説明

脱穀装置およびこの脱穀装置を搭載したコンバイン

【課題】脱穀装置およびこの脱穀装置を搭載するコンバインの機動性を向上させると共に、脱穀作業能率の向上および製造原価の低減を図る。
【解決手段】扱室(22)の外側壁(30)に扱口(33)を形成し、扱口(33)に沿って穀稈を挟持搬送するフィードチェン(34)を設け、扱室(22)の後側壁(25)にはフィードチェン(34)によって挟持搬送された脱穀後の排稈を排出する排稈口(32)を扱口(33)に連続して形成し、フィードチェン(34)の挟持搬送終端部を後側壁(25)の近傍の部位あるいは後側壁(25)よりも後方に偏倚した部位に配置すると共に、排稈口(32)を脱穀装置(3)の外部に向けて開口し、排稈口(32)から排出される脱穀後の排稈が、フィードチェン(34)による挟持を解除されて排稈口(32)から脱穀装置(3)の外部へ直接排出される構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脱穀装置およびこの脱穀装置を搭載したコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンバインに搭載された脱穀装置は、扱室の前部に備えた前側壁と扱室の後部に備えた後側壁との間に扱胴を軸架し、扱室の横外側に備えた外側壁に扱口を形成すると共にこの扱口に沿ってフィードチェンを設け、扱室の後側壁には、このフィードチェンによって搬送された脱穀後の排稈を排出する排稈口を形成している。
また、扱室の下方には、この扱室から漏下する処理物を受けて揺動移送しながら選別する揺動選別棚を配置し、この揺動選別棚の後部を扱室の後側壁よりも大きく後方へ延設し、この後部上方に排塵ファンを設けている。すなわち、この排塵ファンは、扱室の後側壁よりも後方へ所定間隔をおいて配置される。
そして、フィードチェンの挟持搬送終端部に始端を臨ませた排藁搬送装置を、上記排塵ファンの上側を迂回して配置し、その搬送終端部を脱穀装置後方の排稈カッターや結束装置に臨ませている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−143356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来のコンバインの脱穀装置では、扱室の後側に排塵ファンが配置されるために、この脱穀装置の全長が長くなり、コンバインの全長が長くなって圃場での機動性が低下する問題がある。
【0005】
一方、脱穀装置の全長を制約した場合には、扱胴が短くなり、脱穀能率が低下する問題が生じる。
【0006】
また、脱穀後の排藁を、排塵ファンを迂回して排藁カッターや結束装置に供給するために、フィードチェンとは別の排藁搬送装置を必要とし、製造コストが高くなる問題があった。
【0007】
そして、このようにフィードチェンの挟持搬送終端部から排藁搬送装置に排藁を引き継ぐ際に、この排藁が円滑に引き継がれずに詰まりを生じ、コンバインによる刈取脱穀作業を中断せざるをえなくなる問題が生じうるものであった。
この発明は、上記課題を解決し、脱穀装置およびこの脱穀装置を搭載するコンバインの機動性の向上、脱穀作業能率の向上、製造原価の低減を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上述の課題を解決するために、次の技術的手段を講じる。
即ち、請求項1記載の発明は、扱室(22)の前部に備えた前側壁(24)と扱室(22)の後部に備えた後側壁(25)との間に多数の扱歯(26)を有した扱胴(27)を扱胴軸(28)で軸架し、扱室(22)の横外側に備えた外側壁(30)には穀稈を扱室(22)内に挿入する扱口(33)を形成し、該扱口(33)に沿って穀稈を挟持搬送するフィードチェン(34)を設け、前記後側壁(25)にはフィードチェン(34)によって挟持搬送された脱穀後の排稈を排出する排稈口(32)を扱口(33)に連続して形成した脱穀装置(3)において、前記フィードチェン(34)の挟持搬送終端部を後側壁(25)の近傍の部位あるいは後側壁(25)よりも後方に偏倚した部位に配置すると共に、前記排稈口(32)を脱穀装置(3)の外部に向けて開口し、該排稈口(32)から排出される脱穀後の排稈が、フィードチェン(34)による挟持を解除されて排稈口(32)から脱穀装置(3)の外部へ直接排出される構成としたことを特徴とする脱穀装置としたものである。
請求項2記載の発明は、前記扱室(22)の下方に揺動選別棚(41)を設け、該揺動選別棚(41)の後端部を前記排稈口(32)の直下方の部位またはこの近傍の部位に配置したことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置としたものである。
請求項3記載の発明は、前記フィードチェン(34)の挟持搬送終端部に、該フィードチェン(34)によって搬送されてきた脱穀後の排稈を該フィードチェン(34)から分離するスクレーパ(51)を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の脱穀装置としたものである。
請求項4記載の発明は、前記スクレーパ(51)をフィードチェン(34)の挟持搬送終端部の左右両側に設けると共に、該左右のスクレーパ(51)のうちの扱口(33)寄りに配置される一方のスクレーパ(51R)の高さを他方のスクレーパ(51L)の高さよりも低く設定したことを特徴とする請求項3記載の脱穀装置としたものである。
請求項5記載の発明は、前記扱胴(27)の前部から後部にわたって扱歯(26)を設け、該扱胴(27)の後端部には、前記扱歯(26)に替えて複数の板体(37)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項記載の脱穀装置としたものである。
請求項6記載の発明は、前記揺動選別棚(41)後部上方の左右一側または左右両側に排塵ファン(49)の吸引口(50)を開口したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項記載の脱穀装置としたものである。
請求項7記載の発明は、前記排稈口(32)の後側下方に、フィードチェン(34)から左右方向に離間するほど低くなるように傾斜した流下案内板(54)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項記載の脱穀装置としたものである。
請求項8記載の発明は、前記流下案内板(54)を、排塵ファン(49)の排風ダクト(55)に連続させて設けたことを特徴とする請求項7記載の脱穀装置としたものである。
請求項9記載の発明は、前記排稈口(32)の後側下方に、該排稈口(32)から排出される排稈を受けるドロッパ(56)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項記載の脱穀装置としたものである。
請求項10記載の発明は、前記扱胴軸(28)の後端部から駆動されるファン(60)を設け、該ファン(60)から前記流下案内板(54)に向けて送風する構成としたことを特徴とする請求項7記載の脱穀装置としたものである。
請求項11記載の発明は、前記ファン(60)の吸引口(63)を後側壁(25)に形成したことを特徴とする請求項10記載の脱穀装置としたものである。
請求項12記載の発明は、走行装置(2)を備えた機体フレーム(1)の左右一側に前記脱穀装置(3)を搭載し、機体フレーム(1)の左右他側には脱穀後の穀粒を貯留する穀粒貯留装置(4)を搭載し、機体フレーム(1)における前記脱穀装置(3)の直後の部位を切り欠き、前記排稈口(32)から圃場面へ排出される排稈の落下経路(A)を形成したことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項記載の脱穀装置を搭載したコンバインとしたものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によると、フィードチェン(34)の挟持搬送終端部を後側壁(25)の近傍の部位あるいは後側壁(25)よりも後方に偏倚した部位に配置すると共に、扱室(22)の排稈口(32)を脱穀装置(3)の外部に向けて開口し、この排稈口(32)から排出される脱穀後の排稈が、フィードチェン(34)による挟持を解除されて排稈口(32)から脱穀装置(3)の外部へ直接排出される構成としたので、脱穀装置(3)の全長をコンパクトに構成できてコンバインの機動性を向上させることができる。そして、扱胴(27)の全長を長くでき、また、排藁搬送装置を省略してフィードチェン(34)との引き継ぎ部での排稈の詰まりを少なくすることで、脱穀装置(3)の脱穀作業能率を高めることができる。そして、排藁搬送装置を省略することで、脱穀装置(3)およびこの脱穀装置(3)を搭載するコンバインの製造原価を低減して安価に提供することができる。
請求項2記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果に加え、扱室(22)の下方に設けた揺動選別棚(41)の後端部を排稈口(32)の直下方の部位またはこの近傍の部位に配置することで、脱穀装置(3)の選別部の全長を短くして脱穀装置(3)及びこの脱穀装置(3)を搭載するコンバインの全長を更にコンパクト化することができる。
請求項3記載の発明によると、上記請求項1または請求項2記載の発明の効果に加え、排稈口(32)から排出される排稈を、フィードチェン(34)の挟持搬送終端部に設けたスクレーパ(51)によってフィードチェン(34)から分離することで、排稈を圃場面に円滑に放出することができる。
請求項4記載の発明によると、上記請求項3記載の発明の効果に加え、スクレーパ(51)をフィードチェン(34)の挟持搬送終端部の左右両側に設けると共に、この左右のスクレーパ(51L,51R)のうちの扱口(33)寄りに配置される一方のスクレーパ(51R)の高さを他方のスクレーパ(51L)の高さよりも低く設定することで、排稈が穂先側下がりの傾斜姿勢で排稈口(32)から放出されやすくなり、排稈の姿勢の乱れが少なくなる。
請求項5記載の発明によると、上記請求項1から請求項4のいずれか一項記載の発明の効果に加え、扱胴(27)の後端部に設けた複数の板体(37)によって、脱穀後の排稈に刺さり込んだ穀粒を叩き落して回収することができ、穀粒の回収効率を高めることができる。
請求項6記載の発明によると、上記請求項1から請求項5のいずれか一項記載の発明の効果に加え、揺動選別棚(41)後部上方の左右一側または左右両側に開口した排塵ファン(49)の吸引口(50)から、揺動選別棚(41)上の塵埃を吸引して排出することができ、選別精度を高めることができる。
請求項7記載の発明によると、上記請求項1から請求項6のいずれか一項記載の発明の効果に加え、排稈口(32)の後側下方に設けた流下案内板(54)によって、排稈口(32)から排出された排稈を既刈地側へ流下案内して放出することができ、次回の刈取行程において、この排稈を刈取部に導入しにくくなり、コンバインによる刈取脱穀作業の能率が向上する。
請求項8記載の発明によると、上記請求項7記載の発明の効果に加え、排塵ファン(49)の排風ダクト(55)から吹き出す排塵風によって、流下案内板(54)上に落下した排稈を既刈地側へ円滑に流下させることができる。
請求項9記載の発明によると、上記請求項1から請求項6のいずれか一項記載の発明の効果に加え、排稈口(32)から排出される排稈をドロッパ(56)で受け、この排稈が所定量溜ってから圃場に放出するので、排藁の回収作業を容易に行えるようになる。
請求項10記載の発明によると、上記請求項7記載の発明の効果に加え、扱胴軸(28)の後端部から駆動されるファン(60)から送風される風によって、流下案内板(54)上に落下した排稈を既刈地側へ円滑に流下させることができる。
請求項11記載の発明によると、上記請求項10記載の発明の効果に加え、ファン(60)によって後側壁(25)に形成した吸引口(63)から扱室(22)内の塵埃を吸引して排出することができ、選別精度を高めることができる。
請求項12記載の発明によると、上記請求項1から請求項11のいずれか一項記載の発明の効果に加え、コンバインの機体フレーム(1)における脱穀装置(3)の直後の部位を切り欠いて形成した落下経路(A)から排稈を圃場面へ排出するで、機体フレーム(1)上に排稈が溜まりにくくなり、コンバインによる刈取脱穀作業を円滑に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】コンバインの側面図。
【図2】脱穀装置の説明用側面図。
【図3】脱穀装置の説明用平面図。
【図4】脱穀装置の説明用背面図。
【図5】脱穀装置の説明用背面図。
【図6】一部の拡大図。
【図7】一部の拡大図。
【図8】脱穀装置の説明用背面図。
【図9】脱穀装置の説明用側面図。
【図10】脱穀装置の説明用平面図。
【図11】脱穀装置の説明用背面図。
【図12】脱穀装置の説明用側面図。
【図13】脱穀装置の説明用平面図。
【図14】脱穀装置の説明用背面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明の実施の形態を、自脱型のコンバインを例示して説明する。
(機体構成)
図1に示すように、コンバインは、機体フレーム1の下方に走行装置2を設け、機体フレーム1の上部左側には脱穀装置3を搭載し、機体フレーム1の上部右側には穀粒貯留装置4を搭載し、機体フレーム1上における穀粒貯留装置4の前側にはエンジン5を搭載し、走行装置2の前方位置には刈取装置6を設けて構成する。
(走行装置)
図1に示すように、走行装置2は、機体フレーム1の下部から下方へ延出した支持脚(図示省略)の下端部に左右の転輪支持フレーム7を固定し、この転輪フレーム7に軸支された多数の転輪8と、ミッションケース(図示省略)から駆動される左右の駆動輪9にわたってクローラ10を巻き掛けて構成する。
(刈取装置)
図1に示すように、刈取装置6は、機体フレーム1の前側上部に支持した支持フレーム11の前端部に左右方向の下部伝動筒12の左右方向中間部を連結し、この下部伝動筒12から前方へ延出する分草フレーム13の前端部に分草体14を取り付け、この分草体14の後側の部位にラグ式の引起装置15を後上がり傾斜姿勢に設け、この引起装置15の後側下部に刈刃装置16を設け、この刈刃装置16の上側に掻込搬送装置(図示省略)の始端部を配置し、この掻込搬送装置の終端部に供給搬送装置17の始端部を臨ませ、この供給搬送装置17の終端部を後述するフィードチェン34の始端部に臨ませて構成する。
(穀粒貯留装置)
図1に示すように、穀粒貯留装置4は、箱型の容器として形成し、底部に排出螺旋(図示省略)を備える。そして、この穀粒貯留装置4には、上記の排出螺旋から穀粒を引き継いで排出する排出装置18を備える。この排出装置18は、揚穀螺旋を内装した揚穀筒19の上端部に、排出螺旋を内装した排出筒20の基部を連通して構成する。また、穀粒貯留装置4の上部には、脱穀装置3によって回収された穀粒を揚穀する一番揚穀筒21の上端の吐き出し口を連通させる。
(脱穀装置)
図1に示すように、機体フレーム1の左側の前後長さを、右側の前後長さよりも短く形成している。即ち、機体フレーム1は、平面視で矩形に形成するが、脱穀装置3を搭載する部位の直後の部位を切り欠いた形状としている。これによって、脱穀装置3の直後には機体フレーム1が存在せず、脱穀装置3直後の機体フレーム1の後端面1Gの後側に、後述する排稈口32から排出された排稈が落下する落下経路Aが形成される。
【0012】
しかして、図2〜図4に示すように、上記脱穀装置3は、上部の扱室22と下部の選別室23とで構成される。
【0013】
扱室22は、前部に備えた前側壁24と、後部に備えた後側壁25との間に、周面に多数の線状の扱歯(ワイヤーツース)26を植設した扱胴27を扱胴軸28で軸架し、この扱胴27の下部外周に沿って扱網29を張設し、扱胴27の横外側を外側壁30で覆って構成する。この外側壁30には、前側壁24に形成した供給口31から、後側壁25に形成した排稈口32まで連続する前後方向の扱口33を形成し、この扱口33の外側部に沿わせてフィードチェン34を設ける。
(フィードチェン)
このフィードチェン34の上側に対向させて、スプリング35で下向きに付勢された挟扼杆36を設ける。この挟扼杆36は、前後方向に複数に分割して、該分割された単体どうしを屈折可能に軸着連結したものであり、最後部のスプリング35aを他のスプリング35よりも後下がりに緩傾斜させている。
図1、図2に示すように、このフィードチェン34は、その搬送始端部を扱室22の前側壁24よりも前方へ大きく延出させ、その搬送終端部は、扱室22の後側壁25よりも後方に偏倚した位置まで延出させる。尚、このフィードチェン34の搬送終端部を、扱室22の後側壁25の近傍の位置に配置する構成としてもよい。
(スクレーパ)
そして、図1〜図6に示すように、フィードチェン34の搬送終端部には、このフィードチェン34によって搬送されてきた脱穀後の排稈の付き回りを防止するスクレーパ51を設ける。図1に示すように、このスクレーパ51は、フィードチェン34の搬送終端部の左側に設けたスクレーパ51Lと右側に設けたスクレーパ51Rとからなり、これらのスクレーパ51L,51Rの上縁は、夫々、フィードチェン34の搬送終端部の傾斜姿勢よりも後上がりに急傾斜している。
また、左側のスクレーパ51Lの後端部には、この左側のスクレーパ51Lの上縁の傾斜姿勢よりも後上がりに急傾斜した案内棒52を固定し、この案内棒52によって排稈の株元側を掬い上げながら放出する構成としている。
尚、図7に示すように、左側のスクレーパ51Lの上縁の高さを、右側のスクレーパ51Rの上縁の高さより低く設定してもよい。
(扱歯)
また、扱胴27の前部から後部にかけては、その外周面に上述の線状の扱歯26を植設するが、その後端部の外周面には、扱胴軸28の軸心方向と交差する向きの複数の板体37を取り付ける。この板体37は、扱胴27の回転によって、扱室22内の処理物を後方へ搬送する機能を有すると共に、脱穀後の排稈に刺さり込んだ穀粒を叩き落す機能を有する。
(扱網)
また、扱網29は、線材を編んだ網状に形成するが、棒状の部材を組んだ格子状、あるいは目抜き鉄板としてもよい。
図4に示すように、この扱網29は、扱室22の後側壁25に形成した排稈口32の下縁から僅かに沈み込んだ位置に配置している。
(扱胴伝動)
図3に示すように、扱胴軸28の前端部を前側壁24に形成した孔を貫通させて前方へ突出させ、この扱胴軸28の前端に、エンジン5から駆動力の供給を受ける伝動装置5aを連動させる。尚、扱胴軸28の前端は、前側壁24側に支持した前側軸受39に軸受し、扱胴軸28の後端は、後側壁25側に支持した後側軸受40に軸受する。
(選別室)
図2に示すように、選別室23は、揺動選別棚41の下側に、唐箕42と一番移送螺旋43とニ番移送螺旋44とを前側からこの順に配置して構成する。上記揺動選別棚41には、移送棚45とシーブ46とストローラック47とを前側からこの順に備える。
(排塵ファン)
また、図4に示すように、脱穀装置3の左側の機壁48Lにおけるストローラック47よりも高い位置に、排塵ファン49の吸引口50を開口させる。この排塵ファン49の排風ダクト55は、排塵ファン49から左右方向に離間するほど低くなるように既刈地側に傾斜させる。
尚、図5に示すように、この排塵ファン49を脱穀装置3の右側の機壁48Rにも設ける構成としてもよい。
(流下案内板)
そして、図2〜図4に示すように、前記排稈口32の後側下方に、フィードチェン34から左右方向に離間するほど低くなるように傾斜した流下案内板54を設ける。
また、図8に示すように、前記排風ダクト55に、流下案内板54を連続させて設けてもよい。
尚、図3に示すように、前記一番移送螺旋43の移送終端部を一番揚穀筒21の基部に連通し、前記ニ番移送螺旋44の移送終端部に連通したニ番揚穀筒53の上端を脱穀装置3の右側の機壁48Rを通じて移送棚45の右側上方に開口させる。
(ドロッパ)
図9〜図11に示すように、前記排稈口32の後側下方に、この排稈口32から排出される排稈を受けるドロッパ56を設ける。
【0014】
即ち、扱室22の後側壁25の外側面の排稈口32よりも下側の部位に、左右方向の回転軸57を回転自在に軸支し、この回転軸57から後方へ向けて支持杆58を延設し、この支持杆58が、無負荷状態において水平姿勢よりも後上がりの所定の傾斜姿勢に保持されるように、回転軸57を回動付勢するスプリング59を設ける。これにより、排稈口32から排出されて支持杆58上に溜った排稈の重量が所定の重量に達すると、スプリング59の付勢力に抗して支持杆58が下向きに回動し、溜っていた排稈が圃場面に落下する。
(扱胴軸から駆動されるファン)
図12〜図14に示すように、扱胴軸28の後端部を後側軸受40よりも後方へ突出させ、この突出端部にファン60を取り付け、このファン60をケーシング61で囲う。このケーシング61の下部には、既刈地側に向けて傾斜した送風口62を設け、後側壁25のケーシング61で囲われた部位には、後側軸受40を避けて吸引口63を形成する。
(上記構成による効果)
フィードチェン34の挟持搬送終端部を後側壁25の近傍の部位あるいは後側壁25よりも後方に偏倚した部位に配置し、扱室22の排稈口32を脱穀装置3の外部に向けて開口し、この排稈口32から排出される脱穀後の排稈が、フィードチェン34による挟持を解除されて排稈口32から脱穀装置3の外部へ直接排出される構成としたので、脱穀装置3の全長をコンパクトに構成できてコンバインの機動性を向上させることができる。そして、扱胴27の全長を長くでき、また、排藁搬送装置を省略してフィードチェン34との引き継ぎ部での排稈の詰まりを少なくすることで、脱穀装置3の脱穀作業能率を高めることができる。そして、排藁搬送装置を省略することで、脱穀装置3およびこの脱穀装置3を搭載するコンバインの製造原価を低減して安価に提供することができる。
これに加え、扱室22の下方に設けた揺動選別棚41の後端部を排稈口32の直下方の部位またはこの近傍の部位に配置することで、脱穀装置3の選別部の全長を短くして脱穀装置3及びこの脱穀装置3を搭載するコンバインの全長を更にコンパクト化することができる。
これに加え、排稈口32から排出される排稈を、フィードチェン34の挟持搬送終端部に設けたスクレーパ51によってフィードチェン34から分離することで、排稈を圃場面に円滑に放出することができる。
これに加え、スクレーパ51をフィードチェン34の挟持搬送終端部の左右両側に設けると共に、この左右のスクレーパ51L,51Rのうちの扱口33寄りに配置される一方のスクレーパ51Rの高さを他方のスクレーパ51Lの高さよりも低く設定することで、排稈が穂先側下がりの傾斜姿勢で排稈口32から放出されやすくなり、排稈の姿勢の乱れが少なくなる。
これに加え、扱胴27の後端部に設けた複数の板体37によって、脱穀後の排稈に刺さり込んだ穀粒を叩き落して回収することができ、穀粒の回収効率を高めることができる。
これに加え、揺動選別棚41後部上方の左右一側または左右両側に開口した排塵ファン49の吸引口50から、揺動選別棚41上の塵埃を吸引して排出することができ、選別精度を高めることができる。
これに加え、排稈口32の後側下方に設けた流下案内板54によって、排稈口32から排出された排稈を既刈地側へ流下案内して放出することができ、次回の刈取行程において、この排稈を刈取部に導入しにくくなり、コンバインによる刈取脱穀作業の能率が向上する。
これに加え、排塵ファン49の排風ダクト55から吹き出す排塵風によって、流下案内板54上に落下した排稈を既刈地側へ円滑に流下させることができる。
これに加え、排稈口32から排出される排稈をドロッパ56で受け、この排稈が所定量溜ってから圃場に放出するので、排藁の回収作業を容易に行えるようになる。
これに加え、扱胴軸28の後端部から駆動されるファン60から送風される風によって、流下案内板54上に落下した排稈を既刈地側へ円滑に流下させることができる。
これに加え、ファン60によって後側壁25に形成した吸引口63から扱室22内の塵埃を吸引して排出することができ、選別精度を高めることができる。
これに加え、コンバインの機体フレーム1における脱穀装置3の直後の部位を切り欠いて形成した落下経路Aから排稈を圃場面へ排出するで、機体フレーム1上に排稈が溜まりにくくなり、コンバインによる刈取脱穀作業を円滑に行なうことができる。
【符号の説明】
【0015】
1 機体フレーム
2 走行装置
3 脱穀装置
4 穀粒貯留装置
22 扱室
24 前側壁
25 後側壁
26 扱歯
27 扱胴
28 扱胴軸
30 外側壁
32 排稈口
33 扱口
34 フィードチェン
37 板体
41 揺動選別棚
49 排塵ファン
50 吸引口
51 スクレーパ
51L 左側のスクレーパ(スクレーパ)
51R 右側のスクレーパ(スクレーパ)
54 流下案内板
55 排風ダクト
56 ドロッパ
60 ファン
63 吸引口
A 落下経路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(22)の前部に備えた前側壁(24)と扱室(22)の後部に備えた後側壁(25)との間に多数の扱歯(26)を有した扱胴(27)を扱胴軸(28)で軸架し、扱室(22)の横外側に備えた外側壁(30)には穀稈を扱室(22)内に挿入する扱口(33)を形成し、該扱口(33)に沿って穀稈を挟持搬送するフィードチェン(34)を設け、前記後側壁(25)にはフィードチェン(34)によって挟持搬送された脱穀後の排稈を排出する排稈口(32)を扱口(33)に連続して形成した脱穀装置(3)において、前記フィードチェン(34)の挟持搬送終端部を後側壁(25)の近傍の部位あるいは後側壁(25)よりも後方に偏倚した部位に配置すると共に、前記排稈口(32)を脱穀装置(3)の外部に向けて開口し、該排稈口(32)から排出される脱穀後の排稈が、フィードチェン(34)による挟持を解除されて排稈口(32)から脱穀装置(3)の外部へ直接排出される構成としたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記扱室(22)の下方に揺動選別棚(41)を設け、該揺動選別棚(41)の後端部を前記排稈口(32)の直下方の部位またはこの近傍の部位に配置したことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記フィードチェン(34)の挟持搬送終端部に、該フィードチェン(34)によって搬送されてきた脱穀後の排稈を該フィードチェン(34)から分離するスクレーパ(51)を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記スクレーパ(51)をフィードチェン(34)の挟持搬送終端部の左右両側に設けると共に、該左右のスクレーパ(51)のうちの扱口(33)寄りに配置される一方のスクレーパ(51R)の高さを他方のスクレーパ(51L)の高さよりも低く設定したことを特徴とする請求項3記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記扱胴(27)の前部から後部にわたって扱歯(26)を設け、該扱胴(27)の後端部には、前記扱歯(26)に替えて複数の板体(37)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項記載の脱穀装置。
【請求項6】
前記揺動選別棚(41)後部上方の左右一側または左右両側に排塵ファン(49)の吸引口(50)を開口したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項記載の脱穀装置。
【請求項7】
前記排稈口(32)の後側下方に、フィードチェン(34)から左右方向に離間するほど低くなるように傾斜した流下案内板(54)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項記載の脱穀装置。
【請求項8】
前記流下案内板(54)を、排塵ファン(49)の排風ダクト(55)に連続させて設けたことを特徴とする請求項7記載の脱穀装置。
【請求項9】
前記排稈口(32)の後側下方に、該排稈口(32)から排出される排稈を受けるドロッパ(56)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項記載の脱穀装置。
【請求項10】
前記扱胴軸(28)の後端部から駆動されるファン(60)を設け、該ファン(60)から前記流下案内板(54)に向けて送風する構成としたことを特徴とする請求項7記載の脱穀装置。
【請求項11】
前記ファン(60)の吸引口(63)を後側壁(25)に形成したことを特徴とする請求項10記載の脱穀装置。
【請求項12】
走行装置(2)を備えた機体フレーム(1)の左右一側に前記脱穀装置(3)を搭載し、機体フレーム(1)の左右他側には脱穀後の穀粒を貯留する穀粒貯留装置(4)を搭載し、機体フレーム(1)における前記脱穀装置(3)の直後の部位を切り欠き、前記排稈口(32)から圃場面へ排出される排稈の落下経路(A)を形成したことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項記載の脱穀装置を搭載したコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−231740(P2012−231740A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102583(P2011−102583)
【出願日】平成23年4月29日(2011.4.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】