説明

脱硝装置

【課題】塊状灰が脱硝触媒まで飛来することを防止し、さらにはアンモニアの分布をそろえて効率よくNOxと反応させることができる脱硝装置を提供する。
【解決手段】煙道の一部を構成する排ガス流路16と、該排ガス流路断面内に分散配設された複数のアンモニア注入ノズルを有するアンモニア注入装置23と、該アンモニア注入装置23の下流側に配設され、前記排ガス中の窒素酸化物と前記アンモニア注入ノズルから注入されたアンモニアとの反応を促進するための脱硝触媒28と、前記排ガス流路内の前記排ガスの流れを整流し、前記排ガス流路断面内とは別の排ガス流路断面内に均一に分布され、かつ、前記排ガス中に含まれる塊状灰の流通を可能とする多数の排ガス流通部を含む、整流部材18と、該整流部材18の下流側に配設され、前記整流部材18を通過した塊状灰を回収する集塵用流路21に接続された回収開口21aとを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラユニットの排煙処理設備に配設される脱硝装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石炭焚あるいは油焚ボイラ等で、ボイラ排ガス中に塊状灰(ポップコーン灰)やスケール等が含まれることがある。特に、亜瀝青炭等の低質燃料を燃焼させた場合、石炭燃料中のカルシウム(Ca)成分等が起因して、径1cm程度の大きさの塊状灰が発生する場合がある。この塊状灰は比重も軽いために、排ガスと共に脱硝装置まで飛来し、脱硝触媒の目詰まりの原因となり、脱硝装置における差圧上昇や、触媒摩耗損傷等の不具合が生じる場合がある。このような塊状灰が脱硝触媒に飛散する原因の一つとして、ボイラ出口以降の脱硝装置入口ダクトでの排ガス流路における排ガス流速のアンバランスの影響が考えられる。排ガス流路の断面において、流速分布が大きめとなる状況が発生すれば、高流速部では排ガスと共に塊状灰が脱硝反応器まで運ばれてしまうことが懸念される。塊状灰の対策として、ボイラ出口に金網を設置して、塊状灰を捕集する方法があるが、脱硝装置内での上述した排ガス高流速部の影響等で金網が破れることがあり、定期的な金網補修を余儀なくされ安定した運転を実現することは困難であった。
【0003】
このような塊状灰を捕集するための排ガスダスト除去装置とその運用方法が特許文献1に開示されている。この装置は、ダクトに仕切り板を設け、仕切られた分割ダクト内にダンパを設け、鉛直ダクトに配設されたダスト篩の上流側と下流側の差圧の値により、ダンパの開閉制御をし、ダストを鉛直ダクト下端のホッパに回収するものである。しかしながら、特許文献1の装置及び方法では、塊状灰を捕集するための構造が複雑であり、さらに差圧を計測しなければならないため、その制御も必要となり、塊状灰捕集に際して手間がかかり面倒である。
【0004】
一方で、脱硝装置では、ボイラから発生する排ガス中のNOx分布に対して、還元剤としてのアンモニアを注入するためのアンモニア(NH)注入ノズルからの注入量を調整して、脱硝装置出口での排ガス中NOx濃度の均一化を実現するためのアンモニア分配調整により、注入したアンモニアが効率よくNOxと反応するようにしている。しかしながら、ボイラ出口で過大な排ガス流速分布が発生するような状況においては、アンモニア注入バランス調整を実施してもアンモニア分配調整がうまくいかないことがあった。すなわち、上述したボイラ出口における排ガス流速のアンバランスが発生すると、注入したアンモニアの分布もこれに伴って不均一となり、脱硝装置出口の排ガスNOx濃度のアンバランスが発生してしまう。このとき、脱硝装置出口におけるNOx濃度分布のアンバランスに伴い、残存アンモニア濃度分布が大きめとなると、脱硝装置の交流に配置される空気余熱のためのガスエアヒータ(GAH)において、局所的にアンモニア濃度が高い部分が発生し、これが酸性硫安すなわち硫酸水素アンモニウム(NHHSO)や硫安すなわち硫酸アンモニウム((NHSO)となり、ガスエアヒータの中温層〜低温層エレメントでの閉塞が進行してしまう。また、脱硝触媒上流で煙道中に注入されたアンモニアのアンバランス発生により、触媒入口でのNH/NOxモル比バランス分布も大きめとなる影響を受け、脱硝反応が効率よく進まなくなり、その結果としてアンモニア投入量の増加を招くことになる。
【0005】
リークアンモニア量を極力抑えながら効率よく脱硝装置を運用するための脱硝反応器アンモニア注入装置及び方法が特許文献2に開示されている。この装置及び方法は、ダクト出口の排ガス流速分布をガス再循環ファンを設けることで、ボイラ負荷を考慮してアンモニア注入部での排ガス流速分布を求め、適切なアンモニア注入量を求めて投入するものである。しかしながら、特許文献2の構成は、演算処理や制御のための装置が必要であり、構造が複雑で、さらにボイラの運転負荷も考慮しなければならず、適切なアンモニア注入量を求めるのに手間がかかり面倒である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−152746号公報
【特許文献2】特開平11−179155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであって、塊状灰が脱硝触媒まで飛来することを防止し、さらにはアンモニアの分布をそろえて効率よくNOxと反応させることができる脱硝装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、請求項1の発明では、ボイラから排出された排ガスを導く煙道に備えられ、前記排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置であって、前記煙道の一部を構成し、前記脱硝装置内で前記排ガスが流通する排ガス流路と、該排ガス流路断面内に分散配設された複数のアンモニア注入ノズルを有するアンモニア注入装置と、該アンモニア注入装置の下流側に配設され、前記排ガス中の窒素酸化物と前記アンモニア注入ノズルから注入されたアンモニアとの反応を促進するための脱硝触媒と、前記排ガス流路内の前記排ガスの流れを整流する整流部材であって、前記排ガス流路断面内とは別の排ガス流路断面内に均一に分布され、かつ、前記排ガス中に含まれる塊状灰の流通を可能とする多数の排ガス流通部を含む、整流部材と、該整流部材の下流側に配設され、前記整流部材を通過した塊状灰を回収する集塵用流路に接続された回収開口と、を含むことを特徴とする脱硝装置を提供する。
【0009】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記整流部材には耐摩耗コーティングが施されていることを特徴としている。
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、前記回収開口の下流側に前記塊状灰よりもメッシュが小さい網部材が配設されていることを特徴としている。
請求項4の発明では、請求項1〜3の発明において、前記整流部材の下流側に、前記アンモニア注入装置が配設されていることを特徴としている。
【0010】
請求項5の発明では、請求項1〜4の発明において、前記排ガス流路は、前記ボイラ出口から斜め上方に延びる傾斜部と、該傾斜部端部から鉛直上方に延びる鉛直上昇部と、該鉛直上昇部端部から水平方向に延びる水平部と、該水平部端部から鉛直下方に延びる鉛直下降部とからなり、前記アンモニア注入装置は前記水平部に取り付けられ、前記脱硝触媒は前記鉛直下降部に取り付けられ、前記整流部材及び前記集塵用流路は前記傾斜部に取り付けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、排ガス流路断面に対して均一に分布されて配され、排ガス中に含まれる灰が流通可能な径を有する多数の排ガス流通部を含む整流部材が備わるため、排ガス流路における排ガス流速分布を均一にすることができる。したがって、塊状灰が整流部材の排ガス流通部を通過しても、排ガス流路には高流速部が存在しないため、塊状灰が脱硝触媒まで飛来することを防止できる。また、整流部材の下流側に集塵用流路が備わるため、整流部材を通過した塊状灰はそのまま排ガス流路を流通せずに、この集塵用流路に流入し、塊状灰を回収することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、整流部材には耐摩耗コーティングが施されているため、排ガス中に含まれる灰の抵抗となることを極力抑制することができ、ボイラ運転に支障をきたすことを防止することができる。
請求項3の発明によれば、整流部材の下流側に塊状灰よりもメッシュが小さい網部材が配設されているため、整流部材を通過した塊状灰の大部分を網部材により捕集することができる。したがって、塊状灰が脱硝触媒に飛散することを確実に防止することができる。このとき、整流部材により排ガス流路の流速は均一にされているから、局所に高速流速部があることによる網部材の摩耗による破損を招くことはない。
【0013】
請求項4の発明によれば、整流部材の下流側に、アンモニア注入装置が配設されているため、整流された排ガス流路に対して、流路断面に均一(一様)に配されたアンモニア注入ノズルからアンモニアを注入するので、排ガス中のNOx分布が均一になり、さらにこの流速分布の中にアンモニアを均一に注入するため、アンモニアの分布も均一となり、NOxとアンモニアを効率よく反応させることができる。
【0014】
請求項5の発明によれば、アンモニア注入装置を水平部に、脱硝触媒を鉛直下降部に、整流部材及び集塵用流路を傾斜部に取り付けることにより、排ガス流路断面における排ガスの流速分布が均一になること、さらにアンモニアの分布が均一になる。このことは、本願発明者らがシミュレーションにより確認している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る脱硝装置が適用される煙道の概略図である。
【図2】本発明に係る脱硝装置の概略図である。
【図3】整流部材の概略正面図である。
【図4】アンモニア注入装置の概略図である。
【図5】排ガス流路における流速分布を示すグラフである。
【図6】アンモニアの分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明に係る脱硝装置が適用される煙道の概略図である。
図示したように、煙道1は、その始端にボイラ2が備わり、終端に煙突3が備わる。これらボイラ2、煙突3の間には、上流側より、脱硝装置4、電気集塵機5、脱硫装置6が配されている。ボイラ2の入り口には押込ファン7であるFDF(Forced Draft Fan)が備わる。この押込ファン7とボイラ2の間、及び脱硝装置4と電気集塵機5の間には、空気予熱機8であるAPH(Air Pre Heater)が備わる。電気集塵機5と脱硫装置6の間には、燃焼後のボイラ排ガスを送風するための誘因通風機9であるIDF(Induced Draft Fan)が備わる。脱硫装置6と煙突3の間には、昇圧用ファン10であるBUF(Boost Up Fan)が備わる。誘因通風機9と脱硫装置の間、及び昇圧用ファン10と煙突3の間には、熱エネルギー回収のための熱交換機11であるGGH(Gas Gas Heat exchanger)が備わる。
【0017】
石炭焚ボイラから排出される排ガスは、脱硝、集塵、脱硫処理が施され、煙突3から外部に排出される。本発明は、この排ガス排出プロセスに用いられる脱硝装置に関するものである。
図2は本発明に係る脱硝装置の概略図である。また、図3は整流部材の概略正面図であり、図4はアンモニア注入装置の概略図である。
【0018】
図2に示すように、ボイラ2の出口側(図ではボイラ2の燃焼部が含まれる入口側は省略している)は、仕切り壁12により、再熱ガス流路13と過熱ガス流路14に区画されている。再熱ガス流路13には図示しない再熱器(RH)が配設され、過熱ガス流路14には図示しない過熱器(SH)が配設されている。再熱ガス流路13及び過熱ガス流路14の出口側には、STCダンパ15が配設されている。このSTCダンパ15は、それぞれの流路13,14の流量を調整するものであり、ボイラ2が低負荷になると、一方で熱回収を積極的に行わせるためにダンパを閉じる等の制御が施される。STCダンパ15の上流には、図示しない節炭器(ECO)が配設されている。
【0019】
脱硝装置4は、このボイラ2の下流に設けられている。すなわち、脱硝装置4に形成された排ガス流路16がボイラ2の出口側に連通している。この排ガス流路16は上述した煙道1の一部を構成している。この排ガス流路16は、ボイラ2の出口から斜め上方に延びる傾斜部16aと、傾斜部16a端部から鉛直上方に延びる鉛直上昇部16bと、鉛直上昇部16b端部から水平方向に延びる水平部16cと、水平部16c端部から鉛直下方に延びる鉛直下降部16dとからなる。
【0020】
傾斜部16aの入口側であってボイラ2の下方には、ホッパ17が形成されている。このホッパ17は、ダストを捕集するためのものである。傾斜部16aには整流部材18が配設されている。整流部材18は、図3に示すように、パンチングメタルからなる多孔板を有する。より詳しくは、枠体19内に複数のパンチングメタルが嵌め込まれて形成されている。この多孔分布は、傾斜部16aの断面に対して均一になるように形成されている。上述したSTCダンパ15の開度によっては、傾斜部16aの入口側において排ガスの流速分布が不均一になる。より詳しくは、STCダンパ15出口における鉛直方向から傾斜部16aへの斜め上方向への排ガス流れの方向の変化に影響されて、傾斜部16aの入口下側にガス流れが集中し、入口上側では排ガス流れの巻き込みの発生が生じ、循環領域となっている。すなわち、傾斜部16aの入口下側の流速が上側に比して高速になっている。ここに整流部材18を傾斜部16aに配設することにより、傾斜部16a断面における流速分布を均一にすることができる。すなわち、傾斜部16a断面においてばらばらであった流速が、整流部材18によってある程度せき止められ、流通方向を多数の排ガス流通部(図ではパンチングメタルの孔)で決められて、結果として流速が揃えられる。したがって、ボイラ2からの排ガスに含まれる塊状灰が高流速部に沿ってそのまま下流まで飛来することを防止できる。なお、整流部材18としては、ある程度の排ガス流路16の抵抗となり、排ガス流路16の断面に対して均一に分布した多数の排ガス流通部を備えているものであれば、パイプが入り組んで形成された熱交換器のようなものであってもよい。
【0021】
整流部材18には、例えば熱処理を施したアルミニウム合金等の耐摩耗コーティングが施されている。これにより、排ガス中に含まれる灰の抵抗となることを極力抑制することができ、ボイラ運転に支障をきたすことを防止することができる。また、整流部材18として図示したような多孔板を用いた場合、例えば孔径が40φ、開口率が65%、板厚が9mmであることが好ましい。簡単な構造で整流部材を形成することができるからである。ただし、上記多孔板の孔径等の数値は、許容圧損範囲内でその都度決定される。
【0022】
整流部材18の下流側には、金網(網部材)20が取り付けられている。この金網20の網目は、脱硝触媒の目開き寸法と同程度の4メッシュ〜5メッシュ程度を採用する。したがって、10φ以上の塊状灰はこの金網20を通過することができないので、全てこの金網で捕集される。これにより、塊状灰が下流側に飛散することを確実に防止することができる。このとき、整流部材18により排ガス流路の流速は均一にされているから、局所に高速流速部があることによる金網20の破損を招くことはない。
【0023】
整流部材18の下流側であって金網20の上流側には、排ガス再循環による再熱器蒸気温度コントロール(GR制御)や、排ガス再循環によるNOx低減及び過熱器蒸気コントロール(GI制御)のための循環流路が配設されている。例えば、GR制御では、この循環流路の途中に設けられた図示しない排ガスミキシングファン1(GMF)の回転数を制御し、ボイラ内のガス流量を変化させて温度を制御している。整流部材18を通過した塊状灰は、この循環流路内に流入する。したがって、循環流路は、塊状灰を回収するため、集塵用流路21としても作用する。すなわち、集塵用流路21は塊状灰が回収される回収開口21aを排ガス流路16に臨んで配設されている。集塵用流路21の途中には、集塵装置(マルチサイクロン等)22が備わり、これにより塊状灰は回収される。塊状灰を効率よく捕集するために、集塵用流路21は、整流部材18のできるだけ下流側近傍に備えることが好ましい。また、上述した金網20は、回収開口21aの下流に備えることが好ましい。なお、整流部材18を通過しなかった塊状灰は、上述したホッパ17に回収される。
【0024】
水平部16cには、アンモニア注入装置(AIG(Ammonia-Injection-Grid))23が配設されている。このアンモニア注入装置23は、図4に示すように、排ガス流路16の断面に対してアンモニア注入ノズル24が一様に拡がって碁盤目状に配設されたものである。すなわち、アンモニア注入装置23は、排ガス流路16を横断する複数のアンモニア注入ブロック25からなる(図では2つのブロック)。アンモニア注入ブロック25は、アンモニア供給母管26から分岐(図では4本に分岐)する分岐管27と、この分岐管27に多数備えられた(図では3本の分岐管27にのみ記載)アンモニア注入ノズル24を有し、これらが複数個(図では3個)重なって形成されている。各母管26から分岐する分岐管27の長さは、各母管26によって異なる(図では上流側の分岐管27が一番長く、下流側に向かって短くなる)。このようにアンモニア注入ノズル24を流路断面に対して均一に配設するので、アンモニアが流路に対して均一になるように注入され、NOxと効率よく反応させることができる。すなわち、上述した整流部材18により整流されて均一となった排ガス中のNOx分布に対し、均一分布となるように注入されたアンモニアが反応するので、漏れなく確実にアンモニア(NH)と窒素酸化物(NOx)とを反応させることができる。
【0025】
鉛直下降部16dには、脱硝触媒28が複数個(図では2個)配設されている。この脱硝触媒28をアンモニアとNOxが通過することにより、NOxを窒素と水に分解することを促進している。脱硝触媒28としては、目が6mm〜7mm程度のハニカムあるいはプレート形状等を用い、酸化チタンを担体としてタングステンやバナジウム等の酸化物を活性成分として担持させたものを用いることができる。
【0026】
図5は排ガス流路における流速分布を示すグラフである。
グラフにおいて、Case-0は整流部材を取り付けなかった場合、Case-1は整流部材を取り付けた場合を示している。グラフの横軸は流速(m/s)を示し、縦軸は排ガス流路断面における高さ(mm)を示している。すなわち、グラフでは流路径が4500mmのものを用いている。なお、流速を計測した場所は、傾斜部16aの入口近傍である。Case-0においては、流路上側の流速が低いのに対し、流路中央から下側は20.0(m/s)〜30.0(m/s)と大きな値を示している。これは、排ガス中のNOx分布が不均一であることを示し、流速が30.0(m/s)もあると、1cm径の塊状灰でさえも排ガスに同伴されて下流側へ運ばれてしまう。この状態で傾斜部16aの入口付近に整流部材を設けると、Case-1が示すように、流路断面において流速がほぼ一定となり、均一となる。これにより、整流部材を配設することが排ガス流路の流速分布を揃えることがシミュレーションによりわかった。
【0027】
図6はアンモニアの分布図である。
図示したように、本発明によれば、アンモニア注入装置23の下流側の鉛直下降部16dにおけるアンモニア分布がほぼ均一に(175ppm(vol)〜200ppm(vol))揃っていることがわかる。これは、図2で示したような、アンモニア注入装置23を水平部16cに、脱硝触媒28を鉛直下降部16dに、整流部材18及び集塵用流路21を傾斜部16aに取り付けた場合に、排ガス流路断面における排ガスの流速分布とアンモニアの分布が均一となって最適となることを示している。したがって、脱硝触媒で過不足なくNOxとNHを効率よく反応させることができ、その結果として脱硝触媒出口での残存NH濃度分布が低減すること等の影響を受け、脱硝後流機器であるAPHにおける酸性硫安によるエレメント閉塞への影響を軽減できる。なお、図6において脱硝触媒は省略している。
【符号の説明】
【0028】
1 煙道
2 ボイラ
3 煙突
4 脱硝装置
5 電気集塵機
6 脱硫装置
7 押込ファン
8 空気余熱機
9 誘因通風機
10 昇圧用ファン
11 熱交換器
12 仕切り壁
13 再熱ガス流路
14 過熱ガス流路
15 STCダンパ
16 排ガス流路
16a 傾斜部
16b 鉛直上昇部
16c 水平部
16d 鉛直下降部
17 ホッパ
18 整流部材
19 枠体
20 金網
21 集塵用流路
22 集塵装置
23 アンモニア注入装置
24 アンモニア注入ノズル
25 アンモニア注入ブロック
26 アンモニア供給母管
27 分岐管
28 脱硝触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラから排出された排ガスを導く煙道に備えられ、前記排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置であって、
前記煙道の一部を構成し、前記脱硝装置内で前記排ガスが流通する排ガス流路と、
該排ガス流路断面内に分散配設された複数のアンモニア注入ノズルを有するアンモニア注入装置と、
該アンモニア注入装置の下流側に配設され、前記排ガス中の窒素酸化物と前記アンモニア注入ノズルから注入されたアンモニアとの反応を促進するための脱硝触媒と、
前記排ガス流路内の前記排ガスの流れを整流する整流部材であって、前記排ガス流路断面内とは別の排ガス流路断面内に均一に分布され、かつ、前記排ガス中に含まれる塊状灰の流通を可能とする多数の排ガス流通部を含む、整流部材と、
該整流部材の下流側に配設され、前記整流部材を通過した塊状灰を回収する集塵用流路に接続された回収開口と、を含むことを特徴とする脱硝装置。
【請求項2】
前記整流部材には耐摩耗コーティングが施されていることを特徴とする請求項1に記載の脱硝装置。
【請求項3】
前記回収開口の下流側に前記塊状灰よりもメッシュが小さい網部材が配設されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の脱硝装置。
【請求項4】
前記整流部材の下流側に、前記アンモニア注入装置が配設されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の脱硝装置。
【請求項5】
前記排ガス流路は、前記ボイラの出口から斜め上方に延びる傾斜部と、該傾斜部端部から鉛直上方に延びる鉛直上昇部と、該鉛直上昇部端部から水平方向に延びる水平部と、該水平部端部から鉛直下方に延びる鉛直下降部とからなり、前記アンモニア注入装置は前記水平部に取り付けられ、前記脱硝触媒は前記鉛直下降部に取り付けられ、前記整流部材及び前記集塵用流路は前記傾斜部に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の脱硝装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−264400(P2010−264400A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118812(P2009−118812)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】