説明

脱泡機構及び液体噴射装置

【課題】液体噴射装置内において、液体中の気泡の除去する技術を提供する。
【解決手段】脱泡機構は、液体噴射装置内を流通する液体から気泡を取り除くための脱泡機構であって、隔壁プレート10の上方に隣接して、減圧室プレート11が配置されている。また、隔壁プレート10の下方に隣接して、第1脱泡室プレート12が配置されている。この第1脱泡室プレート12の下方に隣接して、第2脱泡室プレート13が配置されている。鉛直方向に延びる側壁を有し、液体中の気泡を捕捉するための脱泡室92と、側壁において脱泡室と内部流路79とを連通させる連通部79cと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置内を流通する液体から気泡を除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式プリンタでは、インクカートリッジ等のインク供給部から記録ヘッドまでのインク供給路においてインク中に気泡が発生すると、ドット抜けなどの印刷不良を招くことがある。そのため、インクから気泡を取り除くこと(脱泡)が求められる。この脱泡を行う機構として、インクを一時的に溜めて気泡を捕捉する部屋(脱泡室)と減圧室とを気体透過性を有する隔壁を介して隣接させ、減圧室の圧力を脱泡室の圧力よりも低くして脱泡室において捕捉した気泡を取り除く機構が提案されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−95878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の脱泡機構では、インク中の気泡を十分に除去できないという問題があった。なお、かかる問題は、インクジェット式プリンタに限らず、潤滑油や樹脂液等の液体を噴射する任意の液体噴射装置において起こり得る。
【0005】
本発明は、液体噴射装置内において、液体中の気泡の除去する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]液体噴射装置の有する液体供給路内を流通する液体から気泡を取り除くための脱泡機構であって、鉛直方向に延びる側壁を有し、前記液体中の気泡を捕捉するための脱泡室と、前記側壁において前記脱泡室と前記液体供給路とを連通させる連通部と、を備える、脱泡機構。
【0008】
適用例1の脱泡機構では、液体供給路は、連通部を介して脱泡室の側壁と連通するので、脱泡室内に流入した液体を下方に向かわせる一方、気泡を浮力により上方に向かわせることができるので、液体と気泡との分離を短時間のうちに実現することができ、多量の気泡を短時間のうちに除去することができる。
【0009】
[適用例2]適用例1に記載の脱泡機構において、前記連通部において前記側壁と接続する位置は、前記連通部において前記液体供給路と接続する位置よりも高い、脱泡機構。
【0010】
このようにすることで、脱泡室に溜まったインク中の気泡が連通部を介して液体供給路へと逆流することを抑制することができる。すなわち、仮に連通部に気泡が逆流しても、気泡の浮力により脱泡室に戻すことができ、液体供給路に気泡が逆流することを抑制することができる。
【0011】
[適用例3]適用例2に記載の脱泡機構において、前記連通部は、前記連通部において前記液体供給路と接続する位置から、前記連通部において前記側壁と接続する位置に向かう上向きの流路を有する、脱泡機構。
【0012】
このようにすることにより、脱泡室に溜まったインク中の気泡が連通部を介して液体供給路へと逆流することを抑制することができる。
【0013】
[適用例4]適用例1ないし適用例3のいずれか一例に記載の脱泡機構において、前記連通部は、前記液体供給路の断面積よりも小さい断面積の流路を有する、脱泡機構。
【0014】
このようにすることにより、脱泡室に溜まったインク中の気泡が連通部に侵入することを抑制することができる。
【0015】
[適用例5]適用例1ないし適用例4のいずれか一例に記載の脱泡機構において、前記連通部は、長手方向と短手方向とを有する断面形状の流路を有する、脱泡機構。
【0016】
このようにすることにより、連通部として、断面における短手方向の長さを気泡の断面(円又は楕円)の直径(又は長軸)よりも小さくしつつ、かかる連通部における断面積を大きくして液体の流通性を高めることができる。
【0017】
[適用例6]適用例1ないし適用例5のいずれか一例に記載の脱泡機構において、前記脱泡室の側面は、曲線形状を有する、脱泡機構。
【0018】
このようにすることにより、脱泡室の側面に気泡が停滞することを抑制することができ、液体と気泡との分離を短時間のうちに実現することができる。
【0019】
[適用例7]適用例1ないし適用例6のいずれか一例に記載の脱泡機構において、前記脱泡室は、前記液体を吸収する部材を内部に有していない、脱泡機構。
【0020】
このようにすることにより、脱泡室内にインクを直接貯留することが可能であるので、脱泡室内(液体を吸収する部材内)にインクが残留することを抑制することができる。また、かかる部材を用いないので、脱泡機構の製造コストを抑えることができる。また、脱泡室内に流入した液体の流れを利用して、液体と気泡とを分離することができる。
【0021】
[適用例8]適用例1ないし適用例7のいずれか一例に記載の脱泡機構を備える、液体噴射装置。
【0022】
このようにすることにより、噴射装置内を流通する液体から多量の気泡を短時間のうちに除去することができ、ドット抜けなどの液体の噴射不良を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
A.第1の実施例:
A1.装置構成:
図1は、本発明の脱泡機構としてのキャリッジ100を備えたプリンタ500の概略構成を示す説明図である。このプリンタ500は、4色(ブラック,シアン,マゼンダ,イエロー)のインクを吐出可能なインクジェット式プリンタである。プリンタ500は、ブラックインクのインクカートリッジIC1と、シアンインクのインクカートリッジIC2と、マゼンダインクのインクカートリッジIC3と、イエローインクのインクカートリッジIC4と、キャリッジ100と、記録ヘッド150と、ガイドロッド260と、プラテン270と、4つのインク供給用ポンプ220a,220b,220c,220dと、減圧用ポンプ300と、を備えている。
【0024】
プリンタ500は、4つのインクカートリッジIC1〜IC4がプリンタ本体側に装着される、いわゆるオフキャリッジタイプのプリンタである。インクカートリッジIC1は、チューブt1とインク供給用ポンプ220aとチューブt11とを介してキャリッジ100に接続されている。同様に、インクカートリッジIC2はチューブt2とインク供給用ポンプ220bとチューブt12とを介して、インクカートリッジIC3はチューブt3とインク供給用ポンプ220cとチューブt13とを介して、インクカートリッジIC4はチューブt4とインク供給用ポンプ220dとチューブ14とを介して、それぞれキャリッジ100に接続されている。減圧用ポンプ300はチューブt5を介してキャリッジ100に接続されている。なお、各インクカートリッジIC1〜IC4は、図示しないカートリッジホルダによってプリンタ500の本体フレーム(図示省略)に装着されている。
【0025】
インク供給用ポンプ220aは、インクカートリッジIC1内のブラックインクをキャリッジ100に供給する。同様に、インク供給用ポンプ220bはインクカートリッジIC2内のシアンインクを、インク供給用ポンプ220cはインクカートリッジIC3内のマゼンダインクを、インク供給用ポンプ220dはインクカートリッジIC4内のイエローインクを、それぞれキャリッジ100に供給する。減圧用ポンプ300は、各色(ブラック,シアン,マゼンダ,イエロー)に共通して用いられる。
【0026】
ガイドロッド260は、プラテン270の上方(+Y方向)においてプラテン270の長手方向(Z軸と平行な方向)に沿って配置されている。キャリッジ100は、ガイドロッド260に沿ってプラテン270の長手方向に移動可能に支持され、キャリッジモータ(図示省略)によりタイミングベルト(図示省略)を介して駆動される。記録ヘッド150は、キャリッジ100の底面に配置され、キャリッジ100の長手方向の往復運動に伴い多数のノズル(図示省略)からインク滴を下方(−Y方向)に吐出する。このとき、図示しない紙送り機構によって記録用紙Pがプラテン270上を+X方向に送られ、記録用紙Pに画像等が形成される。
【0027】
図2(A)は、インク噴射時のキャリッジ100及び記録ヘッド150の状態を示す説明図である。図2(A)では、キャリッジ100の有する機能を模式的に表わしている。なお、図2(A)では、ブラックインクの供給に関わる機能を示しているが、他色のインクの供給に関わる機能についても同様である。
【0028】
キャリッジ100は、フィルタ室60と、大気室87と、第1圧力室77と、第1調圧バルブ71と、脱泡室92と、減圧室80と、第2圧力室89と、第2調圧バルブ81と、インクが流通する3つの内部流路62,64,79と、負圧供給路358とを備えている。
【0029】
フィルタ室60は、内部にフィルタ61を備えており、流入したインクをろ過して不純物を取り除くために用いられる。このフィルタ室60は、内部流路62を介してチューブt11と連通している。また、フィルタ室60は、内部流路64を介して後述するバルブ室70と連通している。大気室87は、大気連通孔99を介して大気と連通している。
【0030】
第1圧力室77は、ブラックインクを一時的に溜めてキャリッジ100内のインク供給路における圧力を調整するために用いられる。この第1圧力室77は、天井部分である隔壁部88bを挟んで大気室87に隣接している。隔壁部88bは、可撓性を有しており上下方向に変位可能である。隔壁部88bとしては、例えば、合成樹脂やゴム等からなるフィルムと、このフィルムと共に変位可能な片持ち(図示省略)の薄板部材とで形成することができる。第1圧力室77は、インク流入口76を備えており、このインク流入口76を介して後述するバルブ室70と連通している。また、第1圧力室77は、内部流路79を介して脱泡室92と連通している。
【0031】
第1調圧バルブ71は、ブラックインクの流通を制御するために用いられる。この第1調圧バルブ71は、バルブ室70と、弁体72と、圧力調整バネ73と、シール部材75と、支持ロッド74とを備えている。バルブ室70は、内部流路64と連通している。弁体72は、バルブ室70内に配置されており、圧力調整バネ73により封止位置側に付勢されている。この弁体72は、第1圧力室77とバルブ室70とを連通状態とする開放位置と、非連通状態とする封止位置との間で変位可能である。具体的には、第1圧力室77からインクが排出されることにより、弁体72を押し下げる力(隔壁部88b(大気圧)による支持ロッド74の押圧力及び第1圧力室77内の圧力)が、弁体72を押し上げる力(バルブ室70内の圧力及び圧力調整バネ73の付勢力)よりも大きくなった場合に開放位置に向かって変位する。また、第1圧力室77にインクが流入されることにより、弁体72を押し下げる力が弁体72を押し上げる力よりも小さくなった場合に封止位置に向かって変位する。なお、図2(A)の例では、弁体72は、開放位置に位置している。シール部材75は、弁体72の上面に配置されており、弁体72が封止位置に配置された際にインクがバルブ室70から第1圧力室77に流通しないように封止する。支持ロッド74は、バルブ室70と第1圧力室77とに亘って配置されており、一端が弁体72と接合され、他端が第1圧力室77の隔壁部88bと接合されている。
【0032】
脱泡室92は、内部流路79から流入したインクを一時的に貯留して気泡を捕捉するために用いられる。この脱泡室92は、内部にフィルタ93を備えている。脱泡室92は、フィルタ93よりも上部側において内部流路79と連通している。また、脱泡室92は、インク吐出流路95とも連通している。フィルタ93は、インク供給路内に混入した気泡を通過させ難くして、脱泡室92の天井部において気泡を捕捉(トラップ)させる機能を有する。
【0033】
減圧室80は、脱泡室92との間の圧力の差を利用して、脱泡室92において捕捉されたインクから気泡を取り除くために用いられる。この減圧室80は、脱泡室92の上方に配置されており、気体透過性を有する隔壁部90を介して脱泡室92と隣接している。なお、隔壁部90としては、例えば、ポリアセタールやポリプロピレンやポリフェニレンエーテル等からなる部材を用いて構成することができる。
【0034】
第2圧力室89は、減圧用ポンプ300から供給される負圧を減圧室80に供給するために用いられる。この第2圧力室89は、減圧室80の上方に配置されており、負圧供給路358を介してチューブt5と連通している。また、第2圧力室89は、連通孔86を介して減圧室80と連通している。第2圧力室89は、天井部分である隔壁部88aを挟んで大気室87に隣接している。なお、隔壁部88aは、前述の隔壁部88bと同じ構成を有している。ただし、隔壁部88aと隔壁部88bとは、互いに接しておらず、それぞれ独立して変位することができる。
【0035】
第2調圧バルブ81は、第2圧力室89と減圧室80とに亘って配置されており、第2圧力室89から減圧室80への負圧の供給を制御するために用いられる。この第2調圧バルブ81は、前述の第1調圧バルブ71と同様な構成を有している。すなわち、第2調圧バルブ81は、弁体82と、圧力調整バネ83と、シール部材85と、支持ロッド84とを備えている。弁体82は、第2圧力室89と減圧室80とを連通状態とする開放位置と、非連通状態とする封止位置との間で変位可能であり、圧力調整バネ83により封止位置側に付勢されている。図2(A)の例では、弁体82は、開放位置に配置されている。シール部材85は、弁体82が封止位置に配置された際に、連通孔86を封止して減圧室80内の負圧を維持する。支持ロッド84は、一端が弁体82と接合されており、他端が隔壁部88aと接合されている。
【0036】
記録ヘッド150は、キャリッジ100の底面に配置されており、記録用紙P(図1)に向けてインクを噴射する。この記録ヘッド150は、ノズルプレート152と、インク吐出流路154とを備えている。インク吐出流路154は、キャリッジ100のインク吐出流路95と連通しており、脱泡室92から供給されたインクをノズルプレート152へと導く。ノズルプレート152は、多数のノズル(図示省略)を備えている。
【0037】
なお、前述のプリンタ500は、請求項における液体噴射装置に相当する。
【0038】
A2.キャリッジ100におけるインク供給動作:
図2(A)に示すノズルプレート152に設けられた多数のノズル(図示省略)からインクが噴射されてインクが消費されると、第1圧力室77の圧力がインクの減量により低下する。すると、第1圧力室77の圧力は大気室87の圧力(大気圧)よりも低くなり、この圧力差によって隔壁部88bが第1圧力室77の内側に撓んで下方に変位する。このとき、弁体72は、支持ロッド74を介して押し下げられる。そして、圧力調整バネ73の付勢力に打ち勝って弁体72が開放位置に位置すると、インク流入口76が開放されてインクが第1圧力室77に流入する。
【0039】
図2(B)は、開放されたインク流入口76から第1圧力室77にインクが流入した後におけるキャリッジ100及び記録ヘッド150の状態を示す説明図である。第1圧力室77にインクが流入してその室圧が高まると、隔壁部88bは上方に変位する。これに伴って弁体72が再び封止位置に移動すると、第1圧力室77へのインクの流入は停止し、記録ヘッド150へのインクの供給が停止する。このように、プリンタ500では、インクの消費に応じて第1調圧バルブ71が開閉動作することで、消費した分量のインクが記録ヘッド150に適宜流入するように構成されている。
【0040】
A3.脱泡動作:
減圧用ポンプ300(図1)によって発生した負圧は、チューブt5及び負圧供給路358(図2(A))を介して第2圧力室89に供給される。このとき、第2圧力室89の圧力(負圧)と大気室87の圧力(大気圧)との圧力差によって隔壁部88aが第2圧力室89の内側に撓んで下方に変位する。弁体82は、支持ロッド84を介して押し下げられる。そして、弁体82が開放位置に位置すると、連通孔86が開放されて負圧が減圧室80に供給される。すると、脱泡室92の圧力が脱泡室92の圧力よりも低くなり、脱泡室92の天井部分にトラップされた気泡(ガス)BLは、減圧室80と脱泡室92との間の圧力差によって隔壁部90を透過して減圧室80に流入する。
【0041】
A4.キャリッジ100の詳細構成:
図3は、キャリッジ100の詳細構成を示す斜視図である。なお、図3では、図示の便宜上、ブラックインクの供給に関わる構成のみを示している。上述した構成(機能)を有するキャリッジ100は、複数の薄板部材(以下、「プレート」と呼ぶ)が鉛直方向(Y軸)に積層された構成を有する。これらの複数のプレートにおいて、積層方向と垂直な面(積層面:X−Z平面)の形状は、いずれも同じ大きさの矩形である。なお、図3では、積層された複数のプレートのうち隔壁プレート10の詳細を例示しており、他のプレートについては省略している。
【0042】
隔壁プレート10は、隔壁部90と、流路形成部52と、流路形成部66とを備えている。流路形成部52は、隔壁プレート10の裏面に形成された溝であり、隔壁プレート10と、裏面において当接するプレート(図示省略)とが積層された際に、内部流路79の一部を構成する流路79aを形成する。流路形成部52(溝)の一端は脱泡室92と接続され、他端は隔壁プレート10を貫通する貫通孔51と接続されている。流路形成部66は、隔壁プレート10の表面に形成された溝であり、隔壁プレート10と、表面(積層面のうち上方の面)において当接するプレート(図示省略)とが積層された際に、内部流路62を形成する。なお、流路形成部66の一端は隔壁プレート10の裏面に設けられた流通孔65と接続されている。
【0043】
A5.内部流路79と脱泡室92との連通状態:
図4は、図3に示すA−A断面の詳細を示す断面図である。図4の例では、図3に示す隔壁プレート10に加えて、他の3つのプレートを示している。
【0044】
隔壁プレート10の上方に隣接して、減圧室プレート11が配置されている。また、隔壁プレート10の下方に隣接して、第1脱泡室プレート12が配置されている。この第1脱泡室プレート12の下方に隣接して、第2脱泡室プレート13が配置されている。
【0045】
減圧室プレート11は、下方が開口である凹部21と、厚み方向(Y軸に沿った方向)に貫く貫通孔53とを備えている。隔壁プレート10は、隔壁部90の下部に形成された凹部20と、前述の貫通孔51と、前述の流路形成部52とを備えている。凹部20は、断面(X−Z断面)の形状が矩形の四角柱状の窪みである。第1脱泡室プレート12は、厚み方向に貫く貫通孔22と、流路形成部54とを備えている。流路形成部54は、第1脱泡室プレート12の上部表面に形成されたX軸と平行な方向に延びる溝である。第2脱泡室プレート13は、凹部23を備えている。凹部23は、第2脱泡室プレート13の上部表面に設けられた開口とその開口よりも小さい底面とを有するすり鉢形状を有する。凹部23の底面BSには、インク吐出流路154として用いられる厚み方向に貫く貫通孔が設けられている。
【0046】
上述した4つのプレート10〜13が積層されると、減圧室80,脱泡室92,内部流路79,流路79aが形成される。具体的には、凹部21と隔壁部90とによって減圧室80が形成される。また、凹部20と貫通孔22と凹部23とによって脱泡室92が形成される。また、2つの貫通孔53,51が互いに連通して内部流路79の一部が形成される。また、流路形成部52と流路形成部54とが対向して配置され、これら2つの流路形成部52,54の間に流路79aが形成される。
【0047】
流路79aは、主流路部79bと、連通部79cとを備えている。主流路部79bは、X軸と平行な方向に延びる流路であり、一端が貫通孔51と接続されている。連通部79cは、主流路部79bから脱泡室92に向かう上向きの流路として形成されており、脱泡室92と主流路部79bとを連通させる。ここで、連通部79cの一端は、脱泡室92の側壁と接続している。なお、図4の例では、気泡BLは、連通部79cと脱泡室92の側壁とが接続する箇所よりも上方において捕捉されている。連通部79cと脱泡室92の側壁とが接続する箇所としては、脱泡室92において脱泡室92の高さの半分よりも上方にすることが好ましい。このようにすることにより、脱泡室92に流入したインクを下方に向かわせる一方、インク中の気泡を浮力により上昇させ、インクと気泡との分離を短時間のうちに実現できるからである。
【0048】
主流路部79b及び連通部79cの断面(Y−Z断面)の形状は、縦方向(Y軸に沿った方向)を長手方向とする長方形である(図3参照)。ここで、連通部79c(図4)は、主流路部79bから脱泡室92に向かって次第に細くなっており、脱泡室92との当接部分における断面積S2は、主流路部79bとの当接部分における断面積S1に比べて小さくなっている。したがって、連通部79cの平均断面積は、主流路部79bの断面積S1よりも小さい。なお、前述の断面積S2としては、上流から流れてきた気泡が集まって成長した気泡の断面積よりも小さくなることが好ましく、例えば、0.5平方ミリメートルとすることができる。
【0049】
図4の例では、脱泡室92のうち隔壁プレート10の有する凹部20(脱泡室92の天井部分)に大きな気泡BLが捕捉されている。この気泡BLは、例えば、脱泡室92内に充填されたインクにおいて複数の微細な気泡が上流から流れてきた後上昇し、天井部分に達したこれらの気泡が集まって成長したものである。ここで、連通部79cが主流路部79bから脱泡室92に向かう上向きの流路として形成されているのは、脱泡室92内を上昇する微細な気泡や、気泡BLのように天井部分に捕捉されている気泡を内部流路79に逆流させないようにするためである。すなわち、仮に連通部79c内に侵入する気泡があっても、侵入した気泡は浮力によって連通部79cを上昇して脱泡室92に戻ることとなり、主流路部79b及びその上流側に気泡が逆流することを抑制できる。また、連通部79cの断面形状を縦方向を長手方向とする長方形としているのは、以下の理由による。一般に気泡BLは断面形状が円又は横方向につぶれた楕円である。したがって、連通部79cの断面形状を縦長の長方形にすることにより、横方向(短手方向)の長さを気泡BLの直径(又は長軸)よりも短くして連通部79c内への気泡BLの侵入を抑制しつつ、連通部79cの断面積を大きくしてインクの流通性を高めることができるからである。また、連通部79cの平均断面積が主流路部79bの断面積S1よりも小さいのは、脱泡室92壁面における連通部79cとの接続部分の面積を小さくすることにより、気泡BLが連通部79c内に侵入することを抑制するためである。なお、内部流路79及び主流路部79bは、請求項における液体供給路に相当する。
【0050】
図5は、図4に示す第2脱泡室プレート13における凹部23の詳細構成を示す平面図である。図5では、凹部23を上方から見た図を示している。凹部23の底面BSの平面形状は、矩形ではなく、四隅が丸みを帯びたR形状(曲線形状)である。また、流路79aは、凹部23の右上端に対応する位置に配置されている。したがって、インクの初期充填時などにおいて、流路79aから脱泡室92内にインクが高速で流入すると、流入したインクは、−X方向に流入した後に凹部23の壁面に沿って方向を変えながら下方に向かうこととなる。この場合、図5に示すように、インクは渦流となってインク吐出流路154に流れ込むため、脱泡室92に残る気泡を減らすことができる。また、凹部23の水平方向の断面(X−Z断面)の輪郭における四隅の曲率半径は、開口部分(フィルタが配置される部分)から底面BSにむかうほど大きくなっている。したがって、凹部23において下方に向かうほど側面に気泡が停滞することが抑制され、気泡を天井部分(隔壁部90)に集めることができる。
【0051】
以上説明したように、キャリッジ100において、内部流路79は、流路79aを介して脱泡室92の側壁と接続している。したがって、脱泡室92内に流入したインクを側面から下方に向かって流し、また、インク中の気泡を浮力により上方に向かわせることができ、インクと気泡とを容易に分離することができる。それゆえ、インク中の気泡を短時間のうちに脱泡室92の天井部分(隔壁部90)に集めることができ、短時間のうちに多量の気泡を除去することができる。また、連通部79cは、主流路部79bから脱泡室92に向かう上向きの流路として形成されているため、脱泡室92内の気泡が主流路部79bやその上流側(内部流路79)に逆流することを抑制することができる。また、このように連通部79cを上向きの流路として構成することにより、主流路部79bの天井部分の厚み(Y軸方向の長さ)を大きくすることができる。したがって、主流路部79bからの水分の蒸発を抑制することができ、インクの増粘化を抑制することができる。また、連通部79cの断面を長方形としており、また、連通部79cの平均断面積が主流路部79bの断面積S1よりも小さくなるように構成されているので、脱泡室92内の気泡BLが連通部79c内に侵入することを抑制することができる。また、脱泡室92の側面はR形状を有しているので、脱泡室92の側面に気泡が停滞することを抑制することができる。一方、脱泡室92の天井部分(隔壁部90)の断面(X−Z断面)の輪郭の形状は矩形であるため、隔壁部90と気泡との接触面積を大きくすることができると共に、天井部分の四隅において気泡を停滞させることができる。また、脱泡室92は、内部にインク吸収材を充填した構成としておらず、直接インクを貯留することが可能であるので、貯留したインクが脱泡室内に残留してしまうことを抑制することができる。また、インク吸収材を用いないので、キャリッジ100の製造コストを抑えることができる。また、インク吸収材を用いないので、図5に示すように、脱泡室92内に流入したインクの流れを利用した気泡の排出性を向上することができる。
【0052】
B.第2の実施例:
図6は、第2の実施例におけるキャリッジを構成するプレートの積層状態を示す説明図である。なお、図6は、図4と同じA−A断面を示す。第2の実施例における脱泡機構としてのキャリッジは、連通部の構成においてキャリッジ100(図1〜5)と異なり、他の構成については、第1の実施例と同じである。
【0053】
具体的には、第1の実施例における連通部79c(図4)は、主流路部79bから脱泡室92に向かって次第に細くなっており、脱泡室92との当接部分における断面積S2は、主流路部79bとの当接部分における断面積S1(主流路部79bの断面積S1)に比べて小さくなっていた。これに対し、第2の実施例における連通部79dは、断面積が一定である。なお、この連通部79dの断面積は、主流路部79bの断面積S1と同じである。また、連通部79dは、第1の実施例の連通部79cと同様に、主流路部79bから脱泡室92に向かう上向きの流路として形成されている。
【0054】
このような構成を有する第2の実施例におけるキャリッジは、第1の実施例のキャリッジ100と同様な効果を有する。
【0055】
C.第3の実施例:
図7は、第3の実施例におけるキャリッジを構成するプレートの積層状態を示す説明図である。なお、図7は、図4と同じA−A断面を示す。第3の実施例における脱泡機構としてのキャリッジは、連通部の構成においてキャリッジ100(図1〜5)と異なり、他の構成については、第1の実施例と同じである。
【0056】
具体的には、第1の実施例における連通部79c(図4)は、主流路部79bから脱泡室92に向かう上向きの流路として形成されていたが、第2の実施例における連通部79fは、主流路部79bから脱泡室92に水平方向に延びる流路として形成されている。なお、連通部79fは、第1の実施例の連通部79cと同様に、主流路部79bから脱泡室92に向かって次第に細くなっている。
【0057】
このような構成を有する第3の実施例におけるキャリッジは、第1の実施例のキャリッジ100と同様な効果を有する。
【0058】
D.第4の実施例:
図8は、第4の実施例におけるキャリッジを構成するプレートの積層状態を示す説明図である。なお、図8は、図4と同じA−A断面を示す。第4の実施例における脱泡機構としてのキャリッジは、連通部の構成においてキャリッジ100(図1〜5)と異なり、他の構成については、第1の実施例と同じである。
【0059】
具体的には、第2の実施例の連通部79gは、中央に仕切り部D1を有する水平方向に延びた流路として形成されている。仕切り部D1は、流路を上下に二分している。これら2つの流路はいずれも同じ断面積S3を有しており、その合計断面積は、第1の実施例における連通部79cと脱泡室92との当接部分における断面積S2と同じである。
【0060】
このような構成を有する第4の実施例のキャリッジは、第1の実施例のキャリッジ100と同様な効果を有する。また、連通部79gは、仕切り部D1を設けて流路を分割しているので、各流路の脱泡室92との当接面の断面積を小さくして気泡の侵入を抑制しつつ、内部流路79としての脱泡室92との当接面の合計面積を大きくしてインクの流通性を高めることができる。
【0061】
E.第5の実施例:
図9は、第5の実施例におけるキャリッジを構成するプレートの積層状態を示す説明図である。なお、図9は、図4と同じA−A断面を示す。第5の実施例における脱泡機構としてのキャリッジは、主流路部79bを備えていない点と、脱泡室92における連通部との接続位置が側壁ではなく天井部分である点と、においてキャリッジ100(図1〜5)異なり、他の構成については第1の実施例と同じである。
【0062】
具体的には、第5の実施例における隔壁プレート10aは、流路形成部52を備えていない。また、この隔壁プレート10aの有する隔壁部90aは、第1の実施例の隔壁部90よりも水平方向の長さが短く、隔壁部90aに隣接して連通部79hを備えている。この連通部79hは、隔壁プレート10aを厚み方向に貫く貫通孔である。
【0063】
第5の実施例における減圧室プレート11aにおいて、貫通孔53は、各プレートが積層されたときに、連通部79hの上方に隣接して配置される。したがって、前述の連通部79hは、この貫通孔53(内部流路79)と脱泡室92とを鉛直方向(Y軸と平行な方向)に連通させる。第5の実施例における第1脱泡室プレート12aは、流路形成部54を備えていない。なお、本実施例では、内部流路79が請求項における液体供給路に相当する。
【0064】
ここで、連通部79hの断面(X−Z断面)は長方形であり、その面積は、第1の実施例における連通部79cと脱泡室92との当接部分における断面積S2と同じ(例えば、0.5平方ミリメートル)である。また、この連通部79hの面積は、貫通孔53(内部流路79)の断面積S3よりも小さい。
【0065】
このような構成を有する第5の実施例のキャリッジにおいて、連通部79hは断面積が小さく、成長した大きな気泡BLが通過し難い。したがって、インク内の気泡が内部流路79に侵入して逆流することを抑制することができ、短時間のうちに多量の気泡を除去することができる。また、連通部79hの断面形状を長方形としているので、連通部79hの断面の少なくとも短手方向について気泡BLの直径よりも短くすることができ、連通部79c内への気泡BLの侵入を抑制できる。
【0066】
F.第6の実施例:
図10は、第6の実施例におけるキャリッジを構成するプレートの積層状態を示す説明図である。なお、図10は、図4と同じA−A断面を示す。第6の実施例における脱泡機構としてのキャリッジは、脱泡室92における連通部との接続位置が側壁ではなく底面BSである点においてキャリッジ100(図1〜5)異なり、他の構成については第1の実施例と同じである。
【0067】
具体的には、第6の実施例における隔壁プレート10bは、流路形成部52を備えていない。第6の実施例における第1脱泡室プレート12bは、流路形成部54を備えていない。また、第1脱泡室プレート12bは、厚み方向に貫く貫通孔49を備えている。そして、各プレートが積層されたときに、貫通孔53,51,49は互いに連通し、内部流路79の一部を構成する。
【0068】
第6の実施例における第2脱泡室プレート13aは、流路79mを備えている。この流路79mは、第1の実施例における流路79aと同様に、内部流路79の一部を構成する。流路79mは、主流路部79jと、連通部79kとを備えている。主流路部79jは、L字型に屈曲した流路であり、一端は第2脱泡室プレート13aの上部表面に達している。そして、各プレートが積層されたときに、主流路部79jは、内部流路79(貫通孔49)と連通する。
【0069】
連通部79kは、脱泡室92と主流路部79jとを連通させる。この連通部79kの一端は主流路部79jと接続し、他端は脱泡室92の底面BSと接続している。連通部79kは、第1の実施例における連通部79cと同様に、主流路部79jから脱泡室92(底面BS)に向かう上向きの流路として形成されている。また、連通部79kは、主流路部79jから脱泡室92に向かって次第に細くなっており、脱泡室92との当接部分における断面積S2は、主流路部79jとの当接部分における断面積S1に比べて小さくなっている。したがって、連通部79kの平均断面積は、主流路部79jの断面積S1よりも小さい。なお、前述の断面積S2としては、第1の実施例と同様に、例えば、0.5平方ミリメートルとすることができる。
【0070】
このような構成を有する第6の実施例におけるキャリッジは、第1の実施例のキャリッジ100と同様な効果を有する。
【0071】
G.変形例:
なお、上記各実施例における構成要素の中の、独立クレームでクレームされた要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0072】
G1.変形例1:
上述した各実施例では、連通部79c,79d,79f,79gにおける断面形状は縦方向を長手方向とする長方形であったが、これに代えて、横方向を長手方向とする長方形とすることもできる。また、その断面形状を、長方形に代えて、三角形や五角形等の長手方向と短手方向とがある任意の形状とすることができる。このようにすることにより、脱泡室92から連通部内への気泡BLの侵入を抑制できる。なお、前述の断面形状を、正方形や円など、長手方向と短手方向とを有さない任意の形状とすることもできる。
【0073】
G2.変形例2:
上述した各実施例では、脱泡室92の底部はR形状を有していたが、これに代えて、鋭角部分を有する形状(例えば、四角柱形状)とすることもできる。また、脱泡室内にインクを吸収する部材を充填し、かかるインク吸収部材にインクを吸引させて貯留することもできる。
【0074】
G3.変形例3:
上述した各実施例では、減圧室80と脱泡室92との間の気体透過性を有する部分は、隔壁部90,90aとして一体形成されていたが、これに代えて、減圧室80の底面と脱泡室92の天井面とをそれぞれ気体透過性を有する別体の壁として形成し、これらの壁を、複数のプレートを積層した際に互いに接するように構成することもできる。また、各プレートの境界位置は、各実施例に示した位置に限らず任意の位置とすることもできる。また、キャリッジを構成するプレートの数を任意の数とすることができる。例えば、各実施例において、脱泡室92を形成するプレートの合計数は3枚であったが、これに代えて、4枚のプレートとすることもできる。
【0075】
G4.変形例4:
上述した第1の実施例では、脱泡室92の側壁(側面)における連通部との接続位置は、脱泡室92の側面の高さの半分よりも上方であったが、これに代えて、脱泡室92の側面の高さの半分以下の位置とすることもできる。また、各実施例では、脱泡室92における連通部との接続位置(接続面)は、側壁(側面),上面,底面のいずれかであったが、これに代えて、脱泡室92の隅とすることもできる。また、側面と上面とにそれぞれ連通部を設けるなど、脱泡室92の複数の面において連通部と接続する構成とすることもできる。この場合において、上述した各実施例の連通部79c,79d,79f,79g,79h,79kを組み合わせて用いることができる。
【0076】
G5.変形例5:
上述した各実施例では、プリンタ500が吐出するインクの種類は4色であったが、これに代えて任意の種類のインクを吐出する構成とすることができる。また、各実施例のプリンタはオフキャリッジタイプのプリンタであったが、これに代えて、インクカートリッジをキャリッジに搭載するいわゆるオンキャリッジタイプのプリンタを採用することもできる。
【0077】
G6.変形例6:
上述した第1の実施例では、連通部79cは、主流路部79bから脱泡室92に向かって単調上昇する上向きの流路であったが、これに代えて、階段状に上昇する上向きの流路とすることもできる。また、連通部79cを、主流路部79bから脱泡室92に向かって凹状に屈曲する又は凸状に屈曲する形状の流路とすることもできる。すなわち一般には、連通部79cとして、連通部79cにおいて脱泡室92(の側壁)と接続する位置が、連通部79cにおいて主流路部79bと接続する位置よりも高い位置となる任意の形状の流路を、本発明の脱泡機構に採用することができる。
【0078】
G7.変形例7:
上述した各実施例では、プリンタ500における脱泡機構としてキャリッジに適用した例を示したが、これに代えて、キャリッジとは別に脱泡機構を構成することもできる。例えば、各実施例において、チューブt11〜t14の途中に脱泡室及び減圧室を設けて脱泡機構を構成することもできる。このような構成においても、チューブt11〜t14と脱泡室とを連通させる連通部を上述した各実施例のように構成することにより、短時間のうちに多量の気泡を除去することができる。
【0079】
G8.変形例8:
上述した各実施例では、インクジェット式プリンタについて説明したが、本発明は、これに限らず、インク以外の他の液体を噴射する任意の液体噴射装置に適用することができる。例えば、ファクシミリ装置等の画像記録装置や、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッドや、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレーや、面発光ディスプレー (Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材噴射装置や、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を噴射する液体噴射装置や、精密ピペットとしての試料噴射装置や、潤滑油の噴射装置や、樹脂液の噴射装置等にも適用できる。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用しても良い。そして、これら微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置のうちいずれか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【0080】
なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれば良い。例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の脱泡機構としてのキャリッジ100を備えたプリンタ500の概略構成を示す説明図である。
【図2】インク噴射時のキャリッジ100及び記録ヘッド150の状態を示す説明図及び開放されたインク流入口76から第1圧力室77にインクが流入した後におけるキャリッジ100及び記録ヘッド150の状態を示す説明図である。
【図3】キャリッジ100の詳細構成を示す斜視図である。
【図4】図3に示すA−A断面の詳細を示す断面図である。
【図5】図4に示す第2脱泡室プレート13における凹部23の詳細構成を示す平面図である。
【図6】第2の実施例におけるキャリッジを構成するプレートの積層状態を示す説明図である。
【図7】第3の実施例におけるキャリッジを構成するプレートの積層状態を示す説明図である。
【図8】第4の実施例におけるキャリッジを構成するプレートの積層状態を示す説明図である。
【図9】第5の実施例におけるキャリッジを構成するプレートの積層状態を示す説明図である。
【図10】第6の実施例におけるキャリッジを構成するプレートの積層状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0082】
IC1〜IC4…インクカートリッジ、10,10a,10b…隔壁プレート、11,11a…減圧室プレート、12,12a,12b…第1脱泡室プレート、13,13a…第2脱泡室プレート、14…チューブ、20,21,23…凹部、22,49,51,53…貫通孔、52,54,66…流路形成部、60…フィルタ室、61…フィルタ、62,64…内部流路、65…流通孔、70…バルブ室、71…第1調圧バルブ、72…弁体、73…圧力調整バネ、74…支持ロッド、75…シール部材、76…インク流入口、77…第1圧力室、79…内部流路、79a,79m…流路、79b,79j…主流路部、79c,79d,79f,79g,79k…連通部、80…減圧室、81…第2調圧バルブ、82…弁体、83…圧力調整バネ、84…支持ロッド、85…シール部材、86…連通孔、87…大気室、88a,88b…隔壁部、89…第2圧力室、90,90a…隔壁部、92…脱泡室、93…フィルタ、95…インク吐出流路、99…大気連通孔、100…キャリッジ、150…記録ヘッド、152…ノズルプレート、154…インク吐出流路、220a〜220d…インク供給用ポンプ、260…ガイドロッド、270…プラテン、300…減圧用ポンプ、358…負圧供給路、500…プリンタ、P…記録用紙、t1〜t5,t11〜t14…チューブ、BL…気泡、BS…底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射装置の有する液体供給路内を流通する液体から気泡を取り除くための脱泡機構であって、
鉛直方向に延びる側壁を有し、前記液体中の気泡を捕捉するための脱泡室と、
前記側壁において前記脱泡室と前記液体供給路とを連通させる連通部と、
を備える、脱泡機構。
【請求項2】
請求項1に記載の脱泡機構において、
前記連通部において前記側壁と接続する位置は、前記連通部において前記液体供給路と接続する位置よりも高い、脱泡機構。
【請求項3】
請求項2に記載の脱泡機構において、
前記連通部は、前記連通部において前記液体供給路と接続する位置から、前記連通部において前記側壁と接続する位置に向かう上向きの流路を有する、脱泡機構。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の脱泡機構において、
前記連通部は、前記液体供給路の断面積よりも小さい断面積の流路を有する、脱泡機構。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の脱泡機構において、
前記連通部は、長手方向と短手方向とを有する断面形状の流路を有する、脱泡機構。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の脱泡機構において、
前記脱泡室側面は、曲線形状を有する、脱泡機構。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の脱泡機構において、
前記脱泡室は、前記液体を吸収する部材を内部に有していない、脱泡機構。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の脱泡機構を備える、液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−58324(P2010−58324A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224895(P2008−224895)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】