シリンダ(31)内におけるピストン(4)が移動する側の領域内の圧力が上昇したか否かは、前記移動軸移動動力源の負荷(移動軸5を移動させる電動モータ25の負荷)以外のパラメータにより、判断することが出来る。
【0011】
また、本発明の脱水方法において、計時装置計時装置(タイマーT)により、シリンダ(31)内におけるピストン(4)が移動する側の領域内の圧力が上昇(移動軸5を移動させる電動モータ25の負荷が増大)してからの時間を計測し、
当該計測された時間により、シリンダ(31)内の沈殿物(沈殿汚泥M)を排出したか否かを判断するのが好ましい。
ただし、シリンダ(31)内の沈殿物(沈殿汚泥M)を排出したか否かは、シリンダ(31)内におけるピストン(4)が移動する側の領域内の圧力が上昇(移動軸5を移動させる電動モータ25の負荷が増大)してからの時間以外のパラメータにより、判断することが出来る。
【発明の効果】
【0012】
上述する構成を具備する本発明によれば、沈殿槽(原液攪拌槽1)で沈殿して水分と分離された固形物(或いは沈殿汚泥M)は、沈殿槽底部(1b)と連通するシリンダ(31)内に流入する。シリンダ(31)内に流入した沈殿汚泥(M)は、シリンダ(31)内をピストン(ろ過体4)及びピストンロッド(移動軸5)が移動することにより圧縮される。
ここで、ピストン(4)には、圧縮された沈殿汚泥(M)の圧力が所定値(例えば、原液攪拌槽1の底部1bにおける水圧)よりも高圧になると水を透過する部分(ろ過膜4f)が設けられている。そのため、シリンダ(31)内の沈殿汚泥(M)がピストン(ろ過体4)により圧縮されると、沈殿汚泥(M)の含水分がピストン(4)の水透過部分(4f)を透過して、ピストン(4)に対して、沈殿汚泥(M)が圧縮されている領域の反対側に移動する。
これにより、沈殿槽(原液攪拌槽1)で沈殿した沈殿汚泥から、水分が分離される。
【0013】
沈殿汚泥(M)がピストン(4)により圧縮され、沈殿汚泥(M)が圧縮されている側の領域の圧力が上昇すると、シリンダ(31)における沈殿汚泥(M)が圧縮されている側の端部に設けられた蓋体(フタ32)が開放して、蓋体(32)が開放した側にピストン(4)が移動することによりシリンダ(31)内の沈殿物(沈殿汚泥M)は排出される。
上述した様に、シリンダ(31)内でピストン(ろ過体4)により圧縮されることにより、沈殿汚泥(M)から水分が分離されるので、沈殿汚泥(M)の含水率が低くなり、その重量が低減される。そのため、従来技術に比較して、沈殿汚泥の搬送効率が向上する。
また、沈殿汚泥(M)の含水率が低いため、当該汚泥(M)の搬送中に、搬送される沈殿汚泥(M)から泥水が落下することが減少する。そのため、汚泥(M)から落下した泥水が飛散して搬送設備周辺を汚染してしまうことがなくなり、作業環境を悪化させてしまうこともない。
【0014】
本発明によれば、沈殿汚泥(M)をシリンダ(31)内から排出した後、蓋体(32)を閉鎖して、ピストン(4)を(それ以前の移動方向に対して)反対方向へ移動する。これにより、沈殿汚泥(M)を圧縮し排出している間に、沈殿槽(原液攪拌槽1)からシリンダ(31)内に新たに流入した沈殿汚泥(M)は、蓋体(32)を開放して閉鎖したのとは反対側のシリンダ端部に向かって圧縮され、水分が分離され、最終的には当該反対側のシリンダ端部から排出される。
すなわち、シリンダ(31)内をピストン(ろ過体4)及びピストンロッド(移動軸5)が連続して往復運動することにより、シリンダ(31)内に流入した沈殿汚泥(M)を連続して圧縮し、水分を分離して(水分を搾り取って)、シリンダ両端の何れか一方より排出することが出来る。そのため、沈殿汚泥(M)の圧縮、水分の分離(水分の搾り取り)、排出を、連続的に効率良く行うことが出来る。
【0015】
これに加えて本発明によれば、シリンダ(31)内をピストン(ろ過体4)及びピストンロッド(移動軸5)が連続して往復運動するため、ピストン(4)の一部(ろ過膜4f)に異物が付着しても、ピストン(4)が逆方向に移動すると当該異物に対しても逆方向の力が作用するので、ピストン(4)の一部(ろ過膜4f)から異物は容易に除去される。そのため、本発明によれば、ピストン(ろ過膜4f)が閉塞することが防止される。
さらに本発明によれば、シリンダ(31)内が沈殿槽底部(1b)と連通しているので、ピストン(ろ過体4)の水透過部分(4f)を透過して、沈殿汚泥(M)から分離された水分は、シリンダ(31)内と連通している沈殿槽底部(1b)を経由して、沈殿槽(1)上部の領域に到達する。そして、沈殿槽(1)上部における上澄液と合流して、各種用途に再利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態を示す断面正面図である。
【図2】実施形態の要部を示す部分断面正面図である。
【図3】実施形態により沈殿汚泥から水分を分離する工程を示す工程図である。
【図4】実施形態における図3に続く工程を示す工程図である。
【図5】実施形態における図4に続く工程を示す工程図である。
【図6】実施形態における図5に続く工程を示す工程図である。
【図7】実施形態における図6に続く工程を示す工程図である。
【図8】実施形態における図7に続く工程を示す工程図である。
【図9】図3から図8で示す水分分離の手順を示すフローチャートである。
【図10】実施形態における原液攪拌槽の平面図である。
【図11】実施形態における原液攪拌槽の要部を示す部分断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
最初に、図1を参照して、本発明の実施形態に係る脱水装置を説明する。
図1において、全体を符号100で示す脱水装置は、原液攪拌槽(以下、「沈殿槽」と言う)1と、開閉弁2と、シリンダ装置3と、制御手段であるコントロールユニット50を備えている。
沈殿槽1には、図示しない凝集剤投入機構が設けられている。凝集剤投入機構は、公知、市販のものを適用可能である。また、沈殿槽1内に投入される凝集剤も、公知・市販の凝集剤を用いることが出来る。
換言すれば、凝集剤投入機構の構成と、凝集剤については、特に限定するものではない。
【0018】
沈殿槽1の底部1bは、シリンダ装置3のシリンダ本体31における長手方向(図1、図2では左右方向)中央部に連通している。
図示はされていないが、シリンダ装置3の下方には、シリンダ本体31から排出された沈殿汚泥(後述の態様で水分がさらに搾り取られた沈殿汚泥)を搬送するための搬送手段、例えば搬送コンベアが設けられている。搬送手段(搬送コンベア)についても、公知、市販のものが適用可能である。
【0019】
シリンダ装置3は、シリンダ本体31と、シリンダ本体31の長手方向両端部に設けられた蓋部材32、32と、ピストン4と、ピストンロッド5を備えている。
ピストン4は鍔状(円盤状)に構成され、ろ過体として機能する様に構成されている。そしてピストン4は、その両端面に、ろ過膜4fが設けられている(図2参照)。ピストン4の両端面における合計2枚のろ過膜4fは、(シリンダ本体31内において)ピストン4が区画する空間の圧力差が所定値以上に上昇した際に、水のみを圧力の低い側に透過させる性質を有している。或いは、ろ過膜4fは、ピストン4により仕切られたシリンダ本体31内の領域の一方の圧力が、設定圧力(所定値)よりも高圧になると、水を透過する性質を有している。
ろ過膜4fが水分を透過する設定圧力は、原液攪拌槽の底部1bにおける水圧よりも高い圧力である。ろ過膜4fが、原液攪拌槽の底部1bにおける水圧以下の圧力で水分を透過してしまうのであれば、ピストン(ろ過体)4を移動して、沈殿汚泥を圧縮しなくても、沈殿汚泥の含水がろ過膜4fを透過してしまうからである。
ろ過膜4fについては、公知、市販のものを転用することが出来る。
【0020】
シリンダ本体31は両端が開口しており、1対の蓋部材32、32により、シリンダ本体31の両端が閉塞し、一方の端部のみを開放し、或いは、メンテナンスのためにシリンダ本体31の両端を同時に開放する様に、制御可能に構成されている。
蓋部材32、32によるシリンダ本体31端部の開閉制御については後述する。
【0021】
図2において、蓋部材32は、円盤状の蓋本体32aと、ガイド部32bで構成されている。ガイド部32bは中空部材で構成され、蓋本体32aの一方の端面の中心から、シリンダ本体31と離隔する方向に延在している。そしてガイド部32bは、蓋本体32aに固着されている。
明確に図示はされていないが、蓋本体32aの中心には、ガイド部材32bの中空の内径と同じ径の貫通孔(符号なし)が形成されている。
【0022】
図2において、ピストンロッド5は、ピストン4の中心を延在している。ピストンロッド5において、ピストン4の右側部分には符号5Rが付されており、ピストン4の左側部分には符号5Lが付されている。
ピストンロッド5におけるピストン4の右側部分5Rは、図2における右側の蓋部材32の中空ガイド部32b内に挿入され延在している。ピストンロッド5におけるピストン4の左側部分5Lは、図2における左側の蓋部材32の中空ガイド部32bに挿入され延在している。
図2における左右の蓋部材32において、蓋本体32a近傍の内周部には、環状のシール部材6が介装されている。シリンダ本体31内の沈殿汚泥が中空ガイド部32b側へ漏洩することを防止するためである。
【0023】
図1では、ピストンロッド5の右側の延長端にロッド駆動装置20が接続されており、ロッド駆動装置20は、ピストン4及びピストンロッド5を左右方向に往復動させる機能を有している。ここで、ロッド駆動装置20は、図1において、ピストンロッド5における左側の延長端に配置してもよい。
明確に示してはいないが、ロッド駆動装置20としては、例えば、インバータモータ25を有し、インバータモータ25の回転軸先端にリング状部材を接続(固着)し、当該リング状部材に雌ねじを形成し、ピストンロッド5外周に雄ねじを形成し、前記リング状部材の雌ねじにピストンロッド5外周に形成した雄ねじを螺合させた装置を用いることが出来る。係る装置によれば、インバータモータ25を正転させることにより、ピストンロッド5及びピストン4は左側に移動し、インバータモータ25を逆転させればピストンロッド5及びピストン4は右側に移動する。
なお、ピストンロッド5を往復動せしめる機構は、上述の構成に限定するものではない。
【0024】
図1において、シリンダ装置3の左右両端の外方には、一対の蓋開閉機構40が装備されている。蓋開閉機構40は、蓋部材32をシリンダ本体31から閉塞させ、或いは開放させる機能を有している。
蓋開閉機構40は、例えば、中空ガイド部32b(図2参照)の外表面に雄ネジ(図示せず)を形成し、当該雄ネジに螺合する雌ネジ(図示せず)が形成された回転部材(図示せず)と、当該回転部材に回転を伝達する回転伝達部材(図示せず)と、回転駆動源(例えばインバータモータ:図示せず)を備えている。回転駆動源の回転が、図示しない回転伝達部材を介して回転部材(図示せず)に伝達され、当該回転部材の雌ネジが回転することにより、当該雌ネジと螺合する雄ネジを有する中空ガイド部32b(図2参照)が、図1の左右に移動する。
【0025】
或いは、明確に示してはいないが、蓋開閉機構40として、インバータモータ(図示せず)の回転軸の先端にピニオン(図示せず)を取り付け、蓋部材32の中空ガイド部32bの外周に長めのラック(図示せず)を形成して、インバータモータ側のピニオンと蓋部材32側のラックとを噛み合わせても良い。
係る構成によれば、例えば、インバータモータを正転させれば、蓋部材32はシリンダ本体31から離隔し、シリンダ端部が開放される。一方、インバータモータを逆転させれば、蓋部材32はシリンダ本体31に近づき、シリンダ本体31の端部を閉塞する。
なお、蓋部材32を往復動せしめる機構については、上記2例に限定するものではない。
【0026】
図1において、シリンダ本体31の左右両端面から、シリンダ外方(シリンダ本体31の右側端面に対しては右方:シリンダ本体31の左側端面に対しては左方)に所定距離だけ離隔した箇所(2箇所)には、停止部材(ストッパー)7が設けられている。停止部材(ストッパー)7は、蓋部材32が所定量以上シリンダ本体31から離隔するのを防止するために設けられている。
ロッド駆動装置20のインバータモータ25には、負荷センサSmが設けられており、当該負荷センサSm1は入力信号ラインLiを介してコントロールユニット50と接続されている。
蓋開閉機構40とコントロールユニット50は、制御信号ラインLoによって接続されている。コントロールユニット50には、計時装置であるタイマーTが内蔵されている。
【0027】
図示の脱水装置100では、原液攪拌槽1内に凝集剤を添加して、原液と攪拌することにより、原液攪拌槽1内で固形分が沈殿物し、汚泥(沈殿汚泥)として原液攪拌槽1の底部1bに沈殿する。そして、沈殿した汚泥は、シリンダ本体31内に落下する。
原液攪拌槽1の底部1bからシリンダ本体31内に落下した沈殿汚泥Mは、ピストンロッド5が左右いずれかに移動すると、ピストン(ろ過体)4における移動方向側の領域の水分が除去されて、体積が減少する。すなわち、ピストン(ろ過体)4の移動方向側の領域に存在する沈殿汚泥Mは、ピストン(ろ過体)4により、シリンダ31の左右何れかの端部(或いは、そこに設けられた蓋部材32)に向って圧縮される。
【0028】
ピストン(ろ過体)4が移動して、ピストン(ろ過体)4の移動方向側の領域に存在する沈殿汚泥Mの圧力が増加して、原液攪拌槽1の底部1bにおける水圧よりも高圧となり、「設定圧力」以上になると、沈殿汚泥Mに含まれる水分は、ピストン(ろ過体)4を透過する。
換言すれば、ピストンロッド5及びピストン(ろ過体)4が移動することによって、沈殿汚泥Mから水分が分離され、或いは脱水される。別の表現をすると、原液攪拌槽1内で沈殿することにより水分と分離された沈殿汚泥Mから、水分がさらに搾り取られる。その結果、沈殿汚泥Mの含水率が低下する。
【0029】
前述したように、ロッド駆動装置20におけるインバータモータ25は、ピストンロッド5を移動させる動力源である。
図示の実施形態では、ロッド駆動装置20におけるインバータモータ25の負荷を負荷センサSmで計測し、脱水装置100のコントロールユニット50は、負荷が所定値「設定圧力」以上になった場合に、沈殿した汚泥Mが「一定の圧力まで加圧された」と判断するように構成されている。
【0030】
ただし、沈殿した汚泥が一定の圧力まで加圧されたか否かの判断は、インバータモータ25の負荷以外のパラメータを計測することによって行なうことも可能である。
例えば、シリンダ本体31内で圧縮される汚泥の圧力(内圧)を図示しない圧力センサで計測して、計測された圧力により判断することも可能である。
或いは、ピストンロッド5の移動量を計測して、その移動量により、シリンダ本体31内の沈殿汚泥Mが、一定の圧力まで加圧されたか否かを判断することも可能である。
【0031】
負荷センサSmで計測されたインバータモータ25の負荷が所定値以上となり、沈殿汚泥Mが「一定の圧力まで加圧された」と判断された場合には、蓋部材32を開放して、シリンダ本体31から分離する。換言すれば、蓋部材32は開放されて、シリンダ本体31に対して図1、図2における左側へ移動する。
蓋部材32がシリンダ本体31に対して図1、図2における左側へ移動するのと同時に、タイマーTで計時を開始する。
蓋部材32を開放した状態で、ピストンロッド5及びピストン「ろ過体」4を蓋部材32が外れた側へさらに移動し続けると、水分が分離されて濃縮された沈殿汚泥M(水分が搾り取られて濃縮された沈殿汚泥M)が、シリンダ本体31内から排出される(落下する)。
【0032】
蓋部材32を開放してから一定時間が経過したならば、「水分が分離されて濃縮された沈殿汚泥M(水分が搾り取られて濃縮された沈殿汚泥M)がシリンダ本体31内から排出(落下)された」と判断する。
そして、ピストンロッド5及びピストン4と共に、蓋部材32をシリンダ本体31側に移動し、蓋部材32をシリンダ本体31の開口部に嵌合し、以って、開放していたシリンダ本体31端部を閉鎖する。
その後、ピストンロッド5及びピストン4を、図1、図2で右側に向って移動させる。
ここで、、ピストンロッド5及びピストン4が、図1、図2における右側に移動している間にろ過膜4fに異物が付着して、当該異物が除去されなかったとしても、ピストン4及びろ過体4fが左側へ移動する際には、当該異物に対しては逆方向の力が作用する。そのため、付着していた異物は、ピストン4及びろ過体4fが左側へ移動している間に容易に除去されることになる。一方、ピストンロッド5及びピストン4が、図1、図2における左側に移動している間に異物がろ過膜4fに付着した場合には、ピストン4及びろ過体4fが右側へ移動する間に、当該異物は容易に除去される。
そのため、ピストン4のろ過膜4fが異物の付着に起因して閉塞することが防止される。
【0033】
蓋部材32が開放して、水分が分離された沈殿汚泥がシリンダ本体31内から排出(落下)されて、蓋部材32が閉鎖するまでの間も、原液攪拌槽1で凝集、沈殿した汚泥(沈殿汚泥)は、シリンダ本体31内に流入し続ける。
しかし、シリンダ本体31内に新たに流入した沈殿汚泥は、ピストン「ろ過体」4及びろ過膜4fにより遮断されるので、水分が搾り取られて濃縮された沈殿汚泥Mを排出している領域に流入することはない。
【0034】
蓋部材32を開放した後、「水分が搾り取られて濃縮された沈殿汚泥Mがシリンダ本体31内から排出(落下)された」と判断し、蓋部材32を閉鎖して、ピストンロッド5を反対側に向って移動させるに際しては、経過時間のみならず、その他のパラメータにより判断することも可能である。
【0035】
例えば、ピストンロッド5の移動量を計測して、その移動量により、沈殿した汚泥Mがシリンダ本体31外に排出されたか否か(掻き出されたか否か)を判断することも可能である。
或いは、シリンダ3下方にコンベアを配置し、当該コンベアにより排出された汚泥(水分が搾り取られて濃縮された沈殿汚泥M)を搬送する場合には、排出された汚泥が当該コンベアに落下する位置における荷重を計測する荷重計測機器を配置する。そして、荷重計測機器で計測された沈殿汚泥落下位置の荷重がゼロ以外の数値となったならば、「水分が搾り取られて濃縮された沈殿汚泥Mの排出が開始された」と判断し、その後、荷重計測機器で計測された沈殿汚泥落下位置の荷重が再びゼロになった時に「沈殿汚泥Mの排出が終了した」と判断することも出来る。
【0036】
ピストンロッド5が移動し、ピストン(ろ過体)4及びろ過膜4fにより沈殿汚泥Mから搾り取られた水分は、ろ過膜4fを透過して、シリンダ本体31内におけるピストンロッド5が移動する方向とは逆方向の領域に流入する。そして、シリンダ本体31中央に連通している原液攪拌槽底部1bを介して、原液攪拌槽1の上方の領域であって、上澄液が滞留している領域に到達する。
【0037】
ここで、原液攪拌槽底部1bに沈殿している沈殿汚泥Mにより、シリンダ本体31内で搾り取られた水分が、原液攪拌槽1上方の領域に到達するのを妨げられないように、原液攪拌槽1には攪拌用ロッド49が設けられており、攪拌用ロッド49の下端部には複数の突起49tが設けられている。
図1、図10、図11を参照して後述するが、係る突起49tにより、シリンダ本体31内で搾り取られた水分が、原液攪拌槽1上方の領域に到達し易くなっている。
【0038】
図1、図2で説明した様に、シリンダ装置3(シリンダ本体31、ピストン4、ろ過膜4f、ピストンロッド5、蓋部材32)により、シリンダ本体31内に流入した沈殿汚泥Mから水分を搾り取る。
次に図3〜図8を参照して、シリンダ本体31内に流入した沈殿汚泥Mから水分を搾り取る態様について、工程順に説明する。
図3〜図7における符号Mcは、圧縮された沈殿汚泥を示す。
【0039】
先ず、図3において、ピストン(ろ過体)4及びろ過膜4fは、原液攪拌槽1の底部がシリンダに連通している箇所よりも、図3における右側の領域に位置している。
上述した様に、ピストン(ろ過体)4及びろ過膜4fの右側には、汚泥から分離されて、ろ過膜4fを透過した水分が貯溜する。一方、ピストン(ろ過体)4及びろ過膜4fの左側には、原液攪拌槽1から沈殿汚泥が流入する。
図3で示す状態から、駆動装置20(図1参照)によってピストンロッド5が左方に移動させられると、ピストン(ろ過体)4はピストンロッド5と一体に左方へ移動する(図4参照)。
【0040】
図4の工程では、ピストン(ろ過体)4及びピストンロッド5の移動に伴って、ピストン(ろ過体)4は、シリンダ本体31の中心点よりも左方に移動して、ピストン(ろ過体)4と左方の蓋部材32との間の領域に流入した沈殿汚泥が圧縮される。
ピストンロッド5、ピストン(ろ過体)4及びろ過膜4fが左側に移動して、ピストン4よりも左側の領域の沈殿汚泥が圧縮されると、当該領域の圧力が上昇する。そして、ピストン4よりも左側の領域の圧力が、原液攪拌槽の底部1bにおける水圧よりも高い圧力(設定圧力)になると、沈殿汚泥Mc中の水分がろ過膜4fを透過して、ピストン4の右側の領域に流入する。これにより、沈殿汚泥Mcから水分が分離され、濃縮される。
ろ過膜4fの右側の領域では、原液攪拌槽底部1bがシリンダ本体31に連通しているので、原液攪拌槽底部1bから沈殿汚泥が流入している。
【0041】
図4の状態よりも、ピストンロッド5、ピストン(ろ過体)4及びろ過膜4fが、さらに左側に移動すると、図5で示す状態になる。図5の状態では、沈殿汚泥Mcが十分に濃縮され、汚泥が十分に脱水される(水分が十分に搾り取られる)。
そして、ピストン(ろ過体)4及びろ過膜4fの左側の領域における圧力は、所定圧力まで上昇すると、駆動装置20のインバータモータ25に介装した負荷センサSmが作動して、「所定圧力に達した」旨の情報をコントロールユニット50に伝達する。
【0042】
図6において、「所定圧力に達した(インバータモータ25の負荷が所定値に到達した)」旨の情報を受信したコントロールユニット50は、蓋開閉機構40に制御信号を発信して、左側の蓋部材32を開放する。
蓋部材32の開放と同時にコントロールユニット50に内蔵されたタイマーTで計時を開始する。
【0043】
そして図7で示す様に、左側の蓋部材32を開放したまま、ピストンロッド5、ピストン(ろ過体)4及びろ過膜4fが、さらに左側に移動して、シリンダ本体31内の圧縮・脱水されて濃縮された沈殿汚泥Mcを左方に掻き出す。左方に掻き出された沈殿汚泥Mcは、シリンダ本体31の左端の開口部から排出(落下)して、図示しない搬送コンベア上に落下する。
水分が分離されて(脱水されて)濃縮された沈殿汚泥Mcをシリンダ本体31内部から掻き出した後、ピストンロッド5及びピストン(ろ過体)4は、さらに左側に移動して、停止部材(ストッパー)7によって所定の位置で停止する。
【0044】
図8の工程は、タイマーTにより所定時間が経過したことを計時された状態を示している。図8において、コントロールユニット50は、ピストンロッド5及びピストン(ろ過体)4を、図3〜図7とは反対側(図8の右側)に移動する。そして、図3〜図8で説明した工程を、左右を逆にした態様で実行する。
ここで、タイマーTに代えて、停止部材(ストッパー)7におけるシリンダ本体31に対向する面に、例えば接触タイプのセンサを取り付け、蓋部材32の蓋本体32aが当該センサを押圧する際に、ピストンロッド5及びピストン4を反対方向へ移動させる(或いは、ピストンロッド5及びピストン4の移動方向を反転する)ように構成することもできる。その場合、接触センサをシリンダ本体31の端部にも設けても良い。
【0045】
次に図9を参照して、図3〜図8で説明した手順、すなわち、シリンダ3(シリンダ本体31、ピストンロッド5及びピストン4、ろ過膜4f、蓋部材32)により、シリンダ本体31内に流入した沈殿汚泥Mから脱水する操作について、説明する。
【0046】
図9のステップS1では、コントロールユニット50は、インバータモータ25に設けた負荷センサSmの情報から、インバータモータ25の負荷が設定値(所定値)以上となったか否かを判断する。
インバータモータ25の負荷が設定値に満たなければ(ステップS1がNO)、シリンダ本体31内の沈殿汚泥が濃縮されておらず、水分が搾り取られていないと判断して、ピストン4で沈殿汚泥を圧縮し続けるべく、ステップS1を繰り返す(ステップS1がNOのループ)。
インバータモータ25の負荷が設定値(所定値)以上となったならば(ステップS1がYES)、シリンダ本体31内の沈殿汚泥が十分に濃縮され、水分が十分に搾り取られたと判断して、ステップS2に進む。
【0047】
ステップS2では、蓋部材32を開放する側に移動させる。それと同時に、タイマーTで計時を開始する。そしてステップS3に進む。
ステップS3では、コントロールユニット50は、タイマーTによる計時開始後、所定時間が経過したか否かを判断する。
タイマーTで計時してから所定時間が経過していないのならば(ステップS3がNO)、所定時間が経過するまでステップS3のループを繰り返す(ステップS3がNOのループ)。
一方、所定時間が経過したならば(ステップS3がYES)、ステップS4に進む。
【0048】
ステップS4では、蓋部材32によりシリンダ本体31の端部を閉鎖させると同時に、タイマーTをリセットする。そして、ステップS5に進む。
ステップS5では、コントロールユニット50は、シリンダ3により、沈殿汚泥Mから脱水する操作(制御)を終了するか否かを判断する。
操作を終了するのであれば(ステップS5がYES)、そのまま制御を終了する。沈殿汚泥Mから脱水する操作を続行するのであれば(ステップS5がNO)、インバータモータ25の正転・逆転を切り換えて、ステップS1まで戻り、再びステップS1以降を繰り返す。
【0049】
次に、図1、図10、図11を参照して、原液攪拌槽(沈殿槽)1について説明する。
図1及び図10で示すように、原液攪拌槽1は、3つの領域11、12、13に区画されている。
領域11は半径方向で最も内方の領域であり、この領域に固液分離するべき濁水や排水等の「原液」が投入される。領域11は、隔壁11wにより、半径方向外方に位置する領域12と区画されている。
領域12は、隔壁12w及び隔壁12vにより、半径方向で最も外方の領域13と区画されている。
図10で示すように、半径方向で最も外方の領域13には、固液分離された水分(処理水)を排出する排出口13oが設けられている。
【0050】
領域12には、原液から分離された上澄液が貯留している。領域11の上部における上澄液は、公知技術による機構(図示せず)によって領域12に移動される。
図2〜図9を参照して説明した態様で沈殿汚泥から分離された水分は、図1の矢印Faで示すように、原液攪拌槽1の下方から領域12に流入する。第1の領域11底部の連通孔δには、凝集、沈殿した固相分(沈殿汚泥)が滞留する。そのため、ピストン3からの水分は、連通孔δを通過しない。
【0051】
領域11と領域12とを区画する隔壁11wは、原液攪拌槽1の天井部1uまで延在している(図1参照)。
一方、領域12と領域13とを区画する隔壁(隔壁12w、隔壁12v)の内、隔壁12wは、原液攪拌槽1の天井部1uまで延在している。しかし、隔壁12vは、原液攪拌槽の天井部1uまで延在しておらず、隔壁12vの上端部は原液攪拌槽の天井部1uの下方に位置している。従って、領域12の上澄液は、隔壁12vをオーバーフローして(図10の複数の矢印Fov)、領域13に流入する。一方、隔壁12wにおいては、領域12の上澄液はオーバーフローしない。
【0052】
図10において、複数の矢印Fov(上澄液のオーバーフローを示す矢印)が示されているのが、上端部が原液攪拌槽の天井部1uの下方に位置している隔壁12vである。そして、矢印Fovが示されていないのが、上端部が原液攪拌槽の天井部1uに到達している隔壁12wである。
領域13にオーバーフローした上澄液は、矢印Fsで示すように領域13中を流れて、排出口13oから排出される。
【0053】
図1、図10で示すように、領域13には、仕切板13Rと仕切板13rが設けられている。
仕切板13Rは、その上端が原液攪拌槽の天井部1uまで延在している。一方、仕切板13rの上端は原液攪拌槽1の天井部1uまで延在しておらず、仕切板13rの上端は原液攪拌槽の天井部1uの下方に位置している。
図10で示すように、領域13には、1枚の仕切板13Rと、複数(例えば、図10では3枚)の仕切板13rが設けられている。
領域13内において、矢印Fsで示すように上澄液が流れると、当該上澄液の流れFsは、仕切板13rの上端を越えて流れることが出来るが、仕切板13Rは当該流れFsを遮断する。
【0054】
図1で示すように、隔壁12w及び隔壁12vの下端部は、原液攪拌槽1の傾斜した側壁1cには結合されておらず、隙間γが形成されている。
上澄液の流れFsは、仕切板13rの上方を越えて流れることが出来るが、当該上澄液に固形分(沈殿汚泥)が包含されている場合には、当該沈殿汚泥は仕切板13rに沿って沈降する。そして、隙間γを通過して、原液攪拌槽1の下方へ移動(沈殿)することが出来る。
【0055】
図1、図11で示すように、原液攪拌槽1の中心部には、鉛直方向に延在する攪拌用ロッド49が設けられている。攪拌用ロッド49はロッド回転用の電動モータ45により回転駆動され、当該電動モータ45は、原液攪拌槽1の天井部1uに載置されている。
図11で示すように、攪拌用ロッド49は、領域11に相当する箇所に複数の攪拌翼49mを設けている。
【0056】
図11で明確に示されている様に、攪拌用ロッド49の下端部は、シリンダ本体31の近傍まで延在している。
図1、図11で示す様に、原液攪拌槽1の底部1bとシリンダ3とを連通する領域には、開閉用バルブ2が配置されている。
この開閉用バルブ2は、原液攪拌槽1の底部1bとシリンダ3とを連通、遮断する機能を有している。原液攪拌槽1の底部1bとシリンダ3との連通を遮断する場合には、開閉用バルブ2のハンドル2hを回転して、原液攪拌槽1の底部1bとシリンダ3を連通する流路(図示せず)に図示しないバルブ本体を進入させて、当該流路を閉鎖する。原液攪拌槽1の底部1bとシリンダ3とを連通する場合には、開閉用バルブ2のハンドル2hを遮断時とは逆方向に回転して、前記流路(原液攪拌槽の底部とシリンダを連通する図示しない流路)から、バルブ本体(図示せず)を外して、当該流路を開放する。
【0057】
図11で示すように、攪拌用ロッド49の下端部で、原液攪拌槽1の底部1b及び前記開閉用バルブ2を設けた領域に延在している領域には、複数の突起49t(図示では4箇所)が設けられている。
開閉用バルブ2の領域に沈殿汚泥が滞留すると、図2〜図9で説明した態様で沈殿汚泥から分離した水分が、シリンダ3から原液攪拌槽1側に流入し難くなってしまう。その様な場合に、攪拌用ロッド49を回転すれば、複数の突起49tにより滞留した沈殿汚泥が解され、沈殿汚泥はシリンダ3側に流入する。その結果、開閉用バルブ2の領域に沈殿汚泥が滞留する状態が解消されるので、シリンダ3において沈殿汚泥から分離された水が、シリンダ3から原液攪拌槽1側に流過し易くなる。
なお、攪拌翼49m、突起49tは図11でのみ図示されており、図1では図示を省略されている。
【0058】
図1、図11において、原液攪拌槽1の天井部1uには、攪拌用ロッド49を回転するための電動モータ45に加えて、攪拌ロッド49を垂直方向に移動するロッド持ち上げ機構47が設けられている。
図1、図11で示すように、攪拌用ロッド49の下端部は前記開閉用バルブ2を設けた領域まで延在しているので、そのままでは、原液攪拌槽1の底部1bとシリンダ3を、開閉用バルブ2により閉鎖することが出来ない。そのため、汚泥処理作業の終了時等、シリンダ3に沈殿汚泥を供給しない場合には、前記開閉用バルブ2を閉鎖するため、攪拌用ロッド49を垂直方向上方に移動する(持ち上げる)必要がある。
ロッド持ち上げ機構47は、その際に作動するものであり、従来、公知の構造となっている。
【0059】
図示の実施形態によれば、原液攪拌槽1で沈殿して水分と分離された固形物(或いは沈殿汚泥M)は、沈殿槽底部1bと連通するシリンダ本体31内に流入する。シリンダ本体31内に流入した沈殿汚泥Mは、シリンダ本体31内をピストン(ろ過体)4及びピストンロッド5が移動することにより圧縮される。
ここで、ピストン4には、圧縮された沈殿汚泥Mcの圧力が所定値、例えば、原液攪拌槽1の底部1bにおける水圧よりも高圧になると水のみをろ過するろ過膜4fが設けられている。そのため、シリンダ本体31内の沈殿汚泥Mがピストン(ろ過体)4により圧縮されると、沈殿汚泥Mの含水分がピストン4のろ過膜4fを透過して、ピストン4に対して、沈殿汚泥Mが圧縮されている領域の反対側に移動する。
これにより、原液攪拌槽1で沈殿した沈殿汚泥から、水分が分離される。
【0060】
沈殿汚泥Mがピストン4により圧縮され、沈殿汚泥Mが圧縮されている側の領域の圧力が上昇すると、シリンダ本体31における沈殿汚泥Mが圧縮されている側の端部に設けられた蓋体部材32が開放する。そして、蓋体部材32が開放した側にピストン4が移動することにより、シリンダ本体31内の沈殿物(沈殿汚泥)Mは、ピストン4に掻き出されてシリンダ本体31から排出される。
上述した様に、シリンダ本体31内でピストン4により圧縮されることにより、沈殿汚泥Mから水分が分離されるので、シリンダ本体31から排出された沈殿汚泥Mの含水率が低くなり、その重量が低減される。そのため、従来技術に比較して、沈殿汚泥の搬送効率が向上する。
また、沈殿汚泥Mの含水率が低いため、当該汚泥Mの搬送中に、搬送される沈殿汚泥Mから泥水が落下することが減少する。そのため、汚泥Mから落下した泥水が飛散して搬送設備周辺を汚染してしまうことがなくなり、作業環境を悪化させてしまうこともない。
【0061】
図示の実施形態では、沈殿汚泥Mをシリンダ本体31内から排出した後、蓋体部材32を閉鎖して、ピストン4をそれ以前の移動方向に対して反対方向へ移動する。ピストン4を反対方向へ移動することにより、沈殿汚泥Mを圧縮し排出している間に、原液攪拌槽1からシリンダ本体31内に新たに流入した沈殿汚泥Mは、蓋体部材32を開放して閉鎖したのとは反対側のシリンダ端部に向かって圧縮され、水分が分離され、最終的には当該反対側のシリンダ端部から排出される。
すなわち、シリンダ本体31内をピストン4及びピストンロッド5が連続して往復運動することにより、シリンダ本体31内に流入した沈殿汚泥Mを連続して圧縮し、水分を分離して(水分を搾り取って)、シリンダ両端の何れか一方より排出することが出来る。そのため、沈殿汚泥Mの圧縮、水分の分離(水分の搾り取り)、排出を、連続的に効率良く行うことが出来る。
【0062】
これに加えて、シリンダ本体31内が沈殿槽底部1bと連通しているので、ピストン(ろ過体)4のろ過膜4fを透過して、沈殿汚泥Mから分離された水分は、シリンダ本体31内と連通している沈殿槽底部1bを経由して、沈殿槽1上部の領域に到達する。そして、沈殿槽1上部における上澄液と合流して、各種用途に再利用することが可能となる。
【0063】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
【符号の説明】
【0064】
1・・・原液攪拌槽
2・・・開閉用バルブ
3・・・シリンダ装置/シリンダ
4・・・ろ過体/ピストン
5・・・移動軸/ピストンロッド
7・・・停止部材/ストッパー
11〜13・・・領域
20・・・ロッド駆動装置
31・・・シリンダ本体
32・・・蓋部材
40・・・蓋開閉機構
45・・・ロッド回転用の電動モータ
47・・・ロッド持ち上げ機構
49・・・攪拌用ロッド
50・・・制御手段/コントロールユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈殿槽と、当該沈殿槽の底部が連通するシリンダと、シリンダ内を仕切り且つシリンダ内を往復動するピストン及びピストンロッドを備え、
ピストンは、ピストンにより仕切られたシリンダ内の領域の一方の圧力が所定値よりも高圧になると水を透過する部分を設けており、
前記シリンダの長手方向両端部には、開閉可能な蓋体が設けられており、
制御装置を備え、当該制御装置は、シリンダ内におけるピストンが移動する側の領域内の圧力が上昇した際に、ピストンが移動する側の蓋体を開放する機能と、蓋体が開放した側にピストンが移動してシリンダ内の沈殿物を排出した後、蓋体を閉鎖して、ピストンを反対方向へ移動する機能を有していることを特徴とする脱水装置。
【請求項2】
沈殿槽の底部に連通するシリンダ内をピストン及びピストンロッドが移動し、
ピストンにより仕切られたシリンダ内の領域の一方の圧力が所定値よりも高圧になると、ピストンの一部から水が透過され、
シリンダ内におけるピストンが移動する側の領域内の圧力が上昇した際に、ピストンが移動する側の蓋体を開放し、ピストンが移動してシリンダ内の沈殿物を排出し、
その後、蓋体を閉鎖して、ピストンをそれ以前の移動方向とは反対側に移動することを特徴とする脱水方法。
【請求項1】
沈殿槽と、当該沈殿槽の底部が連通するシリンダと、シリンダ内を仕切り且つシリンダ内を往復動するピストン及びピストンロッドを備え、
ピストンは、ピストンにより仕切られたシリンダ内の領域の一方の圧力が所定値よりも高圧になると水を透過する部分を設けており、
前記シリンダの長手方向両端部には、開閉可能な蓋体が設けられており、
制御装置を備え、当該制御装置は、シリンダ内におけるピストンが移動する側の領域内の圧力が上昇した際に、ピストンが移動する側の蓋体を開放する機能と、蓋体が開放した側にピストンが移動してシリンダ内の沈殿物を排出した後、蓋体を閉鎖して、ピストンを反対方向へ移動する機能を有していることを特徴とする脱水装置。
【請求項2】
沈殿槽の底部に連通するシリンダ内をピストン及びピストンロッドが移動し、
ピストンにより仕切られたシリンダ内の領域の一方の圧力が所定値よりも高圧になると、ピストンの一部から水が透過され、
シリンダ内におけるピストンが移動する側の領域内の圧力が上昇した際に、ピストンが移動する側の蓋体を開放し、ピストンが移動してシリンダ内の沈殿物を排出し、
その後、蓋体を閉鎖して、ピストンをそれ以前の移動方向とは反対側に移動することを特徴とする脱水方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−103140(P2013−103140A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246195(P2011−246195)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【特許番号】特許第5031118号(P5031118)
【特許公報発行日】平成24年9月19日(2012.9.19)
【出願人】(596107028)株式会社フォルテック (2)
【出願人】(511273034)
【出願人】(511273045)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【特許番号】特許第5031118号(P5031118)
【特許公報発行日】平成24年9月19日(2012.9.19)
【出願人】(596107028)株式会社フォルテック (2)
【出願人】(511273034)
【出願人】(511273045)
【Fターム(参考)】
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