脱穀機
【課題】扱室に回転自在に設けた扱胴と、刈取り穀稈の穂先側を扱室に挿入して扱胴の回転軸芯に沿う方向に搬送する扱き口とを備えた脱穀機において、穀稈の穀粒ささりを効果的に防止できながら、ワラ屑詰まりの回避機能と優れた耐久性とを備えたささり防止体を提供する。
【解決手段】扱室2に飛散した脱穀処理物を扱室2に挿入された刈取り穀稈Cの上方で受け止めて扱胴側に流動させるささり防止体30を、扱室2における扱き口14の内側に配置して弾性変形自在に設けてある。ささり防止体30に、扱胴10の扱歯10bが通過するよう扱胴10に向かって開口した切欠き32を設けてある。扱歯10bがこれの扱胴ドラム10aからの突出長さLの半分以上の長さL1にわたって切欠き32に入り込む。
【解決手段】扱室2に飛散した脱穀処理物を扱室2に挿入された刈取り穀稈Cの上方で受け止めて扱胴側に流動させるささり防止体30を、扱室2における扱き口14の内側に配置して弾性変形自在に設けてある。ささり防止体30に、扱胴10の扱歯10bが通過するよう扱胴10に向かって開口した切欠き32を設けてある。扱歯10bがこれの扱胴ドラム10aからの突出長さLの半分以上の長さL1にわたって切欠き32に入り込む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扱室に回転自在に設けた扱胴と、刈取り穀稈の穂先側を前記扱室に挿入して前記扱胴の回転軸芯に沿う方向に搬送する扱き口とを備えた脱穀機に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特許文献1に示される脱穀機では、穀桿Kをフィードチェーン18と挟やく桿19とが協働して搬送する流路の上方近傍位置にささり防止体20を配設して、ささり防止構造を構成している。
つまり、ささり防止体20は、ブラシ22b、23bを備えている。扱胴12の扱歯14がブラシ22b、23bを上方から下方へ通過し、この通過の際、扱歯14が持ち回る脱粒が扱室11の内方に脱落されて、フィードチェーン18により搬送される穀桿Kに脱粒が刺さることがない。(符号は、公報に記載されたものである。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−120044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した脱穀機において、扱室に飛散する脱穀処理物が扱室に挿入された刈取り穀稈に触れると、穀粒が刈取り穀稈の稈身にささり込み、ささり込んだ穀粒が脱穀排ワラと共に脱穀機体外に排出される穀粒損失が発生する。
上記した従来の技術を採用することにより、穀稈の穀粒ささりを回避しようとした場合、耐久性の面で問題があった。
つまり、ブラシに扱歯との接触による摩滅や毛抜けが発生し、これによって毛抜けの進行が速くなってブラシの交換を早期に行なう必要が生じていた。
【0005】
本発明の目的は、穀粒ささりの防止を効果的に行なうことができるのみならず、ささり防止体にワラ屑詰まりの回避機能と優れた耐久性とを備えさせることができる脱穀機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明は、扱室に回転自在に設けた扱胴と、刈取り穀稈の穂先側を前記扱室に挿入して前記扱胴の回転軸芯に沿う方向に搬送する扱き口とを備えた脱穀機において、
前記扱室に飛散した脱穀処理物を前記扱室に挿入された刈取り穀稈の上方で受け止めて扱胴側に流動させるささり防止体を、前記扱室における前記扱き口の内側に配置して弾性変形自在に設け、
前記ささり防止体に、前記扱胴の扱歯が通過するよう前記扱胴に向かって開口した切欠きを設け、
前記扱歯がこれの扱胴ドラムからの突出長さの半分以上の長さにわたって前記切欠きに入り込むように構成してある。
【0007】
本第1発明の構成によると、扱室内の穀粒が扱室に挿入された刈取り穀稈に向けて飛んでも、穀粒は、刈取り穀稈の上方でささり防止体によって受け止められ、ささり防止体による案内によって扱胴側に流動する。扱歯が扱胴ドラムからの突出長さの半分以上にわたってささり防止体の切欠きに入り込むことにより、ささり防止体を扱胴ドラムの極力近くまで位置させて、ささり防止体による穀粒の受け止めを刈取り穀稈の稈身方向での広範囲にわたって行なわせることができる。
ささり防止体の切欠きにより、ささり防止体と扱歯との接触を回避してささり防止体の摩滅や、ささり防止体にブラシ部を備えた場合の毛抜けを回避しやすい。
ワラ屑などの塊がささり防止体と扱歯の間に詰まりそうになると、ささり防止体は、扱歯による塊を介しての操作によって扱歯の回転方向下手側に弾性変形して扱歯による塊の掻き取りを行いやすくする。
【0008】
したがって、穀稈の穀粒ささりを効果的に回避して上記した穀粒損失を良好に防止できるものでありながら、ささり防止体の摩滅が発生しにくく、かつささり防止体にブラシ部を備えさせても毛抜けが発生しにくく、ささり防止体が弾性板やブラシなど如何なるもので成っても、ささり防止体の長期使用が可能なように優れた耐久性を備え、しかもささり防止体におけるワラ屑などの詰まりが発生しにくい脱穀機を得ることができる。
【0009】
本第2発明では、前記ささり防止体に、前記切欠きを有した弾性板部を備えてある。
【0010】
本第2発明の構成によると、弾性板部の弾性変形により、ささり防止体におけるワラ屑などの詰まりを回避することができ、弾性板部の切欠きにより、扱歯を突出長さの半分以上の長さにわたってささり防止体に入り込ませてささり防止体を扱胴ドラムの極力近くに位置させることができる。
【0011】
したがって、ささり防止体による穀粒の受け止めを刈取り穀稈の稈身方向での広範囲にわたって行なわせて穀稈の穀粒ささりを効果的に回避することができながら、ワラ屑などの詰まり防止と、ささり防止体の長期使用とが可能になる。
【0012】
本第3発明では、前記ささり防止体に、前記切欠きを有した弾性ブラシ部を備えてある。
【0013】
本第3発明の構成によると、弾性ブラシ部の弾性変形により、ささり防止体と扱歯との間にワラ屑などが詰まることを回避することができ、弾性ブラシ部の切欠きにより、扱歯を突出長さの半分以上の長さにわたってささり防止体に入り込ませて、ささり防止体を扱胴ドラムの極力近くに位置させながらブラシ部の扱歯との接触による毛抜けを回避することができる。
【0014】
したがって、ささり防止体による穀粒の受け止めを刈取り穀稈の稈身方向での広範囲にわたって行なわせて穀稈の穀粒ささりを効果的に回避することができながら、ワラ屑などの詰まり防止と、ささり防止体の長期使用とが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】脱穀機の縦断側面図
【図2】脱穀部の縦断正面図
【図3】脱穀部の側面図
【図4】ささり防止体の扱歯通過状態を示す断面図
【図5】排ワラ処理装置の細断放出状態での縦断面図
【図6】排ワラ処理装置の長ワラ放出状態での縦断面図
【図7】排ワラ処置装置の後面図
【図8】始端側支持構造の断面図
【図9】(a)は、終端側支持構造の側面図、(b)は、終端側支持構造の正面図
【図10】図9(b)のX−X断面矢視図
【図11】挟持レールの支持構造の平面図
【図12】脱穀フィードチェーンの搬送始端側の支持構造の側面図
【図13】脱穀フィードチェーンの搬送始端側の支持構造の縦断面図
【図14】脱穀フィードチェーンに対応した挟持レールの支持構造の側面図
【図15】支持杆の斜視図
【図16】別実施構造を備えたささり防止体の縦断正面図
【図17】図16のXVII−XVII断面矢視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係る脱穀機の縦断側面図である。この図に示すように、本発明の実施例に係る脱穀機は、脱穀機体1と、この脱穀機体1の前端側における上部の内側に設けた扱室2を有した脱穀部Aと、前記脱穀機体1の内部の前記扱室2の下方に設けた揺動選別装置3を有した選別部Bと、前記脱穀機体1の内部の前記扱室2の後方に駆動回転自在に設けた処理回転体8と、前記脱穀機体1の内側の底部に設けた1番スクリューコンベヤ4および2番スクリューコンベヤ5と、前記脱穀機体1の内部の前記扱室2の後方に設けた排ワラ搬送装置6と、前記脱穀機体1の後部に連結した排ワラ処理装置7とを備えている。
【0017】
この脱穀機は、コンバインの走行機体に搭載されてコンバインの刈取り部からの刈取り穀稈を脱穀処理し、かつ脱穀排ワラを細断処理して放出したり、長ワラ状態で放出したりする。
【0018】
すなわち、前記脱穀部Aは、前記扱室2を備える他、この扱室2の脱穀機体前後向きの回転軸芯Pまわりに、かつ回転方向F(図2参照)に駆動自在に設けた扱胴10と、前記扱室2の下部に扱胴10に沿わせて設けた受網11と、前記脱穀機体1の横外側に駆動自在に設けた脱穀フィードチェーン12とを備えている。
【0019】
つまり、脱穀部Aは、コンバインの刈取り部からの刈取り穀稈の株元側を前記脱穀フィードチェーン12によって挟持して脱穀機体後方向きに搬送し、これによって刈取り穀稈の穂先側を脱穀機体1の前壁に位置する供給口から前記扱室2の扱胴10の下側に挿入し、扱胴10の下側に入った刈取り穀稈の穂先側を脱穀機体1の横側壁に位置する扱き口14(図2参照)によって扱胴10の回転軸芯Pに沿う方向に搬送して穂先側を扱胴10と受網11とによって脱穀処理し、脱穀粒などの脱穀処理物を受網11の目合いから落下させ、脱穀排ワラを扱室2の後端部に位置する送塵口13から脱穀フィードチェーン12によって排出する。
【0020】
前記処理回転体8は、扱室2から排出された脱穀排ワラに掻き出し爪を作用させ、脱穀排ワラにささり込んだ穀粒を脱穀排ワラから掻き出す。
【0021】
前記選別部Bは、前記揺動選別装置3を備える他、この揺動選別装置3の前端部の下方に設けた唐箕16と、前記揺動選別装置3の後端部の上方に設けた排塵ファン17とを備えている。
つまり、選別部Bは、前記受網11から落下した脱穀処理物を前記揺動選別装置3によって受け止め、この揺動選別装置3による揺動選別と、前記唐箕16によって脱穀機体後方向きに供給される選別風とによって穀粒と塵埃とに選別し、穀粒を揺動選別装置3から落下させ、塵埃を選別風と共に排塵ファン17を内装した排塵ケースの排出口18、あるいは脱穀機体1の後部に位置する排塵口19から脱穀機体外に排出する。
【0022】
前記1番スクリューコンベヤ4は、揺動選別装置3からの穀粒のうちの1番物を受け入れて脱穀機体横方向に搬送して脱穀機体1の横外側に搬出する。前記2番スクリューコンベヤ5は、揺動選別装置3からの穀粒のうちの2番物を受け入れて脱穀機体横方向に搬送して脱穀機体1の横外側に搬出する。2番スクリューコンベヤ5からの2番物は、スクリューコンベヤで成る還元装置20によって脱穀機体1の横壁の上部に位置する還元口に揚送し、この還元口から脱穀機体内に投入して揺動選別装置3の始端側に還元する。
【0023】
前記排ワラ搬送装置6は、前記脱穀フィードチェーン12から脱穀排ワラを受け継ぎ、受け継いだ脱穀排ワラを横倒れ姿勢で穂先側を脱穀機体1の横壁側に寄せながら脱穀機体後方側に搬送し、脱穀機体1の後部に位置する排ワラ搬出口21から脱穀機体1の外部に搬出する。
【0024】
図1,5に示すように、前記排ワラ処理装置7は、カッタケース25と、このカッタケース25の上部に位置する排ワラ受け入れ口26を開閉する一枚の揺動開閉自在な蓋板27と、前記カッタケース25の内部に駆動自在に設けた一対の回転カッター28,28とを備えている。
【0025】
図5は、前記排ワラ処理装置7の細断放出状態での縦断側面である。この図に示すように、前記排ワラ処理装置7は、前記排ワラ搬送装置6の株元挟持搬送部における挟持レール41の搬送終端側レール41bが短縮調節され、前記蓋板27が上昇開放操作されると、細断放出状態になる。
つまり、前記排ワラ搬送装置6から落下した脱穀排ワラを排ワラ受け入れ口26からカッタケース25の内部に落下させ、カッタケース25に入った脱穀排ワラを回動する前記一対の回転カッター28,28によって稈身方向に細断し、細断ワラをカッタケース25の下部から脱穀機体1の後方に落下させる。
【0026】
図6は、前記排ワラ処理装置7の長ワラ放出状態での縦断側面図である。この図に示すように、前記排ワラ処理装置7は、前記排ワラ搬送装置6の前記搬送終端側レール41bが伸長調節され、前記蓋板27が下降閉じ操作されると、長ワラ放出状態になる。
つまり、前記排ワラ搬送装置6から落下した脱穀排ワラを蓋板27の基端側の上に落下させ、長ワラのままで蓋板27の落下案内によってカッタケース25の後方に落下させる。
【0027】
図7は、前記排ワラ処理装置7の後面図である。この図に示すように、前記蓋板27は、これの遊端部に設けた切欠き部27aを備え、この切欠き部27aによって前記排ワラ搬送装置6との干渉を回避しながら揺動開閉する。
【0028】
図2は、前記脱穀部Aの縦断正面図である。図3は、前記脱穀部Aの側面図である。これらの図に示すように、前記脱穀部Aは、前記扱室2に前記扱き口14の内側に配置して設けたささり防止体30を備えている。
【0029】
前記ささり防止体30は、前記扱き口14のほぼ全長にわたる脱穀機体前後方向長さを備えている。このささり防止体30は、脱穀機体1の横側壁が前記扱き口14に沿わせて備えている上唇板15の下部に扱室前後方向に並べて装着された前後一対の分割ささり防止体30a,30aによって構成してある。
【0030】
前記各分割ささり防止体30aは、前記上唇板15に連結ボルトと当て板35とによって締め付け連結された取り付け板部30bと、この取り付け板部30bから扱室内側に延出した弾性板部30cとを備えて構成してある。前記取り付け板部30bと前記弾性板部30cとは、一枚のゴム板によって構成してある。
【0031】
前記各分割ささり防止体30aは、前記弾性板部30cに扱胴10の前後方向に並べて設けた切欠き32を備えている。前記各切欠き32は、扱胴10に向かって開口しており、扱胴10のドラム10aに扱胴10の周方向および前後方向に並べて設けてある扱歯10bのうちの対応する扱歯10bが扱胴10の回転に伴ってささり防止体30の上方から下方にささり防止体30に触れないで通過するように構成したものである。図4は、ささり防止体30の扱歯通過状態を示す断面図である。この図に示すように、各切欠き32において、扱歯10bが切欠き32を通過する際、扱歯10bの前記ドラム10aからの突出長さLの半分以上の長さL1にわたって切り欠き32に入り込む。
【0032】
つまり、ささり防止体30は、前後一対の分割ささり防止体30a,30aの弾性板部30cで成る弾性板部30cを備え、扱室2に飛散し、扱き口14から扱室2に挿入された刈取り穀稈Cに向かった脱穀処理物を刈取り穀稈Cの上方で弾性板部30cによって受け止め、受け止めた脱穀処理物を弾性板部30cによる案内によって扱胴側に流動させ、これによって飛散した脱穀処理物のうちの穀粒が刈取り穀稈Cの稈身にささり込むことを防止する。
【0033】
ささり防止体30は、扱歯10bの扱胴ドラム10aからの突出長さLの半分以上の長さL1が切り欠き32に入り込むことにより、扱胴ドラム10bの極力近くまで延出した状態で位置し、脱穀処理物を刈り取り穀稈Cにささり込まないように精度よく受け止める。
【0034】
ささり防止体30は、弾性板部30cと扱歯10bとの間にワラ屑などの塊が詰まりそうになると、扱歯10bによるワラ屑などの塊を介しての弾性板部30cの操作によって弾性板部30cを扱胴回転方向下手側に揺動するよう弾性変形させ、弾性板部30cの弾性変形によって扱歯10bによるワラ屑などの塊の掻き取りを行いやすくして、ワラ屑などの塊をささり防止体30から除去させる。
【0035】
図5に示すように、前記排ワラ搬送装置6の株元挟持搬送部は、前記脱穀フィードチェーン12からの脱穀排ワラの株元側を無端回動チェーン40と前記挟持レール41とによって挟持搬送する。この図に示すように、前記挟持レール41は、前記搬送終端側レール41bを備える他、この搬送終端側レール41bを伸縮自在に支持する搬送始端側レール41aを備えて構成してある。
【0036】
図11は、前記挟持レール41の支持構造の平面図である。この図と図5とに示すように、前記挟持レール41は、前記搬送始端側レール41aの搬送始端部に枢支ピン51を介して連結された脱穀機体上下向きの前支軸52を有した始端側支持構造50と、前記搬送始端側レール41aの搬送終端部に枢支ピン61を介して連結された脱穀機体上下向きの後支軸62を有した終端側支持構造60とによって支持されている。
【0037】
図8は、前記始端側支持構造50の断面図である。この図に示すように、前記始端側支持構造50は、前記前支軸52を備える他、この前支軸52をスプリング受けに兼用のブッシュ53を介して回転および上下摺動自在に支持する鋼管で成る筒体54と、この筒体54に連結されたステー56と、このステー56を脱穀フィードチェーンガイド55に連結している連結ボルト58と、前記前支軸52に外嵌されて前支軸52を上昇付勢することによって挟持レール41を無端回動チェーン40に寄せるスプリング57とを備えている。
【0038】
図8に示すように、前記脱穀フィードチェーンガイド55は、前記筒体54が入り込んだ長孔形の筒支持孔55aと、前記連結ボルト58が挿通した長孔形のボルト孔55bとを備えている。
【0039】
図9(a)は、前記終端側支持構造60の側面図である。図9(b)は、前記終端側支持構造60の正面図である。図10は、図9(b)のX−X断面矢視図である。これらの図に示すように、前記終端側支持構造60は、前記後支軸62を備える他、この後支軸62をスプリング受けに兼用のブシュ63を介して回転および上下摺動自在に支持する鋼管で成る筒体64と、この筒体64を脱穀機体1に固定されたブラケット65の脱穀機体上下向きの連結面に支持させているステー66と、前記後支軸62を上昇付勢することによって挟持レール41を無端回動チェーン40に寄せるスプリング67とを備えている。
【0040】
図10に示すように、前記ステー66が前記ブラケット65に連結ボルト68によって連結されるようステー66に設けた連結ボルト孔66aは、長孔に形成されており、ステー66のブラケット65に対する連結位置を脱穀機体上下方向視で排ワラ搬送方向と直交する方向に調節することを可能にする。
【0041】
つまり、前記始端側支持構造50において、前記筒支持孔55aと前記ボルト孔55bの長孔の作用によって前記ステー56の脱穀フィードチェーンガイド55に対する連結位置を変更調節することにより、前支軸52の脱穀フィードチェーンガイド55に対する連結位置が変化し、挟持レール41を排ワラ搬送方向に沿う方向に位置調節できる。
【0042】
前記終端側支持構造60において、前記ボルト孔66aの長孔の作用によって前記ステー66のブラケット65に対する連結位置を変更調節することにより、挟持レール41を無端回動チェーン40に沿った取り付け向きになるように、前記前支軸52の軸芯まわりに無端回動チェーン40の搬送方向に直交する方向に位置調節できる。このとき、前記筒支持孔55aと前記ボルト孔55bとの長孔の作用により、前記前支軸52が前記筒体54と共に前記脱穀フィードチェーンガイド55に対して移動し、挟持レール41の前支軸52の軸芯まわりでの揺動にかかわらず、ステー66をブラケット65の脱穀機体上下向きの連結面に当て付けることができる。
【0043】
図12は、前記脱穀フィードチェーン12の搬送始端側の支持構造の側面図である。図13は、前記脱穀フィードチェーン12の搬送始端側のための支持構造の縦断面図である。これらの図に示すように、前記脱穀フィードチェーン12の搬送始端側の支持構造は、脱穀フィードチェーン12に案内作用する脱穀フィードチェーンガイド55の縦板部55aに設けた脱穀機体横向きの支軸70と、この支軸70の両端部にボールベアリングを取り付けて設けたガイドローラ71とを備え、前記左右一対のガイドローラ71,71に脱穀フィードチェーン12の搬送始端部を巻回させている。
【0044】
図14は、前記脱穀フィードチェーン12に対応した挟持レール75の支持構造の側面図である。この図と図12とに示すように、前記脱穀フィードチェーン12に対応した挟持レール75の支持構造は、脱穀機体1に支持された支持フレーム76と、この支持フレーム76の脱穀機体前後方向での複数箇所において支持フレーム76と挟持レール75とにわたって設けた支持杆77と、前記各支持杆77に装着したスプリング78とを備えている。
【0045】
前記スプリング78は、前記支持杆77を支持フレーム76に対して下降付勢することにより、挟持レール75を脱穀フィードチェーン12に寄せ付勢する。
【0046】
図15は、前記支持杆77の斜視図である。この図と図14とに示すように、前記支持杆77は、支持杆77の下端部に設けたバネ受け部79と連結部80とを備えている。前記バネ受け部79は、前記スプリング78の下端側を受け止め支持してスプリング78による支持杆77の下降付勢を可能にする。前記連結部80は、これのピン孔81と挟持レール75とにわたって装着される連結ピンによって支持杆77を挟持レール75に連結する。
【0047】
前記バネ受け部79は、支持杆77の下端部に溶接によって連結された板金部材の一対の折り曲げ舌片で成るスプリング係止部79a,79aを備えた板金部分によって構成してある。前記連結部80は、前記板金部材の一対の折り曲げ舌片で成る支持片80a,80aを備えて構成してある。
【0048】
図16は、別の実施構造を備えたささり防止体30の縦断正面図である。図17は、図16のXVII−XVII断面矢視図である。これらの図に示すように、別の実施構造を備えたささり防止体30は、上唇板15の下端部に連結板31を介して支持された取り付けレール部33と、この取り付けレール部33から扱胴10に向かって延出する状態で前記取り付けレール部33に植設された弾性ブラシ部34を備えている。
【0049】
別の実施構造を備えたささり防止体30は、前記弾性ブラシ部34に扱胴10の前後方向に並べて設けた切欠き32を備え、扱胴10の扱歯10bが対応する切欠き32をささり防止体30の上方から下方に通過するように、かつ扱歯10bの扱胴ドラム10aからの突出長さLの半分以上の長さL1にわたって切欠き32に入り込むように構成してある。
【0050】
別の実施構造を備えたささり防止体30は、ささり防止体30と扱歯10bとの間にワラ屑などの塊が詰まりそうになると、扱歯10bによるワラ屑などの塊を介しての弾性ブラシ部34に対する操作により、弾性ブラシ部34を取り付けレール部33に連結している基端側を揺動支点にして扱胴回転方向下手側に揺動するよう弾性変形させ、これによって扱歯10bによるワラ屑などの塊の掻き取りを行いやすくする。
【符号の説明】
【0051】
2 扱室
10 扱胴
10a 扱胴ドラム
10b 扱歯
14 扱き口
30 ささり防止体
30c 弾性板部
32 切欠き
34 ブラシ部
L 扱歯の突出長さ
L1 扱歯の切欠きに入り込む長さ
【技術分野】
【0001】
本発明は、扱室に回転自在に設けた扱胴と、刈取り穀稈の穂先側を前記扱室に挿入して前記扱胴の回転軸芯に沿う方向に搬送する扱き口とを備えた脱穀機に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特許文献1に示される脱穀機では、穀桿Kをフィードチェーン18と挟やく桿19とが協働して搬送する流路の上方近傍位置にささり防止体20を配設して、ささり防止構造を構成している。
つまり、ささり防止体20は、ブラシ22b、23bを備えている。扱胴12の扱歯14がブラシ22b、23bを上方から下方へ通過し、この通過の際、扱歯14が持ち回る脱粒が扱室11の内方に脱落されて、フィードチェーン18により搬送される穀桿Kに脱粒が刺さることがない。(符号は、公報に記載されたものである。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−120044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した脱穀機において、扱室に飛散する脱穀処理物が扱室に挿入された刈取り穀稈に触れると、穀粒が刈取り穀稈の稈身にささり込み、ささり込んだ穀粒が脱穀排ワラと共に脱穀機体外に排出される穀粒損失が発生する。
上記した従来の技術を採用することにより、穀稈の穀粒ささりを回避しようとした場合、耐久性の面で問題があった。
つまり、ブラシに扱歯との接触による摩滅や毛抜けが発生し、これによって毛抜けの進行が速くなってブラシの交換を早期に行なう必要が生じていた。
【0005】
本発明の目的は、穀粒ささりの防止を効果的に行なうことができるのみならず、ささり防止体にワラ屑詰まりの回避機能と優れた耐久性とを備えさせることができる脱穀機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明は、扱室に回転自在に設けた扱胴と、刈取り穀稈の穂先側を前記扱室に挿入して前記扱胴の回転軸芯に沿う方向に搬送する扱き口とを備えた脱穀機において、
前記扱室に飛散した脱穀処理物を前記扱室に挿入された刈取り穀稈の上方で受け止めて扱胴側に流動させるささり防止体を、前記扱室における前記扱き口の内側に配置して弾性変形自在に設け、
前記ささり防止体に、前記扱胴の扱歯が通過するよう前記扱胴に向かって開口した切欠きを設け、
前記扱歯がこれの扱胴ドラムからの突出長さの半分以上の長さにわたって前記切欠きに入り込むように構成してある。
【0007】
本第1発明の構成によると、扱室内の穀粒が扱室に挿入された刈取り穀稈に向けて飛んでも、穀粒は、刈取り穀稈の上方でささり防止体によって受け止められ、ささり防止体による案内によって扱胴側に流動する。扱歯が扱胴ドラムからの突出長さの半分以上にわたってささり防止体の切欠きに入り込むことにより、ささり防止体を扱胴ドラムの極力近くまで位置させて、ささり防止体による穀粒の受け止めを刈取り穀稈の稈身方向での広範囲にわたって行なわせることができる。
ささり防止体の切欠きにより、ささり防止体と扱歯との接触を回避してささり防止体の摩滅や、ささり防止体にブラシ部を備えた場合の毛抜けを回避しやすい。
ワラ屑などの塊がささり防止体と扱歯の間に詰まりそうになると、ささり防止体は、扱歯による塊を介しての操作によって扱歯の回転方向下手側に弾性変形して扱歯による塊の掻き取りを行いやすくする。
【0008】
したがって、穀稈の穀粒ささりを効果的に回避して上記した穀粒損失を良好に防止できるものでありながら、ささり防止体の摩滅が発生しにくく、かつささり防止体にブラシ部を備えさせても毛抜けが発生しにくく、ささり防止体が弾性板やブラシなど如何なるもので成っても、ささり防止体の長期使用が可能なように優れた耐久性を備え、しかもささり防止体におけるワラ屑などの詰まりが発生しにくい脱穀機を得ることができる。
【0009】
本第2発明では、前記ささり防止体に、前記切欠きを有した弾性板部を備えてある。
【0010】
本第2発明の構成によると、弾性板部の弾性変形により、ささり防止体におけるワラ屑などの詰まりを回避することができ、弾性板部の切欠きにより、扱歯を突出長さの半分以上の長さにわたってささり防止体に入り込ませてささり防止体を扱胴ドラムの極力近くに位置させることができる。
【0011】
したがって、ささり防止体による穀粒の受け止めを刈取り穀稈の稈身方向での広範囲にわたって行なわせて穀稈の穀粒ささりを効果的に回避することができながら、ワラ屑などの詰まり防止と、ささり防止体の長期使用とが可能になる。
【0012】
本第3発明では、前記ささり防止体に、前記切欠きを有した弾性ブラシ部を備えてある。
【0013】
本第3発明の構成によると、弾性ブラシ部の弾性変形により、ささり防止体と扱歯との間にワラ屑などが詰まることを回避することができ、弾性ブラシ部の切欠きにより、扱歯を突出長さの半分以上の長さにわたってささり防止体に入り込ませて、ささり防止体を扱胴ドラムの極力近くに位置させながらブラシ部の扱歯との接触による毛抜けを回避することができる。
【0014】
したがって、ささり防止体による穀粒の受け止めを刈取り穀稈の稈身方向での広範囲にわたって行なわせて穀稈の穀粒ささりを効果的に回避することができながら、ワラ屑などの詰まり防止と、ささり防止体の長期使用とが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】脱穀機の縦断側面図
【図2】脱穀部の縦断正面図
【図3】脱穀部の側面図
【図4】ささり防止体の扱歯通過状態を示す断面図
【図5】排ワラ処理装置の細断放出状態での縦断面図
【図6】排ワラ処理装置の長ワラ放出状態での縦断面図
【図7】排ワラ処置装置の後面図
【図8】始端側支持構造の断面図
【図9】(a)は、終端側支持構造の側面図、(b)は、終端側支持構造の正面図
【図10】図9(b)のX−X断面矢視図
【図11】挟持レールの支持構造の平面図
【図12】脱穀フィードチェーンの搬送始端側の支持構造の側面図
【図13】脱穀フィードチェーンの搬送始端側の支持構造の縦断面図
【図14】脱穀フィードチェーンに対応した挟持レールの支持構造の側面図
【図15】支持杆の斜視図
【図16】別実施構造を備えたささり防止体の縦断正面図
【図17】図16のXVII−XVII断面矢視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係る脱穀機の縦断側面図である。この図に示すように、本発明の実施例に係る脱穀機は、脱穀機体1と、この脱穀機体1の前端側における上部の内側に設けた扱室2を有した脱穀部Aと、前記脱穀機体1の内部の前記扱室2の下方に設けた揺動選別装置3を有した選別部Bと、前記脱穀機体1の内部の前記扱室2の後方に駆動回転自在に設けた処理回転体8と、前記脱穀機体1の内側の底部に設けた1番スクリューコンベヤ4および2番スクリューコンベヤ5と、前記脱穀機体1の内部の前記扱室2の後方に設けた排ワラ搬送装置6と、前記脱穀機体1の後部に連結した排ワラ処理装置7とを備えている。
【0017】
この脱穀機は、コンバインの走行機体に搭載されてコンバインの刈取り部からの刈取り穀稈を脱穀処理し、かつ脱穀排ワラを細断処理して放出したり、長ワラ状態で放出したりする。
【0018】
すなわち、前記脱穀部Aは、前記扱室2を備える他、この扱室2の脱穀機体前後向きの回転軸芯Pまわりに、かつ回転方向F(図2参照)に駆動自在に設けた扱胴10と、前記扱室2の下部に扱胴10に沿わせて設けた受網11と、前記脱穀機体1の横外側に駆動自在に設けた脱穀フィードチェーン12とを備えている。
【0019】
つまり、脱穀部Aは、コンバインの刈取り部からの刈取り穀稈の株元側を前記脱穀フィードチェーン12によって挟持して脱穀機体後方向きに搬送し、これによって刈取り穀稈の穂先側を脱穀機体1の前壁に位置する供給口から前記扱室2の扱胴10の下側に挿入し、扱胴10の下側に入った刈取り穀稈の穂先側を脱穀機体1の横側壁に位置する扱き口14(図2参照)によって扱胴10の回転軸芯Pに沿う方向に搬送して穂先側を扱胴10と受網11とによって脱穀処理し、脱穀粒などの脱穀処理物を受網11の目合いから落下させ、脱穀排ワラを扱室2の後端部に位置する送塵口13から脱穀フィードチェーン12によって排出する。
【0020】
前記処理回転体8は、扱室2から排出された脱穀排ワラに掻き出し爪を作用させ、脱穀排ワラにささり込んだ穀粒を脱穀排ワラから掻き出す。
【0021】
前記選別部Bは、前記揺動選別装置3を備える他、この揺動選別装置3の前端部の下方に設けた唐箕16と、前記揺動選別装置3の後端部の上方に設けた排塵ファン17とを備えている。
つまり、選別部Bは、前記受網11から落下した脱穀処理物を前記揺動選別装置3によって受け止め、この揺動選別装置3による揺動選別と、前記唐箕16によって脱穀機体後方向きに供給される選別風とによって穀粒と塵埃とに選別し、穀粒を揺動選別装置3から落下させ、塵埃を選別風と共に排塵ファン17を内装した排塵ケースの排出口18、あるいは脱穀機体1の後部に位置する排塵口19から脱穀機体外に排出する。
【0022】
前記1番スクリューコンベヤ4は、揺動選別装置3からの穀粒のうちの1番物を受け入れて脱穀機体横方向に搬送して脱穀機体1の横外側に搬出する。前記2番スクリューコンベヤ5は、揺動選別装置3からの穀粒のうちの2番物を受け入れて脱穀機体横方向に搬送して脱穀機体1の横外側に搬出する。2番スクリューコンベヤ5からの2番物は、スクリューコンベヤで成る還元装置20によって脱穀機体1の横壁の上部に位置する還元口に揚送し、この還元口から脱穀機体内に投入して揺動選別装置3の始端側に還元する。
【0023】
前記排ワラ搬送装置6は、前記脱穀フィードチェーン12から脱穀排ワラを受け継ぎ、受け継いだ脱穀排ワラを横倒れ姿勢で穂先側を脱穀機体1の横壁側に寄せながら脱穀機体後方側に搬送し、脱穀機体1の後部に位置する排ワラ搬出口21から脱穀機体1の外部に搬出する。
【0024】
図1,5に示すように、前記排ワラ処理装置7は、カッタケース25と、このカッタケース25の上部に位置する排ワラ受け入れ口26を開閉する一枚の揺動開閉自在な蓋板27と、前記カッタケース25の内部に駆動自在に設けた一対の回転カッター28,28とを備えている。
【0025】
図5は、前記排ワラ処理装置7の細断放出状態での縦断側面である。この図に示すように、前記排ワラ処理装置7は、前記排ワラ搬送装置6の株元挟持搬送部における挟持レール41の搬送終端側レール41bが短縮調節され、前記蓋板27が上昇開放操作されると、細断放出状態になる。
つまり、前記排ワラ搬送装置6から落下した脱穀排ワラを排ワラ受け入れ口26からカッタケース25の内部に落下させ、カッタケース25に入った脱穀排ワラを回動する前記一対の回転カッター28,28によって稈身方向に細断し、細断ワラをカッタケース25の下部から脱穀機体1の後方に落下させる。
【0026】
図6は、前記排ワラ処理装置7の長ワラ放出状態での縦断側面図である。この図に示すように、前記排ワラ処理装置7は、前記排ワラ搬送装置6の前記搬送終端側レール41bが伸長調節され、前記蓋板27が下降閉じ操作されると、長ワラ放出状態になる。
つまり、前記排ワラ搬送装置6から落下した脱穀排ワラを蓋板27の基端側の上に落下させ、長ワラのままで蓋板27の落下案内によってカッタケース25の後方に落下させる。
【0027】
図7は、前記排ワラ処理装置7の後面図である。この図に示すように、前記蓋板27は、これの遊端部に設けた切欠き部27aを備え、この切欠き部27aによって前記排ワラ搬送装置6との干渉を回避しながら揺動開閉する。
【0028】
図2は、前記脱穀部Aの縦断正面図である。図3は、前記脱穀部Aの側面図である。これらの図に示すように、前記脱穀部Aは、前記扱室2に前記扱き口14の内側に配置して設けたささり防止体30を備えている。
【0029】
前記ささり防止体30は、前記扱き口14のほぼ全長にわたる脱穀機体前後方向長さを備えている。このささり防止体30は、脱穀機体1の横側壁が前記扱き口14に沿わせて備えている上唇板15の下部に扱室前後方向に並べて装着された前後一対の分割ささり防止体30a,30aによって構成してある。
【0030】
前記各分割ささり防止体30aは、前記上唇板15に連結ボルトと当て板35とによって締め付け連結された取り付け板部30bと、この取り付け板部30bから扱室内側に延出した弾性板部30cとを備えて構成してある。前記取り付け板部30bと前記弾性板部30cとは、一枚のゴム板によって構成してある。
【0031】
前記各分割ささり防止体30aは、前記弾性板部30cに扱胴10の前後方向に並べて設けた切欠き32を備えている。前記各切欠き32は、扱胴10に向かって開口しており、扱胴10のドラム10aに扱胴10の周方向および前後方向に並べて設けてある扱歯10bのうちの対応する扱歯10bが扱胴10の回転に伴ってささり防止体30の上方から下方にささり防止体30に触れないで通過するように構成したものである。図4は、ささり防止体30の扱歯通過状態を示す断面図である。この図に示すように、各切欠き32において、扱歯10bが切欠き32を通過する際、扱歯10bの前記ドラム10aからの突出長さLの半分以上の長さL1にわたって切り欠き32に入り込む。
【0032】
つまり、ささり防止体30は、前後一対の分割ささり防止体30a,30aの弾性板部30cで成る弾性板部30cを備え、扱室2に飛散し、扱き口14から扱室2に挿入された刈取り穀稈Cに向かった脱穀処理物を刈取り穀稈Cの上方で弾性板部30cによって受け止め、受け止めた脱穀処理物を弾性板部30cによる案内によって扱胴側に流動させ、これによって飛散した脱穀処理物のうちの穀粒が刈取り穀稈Cの稈身にささり込むことを防止する。
【0033】
ささり防止体30は、扱歯10bの扱胴ドラム10aからの突出長さLの半分以上の長さL1が切り欠き32に入り込むことにより、扱胴ドラム10bの極力近くまで延出した状態で位置し、脱穀処理物を刈り取り穀稈Cにささり込まないように精度よく受け止める。
【0034】
ささり防止体30は、弾性板部30cと扱歯10bとの間にワラ屑などの塊が詰まりそうになると、扱歯10bによるワラ屑などの塊を介しての弾性板部30cの操作によって弾性板部30cを扱胴回転方向下手側に揺動するよう弾性変形させ、弾性板部30cの弾性変形によって扱歯10bによるワラ屑などの塊の掻き取りを行いやすくして、ワラ屑などの塊をささり防止体30から除去させる。
【0035】
図5に示すように、前記排ワラ搬送装置6の株元挟持搬送部は、前記脱穀フィードチェーン12からの脱穀排ワラの株元側を無端回動チェーン40と前記挟持レール41とによって挟持搬送する。この図に示すように、前記挟持レール41は、前記搬送終端側レール41bを備える他、この搬送終端側レール41bを伸縮自在に支持する搬送始端側レール41aを備えて構成してある。
【0036】
図11は、前記挟持レール41の支持構造の平面図である。この図と図5とに示すように、前記挟持レール41は、前記搬送始端側レール41aの搬送始端部に枢支ピン51を介して連結された脱穀機体上下向きの前支軸52を有した始端側支持構造50と、前記搬送始端側レール41aの搬送終端部に枢支ピン61を介して連結された脱穀機体上下向きの後支軸62を有した終端側支持構造60とによって支持されている。
【0037】
図8は、前記始端側支持構造50の断面図である。この図に示すように、前記始端側支持構造50は、前記前支軸52を備える他、この前支軸52をスプリング受けに兼用のブッシュ53を介して回転および上下摺動自在に支持する鋼管で成る筒体54と、この筒体54に連結されたステー56と、このステー56を脱穀フィードチェーンガイド55に連結している連結ボルト58と、前記前支軸52に外嵌されて前支軸52を上昇付勢することによって挟持レール41を無端回動チェーン40に寄せるスプリング57とを備えている。
【0038】
図8に示すように、前記脱穀フィードチェーンガイド55は、前記筒体54が入り込んだ長孔形の筒支持孔55aと、前記連結ボルト58が挿通した長孔形のボルト孔55bとを備えている。
【0039】
図9(a)は、前記終端側支持構造60の側面図である。図9(b)は、前記終端側支持構造60の正面図である。図10は、図9(b)のX−X断面矢視図である。これらの図に示すように、前記終端側支持構造60は、前記後支軸62を備える他、この後支軸62をスプリング受けに兼用のブシュ63を介して回転および上下摺動自在に支持する鋼管で成る筒体64と、この筒体64を脱穀機体1に固定されたブラケット65の脱穀機体上下向きの連結面に支持させているステー66と、前記後支軸62を上昇付勢することによって挟持レール41を無端回動チェーン40に寄せるスプリング67とを備えている。
【0040】
図10に示すように、前記ステー66が前記ブラケット65に連結ボルト68によって連結されるようステー66に設けた連結ボルト孔66aは、長孔に形成されており、ステー66のブラケット65に対する連結位置を脱穀機体上下方向視で排ワラ搬送方向と直交する方向に調節することを可能にする。
【0041】
つまり、前記始端側支持構造50において、前記筒支持孔55aと前記ボルト孔55bの長孔の作用によって前記ステー56の脱穀フィードチェーンガイド55に対する連結位置を変更調節することにより、前支軸52の脱穀フィードチェーンガイド55に対する連結位置が変化し、挟持レール41を排ワラ搬送方向に沿う方向に位置調節できる。
【0042】
前記終端側支持構造60において、前記ボルト孔66aの長孔の作用によって前記ステー66のブラケット65に対する連結位置を変更調節することにより、挟持レール41を無端回動チェーン40に沿った取り付け向きになるように、前記前支軸52の軸芯まわりに無端回動チェーン40の搬送方向に直交する方向に位置調節できる。このとき、前記筒支持孔55aと前記ボルト孔55bとの長孔の作用により、前記前支軸52が前記筒体54と共に前記脱穀フィードチェーンガイド55に対して移動し、挟持レール41の前支軸52の軸芯まわりでの揺動にかかわらず、ステー66をブラケット65の脱穀機体上下向きの連結面に当て付けることができる。
【0043】
図12は、前記脱穀フィードチェーン12の搬送始端側の支持構造の側面図である。図13は、前記脱穀フィードチェーン12の搬送始端側のための支持構造の縦断面図である。これらの図に示すように、前記脱穀フィードチェーン12の搬送始端側の支持構造は、脱穀フィードチェーン12に案内作用する脱穀フィードチェーンガイド55の縦板部55aに設けた脱穀機体横向きの支軸70と、この支軸70の両端部にボールベアリングを取り付けて設けたガイドローラ71とを備え、前記左右一対のガイドローラ71,71に脱穀フィードチェーン12の搬送始端部を巻回させている。
【0044】
図14は、前記脱穀フィードチェーン12に対応した挟持レール75の支持構造の側面図である。この図と図12とに示すように、前記脱穀フィードチェーン12に対応した挟持レール75の支持構造は、脱穀機体1に支持された支持フレーム76と、この支持フレーム76の脱穀機体前後方向での複数箇所において支持フレーム76と挟持レール75とにわたって設けた支持杆77と、前記各支持杆77に装着したスプリング78とを備えている。
【0045】
前記スプリング78は、前記支持杆77を支持フレーム76に対して下降付勢することにより、挟持レール75を脱穀フィードチェーン12に寄せ付勢する。
【0046】
図15は、前記支持杆77の斜視図である。この図と図14とに示すように、前記支持杆77は、支持杆77の下端部に設けたバネ受け部79と連結部80とを備えている。前記バネ受け部79は、前記スプリング78の下端側を受け止め支持してスプリング78による支持杆77の下降付勢を可能にする。前記連結部80は、これのピン孔81と挟持レール75とにわたって装着される連結ピンによって支持杆77を挟持レール75に連結する。
【0047】
前記バネ受け部79は、支持杆77の下端部に溶接によって連結された板金部材の一対の折り曲げ舌片で成るスプリング係止部79a,79aを備えた板金部分によって構成してある。前記連結部80は、前記板金部材の一対の折り曲げ舌片で成る支持片80a,80aを備えて構成してある。
【0048】
図16は、別の実施構造を備えたささり防止体30の縦断正面図である。図17は、図16のXVII−XVII断面矢視図である。これらの図に示すように、別の実施構造を備えたささり防止体30は、上唇板15の下端部に連結板31を介して支持された取り付けレール部33と、この取り付けレール部33から扱胴10に向かって延出する状態で前記取り付けレール部33に植設された弾性ブラシ部34を備えている。
【0049】
別の実施構造を備えたささり防止体30は、前記弾性ブラシ部34に扱胴10の前後方向に並べて設けた切欠き32を備え、扱胴10の扱歯10bが対応する切欠き32をささり防止体30の上方から下方に通過するように、かつ扱歯10bの扱胴ドラム10aからの突出長さLの半分以上の長さL1にわたって切欠き32に入り込むように構成してある。
【0050】
別の実施構造を備えたささり防止体30は、ささり防止体30と扱歯10bとの間にワラ屑などの塊が詰まりそうになると、扱歯10bによるワラ屑などの塊を介しての弾性ブラシ部34に対する操作により、弾性ブラシ部34を取り付けレール部33に連結している基端側を揺動支点にして扱胴回転方向下手側に揺動するよう弾性変形させ、これによって扱歯10bによるワラ屑などの塊の掻き取りを行いやすくする。
【符号の説明】
【0051】
2 扱室
10 扱胴
10a 扱胴ドラム
10b 扱歯
14 扱き口
30 ささり防止体
30c 弾性板部
32 切欠き
34 ブラシ部
L 扱歯の突出長さ
L1 扱歯の切欠きに入り込む長さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室に回転自在に設けた扱胴と、刈取り穀稈の穂先側を前記扱室に挿入して前記扱胴の回転軸芯に沿う方向に搬送する扱き口とを備えた脱穀機であって、
前記扱室に飛散した脱穀処理物を前記扱室に挿入された刈取り穀稈の上方で受け止めて扱胴側に流動させるささり防止体を、前記扱室における前記扱き口の内側に配置して弾性変形自在に設け、
前記ささり防止体に、前記扱胴の扱歯が通過するよう前記扱胴に向かって開口した切欠きを設け、
前記扱歯がこれの扱胴ドラムからの突出長さの半分以上の長さにわたって前記切欠きに入り込むように構成してある脱穀機。
【請求項1】
扱室に回転自在に設けた扱胴と、刈取り穀稈の穂先側を前記扱室に挿入して前記扱胴の回転軸芯に沿う方向に搬送する扱き口とを備えた脱穀機であって、
前記扱室に飛散した脱穀処理物を前記扱室に挿入された刈取り穀稈の上方で受け止めて扱胴側に流動させるささり防止体を、前記扱室における前記扱き口の内側に配置して弾性変形自在に設け、
前記ささり防止体に、前記扱胴の扱歯が通過するよう前記扱胴に向かって開口した切欠きを設け、
前記扱歯がこれの扱胴ドラムからの突出長さの半分以上の長さにわたって前記切欠きに入り込むように構成してある脱穀機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−39133(P2013−39133A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−219674(P2012−219674)
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【分割の表示】特願2008−248912(P2008−248912)の分割
【原出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【分割の表示】特願2008−248912(P2008−248912)の分割
【原出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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