脱泡機構及びその製造方法
【課題】脱泡機構の強度を高めつつ、脱泡能力を向上させることが可能な技術を提供する。
【解決手段】脱泡機構は、液体噴射装置内を流通する液体から気泡を取り除くために用いられる。この脱泡機構は、気体透過性を有する第1の壁を有し液体中の気泡を捕捉するための脱泡室と、気体透過性を有する第2の壁を有し第2の壁と第1の壁とを介して脱泡室と接する減圧室とを備えており、第1の壁と第2の壁とのうち少なくとも一方は補強用形状を有している。
【解決手段】脱泡機構は、液体噴射装置内を流通する液体から気泡を取り除くために用いられる。この脱泡機構は、気体透過性を有する第1の壁を有し液体中の気泡を捕捉するための脱泡室と、気体透過性を有する第2の壁を有し第2の壁と第1の壁とを介して脱泡室と接する減圧室とを備えており、第1の壁と第2の壁とのうち少なくとも一方は補強用形状を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置内の液体供給路において液体から気泡を除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式プリンタでは、インクカートリッジ等のインク供給部から記録ヘッドまでのインク供給路においてインク中に気泡が発生すると、ドット抜けなどの印刷不良を招くことがある。そのため、インクから気泡を取り除くこと(脱泡)が求められる。この脱泡を行う機構として、インクを一時的に溜めて気泡を捕捉する部屋(脱泡室)と減圧室とを気体透過性を有する隔壁を介して隣接させ、減圧室の圧力を脱泡室の圧力よりも低くして脱泡室において捕捉した気泡を取り除く機構が提案されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−95878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
脱泡機構において、脱泡室と減圧室との間の隔壁が薄いほど気泡を除去し易くなり脱泡能力が向上する。しかしながら、この隔壁を薄くすると、減圧/昇圧の繰り返しの使用に耐え得る十分な強度を得ることができないという問題があった。なお、かかる問題は、インクジェット式プリンタに限らず、潤滑油や樹脂液等の液体を噴射する任意の液体噴射装置において起こり得る。
【0005】
本発明は、脱泡機構の強度を高めつつ、脱泡能力を向上させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]液体噴射装置内を流通する液体から気泡を取り除くための脱泡機構であって、気体透過性を有する第1の壁を有し、前記液体中の気泡を捕捉するための脱泡室と、気体透過性を有する第2の壁を有し、前記第2の壁と前記第1の壁とを介して前記脱泡室と接する減圧室と、を備え、前記第1の壁と、前記第2の壁と、のうち少なくとも一方は補強用形状を有する、脱泡機構。
【0008】
適用例1の脱泡機構は、脱泡室において減圧室と接する第1の壁と、減圧室において脱泡室と接する第2の壁と、のうち少なくとも一方は補強用形状を有するので、脱泡機構の強度を高めることができると共に、第1の壁及び第2の壁を薄くして脱泡能力を向上させることができる。
【0009】
[適用例2]適用例1に記載の脱泡機構において、前記補強用形状は、厚肉部と薄肉部とが交互に配置された断面を有するリブ形状と、断面が波型であって平面が筋状の波型形状と、厚肉部又は薄肉部が散在するドット形状と、のうちいずれかである、脱泡機構。
【0010】
このようにすることで、脱泡室と減圧室との間の強度を高めることができ、また、脱泡室と減圧室との間の少なくとも一部において、厚みを小さくすることができる。また、第1の壁又は第2の壁の表面積を大きくすることができ、脱泡能力を向上させることができる。
【0011】
[適用例3]適用例2に記載の脱泡機構において、前記第1の壁と前記第2の壁とは単一部材として形成されている、脱泡機構。
【0012】
このようにすることで、脱泡機構における部品点数を減らすことができ、脱泡機構の製造コストを抑えることができる。
【0013】
[適用例4]適用例2または適用例3に記載の脱泡機構において、前記第1の壁は前記補強用形状を有し、前記補強用形状は、前記リブ形状又は前記波型形状であり、前記リブ形状の長手方向又は前記波型形状の筋方向と、前記脱泡室における前記液体の流入方向と、は互いに交差する、脱泡機構。
【0014】
このようにすることで、第1の壁において液体との接触面積を大きくすることができ、多量の気泡を第1の壁に捕捉することができる。また、脱泡室に液体が流入したときにも、第1の壁において気泡を捕捉した状態を維持することができ、脱泡室よりも下流側に気泡が流れてしまうことを抑制することができる。
【0015】
[適用例5]適用例3に記載の脱泡機構において、前記単一部材の平面形状は矩形であり、前記補強用形状は、前記リブ形状又は前記波型形状であり、前記リブ形状の長手方向又は前記波型形状の筋方向と、前記矩形において前記単一部材を成型する際の成型材の流入位置を有する辺から対向する辺に向かう方向と、は互いに平行である、脱泡機構。
【0016】
このようにすることで、成型用金型の第1の壁及び第2の壁に対応する部分における成型材の流れる方向を、リブ形状の長手方向又は波型形状の筋方向と平行とすることができる。したがって、成型用金型の内部における成型材の流通性を高めることができ、成型材が充填されずに、単一部材に穴が開いてしまうことを抑制することができる。
【0017】
[適用例6]液体噴射装置内を流通する液体から気泡を取り除くための脱泡機構であって、前記液体中の気泡を捕捉するための脱泡部と、前記脱泡部を囲んで配置された減圧室と、を備え、前記脱泡部は、気体透過性を有する壁を有し、前記壁は補強用形状を有する、脱泡機構。
【0018】
適用例6の脱泡機構は、脱泡部の壁が補強用形状を有するので、脱泡機構の強度を高めることができると共に、脱泡室の壁を薄くして脱泡能力を向上させることができる。
【0019】
[適用例7]液体噴射装置内を流通する液体から気泡を取り除くための脱泡機構であって、前記液体中の気泡を捕捉するための脱泡室と、前記脱泡室内に配置された減圧室と、を備え、前記減圧室は、気体透過性を有する壁を有し、前記壁は補強用形状を有する、脱泡機構。
【0020】
適用例7の脱泡機構は、減圧室の壁が補強用形状を有するので、脱泡機構の強度を高めることができると共に、減圧室の壁を薄く構成して脱泡能力を向上させることができる。
【0021】
[適用例8]適用例1ないし適用例7のいずれか一例に記載の脱泡機構を備える、液体噴射装置。
【0022】
このようにすることで、液体噴射装置内を流通する液体から多量の気泡を取り除くことができると共に、脱泡機構の強度を高めことができるので、液体噴射装置としての故障頻度を低く抑えることができる。
【0023】
[適用例9]液体噴射装置内を流通する液体から気泡を取り除くための脱泡機構の製造方法であって、(a)気体透過性を有する第1の壁を有し、前記液体中の気泡を捕捉するための脱泡室の部材を形成する工程と、(b)気体透過性を有する第2の壁を有する減圧室の部材を形成する工程と、(c)前記第1の壁と前記第2の壁とを介して、前記脱泡室と前記減圧室とが接するように、前記脱泡室の部材と前記減圧室の部材とを接合する工程と、を備え、前記工程(a)と前記工程(b)とのうち少なくとも一方は、(d)前記第1の壁又は前記第2の壁を、厚肉部と薄肉部とが交互に配置された断面を有するリブ形状、又は、断面が波型であって平面が筋状の波型形状にする工程を含み、前記工程(d)は、(e)前記脱泡室の部材用金型又は前記減圧室の部材用金型において、前記リブ形状の長手方向又は前記波型形状の筋方向に沿って、成型材を流して前記脱泡室の部材又は前記減圧室の部材を成型する工程を含む、脱泡機構製造方法。
【0024】
適用例9の脱泡機構製造方法では、脱泡室の部材用の金型又は減圧室の部材用金型において、リブ形状の長手方向又は波型形状の筋方向に沿って成型材を流すので、金型の内部における成型材の流通性を高めることができ、成型材が充填されずに、第1の壁又は第2の壁に穴が開いてしまうことを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
A.第1の実施例:
A1.装置構成:
図1は、本発明の脱泡機構としてのキャリッジ100を備えたプリンタ500の概略構成を示す説明図である。このプリンタ500は、4色(ブラック,シアン,マゼンダ,イエロー)のインクを吐出可能なインクジェット式プリンタである。プリンタ500は、ブラックインクのインクカートリッジIC1と、シアンインクのインクカートリッジIC2と、マゼンダインクのインクカートリッジIC3と、イエローインクのインクカートリッジIC4と、キャリッジ100と、記録ヘッド150と、ガイドロッド260と、プラテン270と、4つのインク供給用ポンプ220a,220b,220c,220dと、減圧用ポンプ300と、を備えている。
【0026】
プリンタ500は、4つのインクカートリッジIC1〜IC4がプリンタ本体側に装着される、いわゆるオフキャリッジタイプのプリンタである。インクカートリッジIC1は、チューブt1とインク供給用ポンプ220aとチューブt11を介してキャリッジ100に接続されている。同様に、インクカートリッジIC2はチューブt2とインク供給用ポンプ220bとチューブ12とを介して、インクカートリッジIC3はチューブt3とインク供給用ポンプ220cとチューブt13とを介して、インクカートリッジIC4はチューブt4とインク供給用ポンプ220dとチューブ14とを介して、それぞれキャリッジ100に接続されている。減圧用ポンプ300はチューブt5を介してキャリッジ100に接続されている。なお、各インクカートリッジIC1〜IC4は、図示しないカートリッジホルダによってプリンタ500の本体フレーム(図示省略)に装着されている。
【0027】
インク供給用ポンプ220aは、インクカートリッジIC1内のブラックインクをキャリッジ100に供給する。同様に、インク供給用ポンプ220bはインクカートリッジIC2内のシアンインクを、インク供給用ポンプ220cはインクカートリッジIC3内のマゼンダインクを、インク供給用ポンプ220dはインクカートリッジIC4内のイエローインクを、それぞれキャリッジ100に供給する。減圧用ポンプ300は、各色(ブラック,シアン,マゼンダ,イエロー)に共通して用いられる。
【0028】
ガイドロッド260は、プラテン270の上方(+Y方向)においてプラテン270の長手方向(Z軸)に沿って配置されている。キャリッジ100は、ガイドロッド260に沿ってプラテン270の長手方向に移動可能に支持され、キャリッジモータ(図示省略)によりタイミングベルト(図示省略)を介して駆動される。記録ヘッド150は、キャリッジ100の底面に配置され、キャリッジ100の長手方向の往復運動に伴い多数のノズル(図示省略)からインク滴を下方(−Y方向)に吐出する。このとき、図示しない紙送り機構によって記録用紙Pがプラテン270上を+X方向に送られ、記録用紙Pに画像等が形成される。
【0029】
図2(A)は、インク噴射時のキャリッジ100及び記録ヘッド150の状態を示す説明図である。図2(A)では、キャリッジ100の有する機能を模式的に表わしている。なお、図2(A)では、ブラックインクの供給に関わる機能を示しているが、他色のインクの供給に関わる機能についても同様である。
【0030】
キャリッジ100は、フィルタ室60と、大気室87と、第1圧力室77と、第1調圧バルブ71と、脱泡室92と、減圧室80と、第2圧力室89と、第2調圧バルブ81と、インクが流通する3つの内部流路62,64,79と、負圧供給路358とを備えている。
【0031】
フィルタ室60は、内部にフィルタ61を備えており、流入したインクをろ過して不純物を取り除くために用いられる。このフィルタ室60は、内部流路62を介してチューブt11と連通している。また、フィルタ室60は、内部流路64を介して後述するバルブ室70と連通している。大気室87は、大気連通孔99を介して大気と連通している。
【0032】
第1圧力室77は、ブラックインクを一時的に溜めてキャリッジ100内のインク供給路における圧力を調整するために用いられる。この第1圧力室77は、天井部分である隔壁部88bを挟んで大気室87に隣接している。隔壁部88bは、可撓性を有しており上下方向に変位可能である。隔壁部88bとしては、例えば、合成樹脂やゴム等からなるフィルムと、このフィルムと共に変位可能な片持ち(図示省略)の薄板部材とで形成することができる。第1圧力室77は、インク流入口76を備えており、このインク流入口76を介して後述するバルブ室70と連通している。また、第1圧力室77は、内部流路79を介して脱泡室92と連通している。
【0033】
第1調圧バルブ71は、ブラックインクの流通を制御するために用いられる。この第1調圧バルブ71は、バルブ室70と、弁体72と、圧力調整バネ73と、シール部材75と、支持ロッド74とを備えている。バルブ室70は、内部流路64と連通している。弁体72は、バルブ室70内に配置されており、圧力調整バネ73により封止位置側に付勢されている。この弁体72は、第1圧力室77とバルブ室70とを連通状態とする開放位置と、非連通状態とする封止位置との間で変位可能である。具体的には、第1圧力室77からインクが排出されることにより、弁体72を押し下げる力(隔壁部88bによる支持ロッド74の押圧力及び第1圧力室77内の圧力)が、弁体72を押し上げる力(バルブ室70内の圧力及び圧力調整バネ73の付勢力)よりも大きくなると、弁体72は、開放位置に向かって変位する。また、第1圧力室77にインクが流入されることにより、弁体72を押し下げる力が弁体72を押し上げる力よりも小さくなると、弁体72は、封止位置に向かって変位する。なお、図2(A)の例では、弁体72は、開放位置に位置している。シール部材75は、弁体72の上面に配置されており、弁体72が封止位置に配置された際にインクがバルブ室70から第1圧力室77に流通しないように封止する。支持ロッド74は、バルブ室70と第1圧力室77とに亘って配置されており、一端が弁体72と接合され、他端が第1圧力室77の隔壁部88bと接合されている。
【0034】
脱泡室92は、内部流路79から流入したインクを一時的に貯留して気泡を捕捉するために用いられる。この脱泡室92は、内部にフィルタ93を備えている。脱泡室92は、フィルタ93よりも上部側において内部流路79と連通している。また、脱泡室92は、インク吐出流路95とも連通している。フィルタ93は、インク供給路内に混入した気泡を通過させ難くして、脱泡室92の天井部において気泡を捕捉(トラップ)させる機能を有する。
【0035】
減圧室80は、脱泡室92との間の圧力の差を利用して、脱泡室92において捕捉されたインクから気泡を取り除くために用いられる。この減圧室80は、脱泡室92の上方に配置されており、気体透過性を有する隔壁部90を介して脱泡室92と隣接している。
【0036】
第2圧力室89は、減圧用ポンプ300から供給される負圧を減圧室80に供給するために用いられる。この第2圧力室89は、減圧室80の上方に配置されており、負圧供給路358を介してチューブt5と連通している。また、第2圧力室89は、連通孔86を介して減圧室80と連通している。第2圧力室89は、天井部分である隔壁部88aを挟んで大気室87に隣接している。なお、隔壁部88aは、前述の隔壁部88bと同じ構成を有している。ただし、隔壁部88aと隔壁部88bとは、互いに接しておらず、それぞれ独立して変位することができる。
【0037】
第2調圧バルブ81は、第2圧力室89と減圧室80とに亘って配置されており、第2圧力室89から減圧室80への負圧の供給を制御するために用いられる。この第2調圧バルブ81は、前述の第1調圧バルブ71と同様な構成を有している。すなわち、第2調圧バルブ81は、弁体82と、圧力調整バネ83と、シール部材85と、支持ロッド84とを備えている。弁体82は、第2圧力室89と減圧室80とを連通状態とする開放位置と、非連通状態とする封止位置との間で変位可能であり、圧力調整バネ83により封止位置側に付勢されている。図2(A)の例では、弁体82は、開放位置に配置されている。シール部材85は、弁体82が封止位置に配置された際に、連通孔86を封止して減圧室80内の負圧を維持する。支持ロッド84は、一端が弁体82と接合されており、他端が隔壁部88aと接合されている。
【0038】
記録ヘッド150は、キャリッジ100の底面に配置されており、記録用紙P(図1)に向けてインクを噴射する。この記録ヘッド150は、ノズルプレート152と、インク吐出流路154とを備えている。インク吐出流路154は、キャリッジ100のインク吐出流路95と連通しており、脱泡室92から供給されたインクをノズルプレート152へと導く。ノズルプレート152は、多数のノズル(図示省略)を備えている。
【0039】
なお、前述のプリンタ500は、請求項における液体噴射装置に相当する。
【0040】
A2.キャリッジ100におけるインク供給動作:
図2(A)に示すノズルプレート152に設けられた多数のノズル(図示省略)からインクが噴射されてインクが消費されると、第1圧力室77の圧力がインクの減量により低下する。すると、第1圧力室77の圧力は大気室87の圧力(大気圧)よりも低くなり、この圧力差によって隔壁部88bが第1圧力室77の内側に撓んで下方に変位する。このとき、弁体72は、支持ロッド74を介して押し下げられる。そして、圧力調整バネ73の付勢力に打ち勝って弁体72が開放位置に位置すると、インク流入口76が開放されてインクが第1圧力室77に流入する。
【0041】
図2(B)は、開放されたインク流入口76から第1圧力室77にインクが流入した後におけるキャリッジ100及び記録ヘッド150の状態を示す断面図である。第1圧力室77にインクが流入してその室圧が高まると、隔壁部88bは上方に変位する。これに伴って弁体72が再び封止位置に移動すると、第1圧力室77へのインクの流入は停止し、記録ヘッド150へのインクの供給が停止する。このように、プリンタ500では、インクの消費に応じて第1調圧バルブ71が開閉動作することで、消費した分量のインクが記録ヘッド150に適宜流入するように構成されている。
【0042】
A3.脱泡動作:
減圧用ポンプ300(図1)によって発生した負圧は、チューブt5及び負圧供給路358(図2(A))を介して第2圧力室89に供給される。このとき、第2圧力室89の圧力(負圧)と大気室87の圧力(大気圧)との圧力差によって隔壁部88aが第2圧力室89の内側に撓んで下方に変位する。弁体82は、支持ロッド84を介して押し下げられる。そして、弁体82が開放位置に位置すると、連通孔86が開放されて負圧が減圧室80に供給される。すると、脱泡室92の圧力が脱泡室92の圧力よりも低くなり、脱泡室92の天井部分にトラップされた気泡(ガス)BLは、減圧室80と脱泡室92との間の圧力差によって隔壁部90を透過して減圧室80に流入する。
【0043】
A4.隔壁プレートの詳細構成:
図3は、キャリッジ100の詳細構成を示す斜視図である。なお、図3では、図示の便宜上、ブラックインクの供給に関わる構成のみを示している。上述した構成(機能)を有するキャリッジ100は、複数の薄板部材(以下、「プレート」と呼ぶ)が鉛直方向(Y軸)に積層された構成を有する。これらの複数のプレートにおいて、積層方向と垂直な面(積層面:X−Z平面)の形状は、いずれも同じ大きさの矩形である。図3の例では、積層された複数のプレートのうち隔壁プレート10を示しており、他のプレートについては省略している。
【0044】
隔壁プレート10は、隔壁部90と、流路形成部52と、流路形成部66とを備えている。流路形成部52は、隔壁プレート10の裏面(積層面のうち下方の面)に形成された溝であり、隔壁プレート10と、裏面において当接するプレート(図示省略)とが積層された際に、内部流路79の一部を構成する流路79aを形成する。なお、流路形成部52(溝)の一端は隔壁部90と接続され、他端は隔壁プレート10を貫通する貫通孔51と接続されている。流路形成部66は、隔壁プレート10の表面に形成された溝であり、隔壁プレート10と、表面(積層面のうち上方の面)において当接するプレート(図示省略)とが積層された際に、内部流路62を形成する。なお、流路形成部66の一端は隔壁プレート10の裏面に設けられた流通孔65と接続されている。
【0045】
図4は、図3に示す隔壁プレート10の詳細構成を示す平面図である。図4では、隔壁プレート10を図3において裏面から見た構成を示している。なお、図4では、図3とは異なり、全ての色のインクの供給に関わる構成を示している。
【0046】
隔壁プレート10は、シアンインクの供給に関わる構成として、上述したブラックインクと同じ構成を備えている。具体的には、ブラックインク用の隔壁部90の左隣りに、シアンインク用の隔壁部90cを備えている。また、隔壁プレート10は、ブラックインク用の流路形成部52の左隣りにシアンインク用の流路形成部52cを、ブラックインク用の流路形成部66の左隣りにシアンインク用の流路形成部66cを、それぞれ備えている。なお、隔壁部90cの構成は、隔壁部90と同じである。また、流路形成部52cの構成は流路形成部52と同様であり、流路形成部66cの構成は流路形成部66と同じである。同様にして、隔壁プレート10は、マゼンダインクの供給に関わる構成(隔壁部90m及び流路形成部52m,66m)を、上述したシアンインクの供給に関わる構成の左隣に有し、イエローインクの供給に関わる構成(隔壁部90y及び流路形成部52y,66y)を、マゼンダインクの供給に関わる構成の左隣りに有する。
【0047】
隔壁プレート10の四隅には、他のプレート(図示省略)と積層して締結する際に用いられる貫通孔11a,11b,11c,11dが配置されている。
【0048】
ここで、4つの隔壁部90,90c,90m,90yは、いずれも同じリブ形状を有している。具体的には、隔壁部90は、X軸と平行な方向に延びる筋状の凹部21と、X軸と平行な方向に延びる筋状の凸部22とが、Z軸に沿って交互に配置された平面形状を有している。なお、隔壁部90には、流路形成部52からインクが流入するので、凹部21及び凸部22は、インクの流入方向に沿った方向に延びている。
【0049】
図5は、図4におけるA−A断面を示す断面図である。なお、図5では、説明の便宜上、隔壁部90の上方において隣接する減圧室80と、隔壁部90の下方において隣接する脱泡室92とを破線で示している。
【0050】
隔壁部90において、脱泡室92に面した壁は凹凸形状であるのに対し、減圧室80に面した壁は平坦である。したがって、凹部21は、凸部22に比べてY方向の厚みが小さく構成されている。具体的には、例えば、凹部21のY方向の厚みを0.3mmとし、凸部22の厚みを0.5mmとすることができる。
【0051】
なお、前述の隔壁プレート10は、請求項における単一部材に相当する。また、隔壁部90において脱泡室92に面した壁は請求項における第1の壁に、隔壁部90において減圧室80に面した壁は請求項における第2の壁に、隔壁部90におけるリブ形状は請求項における補強用形状に、それぞれ相当する。
【0052】
A5.キャリッジ100の製造処理:
図6は、キャリッジ100の製造処理の手順を示すフローチャートである。上述したキャリッジ100を製造する際には、まず、キャリッジ100を構成する各プレート用の金型を製作する(ステップS105)。次に、隔壁プレート10用の金型において、隔壁部90の有するリブ形状の長手方向に沿って成型材を流し込んで隔壁プレート10を成型する(ステップS110)。
【0053】
図4の例では、隔壁プレート10の四辺L1〜L4のうち、隔壁プレート10の上辺L1(流通孔65,65c,65m,65yに近いZ軸と平行な辺)の中央をゲート位置Gt1として成型材を流入している。このため、ゲート位置Gt1から流入した成型材は、隔壁プレート10の下辺L2に向かって流れていく。ここで、隔壁部90は、凹部21及び凸部22がX方向に沿って延びたリブ形状であるので、金型内において成型材の流れる方向(上辺L1から下辺L2に向かう方向(+X方向))は、このリブ形状の長手方向に沿った方向となっている。なお、成型材としては、隔壁部90における気体透過性を確保するために、例えば、ポリアセタールやポリプロピレンやポリフェニレンエーテル等を用いることができる。
【0054】
隔壁プレート10を成型した後には、他のプレートについても同様に、金型に成型材を流入して成型する(ステップS115)。次に、成型した各プレートを積層して接合する(ステップS120)。
【0055】
以上説明したように、キャリッジ100では、隔壁部90が有する凹部21は薄く構成されているので、インク中の気泡の脱泡能力を向上させることができる。また、隔壁部90において脱泡室92に面した壁は凹凸形状であるため、隔壁部90の厚みが全て凹部21と同じ厚みとなっている構成に比べて強度を高めることができると共に、気泡との接触面積を大きくして多量の気泡を捕捉することができる。このように隔壁部90の強度を高めることができるので、隔壁部90を他の構成要素(流路形成部52,66)と同じプレートとして一体形成することができ、キャリッジ100の部品点数を減らすことができる。また、多量の気泡を捕捉することができるので、脱泡室92及び減圧室80を小型化することができる。また、隔壁プレート10の成型時に、隔壁部90におけるリブ形状の長手方向に沿った方向に成型材を流し込むので、金型内部における成型材の流通性を高めることができる。したがって、ゲート位置Gt1から遠い部分(例えば、隔壁プレート10の下辺L2(図4)付近部分)についても、隔壁部90,90c,90m,90yを通って成型材が届くので、成型材が充填されず隔壁部90に穴が開いてしまうことを抑制することができる。また、隔壁部90,90c,90m,90yにおけるリブ形状(凹部21及び凸部22)は、インクの流入方向に沿った方向に延びて形成されている。したがって、インク噴射後に予備吐出(印刷時とは別にインクを噴射してインク供給路内の気泡をノズル(図示省略)から排出する動作)を行う場合において、脱泡室92の天井部分に捕捉した気泡BLを、インクの流れによってリブ形状に沿って移動させ、インク吐出流路95から排出し易くすることができる。
【0056】
B.第2の実施例:
図7は、第2の実施例における隔壁プレート10aの詳細構成を示す平面図である。第2の実施例における脱泡機構としてのキャリッジは、隔壁プレート10aにおける隔壁部の構成においてキャリッジ100(図1〜6)と異なり、他の構成及びキャリッジの製造処理の手順は、第1の実施例と同じである。
【0057】
具体的には、第1の実施例におけるブラックインク用の隔壁部90は、リブ形状の長手方向が縦方向(X軸と平行な方向)であったのに対し、第2の実施例におけるブラックインク用の隔壁部91は、リブ形状の長手方向が横方向(Z軸と平行な方向)である。かかる構成では、流路形成部52から隔壁部91に流入するインクの流入方向(−X方向)と、隔壁部91のリブ形状の長手方向とは、交わることとなる。なお、他色のインク用の隔壁部91c,91m,91yも同じ構成を有している。
【0058】
ここで、第2の実施例における成型材のゲート位置Gt2は、第1の実施例におけるゲート位置Gt1とは異なり、隔壁プレート10aの右辺L3の中央となっている。この場合、第1の実施例と同様に、成型材の流れる方向(右辺L3から左辺L4に向かう方向(+Z方向))は、隔壁部91,91c,91m,91yにおけるリブ形状の長手方向に沿った方向となっている。
【0059】
このような構成を有する第2の実施例におけるキャリッジは、第1の実施例のキャリッジ100と同様な効果を有する。また、隔壁部91,91c,91m,91yにおけるリブ形状は、インクの流入方向と交わる方向に延びて形成されている。したがって、脱泡室92にインクが流入したときにも、隔壁部91,91c,91m,91yにおいて気泡を捕捉した状態を維持することができ、記録ヘッド150に気泡が流入することを抑制することができる。
【0060】
C.第3の実施例:
図8は、第3の実施例における隔壁部の断面形状を示す説明図である。第3の実施例における脱泡機構としてのキャリッジは、隔壁プレートにおける隔壁部の構成においてキャリッジ100(図1〜6)と異なり、他の構成及びキャリッジの製造処理の手順は、第1の実施例と同じである。
【0061】
具体的には、第1の実施例におけるブラックインク用の隔壁部90は、互いに厚みが異なる凹部21と凸部22とが交互に配置されたリブ形状の断面を有していたが、第2の実施例におけるブラックインク用の隔壁部90aは、図8に示すように、厚みが一定の凹部と凸部とが繰り返す波型形状の断面を有している。隔壁部90aの厚みとしては、第1の実施例における隔壁部90の有する凹部21の厚み(例えば0.3mm)と同じとすることができる。なお、第2の実施例における隔壁プレートの平面図は、第1の実施例における隔壁プレート10aの平面図(図4)と同じである。すなわち、X軸に沿った方向に延びた筋状の平面形状を有している。なお、他色のインク用の隔壁部(図示省略)も同じ構成を有している。なお、上述した波型形状は、請求項における補強用形状に相当する。
【0062】
このような構成を有する第3の実施例におけるキャリッジは、第1の実施例のキャリッジ100と同様な効果を有する。また、隔壁部90aの厚みはいずれの位置においても薄く構成することができるので、高い脱泡能力を実現できる。
【0063】
D.第4の実施例:
図9は、第4の実施例における隔壁プレート10bの詳細構成を示す平面図である。第4の実施例における脱泡機構としてのキャリッジは、隔壁プレート10bにおける隔壁部の構成においてキャリッジ100(図1〜6)と異なり、他の構成及びキャリッジの製造処理の手順は、第1の実施例と同じである。
【0064】
具体的には、第1の実施例におけるブラックインク用の隔壁部90の形状はリブ形状であったのに対し、第4の実施例におけるブラックインク用の隔壁部94は、薄肉部23を基礎として、薄い円柱状の厚肉部24が所定の間隔で並んで配置されたドット形状を有している。なお、他色のインク用の隔壁部94c,94m,94yも同じ構成を有している。
【0065】
図10は、図9におけるB−B断面を示す断面図である。なお、図5と同様に、隔壁部94の上方において隣接する減圧室80と、隔壁部94の下方において隣接する脱泡室92とを破線で示している。
【0066】
第4の実施例における隔壁部94の断面も、第1の実施例における隔壁部90の断面と同様の形状を有している。すなわち、脱泡室92に面した壁は凹凸形状であるのに対し、減圧室80に面した壁は平坦であり、薄肉部23は厚肉部24に比べて厚みが小さい。なお、薄肉部23及び厚肉部24の厚みは、第1の実施例における凹部21及び凸部22の厚みと同様に、例えば、0.3mm及び0.5mmとすることができる。なお、上述したドット形状は、請求項における補強用形状に相当する。
【0067】
このような構成を有する第4の実施例におけるキャリッジは、第1の実施例と同様な効果を有する。
【0068】
E.第5の実施例:
図11(A)は、第5の実施例におけるキャリッジ100a及び記録ヘッド150の機能を模式的に示す説明図である。なお、図11(A)では、図2(B)と同様に、第1圧力室77にインクが流入した後におけるキャリッジ100a及び記録ヘッド150の状態を示している。第5の実施例における脱泡機構としてのキャリッジ100aは、以下の4点においてキャリッジ100(図1〜6)と異なり、他の構成及びキャリッジの製造処理の手順は第1の実施例と同じである。すなわち、キャリッジ100aが第2圧力室89と、隔壁部88aと、第2調圧バルブ81と、隔壁部90とを備えていない点、内部流路64の途中に脱泡部64aを有する点、減圧室80に代えて減圧室80aを備えている点、及び負圧供給路358が減圧室80aに接続されている点が相違点である。
【0069】
第1の実施例では、脱泡を行うために気泡を捕捉するための部分(脱泡室92)は、減圧室80と隣接して配置されていたが、第5の実施例では、かかる部分(脱泡部64a)は、減圧室80a内に配置されている。なお、第5の実施例においては、脱泡室92は、気泡を捕捉するために用いられず、インクを一時的に貯留するために用いられる。
【0070】
図11(B)は、図11(A)に示す脱泡部64a及び減圧室80aの詳細構成を示す断面図である。脱泡部64aは、減圧室80a内に配置されており、流通するインク中の気泡を捕捉するために用いられる。この脱泡部64aは中空のチューブ状であり、脱泡部64aと連通している。したがって、この脱泡部64aの内部をインクが流通することとなる。脱泡部64aの断面形状は、第3の実施例と同様に、凹部25と凸部26とが交互に配置された波型形状(凹凸形状)を有している。凹部25及び凸部26はいずれも厚みが一定であり、気体透過性を有する部材により構成されている。
【0071】
図11(B)の例では、流通するインク中の気泡BLが、凸部26に捕捉されている。減圧室80aに負圧供給路358を介して負圧が供給されると、この気泡BLは、凸部26の壁面を介して減圧室80aに流入する。なお、脱泡部64aは、請求項における脱泡部に相当する。また、凹部25と凸部26とが交互に配置された波型形状は、請求項における補強用形状に相当する。
【0072】
このような構成を有する第5の実施例のキャリッジ100aは、第1の実施例と同様な効果を有する。また、内部流路64の途中に脱泡部64aを設けているので、脱泡室92を小型化することができる。また、インク供給用ポンプ220a〜220dによって加圧してインクが供給される構成においては、脱泡部64aを加圧されたインクが流通するので、脱泡部64a内の圧力と減圧室80a内の圧力との差が生じ易くなる。したがって、短時間のうちに多量の気泡を除去することができる、或いは、減圧用ポンプ300として比較的小型のポンプを用いることができる。
【0073】
F.第6の実施例:
図12(A)は、第6の実施例におけるキャリッジ100b及び記録ヘッド150の機能を模式的に示す説明図である。なお、図12(A)では、図2(B)と同様に、第1圧力室77にインクが流入した後におけるキャリッジ100b及び記録ヘッド150の状態を示している。第6の実施例における脱泡機構としてのキャリッジ100bは、第2圧力室89と第2調圧バルブ81と減圧室80とに代えて、減圧管140を備えている点においてキャリッジ100(図1〜6)と異なり、他の構成及びキャリッジの製造処理の手順は第1の実施例と同じである。
【0074】
第1の実施例では、減圧される部屋(減圧室80)は、脱泡室92と隣接して配置されていたが、第6の実施例では、かかる部屋(減圧管140)は、脱泡室92内に配置されている。
【0075】
図12(B)は、図12(A)に示す減圧管140及び脱泡室92の詳細構成を示す断面図である。減圧管140は、脱泡室92内においてフィルタ93よりも上方に配置されている。なお、減圧管140の機能は、第1の実施例の減圧室80と同じである。この減圧管140は、円筒形状を有しており、負圧供給路358を介してチューブt5と接続されている。減圧管140の壁は気体透過性を有する。また、この減圧管140の内壁は平坦であり、外壁は凹凸形状である。したがって、減圧管140の壁の断面は、第1の実施例と同様にリブ形状となっている。具体的には、減圧管140の外壁は、円周方向に延びた厚肉部27と薄肉部28とが、交互に配置された形状を有している。したがって、減圧管140の断面は、第1の実施例と同様にリブ形状であり、薄肉部28は厚肉部27に比べて厚みが小さく構成されている。なお、薄肉部28及び厚肉部27の厚みは、第1の実施例における凹部21及び凸部22の厚みと同様とすることができる。なお、減圧管140は、請求項における減圧室に相当する。また、減圧管140の外壁における凹凸形状は、請求項における補強用形状に相当する。
【0076】
このような構成を有する第6の実施例のキャリッジ100bは、第1の実施例と同様な効果を有する。また、減圧管140が脱泡室92の内部に配置されるので、減圧室80や大気室87が不要となり、キャリッジ100bを小型化することができる。
【0077】
G.変形例:
なお、上記各実施例における構成要素の中の、独立クレームでクレームされた要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0078】
G1.変形例1:
上述した第1の実施例では、減圧室80と脱泡室92との間は、隔壁部90として、一体形成されていたが、これに代えて、減圧室80の底面と脱泡室92の天井面とをそれぞれ気体透過性を有する別体の壁として形成し、複数のプレートを積層した際に互いに接するように構成することもできる。このような構成であっても、減圧室80の底面と脱泡室92の天井面とのうち、いずれかの面の形状をリブ形状とすることで、減圧室80と脱泡室92との間の強度を高めることができる。なお、第2〜4の実施例においても同様な構成とすることができる。すなわち、一般には、気体透過性を有し減圧室80において脱泡室92に接する壁と、気体透過性を有し脱泡室92において減圧室80に接する壁とのうち、少なくとも一方はリブ形状である任意の構成を、本発明の脱泡機構に採用することができる。
【0079】
なお、このように、減圧室80の底面と脱泡室92の天井面とをそれぞれ気体透過性を有する別体の壁として形成する場合には、キャリッジの製造処理の手順は、例えば、以下のようにすることができる。すなわち、脱泡室92の部材用の金型及び減圧室80の部材用の金型を用意し、それぞれの金型を用いて脱泡室92の部材及び減圧室80の部材を形成する。このとき、成型材として、減圧室80の底面及び脱泡室92の天井面が気体透過性を有するような成型材を用いる。また、減圧室80の底面又は脱泡室92の天井面のうち、少なくとも一方がリブ形状となるような金型を用いる。また、金型において、リブ形状の長手方向に沿った方向に成型材を流し込む。次に、減圧室80の底面と脱泡室92の天井面とを介して減圧室80と脱泡室92とが接するように、減圧室80の部材と脱泡室92の部材とを接合する。
【0080】
G2.変形例2:
上述した第4の実施例では、厚肉部24は、薄い円柱状であったが、これに代えて、薄い四角柱状とすることもできる。また、この厚肉部24は、所定の間隔で並んで配置されていたが、これに代えて、ランダムに配置することもできる。また、厚肉部24を基礎として、薄肉部23が所定の間隔で並んで配置、或いは、ランダムに配置された形状とすることもできる。すなわち、一般には、厚肉部又は薄肉部が散在するドット形状を、本発明の脱泡機構における隔壁部の形状として採用することができる。
【0081】
また、上述した第3の実施例において、隔壁部90aの断面における波型形状を形成する凹部及び凸部は、それぞれ90度に屈曲した形状であったが、これに代えて、鋭角部分のないR形状とすることもできる。
【0082】
また、上述した第1〜4の実施例では、隔壁部の形状は、リブ形状(第1,2の実施例),波型形状(第3の実施例),ドット形状(第4の実施例)であった。本発明は、これらの形状に限定されるものではなく、強度を高めることができる任意の形状を本発明の脱泡機構における隔壁部に採用することができる。例えば、薄肉部を基礎として格子状の厚肉部が配置された形状とすることもできる。また、これらの形状を組み合わせた形状とすることもできる。具体的には、隔壁部の上半分をリブ形状とし、下半分をドット形状とすることもできる。すなわち、一般には、任意の補強用形状を、本発明における隔壁部の形状として採用することができる。
【0083】
G3.変形例3:
上述した第3の実施例では、隔壁部90aの平面形状は、第1の実施例と同じであったが、これに代えて、第2の実施例と同様に、長手方向が横方向(Z軸と平行な方向)となるような形状とすることもできる。また、上述した第2の実施例では、隔壁部91,91c,91m,91yにおけるリブ形状の長手方向(Z軸と平行な方向)は、インクの流入方向(X軸と平行な方向)と垂直に交わる方向であったが、これに代えて、インクの流入方向と任意の角度で交わる方向とすることもできる。すなわち、一般には、隔壁部の形状の長手方向と脱泡室における液体の流入方向とが任意の角度で交わる構成を、本発明の脱泡機構に採用することができる。
【0084】
G4.変形例4:
上述した第1の実施例では、隔壁プレート10を成型する際(図6:ステップS110)に、成型材のゲート位置は、隔壁プレート10の上辺L1(図4)の中央であったが、これに代えて、上辺L1上の他の位置とすることもできる。この場合であっても、成型材の流れる方向は、ほぼ+X方向となり、隔壁部90,90c,90m,90yにおけるリブ形状の長手方向に沿った方向とすることができる。また、上辺L1に代えて、他の辺L2〜L4にゲート位置を設けることもできる。なお、右辺L3又は左辺L4にゲート位置を設けた場合、右辺L3又は左辺L4の上方(例えば、流通孔65,65yと同じ高さの位置)から形成部材を流入することで、金型内において隔壁部90,90c,90m,90yに対応する部分に成型材が流れる際の流れ方向を、ほぼ+X方向とすることができる。
【0085】
G5.変形例5:
上述した第5の実施例では、脱泡室92に隣接して減圧室を設けない構成であったが、これに代えて、第1の実施例と同様に、隔壁部90を介して脱泡室92に隣接する減圧室80を設ける構成とすることもできる。このようにすることで、脱泡室92において捕捉された気泡を取り除くことができるので、脱泡部64aにおいてのみ脱泡を行う構成に比べて、より多量の気泡を取り除くことができる。なお、第6の実施例においても同様に、脱泡室92に隣接した減圧室を設ける構成とすることもできる。
【0086】
G6.変形例6:
上述した各実施例では、プリンタ500が吐出するインクの種類は4色であったが、これに代えて任意の種類のインクを吐出する構成とすることができる。また、各実施例のプリンタはオフキャリッジタイプのプリンタであったが、これに代えて、インクカートリッジをキャリッジに搭載するいわゆるオンキャリッジタイプのプリンタを採用することもできる。
【0087】
G7.変形例7:
上述した各実施例では、脱泡機構としてキャリッジ100,100a,100bに適用した例を示したが、これに代えて、キャリッジとは別に脱泡機構を構成することもできる。例えば、各実施例において、チューブt11〜t14の途中において脱泡室及び減圧室を設けて脱泡機構を構成することもできる。このような構成においても、気体透過性を有し脱泡室において減圧室と接する壁と、気体透過性を有し減圧室において脱泡室と接する壁とのうち少なくとも一方を補強用形状とすることで、脱泡機構の強度を高めることができる。
【0088】
G8.変形例8:
上述した第5の実施例では、脱泡部64aの断面は、凹部25と凸部26とが交互に配置された波型形状を有していたが、これに代えて、第1,2実施例のようにリブ形状や、第4の実施例のようにドット形状とすることもできる。また、第6の実施例では、減圧管140の壁の断面はリブ形状であったが、これに代えて、第3の実施例のように波型形状とすることもできる。
【0089】
G9.変形例9:
上述した各実施例では、インクジェット式プリンタについて説明したが、本発明は、これに限らず、インク以外の他の液体を噴射する任意の液体噴射装置に適用することができる。例えば、ファクシミリ装置等の画像記録装置や、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッドや、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレーや、面発光ディスプレー (Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材噴射装置や、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を噴射する液体噴射装置や、精密ピペットとしての試料噴射装置や、潤滑油の噴射装置や、樹脂液の噴射装置等にも適用できる。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用しても良い。そして、これら微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置のうちいずれか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【0090】
なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれば良い。例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の脱泡機構としてのキャリッジ100を備えたプリンタ500の概略構成を示す説明図である。
【図2】インク噴射時のキャリッジ100及び記録ヘッド150の状態を示す説明図及び開放されたインク流入口76から第1圧力室77にインクが流入した後におけるキャリッジ100及び記録ヘッド150の状態を示す断面図である。
【図3】キャリッジ100の詳細構成を示す斜視図である。
【図4】図3に示す隔壁プレート10の詳細構成を示す平面図である。
【図5】図4におけるA−A断面を示す断面図である。
【図6】キャリッジ100の製造処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】第2の実施例における隔壁プレート10aの詳細構成を示す平面図である。
【図8】第3の実施例における隔壁部の断面形状を示す説明図である。
【図9】第4の実施例における隔壁プレート10bの詳細構成を示す平面図である。
【図10】図9におけるB−B断面を示す断面図である。
【図11】第5の実施例におけるキャリッジ100a及び記録ヘッド150の機能を模式的に示す説明図及び脱泡部64aと減圧室80aとの詳細構成を示す断面図である。
【図12】第6の実施例におけるキャリッジ100b及び記録ヘッド150の機能を模式的に示す説明図及び減圧管140と脱泡室92との詳細構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0092】
500…プリンタ、IC1〜IC4…インクカートリッジ、t1〜t5,t11〜t14…チューブ、100,100a,100b…キャリッジ、150…記録ヘッド、220a〜220d…インク供給用ポンプ、260…ガイドロッド、270…プラテン、300…減圧用ポンプ、P…記録用紙、10,10a,10b…隔壁プレート、11a…貫通孔、21…凹部、22…凸部、23…薄肉部、24…厚肉部、25…凹部、26…凸部、27…厚肉部、28…薄肉部、51…貫通孔、52…流路形成部、52c…流路形成部、60…フィルタ室、61…フィルタ、62…内部流路、64…内部流路、64a…脱泡部、65…流通孔、66…流路形成部、66c…流路形成部、66m…流路形成部、66y…流路形成部、70…バルブ室、71…第1調圧バルブ、72…弁体、73…圧力調整バネ、74…支持ロッド、75…シール部材、76…インク流入口、77…第1圧力室、79…内部流路、79a…流路、80…減圧室、80a…減圧室、81…第2調圧バルブ、81…気圧バルブ、82…弁体、83…圧力調整バネ、84…支持ロッド、85…シール部材、86…連通孔、87…大気室、88a…隔壁部、88b…隔壁部、89…第2圧力室、90,90a,91a〜91y,94a〜94y…隔壁部、92…脱泡室、93…フィルタ、95…インク吐出流路、99…大気連通孔、140…減圧管、152…ノズルプレート、154…インク吐出流路、358…負圧供給路、L1…上辺、L2…下辺、L3…右辺、L4…左辺、BL…気泡、Gt1,Gt2…ゲート位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置内の液体供給路において液体から気泡を除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式プリンタでは、インクカートリッジ等のインク供給部から記録ヘッドまでのインク供給路においてインク中に気泡が発生すると、ドット抜けなどの印刷不良を招くことがある。そのため、インクから気泡を取り除くこと(脱泡)が求められる。この脱泡を行う機構として、インクを一時的に溜めて気泡を捕捉する部屋(脱泡室)と減圧室とを気体透過性を有する隔壁を介して隣接させ、減圧室の圧力を脱泡室の圧力よりも低くして脱泡室において捕捉した気泡を取り除く機構が提案されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−95878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
脱泡機構において、脱泡室と減圧室との間の隔壁が薄いほど気泡を除去し易くなり脱泡能力が向上する。しかしながら、この隔壁を薄くすると、減圧/昇圧の繰り返しの使用に耐え得る十分な強度を得ることができないという問題があった。なお、かかる問題は、インクジェット式プリンタに限らず、潤滑油や樹脂液等の液体を噴射する任意の液体噴射装置において起こり得る。
【0005】
本発明は、脱泡機構の強度を高めつつ、脱泡能力を向上させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]液体噴射装置内を流通する液体から気泡を取り除くための脱泡機構であって、気体透過性を有する第1の壁を有し、前記液体中の気泡を捕捉するための脱泡室と、気体透過性を有する第2の壁を有し、前記第2の壁と前記第1の壁とを介して前記脱泡室と接する減圧室と、を備え、前記第1の壁と、前記第2の壁と、のうち少なくとも一方は補強用形状を有する、脱泡機構。
【0008】
適用例1の脱泡機構は、脱泡室において減圧室と接する第1の壁と、減圧室において脱泡室と接する第2の壁と、のうち少なくとも一方は補強用形状を有するので、脱泡機構の強度を高めることができると共に、第1の壁及び第2の壁を薄くして脱泡能力を向上させることができる。
【0009】
[適用例2]適用例1に記載の脱泡機構において、前記補強用形状は、厚肉部と薄肉部とが交互に配置された断面を有するリブ形状と、断面が波型であって平面が筋状の波型形状と、厚肉部又は薄肉部が散在するドット形状と、のうちいずれかである、脱泡機構。
【0010】
このようにすることで、脱泡室と減圧室との間の強度を高めることができ、また、脱泡室と減圧室との間の少なくとも一部において、厚みを小さくすることができる。また、第1の壁又は第2の壁の表面積を大きくすることができ、脱泡能力を向上させることができる。
【0011】
[適用例3]適用例2に記載の脱泡機構において、前記第1の壁と前記第2の壁とは単一部材として形成されている、脱泡機構。
【0012】
このようにすることで、脱泡機構における部品点数を減らすことができ、脱泡機構の製造コストを抑えることができる。
【0013】
[適用例4]適用例2または適用例3に記載の脱泡機構において、前記第1の壁は前記補強用形状を有し、前記補強用形状は、前記リブ形状又は前記波型形状であり、前記リブ形状の長手方向又は前記波型形状の筋方向と、前記脱泡室における前記液体の流入方向と、は互いに交差する、脱泡機構。
【0014】
このようにすることで、第1の壁において液体との接触面積を大きくすることができ、多量の気泡を第1の壁に捕捉することができる。また、脱泡室に液体が流入したときにも、第1の壁において気泡を捕捉した状態を維持することができ、脱泡室よりも下流側に気泡が流れてしまうことを抑制することができる。
【0015】
[適用例5]適用例3に記載の脱泡機構において、前記単一部材の平面形状は矩形であり、前記補強用形状は、前記リブ形状又は前記波型形状であり、前記リブ形状の長手方向又は前記波型形状の筋方向と、前記矩形において前記単一部材を成型する際の成型材の流入位置を有する辺から対向する辺に向かう方向と、は互いに平行である、脱泡機構。
【0016】
このようにすることで、成型用金型の第1の壁及び第2の壁に対応する部分における成型材の流れる方向を、リブ形状の長手方向又は波型形状の筋方向と平行とすることができる。したがって、成型用金型の内部における成型材の流通性を高めることができ、成型材が充填されずに、単一部材に穴が開いてしまうことを抑制することができる。
【0017】
[適用例6]液体噴射装置内を流通する液体から気泡を取り除くための脱泡機構であって、前記液体中の気泡を捕捉するための脱泡部と、前記脱泡部を囲んで配置された減圧室と、を備え、前記脱泡部は、気体透過性を有する壁を有し、前記壁は補強用形状を有する、脱泡機構。
【0018】
適用例6の脱泡機構は、脱泡部の壁が補強用形状を有するので、脱泡機構の強度を高めることができると共に、脱泡室の壁を薄くして脱泡能力を向上させることができる。
【0019】
[適用例7]液体噴射装置内を流通する液体から気泡を取り除くための脱泡機構であって、前記液体中の気泡を捕捉するための脱泡室と、前記脱泡室内に配置された減圧室と、を備え、前記減圧室は、気体透過性を有する壁を有し、前記壁は補強用形状を有する、脱泡機構。
【0020】
適用例7の脱泡機構は、減圧室の壁が補強用形状を有するので、脱泡機構の強度を高めることができると共に、減圧室の壁を薄く構成して脱泡能力を向上させることができる。
【0021】
[適用例8]適用例1ないし適用例7のいずれか一例に記載の脱泡機構を備える、液体噴射装置。
【0022】
このようにすることで、液体噴射装置内を流通する液体から多量の気泡を取り除くことができると共に、脱泡機構の強度を高めことができるので、液体噴射装置としての故障頻度を低く抑えることができる。
【0023】
[適用例9]液体噴射装置内を流通する液体から気泡を取り除くための脱泡機構の製造方法であって、(a)気体透過性を有する第1の壁を有し、前記液体中の気泡を捕捉するための脱泡室の部材を形成する工程と、(b)気体透過性を有する第2の壁を有する減圧室の部材を形成する工程と、(c)前記第1の壁と前記第2の壁とを介して、前記脱泡室と前記減圧室とが接するように、前記脱泡室の部材と前記減圧室の部材とを接合する工程と、を備え、前記工程(a)と前記工程(b)とのうち少なくとも一方は、(d)前記第1の壁又は前記第2の壁を、厚肉部と薄肉部とが交互に配置された断面を有するリブ形状、又は、断面が波型であって平面が筋状の波型形状にする工程を含み、前記工程(d)は、(e)前記脱泡室の部材用金型又は前記減圧室の部材用金型において、前記リブ形状の長手方向又は前記波型形状の筋方向に沿って、成型材を流して前記脱泡室の部材又は前記減圧室の部材を成型する工程を含む、脱泡機構製造方法。
【0024】
適用例9の脱泡機構製造方法では、脱泡室の部材用の金型又は減圧室の部材用金型において、リブ形状の長手方向又は波型形状の筋方向に沿って成型材を流すので、金型の内部における成型材の流通性を高めることができ、成型材が充填されずに、第1の壁又は第2の壁に穴が開いてしまうことを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
A.第1の実施例:
A1.装置構成:
図1は、本発明の脱泡機構としてのキャリッジ100を備えたプリンタ500の概略構成を示す説明図である。このプリンタ500は、4色(ブラック,シアン,マゼンダ,イエロー)のインクを吐出可能なインクジェット式プリンタである。プリンタ500は、ブラックインクのインクカートリッジIC1と、シアンインクのインクカートリッジIC2と、マゼンダインクのインクカートリッジIC3と、イエローインクのインクカートリッジIC4と、キャリッジ100と、記録ヘッド150と、ガイドロッド260と、プラテン270と、4つのインク供給用ポンプ220a,220b,220c,220dと、減圧用ポンプ300と、を備えている。
【0026】
プリンタ500は、4つのインクカートリッジIC1〜IC4がプリンタ本体側に装着される、いわゆるオフキャリッジタイプのプリンタである。インクカートリッジIC1は、チューブt1とインク供給用ポンプ220aとチューブt11を介してキャリッジ100に接続されている。同様に、インクカートリッジIC2はチューブt2とインク供給用ポンプ220bとチューブ12とを介して、インクカートリッジIC3はチューブt3とインク供給用ポンプ220cとチューブt13とを介して、インクカートリッジIC4はチューブt4とインク供給用ポンプ220dとチューブ14とを介して、それぞれキャリッジ100に接続されている。減圧用ポンプ300はチューブt5を介してキャリッジ100に接続されている。なお、各インクカートリッジIC1〜IC4は、図示しないカートリッジホルダによってプリンタ500の本体フレーム(図示省略)に装着されている。
【0027】
インク供給用ポンプ220aは、インクカートリッジIC1内のブラックインクをキャリッジ100に供給する。同様に、インク供給用ポンプ220bはインクカートリッジIC2内のシアンインクを、インク供給用ポンプ220cはインクカートリッジIC3内のマゼンダインクを、インク供給用ポンプ220dはインクカートリッジIC4内のイエローインクを、それぞれキャリッジ100に供給する。減圧用ポンプ300は、各色(ブラック,シアン,マゼンダ,イエロー)に共通して用いられる。
【0028】
ガイドロッド260は、プラテン270の上方(+Y方向)においてプラテン270の長手方向(Z軸)に沿って配置されている。キャリッジ100は、ガイドロッド260に沿ってプラテン270の長手方向に移動可能に支持され、キャリッジモータ(図示省略)によりタイミングベルト(図示省略)を介して駆動される。記録ヘッド150は、キャリッジ100の底面に配置され、キャリッジ100の長手方向の往復運動に伴い多数のノズル(図示省略)からインク滴を下方(−Y方向)に吐出する。このとき、図示しない紙送り機構によって記録用紙Pがプラテン270上を+X方向に送られ、記録用紙Pに画像等が形成される。
【0029】
図2(A)は、インク噴射時のキャリッジ100及び記録ヘッド150の状態を示す説明図である。図2(A)では、キャリッジ100の有する機能を模式的に表わしている。なお、図2(A)では、ブラックインクの供給に関わる機能を示しているが、他色のインクの供給に関わる機能についても同様である。
【0030】
キャリッジ100は、フィルタ室60と、大気室87と、第1圧力室77と、第1調圧バルブ71と、脱泡室92と、減圧室80と、第2圧力室89と、第2調圧バルブ81と、インクが流通する3つの内部流路62,64,79と、負圧供給路358とを備えている。
【0031】
フィルタ室60は、内部にフィルタ61を備えており、流入したインクをろ過して不純物を取り除くために用いられる。このフィルタ室60は、内部流路62を介してチューブt11と連通している。また、フィルタ室60は、内部流路64を介して後述するバルブ室70と連通している。大気室87は、大気連通孔99を介して大気と連通している。
【0032】
第1圧力室77は、ブラックインクを一時的に溜めてキャリッジ100内のインク供給路における圧力を調整するために用いられる。この第1圧力室77は、天井部分である隔壁部88bを挟んで大気室87に隣接している。隔壁部88bは、可撓性を有しており上下方向に変位可能である。隔壁部88bとしては、例えば、合成樹脂やゴム等からなるフィルムと、このフィルムと共に変位可能な片持ち(図示省略)の薄板部材とで形成することができる。第1圧力室77は、インク流入口76を備えており、このインク流入口76を介して後述するバルブ室70と連通している。また、第1圧力室77は、内部流路79を介して脱泡室92と連通している。
【0033】
第1調圧バルブ71は、ブラックインクの流通を制御するために用いられる。この第1調圧バルブ71は、バルブ室70と、弁体72と、圧力調整バネ73と、シール部材75と、支持ロッド74とを備えている。バルブ室70は、内部流路64と連通している。弁体72は、バルブ室70内に配置されており、圧力調整バネ73により封止位置側に付勢されている。この弁体72は、第1圧力室77とバルブ室70とを連通状態とする開放位置と、非連通状態とする封止位置との間で変位可能である。具体的には、第1圧力室77からインクが排出されることにより、弁体72を押し下げる力(隔壁部88bによる支持ロッド74の押圧力及び第1圧力室77内の圧力)が、弁体72を押し上げる力(バルブ室70内の圧力及び圧力調整バネ73の付勢力)よりも大きくなると、弁体72は、開放位置に向かって変位する。また、第1圧力室77にインクが流入されることにより、弁体72を押し下げる力が弁体72を押し上げる力よりも小さくなると、弁体72は、封止位置に向かって変位する。なお、図2(A)の例では、弁体72は、開放位置に位置している。シール部材75は、弁体72の上面に配置されており、弁体72が封止位置に配置された際にインクがバルブ室70から第1圧力室77に流通しないように封止する。支持ロッド74は、バルブ室70と第1圧力室77とに亘って配置されており、一端が弁体72と接合され、他端が第1圧力室77の隔壁部88bと接合されている。
【0034】
脱泡室92は、内部流路79から流入したインクを一時的に貯留して気泡を捕捉するために用いられる。この脱泡室92は、内部にフィルタ93を備えている。脱泡室92は、フィルタ93よりも上部側において内部流路79と連通している。また、脱泡室92は、インク吐出流路95とも連通している。フィルタ93は、インク供給路内に混入した気泡を通過させ難くして、脱泡室92の天井部において気泡を捕捉(トラップ)させる機能を有する。
【0035】
減圧室80は、脱泡室92との間の圧力の差を利用して、脱泡室92において捕捉されたインクから気泡を取り除くために用いられる。この減圧室80は、脱泡室92の上方に配置されており、気体透過性を有する隔壁部90を介して脱泡室92と隣接している。
【0036】
第2圧力室89は、減圧用ポンプ300から供給される負圧を減圧室80に供給するために用いられる。この第2圧力室89は、減圧室80の上方に配置されており、負圧供給路358を介してチューブt5と連通している。また、第2圧力室89は、連通孔86を介して減圧室80と連通している。第2圧力室89は、天井部分である隔壁部88aを挟んで大気室87に隣接している。なお、隔壁部88aは、前述の隔壁部88bと同じ構成を有している。ただし、隔壁部88aと隔壁部88bとは、互いに接しておらず、それぞれ独立して変位することができる。
【0037】
第2調圧バルブ81は、第2圧力室89と減圧室80とに亘って配置されており、第2圧力室89から減圧室80への負圧の供給を制御するために用いられる。この第2調圧バルブ81は、前述の第1調圧バルブ71と同様な構成を有している。すなわち、第2調圧バルブ81は、弁体82と、圧力調整バネ83と、シール部材85と、支持ロッド84とを備えている。弁体82は、第2圧力室89と減圧室80とを連通状態とする開放位置と、非連通状態とする封止位置との間で変位可能であり、圧力調整バネ83により封止位置側に付勢されている。図2(A)の例では、弁体82は、開放位置に配置されている。シール部材85は、弁体82が封止位置に配置された際に、連通孔86を封止して減圧室80内の負圧を維持する。支持ロッド84は、一端が弁体82と接合されており、他端が隔壁部88aと接合されている。
【0038】
記録ヘッド150は、キャリッジ100の底面に配置されており、記録用紙P(図1)に向けてインクを噴射する。この記録ヘッド150は、ノズルプレート152と、インク吐出流路154とを備えている。インク吐出流路154は、キャリッジ100のインク吐出流路95と連通しており、脱泡室92から供給されたインクをノズルプレート152へと導く。ノズルプレート152は、多数のノズル(図示省略)を備えている。
【0039】
なお、前述のプリンタ500は、請求項における液体噴射装置に相当する。
【0040】
A2.キャリッジ100におけるインク供給動作:
図2(A)に示すノズルプレート152に設けられた多数のノズル(図示省略)からインクが噴射されてインクが消費されると、第1圧力室77の圧力がインクの減量により低下する。すると、第1圧力室77の圧力は大気室87の圧力(大気圧)よりも低くなり、この圧力差によって隔壁部88bが第1圧力室77の内側に撓んで下方に変位する。このとき、弁体72は、支持ロッド74を介して押し下げられる。そして、圧力調整バネ73の付勢力に打ち勝って弁体72が開放位置に位置すると、インク流入口76が開放されてインクが第1圧力室77に流入する。
【0041】
図2(B)は、開放されたインク流入口76から第1圧力室77にインクが流入した後におけるキャリッジ100及び記録ヘッド150の状態を示す断面図である。第1圧力室77にインクが流入してその室圧が高まると、隔壁部88bは上方に変位する。これに伴って弁体72が再び封止位置に移動すると、第1圧力室77へのインクの流入は停止し、記録ヘッド150へのインクの供給が停止する。このように、プリンタ500では、インクの消費に応じて第1調圧バルブ71が開閉動作することで、消費した分量のインクが記録ヘッド150に適宜流入するように構成されている。
【0042】
A3.脱泡動作:
減圧用ポンプ300(図1)によって発生した負圧は、チューブt5及び負圧供給路358(図2(A))を介して第2圧力室89に供給される。このとき、第2圧力室89の圧力(負圧)と大気室87の圧力(大気圧)との圧力差によって隔壁部88aが第2圧力室89の内側に撓んで下方に変位する。弁体82は、支持ロッド84を介して押し下げられる。そして、弁体82が開放位置に位置すると、連通孔86が開放されて負圧が減圧室80に供給される。すると、脱泡室92の圧力が脱泡室92の圧力よりも低くなり、脱泡室92の天井部分にトラップされた気泡(ガス)BLは、減圧室80と脱泡室92との間の圧力差によって隔壁部90を透過して減圧室80に流入する。
【0043】
A4.隔壁プレートの詳細構成:
図3は、キャリッジ100の詳細構成を示す斜視図である。なお、図3では、図示の便宜上、ブラックインクの供給に関わる構成のみを示している。上述した構成(機能)を有するキャリッジ100は、複数の薄板部材(以下、「プレート」と呼ぶ)が鉛直方向(Y軸)に積層された構成を有する。これらの複数のプレートにおいて、積層方向と垂直な面(積層面:X−Z平面)の形状は、いずれも同じ大きさの矩形である。図3の例では、積層された複数のプレートのうち隔壁プレート10を示しており、他のプレートについては省略している。
【0044】
隔壁プレート10は、隔壁部90と、流路形成部52と、流路形成部66とを備えている。流路形成部52は、隔壁プレート10の裏面(積層面のうち下方の面)に形成された溝であり、隔壁プレート10と、裏面において当接するプレート(図示省略)とが積層された際に、内部流路79の一部を構成する流路79aを形成する。なお、流路形成部52(溝)の一端は隔壁部90と接続され、他端は隔壁プレート10を貫通する貫通孔51と接続されている。流路形成部66は、隔壁プレート10の表面に形成された溝であり、隔壁プレート10と、表面(積層面のうち上方の面)において当接するプレート(図示省略)とが積層された際に、内部流路62を形成する。なお、流路形成部66の一端は隔壁プレート10の裏面に設けられた流通孔65と接続されている。
【0045】
図4は、図3に示す隔壁プレート10の詳細構成を示す平面図である。図4では、隔壁プレート10を図3において裏面から見た構成を示している。なお、図4では、図3とは異なり、全ての色のインクの供給に関わる構成を示している。
【0046】
隔壁プレート10は、シアンインクの供給に関わる構成として、上述したブラックインクと同じ構成を備えている。具体的には、ブラックインク用の隔壁部90の左隣りに、シアンインク用の隔壁部90cを備えている。また、隔壁プレート10は、ブラックインク用の流路形成部52の左隣りにシアンインク用の流路形成部52cを、ブラックインク用の流路形成部66の左隣りにシアンインク用の流路形成部66cを、それぞれ備えている。なお、隔壁部90cの構成は、隔壁部90と同じである。また、流路形成部52cの構成は流路形成部52と同様であり、流路形成部66cの構成は流路形成部66と同じである。同様にして、隔壁プレート10は、マゼンダインクの供給に関わる構成(隔壁部90m及び流路形成部52m,66m)を、上述したシアンインクの供給に関わる構成の左隣に有し、イエローインクの供給に関わる構成(隔壁部90y及び流路形成部52y,66y)を、マゼンダインクの供給に関わる構成の左隣りに有する。
【0047】
隔壁プレート10の四隅には、他のプレート(図示省略)と積層して締結する際に用いられる貫通孔11a,11b,11c,11dが配置されている。
【0048】
ここで、4つの隔壁部90,90c,90m,90yは、いずれも同じリブ形状を有している。具体的には、隔壁部90は、X軸と平行な方向に延びる筋状の凹部21と、X軸と平行な方向に延びる筋状の凸部22とが、Z軸に沿って交互に配置された平面形状を有している。なお、隔壁部90には、流路形成部52からインクが流入するので、凹部21及び凸部22は、インクの流入方向に沿った方向に延びている。
【0049】
図5は、図4におけるA−A断面を示す断面図である。なお、図5では、説明の便宜上、隔壁部90の上方において隣接する減圧室80と、隔壁部90の下方において隣接する脱泡室92とを破線で示している。
【0050】
隔壁部90において、脱泡室92に面した壁は凹凸形状であるのに対し、減圧室80に面した壁は平坦である。したがって、凹部21は、凸部22に比べてY方向の厚みが小さく構成されている。具体的には、例えば、凹部21のY方向の厚みを0.3mmとし、凸部22の厚みを0.5mmとすることができる。
【0051】
なお、前述の隔壁プレート10は、請求項における単一部材に相当する。また、隔壁部90において脱泡室92に面した壁は請求項における第1の壁に、隔壁部90において減圧室80に面した壁は請求項における第2の壁に、隔壁部90におけるリブ形状は請求項における補強用形状に、それぞれ相当する。
【0052】
A5.キャリッジ100の製造処理:
図6は、キャリッジ100の製造処理の手順を示すフローチャートである。上述したキャリッジ100を製造する際には、まず、キャリッジ100を構成する各プレート用の金型を製作する(ステップS105)。次に、隔壁プレート10用の金型において、隔壁部90の有するリブ形状の長手方向に沿って成型材を流し込んで隔壁プレート10を成型する(ステップS110)。
【0053】
図4の例では、隔壁プレート10の四辺L1〜L4のうち、隔壁プレート10の上辺L1(流通孔65,65c,65m,65yに近いZ軸と平行な辺)の中央をゲート位置Gt1として成型材を流入している。このため、ゲート位置Gt1から流入した成型材は、隔壁プレート10の下辺L2に向かって流れていく。ここで、隔壁部90は、凹部21及び凸部22がX方向に沿って延びたリブ形状であるので、金型内において成型材の流れる方向(上辺L1から下辺L2に向かう方向(+X方向))は、このリブ形状の長手方向に沿った方向となっている。なお、成型材としては、隔壁部90における気体透過性を確保するために、例えば、ポリアセタールやポリプロピレンやポリフェニレンエーテル等を用いることができる。
【0054】
隔壁プレート10を成型した後には、他のプレートについても同様に、金型に成型材を流入して成型する(ステップS115)。次に、成型した各プレートを積層して接合する(ステップS120)。
【0055】
以上説明したように、キャリッジ100では、隔壁部90が有する凹部21は薄く構成されているので、インク中の気泡の脱泡能力を向上させることができる。また、隔壁部90において脱泡室92に面した壁は凹凸形状であるため、隔壁部90の厚みが全て凹部21と同じ厚みとなっている構成に比べて強度を高めることができると共に、気泡との接触面積を大きくして多量の気泡を捕捉することができる。このように隔壁部90の強度を高めることができるので、隔壁部90を他の構成要素(流路形成部52,66)と同じプレートとして一体形成することができ、キャリッジ100の部品点数を減らすことができる。また、多量の気泡を捕捉することができるので、脱泡室92及び減圧室80を小型化することができる。また、隔壁プレート10の成型時に、隔壁部90におけるリブ形状の長手方向に沿った方向に成型材を流し込むので、金型内部における成型材の流通性を高めることができる。したがって、ゲート位置Gt1から遠い部分(例えば、隔壁プレート10の下辺L2(図4)付近部分)についても、隔壁部90,90c,90m,90yを通って成型材が届くので、成型材が充填されず隔壁部90に穴が開いてしまうことを抑制することができる。また、隔壁部90,90c,90m,90yにおけるリブ形状(凹部21及び凸部22)は、インクの流入方向に沿った方向に延びて形成されている。したがって、インク噴射後に予備吐出(印刷時とは別にインクを噴射してインク供給路内の気泡をノズル(図示省略)から排出する動作)を行う場合において、脱泡室92の天井部分に捕捉した気泡BLを、インクの流れによってリブ形状に沿って移動させ、インク吐出流路95から排出し易くすることができる。
【0056】
B.第2の実施例:
図7は、第2の実施例における隔壁プレート10aの詳細構成を示す平面図である。第2の実施例における脱泡機構としてのキャリッジは、隔壁プレート10aにおける隔壁部の構成においてキャリッジ100(図1〜6)と異なり、他の構成及びキャリッジの製造処理の手順は、第1の実施例と同じである。
【0057】
具体的には、第1の実施例におけるブラックインク用の隔壁部90は、リブ形状の長手方向が縦方向(X軸と平行な方向)であったのに対し、第2の実施例におけるブラックインク用の隔壁部91は、リブ形状の長手方向が横方向(Z軸と平行な方向)である。かかる構成では、流路形成部52から隔壁部91に流入するインクの流入方向(−X方向)と、隔壁部91のリブ形状の長手方向とは、交わることとなる。なお、他色のインク用の隔壁部91c,91m,91yも同じ構成を有している。
【0058】
ここで、第2の実施例における成型材のゲート位置Gt2は、第1の実施例におけるゲート位置Gt1とは異なり、隔壁プレート10aの右辺L3の中央となっている。この場合、第1の実施例と同様に、成型材の流れる方向(右辺L3から左辺L4に向かう方向(+Z方向))は、隔壁部91,91c,91m,91yにおけるリブ形状の長手方向に沿った方向となっている。
【0059】
このような構成を有する第2の実施例におけるキャリッジは、第1の実施例のキャリッジ100と同様な効果を有する。また、隔壁部91,91c,91m,91yにおけるリブ形状は、インクの流入方向と交わる方向に延びて形成されている。したがって、脱泡室92にインクが流入したときにも、隔壁部91,91c,91m,91yにおいて気泡を捕捉した状態を維持することができ、記録ヘッド150に気泡が流入することを抑制することができる。
【0060】
C.第3の実施例:
図8は、第3の実施例における隔壁部の断面形状を示す説明図である。第3の実施例における脱泡機構としてのキャリッジは、隔壁プレートにおける隔壁部の構成においてキャリッジ100(図1〜6)と異なり、他の構成及びキャリッジの製造処理の手順は、第1の実施例と同じである。
【0061】
具体的には、第1の実施例におけるブラックインク用の隔壁部90は、互いに厚みが異なる凹部21と凸部22とが交互に配置されたリブ形状の断面を有していたが、第2の実施例におけるブラックインク用の隔壁部90aは、図8に示すように、厚みが一定の凹部と凸部とが繰り返す波型形状の断面を有している。隔壁部90aの厚みとしては、第1の実施例における隔壁部90の有する凹部21の厚み(例えば0.3mm)と同じとすることができる。なお、第2の実施例における隔壁プレートの平面図は、第1の実施例における隔壁プレート10aの平面図(図4)と同じである。すなわち、X軸に沿った方向に延びた筋状の平面形状を有している。なお、他色のインク用の隔壁部(図示省略)も同じ構成を有している。なお、上述した波型形状は、請求項における補強用形状に相当する。
【0062】
このような構成を有する第3の実施例におけるキャリッジは、第1の実施例のキャリッジ100と同様な効果を有する。また、隔壁部90aの厚みはいずれの位置においても薄く構成することができるので、高い脱泡能力を実現できる。
【0063】
D.第4の実施例:
図9は、第4の実施例における隔壁プレート10bの詳細構成を示す平面図である。第4の実施例における脱泡機構としてのキャリッジは、隔壁プレート10bにおける隔壁部の構成においてキャリッジ100(図1〜6)と異なり、他の構成及びキャリッジの製造処理の手順は、第1の実施例と同じである。
【0064】
具体的には、第1の実施例におけるブラックインク用の隔壁部90の形状はリブ形状であったのに対し、第4の実施例におけるブラックインク用の隔壁部94は、薄肉部23を基礎として、薄い円柱状の厚肉部24が所定の間隔で並んで配置されたドット形状を有している。なお、他色のインク用の隔壁部94c,94m,94yも同じ構成を有している。
【0065】
図10は、図9におけるB−B断面を示す断面図である。なお、図5と同様に、隔壁部94の上方において隣接する減圧室80と、隔壁部94の下方において隣接する脱泡室92とを破線で示している。
【0066】
第4の実施例における隔壁部94の断面も、第1の実施例における隔壁部90の断面と同様の形状を有している。すなわち、脱泡室92に面した壁は凹凸形状であるのに対し、減圧室80に面した壁は平坦であり、薄肉部23は厚肉部24に比べて厚みが小さい。なお、薄肉部23及び厚肉部24の厚みは、第1の実施例における凹部21及び凸部22の厚みと同様に、例えば、0.3mm及び0.5mmとすることができる。なお、上述したドット形状は、請求項における補強用形状に相当する。
【0067】
このような構成を有する第4の実施例におけるキャリッジは、第1の実施例と同様な効果を有する。
【0068】
E.第5の実施例:
図11(A)は、第5の実施例におけるキャリッジ100a及び記録ヘッド150の機能を模式的に示す説明図である。なお、図11(A)では、図2(B)と同様に、第1圧力室77にインクが流入した後におけるキャリッジ100a及び記録ヘッド150の状態を示している。第5の実施例における脱泡機構としてのキャリッジ100aは、以下の4点においてキャリッジ100(図1〜6)と異なり、他の構成及びキャリッジの製造処理の手順は第1の実施例と同じである。すなわち、キャリッジ100aが第2圧力室89と、隔壁部88aと、第2調圧バルブ81と、隔壁部90とを備えていない点、内部流路64の途中に脱泡部64aを有する点、減圧室80に代えて減圧室80aを備えている点、及び負圧供給路358が減圧室80aに接続されている点が相違点である。
【0069】
第1の実施例では、脱泡を行うために気泡を捕捉するための部分(脱泡室92)は、減圧室80と隣接して配置されていたが、第5の実施例では、かかる部分(脱泡部64a)は、減圧室80a内に配置されている。なお、第5の実施例においては、脱泡室92は、気泡を捕捉するために用いられず、インクを一時的に貯留するために用いられる。
【0070】
図11(B)は、図11(A)に示す脱泡部64a及び減圧室80aの詳細構成を示す断面図である。脱泡部64aは、減圧室80a内に配置されており、流通するインク中の気泡を捕捉するために用いられる。この脱泡部64aは中空のチューブ状であり、脱泡部64aと連通している。したがって、この脱泡部64aの内部をインクが流通することとなる。脱泡部64aの断面形状は、第3の実施例と同様に、凹部25と凸部26とが交互に配置された波型形状(凹凸形状)を有している。凹部25及び凸部26はいずれも厚みが一定であり、気体透過性を有する部材により構成されている。
【0071】
図11(B)の例では、流通するインク中の気泡BLが、凸部26に捕捉されている。減圧室80aに負圧供給路358を介して負圧が供給されると、この気泡BLは、凸部26の壁面を介して減圧室80aに流入する。なお、脱泡部64aは、請求項における脱泡部に相当する。また、凹部25と凸部26とが交互に配置された波型形状は、請求項における補強用形状に相当する。
【0072】
このような構成を有する第5の実施例のキャリッジ100aは、第1の実施例と同様な効果を有する。また、内部流路64の途中に脱泡部64aを設けているので、脱泡室92を小型化することができる。また、インク供給用ポンプ220a〜220dによって加圧してインクが供給される構成においては、脱泡部64aを加圧されたインクが流通するので、脱泡部64a内の圧力と減圧室80a内の圧力との差が生じ易くなる。したがって、短時間のうちに多量の気泡を除去することができる、或いは、減圧用ポンプ300として比較的小型のポンプを用いることができる。
【0073】
F.第6の実施例:
図12(A)は、第6の実施例におけるキャリッジ100b及び記録ヘッド150の機能を模式的に示す説明図である。なお、図12(A)では、図2(B)と同様に、第1圧力室77にインクが流入した後におけるキャリッジ100b及び記録ヘッド150の状態を示している。第6の実施例における脱泡機構としてのキャリッジ100bは、第2圧力室89と第2調圧バルブ81と減圧室80とに代えて、減圧管140を備えている点においてキャリッジ100(図1〜6)と異なり、他の構成及びキャリッジの製造処理の手順は第1の実施例と同じである。
【0074】
第1の実施例では、減圧される部屋(減圧室80)は、脱泡室92と隣接して配置されていたが、第6の実施例では、かかる部屋(減圧管140)は、脱泡室92内に配置されている。
【0075】
図12(B)は、図12(A)に示す減圧管140及び脱泡室92の詳細構成を示す断面図である。減圧管140は、脱泡室92内においてフィルタ93よりも上方に配置されている。なお、減圧管140の機能は、第1の実施例の減圧室80と同じである。この減圧管140は、円筒形状を有しており、負圧供給路358を介してチューブt5と接続されている。減圧管140の壁は気体透過性を有する。また、この減圧管140の内壁は平坦であり、外壁は凹凸形状である。したがって、減圧管140の壁の断面は、第1の実施例と同様にリブ形状となっている。具体的には、減圧管140の外壁は、円周方向に延びた厚肉部27と薄肉部28とが、交互に配置された形状を有している。したがって、減圧管140の断面は、第1の実施例と同様にリブ形状であり、薄肉部28は厚肉部27に比べて厚みが小さく構成されている。なお、薄肉部28及び厚肉部27の厚みは、第1の実施例における凹部21及び凸部22の厚みと同様とすることができる。なお、減圧管140は、請求項における減圧室に相当する。また、減圧管140の外壁における凹凸形状は、請求項における補強用形状に相当する。
【0076】
このような構成を有する第6の実施例のキャリッジ100bは、第1の実施例と同様な効果を有する。また、減圧管140が脱泡室92の内部に配置されるので、減圧室80や大気室87が不要となり、キャリッジ100bを小型化することができる。
【0077】
G.変形例:
なお、上記各実施例における構成要素の中の、独立クレームでクレームされた要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0078】
G1.変形例1:
上述した第1の実施例では、減圧室80と脱泡室92との間は、隔壁部90として、一体形成されていたが、これに代えて、減圧室80の底面と脱泡室92の天井面とをそれぞれ気体透過性を有する別体の壁として形成し、複数のプレートを積層した際に互いに接するように構成することもできる。このような構成であっても、減圧室80の底面と脱泡室92の天井面とのうち、いずれかの面の形状をリブ形状とすることで、減圧室80と脱泡室92との間の強度を高めることができる。なお、第2〜4の実施例においても同様な構成とすることができる。すなわち、一般には、気体透過性を有し減圧室80において脱泡室92に接する壁と、気体透過性を有し脱泡室92において減圧室80に接する壁とのうち、少なくとも一方はリブ形状である任意の構成を、本発明の脱泡機構に採用することができる。
【0079】
なお、このように、減圧室80の底面と脱泡室92の天井面とをそれぞれ気体透過性を有する別体の壁として形成する場合には、キャリッジの製造処理の手順は、例えば、以下のようにすることができる。すなわち、脱泡室92の部材用の金型及び減圧室80の部材用の金型を用意し、それぞれの金型を用いて脱泡室92の部材及び減圧室80の部材を形成する。このとき、成型材として、減圧室80の底面及び脱泡室92の天井面が気体透過性を有するような成型材を用いる。また、減圧室80の底面又は脱泡室92の天井面のうち、少なくとも一方がリブ形状となるような金型を用いる。また、金型において、リブ形状の長手方向に沿った方向に成型材を流し込む。次に、減圧室80の底面と脱泡室92の天井面とを介して減圧室80と脱泡室92とが接するように、減圧室80の部材と脱泡室92の部材とを接合する。
【0080】
G2.変形例2:
上述した第4の実施例では、厚肉部24は、薄い円柱状であったが、これに代えて、薄い四角柱状とすることもできる。また、この厚肉部24は、所定の間隔で並んで配置されていたが、これに代えて、ランダムに配置することもできる。また、厚肉部24を基礎として、薄肉部23が所定の間隔で並んで配置、或いは、ランダムに配置された形状とすることもできる。すなわち、一般には、厚肉部又は薄肉部が散在するドット形状を、本発明の脱泡機構における隔壁部の形状として採用することができる。
【0081】
また、上述した第3の実施例において、隔壁部90aの断面における波型形状を形成する凹部及び凸部は、それぞれ90度に屈曲した形状であったが、これに代えて、鋭角部分のないR形状とすることもできる。
【0082】
また、上述した第1〜4の実施例では、隔壁部の形状は、リブ形状(第1,2の実施例),波型形状(第3の実施例),ドット形状(第4の実施例)であった。本発明は、これらの形状に限定されるものではなく、強度を高めることができる任意の形状を本発明の脱泡機構における隔壁部に採用することができる。例えば、薄肉部を基礎として格子状の厚肉部が配置された形状とすることもできる。また、これらの形状を組み合わせた形状とすることもできる。具体的には、隔壁部の上半分をリブ形状とし、下半分をドット形状とすることもできる。すなわち、一般には、任意の補強用形状を、本発明における隔壁部の形状として採用することができる。
【0083】
G3.変形例3:
上述した第3の実施例では、隔壁部90aの平面形状は、第1の実施例と同じであったが、これに代えて、第2の実施例と同様に、長手方向が横方向(Z軸と平行な方向)となるような形状とすることもできる。また、上述した第2の実施例では、隔壁部91,91c,91m,91yにおけるリブ形状の長手方向(Z軸と平行な方向)は、インクの流入方向(X軸と平行な方向)と垂直に交わる方向であったが、これに代えて、インクの流入方向と任意の角度で交わる方向とすることもできる。すなわち、一般には、隔壁部の形状の長手方向と脱泡室における液体の流入方向とが任意の角度で交わる構成を、本発明の脱泡機構に採用することができる。
【0084】
G4.変形例4:
上述した第1の実施例では、隔壁プレート10を成型する際(図6:ステップS110)に、成型材のゲート位置は、隔壁プレート10の上辺L1(図4)の中央であったが、これに代えて、上辺L1上の他の位置とすることもできる。この場合であっても、成型材の流れる方向は、ほぼ+X方向となり、隔壁部90,90c,90m,90yにおけるリブ形状の長手方向に沿った方向とすることができる。また、上辺L1に代えて、他の辺L2〜L4にゲート位置を設けることもできる。なお、右辺L3又は左辺L4にゲート位置を設けた場合、右辺L3又は左辺L4の上方(例えば、流通孔65,65yと同じ高さの位置)から形成部材を流入することで、金型内において隔壁部90,90c,90m,90yに対応する部分に成型材が流れる際の流れ方向を、ほぼ+X方向とすることができる。
【0085】
G5.変形例5:
上述した第5の実施例では、脱泡室92に隣接して減圧室を設けない構成であったが、これに代えて、第1の実施例と同様に、隔壁部90を介して脱泡室92に隣接する減圧室80を設ける構成とすることもできる。このようにすることで、脱泡室92において捕捉された気泡を取り除くことができるので、脱泡部64aにおいてのみ脱泡を行う構成に比べて、より多量の気泡を取り除くことができる。なお、第6の実施例においても同様に、脱泡室92に隣接した減圧室を設ける構成とすることもできる。
【0086】
G6.変形例6:
上述した各実施例では、プリンタ500が吐出するインクの種類は4色であったが、これに代えて任意の種類のインクを吐出する構成とすることができる。また、各実施例のプリンタはオフキャリッジタイプのプリンタであったが、これに代えて、インクカートリッジをキャリッジに搭載するいわゆるオンキャリッジタイプのプリンタを採用することもできる。
【0087】
G7.変形例7:
上述した各実施例では、脱泡機構としてキャリッジ100,100a,100bに適用した例を示したが、これに代えて、キャリッジとは別に脱泡機構を構成することもできる。例えば、各実施例において、チューブt11〜t14の途中において脱泡室及び減圧室を設けて脱泡機構を構成することもできる。このような構成においても、気体透過性を有し脱泡室において減圧室と接する壁と、気体透過性を有し減圧室において脱泡室と接する壁とのうち少なくとも一方を補強用形状とすることで、脱泡機構の強度を高めることができる。
【0088】
G8.変形例8:
上述した第5の実施例では、脱泡部64aの断面は、凹部25と凸部26とが交互に配置された波型形状を有していたが、これに代えて、第1,2実施例のようにリブ形状や、第4の実施例のようにドット形状とすることもできる。また、第6の実施例では、減圧管140の壁の断面はリブ形状であったが、これに代えて、第3の実施例のように波型形状とすることもできる。
【0089】
G9.変形例9:
上述した各実施例では、インクジェット式プリンタについて説明したが、本発明は、これに限らず、インク以外の他の液体を噴射する任意の液体噴射装置に適用することができる。例えば、ファクシミリ装置等の画像記録装置や、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッドや、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレーや、面発光ディスプレー (Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材噴射装置や、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を噴射する液体噴射装置や、精密ピペットとしての試料噴射装置や、潤滑油の噴射装置や、樹脂液の噴射装置等にも適用できる。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用しても良い。そして、これら微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置のうちいずれか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【0090】
なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれば良い。例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の脱泡機構としてのキャリッジ100を備えたプリンタ500の概略構成を示す説明図である。
【図2】インク噴射時のキャリッジ100及び記録ヘッド150の状態を示す説明図及び開放されたインク流入口76から第1圧力室77にインクが流入した後におけるキャリッジ100及び記録ヘッド150の状態を示す断面図である。
【図3】キャリッジ100の詳細構成を示す斜視図である。
【図4】図3に示す隔壁プレート10の詳細構成を示す平面図である。
【図5】図4におけるA−A断面を示す断面図である。
【図6】キャリッジ100の製造処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】第2の実施例における隔壁プレート10aの詳細構成を示す平面図である。
【図8】第3の実施例における隔壁部の断面形状を示す説明図である。
【図9】第4の実施例における隔壁プレート10bの詳細構成を示す平面図である。
【図10】図9におけるB−B断面を示す断面図である。
【図11】第5の実施例におけるキャリッジ100a及び記録ヘッド150の機能を模式的に示す説明図及び脱泡部64aと減圧室80aとの詳細構成を示す断面図である。
【図12】第6の実施例におけるキャリッジ100b及び記録ヘッド150の機能を模式的に示す説明図及び減圧管140と脱泡室92との詳細構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0092】
500…プリンタ、IC1〜IC4…インクカートリッジ、t1〜t5,t11〜t14…チューブ、100,100a,100b…キャリッジ、150…記録ヘッド、220a〜220d…インク供給用ポンプ、260…ガイドロッド、270…プラテン、300…減圧用ポンプ、P…記録用紙、10,10a,10b…隔壁プレート、11a…貫通孔、21…凹部、22…凸部、23…薄肉部、24…厚肉部、25…凹部、26…凸部、27…厚肉部、28…薄肉部、51…貫通孔、52…流路形成部、52c…流路形成部、60…フィルタ室、61…フィルタ、62…内部流路、64…内部流路、64a…脱泡部、65…流通孔、66…流路形成部、66c…流路形成部、66m…流路形成部、66y…流路形成部、70…バルブ室、71…第1調圧バルブ、72…弁体、73…圧力調整バネ、74…支持ロッド、75…シール部材、76…インク流入口、77…第1圧力室、79…内部流路、79a…流路、80…減圧室、80a…減圧室、81…第2調圧バルブ、81…気圧バルブ、82…弁体、83…圧力調整バネ、84…支持ロッド、85…シール部材、86…連通孔、87…大気室、88a…隔壁部、88b…隔壁部、89…第2圧力室、90,90a,91a〜91y,94a〜94y…隔壁部、92…脱泡室、93…フィルタ、95…インク吐出流路、99…大気連通孔、140…減圧管、152…ノズルプレート、154…インク吐出流路、358…負圧供給路、L1…上辺、L2…下辺、L3…右辺、L4…左辺、BL…気泡、Gt1,Gt2…ゲート位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射装置内を流通する液体から気泡を取り除くための脱泡機構であって、
気体透過性を有する第1の壁を有し、前記液体中の気泡を捕捉するための脱泡室と、
気体透過性を有する第2の壁を有し、前記第2の壁と前記第1の壁とを介して前記脱泡室と接する減圧室と、
を備え、
前記第1の壁と、前記第2の壁と、のうち少なくとも一方は補強用形状を有する、脱泡機構。
【請求項2】
請求項1に記載の脱泡機構において、
前記補強用形状は、厚肉部と薄肉部とが交互に配置された断面を有するリブ形状と、断面が波型であって平面が筋状の波型形状と、厚肉部又は薄肉部が散在するドット形状と、のうちいずれかである、脱泡機構。
【請求項3】
請求項2に記載の脱泡機構において、
前記第1の壁と前記第2の壁とは単一部材として形成されている、脱泡機構。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の脱泡機構において、
前記第1の壁は前記補強用形状を有し、
前記補強用形状は、前記リブ形状又は前記波型形状であり、
前記リブ形状の長手方向又は前記波型形状の筋方向と、前記脱泡室における前記液体の流入方向と、は互いに交差する、脱泡機構。
【請求項5】
請求項3に記載の脱泡機構において、
前記単一部材の平面形状は矩形であり、
前記補強用形状は、前記リブ形状又は前記波型形状であり、
前記リブ形状の長手方向又は前記波型形状の筋方向と、前記矩形において前記単一部材を成型する際の成型材の流入位置を有する辺から対向する辺に向かう方向と、は互いに平行である、脱泡機構。
【請求項6】
液体噴射装置内を流通する液体から気泡を取り除くための脱泡機構であって、
前記液体中の気泡を捕捉するための脱泡部と、
前記脱泡部を囲んで配置された減圧室と、
を備え、
前記脱泡部は、気体透過性を有する壁を有し、
前記壁は補強用形状を有する、脱泡機構。
【請求項7】
液体噴射装置内を流通する液体から気泡を取り除くための脱泡機構であって、
前記液体中の気泡を捕捉するための脱泡室と、
前記脱泡室内に配置された減圧室と、
を備え、
前記減圧室は、気体透過性を有する壁を有し、
前記壁は補強用形状を有する、脱泡機構。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の脱泡機構を備える、液体噴射装置。
【請求項9】
液体噴射装置内を流通する液体から気泡を取り除くための脱泡機構の製造方法であって、
(a)気体透過性を有する第1の壁を有し、前記液体中の気泡を捕捉するための脱泡室の部材を形成する工程と、
(b)気体透過性を有する第2の壁を有する減圧室の部材を形成する工程と、
(c)前記第1の壁と前記第2の壁とを介して、前記脱泡室と前記減圧室とが接するように、前記脱泡室の部材と前記減圧室の部材とを接合する工程と、
を備え、
前記工程(a)と前記工程(b)とのうち少なくとも一方は、
(d)前記第1の壁又は前記第2の壁を、厚肉部と薄肉部とが交互に配置された断面を有するリブ形状、又は、断面が波型であって平面が筋状の波型形状にする工程を含み、
前記工程(d)は、
(e)前記脱泡室の部材用金型又は前記減圧室の部材用金型において、前記リブ形状の長手方向又は前記波型形状の筋方向に沿って、成型材を流して前記脱泡室の部材又は前記減圧室の部材を成型する工程を含む、脱泡機構製造方法。
【請求項1】
液体噴射装置内を流通する液体から気泡を取り除くための脱泡機構であって、
気体透過性を有する第1の壁を有し、前記液体中の気泡を捕捉するための脱泡室と、
気体透過性を有する第2の壁を有し、前記第2の壁と前記第1の壁とを介して前記脱泡室と接する減圧室と、
を備え、
前記第1の壁と、前記第2の壁と、のうち少なくとも一方は補強用形状を有する、脱泡機構。
【請求項2】
請求項1に記載の脱泡機構において、
前記補強用形状は、厚肉部と薄肉部とが交互に配置された断面を有するリブ形状と、断面が波型であって平面が筋状の波型形状と、厚肉部又は薄肉部が散在するドット形状と、のうちいずれかである、脱泡機構。
【請求項3】
請求項2に記載の脱泡機構において、
前記第1の壁と前記第2の壁とは単一部材として形成されている、脱泡機構。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の脱泡機構において、
前記第1の壁は前記補強用形状を有し、
前記補強用形状は、前記リブ形状又は前記波型形状であり、
前記リブ形状の長手方向又は前記波型形状の筋方向と、前記脱泡室における前記液体の流入方向と、は互いに交差する、脱泡機構。
【請求項5】
請求項3に記載の脱泡機構において、
前記単一部材の平面形状は矩形であり、
前記補強用形状は、前記リブ形状又は前記波型形状であり、
前記リブ形状の長手方向又は前記波型形状の筋方向と、前記矩形において前記単一部材を成型する際の成型材の流入位置を有する辺から対向する辺に向かう方向と、は互いに平行である、脱泡機構。
【請求項6】
液体噴射装置内を流通する液体から気泡を取り除くための脱泡機構であって、
前記液体中の気泡を捕捉するための脱泡部と、
前記脱泡部を囲んで配置された減圧室と、
を備え、
前記脱泡部は、気体透過性を有する壁を有し、
前記壁は補強用形状を有する、脱泡機構。
【請求項7】
液体噴射装置内を流通する液体から気泡を取り除くための脱泡機構であって、
前記液体中の気泡を捕捉するための脱泡室と、
前記脱泡室内に配置された減圧室と、
を備え、
前記減圧室は、気体透過性を有する壁を有し、
前記壁は補強用形状を有する、脱泡機構。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の脱泡機構を備える、液体噴射装置。
【請求項9】
液体噴射装置内を流通する液体から気泡を取り除くための脱泡機構の製造方法であって、
(a)気体透過性を有する第1の壁を有し、前記液体中の気泡を捕捉するための脱泡室の部材を形成する工程と、
(b)気体透過性を有する第2の壁を有する減圧室の部材を形成する工程と、
(c)前記第1の壁と前記第2の壁とを介して、前記脱泡室と前記減圧室とが接するように、前記脱泡室の部材と前記減圧室の部材とを接合する工程と、
を備え、
前記工程(a)と前記工程(b)とのうち少なくとも一方は、
(d)前記第1の壁又は前記第2の壁を、厚肉部と薄肉部とが交互に配置された断面を有するリブ形状、又は、断面が波型であって平面が筋状の波型形状にする工程を含み、
前記工程(d)は、
(e)前記脱泡室の部材用金型又は前記減圧室の部材用金型において、前記リブ形状の長手方向又は前記波型形状の筋方向に沿って、成型材を流して前記脱泡室の部材又は前記減圧室の部材を成型する工程を含む、脱泡機構製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−58323(P2010−58323A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224885(P2008−224885)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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