説明

脱硫脱炭装置および二酸化炭素除去の前処理方法

【課題】燃焼排ガスから二酸化炭素を除去する際のエネルギ効率の向上と、除去する設備のスペース効率の向上を図り、燃焼排ガス処理全体の効率の向上を図る。
【解決手段】吸収塔1内の下部に外部から導入された燃焼排ガスから硫黄酸化物を吸収して分離するとともに煤塵を分離する脱硫部2を設ける。また、この吸収塔1内の上部に前記脱硫部2で硫黄酸化物が吸収分離された燃焼排ガスから二酸化炭素を吸収して分離する脱炭部4を設けることでスペース効率の向上を図る。また、脱硫部2において、燃焼排ガスに含まれる硫黄酸化物を当該硫黄酸化物濃度が1ppm以下となるまで除去し、かつ、燃焼排ガスに含まれる煤塵を3mg/m3N以下となるまで除去する。これにより、脱炭部4において二酸化炭素を吸収するアミン吸収液の劣化を防止し、エネルギ効率の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排煙(燃焼排ガス)中のSOxを除去するとともにCO2を除去する脱硫脱炭装置および二酸化炭素除去の前処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、火力発電では、亜硫酸ガス(SO2)等の硫黄酸化物(SOx)を含む排煙による大気汚染を防止するために排煙脱硫装置が設けられている。
それに対して近年、地球温暖化が問題となり、排煙(燃焼排ガス)からさらに温室効果ガスとしての二酸化炭素(CO2)を取り除くことが要望されている。
現在、大気中に放出されるCO2のうちの比較的多くの部分を、火力発電所における石炭等化石燃料の燃焼により発生するCO2が占めている。
そして、このようなCO2の放出を防止するために、火力発電所で発生するCO2を地下深くに注入して封じ込めることも試みられている。
【0003】
ここで、最終的なCO2の処理方法が、例えば、上述の地中深く封じ込めるものであった場合や、その他の方法であった場合でも、まず、排煙中からCO2を分離回収する必要がある。
CO2の分離回収方法としては、様々なものが知られており、液体にCO2を吸収させ吸収法や、多孔質の合成ゼオライトや活性炭に吸着させる吸着法や、膜でCO2を分離する膜分離法などがある。
【0004】
ここで、排煙中には、SOxに比較して大容量のCO2が含まれており、排煙からCO2を分離回収する際には、低圧で大容量の処理が求められることになる。
このような条件で、好適なCO2の分離回収方法としては、例えば、前記吸収法のうちの化学反応を伴なう反応吸収法で、吸収液として、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジグリコールアミン、ジイソプロパノールアミン、メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン(有機アミン類)の水溶液を用いるアミン吸収法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このアミン吸収法では、吸収液に排煙である燃焼ガスを接触させてCO2を当該吸収液に吸収させ、CO2を吸収した吸収液を抜き出して、たとえば、スチーム等で加熱することにより、吸収液からCO2を分離して、吸収液を再生することができる。したがって、再生された吸収液は再利用される。
【0006】
【特許文献1】特開平5−337334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述のように、アミン吸収液の再生には、アミン吸収液の加熱が必要となり、例えば、火力発電所で発生させられる蒸気の一部がアミン吸収液の再生で用いられることになる。
また、アミン吸収法において、SOx濃度が高い排煙をアミン吸収液と接触させるとアミン吸収液のCO2の吸収能力が低下し、実用的ではない。また、排煙に含まれる煤塵によってもアミン吸収液が劣化する。
【0008】
したがって、例えば、SOxの排出量が多い石炭や石油を燃料とする火力発電では、CO2を分離回収する前に、SOxを分離する必要があり、脱硫装置を設置する必要がある。なお、脱硫装置は、従来から設けられているので、脱硫装置にさらにCO2を分離回収するための脱炭装置を設けることになり、工場のボイラ等の燃焼を伴なう施設や火力発電所等における排煙の処理関係の施設におけるスペース効率が悪化する。
【0009】
また、脱硫装置によりSOxや煤塵を除去することにより、アミン吸収液の劣化を防止できるが、SOxを完全に除去できるわけではないので、特許文献1に示されるように、例えば、長期使用によりアミン吸収液が劣化する虞があり、劣化したアミン吸収液を加熱蒸留して、長期使用により溜った不純物を除去する必要がある。すなわち、SOxにより劣化したアミン吸収液を処理(一部の再利用)するためには、蒸気が必要となり、これによっても火力発電所におけるエネルギ効率が悪化する。
【0010】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、排煙からSOxを分離回収する脱硫機能を有する施設にさらにCO2を分離回収する脱炭機能を設けるものとして、スペース効率やエネルギ効率の向上を図ることができる脱硫脱炭装置および二酸化炭素除去の前処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の脱硫脱炭装置は、燃焼排ガスから硫黄酸化物と二酸化炭素とを分離回収する脱硫脱炭装置であって、
外部から燃焼排ガスが導入されて処理された後に外部に導出される吸収塔と、
当該吸収塔内の下部に設けられ、外部から導入された燃焼排ガスから硫黄酸化物を吸収して分離するとともに煤塵を分離する脱硫部と、
当該吸収塔内の上部に設けられ、前記脱硫部で硫黄酸化物が吸収分離された燃焼排ガスから二酸化炭素を吸収して分離する脱炭部と、
前記脱硫部には、石灰石を含んで硫黄酸化物を吸収する脱硫用吸収液が貯留された脱硫槽と、
当該脱硫槽の上に設けられ、燃焼排ガスが外部から導入される吸収塔排ガス導入部と、
当該吸収塔排ガス導入部から導入された燃焼排ガスを前記脱硫槽の脱硫用吸収液内に噴出して分散させる複数のガス分散管と、
前記脱硫用吸収液から放出された脱硫除塵処理済みの燃焼排ガスを脱炭部に導出する脱硫側排ガス導出部とが備えられ、
前記脱炭部には、二酸化炭素を吸収するアミン吸収液が保持された脱炭帯域を有し、前記脱炭側排ガス導入部に導入された燃焼排ガスを前記脱炭帯域に通過せしめて燃焼排ガスをアミン吸収液に接触させる排ガス・吸収液接触手段と、
当該脱炭帯域の下に設けられ、前記脱硫側排ガス導出部から導出された燃焼排ガスが導入される脱炭側排ガス導入部と、
前記脱炭帯域のアミン吸収液から放出された脱炭処理済みの燃焼排ガスを前記吸収塔の外部に導出する吸収塔排ガス導出部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項1に記載の発明においては、一つの吸収塔内に硫黄酸化物(SOx)を吸収分離する脱硫部と、二酸化炭素(CO2)を分離する脱炭部とを上下に配置して設けたので、スペース効率の向上を図ることができる。
また、ここで、脱炭部において燃焼排ガスの二酸化炭素を最大限に吸収するのではなく、燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素ガスの一部だけ、例えば(10〜30%)を吸収し、吸収塔から導出された処理済みのガスを、再び、二酸化炭素を吸収分離する脱炭装置に導入して再び二酸化炭素を除去するものとしてもよい。
【0013】
この際には、脱硫装置と、脱炭装置とを別々に設けた場合と同様に2つの吸収塔が必要となるが、本発明の脱硫脱炭装置を用いた場合には、脱炭装置に導入される燃焼排ガスの二酸化炭素の含有量が減少しているので、脱炭装置の小型化を図ることが可能となり、スペース効率の向上を図ることができる。
また、本発明によれば、一つの吸収塔内で硫黄酸化物の除去と、二酸化炭素の除去とを行うものとしても、燃焼排ガスを先に脱硫用吸収液内に噴出させて分散させた状態とした後に当該脱硫用吸収液から放出させ、この放出された脱硫済みの燃焼排ガスを脱炭用のアミン吸収液に接触させて二酸化炭素の除去を行うことになる。
【0014】
したがって、アミン吸収液に燃焼排ガスを接触させる際に、燃焼排ガスから既に硫黄酸化物と煤塵の多くが除去された状態となっており、これによりアミン吸収液が劣化するのを防止することができる。
また、一つの吸収塔内に導入用のファンにより燃焼排ガスを吹き込むことにより、硫黄酸化物の除去と二酸化炭素の除去が可能となり、これらの除去に際するエネルギ効率の向上を図ることができる。
なお、脱炭帯域は、例えば、アミン吸収液を貯留可能な槽状のものやトレイ状のものであってもよく、また、なんらかの担体にアミン吸収液を保持させるものあるいは循環するように流したものであってもよく、アミン吸収液内に燃焼排ガスを通過させて大きな表面積で気液接触可能な状態となっていればよい。
また、脱炭帯域において、アミン吸収液がある程度の深さを持って貯留された状態の場合には、アミン吸収液内に燃焼排ガスを吹き込む構成となっている必要がある。
【0015】
請求項2に記載の脱硫脱炭装置は、請求項1に記載の発明において、前記脱硫槽で脱硫処理された燃焼排ガスの前記脱硫槽から前記脱炭帯域に至る経路のいずれかに、前記脱硫槽で硫黄酸化物が吸収分離された燃焼排ガス中に残る硫黄酸化物を触媒作用を利用して酸化するとともに水分との反応により硫酸を生成して除去する触媒脱硫手段を設けたことを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、脱硫部で、脱硫用吸収液中に燃焼排ガスを噴出して分散させることでは、吸収しきれなかった硫黄酸化物を触媒を用いた触媒脱硫手段により除去することができ、より確実に脱炭部におけるアミン吸収液の硫黄酸化物による劣化を防止することができる。
すなわち、例えば、脱硫槽における燃焼排ガスからの硫黄酸化物の除去率が99%程度であったとしても、燃焼排ガス中の硫黄酸化物の含有率が高くなれば、処理後のガス中に残存する硫黄酸化物濃度が高くなってしまう。
そこで、燃焼排ガス中の硫黄酸化物濃度が高いと見込まれる例えば石炭火力発電所に本発明を適用するような場合には、脱硫槽で処理された燃焼排ガスをさらに触媒を用いた触媒脱硫手段で処理することにより、燃焼排ガス中の硫黄酸化物の濃度を低下させることができる。
これにより、確実に、脱炭部でアミン吸収液に接触させられる際の燃焼排ガスの硫黄酸化物濃度を低下させて、アミン吸収液の硫黄酸化物による劣化を防止することができる。
【0017】
請求項3に記載の脱硫脱炭装置は、請求項1または2に記載の発明において、
前記脱硫部では、前記ガス分散管から前記脱硫槽内に燃焼排ガスを噴出してジェットバブリングさせることで脱硫用吸収液内に気泡層を形成することにより脱硫用吸収液に硫黄酸化物を吸収させ、
前記脱硫槽には、当該脱硫槽に石灰石を含む脱硫用吸収液を供給する脱硫用吸収液供給手段と、当該脱硫槽に酸素を供給する酸素供給手段と、当該脱硫層から抜き取った脱硫用吸収液から煤塵と脱硫により生じた石膏とを分離する石膏分離手段とが接続され、
前記脱炭帯域には、当該脱炭帯域で二酸化炭素を吸収したアミン吸収液を加熱して二酸化炭素を分離することにより当該アミン吸収液を再生して再び前記脱炭帯域に戻して循環させるアミン吸収液再生循環手段が接続されていることを特徴とする。
【0018】
請求項3に記載の発明においては、脱硫部で燃焼排ガスを脱硫用吸収液に噴出して分散することにより接触させる際に、ジェットバブリングして脱硫用吸収液に気泡層を形成させるようにすることで、より確実に脱硫用吸収液に硫黄酸化物を吸収させることができる。すなわち、気液接触の効率を高めて、脱硫の効率を高めることができる。
【0019】
また、脱硫用吸収液は、粉状の石灰石が混合されたスラリーで、硫黄酸化物を酸素で酸化するとともに石灰石に接触させることで、硫黄酸化物と石灰石とから石膏が形成され、形成された石膏は脱硫用吸収液に析出し、この石膏を分離することで硫黄酸化物が石膏として分離回収される。
【0020】
また、脱硫用吸収液に石灰石および酸素を供給していくとともに石膏を分離していくことで、連続的に硫黄酸化物を吸収することができる。なお、酸素の供給は、空気を供給することで、空気中の酸素を供給することで行ってもよい。
また、アミン吸収液も脱炭帯域から抜き取られて加熱されることで、二酸化炭素と分離されて再利用される。
【0021】
請求項4に記載の二酸化炭素除去の前処理方法は、硫黄酸化物を含有する燃焼排ガスから二酸化炭素を除去する際に行われる当該燃焼排ガスからの二酸化炭素除去の前処理方法であって、
硫黄酸化物を吸収する脱硫用吸収液中に燃焼排ガスを高速で噴出させて分散させることにより燃焼排ガスに含まれる硫黄酸化物を当該硫黄酸化物濃度が1ppm以下となるまで除去し、かつ、燃焼排ガスに含まれる煤塵を3mg/m3N以下となるまで除去する脱硫工程の後に、
前記脱硫用吸収液中から放出された状態の燃焼排ガスを二酸化炭素を吸収するアミン吸収液が貯留されて保持された脱炭帯域に通過せしめることにより、当該燃焼排ガス中に含まれる二酸化炭素の10〜30%の範囲で当該二酸化炭素を分離除去することを特徴とする。
【0022】
請求項4に記載の発明においては、燃焼排ガスから二酸化炭素を除去する処理の前処理として、硫黄酸化物、煤塵および二酸化炭素の一部が除去されることになる。
ここで、二酸化炭素の除去に影響を与える硫黄酸化物や煤塵を除去するだけではなく、二酸化炭素の一部も除去するので、二酸化炭素の除去処理(本処理)において、負荷が低減され、二酸化炭素の除去処理を行う装置の小型化によるスペース効率の向上を図ることができる。
【0023】
また、硫黄酸化物を除去した後に二酸化炭素の一部を除去する処理は、請求項1〜請求項3に記載されるように一つの吸収塔内で行うことが可能であり、例えば、従来の硫黄酸化物を除去する脱硫装置の吸収塔内に二酸化炭素を除去する装置を設けることで実現可能である。したがって、二酸化炭素の除去を、前処理と本処理との両方で行うものとしてもスペース効率が悪化するのを防止することができる。
【0024】
また、前処理の二酸化炭素の除去の前に、硫黄酸化物濃度を1ppm以下とし、煤塵を3mg/m3N以下とすることにより、二酸化炭素を除去する際に用いられるアミン吸収液の劣化を確実に防止し、アミン吸収液を長期に渡って安定して使用することができ、これによりエネルギ効率の向上を図ることができる。
【0025】
また、前処理で、アミン吸収液中に煤塵と硫黄酸化物が除去された燃焼排ガスを接触させることにより、燃焼排ガスに僅かに残る硫黄酸化物および煤塵がアミン吸収液に吸収され、アミン吸収液が僅かずつ劣化することになるが、これにより、燃焼排ガスは二酸化炭素濃度が低減するだけではなく、硫黄酸化物濃度および煤塵濃度が極めて低い状態となり、本処理として二酸化炭素の除去処理における硫黄酸化物の影響を極めて低いものとし、本処理におけるエネルギ効率の向上を図ることができる。これにより二酸化炭素除去の設備全体における効率の向上を図ることができる。
【0026】
請求項5に記載の二酸化炭素除去の前処理方法は、請求項4に記載の発明において、
前記脱硫工程で、石灰石を含有する脱硫用吸収液に少なくとも下端が浸かったガス分散管から燃焼排ガスを当該脱硫用吸収液に高速で噴出させて分散させることによりジェットバブリングさせて気泡層を形成し、当該燃焼排ガス中の二酸化炭素を前記脱硫用吸収液に吸収させることを特徴とする。
【0027】
請求項5に記載の発明においては、脱硫用吸収液に燃焼排ガスを噴出して分散させる際にジェットバブリングして気泡層を形成することで、効率的に気液接触させて、脱硫用吸収液への硫黄酸化物の吸収率を高めることができ、燃焼排ガス中の硫黄酸化物濃度がある程度高くても、脱硫後の硫黄酸化物濃度を1ppm以下とすることができる。
【0028】
請求項6に記載の二酸化炭素除去の前処理方法は、請求項5に記載の発明において、
前記脱硫工程で、ジェットバブリングされて硫黄酸化物が除去されるとともに前記脱硫用吸収液から放出された燃焼排ガスを、硫黄酸化物が触媒作用により酸化されるとともに水分との反応により硫酸として回収可能となる触媒層に通過せしめることによりさらに硫黄酸化物を除去した後に、前記アミン吸収液が貯留されて保持された脱炭帯域に通過せしめることを特徴とする。
【0029】
請求項6に記載の発明においては、処理前の燃焼排気ガスにおける硫黄酸化物濃度が高いことにより、ジェットバブリングを用いた上述の脱硫においても硫黄酸化物濃度を1ppm以下にできない場合に、さらに触媒を用いた触媒脱硫手段により硫黄酸化物を除くことで、硫黄酸化物濃度を1ppm以下とすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、燃焼排ガスから二酸化炭素を分離回収する際に、硫黄酸化物を除去する装置内に二酸化炭素の少なくと一部を除去する機能を設けることでスペース効率の向上を図ることができ、かつ、二酸化炭素を除去する前に煤塵および硫黄酸化物を十分に除去することで、二酸化炭素を除去する処理における硫黄酸化物の影響を排除してエネルギ効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図1は第1の実施の形態の脱硫脱炭装置を示すものである。
図1に示す脱硫脱炭装置(脱炭前処理装置)は、例えば、火力発電所、工場等のボイラやその他の燃焼設備から排出される燃焼排ガスから煤塵と、硫黄酸化物と、二酸化炭素とを分離回収するものである。
【0032】
そして、脱硫脱炭装置は、外部から燃焼排ガスが導入されて処理された後に外部に導出される吸収塔1と、当該吸収塔1内の下部に設けられ、外部から導入された燃焼排ガスから硫黄酸化物を吸収して分離するとともに煤塵を分離する脱硫部2と、当該吸収塔1内の上部に設けられ、前記脱硫部2で硫黄酸化物が吸収分離された燃焼排ガスから二酸化炭素を吸収して分離する脱炭部4とを備えている。
【0033】
また、吸収塔1内部には、水平に形成されて吸収塔1を下部と上部とに分割する主隔壁11が設けられ、主隔壁11より下が脱硫部2とされ、主隔壁11より上が脱炭部4とされている。
前記脱硫部2には、石灰石を含んで硫黄酸化物を吸収する脱硫用吸収液としての石灰石スラリーが貯留された脱硫槽(反応槽:ジェットバブリングリアクタ)21と、当該脱硫槽21の上に設けられ、燃焼排ガスが外部から導入される吸収塔排ガス導入部22と、当該吸収塔排ガス導入部22から導入された燃焼排ガスを前記脱硫槽21の脱硫用吸収液内に噴出して分散させる複数のガス分散管(スパージャパイプ)23と、前記脱硫用吸収液から放出された脱硫除塵処理済みの燃焼排ガスを脱炭部に導出する脱硫側排ガス導出部(ガスライザ)24とが備えられている。
【0034】
脱硫槽21は、石灰石のスラリーとしての脱硫用吸収液が貯留される槽であり、その内部には、脱硫用吸収液が液面を予め設定された高さにした状態とされている。
また、脱硫槽21内部には、撹拌機の撹拌羽(図示略)が設けられるとともに、脱硫槽21内に例えばブロワにより空気(酸素を含む)を供給する酸素供給手段(図示略)が設けられている。
【0035】
また、脱硫槽21は、その上部、すなわち、脱硫用吸収液の液面上に空間を有するものとなっている。また、脱硫槽21の上部には、前記液面上の空間を含む脱硫槽21と、その上の吸収塔排ガス導入部22との間に脱硫側隔壁25が設けられ、脱硫槽21と吸収塔排ガス導入部22とが分離されている。
そして、吸収塔排ガス導入部22には、導入口27が設けられ、当該導入口27に、吸収塔1の外部から燃焼排ガスが例えばファンにより送り込まれることになる。なお、この際には、工業用水または脱硫用吸収液を燃焼排ガスに噴霧して、燃焼排ガスを冷却して温度を低下させることが好ましい。
【0036】
ガス分散管23は、その上端が吸収塔排ガス導入部22と脱硫槽21との間の脱硫側隔壁25から脱硫槽21の脱硫用吸収液の液面より下側に至るように複数設けられている。
すなわち、ガス分散管23は、脱硫側隔壁25から鉛直方向に垂設されるとともに、縦横に複数列に並んだ状態となっている。
そして、ガス分散管23の上端は、脱硫側隔壁25の上面側に開口して吸収塔排ガス導入部22に連通し、ガス分散管23の下端部は、脱硫用吸収液の液面より下側で開口した状態となっている。
【0037】
したがって、吸収塔排ガス導入部22に導入された燃焼排ガスは、ガス分散管23の上端側から下端側に流下するとともに、ガス分散管23の下端部から脱硫用吸収液内に噴出し、脱硫用吸収液内に分散する。
この際にガス分散管23の下端部から噴出した燃焼排ガスと、脱硫用吸収液とが激しく混合することでジェットバブル(気泡)が生じ、脱硫用吸収液の液面近傍部分にジェットバブリング層(気泡層)が形成され、この気泡層で高効率な気液接触が行われる。これにより、燃焼排ガス中の硫黄酸化物と脱硫用吸収液中の酸素と石灰石粒子とが反応し石膏が析出する。例えば、硫黄酸化物としての亜硫酸ガスが酸化されるとともに、脱硫用吸収液の石灰石によって中和される反応が行われて、脱硫用吸収液中に硫黄酸化物が反応して石膏となることで、燃焼排ガス中から硫黄酸化物が吸収・分離・除去される。
【0038】
したがって、脱硫槽21内の脱硫用吸収液中には、外部から供給された粉状の石灰石および酸素と硫黄酸化物との反応により生じた石膏粒子が水に分散した状態のスラリーとなっている。
なお、脱硫槽21では、上述の硫黄酸化物と石灰石との反応で、石灰石が消費されるので、石灰石のスラリー(脱硫用吸収液)を脱硫槽21に供給する脱流用吸収液供給手段が設けられている。なお、脱流用吸収液供給手段は、例えば、石灰石と水とを混合した状態で貯留する石灰スラリーピットと、石灰粉を石灰スラリーピットに供給する石灰石分サイロと、石灰スラリーピットのスラリーを脱硫槽に供給する石灰スラリーポンプとを備える。
【0039】
また、脱硫槽21には、析出した上述の石膏と燃焼排ガス側から移行した煤塵が溜るので、脱硫槽から脱硫用吸収液を抜き取り、抜き取られた脱硫用吸収液から石膏と煤塵を固液分離し、分離された液体を脱硫層に戻す石膏分離手段が設けられている。
なお、石膏分離手段は、例えば、スラリーを脱水する脱水機で構成されている。なお、スラリーには上述のように石灰石も含まれている。なお、脱水された石膏は、石膏ボードやセメント混合用材等として利用可能である。
【0040】
前記脱硫側排ガス導出部24は、ガスライザであり、脱硫槽21の脱硫用吸収液の液面より上側の空間と、前記主隔壁11より上の空間とを連通し、脱硫槽21で処理済の燃焼排ガスの上昇用流路となるものである。
なお、脱硫側排ガス導出部24は、たとえば、複数列に配置されたガス分散管23の列同士の間に配置されるとともに、複数箇所に配置されている。
【0041】
また、脱硫側排ガス導出部24は、下側となる脱硫側隔壁25から上側の主隔壁11まで、内部が中空となる壁状(もしくは柱状)に形成されている。そして、脱硫側排ガス導出部24の下端が脱硫側隔壁25に接合されるとともに、脱硫側隔壁25の脱硫側排ガス導出部24の接合した部分に開口部が形成され、脱硫側排ガス導出部24と脱硫槽21の液面上の空間とが連通している。
【0042】
また、脱硫側排ガス導出部24の上端部が主隔壁11と接合されるとともに、主隔壁11の脱硫側排ガス導出部24の接合した部分に開口部が形成され、脱硫側排ガス導出部24と主隔壁11上の脱炭部4内の空間とが連通している。
なお、脱硫側排ガス導出部24の上端は、主隔壁11よりも僅かに上側に突出して開口した状態となっており、その上に僅かに間隔をあけてライズインパクタ26が形成されている。ライズインパクタ26は、中空の柱状もしくは壁状となっている脱硫側排ガス導出部24の上端より僅かに上で、上端を覆うように形成されるとともに、ここでは、断面形状が陣笠状に形成されている。
【0043】
前記脱炭部4は、前記主隔壁11より上に設けられ、主隔壁11から間隔をあけて、吸収塔1を上下に区切るように設けられて脱硫除塵処理済みの燃焼排ガスからミストを除去する第1ミストエリミネータ41と、当該第1ミストエリミネータ41の上側に、当該第1ミストエリミネータ41と間隔をあけて吸収塔1を上下に区切るように設けられて、燃焼排ガス中の二酸化炭素の一部を除去するためのキャップトレイ42と、当該キャップトレイ42上に設けられたアミン吸収液散布手段43と、キャップトレイ42およびアミン吸収液散布手段43上の空間から吸収塔1の外部に脱硫脱炭処理済みの燃焼排ガスを導出する吸収塔排ガス導出部44と、当該吸収塔排ガス導出部44から吸収塔の外部に燃焼排ガスを排出する排ガス導出管45に設けられ、脱硫脱炭処理済の燃焼排ガスからミストを除去する第2ミストエリミネータ48とを備えている。
【0044】
上述のように脱硫用吸収液と気液接触させられることにより、脱硫部2から脱炭部4に上昇移動する脱硫済の燃焼排ガスには、脱硫用吸収液のミスト(微小液滴)が同伴した状態となっており、前記第1ミストエリミネータ41は、このミストを除去するものであり、周知のミストエリミネータを使用することができる。なお、脱硫部2から脱炭部4に至った燃焼排ガスの全てが第1ミストエリミネータ41を通過できるようになっている必要がある。
【0045】
そして、この第1ミストエリミネータ41が設けられた吸収塔1内の空間が、後述のように脱炭帯域となるキャップトレイ42の下側に設けられた前記脱硫側排ガス導出部24から脱硫済の燃焼排ガスが導入される脱炭側排ガス導入部46となる。
キャップトレイ42は、精留塔等で用いられる周知のキャップトレイ42とほぼ同様のものであり、トレイ51と、トレイ51の複数箇所(多数箇所)に設けられて燃焼排ガスをトレイ51の下から上に通過可能とする筒状に形成された通過孔部52と、通過孔部52上に設けられるキャップ53とを備えるものである。
【0046】
前記筒状の通過孔部52は、トレイ51上に突出した状態に形成され、トレイ51上に通過孔部52の高さ位置までアミン吸収液を貯留して保持可能となっている。
また、キャップ53は、通過孔部52より径が大きな有蓋筒状に形成され、筒部分の下端がキャップ53の上端より低く形成され、トレイ51上に貯留された状態のアミン吸収液の液面より下となっている。また、キャップ53の内面(蓋部分の下面)と、通過孔部52の上端との間には間隔があけられ、通過孔部52内を上昇した燃焼排ガスは、キャップ53内に誘導された後に、キャップ53の筒部分の内周面と、通過孔部52の外周面との間を下降してアミン吸収液内に噴出して分散した状態となる。
【0047】
これにより、燃焼排ガスとアミン吸収液が気液接触することになり、燃焼排ガス中の炭酸ガスがアミン吸収液に吸収される。
したがって、このキャップトレイ42が二酸化炭素を吸収するアミン吸収液が保持された脱炭帯域となるとともに、脱炭側排ガス導入部に導入された燃焼排ガスを前記脱炭帯域に通過せしめて燃焼排ガスをアミン吸収液に接触させる排ガス・吸収液接触手段となる。
【0048】
アミン吸収液散布手段43は、たとえば、後述のように循環供給されるアミン吸収液の配管61と、当該配管に設けられた複数の散布ノズル62とからなっており、キャップトレイ42に上にほぼ均等にアミン吸収液を散布して、キャップトレイ42上にアミン吸収液を供給するとともに、キャップトレイ42より上方でさらにアミン吸収液と燃焼排ガスとを気液接触させるようになっている。
【0049】
アミン吸収液としては、二酸化炭素除去用に用いられる周知のアミン吸収液が用いられるが、二酸化炭素の吸収能力が高く、かつ、低エネルギでアミン吸収液から二酸化炭素を分離できるものを用いることが好ましい。
そして、キャップトレイ42およびアミン吸収液散布手段43上に上昇した脱硫脱炭済みの燃焼排ガスは、吸収塔側排ガス導出部44に至り、吸収塔1外部に連通する排ガス導出管45から吸収塔1の外部に導出される。
【0050】
また、排ガス導出管45には、第2ミストエリミネータ48が設けられ、キャップトレイ42を通過した脱硫脱炭済みの燃焼排ガスに同伴されるアミン吸収液のミストを除去するようになっている。
また、排ガス導出管45には、図示しない接続管が接続され、燃焼排ガスからさらに二酸化炭素を取り除く脱炭装置に導出させるようになっている。なお、後述するように、この例の脱硫脱炭装置は、後段側となる脱炭装置における二酸化炭素の除去の前処理を行う前処理装置として機能しており、燃焼排ガスに含まれる硫黄酸化物をできるだけ除去し、かつ、燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素の一部だけを除去するようになっている。
【0051】
したがって、さらに二酸化炭素を除去するために脱硫脱炭装置に脱炭装置を接続する必要がある。
なお、この例では、キャップトレイ42を一段だけ配置したが複数段に配置してもよい。また、アミン吸収液を保持する装置は、キャップトレイ42に限られるものではなく、各種の気液接触装置を用いることでき、当該気液接触装置でアミン吸収液を燃焼排ガスと接触可能に保持している部分が脱炭帯域となる。
【0052】
そして、キャップトレイ42は、キャップトレイ42から抜き出したアミン吸収液を再生してアミン吸収液散布手段43に供給するアミン再生装置71(アミン吸収液再生循環
手段)が接続されている。
アミン再生装置71は、配管によりアミン吸収液をキャップトレイ42から抜き取った状態に供給される再生反応器72を備えている。再生反応器72には、キャップトレイ42からアミン吸収液を流入させる配管73およびポンプ(図示略)と、アミン吸収液をアミン吸収液散布手段43を介してキャップトレイ42に返送する配管74、ポンプ(図示略)および水を用いた冷却器75と、蒸気でアミン吸収液を加熱するための配管76および加熱器77と、二酸化炭素を吸収した後に加熱されることで分離された二酸化炭素を導出する配管78と、この配管部分に設けられた冷却器79および第3ミストエリミネータ80とを備える。また、キャップトレイ42から再生反応器72にアミン吸収液を送出する配管73と、再生反応器72からキャップトレイ42側にアミン吸収液を返送する配管74との間に熱交換器90が設けられ、キャップトレイ42から再生反応器72に送出されるアミン吸収液を、再生反応器72で加熱されてキャップトレイ42に返送されるアミン吸収液で予熱し、予熱されるアミン吸収液でキャップトレイ42に返送されるアミン吸収液を予冷している。
【0053】
アミン再生装置71においては、キャップトレイ42から配管73によりアミン吸収液を抜き取り、この抜き取ったアミン吸収液を再生反応器72に送出可能となっている。
そして、再生反応器72送られたアミン吸収液は、再生反応器72おいて、加熱器77を介してスチームにより加熱される。なお、上述のようにアミン吸収液は、熱交換器90で予熱されている。
そして、加熱されたアミン吸収液からは二酸化炭素が分離し、分離した二酸化炭素は、配管78で冷却器79に冷却され、第3ミストエリミネータ80でアミン吸収液等のミストが分離された状態で、二酸化炭素を処理もしくは蓄積する装置に送出される。
【0054】
なお、第3ミストエリミネータ80で分離されたアミン吸収液等のミストは、液体として再生反応器72に返送される。
また、再生反応器72再生されたアミン吸収液は、配管74によりアミン吸収液散布手段43にポンプで送出される。なお、この際に、吸収塔1側に戻される加熱されたアミン吸収液は、熱交換器90で予冷されるとともに冷却器75により水で冷却される。
このアミン再生装置71により、キャップトレイ42で、燃焼排ガスと接触して二酸化炭素を吸収したアミン吸収液から加熱により二酸化炭素が分離され、このアミン吸収液が再び、キャップトレイ42に返送される。
以上のような脱炭脱硫装置は、上述のように燃焼排ガスからの二酸化炭素除去の前処理装置として機能するものであり、この脱炭脱硫装置を用いた二酸化炭素除去処理の前処理方法を以下に説明する。
【0055】
燃焼設備から排出される燃焼排ガスは、ファンにより吸収塔1の吸収塔排ガス導入部22に導入される。そして、この際の吸収塔における装置空塔速度は、1〜2m/sとなっていることが好ましい。
そして、吸収塔排ガス導入部22は、上述のように主隔壁11と脱硫側隔壁25との
間の空間であり、この空間に押し込まれた燃焼排ガスは、脱硫側隔壁25から垂設された多数のガス分散管23内に流れ込むことになる。そして、燃焼排ガスは、ガス分散管23の下端部から脱硫槽21の脱硫用吸収液内に噴出されて分散されることになる。
【0056】
この際のガス分散管23、すなわちスパージングパイプ内の燃焼排ガスの流速が10m/s程度となっていることが好ましい。
また、スパージングパイプからのスパージングガスとしての燃焼排ガスの噴出し速度が15〜30m/sとなっていることが好ましい。
そして、上述のようにこの例では、ガス分散管23から脱硫用吸収液に噴出した燃焼ガスがジェットバブリング状態となり脱硫用吸収液に気泡層が形成され、高い気液接触率で燃焼排ガスが脱硫用吸収液に接触し、当該燃焼排ガスから硫黄酸化物が吸収されることになる。また、この燃焼排ガスと脱硫用吸収液との接触により煤塵が除去されることになる。
【0057】
また、この際の脱硫用吸収液のpHは、たとえば、4〜6程度となっていることが好ましい。
そして、脱硫用吸収液に噴出された燃焼排ガスにおいては、たとえば、当該燃焼排ガスに含まれる硫黄酸化物の99%以上を除去された状態となり、これによって、燃焼排ガスに含まれる硫黄酸化物濃度を1pmm以下とし、かつ、煤塵を3mg/m3N以下とする。
【0058】
なお、燃焼排ガスの硫黄酸化物濃度が高く、上述の脱硫部における脱硫処理では、硫黄酸化物濃度を1ppm以下とすることができない場合には、後述の第2実施例のように触媒脱硫手段によりさらに硫黄酸化物を除去する。
そして、硫黄酸化物を除去された燃焼排ガスは、脱硫槽21の脱硫用吸収液からその上の空間に放出されるとともに、ガスライザである脱硫側排ガス導出部24を通ることにより主隔壁11を貫通して脱炭部4に導入される。
そして、脱硫側排ガス導出部24の脱炭部4側の導出口に設けられたライズインパクタ26における燃焼排ガスの速度(ライズインパクタ速度)は、10m/s以上となっている。
【0059】
次いで、硫黄酸化物および煤塵が除去された燃焼排ガスを第1ミストエリミネータ41を通して脱硫吸収液のミストを除去した後に、キャップトレイ42を通すことで、アミン吸収液に燃焼排ガスを気液接触させて二酸化炭素をアミン吸収液に吸収させて燃焼排ガスから分離除去する。
【0060】
この際に、キャップトレイ42におけるガス速度(許容ガス速度)は、1〜2m/sとなっていることが好ましい。なお、上述のようにこの例では脱炭部におけるキャップトレイ42は一段であり、塔効率は0.5〜0.8程度となる。
そして、この例では、燃焼排ガスの二酸化炭素除去の前処理として、燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素のうちの10〜30%を除去するようになっている。
【0061】
これにより燃焼排ガスの脱硫設備に二酸化炭素の除去機能を持たせ、燃焼排ガスから脱硫するだけではなく、二酸化炭素除去の前処理として、二酸化炭素の一部を除去することで、二酸化炭素除去の本処理を行う脱炭設備における二酸化炭素の処理量を低減し、設備の小型化によるスペース効率の向上と、エネルギ効率の向上を図ることができる。
なお、脱硫設備に二酸化炭素の除去機能を設けるものとしても、吸収塔1の上部にたとえばキャップトレイ42のような気液接触装置を設けるだけなので、脱硫設備の占有面積が大きくなるようなことがない。
【0062】
なお、アミン吸収液の再生設備は、たとえば、本処理用の脱炭装置と共用するなどして、スペース効率を向上することができる。
また、脱硫部2側で上述のレベルまで硫黄酸化物濃度と煤塵濃度を低下させることにより、アミン吸収液の劣化を防止することでき、アミン吸収液の劣化によるアミン吸収液の加熱蒸留などによる再生や劣化アミン吸収液の分離などにかかるエネルギを減少させ、エネルギ効率を向上することができる。
【0063】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
本発明の第2実施の形態は、第1の実施形態におけるガスライザとなる脱硫側排ガス導出部24に触媒脱硫手段を設けたことを特徴とするものであり、その他の構成および作用は前述した第1の実施形態の構成および作用と同様であるため、以下においては、本発明の特徴部分についてのみ言及し、それ以外の部分については説明を省略する。
なお、ガスライザをたとえば一つとし、この一つのガスライザの流出部分に触媒脱硫手段を設けてもよい。
【0064】
また、触媒脱硫手段は、触媒を用いるもので、触媒に硫黄酸化物を吸着させるとともに、触媒作用により亜硫酸ガス等の硫黄酸化物を燃焼排ガス中の酸素および水分で酸化して希硫酸として、触媒から分離させる触媒酸化型の脱硫装置からなるものである。
そして、触媒脱硫手段の触媒としては、たとえば、活性炭にフッ素樹脂を混合、担持した活性炭触媒(撥水性活性炭触媒)が高い脱硫性能を有することが知られており、この活性炭触媒を用いる。なお、活性炭として活性炭素繊維を用いた触媒も知られており、このような触媒を用いてもよい。
【0065】
そして、触媒は、たとえば、支持部材と共にシート状に形成され、このシートを用いて通気可能で、かつ、露出面積が大きな立体形状の触媒ブロックが形成される。そして、この触媒が触媒ケースに収容された状態で上述の位置に配置されている。また、触媒脱硫手段には、触媒に希硫酸や水を散布して洗浄する洗浄手段が設けられるとともに、硫黄酸化物の酸化により生じた希硫酸と洗浄液を回収する回収手段が設けられている。回収された希硫酸溶液は、たとえば、洗浄液として再利用されたり、脱硫槽に流入させられることにより石灰石と反応して石膏とされて回収される。
【0066】
この触媒を用いた触媒脱硫手段を設けることで、脱硫部2で脱硫された燃焼排ガスからさらに硫黄酸化物が99.5%程度まで除去されることになり、第1の実施の形態では、硫黄酸化物を1ppm以下とできないような硫黄酸化物濃度の燃焼排ガスでも、硫黄酸化物濃度を1ppm以下とすることが可能となる。
【0067】
これにより、第2の実施の形態の脱硫脱炭装置では、第1の実施の形態よりも硫黄酸化物濃度の高い燃焼排ガスに対応することができ、かつ、第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることできる。
なお、触媒脱硫手段の配置位置は、脱硫槽21から放出されて脱炭部4のキャップトレイ42に至るまでの間の燃焼排ガスの流路のいずれに設けるものとしてもよいが、ガスライザ(脱硫側排ガス導出部24)の燃焼排ガスの導出部分に設けることにより、簡単な構造とすることができる。
なお、前記触媒に燃焼排ガスを導入する部分と、前記触媒から燃焼排ガスを導出する部分には、ミストを除去するミストエリミネータを設けることが好ましい。
【0068】
また、上述の各部位における燃焼排ガスの流速は一例であり、吸収塔1や脱硫槽21やガスライザや脱端帯域等の構造の違いにより変更するものとしてもよい。
また、二酸化炭素を吸収するアミン吸収液が保持された脱炭帯域と脱炭側排ガス導入部に導入された燃焼排ガスを前記脱炭帯域に通過せしめて燃焼排ガスをアミン吸収液に接触させる排ガス・吸収液接触手段となる構成は、上述のキャップトレイ42に限られるものではなく、繊維状の部材や多数の板状の部材の表面に循環可能にアミン吸収液を散布した状態で、これらの部材に燃焼排ガスを通過させるようなものであってもよく、効率良く気液接触させられる形状ならばよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の形態に係る脱硫脱炭装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0070】
1 吸収塔
2 脱硫部
21 脱硫槽
22 吸収塔排ガス導入部
23 ガス分散管
24 脱硫側排ガス導出部
4 脱炭部
42 キャップトレイ(脱炭帯域、排ガス・吸収液接触手段)
46 脱炭側排ガス導入部
48 吸収塔排ガス導出部
71 アミン再生装置(アミン吸収液再生循環手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼排ガスから硫黄酸化物と二酸化炭素とを分離回収する脱硫脱炭装置であって、
外部から燃焼排ガスが導入されて処理された後に外部に導出される吸収塔と、
当該吸収塔内の下部に設けられ、外部から導入された燃焼排ガスから硫黄酸化物を吸収して分離するとともに煤塵を分離する脱硫部と、
当該吸収塔内の上部に設けられ、前記脱硫部で硫黄酸化物が吸収分離された燃焼排ガスから二酸化炭素を吸収して分離する脱炭部と、
前記脱硫部には、石灰石を含んで硫黄酸化物を吸収する脱硫用吸収液が貯留された脱硫槽と、
当該脱硫槽の上に設けられ、燃焼排ガスが外部から導入される吸収塔排ガス導入部と、
当該吸収塔排ガス導入部から導入された燃焼排ガスを前記脱硫槽の脱硫用吸収液内に噴出して分散させる複数のガス分散管と、
前記脱硫用吸収液から放出された脱硫除塵処理済みの燃焼排ガスを脱炭部に導出する脱硫側排ガス導出部とが備えられ、
前記脱炭部には、二酸化炭素を吸収するアミン吸収液が保持された脱炭帯域を有し、前記脱炭側排ガス導入部に導入された燃焼排ガスを前記脱炭帯域に通過せしめて燃焼排ガスをアミン吸収液に接触させる排ガス・吸収液接触手段と、
当該脱炭帯域の下に設けられ、前記脱硫側排ガス導出部から導出された燃焼排ガスが導入される脱炭側排ガス導入部と、
前記脱炭帯域のアミン吸収液から放出された脱炭処理済みの燃焼排ガスを前記吸収塔の外部に導出する吸収塔排ガス導出部とを備えたことを特徴とする脱硫脱炭装置。
【請求項2】
前記脱硫槽で脱硫処理された燃焼排ガスの前記脱硫槽から前記脱炭帯域に至る経路のいずれかに、前記脱硫槽で硫黄酸化物が吸収分離された燃焼排ガス中に残る硫黄酸化物を触媒作用を利用して酸化するとともに水分との反応により硫酸を生成して除去する触媒脱硫手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の脱硫脱炭装置。
【請求項3】
前記脱硫部では、前記ガス分散管から前記脱硫槽内に燃焼排ガスを噴出してジェットバブリングさせることで脱硫用吸収液内に気泡層を形成することにより脱硫用吸収液に硫黄酸化物を吸収させ、
前記脱硫槽には、当該脱硫槽に石灰石を含む脱硫用吸収液を供給する脱硫用吸収液供給手段と、当該脱硫槽に酸素を供給する酸素供給手段と、当該脱硫層から抜き取った脱硫用吸収液から煤塵と脱硫により生じた石膏とを分離する石膏分離手段とが接続され、
前記脱炭帯域には、当該脱炭帯域で二酸化炭素を吸収したアミン吸収液を加熱して二酸化炭素を分離することにより当該アミン吸収液を再生して再び前記脱炭帯域に戻して循環させるアミン吸収液再生循環手段が接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の脱硫脱炭装置。
【請求項4】
硫黄酸化物を含有する燃焼排ガスから二酸化炭素を除去する際に行われる当該燃焼排ガスからの二酸化炭素除去の前処理方法であって、
硫黄酸化物を吸収する脱硫用吸収液中に燃焼排ガスを高速で噴出させて分散させることにより燃焼排ガスに含まれる硫黄酸化物を当該硫黄酸化物濃度が1ppm以下となるまで除去し、かつ、燃焼排ガスに含まれる煤塵を3mg/m3N以下となるまで除去する脱硫工程の後に、
前記脱硫用吸収液中から放出された状態の燃焼排ガスを二酸化炭素を吸収するアミン吸収液が貯留されて保持された脱炭帯域に通過せしめることにより、当該燃焼排ガス中に含まれる二酸化炭素の10〜30%の範囲で当該二酸化炭素を分離除去することを特徴とする二酸化炭素除去の前処理方法。
【請求項5】
前記脱硫工程で、石灰石を含有する脱硫用吸収液に少なくとも下端が浸かったガス分散管から燃焼排ガスを当該脱硫用吸収液に高速で噴出させて分散させることによりジェットバブリングさせて気泡層を形成し、当該燃焼排ガス中の二酸化炭素を前記脱硫用吸収液に吸収させることを特徴とする請求項4に記載の二酸化炭素除去の前処理方法。
【請求項6】
前記脱硫工程で、ジェットバブリングされて硫黄酸化物が除去されるとともに前記脱硫用吸収液から放出された燃焼排ガスを、硫黄酸化物が触媒作用により酸化されるとともに水分との反応により硫酸として回収可能となる触媒層に通過せしめることによりさらに硫黄酸化物を除去した後に、前記アミン吸収液が貯留されて保持された脱炭帯域に通過せしめることを特徴とする請求項5に記載の二酸化炭素除去の前処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−226365(P2009−226365A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78045(P2008−78045)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000003285)千代田化工建設株式会社 (162)
【Fターム(参考)】