説明

脱穀装置

【課題】被処理物を処理装置へとスムーズに導入することができる脱穀装置を提供する。
【解決手段】脱穀装置10は、扱胴16と、処理胴30と、扱室15と、被処理物案内板35と、を備える。扱胴16は、複数の扱歯22を外周に備え、回転軸17を中心に回転する。処理胴30は、複数の処理歯33を外周に備え、扱胴16の回転軸17と略平行な回転軸32を中心に回転する。扱室15は、扱胴16及び処理胴30を収容する。被処理物案内板35は、扱胴16で発生した被処理物を処理胴30に向けて案内する。扱室15のケーシングの天井面は、扱胴16の回転方向下流側に進むに従って扱歯22の先端の回転軌跡から離間する離間部を有する。被処理物案内板35は、扱胴16の回転方向で、前記離間部の開始位置である天井プレート27の端部27aよりも下流側に配置される。処理胴30は、扱胴16の回転方向で、被処理物案内板35よりも下流側に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扱胴と、扱胴に併設された処理胴と、を備える脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脱穀装置は、穀稈を脱穀するための扱胴を備える。この扱胴は、円筒状の扱胴本体の外周に、多数の扱歯を配列したものである。従来の脱穀装置において、扱歯は線材によって構成されていた。しかし、線材からなる扱歯は、穀稈の穂先との衝突頻度が小さく、脱穀の効率が悪いという課題があった。
【0003】
そこで近年、V字状の溝が形成された板材によって扱歯を形成する構成が提案されている。このような脱穀装置は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1は、この構成により、穀稈を確実に脱穀処理することができるとしている。
【0004】
また、特許文献1は、扱室に配置された扱胴と、この扱胴と略平行に配設された処理室と、を備えた構成の脱穀装置を開示している。特許文献1が開示する脱穀装置は、扱室内で発生した被処理物が、扱胴の回転によって処理室に投入され、この処理室内で粉砕処理される構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−112618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の脱穀装置は、その図1に示されているように、扱室のケーシングの天井面が、扱歯(脱穀板)の先端の回転軌跡に沿うように湾曲して(断面円弧状に)形成されている。このように構成することで、穀稈を、扱胴の外周に沿って案内することができる。
【0007】
ところで特許文献1は、脱穀板に形成されたV字状の溝によって穀稈を挟み込んで扱く構成であるため、穀稈の連れ回りが発生し易い傾向がある。このため、上記のように扱胴の外周に沿って穀稈を案内する構成では、当該穀稈が扱胴の外周に巻き付いたような状態となり、扱胴の回転抵抗が大きくなるため、当該扱胴を回転駆動するための負荷が大きくなるという問題があった。
【0008】
そこで本願発明者らは、扱室のケーシングの天井面を、扱歯の先端の回転軌跡から徐々に離間していくように形成した構成を提案している。これによれば、扱胴の上方に空間が形成されるので、穀稈が扱胴に巻き付きにくくなる結果、扱胴を回転駆動する際の負荷を低減することができる。
【0009】
しかし、上記のように扱胴の上方に空間を形成した場合、扱胴で発生した被処理物が、扱胴の回転の勢いによって前記空間に向けて勢い良く放出される結果、予期せぬ方向に飛んでしまうという別の問題が発生し得ることがわかった。このため、一部の被処理物が処理胴に投入されないまま、扱胴と処理胴との間を通って落下してしまう場合があった。従って、脱穀装置全体の効率の低下が懸念される。
【0010】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、被処理物を処理装置へとスムーズに導入することができる脱穀装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0012】
本発明の観点によれば、以下の構成の脱穀装置が提供される。即ち、この脱穀装置は、扱胴と、処理胴と、扱室と、被処理物案内板と、を備える。前記扱胴は、複数の扱歯を外周に備え、回転軸を中心に回転する。前記処理胴は、複数の処理歯を外周に備え、前記扱胴の回転軸と略平行な回転軸を中心に回転する。前記扱室は、前記扱胴及び前記処理胴を収容する。前記被処理物案内板は、前記扱胴で発生した被処理物を前記処理胴に向けて案内する。前記扱室のケーシングの天井面は、前記扱胴の回転方向下流側に進むに従って前記扱歯の先端の回転軌跡から離間する離間部を有する。前記被処理物案内板は、前記扱胴の回転方向で、前記離間部の開始位置よりも下流側に配置される。前記処理胴は、前記扱胴の回転方向で、前記被処理物案内板よりも下流側に配置される。
【0013】
このように、ケーシングの天井に離間部を形成することにより、当該天井と扱胴との間に空間が形成されるので、扱胴に対する穀稈の巻き付きを防止できる。これにより、扱胴の回転負荷を低減することができる。そして、上記のように被処理物案内板を設けたことにより、上記空間に放出された被処理物を処理胴まで案内することができる。これにより、被処理物を確実に処理胴に投入することができるので、脱穀装置全体の処理効率を向上させることができる。
【0014】
上記の脱穀装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記扱胴は、穀稈を上扱ぎ式で脱穀する方向に回転する。前記処理胴の回転軸は、前記扱胴の回転軸よりも低い位置に配置されている。前記被処理物案内板は、前記処理胴よりも高い位置に配置されている。そして、前記被処理物案内板の上端と前記天井面との間は、閉鎖されている。
【0015】
被処理物案内板をこのように配置することにより、扱胴から放出された被処理物を、処理胴まで適切に案内することができる。また、被処理物案内板の上端と天井面との間を閉鎖したことにより、被処理物が、被処理物案内板の上方を通り抜けてしまうことがない。従って、被処理物をもれなく被処理物案内板によって案内することができる。
【0016】
上記の脱穀装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記被処理物案内板の、前記扱胴側を向く面には、当該被処理物案内板に略直交する板状の調整板が、前記処理胴の回転軸と略平行な方向で複数並べて配置されている。少なくとも何れか1つの調整板は、前記処理胴の回転軸と平行な方向に対して斜めに配置されている。
【0017】
斜めに配置された調整板によって、被処理物が処理胴に投入される位置を、当該処理胴の軸線方向で調整することができる。これにより、被処理物が一箇所にかたまって処理胴に供給されることを防ぎ、処理胴を軸線方向で効率的に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る脱穀装置の全体的な構成を示す側面図。
【図2】脱穀装置の内部を示す側面断面図。
【図3】脱穀装置の正面断面図。
【図4】脱穀装置の平面断面図。
【図5】扱歯の斜視図。
【図6】被処理物案内板の外観斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1から図4に示すように、脱穀装置10の側面には、穀稈搬送機構11が配置されている。この穀稈搬送機構11は、穀稈搬送チェーン12と、押圧部材13(図3)と、を主に備えている。
【0020】
穀稈搬送チェーン12は、図1に示すように、無端環状に構成され、スプロケットの回転によって循環駆動されるように構成されている。押圧部材13は、図3に示すように、穀稈搬送チェーン12の上面に対して押圧されるように構成されている。これにより、図3に示すように、穀稈14の根元部分を、穀稈搬送チェーン12の上面と押圧部材13との間に挟み込んで保持することができる。そして、この状態で穀稈搬送チェーン12を循環駆動することにより、前記穀稈14を所定方向に搬送する構成である。なお以下の説明で、穀稈搬送機構11によって穀稈が搬送される方向を、単に搬送方向と呼ぶ。
【0021】
脱穀装置10内には、穀稈の脱穀を行う空間である扱室15が形成されている。扱室15内には、回転することにより脱穀を行う扱胴16が配置されている。穀稈14が穀稈搬送機構11によって搬送されることにより、当該穀稈14の穂先14aは、扱室15内を通過する。このとき、回転する扱胴16によって、穀稈14の脱穀が行われる。なお、図4に示すように、穀稈搬送チェーン12は、平面視で扱胴16の回転軸17と略平行に配設されている。従って、穀稈14は、扱胴16の回転軸17に沿うようにして搬送される。
【0022】
扱胴16による脱穀が完了した穀稈(排藁)は、穀稈搬送機構11の下流側端部において、排藁搬送機構18(図1及び図4)に受け渡される。この排藁搬送機構18は、図4に示すように、排藁搬送チェーン19と、係止搬送ベルト20と、を並列して設けた構成である。排藁搬送チェーン19は、無端環状のチェーンとして構成され、循環駆動されることにより、その下面で排藁の根元部分を搬送するように構成されている。係止搬送ベルト20は、一定間隔でタイン(図略)が配置された無端環状ベルトであり、当該係止搬送ベルト20を循環駆動することにより、穀稈の穂先部分をタインによって係止しつつ搬送する構成である。
【0023】
図1に示すように、排藁搬送機構18の下方には、排藁処理部21が配置されている。この排藁処理部21は、排藁を細かく切断するための排藁カッター、切断された排藁を機外に排出するための拡散装置などを備えている。排藁搬送機構18によって搬送される排藁は、排藁処理部21に順次投入され、細かく裁断された後、圃場に均一に放出される。
【0024】
次に、穀稈を脱穀するための構成について詳しく説明する。
【0025】
扱胴16は、金属板にて略八角形柱状の中空状筒体として構成されており、その回転軸17が装置前後方向に沿って略水平に配置されている。扱胴16の外周には、複数の扱歯22が外向きに突出するように設けられている。
【0026】
図2等に示すように、扱歯22は、扱胴16の回転軸17と平行な方向に並んで複数設けられている。図5に示すように、各扱歯22は、当該扱歯22同士が並ぶ方向に対して平行な平面を構成するように、扁平な形状に形成されている。また図5に示すように、扱歯22の先端部は、先端に向かって幅が狭まる略V字状に構成されている。従って、隣接する扱歯22同士の間は、先端に向かって幅が広がるV型溝23が形成されている。また、V型溝23の奥には、丸型(又は多角形)の抜き孔24が、前記V型溝23に連通するように形成されている。
【0027】
穀稈搬送機構11によって扱室15内を搬送される穀稈14は、扱歯22と扱歯22の間の部分(V型溝23及び抜き孔24)に嵌まり込む。この状態で扱胴16が回転することにより、穀稈14は、穂先14aに向けて扱かれる。これにより、穀稈14から穂の部分のみが取られる。なお、このように穀稈14から取られた穂の部分を、穂切れと称する。
【0028】
なお、本実施形態の扱胴16は、上扱ぎ式に回転するように構成されている。即ち、図3に示すように、穀稈14は上方に向けて扱かれ、当該穀稈14の穂先14aは、扱胴16の上方を通過するように構成されている。
【0029】
図2に示すように、扱室15の搬送方向上流側の端部には、供給口25が形成されている。穀稈搬送機構11によって搬送される穀稈14の穂先14aは、供給口25を介して、扱室15内に導入される。なお図2に示すように、搬送方向で供給口25よりも上流側には、当該供給口25の下縁部に接続する穂先案内プレート26が配置されている。穀稈14の穂先14aの部分は、穂先案内プレート26の上面によって供給口25まで案内される。この構成により、穀稈14の穂先14aを、扱室15に対して適切に供給することができる。
【0030】
また本実施形態の脱穀装置10には、前記供給口25を扱室15の内側から塞ぐ逆流防止部材50が設けられている。このように、供給口25を逆流防止部材50によって塞ぐことにより、供給口25を介して扱室15の外側に穂切れ等が飛び出すことを防ぎ、脱穀装置10の効率を向上させることができる。なお、この逆流防止部材50はゴム板から構成されているので、穀稈14の穂先14aは、逆流防止部材50を押し退けるようにして進むことができる。
【0031】
また本実施形態では、図3等に示すように、穀稈搬送機構11と扱胴16との間に、穀稈押さえ部材28が配置されている。穀稈押さえ部材28は、穀稈14の搬送方向に略沿って配置された丸パイプである。この穀稈押さえ部材28は、図3に示すように、穀稈搬送機構11と扱胴16の間の穀稈14に対して、上方から接触するように配置されている。これにより、穀稈14を扱胴16に対して押さえ付けることができるので、当該穀稈14が扱胴16から浮き上がることを防止し、脱穀を確実に行うことができる。
【0032】
また図3等に示すように、扱胴16の回転軸に直交する断面でみたときに、扱室15の天井を形成する天井プレート27の下面が、扱歯22の先端の回転軌跡に沿って略円弧状に形成されている。これにより、扱室15内において、穀稈14を扱胴16の外周に沿って案内できるので、穀稈14が扱胴16から浮き上がることを防止し、脱穀を確実に行うことができる。
【0033】
また、天井プレート27は、扱胴16の回転方向下流側の端部27aにおいて、第2天井プレート52に接続されている。この第2天井プレート52は、扱室15の天井を形成しているとともに、扱胴16の回転軸17方向に直交する断面で見たときに、扱胴16の回転方向の下流側に進むにつれて、扱歯22の回転軌跡から遠ざかっていくように配置されている。従って、第2天井プレート52は、扱歯22の先端の回転軌跡から徐々に離間していく離間部を構成していると言える。これにより、第2天井プレート52と扱歯22の先端の回転軌跡との間には、空間53が形成されている。言い換えれば、天井プレート27の端部27aを始点として、当該端部27aよりも扱胴16の回転方向で下流側において、扱胴16の上方に空間53が形成されている。
【0034】
このように、天井プレート27の端部27aよりも下流側において、扱胴16の上方に空間53を形成したので、端部27aよりも下流側においては、穀稈14が扱胴16の外周から離れることができる。これにより、穀稈14が扱胴16に巻き付きにくくなる結果、扱胴16を回転駆動するための負荷を低減することができる。
【0035】
次に、扱胴16の回転によって穀稈14から取り外された穂先(穂切れ)の処理について詳しく説明する。なお、扱室15内においては、扱胴16の回転によって、穂切れの他にも、穀粒や藁屑等が発生する。これらの混合物のことを、以下、被処理物と称する。
【0036】
扱胴16の回転により発生した被処理物は、当該扱胴16の回転により、扱胴16の回転方向下流側に向けて放出される。前述のように、本実施形態では、扱胴16の上方に空間53が形成されている。従って、扱胴16から放出された被処理物は、前記空間53に向かって飛び出し、当該空間53内を所定の軌跡を描きながら落下することになる。扱室15内において、被処理物の落下位置には、穂切れ処理装置29が配置されている。扱胴16から放出された被処理物は、穂切れ処理装置29に投入され、当該穂切れ処理装置29で処理されて単粒化(穀粒を枝梗から外すこと)される。
【0037】
穂切れ処理装置29は、図3及び図4に示すように、処理胴30と、受網31と、を備えている。
【0038】
処理胴30は、略四角筒状に形成されるとともに、その軸線を回転軸32として回転駆動されるように構成されている。処理胴30の回転軸32は、扱胴16の回転軸17と略平行になるように配置されている。なお本実施形態では、図3に矢印で示すように、扱胴16と処理胴30は同じ方向に回転駆動される。この処理胴30は、外向きに突出する複数の処理歯33を有している。図4に示すように、複数の処理歯33は、処理胴30の軸線方向に沿って並んで配置されている。
【0039】
受網31は、処理胴30の下半分を覆うように設けられている。図3に示すように、受網31は、処理胴30の軸線方向で見たときに、回転する処理歯33の先端の軌跡に沿って形成されている。
【0040】
この構成で、扱胴16から穂切れ処理装置29に導入された被処理物は、回転する処理歯33と、受網31と、の間で揉み解し作用を受け、単粒化が促進される。脱粒された穀粒は、受網31を通って、下方に落下する。また、受網31の終端には、切歯49が形成されている。この切歯49は、処理胴30の軸線方向に並んで複数形成されている。そして、処理胴30が回転することにより、切歯49同士の間を、処理歯33が通過するように構成されている。これにより、穂切れ処理装置29に投入された藁屑等が細かく裁断される。細かく裁断された藁屑は、受網31を通って下方に落下する。
【0041】
なお、処理胴30の回転軸32は、扱胴16の回転軸17よりも低い位置となるように配置されている。これにより、扱胴16から落下する被処理物を、穂切れ処理装置29で確実に受けとめることができる。
【0042】
また、扱胴16と処理胴30との間には、仕切板34が配置されている。この仕切板34は、無孔の金属板を折り曲げて形成されている。この仕切板34の下端部は、受網31の終端に近接して配置されている。このように仕切板34を設けることにより、穂切れ処理装置29内の被処理物が、処理胴30の回転の勢いによって扱胴16側に飛び出してしまうことを防止できる。これにより、穂切れ処理装置29の処理効率を向上させることができる。
【0043】
次に、選別装置36について説明する。
【0044】
選別装置36は、扱胴16及び穂切れ処理装置29の下方に配置されている。前述のように、扱胴16で発生した被処理物は、穂切れ処理装置29で処理されて、受網31を通って落下する。受網31から落下する落下物(穀粒、藁屑、穂切れなどの混合物)を、以下の説明では被選別物と称する。受網31から落下した被選別物は、選別装置36に投入される。
【0045】
選別装置36は、図2に示すように、揺動選別部37と、風選別部38とを備えている。
【0046】
揺動選別部37は、チャフシーブ39を備えている。穂切れ処理装置29の受網31から落下した被選別物は、まずチャフシーブ39によって受けとめられる。チャフシーブ39は、装置の略左右方向に横架された複数のチャフフィン40を、穀稈14の搬送方向に複数並べて配置したものである。揺動選別部37は、チャフシーブ39を、搬送方向で往復揺動可能に構成されている。即ち、チャフシーブ39を往復揺動させることで、穀粒等の重くて小さい被選別物はチャフフィン40の間を通って下に落ち、藁屑などの軽くて大きい被選別物はチャフフィン40に引っ掛かって残る。
【0047】
各チャフフィン40は、その上面が、搬送方向で斜め上流側を向くようにして配置されている。これにより、チャフシーブ39全体を往復揺動させることで、被選別物が揺動選別されながら搬送方向下流側に向けて搬送されていく。チャフシーブ39の後端に達するまでの間に大部分の穀粒は落下し、チャフシーブ39の上には、穂切れや藁屑のみが残る。
【0048】
次に風選別部38について説明する。この風選別部38は、唐箕ファン41と、グレンシーブ42と、を備えている。
【0049】
グレンシーブ42は網目状のプレス、又はクリンプ網として構成されており、チャフシーブ39の下方に配置される。またグレンシーブ42の下方には、スクリューコンベアとして構成された一番コンベア43が配置されている。前記チャフシーブ39の粗選別により、当該チャフシーブ39から落下した重くて小さい被選別物(穀粒等)は、グレンシーブ42の上に落下する。
【0050】
唐箕ファン41は、搬送方向下流向きの選別風を発生させ、当該選別風をグレンシーブ42に対して下側から当てるように構成されている。
【0051】
以上の構成で、グレンシーブ42上に落下した被選別物に対して、唐箕ファン41が生起する選別風が当てられる。そして、この選別風にかかわらず略垂直に落下する比重の重い物、即ち穀粒は一番物と呼ばれる。一番物は一番コンベア43に導入され、それ以外の比重の軽いものは搬送方向下流側に向けて吹き飛ばされる。
【0052】
一番コンベア43に導入された一番物(穀粒)は、当該一番コンベア43によって搬送され、例えば図略のグレンタンクに貯蔵される。以上により、被選別物から穀粒を選別して取り出すことができる。
【0053】
チャフシーブ39及びグレンシーブ42の下流側端部下方には、スクリューコンベアとして構成された二番コンベア44が配置されている。
【0054】
チャフシーブ39の上に残った穂切れ、藁屑等は、当該チャフシーブ39の往復揺動により搬送方向下流側に向けて搬送され、二番コンベア44に落下する。また、グレンシーブ42に落下した被処理物のうち、唐箕ファン41の選別風により吹き飛ばされた穂切れ、藁屑等も、二番コンベア44に落下する。風選別部38は、二番コンベア44に落下する被選別物に対して搬送方向下流側に向けて上向きの風を当てる送風ファン45を有している。
【0055】
二番コンベア44に落下する被選別物のうち、穀粒の付いた穂切れ等は比較的重いので、送風ファン45の風にもかかわらず落下して二番コンベア44に導入される。一方、穀粒の付いていない藁屑等は、送風ファン45の風によって吹き飛ばされ、図略の藁出口から装置の外に排出される。
【0056】
穀粒の付いた穂切れ等は、再処理を施して穀粒を取り出す余地があるので、回収する価値のあるものである。このように再処理の対象とするものを、二番物と称する。風選別部38で選別されて二番コンベア44に導入された二番物は、当該二番コンベア44によって搬送され、二番還元コンベア46の端部に供給される。
【0057】
二番還元コンベア46は、略上下方向に配設されたスクリューコンベアであり、前記二番物を、穂切れ処理装置29よりも上方まで搬送するように構成されている。二番還元コンベア46によって搬送された二番物は、当該二番還元コンベア46の放出側端部47から放出される。図4に示すように、前記放出側端部47には、二番案内通路48が接続されている。この二番案内通路48は、穂切れ処理装置29に連通している。従って、二番還元コンベア46から放出された二番物は、二番案内通路48を介して、穂切れ処理装置29に投入される。以上の構成により、選別装置36で選別された二番物を、穂切れ処理装置29によって再処理することができる。
【0058】
次に、本実施形態の特徴的な構成について説明する。
【0059】
前述のように、扱胴16で発生した被処理物は、扱胴16の回転の勢いにより、扱胴16の上方に形成された空間53に向けて放出される。しかし、ただ単に被処理物を空間53に放出しただけでは、一部の被処理物が予期せぬ軌跡を描いて飛んでしまう場合がある。例えば、空間53に放出された被処理物が、扱室15のケーシングの背面を構成する壁面54(図3)に衝突して跳ね返り、扱胴16側に戻ってきてしまう場合が考えられる。
【0060】
このように、被処理物が扱胴16側に戻ってきてしまうと、当該被処理物は、穂切れ処理装置29に導入されることなく、当該穂切れ処理装置29と扱胴16との間を通って落下してしまう。特に本実施形態では、扱胴16と処理胴30との間に仕切板34を設けているので、扱胴16と処理胴30との間の空間が一部遮られている。この結果、穂切れ処理装置29への入口が狭くなっており、被処理物が穂切れ処理装置29へと入りにくくなっている。従って、被処理物が予期せぬ軌跡で飛んでしまうと、当該被処理物は、穂切れ処理装置29に導入されずに落下してしまう可能性が高い。このように、穂切れ処理装置29に投入されずに落下する被処理物の割合が多くなると、脱穀装置10全体の効率が低下してしまう。
【0061】
そこで本実施形態の脱穀装置10は、扱胴16で発生した被処理物を穂切れ処理装置29の処理胴30まで案内する被処理物案内板35を設けたものである。
【0062】
以下、詳しく説明する。なお、以下の説明で、単に「上流側」「下流側」と言ったときには、扱胴16の回転方向における上流側及び下流側を指すものとする。
【0063】
この被処理物案内板35は、金属製の板状部材であり、図6に示すように略長方形状に形成される。図4に示すように、被処理物案内板35は、その長手方向が扱胴16の回転軸17方向に沿って配置されており、かつ、扱胴16の回転軸17方向の全長に対面することができるように構成されている。
【0064】
図3に示すように、被処理物案内板35は、天井プレート27の下流側端部27aよりも、更に下流側に配置されている。従って、この被処理物案内板35は、扱胴16の上方に形成された離間部(第2天井プレート52)の始点よりも下流側に配置されていると言うことができる。また、この被処理物案内板35は、扱胴16から空間53に放出された被処理物が衝突する位置に配置されている。従って、扱胴16で発生した被処理物は、当該扱胴16の回転の勢いによって空間53内にいったん放出されたのち、被処理物案内板35に衝突する。
【0065】
被処理物案内板35は、処理胴30よりも上流側であって、当該処理胴30の上方に配置されている。更に被処理物案内板35は、扱胴16側の面を、斜め下方に向けて配置されている。従って、扱胴16から放出された被処理物は、被処理物案内板35の斜め下方を向いた面に衝突して、当該被処理物案内板35の下端部が向く方向(斜め下方)に向けて案内される。そして、被処理物案内板35は、扱胴16側を向いた面(被処理物を案内する側の面)を下方に延長した延長線面が、仕切板34の上端よりも上方を通過するように配置されている。
【0066】
このように被処理物案内板35が配置されているので、扱胴16から空間53に放出された被処理物を、被処理物案内板35によって、穂切れ処理装置29の処理胴30まで案内することができる。
【0067】
また、被処理物案内板35の上端と、扱室15の天井面との間は、閉鎖されて隙間が無いように構成されている。より具体的には、被処理物案内板35の上端と、扱室15の天井面との間は、閉鎖プレート55によって塞がれている。これにより、被処理物案内板35の上方を被処理物がすり抜けてしまうことがないので、被処理物案内板35によって被処理物を確実に案内することができる。
【0068】
また、被処理物案内板35の上端は、前記閉鎖プレート55の下端に、ネジ止め(図略)により固定されている。このように、本実施形態の被処理物案内板35は、扱室15のケーシングとは別体として構成され、かつ、ネジ止めにより固定されている。従って、この被処理物案内板35は、前記ネジの締結を解除することにより、着脱可能である。
【0069】
即ち、被処理物案内板35は、穀粒等の被処理物が頻繁に衝突するため、摩耗し易い部材である。そこで上記のように着脱可能とすることにより、摩耗した被処理物案内板35を交換することができるように構成したものである。なお、本実施形態において、被処理物案内板35の下端は、特に固定されておらず、フリーとなっている。従って、被処理物案内板35の着脱の際に、当該被処理物案内板35の下端部を固定(又は固定解除)する作業が不要となっており、当該被処理物案内板35を簡単に交換することができる。
【0070】
また、被処理物案内板35には、扱胴16側を向く面(被処理物を案内する側の面)に、複数の調整板56が取り付けられている。この調整板56は、図6に示すように、略直角に折り曲げられた金属製の板状部材からなっており、被処理物案内板35の扱胴16側を向く面から略直交する方向に突出するように設けられている。
【0071】
複数の調整板56は、図4の平面断面図に示すように、処理胴30の回転軸32に平行な方向(図4の左右方向)に並んで配置されている。更に、各調整板56は、処理胴30の回転軸32に平行な方向に対して、斜めになるように配置されている。
【0072】
以上の構成で、扱胴16から飛び出した被処理物は、被処理物案内板35に衝突した際に、調整板56によって、処理胴30の軸線方向に対して斜め方向に誘導されつつ、穂切れ処理装置29へと導入される。このように、調整板56によって被処理物を誘導することにより、当該被処理物が穂切れ処理装置29に投入される位置を、処理胴30の軸線方向である程度調整することができる。これにより、処理胴30の特定箇所に被処理物がかたまって供給されてしまうことを防ぎ、処理胴30に供給される被処理物の軸方向の分布を均一にするように調整することができる。従って、穂切れ処理装置29を、処理胴30の軸線方向で有効に利用することができる。
【0073】
以上で説明したように、本実施形態の脱穀装置10は、扱胴16と、処理胴30と、扱室15と、被処理物案内板35と、を備える。扱胴16は、複数の扱歯22を外周に備え、回転軸17を中心に回転する。処理胴30は、複数の処理歯33を外周に備え、扱胴16の回転軸17と略平行な回転軸32を中心に回転する。扱室15は、扱胴16及び処理胴30を収容する。被処理物案内板35は、扱胴16で発生した被処理物を処理胴30に向けて案内する。扱室15のケーシングの天井面は、扱胴16の回転方向下流側に進むに従って扱歯22の先端の回転軌跡から離間する離間部を有する。被処理物案内板35は、扱胴16の回転方向で、前記離間部の開始位置である天井プレート27の端部27aよりも下流側に配置される。処理胴30は、扱胴16の回転方向で、被処理物案内板35よりも下流側に配置される。
【0074】
このように、ケーシングの天井に離間部を形成することにより、当該天井と扱胴16との間に空間53が形成されるので、扱胴16に対する穀稈の巻き付きを防止できる。これにより、扱胴16の回転負荷を低減することができる。そして、上記のように被処理物案内板35を設けたことにより、上記空間53に放出された被処理物を処理胴30まで案内することができる。これにより、被処理物を確実に処理胴30に投入することができるので、脱穀装置10全体の処理効率を向上させることができる。
【0075】
また本実施形態の脱穀装置10は、以下のように構成されている。即ち、扱胴16は、穀稈14を上扱ぎ式で脱穀する方向に回転する。処理胴30の回転軸32は、扱胴16の回転軸17よりも低い位置に配置されている。被処理物案内板35は、処理胴30よりも高い位置に配置されている。そして、被処理物案内板35の上端と前記天井面との間は、閉鎖されている。
【0076】
被処理物案内板35をこのように配置することにより、扱胴16から放出された被処理物を、処理胴30まで適切に案内することができる。また、被処理物案内板35の上端と天井面との間を閉鎖したことにより、被処理物が、被処理物案内板35の上方を通り抜けてしまうことがない。従って、被処理物をもれなく被処理物案内板35によって案内することができる。
【0077】
また本実施形態の脱穀装置10は、以下のように構成されている。即ち、被処理物案内板35の、扱胴16側を向く面には、当該被処理物案内板35に略直交する板状の調整板56が、処理胴30の回転軸32と略平行な方向で複数並べて配置されている。少なくとも何れか1つの調整板56は、処理胴30の回転軸32と平行な方向に対して斜めに配置されている。
【0078】
斜めに配置された調整板56によって、被処理物が処理胴30に投入される位置を、当該処理胴30の軸線方向で調整することができる。これにより、被処理物が一箇所にかたまって処理胴30に供給されることを防ぎ、処理胴30を軸線方向で効率的に利用することができる。
【0079】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0080】
本発明の脱穀装置は、据え置きの脱穀装置、ハーベスタ内蔵の脱穀装置、コンバイン内蔵の脱穀装置など、様々な脱穀装置に適用することができる。
【0081】
処理胴30の回転軸32に対する調整板56の角度は、必要に応じて適宜設定することができる。また、各調整板56の角度がそれぞれ異なっていても良い。また、処理胴30の回転軸32方向に対して調整板56が直交するように配置されていても良い。もっとも、この調整板56は省略することもできる。
【0082】
天井プレート27と第2天井プレート52は、一体として構成されていても良い。要は、扱歯22の先端の回転軌跡から徐々に離間する離間部が天井に形成されていれば良いのであって、その構成は特に限定されない。
【0083】
仕切板34は、省略することもできる。
【0084】
また、閉鎖プレート55を省略し、被処理物案内板35の上端を、扱室15の天井面に対して直接固定するように構成することができる。この場合であっても、被処理物案内板35の上端と天井面との間が閉鎖されていると言うことができる。
【符号の説明】
【0085】
10 脱穀装置
11 穀稈搬送装置
14 穀稈
15 扱室
16 扱胴
22 扱歯
29 穂切れ処理装置
30 処理胴
33 処理歯
35 被処理物案内板
52 第2天井プレート(離間部)
56 調整板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の扱歯を外周に備え、回転軸を中心に回転する扱胴と、
複数の処理歯を外周に備え、前記扱胴の回転軸と略平行な回転軸を中心に回転する処理胴と、
前記扱胴及び前記処理胴を収容する扱室と、
前記扱胴で発生した被処理物を前記処理胴に向けて案内する被処理物案内板と、
を備え、
前記扱室のケーシングの天井面は、前記扱胴の回転方向下流側に進むに従って前記扱歯の先端の回転軌跡から離間する離間部を有し、
前記被処理物案内板は、前記扱胴の回転方向で、前記離間部の開始位置よりも下流側に配置され、
前記処理胴は、前記扱胴の回転方向で、前記被処理物案内板よりも下流側に配置されていることを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
請求項1に記載の脱穀装置であって、
前記扱胴は、穀稈を上扱ぎ式で脱穀する方向に回転し、
前記処理胴の回転軸は、前記扱胴の回転軸よりも低い位置に配置され、
前記被処理物案内板は、前記処理胴よりも高い位置に配置され、
前記被処理物案内板の上端と前記天井面との間は、閉鎖されていることを特徴とする脱穀装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の脱穀装置であって、
前記被処理物案内板の、前記扱胴側を向く面には、当該被処理物案内板に略直交する板状の調整板が、前記処理胴の回転軸と略平行な方向で複数並べて配置されており、
少なくとも何れか1つの調整板は、前記処理胴の回転軸と平行な方向に対して斜めに配置されていることを特徴とする脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−42743(P2013−42743A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185093(P2011−185093)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】