説明

脱水要素用材料

【課題】 製紙機械のウェットエンド部の脱水要素用材料を提供すること。
【解決手段】 該材料は、エラストマーポリマーマトリックス、及びマトリックスに10から50質量%の量で添加した充填剤を含み、該材料はショアA硬度で60から85の硬度を有している。本発明は、さらに該材料を含む脱水要素、及び脱水要素を調製するための該材料の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(本発明の技術分野)
本発明は、製紙機械のウェットエンドにおける脱水要素用材料、該材料で製造される脱水要素、該材料の脱水要素製造への使用、及び該材料の製造方法に関する。
【0002】
(本発明の技術的背景)
製紙機械のウェットエンドにおいて、フォーミングスクリーン又はワイヤーは、薬品や顔料と共に水中に存在するセルロース繊維スラリーを支持し、スラリーから水の排水を促進するいくつかの脱水要素上を滑る。該脱水要素は、地合い構成板、フォイルブレード、真空ブレード、サクションボックスカバー等を含んでいる。フォーミングスクリーンを通してスラリーから除去された排出水は、典型的には約0.5から1%の固形物質を含んでいる。この固形物質は、典型的には約95%の顔料(例えば、炭酸カルシウム)、及び約5%のセルロース繊維を含有している。
従って、これら脱水要素上を滑るフォーミングスクリーンは、それ自身が滑ること、及び排出水にこれら顔料やセルロース繊維が存在する結果、広範囲な磨耗を受けている。従って、一般的にポリエステル織物であるフォーミングスクリーンは、例えば30−35日ごとに、高いコストで交換する必要がある。フォーミングスクリーンの磨耗は、該スクリーンが平坦なサクションボックスのカバー上を滑るときに特に言われており、この点で排出水の量がすでに顕著に減少している。平坦なサクションボックスのカバーは、通常、非常に硬いセラミック材料から製造されており、例えば酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化ジルコニウム、炭化珪素又は窒化珪素から製造されている。該材料の性質は、表面粗さ、多孔度及び孔径等を含んでおり、これら性質はフォーミングスクリーンの磨耗において重要な役割を果たしており、その程度は排水中に含まれる顔料の種類及び特性と同様である(例えば、M.Laufmann,H.−U.Rapp,Wochenblatt fur Papierfabrikation,144/16,615−622(1986)参照)。
【0003】
その硬いセラミックのカバーは、不測の衝撃による損傷や、応力によるわれ、熱衝撃による損傷や、スクリーンとの接触による先鋭化により傷付きやすい。また典型的に、これらの製造コストはとても高く、それは、セラミックカバーが、小さく、30から60mmの長さを有した個々の要素の集合からなり、当該要素は平坦なサクションボックスに接着し、排水中からの顔料粒子が蓄積できる小さな空隙を残している。これら顔料粒子の保持は、フォーミングスクリーン又はワイヤーの磨耗をさらにまた促進する。
このため、先行技術には、スクリーンを脱水要素上に滑らせることによる、製紙機械のウェットエンドにおけるフォーミングスクリーンの磨耗、及びそれに連動したスクリーン交換による高いコストに関する問題がある。さらには、先行技術によるセラミック材料には、傷つきやすいという問題がある。
【0004】
GB 1 526 337は、ポリウレタンキャストからその場で製造されたインサートを有し、その後に所望の最終形状に機械加工する脱水要素を開示している。上記特許に従って使用することが好ましいポリウレタンとしては、優れた硬さと磨耗特性を有しているものが言及されており、該ポリウレタンは、好ましくは、93ショアAから96ショアAの範囲で硬さの値を有する。該ポリウレタンに対して、少量の充填剤を添加することも可能である。例えば、ポリウレタン“Adiprene L 167”について言及されており、それは95ショアAの硬さを有する組成物である。該組成物には、少量の緑色顔料が添加されている。
【0005】
(本発明の概要)
本発明の目的は、製紙機械におけるフォーミングスクリーンと脱水要素間の磨耗及び摩擦、及び先行技術のセラミック材料の傷つきやすさに関する、前述の問題を緩和することである。
この目的は,添付の特許請求の範囲で規定された脱水要素用の材料により、この材料を含む脱水要素により、及びこの材料の脱水要素の製造への使用により、達成することができる。
今般、該材料の該充填剤含有量が、脱水要素とフォーミングスクリーンとの間の摩擦に関して重要な役割を果たすことが見出された。脱水要素用の、より柔らかい材料が、一般的にフォーミングスクリーン上における磨耗を低くすることもまた見出された。本発明者らによって見出された驚くべき効果は、低硬度の充填剤をさらに含む、硬度の低いエラストマーマトリックス(例えば低硬度のポリウレタン)が、フォーミングスクリーン上における低い磨耗に関しても、脱水要素とフォーミングスクリーンとの間での低い摩擦に関しても、優れた性能を発揮するということであった。
【0006】
しかしながら、本技術分野においては、エラストマーマトリックスに対して充填剤を添加することにより、一般的には該材料の硬度が増加することが知られている。そのため、十分に低い硬度を有する最終生成物を得るために、本発明は、摩擦を減少させる充填剤を添加した、非常に低い硬度のエラストマーポリマーマトリックスを使用することを提案している。本発明に従って使用されている、いずれの充填剤も含んでいないマトリックスは、名目値として60ショアAから80ショアAの硬度を有していることが適切であり、添加する充填剤のタイプに依存して、最終生成物の硬度は60から85ショアAの硬度となる。
【0007】
本発明は、比較的多量の充填剤を含有しているにもかかわらず、脱水要素用に柔らかい材料又は柔らかいカバーを使用することにより、先行技術の問題点が緩和できるという認識に基づいている。
従って、本発明は、脱水要素用の柔らかく無孔の材料を提供し、該材料はフォーミングスクリーンの磨耗を最小限にするためにデザインされており、また該材料は先行技術のセラミックカバー材料の傷つきやすさだけでなく、製造上の欠点を示すこともない。
本発明に従った材料は、一以上の、空隙の無い連続する要素として製造することができ、このため、ベース基体に接着された多数の小さい要素に対する、先行技術の要求は完全に排除される。
【0008】
驚くべきことに、脱水要素に対する柔らかいエラストマー材料の使用が、普通に使用されている硬いセラミック材料、例えば、酸化アルミニウム、炭化ケイ素と比較して、これら脱水要素上を滑るフォーミングスクリーンの磨耗を減少させることが見出された。磨耗の減少は、柔らかい材料を充填剤、好ましくは低硬度の充填剤と共に用いて、滑るスクリーンに対する摩擦係数を低下させる場合に、特に顕著である。
本発明によれば、脱水要素のための材料が提供され、該材料はエラストマーポリマーマトリックスと、前述のマトリックスに対して50質量%にいたるまでのかなりの量、例えば10から50質量%の充填剤を含み、該材料はショアAで60から85の硬度を有する。
該充填剤は、好ましくは10から40質量%、より好ましくは15から30質量%の量で添加される。
【0009】
本発明による材料の製造方法においては、充填剤はエラストマーポリマーマトリックス、好ましくはポリウレタンマトリックスに対して、10から50質量%の量で添加され、そのマトリックスの硬度(すなわち、充填剤をまったく添加せずに得られるものの硬度)は、60−80ショアAである。該組成物は、その後、最終材料を得るために硬化され、該材料は60−85ショアAの硬度(ここでは充填剤を含んでいる)を有している。従って、充填剤の添加は、典型的には、硬化した材料の硬度を増加させる。
該エラストマーポリマーマトリックスは、好ましくはポリウレタン(PUR)を含有する。ポリマーマトリックスとして適切なその他の材料としては、ポリウレア、スチレン−ブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、ニトリルゴム、天然又は合成ゴム、ポリクロロプレン、ポリアクリレート、フッ素含有エラストマー、熱可塑性エラストマー及びポリシロキサンが含まれる。選択したエラストマーポリマーマトリックスは、充填剤を添加しないときに、名目上60から80ショアAの硬度を有しているべきである。
該充填剤は、好ましくは、低硬度及び/又は固形の潤滑充填剤であり、例えばポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)又はタルクである。充填剤として適切なその他の材料は、超高分子量ポリエチレン(UMWPE)の粉末、クレイ(カオリン)、炭酸カルシウム、窒化ホウ素、硫酸モリブデン、フッ化カルシウム、二酸化チタン、炭化チタン、球状ガラス又はセラミックビーズを含む。
【0010】
“低硬度の充填剤”とは、本明細書では、モーススケールが1から5の間にある充填剤を意味する。モーススケールでは、ダイヤモンドが10の値、タルクが1の値を有している。例えば、フッ化カルシウムはモーススケールで4、炭化カルシウムは3から4の間、クレイ(カオリン)が1.5−2、二硫化モリブデンが1.5−2の値を有している。
本技術分野で当業者に周知である常用の分散又はコンパウンド技術を使用して、充填剤をエラストマーマトリックスに添加することができる。簡潔にするために、該材料の調製は、本明細書に詳細には述べない。
【0011】
(本発明の詳細な説明)
以下に、いくつかの例によって、この発明をさらに詳細に説明する。例は,図と組み合わせることにより、よりよく理解される。
全図面を通じて同様の参照番号が使用されている。
【0012】
(例)
以下で、本発明に従った材料の幾つかの例が与えられる。例は、説明目的のみのために与えられており、本発明の範囲は特許請求の範囲に定義されていることに注意しなければならない。
最初に図1を参照すると、例で使用したテスト要素10が示されている。該テスト要素は、ステンレススチール製の円筒状の支持要素12を含み、その支持要素は本発明に従うエラストマーカバー材料11を備えている。いずれのテスト要素も、長さL=72mm及び直径D=5mmを有する。本発明に従った材料のテストをするために、図2にて示すように、いくつかの同じ要素10をテスト基体19に組み立てた。
例は、典型的にはポリエステル織物である、フォーミングスクリーンの磨耗を最小限とするように設計された、脱水要素用の材料を示している。磨耗特性のテストのためには、専用の磨耗試験機AT2000(Einlehner,Kissing、Germany)を使用した。この試験機は、基準顔料スラリー存在下における、フォーミングスクリーンの磨耗をシミュレートする。
【0013】
最初に、図2を参照しながら、AT2000試験手順のための操作条件を、詳細に説明する。試験の構成は、水性顔料スラリー14を満たした容器又は浴を含む。以下に述べる実験では、スラリー中の顔料濃度は、0.8から3.2%の間である。容器の壁は、水性スラリーの温度を30℃より低く保つために、冷却流体(水)のための経路を有する。この目的のために、該容器の壁は、冷却水のための入り口17と、出口18を有している。図1に従ういくつかのテスト要素10、典型的には16個の要素を組み立てて、一般的には全体的に円筒状の形状を有するテスト基体19とする。このテスト基体は、回転軸13で支持されている。フォーミングスクリーンの存在は、ポリエステルスクリーン15によってシミュレートされ、該スクリーンはテスト基体19の周囲を包み、かつ該ポリエステルスクリーンとテスト基体の間に力を与えるため、二つの棒16に取り付けられている。本発明に従って各テスト要素10上に備えられたエラストマーカバー材料11は、テスト基体19の放射状外向きに面しており、ポリエステルスクリーン15と接触するようにしている。該テスト基体は、全体的に31.8mmの直径を有しており、及びポリエステルスクリーンのテストサンプルは148mm×26mmのサイズを有している。該ポリエステルスクリーンは、テスト基体の円周の半分を包み、それゆえテスト基体とポリエステルスクリーンとの間の磨耗面は、50mm×26mm=1300mm2である。テスト基体に起因するフォーミングスクリーン上における磨耗をテストするために、回転軸13を回転させて、ポリエステルスクリーン15とテスト基体19の間で2kgの力で接触させ、333m/minの直線関係にあるスピードを与える。テストは75分間行い、これは約25000mの試験距離に相当する。
前述の試験構成は、以下のすべての例で使用され、また、当該試験構成を、標準的なAT2000の試験手順と言う。
【0014】
(例1)
この例は、PTFE(ポリ(テトラフルオロエチレン))を充填剤として添加した、キャストポリウレタン(PUR)マトリックスを含むテスト基体を調整し、テストすることに関する。
材料を調製するために、ポリオール(“Hyperplast 2851024”,ハイパープラスト社製)300gに、PTFE粉末(“Zonyl MP 1200”,デュポン社製)128.6gを室温で分散させた。この分散物63.93gを脱気して、これと、脱気済みのプレポリマー(“Hyperplast100”)43.61g及び鎖伸長剤である1,4−ブタンジオール(メルク社製)2.35gとを、2分間かけて混合し、その後シリコーン型を用いて、その混合物を16個の要素10(そのうちの一つは、図1に示してある)に成形し、80℃で24時間硬化させた。得られた硬化したエラストマーは、81のショアA硬度、及び17.5%の充填剤含有量を有していた。成形された16個の要素10は、図2にて示すように、テスト基体19に組み立てられ、研磨して直径を31.8mmとした。組み立てられ、研磨されたテスト基体を、AT2000の標準的な試験手順に従って、ポリエステルスクリーンに対して試験した。ポリエステルスクリーン15の磨耗量を、磨耗領域内と磨耗領域外の円形に打ち抜いた二つの直径23mmのサンプルの質量差によって決定した。
【0015】
下記の表1は、異なる顔料スラリー濃度で試験した打ち抜きサンプルの質量減少量を、通常の酸化アルミニウムセラミック及び炭化ケイ素をカバー材料とした二つの参考テスト基体に対する同一の試験条件下で得られた結果を比較して、与える。
【表1】

表1は、同一条件下で酸化アルミ及び炭化ケイ素の両者を使用した場合と比較して、本発明に従ってPTFEを充填剤として添加した材料を使用した場合の、ポリエステルスクリーンの顕著な磨耗量の低下を示している。
【0016】
(例2)
この例では、上記例1のテスト基体と比較してより大きいショアA硬度を有し、PTFEを充填剤として添加したキャストポリウレタン(PUR)基体の調製及び試験に関する。
材料を調製するために、例1のように同じ最初のポリオール/PTFE分散物44.09gを脱気し、これと、脱気したプレポリマー(Hyperplast100)35.11g及び鎖伸長剤である1,4−ブタンジオール(メルク社製)2.49gとを、2分間かけて混合し、シリコーン型を用いて16個の要素(そのうちの一つは図1に詳細に示してある)に成形し、次いで80℃で24時間硬化させた。得られた硬化したエラストマーは、86のショアA硬度、及び16.2wt%の充填剤含有量を有していた。成形された16個の要素は、図2に示すように、テスト基体に組み立てられ、研磨して直径を31.8mmとした。組み立てられ、研磨されたテスト基体を、AT2000の標準的な試験手順に従って、ポリエステルスクリーンに対して試験した。ポリエステルスクリーンの磨耗量を、磨耗領域内と磨耗領域外の円形に打ち抜いた二つの直径23mmのサンプルの質量差によって決定した。
【0017】
表2は、異なる顔料スラリー濃度で試験した打ち抜きサンプルの質量減少量を、通常の酸化アルミニウムセラミック及び炭化ケイ素をカバー材料とした二つの参考テスト基体に対する同一の試験条件下で得られた結果を比較して、与える。
【表2】

表2は、PTFEを充填剤として添加した材料の、硬度増加による効果を示している。ポリエステルスクリーンの磨耗量低下は、酸化アルミニウムセラミックと比較して依然として非常に大きいが、炭化ケイ素と比較した場合にはその磨耗量がわずかに高い。
【0018】
(例3)
この例は、例1のテスト基体と比較して、より低いショアA硬度を有し、PTFEを充填剤として添加したキャストポリウレタン(PUR)基体を調製し、試験することに関する。
材料を調製するために、例1のように同じ最初のポリオール/PTFE分散物48.32gを脱気し、これと脱気したプレポリマー(Hyperplast100)29.13g及び鎖伸長材である1,4−ブタンジオール(メルク社製)1.14gとを2分間かけて混合し、シリコーン型を用いて16個の要素(そのうちの一つは図1に詳細に示してある)に成形し、次いで80℃で24時間硬化させた。得られた硬化したエラストマーは、78のショアA硬度、及び18.5wt%の充填剤含有量を有していた。成形された16個の要素は、図2にて示すように、テスト基体に組み立てられ、研磨して直径を31.8mmとした。組み立てられ、研磨されたテスト基体は、AT2000の標準的な試験手順に従って、ポリエステルスクリーンに対して試験した。ポリエステルスクリーンの磨耗量を、磨耗領域内と磨耗領域外の円形に打ち抜いた二つの直径23mmのサンプルの質量差によって決定した。
【0019】
表3は、異なる顔料スラリー濃度で試験した打ち抜きサンプルの質量減少量を、通常の酸化アルミニウムセラミック及び炭化ケイ素をカバー材料とした二つの参考テスト基体に対する、同一の試験条件下で行われた結果を比較して、与える。
【表3】

表3は、PTFEを充填剤として添加した材料の硬度低下の効果を示している。ポリエステルスクリーンの磨耗量減少は、酸化アルミニウム及び炭化ケイ素の両者と比較して、非常に顕著である。
【0020】
(例4)
この例は、タルクを充填剤として添加したキャストポリウレタン(PUR)マトリックスを含む基体の調製及びその試験に関する。
材料を調製するために、化粧品グレードのタルク粉末129.05gを、ポリオール(“Hyperplast 2851024”、ハイパープラスト社製)300g、Byk W968(湿潤分散剤)0.58g、及びByk A 555(脱泡剤)0.58gと共に、室温で分散した。この分散物67.28gを脱気し、これに脱気したプレポリマー(Hyperplast100)45.73g、及び鎖伸長剤である1,4−ブタンジオール(メルク社製)2.47gを2分間かけて混合し、シリコーン型を用いて16個の要素(そのうちの一つが図1に詳細に示してある)に成形し、80℃で24時間硬化させた。得られた硬化したエラストマーは、80のショアA硬度、及び17.5wt%の充填剤含有量を有していた。成形した16個の要素は、図2にて示すように、テスト基体に組み立てられ、研磨して直径を31.8mmとした。組み立てられ、研磨したテスト基体に、AT2000の標準的な試験手順に従って、ポリエステルスクリーンに対して試験を行った。ポリエステルスクリーンの磨耗量を、磨耗領域内と磨耗領域外の円形に打ち抜いた二つの直径23mmのサンプルの質量差によって決定した。
【0021】
表4は、異なる顔料スラリー濃度で試験して得られた打ち抜いたサンプルの質量減少量を、通常の酸化アルミニウムセラミック及び炭化ケイ素のカバー材料を有する二つの参考テスト基体について同一の試験条件下で得られた結果を比較して、与える。
【表4】

表4は、高いアスペクト比を有し、低い硬度(モース硬度が1から5の間)の充填剤の効果が示されている。ポリエステルスクリーンの磨耗量減少は、酸化アルミニウム及び炭化ケイ素と比較して顕著である。
【0022】
(例5)
この例は、炭酸カルシウムを充填剤として添加したキャストポリウレタン(PUR)マトリックスを含む基体の調製及びその試験に関する。
材料を調製するために、炭酸カルシウム粉末(“HC 50−BG”、OMYA社製)250gを、ポリオール(“Hyperplast 2851024”、ハイパープラスト社製)300gに、Byk W 968(湿潤分散剤)0.3g、Byk A 555(脱泡剤)0.3g及びByk 088(消泡剤)0.3gと共に、室温で分散した。この分散物87.77gを脱気し、これに脱気したプレポリマー(Hyperplast 100)41.77g及び鎖伸長剤である1,4−ブタンジオール(メルク社製)1.61gを2分間かけて混合し、シリコーン型を用いて16個の要素(そのうちの一つが図1に詳細に示されている)に成形し、80℃で24時間硬化させた。得られた硬化したエラストマーは、82のショアA硬度、及び30.5wt%の充填剤含有量を有していた。成形された16個の要素は、図2に示すように、テスト基体に組み立てられ、研磨して直径を31.8mmとした。組み立てられ、研磨したテスト基体に、AT2000の標準的な試験手順に従って、ポリエステルスクリーンに対して試験を行った。ポリエステルスクリーンの磨耗量を、磨耗領域内と磨耗領域外の円形に打ち抜いた二つの直径23mmのサンプルの質量差によって決定した。
【0023】
表5は、異なる顔料スラリー濃度で試験して得られた打ち抜いたサンプルの質量減少量を、通常の酸化アルミニウムセラミック及び炭化ケイ素のカバー材料を有する二つの参考テスト基体について同一の試験条件下で得られた結果を比較して、与える。
【表5】

表5は、低いアスペクト比を有する、低硬度の充填剤の効果を示している。ポリエステルスクリーンの磨耗量減少は、酸化アルミニウムセラミックと比較すると依然として大きいが、炭化ケイ素と比較すると磨耗量がわずかに多い。
【0024】
(例6)
この例は、六方晶系窒化ホウ素(BN)を充填剤として添加したキャストポリウレタン(PUR)マトリックスを含む基体の調製及びその試験に関する。
材料を調製するために、BN粉末(“AC6004”、アドバンストセラミックス社製)129gを、ポリオール(“Hyperplast 2851024”、ハイパープラスト社製)300gに、Byk W 968(湿潤分散剤)0.5g及びByk A 555(脱泡剤)0.5gと共に、室温で分散した。この分散物70.71gを脱気し、これに脱気したプレポリマー(Hyperplast 100)48.08g及び鎖伸長材である1,4−ブタンジオール(メルク社製)2.60gを2分間かけて混合し、シリコーン型を用いて16個の要素(そのうちの一つが図1に示されている)に成形し、80℃で24時間硬化させた。得られた硬化したエラストマーは、84のショアA硬度、17.5wt%の充填剤含有量を有していた。成形された16個の要素は、図2にて示すように、テスト基体に組み立てられ、研磨して直径を31.8mmとした。組み立てられ、研磨したテスト基体に、AT2000の標準的な試験手順に従って、ポリエステルスクリーンに対する試験を行った。ポリエステルスクリーンの磨耗量を、磨耗領域内と磨耗領域外の円形に打ち抜いた二つの直径23mmのサンプルの質量差によって決定した。
【0025】
表6は、異なる顔料スラリー濃度で試験して得られた打ち抜いたサンプルの質量減少量を、通常の酸化アルミニウムセラミック及び炭化ケイ素のカバー材料を有する二つのテスト基体について同一の試験条件下で得られた結果を比較して、与える。
【表6】

表6は、高いアスペクト比を有する、固形潤滑充填剤の効果を示している。ポリエステルスクリーンの磨耗量減少は、酸化アルミニウムと比較すると依然として大きいが、炭化ケイ素と比較すると磨耗量はわずかに高い。
【0026】
結論として、製紙機械のウェットエンドにおける脱水要素用である、先行技術の硬いセラミック材料の代替材料を提案し、説明してきた。本発明に係る材料は、ショアAが60から80の硬度を有する、柔らかいエラストマー材料である。該材料は、10から50wt%の量の充填剤を含有している。
好ましくは、その充填剤は低い硬度の及び/又は固形の潤滑充填剤である。充填剤のアスペクト比の高低による影響は、示されてきている。アスペクト比は、充填剤の形状を特色付けるために使用されているものであり、厚さに対する長さの割合に対応する。球状又は球形近似の粒子は、アスペクト比を有しない、又は非常に低いアスペクト比を有するのに対し、小板、薄片若しくは繊維は、高いアスペクト比を有する。アスペクト比は、強化等のような複合体のある種の性質に対して、重要な影響を有する。前述の充填剤の中で、炭酸カルシウム及びPTFEは低いアスペクト比を有するのに対し、窒化ホウ素及びタルクは、より高いアスペクト比を有する。固形潤滑剤は、摩擦を減少させるために使用される固形の粒子であり、それは負荷移動能力を増大させ、磨耗を減少させる等のために使用される。典型的な固形潤滑剤は、グラファイト、二硫化モリブデン、PTFE及び窒化ホウ素である。
【0027】
以上のように、本発明は、先行技術で使用されてきた、傷付きやすいセラミック材料に対する必要を完全に排除する。同時に、製紙機械のフォーミングスクリーンの磨耗は非常に低く維持され、かくしてフォーミングスクリーンの交換頻度をより少なくする。本発明に従った材料を、脱水要素の表面上に提供することができる。ある場合には、ほとんど完全に本発明の材料から脱水要素を調整することさえ可能である。例は、脱水要素として、本発明に従った材料を使用したときに、フォーミングスクリーンにおける磨耗が、非常に低いことを示した。競争力があり、且つ商業的に成功する脱水要素が、本発明の材料で調製されると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、例で使用した一つのテスト要素を示す。
【図2】図2は、例で使用した試験構成を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙機械のウェットエンドにおける脱水要素用材料であって、
該材料はエラストマーポリマーマトリックス、及び該マトリックスに10から50質量%の量で添加される充填剤を含み、かつ該材料が60から85ショアA硬度を有する材料。
【請求項2】
請求項1の材料であって、該ポリマーマトリックスが、ポリウレタン、ポリウレア、スチレン−ブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、ニトリルゴム、天然又は合成ゴム、ポリクロロプレン、ポリアクリレート、フッ素含有エラストマー、熱可塑性エラストマー及びポリシロキサンから選択される材料。
【請求項3】
請求項2の材料であって、該ポリマーマトリックスがポリウレタンを含む材料。
【請求項4】
請求項1の材料であって、該充填剤が低硬度の充填剤である材料。
【請求項5】
請求項1の材料であって、該充填剤が固形潤滑剤である材料。
【請求項6】
請求項1の材料であって、該充填剤が、ポリ(テトラフルオロエチレン)、タルク、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)粉末、タルク(カオリン)、炭酸カルシウム、窒化ホウ素、硫化モリブデン、フッ化カルシウム、二酸化チタン、炭化チタン、ガラスビーズ及びセラミックビーズから選択される材料。
【請求項7】
請求項4の材料であって、該充填剤がポリ(テトラフルオロエチレン)及びタルクから選択される低硬度充填剤である材料。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項の材料であって、該充填剤が10から40質量%、好ましくは15から30質量%の量で添加された材料。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項の材料であって、該材料がショアA硬度で70から80の間の硬度を有する材料。
【請求項10】
フォーミングスクリーンと接触した、滑る面を有する製紙機械のウェットエンドにおける脱水要素であって、該脱水要素の滑る面が、請求項1から9のいずれか1項に記載の材料を含む脱水要素。
【請求項11】
製紙機械用脱水要素の調製のための、請求項1から9のいずれか1項に記載の材料の使用。
【請求項12】
以下の工程を含む製紙機械のウェットエンド用材料の製造方法:
ショアA硬度で60から80の硬度を有するポリマーマトリックス組成物を調製する工程;
該ポリマー組成物に充填剤を10から50質量%の量で添加する工程;及び
前記組成物を硬化させて、ショアA硬度で60から85の硬度を有する材料を得る工程。
【請求項13】
請求項12の方法であって、該充填剤を10から40質量%、好ましくは15から30質量%の量で添加する方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の方法であって、該ポリマーマトリックスに添加する充填剤が、モーススケールで1から5の間の硬度を有する低硬度充填剤である方法。
【請求項15】
請求項14の方法であって、添加する充填剤がタルク又はポリ(テトラフルオロエチレン)である方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−511653(P2007−511653A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540295(P2006−540295)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012999
【国際公開番号】WO2005/054574
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(506130517)ベテジェ エクレパン ソシエテ アノニム (1)
【Fターム(参考)】