説明

脱硝触媒の調製方法

【課題】発電用ガスタービンや石炭焚きボイラー等から排出される排ガスに含まれている窒素酸化物を処理する脱硝触媒の調製方法であって、触媒活性を向上させることができて、しかも触媒の製造コストの上昇を伴わない、脱硝触媒の調製方法を提供する。
【解決手段】脱硝触媒の調製方法は、窒素酸化物を還元剤であるアンモニアと共に反応させて窒素と水に分解する際に用いる脱硝触媒で、かつ触媒有効成分が酸化チタンとバナジウムである脱硝触媒の調製方法において、バナジウムの前駆体がメタバナジン酸アンモニウム粉末であり、該メタバナジン酸アンモニウム粉末は、粒径10μm以下の粒子が、累積含有率で20%以上含まれているものであることを特徴とする。メタバナジン酸アンモニウム粉末は、重油灰等の石油系燃焼灰からバナジウムを回収した再生品であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、発電用ガスタービンや石炭焚きボイラー等から排出される排ガスに含まれている窒素酸化物を処理する脱硝触媒の調製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、排ガスに含まれる窒素酸化物を処理するために使用される脱硝触媒は、チタニアにバナジウムを担持させたものである。従来の脱硝触媒では、その脱硝性能を向上させるために、触媒担持量や触媒中のバナジウム濃度を増加させる工夫がなされてきた。
【0003】
本発明者らは、下記の特許文献1に記載のように、セラミック繊維シートまたはそれを成形してハニカム状に加工した担体にチタニアを担持し、これをバナジウム溶液に浸漬して、バナジウムを含浸担持させる方法や、シリカゾルにチタニア粉末を懸濁させたチタニアスラリーにバナジウムを添加して調製したスラリーを、上記担体に担持させて、脱硝触媒を調製してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−155133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来法では、いずれも材料を多く使用するため、触媒コストの上昇を伴うという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、触媒活性を向上させることができて、しかも触媒の製造コストの上昇を伴わない、脱硝触媒の調製方法を提供しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、触媒の有効成分である金属化合物よりなる前駆体の粉末として、粒径が細かい粒子を含む材料を用いることで、触媒性能を向上させ得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1の脱硝触媒の調製方法の発明は、窒素酸化物を還元剤であるアンモニアと共に反応させて窒素と水に分解する際に用いる脱硝触媒で、かつ触媒有効成分が酸化チタン、バナジウム、およびタングステンである脱硝触媒の調製方法において、バナジウムの前駆体がメタバナジン酸アンモニウム粉末であり、該メタバナジン酸アンモニウム粉末は、粒径10μm以下の粒子が、累積含有率で20%以上含まれているものであることを特徴としている。
【0009】
ここで、メタバナジン酸アンモニウム粉末は、粒径10μm以下の粒子が、累積含有率で25%以上含まれているものであることが好ましい。
【0010】
請求項2の発明は、上記請求項1の脱硝触媒の調製方法であって、メタバナジン酸アンモニウム粉末が、重油灰等の石油系燃焼灰からバナジウムを回収した再生品であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の脱硝触媒の調製方法は、窒素酸化物を還元剤であるアンモニアと共に反応させて窒素と水に分解する際に用いる脱硝触媒で、かつ触媒有効成分が酸化チタン、バナジウム、およびタングステンである脱硝触媒の調製方法において、バナジウムの前駆体がメタバナジン酸アンモニウム粉末であり、該メタバナジン酸アンモニウム粉末は、粒径10μm以下の粒子が、累積含有率で20%以上含まれているものであることを特徴とするもので、請求項1の発明によれば、脱硝触媒の触媒活性を向上させることができて、しかも触媒の製造コストの上昇を伴わないという効果を奏する。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の脱硝触媒の調製方法であって、メタバナジン酸アンモニウム粉末が、重油灰等の石油系燃焼灰からバナジウムを回収した再生品であることを特徴とするもので、請求項2の発明によれば、脱硝触媒の触媒活性を向上させることができて、しかもメタバナジン酸アンモニウム粉末が、回収再生品であるために、触媒の製造コストが非常に安くつくという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、従来の脱硝触媒の製造に使用されるメタバナジン酸アンモニウム・AMV(a)粉末の粒度分布測定の結果を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明の脱硝触媒の製造に使用されるメタバナジン酸アンモニウム・AMV(b)粉末の粒度分布測定の結果を示すグラフである。
【図3】図3は、脱硝触媒の性能を評価するための脱硝実験装置のフローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0015】
本発明による脱硝触媒の調製方法は、窒素酸化物を還元剤であるアンモニアと共に反応させて窒素と水に分解する際に用いる脱硝触媒で、かつ触媒有効成分が酸化チタン、バナジウム、およびタングステンである脱硝触媒の調製方法であって、バナジウムの前駆体がメタバナジン酸アンモニウム粉末であり、該メタバナジン酸アンモニウム粉末は、粒径10μm以下の粒子が、累積含有率で20%以上含まれているものであることを特徴としている。
【0016】
ここで、メタバナジン酸アンモニウム粉末は、粒径10μm以下の粒子が、累積含有率で25%以上含まれているものであることが好ましい。
【0017】
また、メタバナジン酸アンモニウム粉末が、重油灰等の石油系燃焼灰からバナジウムを回収した再生品であることが好ましい。
【0018】
なお、上記脱硝触媒の触媒有効成分のうち、酸化チタンおよびバナジウムが主に脱硝触媒作用を有し、タングステンは助触媒として働くものである。
【0019】
図1と図2に、2種類のメタバナジン酸アンモニウム(以下、AMVという)粉末の粒度分布の測定結果を示す。
【0020】
図1に示すAMV(a)粉末は、粒径が大きい従来の脱硝触媒の調製方法に使用されるメタバナジン酸アンモニウム粉末であって、粒径10μm以下の粒子がほとんど含まれていない。
【0021】
これに対し、図2に示すAMV(b)粉末は、粒径が小さい本発明の脱硝触媒の調製方法に使用されるメタバナジン酸アンモニウム粉末であって、粒径10μm以下の粒子が、累積含有率で25%含まれ、粒径10μmを越えかつ粒径27μm以下の粒子が、累積含有率で25%含まれ、粒径27μmを越えかつ粒径60μm以下の粒子が、累積含有率で30%含まれ、粒径60μmを越えかつ粒径250μm以下の粒子が、累積含有率で20%含まれている。
【0022】
さらに、図1と図2において、メタバナジン酸アンモニウム粉末の累積含有率50%での粒径を見ても、従来の脱硝触媒の調製方法に使用されるAMV(a)粉末では粒径103.4μmであるのに対し、本発明の脱硝触媒の調製方法に使用されるAMV(b)粉末では粒径26.41μmであり、本発明の脱硝触媒の調製方法に使用されるAMV(b)粉末の粒径の方が、従来法に使用されるAMV(a)粉末の粒径よりも細かいことがわかる。
【0023】
本発明の脱硝触媒の調製方法に使用されるAMV(b)粉末は、粒径が小さい本発明の脱硝触媒の調製方法に使用されるメタバナジン酸アンモニウム粉末であって、粒径10μm以下の粒子が、累積含有率で20〜30%、好ましくは23〜27%含まれ、粒径10μmを越えかつ粒径27μm以下の粒子が、累積含有率で20〜30%、好ましくは23〜27%含まれ、粒径27μmを越えかつ粒径60μm以下の粒子が、累積含有率で25〜35%、好ましくは28〜32%、粒径60μmを越えかつ粒径250μm以下の粒子が、累積含有率で15〜25%、好ましくは17〜23%含まれているのが、好ましい。
【0024】
なお、粒径の小さい本発明の脱硝触媒の調製方法に使用されるAMV(b)粉末は、重油灰等の石油系燃焼灰からバナジウムを回収した再生品(例えば、鹿島北共同発電株式会社製)である。
【0025】
この2種類のAMVを用いて調製した触媒の脱硝性能を比較すると、粒径の細かい本発明の脱硝触媒の調製方法に使用されるAMV(b)粉末を用いた触媒の方が、他方の従来法に使用されるAMV(a)粉末に比べ、約10%脱硝性能が高くなることが判明した。
【0026】
これは、脱硝触媒の調製に、より細かな粒径のAMV(b)粉末を使用することで、チタニアに吸着されるメタバナジン酸アンモニウム粉末粒子のサイズが小さくなり、分散性がよくなるため、結果的に脱硝性能が向上するものと考えられる。
【0027】
そして、上述したとおり、粒径の小さい本発明の脱硝触媒の調製方法に使用されるAMV(b)粉末を用いることで、使用する材料を増やすことなく、触媒性能を向上させることができた。
【0028】
なお、粒径の小さいAMV(b)粉末としては、市販の薬品を所定の粒度に粉砕したものを用いても良いが、上記のように、重油灰等の石油系燃焼灰からの再生品を用いた方が、粉砕の手間が省けるだけでなく、回収再生品であるために、触媒の製造コストが非常に安くつくので、より好ましい。
【0029】
上記本発明の脱硝触媒の調製方法に使用されるAMV(b)粉末において、メタバナジン酸アンモニウム粉末中の粒径10μm以下の粒子が、累積含有率で20%未満であれば、チタニアに吸着されるメタバナジン酸アンモニウム粉末粒子の量が少なく、充分な触媒活性が得られないので、好ましくない。また、メタバナジン酸アンモニウム粉末中の粒径10μm以下の粒子が、累積含有率で30%を超えると、粒径の小さいメタバナジン酸アンモニウム粉末の量が多いために、後述するスラリーの調製時にメタバナジン酸アンモニウム粉末がスラリーに沈みにくくなり、混合に時間がかかるので、好ましくない。
【0030】
そして、本発明の脱硝触媒の調製方法に使用されるAMV(b)粉末においては、上記のような粒径が小さいメタバナジン酸アンモニウム粉末だけでなく、粒径が相対的に大きいメタバナジン酸アンモニウム粉末が含まれていることが必要であり、粒径が小さいすなわち粒径が10μm以下のメタバナジン酸アンモニウム粉末粒子だけでなく、粒径が10μmを越えかつ27μm以下のメタバナジン酸アンモニウム粉末粒子、粒径が27μmを越えかつ60μm以下のメタバナジン酸アンモニウム粉末粒子、粒径が60μmを越えかつ粒径250μm以下のメタバナジン酸アンモニウム粉末粒子が、上記の累積含有率の範囲で含まれていることが必要である。
【0031】
本発明の脱硝触媒の調製方法を実施するには、例えばつぎの2つの実施態様がある。
【0032】
まず第1に、シリカゾルと水の混合液にチタニア(酸化チタン)粉末を所定の割合で加え、スラリーを調製する。ついで、このスラリーに、粒径10μm以下の粒子が、累積含有率で20%以上含まれている粒径の小さいメタバナジン酸アンモニウム・AMV(b)粉末を所定の割合で添加し、撹拌後、静置し、チタニアにメタバナジン酸アンモニウムを吸着させる。つぎに、このスラリーに、メタタングステン酸アンモニウム(以下、AMTという)の水溶液を所定の割合で添加し、撹拌後、静置する。こうして調製したスラリーに、例えばセラミックス繊維シートを成形したハニカム構造体を浸漬して、ハニカム構造体にスラリー中の脱硝触媒前駆体物質を担持させ、スラリーより取り出したハニカム構造体を乾燥し、ついで焼成して、脱硝触媒を具備するハニカム構造体を調製する。
【0033】
つぎに第2に、シリカゾルと水の混合液に、チタニア(酸化チタン)粉末を所定の割合で加え、スラリーを調製する。ついで、このスラリーに、例えばセラミックス繊維シートを成形したハニカム構造体を浸漬して、ハニカム構造体にスラリー中のチタニア粉末を担持させ、スラリーより取り出したハニカム構造体を乾燥し、焼成する。このチタニア粉末を担時させたハニカム構造体を、粒径10μm以下の粒子が、累積含有率で20%以上含まれている粒径の小さいメタバナジン酸アンモニウム・AMV(b)粉末の水溶液に浸漬し、ハニカム構造体にさらにAMV(b)を担持させ、該水溶液より取り出したハニカム構造体を乾燥した後、焼成する。さらに、チタニア粉末とメタバナジン酸アンモニウム・AMV(b)を担持したハニカム構造体を、メタタングステン酸アンモニウム(AMT)の水溶液に浸漬し、ハニカム構造体にメタタングステン酸アンモニウムをさらに担持させ、取り出したハニカム構造体を乾燥した後、焼成して、脱硝触媒を具備するハニカム構造体を調製する。
【実施例】
【0034】
つぎに、本発明の実施例を比較例と共に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
実施例1
本発明の方法により脱硝触媒をつぎのようにして調製した。まず、シリカゾル〔商品名スノーテックスO(オー)、日産化学社製〕と水の混合液(混合重量比、100部:40部)に、チタニア(酸化チタン)粉末(商品名DT−51、ミレニアム社製)を、シリカゾル100重量部に対し80重量部加え、スラリーを調製した。ついで、このスラリーに、上記図2に示す粒度分布を有する粒径の小さいメタバナジン酸アンモニウム・AMV(b)粉末を、シリカゾル100重量部に対し4.8重量部添加し、常温で1分間撹拌した後、2時間静置し、チタニアにメタバナジン酸アンモニウムを吸着させた。
【0036】
なお、AMV(b)粉末としては、重油灰等の石油系燃焼灰からバナジウムを回収した再生品(鹿島北共同発電株式会社製)を使用した。該メタバナジン酸アンモニウム粉末は、粒径10μm以下の粒子が累積含有率で25%、粒径10μmを越えかつ粒径27μm以下の粒子が累積含有率で25%、粒径27μmを越えかつ粒径60μm以下の粒子が累積含有率で30%、粒径60μmを越えかつ粒径250μm以下の粒子が累積含有率で20%、それぞれ含まれているものである。
【0037】
つぎに、上記のようにして得られたスラリーに、メタタングステン酸アンモニウム(AMT)水溶液〔WO換算で50重量%水溶液(商品名MW−2、日本無機化学工業社製)〕を、シリカゾル100重量部に対し8.64重量部添加し、常温で1分間撹拌した後、1時間静置した。
【0038】
こうして調製したスラリーに、セラミックス繊維シートを成形したハニカム構造体(ニチアス社製)を10分間浸漬し、ハニカム構造体にスラリー中の脱硝触媒前駆体物質を担持させ、スラリーより取り出したハニカム構造体を、温度110℃で1時間乾燥した。乾燥後のハニカム構造体を、温度400℃で1時間焼成し、脱硝触媒を具備するハニカム構造体を調製した。
【0039】
比較例1
比較のために、上記実施例1の場合と同様にして脱硝触媒を調製するが、ここで、上記実施例1の場合と異なる点は、上記図1に示す粒度分布を有する粒径の大きい従来のメタバナジン酸アンモニウム・AMV(a)粉末(太陽鉱工社製)を使用した点にある。
【0040】
実施例2
本発明の方法により脱硝触媒をつぎのようにして調製した。まず、シリカゾル〔商品名スノーテックスO(オー)、日産化学社製〕と水の混合液(混合重量比、100部:40部)に、チタニア(酸化チタン)粉末(商品名DT−51、ミレニアム社製)を、シリカゾル100重量部に対し80重量部加え、スラリーを調製した。ついで、このスラリーに、セラミックス繊維シートを成形したハニカム構造体(ニチアス社製)を10分間浸漬し、ハニカム構造体にスラリー中のチタニア粉末を担持させ、スラリーより取り出したハニカム構造体を、温度110℃で1時間乾燥した。乾燥後のハニカム構造体を、温度500℃で1時間焼成した。
【0041】
ついで、チタニア粉末を担時させた上記ハニカム構造体を、上記図2に示す粒度分布を有する粒径の小さいメタバナジン酸アンモニウム・AMV(b)粉末(鹿島北共同発電株式会社製)の水溶液〔AMV(b)粉末を水100重量部に対し0.275重量部添加した水溶液〕に浸漬し、ハニカム構造体にさらにAMV(b)を担持させ、該水溶液より取り出したハニカム構造体を、温度110℃で乾燥した後、ハニカム構造体を、温度220℃で1時間焼成した。
【0042】
さらに、上記チタニア粉末とメタバナジン酸アンモニウム・AMV(b)を担持したハニカム構造体を、メタタングステン酸アンモニウムの水溶液〔WO換算で50重量%水溶液(商品名MW−2、日本無機化学工業社製)を水100重量部に対し9.47重量部添加した水溶液〕に浸漬し、ハニカム構造体にメタタングステン酸アンモニウムをさらに担持させ、取り出したハニカム構造体を、温度110℃で1時間乾燥した。乾燥後のハニカム構造体を、温度400℃で1時間焼成し、脱硝触媒を具備するハニカム構造体を調製した。
【0043】
比較例2
比較のために、上記実施例2の場合と同様にして脱硝触媒を調製するが、ここで、上記実施例2の場合と異なる点は、上記図1に示す粒度分布を有する粒径の大きい従来のメタバナジン酸アンモニウム・AMV(a)粉末(太陽鉱工社製)を使用した点にある。
【0044】
<脱硝触媒の性能評価実験>
つぎに、上記実施例1と2および比較例1と2でそれぞれ調製した各種脱硝触媒について、図3にフローシートを示す脱硝実験装置を用いて、触媒の脱硝性能を評価した。
【0045】
同図に示す脱硝実験装置において、まず、窒素酸化物(NOx)ガスと空気(AIR)を、それぞれ流量計(MF)によって所定の割合で混合タンク(Mix tank)に供給し、撹拌した。つぎに、混合タンクから実際にリアクター(反応器)に流すガス量を定量しかつヒーターで加熱するために蒸発管に流入した。なお、余分なガスは排気するほか、一部は入口ガス濃度として窒素酸化物(NOx)計にて窒素酸化物(NOx)濃度を測定した。このとき、ミックスガス中の窒素酸化物(NOx)濃度は100ppmであった。
【0046】
蒸発管の前では、定量ポンプで一定流量の水を送り、10容量%の水蒸気にして、ミックスガスに加えた。蒸発管を通ったミックスガスに、流量計(MF)によってアンモニア(NH)ガスを所定の割合で加え、これらのミックスガスを、脱硝触媒を具備した反応器に導入し、反応温度400℃、および触媒面積速度(AV)を50m/hとして、窒素酸化物(NOx)を還元剤であるアンモニア(NH)と共に反応させて、窒素(N)と水(HO)に分解する反応を実施した。
【0047】
反応器から排出されたガス中の窒素酸化物(NOx)の量を、窒素酸化物(NOx)計およびガスクロマトグラフ(GC)で測定し、得られた結果を下記の表1にまとめて示した。
【表1】

【0048】
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1と2で調製した脱硝触媒によれば、比較例1と2で調製した脱硝触媒に比べて、それぞれ約10%程度高い脱硝率を示した。このように、粒径の小さいメタバナジン酸アンモニウム・AMV(b)粉末を使用することで、触媒活性を向上させることができた。
【0049】
しかも、AMV(b)粉末としては、重油灰等の石油系燃焼灰からバナジウムを回収した再生品を使用しており、脱硝触媒の製造コストの上昇を伴わないものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素酸化物を還元剤であるアンモニアと共に反応させて窒素と水に分解する際に用いる脱硝触媒で、かつ触媒有効成分が酸化チタン、バナジウム、およびタングステンである脱硝触媒の調製方法において、バナジウムの前駆体がメタバナジン酸アンモニウム粉末であり、該メタバナジン酸アンモニウム粉末は、粒径10μm以下の粒子が、累積含有率で20%以上含まれているものであることを特徴とする、脱硝触媒の調製方法。
【請求項2】
メタバナジン酸アンモニウム粉末が、重油灰等の石油系燃焼灰からバナジウムを回収した再生品であることを特徴とする、請求項1に記載の脱硝触媒の調製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−200667(P2012−200667A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67082(P2011−67082)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】