説明

脱泡器

【課題】流体に強い旋回流を付与することができ、旋回流の速度減衰を小さくでき、液体中の脱泡を効率よく行える脱泡器を提供する。
【解決手段】上下に延びる外筒1の内側に内筒3を設け、外筒及び内筒間の環状空間7を塞ぐように蓋体5を設け、外筒の上端外周部に流体の入口管9を偏心して設けると共に、外筒の下端外周部に、環状空間を上から下に向けて螺旋状に流れる流体の流れに沿って流体を導出する出口管11を偏心して設け、内筒の周壁に円形もしくはスリット状の複数の泡除去孔13を設け、環状空間を流れる流体を遠心力で液体及び気体に分離し、泡除去孔13を通して気体を内筒3内に捕捉して内筒3の上部から排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に混在する気体を分離し、排出する脱泡器に関する。
【背景技術】
【0002】
ミルク、ジュースなどの飲料の場合、飲料に酸素が混在すると、飲料が酸化するため、飲料から酸素を除去することが行われる。
あるいは、液体の流量を計測する場合、空気などの気体が混在すると、液体の流量を精度良く計測できないため、液体から気体を除去した後に流量計測が行われる。
また、濁度計測においては、混入気泡が光を散乱・吸収させるため、混在微粒子と区別ができず誤差要因と成る問題が有り、気泡除去が不可欠である。
【0003】
あるいは、塗料に空気などの気体が入った状態で塗装が行われると、塗料の赤外線乾燥過程で気体膨脹により塗面にピンホールが形成され、塗装の仕上がり状態が低下するため、塗装前に塗料から気体を除去することが必要である。
また、超音波を用いた洗浄装置では、気泡が超音波エネルギーを吸収して、洗浄効果が低下する問題がある。
このような背景から、液中の気泡の除去は重要な課題で、これら液体から気体を除去する一つの方法として、従来、流体に旋回流を付与し、遠心力で液体と気体を分離し、気体を筒体内に捕捉し、筒体を通して気体を外部に排出する脱泡器が提案されている(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−28634号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構成では、流体に強い旋回流を付与できず、殊に流体の粘度が高い場合に、旋回流の速度減衰を小さくできず、効率よく脱泡できない欠点があった。
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、流体に強い旋回流を付与することができ、且つ、粘度の高い流体に対しても旋回流の速度減衰を小さくでき、液体中の脱泡を効率よく行える脱泡器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上下に延びる外筒の内側に内筒を設け、外筒及び内筒間の環状空間を塞ぐように蓋体を設け、外筒の上端外周部に流体の入口管を偏心して設けると共に、外筒の下端外周部に、環状空間を上から下に向けて螺旋状に流れる流体の流れに沿って流体を導出する出口管を偏心して設け、内筒の周壁に円形もしくはスリット状の複数の泡除去孔を設け、環状空間を流れる流体を遠心力で液体及び気体に分離し、泡除去孔を通して気体を内筒内に捕捉して内筒の上部から排出する構成としたことを特徴とする。
本発明では、流体が、偏心した入口管から環状空間内に導入され、環状空間内を上から下に螺旋状に流れ、しかも、流体の螺旋の流れに沿って、同じ回転方向の流線を与える、偏心した出口管から導出されるため、入口管と出口管の相乗効果により流体に強い旋回流を付与でき、旋回流の速度減衰を小さくでき、液体中の気体を効率よく除去できる。
【0007】
この場合に、前記入口管及び前記出口管の各内端が外筒の中心部まで延出してもよい。
前記入口管及び前記出口管が上面視で一列棒状に配列されていてもよい。
前記入口管の内部に適正流入流速を与える着脱可能なジェットを設けてもよい。
前記内筒の泡除去孔は、旋廻流回転方向に対して、90乃至120°の角度で、入口管の中心部、内筒の上端及び下端、その他中間部に設けてもよい。
外筒内壁、あるいは、内筒外壁の表面粗さを、Rmax≦6.3S{JIS仕上げ記号▽▽▽以上}としてもよい。
前記外筒内部に、複数の通路を有し、外筒内径から、「√{(内筒外径の二乗)+(入口管内径の二乗)}」以上の内径に円錐状に収束するガイドを設けてもよい。
前記外筒が、入口管及び出口管の間で、外筒内径から、「√{(内筒外径の二乗)+(入口管内径の二乗)}」相当の内径に括れていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、流体が、偏心した入口管から環状空間内に導入され、環状空間内を上から下に螺旋状に流れ、しかも、流体の螺旋の流れに沿って、偏心した出口管から導出されるため、入口管と出口管の2つの渦流生成効果により流体に強い旋回流を付与でき、旋回流の速度減衰を小さくでき、液体中の気体を効率よく除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による脱泡器の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】Aは入口管部の断面図、Bは出口管部の断面図である。
【図4】泡除去孔を示す断面図で、θ=90度の角度を示す。
【図5】A、Bはジェットの断面図、C、Dは各端面図を示す。
【図6】ジェットの断面図を示す。
【図7】図4の別形態を示す図である。
【図8】ガイドを付設した別形態を示す図である。
【図9】括れを付設した別形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1において、1は上下に延びる内径Dhの外筒{=容器}を示し、この外筒1の内側には、同じく上下に延びる外径Dbの内筒3{=気泡排出管}が同心的に配置されている。外筒1及び内筒3の上端部、及び下端部には、それぞれ蓋体5(5A,5B)が設けられ、蓋体5A,5Bは、外筒1と内筒3との間に形成された環状空間7を塞ぐように配置されている。
【0011】
外筒1の上端外周部には、内径dの入口管9が設けられ、外筒1の下端外周部には、同じく内径dの出口管11が設けられている。上述した内筒3の内径は、入口管9及び出口管11の内径dと同等以上の内径であることが望ましい。入口管9及び出口管11は、図2、図3に示すように、それぞれ外筒1の中心部Mから偏心し、それぞれ外筒1の内接円接線と平行して配置され、上面視であたかも連続するように一列棒状に配置されている。入口管9は、外筒1の上端外周部に設けたが、これに限定されず、例えば外筒1の高さをHとしたとき、頭頂部からH/2以内の高さに設けてもよい。
入口管9の外筒1への突き出し端面は外筒1内壁と内筒3外壁の直径位置に直角に配置され、外筒1内壁と内筒3外壁で構成されるドーナツ状(環状空間)を流路として、入口管9から噴出された流体が旋回流(渦流)を形成させる。
ここで、外筒1上端より見た場合に、出口管11を入口管9と直列状(一列棒状)に配置し、更には、外筒1内壁と内筒3外壁で挟まれた空間に、当該端面を配置しているため、入口管9生成旋回流にかかわらず、出口管11でも渦流が生成され、しかも、その旋回流の回転方向が同じである。すなわち、入口管9生成旋回流減衰を出口管11での生成渦流が助けるため、気泡除去効率の向上に繋がる。
【0012】
上記構成において、図4に示すように、入口管9の内部に適正流入流速を与える、着脱可能なジェット10を設けてもよい。ジェット10の形状は、外筒1内壁に流体を密着させるために、図5B、図5Dに示すように、入口管9の内壁で構成される「半円形構造」が望ましいが、図5A、図5Cに示すように、同軸上の円形構造であってもよい。同軸上の円形構造の場合において、ジェット内径djは、適用流体粘度が水相当の場合、「Q=0.5dj2×√(ΔP/10)」の関係式より、「ΔP=0.1(MPa)」の圧損時に「Q(l/min)」を与える“ジェット内径dj”が決定される。
入口管9の内径dが“dj”に対して十分大きい場合は、図6に示すように、内壁に、dに近い内径のジェットを有するストッパー10Aが固定され、交換可能な“dj”のジェットを有する「渦流生成ジェット10」が挿入される。気泡除去効率ηを高めるには、“dj”を小さくすればする程、優れるが、一方では、必要とするポンプ(不図示)の圧送能力を高くする必要がある。しかし、ポンプが既に構成されている場合、ポンプの圧送能力に基づいて、最適な“ジェット10内径dj”を決定する必要がある。しかし、適用流体の粘度により最適“dj”が変わるため、実際稼働状態で、「渦流生成ジェット10」を交換して、最終決定することとする。
【0013】
適用流体粘度が大きくなるに連れて、入口管9に設けられたジェット10により生成される旋回流の減衰が大きくなる。これを抑制するために、外筒1の内壁の表面粗さは、Rmax≦6.3S{JIS仕上げ記号▽▽▽以上}として、内壁による抵抗を軽減させて、生成された渦流を維持させて、気泡除去効率の向上を図っている。
気泡除去効率ηは、旋回流強さを強くすればするほど、向上する。しかし、気泡除去効率ηと必要圧損ΔPとは「η∝√ΔP」の関係にあり、脱泡器における圧損ΔPは、ηの二乗に伴って増加する。しかも、適用流体の粘度によっても、ΔPは大きく影響を受け、固定ジェット10の場合は、システムに装備されたポンプ(不図示)の能力によって制限を受け、必要流量が得られない場合がある。
本構成では、装備されたポンプ(不図示)に対して、最大の気泡除去効果を得られる、適正なジェット10内径が現場選択可能なように、外筒1に挿入された入口管9端面部分で、ジェット10交換可能な構造とした。この結果、既設のポンプ能力に対して、最適なジェット構成を可能とした。
【0014】
入口管9の内端9Aは、図3Aに示すように、外筒1の中心部Mまで延出している。したがって、入口管9の内端9Aの出口に、螺旋状に流れる噴出し渦Aが生成され、噴出し渦Aとなって環状空間7に流入する。環状空間7に流入した流体は、環状空間7内を上から下に向けて、螺旋状に流れる。環状空間7は流体で満たされている。また、出口管11の内端11Aは、図3Bに示すように、外筒1の中心部Mまで延出している。したがって、出口管11の内端11Aの入口に、螺旋状に流れる吸込み渦Bが生成され、この吸込み渦Bは、外筒1の下端の外周部において、その渦Bのまま、その渦Bの向きを変えず、渦Bに逆らわず、渦Bに沿って出口管11の内端11Aに流入する。
入口管9による生成渦流が存在しない場合においても、出口管11への流出に伴う渦流が生成され、しかも、旋回流の回転方向が、入口管生成渦流と同じため、互いの相乗作用により、旋回流が維持され、気泡除去効率の向上に寄与する。
【0015】
内筒3の周壁には、図1に示すように、上下(長手方向)にほぼ等しい間隔で、複数の円形の泡除去孔13が設けられている。泡除去孔13は円形に限定されず、例えば縦にスリット状の長孔であってもよい。内筒3の上端には抜気孔21が設けられ、抜気孔21は抜気栓(不図示)で閉塞されている。また、内筒3の下端の周壁には、流体中の微粒子等の堆積物を排出するための連通孔が設けられ、内筒底部中央には、ドレイン(排出)孔23が設けられ、抜き孔23は栓(不図示)で閉塞されている。
【0016】
流体が環状空間7内を螺旋状に流れると、流体に遠心力が付与され、環状空間7内で重量の重い液体が外方に寄せられ、重量の軽い気体が内方に留まって分離が促進する。内方に留まった気体は、泡除去孔13を通って内筒3の内側に進入し、浮力により内筒3内を上昇し、抜気孔3Aを経て排出される。
泡除去孔13は、内筒3の周方向に対し、90°の間隔をあけて、それぞれ縦一列に設けられている。泡除去孔13は、内筒3上端の蓋体5Aすれすれの位置にも、内筒3下端の蓋体5Bすれすれの位置にも、それぞれ設けられている。
泡除去孔13は、入口管9の内端9Aが延在する位置Pにも設けられる。位置P(入口管9の内端9A)には、最も強い旋回流Aが与えられ、液体と気体の分離が強く促進され、位置Pの泡除去孔13に最も多くの気体が吸引される。内筒3に設けられた上記泡除去孔13の位置としては、旋廻流が最も強く、遠心力効果が大の、入口管9中心軸と該一致する箇所が好適である。
【0017】
泡除去孔13は、図7に示すように、旋回流Aの流れ方向と対向するように形成され、流れの後方の圧力が低くなる位置に開口することが望ましい。
本構成の脱泡器で重要な要素は、(I)強い旋回流を形成させること、(II)旋回流の減速を抑制して維持すること、(III)旋回流半径を小さくして遠心効果を強くさせること、に有る。内筒3の周壁に設ける泡除去孔13の向きを、旋回流方向Aに向けた場合、例えば、図4の構成でθ<90°とした場合、旋回流の一部が、内筒3に流入し、旋回流速の減衰を高める。このため、図7の構成例では、気泡除去孔13の向きθを、旋回流に対して、例えば120°として、旋回流が内筒3内部に直接流入しない構造としている。気泡除去孔13の向きθは「θ≧90°」であればよく、この構成とすれば、旋回流が内筒3内部に直接流入することがない。
【0018】
これらの構成では、図3に示すように、入口管9の内端を、外筒1の中心部まで延出させることで、外筒1内部の流体との衝突・拡散が少なく、外筒1内壁により形成される噴出し渦A(旋廻流)が生成され、環状空間7に円滑に流入させることができる。
また、出口管11の内端を、外筒1の中心部まで延出させることで、外筒1と内筒3により構成された流路空間で、適正な吸込み渦(吐出渦)B(旋廻流)が生成され、この吸込み渦Bのまま、その渦Bの向きを変えず、渦Bに逆らわず、渦Bに沿って内端に流入する。すなわち、「噴出し渦A(旋廻流)」の減衰を「吸込み渦(吐出渦)B(旋廻流)」が補助する形態と成るため、外筒1及び内筒3により構成される空間に、流体に強い旋回流の付与と、旋回流の速度減衰を小さくでき、液体中の気体を効率よく除去できる。
【0019】
入口管9からの噴流により生成された旋回流(渦流)は、その遠心力効果により、液体中の気泡分離が図られながら、円筒状容器下部の出口管11方向に流れる。
このとき、図8に示すように、入口管9と出口管11の中間位置に、外筒1に内接させて、円錐状の構造体(ガイド)12を設けてもよい。
構造体12は、外筒1の内径からdc2の内径に、円錐状に出口に向けて収束し、円錐状に流路が小さくなる、傾きがθの円錐環状の部材であり、流体の旋廻流半径を小さくさせて遠心力効果を高めて、流体の速度減衰を軽減させる。気泡除去管(内筒3)外径をdbとすると、入口管9(出口管)内径dと円錐状ガイドの出口径dc2は、「(dc22―db2)≦d2」の関係に設計され、内筒3外周部に収集された気泡と共に、一部液体は、気泡除去管(内筒3)内部に押し込まれて、気泡排出に貢献する。当該円錐状ガイド12の上部には、当該筒の外壁と外筒1内壁部に滞留された気泡を排出するために、直径がdcの複数個の通路12Aが設けられている。
一方、円筒状容器1の底部においては、旋回流の遠心効果により、液体中に混在する微粒子等の異物が堆積する。このような微粒子分離機能を高める場合は、外筒1底面から高い位置に、出口管11を配置させる。一方、微粒子の分離を嫌う場合には、外筒1底部に一致させて、出口管11を設けても良い。
【0020】
ガイド12の代わりに、外筒1の内外壁を、図9に示すように、入口/出口管により構成される中央部分の径を小さくし外筒1を括れさせて、旋回流半径を小さくして、旋回流の速度(強さ)を向上させても良い。
外筒1の内径がdhからdsに絞られる結果、旋回流半径が小さくなり、遠心力効果が大となり、気泡の分離効果が高まる。dsは、入口管/出口管内径dと、「(ds2−db2)≦d2」の関係で設計される。出口管11は、入口管9で生成された旋回流(渦流)の回転方向と同じ旋回流を生成するように、外筒1の上部より、軸方向に見た場合、入口管9の軸と一致した位置で、外筒1に内接し、且つ、その外筒1内先端部は、外筒1と内筒(気泡排出管)3で構成される領域で開口している。この結果、外筒1と内筒(気泡排出管)3で構成されるドーナツ状(環状)空間を流路として出口管11に流出するため、必然的に、旋回流(渦流)が生成され、しかも、旋回流の回転方向が、入口管9で生成される旋回流回転方向と同じであるため、旋回流(渦流)を強化する働きを行い、速度減衰による旋回流低下を抑制する。
【0021】
旋回流(渦流)の流速が低い場合は、層流状態のため、たとえば、文献;柴田泰司/角政之著“流体力学と流体機械の基礎”啓学出版P.70の如く、渦流の速度減衰は管壁の荒さに影響されず、一般に「管摩擦係数λ=64/Re」(ムーディ線図)の関係にある。しかし、本構成の如く、外筒1内に強力な渦流を生成させる場合、乱流状態のため、「管摩擦係数λ」は、内壁の表面粗さの影響を大きく受けて、速度減衰を大きくさせる。この影響を抑制させるために、本構成では、外筒1内壁(更には、気泡除去孔13を有する内筒3外壁)等の研磨等を行うことにより、表面粗さを、Rmax≦6.3S{JIS仕上げ記号▽▽▽以上}として、生成された渦流を維持させて、気泡除去効率の向上を図っている。このように環状空間7内に強い旋回流を生成させると、外周部には、比重量の大きい流体が遠心力により分離されて圧力が高くなる半面、内筒1領域の圧力が低くなり、同時に、比重量の軽い気体が分離される。
【0022】
気泡除去効率ηは、旋回流速Vとは、一次比例の「η∝V」の関係にあり、Vを生成させる圧力差ΔPとは、「η∝√ΔP」の関係にある。最初に生成される旋回流(渦流)速は、「V∝√ΔP」の如く、ジェット10に付加される圧力差ΔPにより一義的に決定されるため、その後は、生成された旋回流速Vを如何に減衰させずに持続させるかに有る。
旋回流の速度減衰は、流体の粘度が高くなるほど、大となる。しかも、流路の表面粗さや流路の変更等の影響も大きく受け易くなる。
このため、本構成では、上述したように、内筒3外壁の表面粗さを、Rmax≦6.3S{JIS仕上げ記号▽▽▽以上}とし、生成された渦流強さを維持させて、気泡除去効率ηの向上を図ると同時に、内筒3周壁の気泡除去孔13の向きθを、旋回流Aに対し、「θ≧90°」として、旋回流が内筒3内部に直接流入しない構造としている。また、流れ方向の変更は、速度減衰を促進させるため、入口管9生成渦流回転方向と、出口管11生成渦流回転方向を一致させる構造としている。
旋回流半径rを小さくさせると、「F=MV2/r」の関係式より明らかな如く、遠心力F効果が大となるため、気泡分離効果が大となる。Mは、旋廻流体の質量である。入口管9と出口管11の該中央部で、図9に示すように、外筒1の内外径を小さくして、括れ(くびれ)構造とする事も、同じ効果を生む。すなわち、図9の構造では、出口側に向かうに従って、旋廻流(渦流)半径が縮小するため、同じ流速の場合であっても、遠心力効果が大と成り、気泡分離効果が向上する。
【0023】
円筒状容器(外筒1)の上下を連通する気泡除去円筒(内筒3)内部は、内筒3の周壁に設けられた円形もしくはスリット状の複数の泡除去孔13の旋廻流の回転方向に対する角度が“90度乃至180度”のため、旋回流(渦流)の影響を受けずに、流速はほぼゼロに近い空間領域と成っている。このため、気泡除去円筒3内部の液体に対する気泡の浮力の働きで、気泡は、容器の上部に浮上して、気泡排出孔21へと向かう。
しかし、当該気泡除去円筒3の内径が小さい場合は、殊に流体粘度が高い場合には、気泡の浮上速度が小さいため、当該気泡除去円筒3内径dbを、入口管9内径dとの関係で、『db≧d』とさせて、気泡浮上を図っている。
【0024】
気泡浮上と気泡排出を効果的に行うために、気泡排出孔21に設けた「流量調整弁(不図示)」の開度を大きくさせて液体流量も大きくさせて、液体源のタンク等の横壁面に流出させて、液体上面に、静かに還流させる。液体還流量を抑制したい{=還流したくない}場合は、「流量調整弁」を強く絞り、気泡のみの排出を図る。
たとえば、25(℃)での“水”の粘性係数「0.89×10-3(Pa・s)」に対して、“空気”の粘性係数は「0.0182×10-3(Pa・s)」と、気体の粘性係数は約1/50と小さいため、強く絞っても{=流量調整弁内径が小さい}、気泡の排出には影響されない特徴が有る。但し、気泡排出管内部に収集された気泡の浮上効果{=還流液体の流れと一緒に流出する効果}は小さくなることに成る。このため、気泡排出を効果的に図りたい場合は、還流量を増やして対応することが重要である。
外筒1と内筒3(気泡排出管)とで構成される底部空間の流体を排出させるための連通孔23が、内筒3の最下端に設けられる。また、内筒3(気泡排出管)の底部中央には、ドレイン用流路23Aが設けられる。
【0025】
本実施の形態では、流体が、偏心した入口管9から環状空間7内に導入され、環状空間7内を上から下に螺旋状に流れ、しかも、流体の螺旋の流れBに沿って、偏心した出口管11から導出され、外筒1と内筒3により構成された、入口管9相当の幅を有する環状(ドーナツ状)空間7で、旋廻流(渦流)が生成され、且つ、出口管11も同じ回転方向の旋廻流を生成させる構造に配置されているため、両者の相乗効果により、流体に強い旋回流を付与でき、単に、入口管9での旋廻流形成させる場合に対して、旋回流の速度減衰を小さくでき、気体を効率よく除去できる。
しかも、旋廻流形成される外筒1内壁や内筒3外壁の表面粗さを、Rmax≦6.3S{JIS仕上げ記号▽▽▽以上}として、あるいはまた、内筒3に開けられた気泡流路(孔13)の角度を、旋廻流に逆らわないように規定することで、生成された渦流強さを維持させて、速度減衰を抑制させている。
ただし、適用流体粘度が大きくなると、速度減衰割合も増加する現象を避ける事は出来ない。このため、遠心力Fが、旋廻流速度V、質量Mと、回転半径rとの関係が、「F=MV2/r」に有る事から、入口管9、出口管11の間に、旋廻流半径を小さくするための、下流方向に次第に収束する円錐状ガイド12を、外筒1内部に設ける、あるいは、外筒1内外径を絞って、括れ構造の環状流路とする事により、速度減衰による気泡除去効率の低下を抑制して、高い気泡除去効率を得ても良い。
以上、一実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものでないことは明らかである。
【符号の説明】
【0026】
1 外筒
3 内筒
5(5A,5B) 蓋体
7 環状空間
9 入口管
11 出口管
13 泡除去孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に延びる外筒の内側に内筒を設け、
外筒及び内筒間の環状空間を塞ぐように蓋体を設け、
外筒の上端外周部に流体の入口管を偏心して設けると共に、
外筒の下端外周部に、環状空間を上から下に向けて螺旋状に流れる流体の流れに沿って流体を導出する出口管を偏心して設け、
内筒の周壁に円形もしくはスリット状の複数の泡除去孔を設け、
環状空間を流れる流体を遠心力で液体及び気体に分離し、泡除去孔を通して気体を内筒内に捕捉して内筒の上部から排出する構成とした
ことを特徴とする脱泡器。
【請求項2】
前記入口管及び前記出口管の各内端が外筒の中心部まで延出することを特徴とする請求項1に記載の脱泡器。
【請求項3】
前記入口管及び前記出口管が上面視で一列棒状に配列されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の脱泡器。
【請求項4】
前記入口管の内部に適正流入流速を与える着脱可能なジェットを設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の脱泡器。
【請求項5】
前記内筒の泡除去孔は、旋廻流回転方向に対して、90乃至120°の角度で、入口管の中心部、内筒の上端及び下端、その他中間部に設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の脱泡器。
【請求項6】
外筒内壁、あるいは、内筒外壁の表面粗さを、Rmax≦6.3S{JIS仕上げ記号▽▽▽以上}とした事を特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の脱泡器。
【請求項7】
前記外筒内部に、複数の通路を有し、外筒内径から、「√{(内筒外径の二乗)+(入口管内径の二乗)}」以上の内径に円錐状に収束するガイドを設けたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の脱泡器。
【請求項8】
前記外筒が、入口管及び出口管の間で、外筒内径から、「√{(内筒外径の二乗)+(入口管内径の二乗)}」相当の内径に括れたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の脱泡器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−50929(P2012−50929A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195510(P2010−195510)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(591160338)株式会社技術開発総合研究所 (12)
【Fターム(参考)】