説明

脱穀装置

【課題】 脱穀装置における穀粒選別性能の更なる向上を図る。
【解決手段】 揺動選別棚(11)の精選別部(15)と、この精選別部(15)からの処理穀物を受け入れて下方の前記1番回収受樋(24)内に案内する後上り傾斜の1番戻し棚(16)との間に、1番戻し棚(16)よりも後上りに急傾斜の風向板(21)を設ける。
また、風向板(21)は、その前端部が前記精選別部(15)の後端部よりも前側に位置し、風向板(21)の後端が1番選別棚(15)の後端部より後側に位置する。
また、唐箕(23)からの選別風送風方向における風向板(21)の長さを1番戻し棚(16)の長さよりも短く設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脱穀処理された処理物を受け入れて揺動選別する揺動選別装置を備える脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、揺動選別棚に備える精選別部の後端先端側に、該1番選別棚からの処理物を受け入れて下方の1番回収受樋内に案内落下させる1番戻し棚を設けて選別処理する構成のものは一般的に知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−139183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、揺動選別棚に備える精選別部の後端先端側に、該1番選別棚からの処理物を受け入れて下方の1番回収受樋内に案内落下させる1番戻し棚を設けて選別処理する脱穀装置において、1番回収受樋に混入する來雑物を低減し、選別性能の更なる向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の発明は、扱胴(4)を有する扱室(3)の下方に揺動選別棚(11)を設け、該揺動選別棚(11)には上部の粗選別部(40)と該粗選別部(40)の下方に設けられた精選別部(15)を備え、該揺動選別棚(11)の前部下方に選別風を送風する唐箕(23)を設け、該唐箕(23)の後側に1番回収受樋(24)設けた脱穀装置において、前記精選別部(15)と、この精選別部(15)から落下した処理物を受け入れて下方の1番回収受樋(24)内に案内する後上り傾斜姿勢の1番戻し棚(16)との間に、1番戻し棚(16)よりも後上りに急傾斜する風向板(21)を設けたことを特徴とする脱穀装置である。
【0006】
精選別部(15)の後端から1番戻し棚(16)上に落下する処理物は、唐箕(23)からの選別風によって風選されながら前方下方の1番回収受樋(24)内に流下案内される。
【0007】
風向板(21)の傾斜角度を1番戻し棚(16)の傾斜角度よりも立てることで、唐箕風が精選別部(15)の網面に対し上向きに吹き上がることになり、充分な風選別が行え、選別性能が向上する。また、1番戻し棚の上向き角度を緩くすることができ、2番還元量が減少する。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記風向板(21)の前端部を精選別部(15)の後端部よりも前側に配置し、風向板(21)の後端部を1番選別棚(15)の後端部よりも後側に配置した請求項1記載の脱穀装置である。
【0009】
特に、風向板(21)の後端が精選別部(15)の後端より後側に位置しているので、精選別部(15)の後端より落下する稈切れなどが直接1番戻し棚(16)上に落下することがなく、選別性能がより向上する。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記唐箕(23)からの選別風送風方向における風向板(21)の長さを1番戻し棚(16)の長さよりも短く設定した請求項1又は請求項2記載の脱穀装置である。
【0011】
風向板(21)を1番戻し棚(16)より短くしているので、1番戻し棚(16)上には唐箕風が作用することになり、1番戻し棚(16)上での選別が良好に行える。
請求項4記載の発明は、前記風向板(21)の後方延長線上には、前記扱室(3)からの排塵処理物を受け入れて篩い選別する篩い線(18)を臨ませた請求項1又は請求項2又は請求項3記載の脱穀装置である。
【0012】
風向板(21)の傾斜上面に沿って流れる選別風が篩い線(18)の間隔内を吹き抜けることになるので、藁屑の分離作用が促進され、2番回収受樋(25)内への藁屑の落下が減少する。
【0013】
請求項5記載の発明は、前記風向板(21)の傾斜角度を変更可能に構成した請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の脱穀装置である。
処理物量が多い時には、風向板(21)の傾斜角を急角度に変更し、処理物量が少ない時には、緩傾斜に変更することで、処理物量に応じた傾斜角に任意調整することができて、風選別性能が向上する。
【0014】
請求項6記載の発明は、前記揺動選別棚(11)上の処理物量が増加した場合に、風向板(21)の傾斜角度を自動的に増大させる構成とした請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の脱穀装置である。
【0015】
揺動選別棚(11)上での処理物量が多くなると、風向板(21)がその増加量に応じて急傾斜方向に姿勢変向され、逆に、処理物量が少なくなると、風向板はその減少量に応じて緩傾斜方向に姿勢変向される。
【0016】
風向板(21)の傾斜角度が処理物量に応じて自動調整されるので、風選別が効率よく行え、選別性能が一段と向上するものとなった。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、風向板(21)の傾斜姿勢を1番戻し棚(16)の傾斜姿勢よりも急な後上がり傾斜姿勢とすることで、唐箕(23)からの選別風が精選別部(15)の後側から吹き上がり、充分な風選別が行え、選別性能の向上を図ることができる。また、これにより、1番戻し棚(16)の上向き角度を緩くすることができて、2番還元量が少なくなり、能率アップを図ることができる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、風向板(21)の後端が精選別部(15)の後端より後側に位置しているので、精選別部(15)の後端より落下する稈切れなどが直接1番戻し棚(16)上に落下することがなく、選別性能を更に向上させることができる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は請求項2記載の発明による効果に加えて、風向板(21)は1番戻し棚よりも短くしているので、風向板(21)を1番戻し棚(16)より短くしているので、1番戻し棚(16)上には唐箕(23)からの選別風が作用し、1番戻し棚(16)上での選別が良好に行える。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、請求項1又は請求項2又は請求項3記載の発明による効果に加えて、風向板(21)の傾斜上面に沿って流れる選別風が篩い線(18)の間隔内を吹き抜けることになるので、藁屑の分離作用が促進され、2番回収受樋内への藁屑の落下を減少させることができる。
【0021】
請求項5記載の発明によれば、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明による効果に加えて、風向板(21)の傾斜角度を任意に調整することができて、風選別性能が向上する。
【0022】
請求項6記載の発明によれば、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発明による効果に加えて、風向板(21)の傾斜角度を処理物量に応じて自動調整することができるので、風選別が効率よく行え、選別性能を大幅に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】脱穀装置の要部の側断面図
【図2】同上要部の側断面図
【図3】同上要部の側断面図
【図4】別実施例を示す脱穀装置要部の側断面図
【図5】同上要部の背面図
【図6】脱穀装置の要部の側断面図
【図7】脱穀装置要部の側断面図
【図8】同上要部の背面図
【図9】揺動選別棚要部の平面図
【図10】同上要部の平面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、脱穀装置の要部の側断面図を示すものであり、次のような構成になっている。
すなわち、脱穀装置1は、脱穀フィードチエン2により株元を挟持しながら搬送される穀稈の穂先部を扱室3内で駆動回転する扱胴4により脱穀処理するよう構成している。扱室3の下半周部には受網5が張設され、扱胴4の上部を覆う扱胴カバー6は、扱室の一側を支点として揺動開閉する構成である。扱室3の終端側には多量の藁屑や未処理物を含む排塵処理物を下方に落下させる排塵口7が設けられている。扱室3終端の排塵口7より後方部には、排ワラ中のささり粒を掻き落して回収するささり回収室8を構成して設け、このささり回収室8には、前記扱胴4と略同径で同一軸芯回りに強制回転する外周にささり落し歯有した4番処理胴4aを内装軸架している。4番処理胴4aは、実施例では前記扱胴4と一体構成としてあり、該扱胴を扱室終端より長く延出させた構成としている。
【0025】
前記扱室3のフィードチエン2側とは反対側一側には2番処理胴9を内装軸架した2番処理室を並設している。また、前記2番処理胴9の後方にはこれと同一軸芯上において排塵処理胴10を内装軸架した排塵処理室を構成して設けている。
【0026】
扱室下方の揺動選別装置(揺動選別棚)11は、脱穀処理後の処理物を受け入れて揺動移送しながら篩い選別する構成であり、上部の粗選別部40には、選別方向上手側から移送棚12、チャフシ−ブ13、ストロ−ラック14の順に配置している。そして前記チャフシ−ブ13の下方に精選別部(1番選別棚)15、1番戻し棚16、2番戻し棚17を配置して設けた構成としている。前記チャフシーブ13の終端側上方にはささり回収室8からの排塵処理物を受け入れて篩い選別する排塵篩い線18が設けられ、その後方にはストローラック14の上方においてストロー篩い線19が設けられている。これら篩い線18,19は、後端が上方に向う傾斜姿勢とし、藁屑を後方上方に持ち上げながら排塵ファン26側へ導くように構成している。
【0027】
また、揺動選別棚7の下方には選別方向の上手側から順に、唐箕23と、1番ラセン24aを備えた1番回収受樋24、2番ラセン25aを備えた2番回収受樋25と、その上方に排塵ファン26を設けて選別室を構成している。
【0028】
前記1番選別棚15と1番戻し棚16との間には、唐箕23からの選別風の一部を導風案内する風向板21が設けられ、前記1番戻し棚16の傾斜角θよりも大きく傾斜する急傾斜角θ1を保持する構成としている(θ<θ1)。
【0029】
前記風向板21は、前端が1番選別棚15の後端部先端部よりも前側に位置し、風向板の後端は1番選別棚15の後端部よりも後側に位置するよう設定されている。また、風向板21の長さL1は、1番戻し棚16の長さLよりも短くなるように構成されている(L1<L)。
【0030】
風向板21の傾斜延長線上には、前記排塵篩い線18が臨むように配置され、風向板上に沿って流れる唐箕風が篩い線に向って作用するようになっている。また、風向板21からの唐箕風がジャンプラック20から排塵篩い線18上へ落下する排塵処理物にも作用するようになっている。これにより、藁屑の分離作用が促進され、風選別が良好に行える。
【0031】
また、風向板21は、横軸22を回動支点として傾斜角が変更できるようになっており、処理物量が多い時には、傾斜角が大きくなる方向に回動調整し、処理物量が少ない時には傾斜角が小さくなる方向に回動調整できる構成としている。かかる調整手段は、手動調整であってもよく、また、後記するように処理物量に応じて自動調整するように構成することもできる。
【0032】
図2に示すように、揺動選別棚11の移送棚12上には、脱穀処理物量を検出する処理物量検出センサ28が設置されている。
移送棚12上に落下する扱室からの脱穀処理物量が多くなると、処理物量検出センサ28の処理量検出結果に基づき、モータ29の駆動により風向板21が急傾斜方向に揺動変位して選別風が上向きに立ち上り、処理物量が少なくなると、風向板21が緩傾斜方向に揺動変位して選別風が後方向きに吹き抜けるようにコントローラによって制御する構成としている。
【0033】
図3例では、風向板21の傾斜角度がチャフシーブ13のシーブ板13aの開き角度と連動して変化するように構成している。処理量が多いときに、シーブ板13aを開き方向に立てると、これに連動して風向板21も急傾斜方向に立てることで、風が上向きに吹き上がることになり、機外飛散を少なくすることができる。
【0034】
図3に示すように、シーブ開閉アーム30と風向板回動アーム31は、リンクプレート32でもって連動連結してあり、モータ29および連動ワイヤ33による駆動操作でシーブ開閉アーム30を作動することによってシーブ板を開閉し、風向板の傾斜角変更も同時に行えるように連動構成している。
【0035】
上記シーブ板の開閉と風向板の角度変更は、処理物量検出センサの検出結果に基づき作動するように連動構成するものであてもよい。
なお、処理物量検出センサ28の不感知時には、風向板が急角度に上向き回動する構成とすることで、脱穀部内での藁屑が少ないときには唐箕風が上向きになるので機外ロスを大幅に軽減することができる。
【0036】
また、脱穀部内への穀稈供給不感知時(穀稈センサ不感知)には、上記同様に風向板が上向きに回動する構成とすることで、脱穀部内での藁屑が少ないときに唐箕風が上向きになるので機外ロスを大幅に軽減することができる。
【0037】
図4及び図5例について説明すると、揺動選別棚11の終端側上方に配置した排塵ファン(横断流ファン)26の下側に分離板35を持つ構成のものにおいて、前記分離板35には、この前端及び後端から後方下方に向けて傾斜するガイドゴム板36f,36rを設けた構成としている。これによると、唐箕風の流れを妨げることなく、揺動棚後端への選別風を良好にガイドすることができる。また、後側のガイドゴム板36rにあっては排ワラカッタによる切断ワラの揺動棚上への混入も防ぐことができる。
【0038】
図6例によると、扱室後側板37と排塵ファン26との間で、チャフシーブ13の上方に配設した排塵篩い線18の後端をストローラック14の終端後端位置まで延出させることで、排塵処理物が篩い線上を搬送されるときに処理物が穀粒と藁屑とに分離され、藁屑を排塵ファンに近づけることができ、排塵ファンによる藁屑の吸引作用が効果的に行え、穀粒の機外飛散を低減することができる。また、図6例に示す排塵ファン26は、穀稈搬送量や処理物量により制御する脱穀制御に追従して入口側のガイド板39を支点Q回りに動かして吸引側入口面積を変えることで、ファンの回転数はそのままにして吸引吐き出し風量を変更するように構成している。これによると、コーナー旋回などで唐箕の風量制御に伴って排塵ファンの風量を制御することができ、穀粒の機外飛散を低減することができる。
【0039】
図7及び図8例では、排塵処理胴10の下方に櫛状フルイ線38を設けた構成としている。この櫛状フルイ線38は、右側の櫛状フルイ線下方から左側の排塵ファン26の下方に向けて横方向に配設している。排塵処理胴の受網から漏下した穀粒と混在する藁屑を櫛状フルイ線38で分離し、藁屑を排塵ファン26側にガイドすることで吸塵効果を高めるようにしている。
【0040】
図9例は、前側の排塵篩い線18と後側のストロー篩い線19との関係において、後側の篩い線19のピッチP2に対して前側の篩い線18のピッチP1を広く(P1>P2)することで、早い段階で穀粒の漏下を促進し、ロスの低減化を図るようにしている。なお、篩い線19は長さの異なる長短線棒を交互に配列した構成としている。
【0041】
また、図10例では、ストローラック14のラック板14a,14a間のピッチP3を篩い線19のピッチP2より狭くした構成としている。これにより、篩い線で選別した余計な藁屑が再び2番戻し棚上に落下するのを防いで選別精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0042】
3 扱室
4 扱胴
11 揺動選別棚
15 粗選別部(1番選別棚)
16 1番戻し棚
18 篩い線
21 風向板
22 横軸
23 唐箕
24 1番回収受樋
40 粗選別部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴(4)を有する扱室(3)の下方に揺動選別棚(11)を設け、該揺動選別棚(11)には上部の粗選別部(40)と該粗選別部(40)の下方に設けられた精選別部(15)を備え、該揺動選別棚(11)の前部下方に選別風を送風する唐箕(23)を設け、該唐箕(23)の後側に1番回収受樋(24)設けた脱穀装置において、
前記精選別部(15)と、この精選別部(15)から落下した処理物を受け入れて下方の1番回収受樋(24)内に案内する後上り傾斜姿勢の1番戻し棚(16)との間に、1番戻し棚(16)よりも後上りに急傾斜する風向板(21)を設けたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記風向板(21)の前端部を精選別部(15)の後端部よりも前側に配置し、風向板(21)の後端部を1番選別棚(15)の後端部よりも後側に配置した請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記唐箕(23)からの選別風送風方向における風向板(21)の長さを1番戻し棚(16)の長さよりも短く設定した請求項1又は請求項2記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記風向板(21)の後方延長線上には、前記扱室(3)からの排塵処理物を受け入れて篩い選別する篩い線(18)を臨ませた請求項1又は請求項2又は請求項3記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記風向板(21)の傾斜角度を変更可能に構成した請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の脱穀装置。
【請求項6】
前記揺動選別棚(11)上の処理物量が増加した場合に、風向板(21)の傾斜角度を自動的に増大させる構成とした請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の脱穀装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−94073(P2013−94073A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237416(P2011−237416)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】