説明

脱穀装置

【課題】選別体による選別効率を向上させること。
【解決手段】前後方向に軸線を向けて扱胴(7)を配設した扱室(4)と、同扱室(4)の後部側方に前後方向に軸線を向けて処理胴(10)を配設した処理室(5)とを送塵口(14)を介して連通させ、同扱室(4)内で脱穀した扱卸物を扱胴受網(8)を通して漏下させるようにした。一方、扱室(4)内から送塵口(14)を通して処理室(5)内に送出される送出物を処理室(5)内で処理して、処理物を処理胴受網(11)を通して漏下させ、これら漏下物を上記扱胴受網(8)及び処理胴受網(11)の直下方位置に配設した選別体(20)により選別して1番コンベア体(22)又は2番コンベア体(23)に落下させ、同2番コンベア体(23)に落下した落下物は2番縦コンベア体(24)を介して選別体(20)で再処理されるようにした。そして、2番縦コンベア体(24)により還元される処理物は、処理室(5)で処理された処理物と一緒に選別体(20)で再処理されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように脱穀装置の一形態として、前後方向に軸線を向けて扱胴を配設した扱室と、同扱室の後部側方に前後方向に軸線を向けて処理胴を配設した処理室とを送塵口を介して連通させ、同扱室内で脱穀した扱卸物を扱胴受網を通して漏下させる一方、扱室内から送塵口を通して処理室内に送出される送出物を処理室内で処理して、処理物を処理胴受網を通して漏下させ、これら漏下物を上記扱胴受網及び処理胴受網の直下方位置に配設した選別体により選別して1番コンベア体又は2番コンベア体に落下させ、同2番コンベア体に落下した落下物は2番縦コンベア体を介して扱室に還元するようにしているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−318194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記した処理胴受網は、処理胴の内側半部の下側周面、すなわち、処理胴の略四分の一円弧面を被覆する程度の大きさであるために、処理胴を大径化して処理能力を増大させても、処理胴受網の漏下面積に変わりがなければ漏下物の量に大差がないことから、後続の選別処理能率を向上させることができないという不具合がある。
【0005】
また、単に、処理胴受網の漏下面積を大きくしても、同処理胴受網の外側部から漏下する漏下物は、選別体の外側部に落下して堆積し、同選別体から容易にオーバーフローしてロスする虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明では、前後方向に軸線を向けて扱胴を配設した扱室と、同扱室の後部側方に前後方向に軸線を向けて処理胴を配設した処理室とを送塵口を介して連通させ、同扱室内で脱穀した扱卸物を扱胴受網を通して漏下させる一方、扱室内から送塵口を通して処理室内に送出される送出物を処理室内で処理して、処理物を処理胴受網を通して漏下させ、これら漏下物を上記扱胴受網及び処理胴受網の直下方位置に配設した選別体により選別して1番コンベア体又は2番コンベア体に落下させ、同2番コンベア体に落下した落下物は2番縦コンベア体を介して選別体で再処理されるようにした脱穀装置であって、2番縦コンベア体により還元される処理物は、処理室で処理された処理物と一緒に選別体で再処理されるようにしたことを特徴とする脱穀装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、次のような効果を奏する。すなわち、本発明では、2番縦コンベア体により還元される処理物は、処理室で処理された処理物と一緒に選別体で再処理されるようにしているため、選別体による選別効率を向上させることができると共に、穀粒の回収ロスを大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明にかかる脱穀装置の背面説明図。
【図2】同脱穀装置の側面説明図。
【図3】処理胴受網の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
すなわち、本発明に係る脱穀装置は、基本的構造として、前後方向に軸線を向けて扱胴を配設した扱室と、同扱室の後部側方に前後方向に軸線を向けて処理胴を配設した処理室とを送塵口を介して連通させ、同扱室内で脱穀した扱卸物を扱胴受網を通して漏下させる一方、扱室内から送塵口を通して処理室内に送出される送出物を処理室内で処理して、処理物を処理胴受網を通して漏下させ、これら漏下物を上記扱胴受網及び処理胴受網の直下方位置に配設した選別体により選別して1番コンベア体又は2番コンベア体に落下させ、同2番コンベア体に落下した落下物は2番縦コンベア体を介して扱室に還元するようにしている。
【0011】
そして、特徴的構造として、処理室と2番縦コンベア体とを連通させている。
【0012】
すなわち、処理室の外側部の一部と2番縦コンベア体とを連通路形成体を介して連通連設し、処理胴受網を連通路形成体の上端開口部の位置まで延設して、同処理胴受網の延設部を通して漏下してくる漏下物を連通路形成体内を通して2番縦コンベア体に供給するようにしている。
【0013】
しかも、処理胴受網は、選別体側に漏下させる網目よりも、2番縦コンベア体に漏下させる延設部の網目を大きく形成している。
【実施例】
【0014】
以下に、本発明の実施例を、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は本発明にかかる脱穀装置Aの背面説明図、図2は同脱穀装置Aの側面説明図である。
【0016】
本発明に係る脱穀装置Aは、図1及び図2に示すように、刈り取った穀稈を搬送する搬送部としてのフィードチェン1と、同フィードチェン1により後方へ搬送される穀桿の穂先部を脱穀する脱穀部2と、同脱穀部2により脱穀された穀粒を選別する選別部3とを具備している。15は吸引排塵ファンである。
【0017】
脱穀部2は、扱室4と、同扱室4の右側後方位置に配設した処理室5とを具備しており、扱室4内には前後方向に軸線を向けた扱胴支軸6を介して扱胴7を横架し、同扱胴7の直下方位置に扱胴受網8を張設し、また、処理室5内には前後方向に軸線を向けた処理胴支軸9を介して処理胴10を横架し、同処理胴10の直下方位置に処理胴受網11を張設している。12は扱歯、13は処理歯である。
【0018】
そして、扱室4と処理室5は送塵口14を介して連通させ、同扱室4内で脱穀した扱卸物を扱胴受網8を通して漏下させる一方、扱室4内から送塵口14を通して処理室5内に送出される送出物を処理室5内で処理して、処理物を処理胴受網11を通して漏下させるようにしている。
【0019】
ここで、処理胴支軸9と扱室4の前壁4aとの間には前後方向に伸延する伝動軸16を介設しており、同伝動軸16の前端部と扱胴支軸6の前端部とを伝動機構17を介して連動連結している。
【0020】
そして、伝動機構17は、伝動軸16の前端部と扱胴7の前端部との間にプーリ17a,17bを介して伝動ベルト17cを巻回して形成している。
【0021】
選別部3は、上記扱胴受網8及び処理胴受網11の直下方位置において前後方向に揺動自在に配設した選別体20と、同選別体20の前部下方位置に配設した唐箕21と、同唐箕21の後方位置でかつ選別体20の中途部下方位置に配設した1番コンベア体22と、同1番コンベア体22の後方位置でかつ選別体20の後部下方位置に配設した2番コンベア体23と、同2番コンベア体23の右側端部と扱室4の右側部との間に介設した2番縦コンベア体24とを具備している。
【0022】
そして、1番コンベア体22は、左右方向に伸延する1番受樋22a内に1番スクリュウコンベア22bを配置し、また、2番コンベア体23は、左右方向に伸延する2番受樋23a内に2番スクリュウコンベア23bを配置している。
【0023】
このようにして、扱胴受網8及び処理胴受網11を通して漏下してくる漏下物aを選別体20により揺動選別すると共に、唐箕21から吹き出る風を選別体20の下方から上方へ向けて通過させることにより風選作用を与えて風選別して、1番物を一番コンベア体22に流下させ、2番物を2番コンベア体23に流下させるようにしている。
【0024】
そして、1番コンベア体22に流下した1番物は、揚穀筒(図示せず)を介してグレンタンク(図示せず)に回収する一方、2番コンベア体23に流下した2番物は、機体の外部に配設した2番縦コンベア体24を介して扱室4に還元するようにしている。dは還元方向を示している。
【0025】
ここで、2番縦コンベア体24は、還元筒24a内に2番縦スクリュウコンベア24bを配置して形成している。
【0026】
上記のような構成において、本発明の要旨は、処理室5と2番縦コンベア体24とを連通させたことにある。
【0027】
すなわち、処理室の外側部である右側半部の下面と2番縦コンベア体24の中途部の上面とを、下方へ向けて漸次縮径するロート状に形成した連通路形成体30を介して連通連設し、処理胴受網11を連通路形成体30の上端開口部30aの位置まで延設して、同処理胴受網11の延設部11aを通して漏下してくる漏下物aを連通路形成体30内に形成した連通路31を通して2番縦コンベア体24内に供給するようにしている。
【0028】
このようにして、処理室5内にて処理された処理物を処理胴受網11を通して一部は選別体20側に漏下させると共に、一部は連通路形成体30内に形成した連通路31を通して2番縦コンベア体24内に漏下させるようにしているため、処理物の漏下処理を効率良く行うことができる。
【0029】
そして、2番縦コンベア体24に漏下された漏下物aは、扱室4に還元されて再度扱室4→処理室5にて順次処理され、処理胴受網11を通して円滑に漏下処理されることになる。
【0030】
また、連通路形成体30は、上端開口部30aの前後幅を処理室5の前後幅と略同一に形成する一方、下端開口部30bの前後幅を上端開口部30aの略半分の前後幅に形成すると共に、左右幅を2番縦コンベア体24の還元筒24aの外径と略同一幅に形成して、扁平ロート状となしている。
【0031】
このようにして、処理室5の外側部の一部と、機体の外部に配設した2番縦コンベア体24とを、左右方向に扁平なロート状に形成した連通路形成体30によりコンパクトに連通連設しているため、機体のコンパクト性を良好に保持させることができる。
【0032】
また、処理胴受網11は、図3に示すように、選別体20側に漏下させる網目11bよりも、2番縦コンベア体に漏下させる延設部11aの網目11cを大きく形成している。
【0033】
このようにして、処理胴受網11の網目の大きさを、選別体20側の網目1 1bよりも2番縦コンベア体24側の網目11cを大きく形成して変えているため、枝梗付着粒や穂切粒は2番縦コンベア体24側に漏下させて、扱室4内と処理室5内にて再処理することにより枝梗の分離を確実にして、後続の選別体20による選別効率を向上させることができると共に、穀粒の回収ロスを大幅に削減することができる。
【符号の説明】
【0034】
A 脱穀装置
1 フィードチェン
2 脱穀部
3 選別部
4 扱室
5 処理室
6 扱胴支軸
7 扱胴
8 扱胴受網
9 処理胴支軸
10 処理胴
11 処理胴受網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に軸線を向けて扱胴(7)を配設した扱室(4)と、同扱室(4)の後部側方に前後方向に軸線を向けて処理胴(10)を配設した処理室(5)とを送塵口(14)を介して連通させ、同扱室(4)内で脱穀した扱卸物を扱胴受網(8)を通して漏下させる一方、扱室(4)内から送塵口(14)を通して処理室(5)内に送出される送出物を処理室(5)内で処理して、処理物を処理胴受網(11)を通して漏下させ、これら漏下物を上記扱胴受網(8)及び処理胴受網(11)の直下方位置に配設した選別体(20)により選別して1番コンベア体(22)又は2番コンベア体(23)に落下させ、同2番コンベア体(23)に落下した落下物は2番縦コンベア体(24)を介して選別体(20)で再処理されるようにした脱穀装置であって、
2番縦コンベア体(24)により還元される処理物は、処理室(5)で処理された処理物と一緒に選別体(20)で再処理されるようにしたことを特徴とする脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−30573(P2011−30573A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232952(P2010−232952)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【分割の表示】特願2001−213041(P2001−213041)の分割
【原出願日】平成13年7月13日(2001.7.13)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】