説明

脱穀機の茎稈搬送装置

【目的】 退避回動させたフイードチエンの最上高を可及的に低くして、天井が低い室内スペースでの退避回動を可能にすると共に、退避回動時の操作位置を可及的に低くして操作性の向上も計る。
【構成】 フイードチエン14を、搬送始端よりも後方で、かつ低い位置に設けられる駆動スプロケツト19の駆動中心を支点として退避回動させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、主としてコンバインに装備される脱穀機の茎稈搬送装置に関するものである。
【0002】
【従来技術及び発明が解決しようとする課題】一般に、この種脱穀機においては、扱室側面に、挟扼レールとの間で茎稈を挟持搬送するフイードチエンが横設されるが、扱室内の清掃、点検、整備等に際しては、フイードチエンが邪魔になつて作業を阻害するという不都合がある。そこで、特開昭63−84419号公報の如く、前記フイードチエンを上方に退避回動可能に構成して、扱室側面を開放できるようにしたものが提案されている。しかるに、このものは、搬送終端部を支点としてフイードチエンを回動させるものであるため、フイードチエンを上方に退避回動させた場合、フイードチエンの搬送始端部が相当の高さまで達し、このため、上方にスペースの余裕がある場所でなければフイードチエンを退避回動し得ないという欠点を有する許りか、フイードチエンを退避回動操作する際には、フイードチエンの搬送終端部よりも高い位置での操作が必要になるため、操作性にも劣るのが実状であつた。
【0003】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの欠点を一掃することができる脱穀機の茎稈搬送装置を提供することを目的として創案されたものであつて、挟扼レールとの間で茎稈を挟持搬送するフイードチエンを、扱室側面に横設してなる脱穀機において、前記フイードチエンを、搬送始端および搬送終端に配設される従動輪と、両従動輪の中間位置下方に配設される駆動輪とに懸回すると共に、前記駆動輪位置を支点として上下方向に退避回動可能に構成したことを特徴とするものである。そして本発明は、この構成によつて、退避回動させたフイードチエンの最上高を可及的に低くして、天井が低い室内スペースでの退避回動を可能にすると共に、退避回動時の操作位置を可及的に低くして操作性の向上も計ることができるようにしたものである。
【0004】
【実施例】次に、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。図面において、1はコンバインであつて、該コンバイン1は、茎稈を刈取る刈取部2、刈取つた茎稈を脱穀し、かつ脱穀された穀粒を選別する脱穀部3、脱穀処理済みの排稈を排出処理する後処理部4、クローラ型の走行部5等を備えるが、これらの基本構成は何れも従来通りである。
【0005】6は前記脱穀部3の上側前半部に設けられる扱室であつて、該扱室6では、前端面6aの茎稈供給口6bから供給される茎稈を、扱室内部に収容される扱胴7の回転脱穀作用に基づいて脱穀処理すると共に、脱穀した穀粒を、左側方にスライド状に引出し可能な受網8を介して選別室9内に漏下するようになつている。また、前記扱室6の上面および左側面上半部は、L字状に折曲するカバー10によつて常時は覆蓋されるが、扱室6内の清掃、点検、整備等に際しては、前記カバー10を、扱室6の上面右端部位置を支点として上方に退避回動させることによつて、扱室6の上面および左側面上半部を開放することができるようになつている。尚、11は扱室6の左側面下半側を覆う着脱自在な第一側板、12は扱室6の左側面下端部を覆うべく前記受網8に一体的に固着される第二側板である。
【0006】さらに、13は挟扼レールであつて、該挟扼レール13は、後述するフイードチエン14の上方に近接対向すべく扱室6の左側面部に横設されるものであるが、本実施例では、前記カバー10の側面部に挟扼レール13を一体的に設けているため、挟扼レール13を、カバー10の退避回動に伴つてフイードチエン14の対向位置から上方右側方に退避させることができるようになつている。
【0007】さて、前記フイードチエン14は、前処理部2に設けられる揚上搬送体(扱深さ調整装置)15の終端位置まで搬送された茎稈を、前記挟扼レール13との間に挟持しつつ扱室6の側面に沿つて横搬送すると共に、該横搬送過程で扱室6が脱穀処理した排稈を、扱室6の後方に配設される排藁チエン16の始端位置まで継続して搬送すべく扱室6側面に横設されている。つまり、フイードチエン14は、搬送始端および搬送終端に位置する従動スプロケツト17、18と、前側従動スプロケツト17の後方下方で、かつ扱室6の前端面6aよりも前方に位置する駆動スプロケツト19とに懸回され、該駆動スプロケツト19の駆動に伴つて搬送作動するようになつている。尚、20はフイードチエン14を弾圧状に押圧すべく駆動スプロケツト19の上方近傍に位置するテンシヨンプーリ、21はテンシヨンプーリ20を駆動スプロケツト19の駆動中心回りに揺動支持する揺動アーム、22はテンシヨンアーム21をフイードチエン14側に向けて付勢する弾機である。
【0008】また、23は前後両端部にそれぞれ前記従動スプロケツト17、18が組付けられたガイドレールであつて、該ガイドレール23は、前後従動スプロケツト17、18間においてフイードチエン14の搬送作用側内周部を摺動案内するものであるが、さらには、支持フレーム24および支持プレート25に一体的に連結されて鋭角三角形状に枠組み形成される回動フレーム26を構成するようになつている。即ち、ガイドレール23の後端部は、フイードチエン14の非搬送作用側に沿う支持フレーム24の後端部に一体的に連結される一方、ガイドレール23の中間部は、支持プレート25の上端部に一体的に連結され、さらに支持フレーム24の前端部と支持プレート25の下端部とが互いに一体的に連結されている。
【0009】一方、27は前記選別室9の前端面部位置に固設される伝動ケースであつて、該伝動ケース27は、選別室9に配設される唐箕軸28から伝動ベルト29を介して動力を入力し、該入力した動力を、前記駆動スプロケツト19の駆動軸30に伝動するものであるが、駆動軸30を回動自在に軸支する伝動ケース27の筒状部27aには、前記回動フレーム26に一体的に突設される連結部材31のボス筒部31aが回動自在に外嵌されている。即ち、回動フレーム26に組付けられるフイードチエン14を、フイードチエン14の搬送始端よりも後方で、かつ扱室6の前端面6aよりも前方に位置する駆動スプロケツト19の駆動中心を支点として上方前方の起立退避姿勢まで回動し得るが、起立退避したフイードチエン14は、扱室6の前端面部6aよりも前方に位置して、扱室6の側面全体を開放することができるようになつている。また、フイードチエン14は、搬送終端側が上方に退避回動する一方、搬送始端側が下方に退避回動して起立退避することになり、このため、起立退避姿勢における最上高が可及的に低く抑えられることになるが、フイードチエン14の搬送始端側は、上方近傍に位置する揚上搬送体15の搬送終端部から離間する方向に回動するため、揚上搬送体15との干渉も回避できるようになつている。尚、本実施例では、重心が前側に移行する位置までフイードチエン14を回動させると共に、図示しないストツパに接当させてフイードチエン14を起立退避姿勢に保持するが、支点越え弾機やダンパーを用いて位置保持するようにしてもよいものである。
【0010】さらに、32はフイードチエン14の搬送終端部に設けられる左右一対の巻込み防止板であつて、該巻込み防止板32は、後側従動スプロケツト18を挟む姿勢で回動フレーム26の後端部に一体的に対設されている。そして、フイードチエン14の終端まで搬送された排稈をさらに後方まで直線的に摺接ガイドすることによつて、排稈が後側従動スプロケツト18に巻込まれることを防止しており、このためフイードチエン14の終端まで搬送された排稈を排藁チエン16に確実に受け渡し得るが、後側従動スプロケツト18の後方まで延びる巻込み防止板32の先端部には、後述する機枠補強フレーム33の延長部33aに上方から係合してフイードチエン14を所定の横設姿勢に保持する係合溝32aが形成されている。即ち、前記機枠補強フレーム33は、機枠34に一体的に固定されるブラケツト部33b、該ブラケツト部33bおよび扱室6の後端面部に一体的に固定されるU字フレーム部33c、該U字フレーム部33cに一端部が固定される横フレーム部33d等で構成されて機体カバー35等の部材を支持するものであるが、前記ブラケツト部33bをそのまま外側方に延長するだけで前記延長部33aが形成されるようになつている。
【0011】またさらに、36は前記巻込み防止板32の先端部に設けられるフイードチエン14の係止装置であつて、該係止装置36は、前記係合溝32aに係合した延長部33aを係止する姿勢と係止解除する姿勢とに回動変姿自在なフツクプレート37と、該フツクプレート37を常時係止姿勢側に向けて付勢する弾機38とで構成されるものであるが、フツクプレート37の係止部37aは下面が傾斜状に形成されるため、フイードチエン14を上方から下降させた際には、延長部33aとの接当に基づいて非係止姿勢に自動的に退避し、しかる後、係止姿勢となつて延長部33を係止するようになつている。尚、37bはフツクプレート37を係止解除操作するためのレバー部である。
【0012】ところで、前記後側従動スプロケツト18と係合溝32aとの間には、所定の前後間隔を有し、かつ上下方向に開放する空間Sが形成されている。即ち、前記巻込み防止板32によつて巻込みを阻止し得なかつた排稈があつたとしても、該巻込み排稈の通過空間Sが確保されるため、巻込み排稈が後側従動スプロケツト18と係合溝32a(延長部33a)との間に詰つてフイードチエン14の搬送作動をロツクするような不都合を解消できるようになつている。
【0013】叙述の如く構成された本発明の実施例において、扱室6内の清掃、点検、整備等を行う場合には、カバー10を開放した後、フイードチエン14の搬送終端部に位置するフツクプレート37を係止解除姿勢に操作しながらフイードチエン14を上方に回動操作することになるが、上方に回動操作されたフイードチエン14は、フイードチエン14の搬送始端よりも後方で、かつ低い位置に設けられる駆動スプロケツト19の駆動中心を支点として回動するため、フイードチエン14の搬送終端側は上方に退避回動する一方、搬送始端側は下方に退避回動することになる。従つて、起立位置まで退避回動させたフイードチエン14の最上高を可及的に低くすることができ、この結果、上方に充分な退避スペースが確保し得ない場所でもフイードチエン14の退避回動を可能にすることができる。
【0014】しかも、フイードチエン14を退避回動させる際の操作位置を可及的に低くできるうえに、フイードチエン14をいちいち駆動スプロケツト19やテンシヨンプーリ20から外すような面倒な操作も不要であるため、操作性も著しく向上させることができる。
【0015】さらに、フイードチエン14(回動フレーム26)の回動支持を、駆動スプロケツト19の駆動軸30を回動支持する伝動ケース27の筒状部27aで行うようにしたため、殊更回動支持部材を設ける必要がないうえに、駆動軸30で回動支持する場合に比して強度的にも有利なものとできる。
【0016】
【作用効果】以上要するに、本発明は叙述の如く構成されたものであるから、扱室側面に横設されるフイードチエンを退避回動させて扱室側面を開放するものでありながら、前記フイードチエンは、搬送始端および搬送終端に配設される従動輪と、両従動輪の中間位置下方に配設される駆動輪とに懸回されると共に、前記駆動輪位置を支点として上下方向に退避回動することになる。つまり、フイードチエンの一端側が上方に退避回動する一方、他端側が下方に退避回動することになるため、退避回動させたフイードチエンの最上高を可及的に低くすることができ、この結果、上方に充分な退避スペースが確保し得ない場所でもフイードチエンの退避回動を可能にすることができる。しかも、フイードチエンを退避回動させる際の操作位置を可及的に低くすることができるうえに、フイードチエンをいちいち駆動輪から外すような面倒な操作も不要であるため、操作性も著しく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】コンバインの全体斜視図である。
【図2】脱穀部の側面図である。
【図3】同上平面図である。
【図4】同上正面図である。
【図5】同上要部拡大側面図である。
【図6】フイードチエンを退避回動させた状態を示す側面図である。
【符号の説明】
1 コンバイン
2 前処理部
3 脱穀部
6 扱室
13 挟扼レール
14 フイードチエン
17 前側従動スプロケツト
18 後側従動スプロケツト
19 駆動スプロケツト
26 回動フレーム
27 伝動ケース
30 駆動軸
31 連結部材
32 巻込み防止板
33 機枠補強フレーム
36 係止装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 挟扼レールとの間で茎稈を挟持搬送するフイードチエンを、扱室側面に横設してなる脱穀機において、前記フイードチエンを、搬送始端および搬送終端に配設される従動輪と、両従動輪の中間位置下方に配設される駆動輪とに懸回すると共に、前記駆動輪位置を支点として上下方向に退避回動可能に構成したことを特徴とする脱穀機の茎稈搬送装置。

【図1】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開平6−327339
【公開日】平成6年(1994)11月29日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−142786
【出願日】平成5年(1993)5月21日
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)