説明

脱穀装置

【課題】脱穀後の排藁に入り込んだ穀粒を回収する機能を備えると共に、選別風の送風量と送風方向を調節自在とすることで、選別精度、脱穀作業能率、穀粒回収率を高める。
【解決手段】脱穀室(11)内における扱胴(10)の後部外周に仕切板(11K)を近接して配置し、仕切板(11K)の後側に形成された回収室(11F)内における扱胴(10)の外周面上には、脱穀後の排藁に入り込んだ穀粒をこの排藁から分離する分離歯(10b)を設け、回収室(11F)内における扱胴(10)の下側外周に沿う部位に、脱穀後の排藁を支持して分離歯(10b)の作用域へ案内する支持部材(10c)を設ける。また、唐箕(16)からの選別風の送風方向を上下に調節自在とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバイン等に備える脱穀装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンバイン等に備える脱穀装置として、特許文献1に記載されているように、扱室の後部を仕切板で前後に仕切り、この仕切板の後側に回収室を形成し、この回収室における扱胴の下側を開放する技術が知られている。穀稈の株元部を穀稈供給搬送装置で挟持して搬送しながら穂先部を脱穀し、回収室内で、脱穀後の排藁の穂先部に入り込んだ穀粒を分離して回収しようとするものである。
また、特許文献2に記載されているように、唐箕の送風口において、その上壁と下壁の間に風向案内部材を設け、上壁と風向案内部材の間に上側風路を形成し、風向案内部材と下壁の間に下側風路を形成する技術が知られている。この風向案内部材を上下に回動させることで、唐箕からの選別風の送風方向が上下に調節される構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平8−6435号公報
【特許文献2】特開平7−274696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、回収室内における扱胴の下側に支持部材を備えていないため、穀稈供給搬送装置で挟持搬送される脱穀後の排藁が垂れ下がり、扱胴の作用を受けにくくなる。このため、この排藁に入り込んだ穀粒や枝梗付着粒が排藁と共に脱穀装置の外部へ連れ出されてしまい、穀粒の回収効率が低下する欠点がある。
また、上記特許文献2に記載された技術では、上側風路及び下側風路の風向を変化させることはできても、上側風路及び下側風路の開口面積は変化しないため、上側風路及び下側風路における風量の配分比率は変化しない。このため、千変万化する脱穀条件(処理物量や作物状態等)に対して適切な送風を行うことができず、選別性能を高く維持するのは困難である。
【0005】
そこで、本発明は、脱穀後の排藁に入り込んだ穀粒や枝梗付着粒が、この排藁と共に脱穀装置の外部に連れ出されるのを防止すると共に、唐箕の送風口における上側風路及び下側風路の風向のみならず風量をも調整可能として選別性能を高く維持し、これによって穀粒の回収効率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は次の技術的手段を講じる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、穀稈を脱穀する多数の扱歯(10a)を備えた扱胴(10)を脱穀室(11)内に設け、該脱穀室(11)の下側に配置した選別室(18)内には揺動選別棚(20)を設け、該揺動選別棚(20)の下側に、選別風を送風する風量調節自在な唐箕(16)と、一番物を回収する一番物回収部(19A)と、二番物を回収する二番物回収部(19B)を、前側からこの順に備えた脱穀装置において、前記脱穀室(11)内における扱胴(10)の後部外周に仕切板(11K)を近接して配置し、該仕切板(11K)の後側に形成された回収室(11F)内における扱胴(10)の外周面上には、脱穀後の排藁に入り込んだ穀粒をこの排藁から分離する分離歯(10b)を設け、該回収室(11F)内における扱胴(10)の下側外周に沿う部位に、脱穀後の排藁を支持して分離歯(10b)の作用域へ案内する支持部材(10c)を設けたことを特徴とする脱穀装置とした。
請求項2に記載の発明は、前記唐箕(16)からの選別風の送風方向を上下に調節自在な構成としたことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置とした。
請求項3に記載の発明は、前記唐箕(16)からの選別風の送風方向を上側に調節した状態において、該唐箕(16)から送風された選別風が、揺動選別棚(20)の前記回収室(11F)の下方に臨む部位よりも後側の部位から上側へ吹き上がる構成としたことを特徴とする請求項2に記載の脱穀装置とした。
請求項4に記載の発明は、前記唐箕(16)には、上壁(67)と下壁(68)の間に形成される送風口(65)を備え、前記上壁(67)と下壁(68)の間に風向案内部材(66)を設け、該風向案内部材(66)によって送風口(65)を上側風路(74)と下側風路(75)に区画し、前記上壁(67)はその後側の部位が上下するように回動自在に軸支し、前記風向案内部材(66)はその前側の部位と後側の部位が相反して上下するように回動自在に軸支し、前記上壁(67)及び風向案内部材(66)を同じ方向に連動して回動させる連動機構(S)を設けたことを特徴とする請求項2に記載の脱穀装置とした。
請求項5に記載の発明は、前記揺動選別棚(20)上の処理物の層の厚さを検出する層厚検出センサ(95)を設け、該層厚検出センサ(95)の検出結果に基づき、揺動選別棚(20)上の処理物の層の厚さが増加したときに前記風向案内部材(66)及び上壁(67)の後上がり傾斜角度を減少させ、揺動選別棚(20)上の処理物の層の厚さが減少したときに前記風向案内部材(66)及び上壁(67)の後上がり傾斜角度を増加させる構成としたことを特徴とする請求項4記載の脱穀装置とした。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によると、脱穀後の排藁を支持部材(10c)で支持して扱胴(10)の分離歯(10b)の作用域へ案内し、この排藁に入り込んでいた穀粒や枝梗付着粒を分離歯(10b)の作用によって排藁から分離して回収することができる。また、この際、回収室(11F)の前側は仕切板(11K)で仕切られているので、この仕切板(11K)よりも前側の脱穀室(11)内で脱穀された藁屑などの処理物が回収室(11F)内に侵入しにくく、この回収室(11F)内での穀粒の回収効率が高まる。
請求項2に記載の発明によると、上記請求項1に記載の発明の効果を奏するうえに、例えば、脱穀室(11)や回収室(11F)から落下した穀粒や藁屑によって揺動選別棚(20)上の処理物が増加した場合には、唐箕(16)からの選別風の送風方向を下向きに調節することで、この選別風が一番物回収部(19A)の上方を通過して後方へ流れるため、揺動選別棚(20)から漏下する藁屑が一番物回収部(19A)に回収されにくくなり、選別精度が向上する。また、後方へ流れる選別風によって、揺動選別棚(20)上の処理物の移送が促進され、揺動選別棚(20)の後端部からの藁屑の排出が促進されることで、揺動選別棚(20)での選別負荷が軽減され、脱穀作業の能率が高まる。また、揺動選別棚(20)上の処理物が減少した場合には、唐箕(16)からの選別風の送風方向を上向きに調節することで、揺動選別棚(20)上における処理物の移送が促進されなくなり、藁屑と共に穀粒が揺動選別棚(20)の後端から外部へ飛散しにくくなり、穀粒の回収効率を高めることができる。また、唐箕(16)からの選別風の送風方向を上向きに調節することで、この選別風の一部が回収室(11F)に向けて吹き上がったとしても、この選別風は支持部材(10c)で遮断されるので、回収室(11F)から穀粒が円滑に落下し、穀粒の回収効率が更に高まる。
請求項3に記載の発明によると、上記請求項2に記載の発明の効果を奏するうえに、唐箕(16)からの選別風の送風方向を上側に調節した状態において、唐箕(16)から送風された選別風が、揺動選別棚(20)の回収室(11F)の下方に臨む部位よりも後側の部位から上側へ吹き上がるので、回収室(11F)から落下する穀粒が、揺動選別棚(20)から吹き上がる選別風によって後方へ飛ばされることが少なくなり、この穀粒が揺動選別棚(20)の後端から外部へ飛散しにくくなり、穀粒の回収効率を高めることができる。
請求項4記載の発明によると、上記請求項1に記載の発明の効果を奏するうえに、例えば、脱穀室(11)や回収室(11F)から落下した穀粒や藁屑によって揺動選別棚(20)上の処理物が増加した場合には、唐箕(16)の送風口(65)に備えた上壁(67)と風向案内部材(66)を連動機構(S)によって下向きに回動させ、下側風路(75)を開くことで下側風路(75)から送風される選別風の風量を増加させると共に、上側風路(74)から送風される選別風の送風方向を下向きに調節することで、この選別風が一番物回収部(19A)の上方を通過して後方へ流れるため、揺動選別棚(20)から漏下する藁屑が一番物回収部(19A)に回収されにくくなり、選別精度が向上する。また、後方へ流れる選別風によって、揺動選別棚(20)上の処理物の移送が促進され、揺動選別棚(20)の後端部からの藁屑の排出が促進されることで、揺動選別棚(20)での選別負荷が軽減され、脱穀作業の能率が高まる。また、揺動選別棚(20)上の処理物が減少した場合には、上壁(67)と風向案内部材(66)を連動機構(S)によって上向きに回動させ、下側風路(75)を閉じることでこの下側風路(75)から送風される選別風を減少させると共に、上側風路(74)から送風される選別風の送風方向を上向きに調節することで、揺動選別棚(20)上における処理物の移送が促進されなくなり、藁屑と共に穀粒が揺動選別棚(20)の後端から外部へ飛散しにくくなり、穀粒の回収効率を高めることができる。
請求項5に記載の発明によると、上記請求項4記載の発明の効果を奏するうえに、揺動選別棚(20)上の処理物の層の厚さに応じて上壁(67)と風向案内部材(66)の後上がり傾斜姿勢を制御することで、選別精度、脱穀作業能率、穀粒回収率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】コンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの正面図である。
【図4】コンバインの背面図である。
【図5】脱穀装置を縦断面して示す説明用の側面図である。
【図6】図5の要部拡大図である。
【図7】脱穀装置を水平断面して示す説明用の平面図である。
【図8】脱穀装置を他の位置で水平断面して示す説明用の平面図である。
【図9】図8の一部を破断して示す説明用の平面図である。
【図10】図8のA−A断面図である。
【図11】図8のB−B断面図である。
【図12】図8のC−C断面図である。
【図13】上壁と風向案内部材の連動機構部の拡大図である。
【図14】上壁と風向案内部材の傾斜角を最大とした状態での脱穀装置を縦断面して示す説明用の側面図図である。
【図15】上壁と風向案内部材の傾斜角を最小とした状態での脱穀装置を縦断面して示す説明用の側面図である。
【図16】操作盤の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例について添付図面を参照しつつ詳説する。なお、理解を容易にするため、便宜的に方向を示して説明しているが、これらにより構成が限定されるものではない。
【0010】
図1〜図4において、符号1はコンバインの機体フレーム、符号2は左右一対のクローラを有する走行装置、符号3は機体フレーム1の上方に設けた脱穀装置、符号4は脱穀装置3の前側に設けた刈取部、符号6は脱穀装置3の側部に設けたグレンタンク、符号6はグレンタンク5の前方に設けた操縦部、符号7はグレンタンクの貯留穀粒を排出するための排出管をそれぞれ示している。
【0011】
図5、図8に示すように、脱穀装置3は、上部に脱穀室11を備えるとともに、脱穀室11の一方側(機体走行方向の例えば左側)には穀稈供給搬送装置12を備えている。走行装置2により機体を走行させ、刈取部4により刈り取られた穀稈は、穀稈供給搬送装置12に引き継がれ、穀稈供給搬送装置12の挾扼杆13A及び供給搬送チェーン13B間で挟持された状態で後方へ搬送された後、脱穀済みの排藁を搬送する排藁搬送装置14に引き継がれる。
【0012】
(脱穀室と回収室)
図5に示すように、脱穀室11には、扱胴10が略水平に軸装されており、この扱胴10の主として下方側は扱網15により包囲されており、扱網15の下方には唐箕16の唐箕ケーシング17が設けられている。扱胴10の外周面上には、多数の扱歯10aが設けられている。
図5、図8、図9、図10〜図12に示すように、脱穀室11の下流側の部位(後部)には、扱胴10の後部外周に近接して配置した中間隔壁(仕切板)11Kを設け、この中間隔壁11Kの前側に、この中間隔壁11Kにより仕切られた排塵処理室導入部11Eを形成する。この排塵処理室導入部11Eの底面は格子状に形成し、下方の揺動選別棚20へ落下させる排塵口11Hを形成する。扱胴10の下流側端部(後端部)は、中間隔壁11Kを貫通して、この中間隔壁11Kの後側に形成された回収室11F内まで延設する。この中間隔壁11Kは脱穀室11の機枠に対して固定されている。この回収室11F内における扱胴10の外周面上には、脱穀後の穀稈(排藁)に刺さり込んだ穀粒を掻き落として(または払い落として)分離する板状の多数の分離歯10bが設けられている。また、扱胴10の後端の後側に配置した後側壁11Lによって、扱胴10の回転軸10Sの後端部が軸受けされている。
また、図12に示すように、この回収室11Fにおける扱胴10の下側外周に沿って、円弧状に形成した受け板(支持部材)10cを配置する。この受け板10cによって脱穀後の穀稈を支持し、この穀稈を、分離歯10bの回転軌跡(作用域)内に案内するものである。この受け板10cは、穀稈の株元側の部位を支持する範囲にのみ設け、穀稈の穂先側には設けない。即ち、この受け板10cは、穀稈供給搬送装置12側から扱胴10の回転軸10Sの軸芯10Pの略直下の位置までの範囲に設け、この軸芯10Pよりも脱穀室11の奥側となる部位には受け板10cを設けない。これにより、受け板10cの奥側端部と排塵処理室30の間の部位は、開放幅Tにわたって下方へ開放される。
また、図9に示すように、この受け板10cには、平面視において扱胴10の軸芯10P方向に対して角度θだけ傾斜した多数の長孔10dを形成する。そして、この受け板10cは、脱穀後の穀稈を支持するだけでなく、後述する唐箕16から送風される選別風を遮断することで、長孔10dからの穀粒の漏下を促進する。
【0013】
しかして、刈取部4で刈り取られた穀稈は、扱深さが調節されて、穀稈供給搬送装置12で挟持搬送されながら、その穂先側が脱穀室11に挿入される。脱穀室11に供給された穀稈は回転する扱胴10の扱歯10aの作用で脱穀され、脱穀された穀粒は扱網15から落下して選別室18に供給され、揺動選別装置21により選別される。脱穀室11で脱穀された処理物の内、扱網15から漏下しない処理物は脱穀室11後部の排塵処理室導入部11Eに至った後、連通口35から排塵処理室30に供給され、この排塵処理室30に内蔵された排塵処理胴31で処理される。
【0014】
また、脱穀室11内における回収室11Fよりも前側の部位で脱穀処理された穀稈の中には、脱穀室11内で脱粒した穀粒や枝梗付着粒が入り込んでおり、この穀粒や枝梗付着粒は、脱穀後の穀稈と共に、中間隔壁11Kの下側に形成された空間部を通過する。そして、回収室11F内に至った脱穀後の穀稈は、受け板10c上に支持された状態で、扱胴10の外周面上に設けた多数の分離歯10bの作用を受け、この穀稈の中に入り込んでいた穀粒や枝梗付着粒が脱落し、分離される。また、この際、回収室11Fの前側は仕切板11Kで仕切られているので、この仕切板11Kよりも前側の脱穀室11で脱穀された処理物が、排塵処理室導入部11E内から回収室11F内に侵入しにくく、この回収室11F内での穀粒の回収効率が高まる。
この脱落した穀粒や枝梗付着粒は、前記開放幅Tの部位、受け板10cの後端部、および長孔10dから、下方の揺動選別棚20上へ落下し、選別された後に、穀粒は一番物回収部19Aに取り込まれてグレンタンク5に貯留される。
【0015】
(選別室)
図5に示すように、脱穀室11の下方には唐箕16の送風により穀粒と異物を選別するための選別室18が形成されており、選別室18内の上部には唐箕16の送風方向(前後方向)に往復揺動する揺動選別棚20により構成した揺動選別装置21が設けられている。
【0016】
(揺動選別棚、唐箕、棚板等)
図6に示すように、揺動選別棚20の始端部(前端部)は、唐箕ケーシング17の上方に位置する移送棚部22として形成されている。移送棚部22の構成は任意であり、移送方向下流側を低く傾斜させたり、あるいは、移送棚部22の上面に突起や凹凸を設けたりして、揺動選別装置21の移送方向下流側のグレンシーブ23に向けて扱網15からの漏下物を移送できればよい。
【0017】
グレンシーブ23は、扱網15から漏下した穀粒と藁屑などの異物を選別する篩であり、図示例では、移送方向下流側(後側)が高くなるように傾斜した薄い板状体を揺動方向に所定の間隔を空けて複数並設したものである。グレンシーブ23の移送方向下流側(後側)には、穀粒とチャフ(藁屑)を選別するチャフシーブ24が設けられている。図示例のチャフシーブ24は、傾斜角調節自在の薄い板状体を揺動方向に所定の間隔を空けて複数並設したものである。さらに、チャフシーブ24の下流側には、脱穀室を通過した排藁に刺さり込んだ穀粒(刺さり粒)等を選別するための粗選別手段として、ストローラック25が設けられている。
【0018】
選別室18の下部には、唐箕16と、溝状の一番棚板19A(一番物回収部)と、溝状の二番棚板19B(二番物回収部)が、揺動選別棚20の移送方向に(前から後ろに向かって)この順で設けられている。唐箕16は、揺動選別棚20と一番物棚板19Aの間に臨む送風口を備えている。一番棚板19Aの溝部には、グレンタンク5へ連通する一番コンベア26が連通し、二番棚板19Bの溝部には、二番処理室30へ連通する二番コンベア27が連通している。また、揺動選別棚20と一番棚板19Aの間には、グレンシーブ23とチャフシーブ24の境界近傍から一番棚板19Aの棚先19C近傍までの範囲にわたるように選別網28が設けられている。
【0019】
揺動選別棚20は図示しない駆動機構により上下前後方向に揺動するので、処理物は後方側へ移動しながら、唐箕16からの送風を受けて風力選別され、比重の重い穀粒はグレンシーブ23及びチャフシーブ24を漏下して選別網28上に供給され、選別網28上の処理物は、更に唐箕16からの選別風を下側から受けて細かな藁屑が吹き飛ばされながら後方に移送され、この移送中に選別網28から漏下したものが一番棚板19Aにより回収され、一番コンベア26に乗ってグレンタンク5へ投入される。グレンタンク5に貯留された穀粒は、排出管7を介してコンバインの外部へ搬出される。このように、選別網28から漏下して一番棚板19Aで回収される処理物は、枝梗付着の少ない穀粒(清粒)が主である。
【0020】
一方、選別網28から漏下しないものは、この選別網28上を後方へ移送されて選別網28の後端部から二番棚板19Bに至り、回収される。選別網28から漏下せずに二番棚板19Bに供給される処理物は、枝梗付着粒や小さな藁屑等が主である。
【0021】
揺動選別棚20上の処理物のうち軽量のものは、シーブ23,24を漏下せず、揺動選別棚20の揺動作用と唐箕16による送風で吹き飛ばされてシーブ23,24の上を後方へ移動し、ストローラック25の上で大きさの小さい二番物は漏下して二番棚板19Bにより回収される。シーブ23,24の後部やストローラック25から漏下して二番コンベア27により二番処理室40へ供給される。二番コンベア27に取り込まれるものは、正常な穀粒、枝梗付着粒、藁屑および藁屑の中に正常な穀粒が刺さっている刺さり粒などの混合物である。これら枝梗付着粒や藁屑を二番還元物として再処理する。また、シーブ23,24及びストローラック25から漏下しない処理物は、更に後方へ移送されて揺動選別棚20の後端部上に形成された三番排塵口56から外部へ排出される。この中には僅かな穀粒が含まれていることがあり、この量(比率)によって、脱穀装置の選別精度が評価される。
【0022】
(排塵処理室)
図8、図9、図11、図12に示すように、連通口35を介して脱穀室11と連通した排塵処理室30の内部には、扱胴10の軸心と略平行な排塵処理胴31が軸装されている。排塵処理胴31の揺動選別棚20と反対側(正面に向かって左側)は側板32により包囲され、排塵処理胴31の揺動選別棚20側(正面に向かって右側)は処理物排出口33が設けられている。排塵処理胴31の外周面のうち、処理物の移送方向の終端部(後端部)には羽根体34が設けられ、これよりも始端側には排塵処理歯36が設けられている。
【0023】
排塵処理室30に供給された処理物は、回転する排塵処理胴31により解砕、処理されつつ終端側に移動する過程で、処理物排出口33から揺動選別棚20上に排出され、また、排塵処理室30の終端は閉塞されており、ここに至った処理物は羽根体34により揺動選別棚20のストローラック25上に排出され、これら排出処理物は、揺動選別棚20により選別されて穀粒は回収され、藁屑等は機外に排出される。排塵処理室30に供給される処理物中には、少量ながら枝梗の付着した穀粒が含まれており、この枝梗付着粒および小さな藁屑は、処理物排出口33から揺動選別棚20に落下する。
【0024】
(二番処理室)
図8、図9、図10に示すように、排塵処理室30の前側には、二番コンベア27により回収された二番物を処理する二番処理室40が設けられている。二番処理室40内には、外周面に間欠螺旋羽根を有する二番処理胴41が排塵処理胴31と同心的かつ直列的に軸装されている。二番処理胴41の下方は、その終端部を除いて溝状の受板42により包囲されており、二番処理胴41の終端部(前端部)9の下方は、二番処理物還元口43として、揺動選別棚20の上流側における二番処理室40側の側部の上方に開口されている。また、二番処理胴41の始端側(後端側)上方には二番コンベア27から供給される二番物の供給口44が開口している。
【0025】
二番処理室40では、二番物が二番処理胴60によって搬送される間に穀粒の分離と枝梗付着粒からの枝梗の除去が行われた後、二番処理物還元口43から揺動選別棚43に落下し、扱室40からの処理物と合流して再選別される。
【0026】
(吸引排塵ファン)
図6に示すように、揺動選別棚20の終端部(後端部)の上方には吸引排塵ファン43の吸塵口44が開口している。吸引排塵ファン43は、排風口46を有するケーシング45により覆われている。図示例では、揺動選別棚20の上方空間の両側壁のうち排塵処理室30と反対側の側壁に、排塵処理室30と対峙するように吸引排塵ファン43が取り付けられ、その取り付け部位に吸塵口44が開口しているが、これらの取り付け位置は図示例に限定されるものではない。
【0027】
(排藁処理装置)
図8、図9に示すように、脱穀装置3の後側では、脱穀室を通り脱穀を終えた穀稈、つまり排藁は排藁搬送装置14に引き継がれ、排藁搬送装置14の終端部から排藁処理装置としてのカッター装置48に排出される。この排藁搬送装置14に備える株元側搬送装置14Kの中間部には、扱胴10の回転軸10Sの後端部に取り付けたプーリー10Tから、伝動ベルト10Uと、入力プーリー10Vと、ベベルギヤケース10W内の伝動機構と、前記株元側搬送装置14Kと平行の穂先側搬送装置14Hを貫通して設けた出力軸10Xを介して動力が伝動される。そして、この株元側搬送装置14Kの後端部から、伝動軸10Yを介して穂先側搬送装置14Hの後端部に動力が伝動される。
カッター装置48は、上方から落下供給される排藁を一対のロータリーカッター刃49間に通して切断する構造のものである。ロータリーカッター刃49の外部側はフードにより覆われており、またロータリーカッター刃49の前側には、切断した排藁の切断藁屑を後方に落下するように案内するための切藁案内板50が設けられている。切藁案内板50は、上部が上側カッター刃49の下部とほぼ同じ高さに位置しており、下方に至るに従い後側に位置するように後下がりに傾斜し、切藁案内板50の下部は下側カッター刃49の下部より下方に位置している。カッター装置48に代えて他の排藁処理装置を用いることも可能である。
【0028】
(三番排塵口)
図6、図7に示すように、脱穀装置3の後側壁55には三番排塵口56が開口されており、揺動選別棚20の後部がこの三番排塵口56に臨むように構成されている。また、三番排塵口56を開閉する三番排塵口シャッタ57が設けられており、排塵処理室30の処理物排出口33から排出される排塵処理物に含まれる穀粒を、三番排塵口56から排出させずに、揺動選別棚20のチャフシーブ24又はストローラック25に供給し、篩い選別により回収することができる。よって、三番ロスの発生を防止して脱穀効率を向上できるようになる。また、排塵処理室30と吸引排塵ファン43の吸塵口44とは、揺動選別棚20を挟んで対峙するように配置されており、三番排塵口シャッタ57を閉めると、排塵処理室30から排出される排塵処理物が、吸引排塵ファン43の吸塵口44側に向かって広範に拡散するため、穀粒の回収効率が一層向上する。
【0029】
(上壁・風向案内部材)
図6に示すように、唐箕ケーシング17の送風口65は、上方に位置する上壁67と下方に位置する下壁68の間に開口しており、これら上壁67と下壁68の上下中間に風向案内部材66が設けられている。これにより、送風口65は、風向案内部材66と上壁67の間の上側風路74と、風向案内部材66と下壁68の間の下側風路75に区画されている。上壁67及び下壁68は図示例では板状をなしているが、これに限定されるものではない。
【0030】
図6、図13に示すように、風向案内部材66は、下方に頂点70を有する逆三角形状の縦断面を有する形状をなしている。これによって、図示例の風向案内部材66における上面69は唐箕ケーシング17の上壁67とほぼ同傾斜の平坦面により形成され、風向案内部材66の下面は下側前部傾斜面71と下側後部傾斜面72を有する屈曲面により形成されている。風向案内部材66がこのような形状を有していると、上側風路74から送出される風は風向案内部材66の上面に沿って下方にはあまり拡散せずに揺動選別棚20に向かって流れ、下側風路75から送出される風は風向案内部材66の下側後部傾斜面72に沿って上方にも拡散しつつ揺動選別棚20の更に下流側の範囲までに向かって流れるようになる。
【0031】
風向案内部材66は、送風方向と直交する水平の回動軸66xを回動中心とし、且つ上面69及び下面71,72が送風方向下流側に向かって斜め上向きとなる角度範囲内で回動自在に構成されており、また、風向案内部材66の回動軸66xは風向案内部材の送風方向中間に位置しており、回動軸66xの上流側及び下流側が上下するように回動するようになっている。風向案内部材66の回動軸66xは、その両端部が選別室18の両側壁18Sに軸支されている。さらに、風向案内部材66の回動により風向案内部材66の水平面に対する傾斜角(以下単に傾斜角、あるいは傾斜姿勢ともいう)を最大まで増加させたとき、風向案内部材66における唐箕16側の端部が送風口65の下壁68と近接又は接触するように構成されている。
【0032】
また、上壁67も、送風方向と直交する水平の回動軸67xを回動中心とし、且つ下面が送風方向下流側に向かって斜め上向きとなる角度範囲内で、風向案内部材66と同方向に回動するように構成されている。即ち、上壁67の後部下面と、風向案内部材66の後部上面の間を連動杆88で接続し、上壁67と風向案内部材66が略一定の相対姿勢を維持したまま、上下に角度変更できる連動機構Sを構成している。また、上壁67の回動軸67xは、図示例では上壁67の唐箕16側端部に位置しているが、送風方向中間や、送風方向下流側端部に位置させることもでき、いずれにせよ上壁67の下流側が上下するように回動すれば良い。上壁67の回動軸67xも、その両端部が選別室18の両側壁18Sに軸支されている。
【0033】
このような構造においては、唐箕16から供給される風の上側風路74及び下側風路75に対する配分比率は、上側風路74及び下側風路75の開口度の比率によって定まる。よって、下側風路75の開口度が減少する方向に、上壁67及び風向案内部材66が同じ方向に連動して回動すると、下側風路75の風量は減少し、反対に上側風路74の風量は増加するとともに、下側風路75の風向は風向案内部材66の下面の角度変化に応じて変化し、上側風路74の風向は風向案内部材66の下面の角度変化に応じて変化する。一方、下側風路75の開口度が増加する方向に、上壁67及び風向案内部材66が同じ方向に連動して回動すると、下側風路75の風量は増加し、反対に上側風路74の風量は減少する。下側風路75の風向は風向案内部材66の下面の角度変化に応じて変化し、上側風路74の風向は風向案内部材66の下面の角度変化に応じて変化する。つまり、上側風路74及び下側風路75の風向及び風量を同時に調整できるようになる。
【0034】
風向案内部材66及び上壁67を回動するための駆動手段は、両風向案内部材66,67を連動して回動させるものであれば適宜選択して設計することができ、手動でもモータ等の動力源を用いても良い。図13に示す例では、風向案内部材66の回動軸66xの一端部が選別室18の側壁18Sから突出しており、この突出部分に主揺動梃81の先端部が取り付けられ、この主揺動梃81及び風向案内部材66が一体的に回動するようになっている。また、選別室18の側壁18S外面にステー82が取り付けられ、このステー82に搭載されたモータ83の駆動軸83xにピニオンギア83gが取り付けられ、このピニオンギア83gと噛合する扇状ギア84がステー82に軸支され、この扇状ギア84の一方側の円周端部(第1の偏心位置)と主揺動梃81の基端部が連動杆85を介して連結されており、各連結部分はピン85pにより回転自由な連結となっている。さらに、ステー82には、ポテンションメータ等の回転量検出装置86が搭載され、この回転量検出装置86の検出軸86xに副揺動梃87の先端部が取り付けられ、副揺動梃87の回動量が検出されるように構成されるとともに、扇状ギア84の反対側の円周端部(第2の偏心位置)にはピン87pが突設され、このピン87pが副揺動梃87の長手方向に沿う溝87d内を滑るように構成されている。また、風向案内部材66における回動軸66xよりも送風方向下流側の部位と、上壁67における回動軸67xよりも送風方向下流側の部位が、選別室18内の両側部において連動杆88を介してそれぞれ連結されており、各連結部分はピン88pにより回転自由な連結となっている。
【0035】
したがって、モータ83の正逆駆動により、扇状ギア84、連動杆85、主揺動梃81を介して風向案内部材66が正逆回動されるとともに、その回動量が、扇状ギア84及び副揺動梃87を介して回転量検出装置86により検出される。また、風向案内部材66の回動に伴い、これと連動杆88を介して連結された上壁67も連動して回動する。よって、風向案内部材66と上壁67を同時かつ同方向に回動させ、それぞれ所定の角度に調整でき、調整操作が容易となる。
【0036】
風向案内部材66及び上壁67の水平面に対する傾斜角(単に傾斜角、あるいは傾斜姿勢ともいう)は、それぞれ上述の範囲内で適宜変化させることができるが、上側風路74の選別風の過半は揺動選別棚20のうちシーブ(図示例ではチャフシーブ24。選別網28でも良い)下流側(後側)端よりも上流側に向き、且つ下側風路75からの選別風の過半はシーブ(チャフシーブ24)下流側(後側)端よりも下流側を向くように、風向案内部材66及び上壁67の傾斜角範囲を設定するのが好ましい。この範囲内で、風向案内部材66及び上壁67の傾斜角を変化させることによって、処理物の流量が低流量の状態(低流量時)であっても高流量の状態(高流量時)であっても、より適切な選別を行うことができ、穀粒損失の低減と、選別の良化を図ることができる。
【0037】
特に、図13に示すように、上側風路74、下側風路75の選別風は、風向案内部材66の傾斜角を大きくするほど、両風路65A,65Bの選別風ともに、揺動選別棚20の上流側(前側)への風量が増加し、且つ下流側(後側)への風量は低減するように構成されていると好ましい。そして、図14に示すように風向案内部材66の傾斜角を最大としたとき、下側風路75の風量よりも上側風路74の風量が多くなるように構成すると更に好ましい。また、風向案内部材66の傾斜角を最大としたとき、側面視で風向案内部材66の上面の送風方向延長線66Lは一番棚板19Aの棚先19Cよりも上方に位置させ、一番棚板19Aの棚先19Cより揺動選別棚20の上流側(前方)へ向かう選別風を増加させるのが好ましい。また、これにより、唐箕16から送風された選別風が、回収室11Fの下方に臨む揺動選別棚20上の部位よりも後側の部位から上側へ吹き上がる。
これにより、例えば低流量時や低速作業時には揺動選別棚20の下流側の選別風を低減することで機外飛散を低減し、揺動選別棚20の上流側への選別風を増加することで、稈切れや枝梗付着粒などの漏下を制限し、選別状態を良好に保つことができる。また、回収室11Fから落下する穀粒が、揺動選別棚20上から吹き上がる選別風によって後方へ飛ばされることが少なくなり、この穀粒が揺動選別棚20の後端から外部へ飛散しにくくなり、穀粒の回収効率を高めることができる。
【0038】
特に、風向案内部材66の傾斜角をある程度以上大きくしたとき、例えば最大としたときに、側面視で風向案内部材66の上面の送風方向延長線66L上に排塵ファン43の吸塵口45が開口する(換言すれば延長線66Lが吸塵口45と交わる)と好ましい。これにより、前方で吹き上げた塵芥を効率良く排塵ファン43で吸塵することができ、選別風が機体後方に抜けにくい構造(特に図示例のような三番排塵口シャッタ57を有する場合)でも選別能力を損なうことなく、効果的に塵芥を機外に排出できるようになる。
【0039】
また、図15に示すように、上側風路74、下側風路75の選別風は、風向案内部材66の傾斜角を小さくするほど、両風路65A,65Bの選別風ともに、揺動選別棚20の下流側に風向を変更し、上側風路74の風量を低減し、且つ下側風路75の風量を増加させるように構成されていると好ましい。そして、傾斜角を最小としたときには、上側風路74の風量よりも下側風路75の風量が多くなるように構成すると更に好ましい。また、傾斜角を最小としたときには、風向案内部材66の上面の送風方向延長線66Lは一番棚板19Aの棚先19C及びその近傍に位置させ、一番棚板19Aの棚先19Cへ向かう選別風を増加させるのが好ましい。これにより、高速作業時や高流量時において選別室から機外への選別風の抜けを促進し、還元量を抑制し、高速作業への適応性を高めることができる。
【0040】
風向案内部材66及び上壁67の傾斜角の変化量は同じでも良いが、異ならしめることもできる。例えば、図14、図15に示すように、風向案内部材66の傾斜角が最大の状態から最小の状態まで回動したとき、上壁67の前端(唐箕16側)の回動量に対し、風向案内部材66の前端の回動量が大きくなるように構成すると、上壁67の前端(唐箕16側)の回動量が相対的に小さくなることにより、上側風路74の風量を損なうことなく、風向の変更ができるだけでなく、風向案内部材66の前端の回動量が相対的に大きくなることにより、上側風路74及び下側風路75に対する選別風の分配比を大きく変更でき、且つ両風路の風向も変化させることができるため、好ましい。
【0041】
風向案内部材66及び上壁67の傾斜角の上限(上限角)及び下限(下限角)は固定しても良いが、風向案内部材66の適切な傾斜角範囲は作物条件や作物種によって異なるため、連続的又は段階的に変更可能とするのが好ましい。また、上限角及び下限角を変更可能とする場合、その上限角及び下限角は任意の角度に手動調整可能とする他、作物種等によってあらかじめ定められた角度に自動変更可能とするのも好ましく、両者を切り替え可能とすると更に好ましい。手動調整の場合、コンバインの使用に際して、予め設定されている上限角及び下限角が作物条件(例えば作物の水分量の多少、作物の倒伏の程度、処理物量の増減)に合致しない場合、任意に補正することができる。一方、自動変更の場合、上限角及び下限角を稲、麦等、予め作物種に応じて切り替え可能に構成しておくことで、作物種に応じて上限角及び下限角を簡単に切り替えて、適切な選別を行うことができるようになる。例えば、麦は稲より処理物量中の穀粒比率が小さく、同一流量であっても機外排出効率を高めるよう風向案内部材66の傾斜角の上限を浅くして処理効率を高めるようにするのが好ましい。
【0042】
図16は、風向案内部材66及び上壁67の上限角及び下限角の変更を行うための操作盤の例を示しており、シーブの開口度調節の近傍に、切替ロータリースイッチ91と、開口度調整ロータリースイッチ92が並設されており、切替ロータリースイッチ91を「稲」又は「麦」に合わせることにより、それぞれの作物種に応じて、風向案内部材66及び上壁67の上限角及び下限角が自動変更され、切替ロータリースイッチ91を「手動」に合わせると、風向案内部材66及び上壁67の上限角及び下限角が、開口度調整ロータリースイッチ92の回転位置に応じて定まる任意の角度に変更される。
【0043】
風向案内部材66及び上壁67の上限角及び下限角の設定は、機械的に行っても良いが、上述のように、風向案内部材66及び上壁67の回動をモータ等の駆動源により行う場合にはその駆動制御により行うのが望ましい。
【0044】
(層厚検出センサ)
風向案内部材66及び上壁67の傾斜角は揺動選別棚20上の処理物量に関係なく固定としても良い。しかし、風力選別における適切な風向及び風量は処理物量によって異なる。例えば低流量時や低速作業時には揺動選別棚20の下流側の選別風を低減することで機外飛散を低減し、揺動選別棚20の上流側への選別風を増加することで、稈切れや枝梗付着粒などの漏下を制限するのが好ましく、高速作業時や高流量時において選別室から機外への選別風の抜けを促進し、還元量を抑制し、高速作業への適応性を高めるのが好ましい。よって、風向案内部材66及び上壁67の傾斜角は処理物量に関係なく固定とした場合、処理物量の増減により選別能力が低下するおそれがある。
【0045】
そこで、図7、図10、図14に示すように、揺動選別棚20上の処理物の層の厚さを検出する層厚検出センサ95を設け、この層厚検出センサ95の検出結果に基づき、処理物の層の厚さが増加したときに風向案内部材66及び上壁67の水平面に対する傾斜角を増加させ、処理物の層の厚さが減少したときに風向案内部材66及び上壁67の水平面に対する傾斜角を減少させる制御装置(図示略)を設けるのは好ましい。これにより、処理物の層の厚さに増減があっても、揺動選別棚20上の処理物の層厚の検出結果に応じて、風向案内部材66及び上壁67の傾斜角が適切に自動調整され、最適な穀粒損失と選別状態を得ることができる。
【0046】
層厚検出センサ95は、公知の接触又は非接触センサを用いることにより構成することができる。図示例では、二番処理室40の受板42における終端側(二番処理物還元口側又は前端側)部分と、排塵処理室導入部11Eの中間隔壁11Kの下端部がセンサステー95Sにより連結され、このセンサステー95Sにポテンションメータ等の回転量検出装置96が取り付けられるとともに、この回転量検出センサ96の検出軸96xにフロート97が吊り下げ状態で取り付けられており、このフロート97が、揺動選別棚20の移送棚部22上を移動する処理物に接触して、処理物の移動方向に回転しつつ持ち上がり、その回転量が、移送棚部22上を移動する処理物の層厚として回転量検出装置96により検出されるように構成されている。
【0047】
このように、センサステー95Sにより二番処理室40の受板42における終端側(二番処理物還元口側又は前端側)部分と、排塵処理室導入部11Eの中間隔壁11Kの下端部を連結する構造を採用すると、二番処理物還元口43からの二番処理物の排出及びその移送の邪魔となる位置を避けて、フロート97を宙吊り状態で設置できるだけでなく、二番処理室40の受板42、中間隔壁11K及びセンサステー95Sが三角形状に連結できるため、機枠1の強化にも繋がる、という利点がある。
【0048】
また、図示例のようにフロート97が回動するタイプの場合、フロート97の回動中心(つまり図示例では検出軸96x)が、二番還元物の流れ又は処理物全体の流れに対して略直角となり、平面視で揺動選別棚20の揺動方向に対して傾斜するように構成するのが好ましい。これにより、処理物の流れ方向と、これに接触するフロート97の回動方向が一致するか又は近くなるため、フロート97が円滑に動作し、処理物量の変化に対して正確かつ敏感に反応するようになる。
【0049】
この場合、フロート97の作動をより円滑にするために、フロート97における回動中心方向一方側、特に図示例のように移動棚部22の移送方向下流側に、フロート97の回動中心に対して略直交する方向(センサフロート97の回動方向と略平行)に延在する寄せ板98を立設するのも好ましい形態である。これにより、移動棚部22による揺動作用により処理物の移動方向がずれていくとしても、そのフロート97近傍では寄せ板98により移動方向が規制されるため、処理物の流れ方向と、これに接触するフロート97の回動方向が略一致し、フロート97がより一層円滑に動作するようになる。
【0050】
また、フロート97の形状は適宜設計すれば良いが、図示例のように、少なくとも処理物と接触する部分(図示例では処理物が無い非接触状態で、処理物の移動方向上流側の面)が、処理物の摺動方向の中間部ほど張り出す弧状曲面であるのが好ましい。
【0051】
他方、一般に移動棚22上においては処理物量が偏在し、特に二番処理物還元口43の下方近傍における処理物量が最も多くなる。よって、層厚検出センサ95は、二番処理物還元口43の近傍における揺動選別棚20の処理物の層の厚さを検出するように構成するのが望ましい。このため、図示例ではフロート97を二番処理物還元口43の近傍に配置している。
【符号の説明】
【0052】
10 扱胴
10a 扱歯
10b 分離歯
10c 受け板(支持部材)
11 脱穀室
11F 回収室
11K 中間隔壁(仕切板)
16 唐箕
18 選別室
19A 一番物回収部
19B 二番物回収部
20 揺動選別棚
65 送風口
66 風向案内部材
67 上壁
68 下壁
74 上側風路
75 下側風路
95 層厚検出センサ
S 連動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈を脱穀する多数の扱歯(10a)を備えた扱胴(10)を脱穀室(11)内に設け、該脱穀室(11)の下側に配置した選別室(18)内には揺動選別棚(20)を設け、該揺動選別棚(20)の下側に、選別風を送風する風量調節自在な唐箕(16)と、一番物を回収する一番物回収部(19A)と、二番物を回収する二番物回収部(19B)を、前側からこの順に備えた脱穀装置において、前記脱穀室(11)内における扱胴(10)の後部外周に仕切板(11K)を近接して配置し、該仕切板(11K)の後側に形成された回収室(11F)内における扱胴(10)の外周面上には、脱穀後の排藁に入り込んだ穀粒をこの排藁から分離する分離歯(10b)を設け、該回収室(11F)内における扱胴(10)の下側外周に沿う部位に、脱穀後の排藁を支持して分離歯(10b)の作用域へ案内する支持部材(10c)を設けたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記唐箕(16)からの選別風の送風方向を上下に調節自在な構成としたことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記唐箕(16)からの選別風の送風方向を上側に調節した状態において、該唐箕(16)から送風された選別風が、揺動選別棚(20)の前記回収室(11F)の下方に臨む部位よりも後側の部位から上側へ吹き上がる構成としたことを特徴とする請求項2に記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記唐箕(16)には、上壁(67)と下壁(68)の間に形成される送風口(65)を備え、前記上壁(67)と下壁(68)の間に風向案内部材(66)を設け、該風向案内部材(66)によって送風口(65)を上側風路(74)と下側風路(75)に区画し、前記上壁(67)はその後側の部位が上下するように回動自在に軸支し、前記風向案内部材(66)はその前側の部位と後側の部位が相反して上下するように回動自在に軸支し、前記上壁(67)及び風向案内部材(66)を同じ方向に連動して回動させる連動機構(S)を設けたことを特徴とする請求項2に記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記揺動選別棚(20)上の処理物の層の厚さを検出する層厚検出センサ(95)を設け、該層厚検出センサ(95)の検出結果に基づき、揺動選別棚(20)上の処理物の層の厚さが増加したときに前記風向案内部材(66)及び上壁(67)の後上がり傾斜角度を減少させ、揺動選別棚(20)上の処理物の層の厚さが減少したときに前記風向案内部材(66)及び上壁(67)の後上がり傾斜角度を増加させる構成としたことを特徴とする請求項4記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−29620(P2012−29620A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171663(P2010−171663)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】