脱穀装置
【課題】排塵処理室の処理能力を向上し、排塵処理歯のメンテナンスを容易に行うことができる脱穀装置を提供する。
【解決手段】排塵処理室(80)に軸支した排塵処理胴(71)の外周面に多数の棒状の排塵処理歯(71a)を突出させて設け、該排塵処理銅(71)の周囲を覆う排塵処理胴枠(72)の内側に板状の送りガイド(81)を設け、該送りガイド(81)を排塵処理胴(71)の回転方向上手側の部位に対して排塵処理胴(71)の回転方向下手側の部位が後方に位置するように傾斜させて配置する。
また、排塵処理歯(71a)を排塵処理胴(71)の外周面に取り付けるための支持プレートを排塵処理胴(71)の前部外周に備える前側支持プレート(71b)と排塵処理胴(71)の後部外周に備える後側支持プレート(71d)とに分割し、該前側支持プレート(71b)及び後側支持プレート(71d)を排塵処理胴(71)に対して着脱自在な構成とする。
【解決手段】排塵処理室(80)に軸支した排塵処理胴(71)の外周面に多数の棒状の排塵処理歯(71a)を突出させて設け、該排塵処理銅(71)の周囲を覆う排塵処理胴枠(72)の内側に板状の送りガイド(81)を設け、該送りガイド(81)を排塵処理胴(71)の回転方向上手側の部位に対して排塵処理胴(71)の回転方向下手側の部位が後方に位置するように傾斜させて配置する。
また、排塵処理歯(71a)を排塵処理胴(71)の外周面に取り付けるための支持プレートを排塵処理胴(71)の前部外周に備える前側支持プレート(71b)と排塵処理胴(71)の後部外周に備える後側支持プレート(71d)とに分割し、該前側支持プレート(71b)及び後側支持プレート(71d)を排塵処理胴(71)に対して着脱自在な構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等に搭載される脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインの脱穀装置の扱室には、刈取装置で刈り取った穀稈がフィードチェンにより搬送して挿入され、穀稈は扱室に軸架された扱胴の表面に多数設けられた扱歯と扱網との相互作用により脱穀される。穀稈から分離された被処理物(穀粒や藁屑)は扱網を通過して、選別室の揺動棚で受け止められ唐箕からの送風による送風選別や揺動棚の揺動選別などによって二番穀粒や藁屑などを分離して穀粒のみをグレンタンクに搬送する。
【0003】
二番穀粒は二番処理室に送られ二番処理胴により穀粒、枝梗粒などに分離され、再び揺動棚に戻して穀粒、二番穀粒、藁屑などに分離される。扱室で発生した藁屑など短尺のものは排塵処理室に搬送され、排塵処理胴により処理される。脱穀装置の扱室の終端に到達した脱穀された残りの穀稈で長尺のままのものは、排藁搬送装置により搬送され、脱穀装置の後部の排藁処理室に投入された後、圃場に放出される。
【0004】
そして、下記の特許文献1には、排塵処理胴の外周に連続した螺旋体とこの螺旋体の外周縁部に取り付けた処理歯とからなる螺旋処理歯を取り付け、この排塵処理胴左側半周を取り囲むように、格子状の排塵受網27を設けた排塵処理室が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−124783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の排塵処理室の排塵処理胴は、螺旋処理歯を一体的に取り付けた構成であり、被処理物に対する打撃作用が小さいために、塊上の被処理物を解す作用が小さく、藁屑とともに穀粒が機外に放出される収量ロスが増大する虞がある。また、螺旋処理歯が摩耗すると排塵処理胴を交換しなければならず、交換コストが大きい。
【0007】
そこで、本発明は、排塵処理効率を高めるとともにメンテナンス性を向上させた脱穀装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、扱室(66)の後部に連通する排塵処理室(80)を設けた脱穀装置において、前記排塵処理室(80)に軸支した排塵処理胴(71)の外周面に多数の棒状の排塵処理歯(71a)を突出させて設け、該排塵処理銅(71)の周囲を覆う排塵処理胴枠(72)の内側に板状の送りガイド(81)を設け、該送りガイド(81)を、排塵処理胴(71)の回転方向上手側の部位に対して排塵処理胴(71)の回転方向下手側の部位が後方に位置するように傾斜させて配置したことを特徴とする脱穀装置とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記排塵処理歯(71a)を排塵処理胴(71)の外周面に取り付けるための支持プレートを、排塵処理胴(71)の前部外周に備える前側支持プレート(71b)と排塵処理胴(71)の後部外周に備える後側支持プレート(71d)とに分割し、該前側支持プレート(71b)及び後側支持プレート(71d)を排塵処理胴(71)に対して着脱自在な構成とした請求項1に記載の脱穀装置とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記排塵処理歯(71a)の設置間隔を、排塵処理胴(71)の前部での設置間隔よりも排塵処理胴(71)の後部での設置間隔のほうが広くなるように設定した請求項1または請求項2に記載の脱穀装置とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記排塵処理歯(71a)を排塵処理胴(71)の回転方向に対して後退角を持たせて立設した請求項1または請求項2または請求項3記載の脱穀装置とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記排塵処理胴(71)の後部に設けた排塵処理歯(71a)の排塵処理胴(71)の回転方向に対する後退角を、排塵処理胴(71)の前部に設けた排塵処理歯(71a)の後退角よりも大きく設定した請求項4に記載の脱穀装置とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、排塵処理歯(71a)によって被処理物に打撃作用を与えながら、送りガイド(81)で排塵処理室(80)の後方へ向けて送ることで、排塵処理作用を向上させることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明による効果に加えて、前側支持プレート(71b)及び後側支持プレート(71d)に複数の排塵処理歯(71a)を夫々設けているので、磨耗した排塵処理歯(71a)をまとめて交換することができる。特に、被処理物による負荷が大きい排塵処理室(80)前部の排塵処理歯(71a)を前側支持プレート(71b)ごと交換できるので、メンテナンスを容易化することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の発明による効果に加えて、排塵処理胴(71)の前部で被処理物を解し、排塵処理胴(71)の後部では被処理物の送り出しが円滑になって、排塵処理室(80)内の詰まりを抑制できる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1または請求項2または請求項3記載の発明による効果に加えて、被処理物の排塵処理歯(71a)への絡みつきを防止し、排塵処理室(80)内の詰まりを抑制することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4記載の発明による効果に加えて、被処理物の排塵処理歯(71a)への絡みつきによる排塵処理室(80)の詰りを更に効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】穀類の収穫作業を行うコンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの脱穀装置の側面断面図である。
【図4】コンバインの脱穀装置の平断面図である。
【図5】排塵処理室の斜視図である。
【図6】排塵処理室の側面図である。
【図7】汎用コンバインの側断面図である。
【図8】汎用コンバインの選別室の平断面図である。
【図9】第一シーブの拡大斜視図である。
【図10】別実施例の汎用コンバインの選別室の平断面図である。
【図11】別実施例の第一シーブの拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
図1には本実施例の穀類の収穫作業を行うコンバインの左側面図を示し、図2にはコンバインの平面図を、図3にはコンバインの脱穀装置の拡大右側断面図を示す。
【0020】
なお、本実施の形態ではコンバインの前進方向に向かって前側と後側をそれぞれ前、後といい、左側と右側をそれぞれ左、右ということにする。
図1ないし図2に示すコンバイン1の走行フレーム2の下部には、ゴムなどの可撓性材料を素材として無端帯状に成型した左右一対のクローラ4を持ち、乾田はもちろんのこと、湿田においてもクローラ4が若干沈下するだけで自由に走行できる構成の走行装置3を備え、走行フレーム2の前部には刈取装置6を搭載し、走行フレーム2の上部には図示しないエンジンならびに脱穀装置15、操縦席20およびグレンタンク30を搭載する。
【0021】
刈取装置6は、図示しない刈取昇降シリンダの伸縮作用により刈取装置6全体を昇降して、圃場に植生する穀稈を所定の高さで刈取りが出来る構成としている。刈取装置6の前端下部に分草具7を、その背後に傾斜状にした穀稈引起し装置8を、その後方底部には刈刃(図示せず)を配置している。刈刃と脱穀装置15のフィードチェン14の始端部との間に、図示しない前部搬送装置、扱深さ調節装置、供給搬送装置などの搬送装置9を順次穀稈の受継搬送と扱深さ調節とができるように配置している。
【0022】
コンバイン1の刈取装置6の作動は次のように行われる。まず、エンジンを始動して変速用、操向用などの操作レバーをコンバイン1が前進するように操作し、刈取・脱穀クラッチ(図示せず)を入り操作して機体の回転各部を伝動しながら、走行フレーム2を前進走行させると、刈取、脱穀作業が開始される。圃場に植立する穀稈は、刈取装置6の前端下部にある分草具7によって分草作用を受け、次いで穀稈引起し装置8の引起し作用によって倒伏状態にあれば直立状態に引起こされ、穀稈の株元が刈刃に達して刈取られ、前部搬送装置に掻込まれて後方に搬送され、扱深さ調節装置、供給搬送装置に受け継がれて順次連続状態で後部上方に搬送される。
【0023】
穀稈は供給搬送装置からフィードチェン14と該フィードチェン14の上側に配置され、フィードチェン14に向けて弾性付勢されながら機体に支持された挟扼杆16との間の始端部側に受け継がれ、脱穀装置15に供給される。脱穀装置15は、上側に扱胴69を軸架した扱室66を前板56と後板57の間に配置し、扱室66の下側に選別室50を一体的に設け、供給された刈取穀稈を脱穀、選別する。
【0024】
脱穀装置15に供給された穀稈は、後で詳細に説明するが、主脱穀部である扱室66に挿入され、扱室66に軸架され回転する扱胴69の多数の扱歯69aと、フィードチェン14による移送と、扱網74との相互作用により脱穀され、被処理物(穀粒や藁屑)は脱穀装置15内の選別室50の揺動棚51で受け止められ、上下前後方向に揺動する揺動棚51上を移動しながら、唐箕79からの送風を受けて風力選別され、比重の重い穀粒はシーブ53、54および選別網63を通過し、一番螺旋65から、搬送螺旋を内蔵している一番揚穀筒73(図4)を経てグレンタンク30へ搬送され、一時貯留される。一番揚穀筒73の長手方向の軸芯上にグレンタンク30の籾排出口を設けている。
【0025】
脱穀装置15の扱室66の終端に到達した脱穀された残りの穀稈で長尺のままのものは、フィードチェン14に挟持されて搬送され、脱穀装置15の後部の排藁処理室82に投入されて圃場に放出される。排藁処理室82内には排藁カッターが設けられており、排藁カッターにより切断された穀稈は、圃場に放出される。
【0026】
グレンタンク30内の底部に穀粒移送用のグレンタンク螺旋(図示せず)を設け、グレンタンク螺旋を駆動する螺旋駆動軸に縦オーガ18および横オーガ19からなる排出オーガを連接し、グレンタンク30内に貯留した穀粒を排出オーガ排出口からコンバイン1の外部に排出する。
【0027】
刈取装置6で刈り取った穀稈は刈取装置6に装着された穀稈搬送、調節装置で扱深さが調節され、脱穀装置15の主脱穀部である扱室66内に挿入される。扱室66に軸架された扱胴69は、その表面に多数の扱歯69aが設けられており、図示しない駆動機構により、エンジンからの動力により、図4の矢印W方向に回転する。扱室66に挿入された穀粒の付いた穀稈は、移動するフィードチェン14により図4の矢印A方向に移送されながら、矢印W方向に回転する扱胴69の扱歯69aと扱網74との相互作用により脱穀される。穀稈から分離された被処理物(穀粒や藁屑)は扱網74を通過して、揺動棚51で受け止められる。
【0028】
揺動棚51は、扱室66の扱網74の下方に配置した移送棚52とその後方に配置した上方の第1チャフシーブ53、第2チャフシーブ54とその下方の選別網63と最後端部に配置したストローラック62などから構成されている。
【0029】
第1チャフシーブ53と第2チャフシーブ54は、揺動しながら各シーブ間から被処理物を漏下させ、唐箕79からの送風により風力選別する点で共通しているが、被処理物の搬送方向前方側の第1チャフシーブ53の方が後方側にある第2チャフシーブ54に比べて各シーブの大きさが小さく、各シーブ間の距離が多少狭い構成である。被処理物の搬送方向前方側では、被処理物中における単粒の含有率が高く、藁屑の漏下を抑えながら単粒だけを漏下させ、藁屑をより後方へ移送するために、このような構成としている。
【0030】
また、第1チャフシーブ53の上方に、揺動棚51上の被処理物を拡散させる拡散ガイド83を、被処理物の搬送方向に向かって拡散ガイド88の前端が前記移送棚52の上方に位置するように設けている。
【0031】
そして移送棚52には複数個のラック状の選別板52aを備えており、移送棚52は第1チャフシーブ53の前方に配置されている。移送棚52は扱胴69の下方に配置して二番処理物を受け止め得る構成になっている。
【0032】
扱網74(図3)の前方の領域で漏下する脱穀初期に脱粒した穀粒は単粒であり夾雑物も含んでいないので第1チャフシーブ53や第2チャフシーブ54上で粗選別する必要が無く、直接選別網63で後述する唐箕79からの送風により風選することができ、これらチャフシーブ53、54の負荷を軽くし、能率的な脱穀が可能となる。
【0033】
また、揺動棚51は図示しない揺動棚駆動機構の作動により上下前後方向に揺動するので、被処理物は矢印D方向(図3)に移動しながら、揺動棚51上に漏下した比重の重い穀粒は選別網63を矢印E方向に通過し、一番棚板64で集積され、一番螺旋65から一番揚穀筒73を経てグレンタンク30へ搬送される。グレンタンク30に貯留された穀粒は、縦オーガ18と横オーガ19を経由してコンバイン1の外部へ搬送される。
【0034】
揺動棚51の上の被処理物のうち軽量のものは、揺動棚51の揺動作用と唐箕79のファン79aによる送風に吹き飛ばされて揺動棚51から第1チャフシーブ53と第2チャフシーブ54に向けて矢印D方向に移動し、ストローラック62の上で大きさの小さい二番穀粒は矢印G方向に漏下して二番棚板85上に集められ、二番螺旋86で二番揚穀筒(図示せず)へ搬送される。
【0035】
二番穀粒(二番物ということがある)は、正常な穀粒、枝梗粒、藁屑などの混合物であり、二番揚穀筒の中を二番揚穀筒螺旋(図示せず)により揚送されて、二番処理室入口から二番処理室67の上方へ放出される。
【0036】
二番処理室67に軸架する二番処理胴70はエンジンからの動力を伝動する駆動機構により、図4の矢印J方向に回転する。二番穀粒は二番処理胴70に植設してある多数の処理歯70aに衝突しながら矢印I方向(図4)に進行する間に二番穀粒の分離と枝梗粒の枝梗の除去を行い、被処理物の一部は二番処理胴70の下方に設けられた二番処理網(図示省略)を通り抜けて選別室50に漏下し、被処理物の大部分は移送棚52から第1チャフシーブ53と第2チャフシーブ54方向に送られ、穀粒は第1チャフシーブ53と第2チャフシーブ54と選別網63を通り、一番螺旋65に集められる。
【0037】
このように二番物を移送棚52上に回収して第1チャフシーブ53、第2チャフシーブ54による再処理をすることにより、穀粒と藁屑との分離が良好になる。
扱室66を図4の矢印A方向に進行し、扱室66の終端に到達した被処理物の中の脱穀された穀稈で長尺のままのものは、図4に示す矢印A1方向に搬送され、排藁処理室82に投入される。
【0038】
また、扱室66の扱胴69による被処理物搬送方向終端部側に到達した被処理物の中で、藁屑など短尺のものは、扱室66の扱胴69による被処理物の搬送方向終端部と排塵処理室68の排塵処理胴71による被処理物の搬送方向始端部とを連通する連通口75から矢印A2(図4)方向に投入されて、扱室66からの取り込みを良好にする棒状の排塵処理歯71aの作用により排塵処理室68に入り、排塵処理室68では回転する排塵処理胴71の排塵処理歯71aと排塵処理室枠72の上側から底部にかけて送り方向へ傾斜して立設する板状送りガイド81により矢印K方向(図3)に搬送されながら処理される。
【0039】
なお、排塵処理胴71は、前記二番処理胴70と一体的に形成されており、回転方向は二番処理胴70と同一方向である。
排塵処理歯71aは、周方向には一定間隔で搬送方向には上手が狭く下手が広く間隔に配設することで送り抵抗を軽減している。この排塵処理歯71aは前後に分割した支持プレート(前側支持プレート71b,後側支持プレート71d)に溶接等により一体化されており、前側支持プレート71b及び後側支持プレート71dを取付ネジ部71cで排塵処理胴71の外周面に締結している。そのため、排塵処理負荷により磨耗しやすい前側支持プレート71bのみを交換したり、前側支持プレート71bと後側支持プレート71dを相互に交換したりすることができ、メンテナンスが容易である。
【0040】
なお、排塵処理歯71aを周方向3本として送り方向広い間隔と狭い間隔のものを周方向等間隔に配置する構成でも良く、排塵処理歯71aを排塵処理胴71に対して送り方向から僅かに後方へ倒した後退角を持たせて送り抵抗を弱くしても良く、その際に排塵処理胴71の後端近くの排塵処理歯71aの後退角を他の部分の排塵処理歯71aよりも大きくして被処理物の持ち回りを少なくする。
【0041】
また、送りガイド81は、連通口75に対抗する位置では他の位置よりも送り方向へ寝かせて被処理物の取り込みを良くしても良い。
さらに、排塵処理室枠72に設ける各送りガイド81を連結して送り傾斜角度を一体的に変更可能にしたり、連通口75側のみを固定し他を一体的に変更可能にしても良い。
【0042】
格子状の排塵処理室枠72における排塵処理胴71の下側及び扱室66側の外周の部位は、排塵処理室68の濾過体を構成している。
排塵処理室枠72の濾過体部分(左右方向で扱室66側)と排塵処理歯71aの回転軌跡との間隔は、濾過体が設けられていない左右方向で扱室66とは反対側の部位と排塵処理歯71aの回転軌跡との間隔よりも狭く、被処理物の漏下を促進する。
【0043】
前記排塵処理室枠72の後端は、排藁処理室82の下方に通じる排塵シュートが設けられ、排塵処理室68の後端部に達した被処理物を脱穀装置15の外部へ排出する。
排塵処理室68に入った少量の穀粒を含む藁屑を主体とする被処理物の中の漏下物(穀粒)は排塵処理室枠72から揺動棚51上に漏下し、揺動棚51に設けられたストローラック62に誘導されて二番棚板85から二番揚穀筒を経由して二番処理室67に送られる。
【0044】
なお、同軸上にある二番処理胴70と排塵処理胴71の駆動は、図示しないがエンジンからの駆動力がプーリを介して伝動して行われる。
図3に示すように、脱穀装置15の後部に被処理物を吸引するための吸引ファン87を設け、排塵処理室68を含む脱穀装置15内で発生する排塵のうち、比重の軽い藁屑、枝梗および塵埃を含む空気を吸引ファン87の回転による吸引風で吸引し、第3排塵口88から矢印L方向へ吹き出して、コンバイン1の外部へ放出する。
【0045】
一方、吸引ファン91の回転による送風で吸引されない被処理物は揺動棚51の終端部であるストローラック62の後端に設けられ、脱穀装置15の後壁15aに形成された第2排塵口89からコンバイン1の外部に排出される。
【0046】
揺動棚51上を後方へ移送されてきた藁屑でチャフシーブ53,54やストローラック62の目合いから濾過しないものは、揺動棚51の揺動やストローラック62の移送作用によって第2排塵口103から脱穀装置15の外部に排出されるが、この藁屑中には穀粒がわずかに含まれることがあり、このように藁屑とともにコンバイン1の外部に排出される穀粒を三番穀粒と言い、三番穀粒が脱穀装置15の外部に排出されることを三番ロス(三番損失)、三番穀粒の回収ロスなどと言う。
【0047】
図7は、汎用型コンバイン100を示し、クローラ90からなる走行装置91を装備した車台92上に、茎稈供給口を前側にした脱穀装置93と操縦席94を設けた操縦部95を左右に搭載し、操縦部95の後側に収穫物を溜めるグレンタンク96を搭載している。
【0048】
車台92の前側には、脱穀装置93と操縦部95を合わせた横幅を持つ刈取掻込ケース97を設け、刈取掻込ケース97には横搬送オーガ98を内装し底部に刈取装置101を設け、この刈取掻込ケース97の茎稈排出口と脱穀装置93の茎稈供給口をバーコンベア99を内装したフィダーケース116で連結している。刈取掻込ケース97の前上部には掻込みリール102を設けている。
【0049】
脱穀装置93は、上部に螺旋式扱胴114を前後方向に軸架して下側に第一受網103と第二受網104を張設した扱室109を配置し、その下側には、揺動選別棚105を設け、更に、その下方に、選別方向の上手側から順番に、唐箕106、一番移送螺旋110、二番移送螺旋111を軸装し、後部下方に排塵口112を開口した選別室113を設けて構成し、螺旋式扱胴94の前下方に設ける茎稈供給口から供給される収穫物を脱穀しその穀粒を選別しグレンタンク96に溜める。
【0050】
操縦部95には、オペレータが搭乗して座る操縦席94と走行装置91の操縦を行う操縦装置と脱穀装置93の駆動断続を行う脱穀制御装置を設けている。
グレンタンク96は、脱穀装置93で選別した穀粒を一時的に溜める中空ケースで、溜めた穀粒を排出オーガ115でトラックの穀粒タンクへ移送するようにしている。
【0051】
前記揺動選別棚105は、受棚121と第一シーブ122と第二シーブ123と篩線124で構成している。
受棚121は、扱網74を通って落下する被処理物を受ける平板で、上面に被処理物を第一シーブ122の左右中央へ案内する第一ガイドプレート130を設けている。
【0052】
第一シーブ122と第二シーブ123は、帯鉄を立てたシーブ117を前後方向に並設した構成で粒状物が各シーブ117の隙間から落下するようにしたもので、各シーブ117の隙間に入り込んで詰まる茎片等を除去するようにスクレーパ118を横方向一定間隔で上方から差し込んで設けて、各スクレーパ118をその上側で前後方向一定間隔で設ける連結体131で連結して各スクレーパ118が一体で左右動するように、揺動アーム128に連結した第一アーム125と、揺動アーム128と連結アーム127と第二揺動アーム132と第二アーム126で、それぞれ第一シーブ122と第二シーブ123のスクレーパ118を左右に揺動する。 揺動アーム128は、駆動モータに連結したワイヤ129で揺動駆動する。
【0053】
各スクレーパ118を連結する連結体131は各シーブ117から豆類の粒径以上の間隔S1で浮かせて設け、各シーブ117上で豆類の後方への飛び跳ねを連結体131で防ぎ、連結体131の下を通っての後方移送は妨げない。
【0054】
唐箕106からの送風は、第一シーブ122と第二シーブ123に向かう選別風K1の他に受棚121上に回り込む乾燥風K2が有って、受棚121や第一シー部122と第二シーブ123上の被処理物を乾燥して選別分離を良くする。
【0055】
なお、収穫物が蕎麦や金時豆や菜種など脱粒性が良い収穫物の場合は、スクレーパ118を第一シーブ122にのみ設けるだけでも良い。
なお、図10と図11に示す如く、第一シーブ122上において、被処理物を後方へ向かって斜めに隣のスクレーパ118へ案内する第二ガイドプレート120を設けて、豆類の後方への飛び跳ねを防ぎながら莢を後方へ流れ易くすることも良い。第二ガイドプレート120の後端は隣のスクレーパ118まで豆類の径より広い間隔を持たせている。
【符号の説明】
【0056】
66 扱室
71 排塵処理胴
71a 排塵処理歯
71b 前側支持プレート
71d 後側支持プレート
80 排塵処理室
81 送りガイド
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等に搭載される脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインの脱穀装置の扱室には、刈取装置で刈り取った穀稈がフィードチェンにより搬送して挿入され、穀稈は扱室に軸架された扱胴の表面に多数設けられた扱歯と扱網との相互作用により脱穀される。穀稈から分離された被処理物(穀粒や藁屑)は扱網を通過して、選別室の揺動棚で受け止められ唐箕からの送風による送風選別や揺動棚の揺動選別などによって二番穀粒や藁屑などを分離して穀粒のみをグレンタンクに搬送する。
【0003】
二番穀粒は二番処理室に送られ二番処理胴により穀粒、枝梗粒などに分離され、再び揺動棚に戻して穀粒、二番穀粒、藁屑などに分離される。扱室で発生した藁屑など短尺のものは排塵処理室に搬送され、排塵処理胴により処理される。脱穀装置の扱室の終端に到達した脱穀された残りの穀稈で長尺のままのものは、排藁搬送装置により搬送され、脱穀装置の後部の排藁処理室に投入された後、圃場に放出される。
【0004】
そして、下記の特許文献1には、排塵処理胴の外周に連続した螺旋体とこの螺旋体の外周縁部に取り付けた処理歯とからなる螺旋処理歯を取り付け、この排塵処理胴左側半周を取り囲むように、格子状の排塵受網27を設けた排塵処理室が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−124783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の排塵処理室の排塵処理胴は、螺旋処理歯を一体的に取り付けた構成であり、被処理物に対する打撃作用が小さいために、塊上の被処理物を解す作用が小さく、藁屑とともに穀粒が機外に放出される収量ロスが増大する虞がある。また、螺旋処理歯が摩耗すると排塵処理胴を交換しなければならず、交換コストが大きい。
【0007】
そこで、本発明は、排塵処理効率を高めるとともにメンテナンス性を向上させた脱穀装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、扱室(66)の後部に連通する排塵処理室(80)を設けた脱穀装置において、前記排塵処理室(80)に軸支した排塵処理胴(71)の外周面に多数の棒状の排塵処理歯(71a)を突出させて設け、該排塵処理銅(71)の周囲を覆う排塵処理胴枠(72)の内側に板状の送りガイド(81)を設け、該送りガイド(81)を、排塵処理胴(71)の回転方向上手側の部位に対して排塵処理胴(71)の回転方向下手側の部位が後方に位置するように傾斜させて配置したことを特徴とする脱穀装置とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記排塵処理歯(71a)を排塵処理胴(71)の外周面に取り付けるための支持プレートを、排塵処理胴(71)の前部外周に備える前側支持プレート(71b)と排塵処理胴(71)の後部外周に備える後側支持プレート(71d)とに分割し、該前側支持プレート(71b)及び後側支持プレート(71d)を排塵処理胴(71)に対して着脱自在な構成とした請求項1に記載の脱穀装置とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記排塵処理歯(71a)の設置間隔を、排塵処理胴(71)の前部での設置間隔よりも排塵処理胴(71)の後部での設置間隔のほうが広くなるように設定した請求項1または請求項2に記載の脱穀装置とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記排塵処理歯(71a)を排塵処理胴(71)の回転方向に対して後退角を持たせて立設した請求項1または請求項2または請求項3記載の脱穀装置とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記排塵処理胴(71)の後部に設けた排塵処理歯(71a)の排塵処理胴(71)の回転方向に対する後退角を、排塵処理胴(71)の前部に設けた排塵処理歯(71a)の後退角よりも大きく設定した請求項4に記載の脱穀装置とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、排塵処理歯(71a)によって被処理物に打撃作用を与えながら、送りガイド(81)で排塵処理室(80)の後方へ向けて送ることで、排塵処理作用を向上させることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明による効果に加えて、前側支持プレート(71b)及び後側支持プレート(71d)に複数の排塵処理歯(71a)を夫々設けているので、磨耗した排塵処理歯(71a)をまとめて交換することができる。特に、被処理物による負荷が大きい排塵処理室(80)前部の排塵処理歯(71a)を前側支持プレート(71b)ごと交換できるので、メンテナンスを容易化することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の発明による効果に加えて、排塵処理胴(71)の前部で被処理物を解し、排塵処理胴(71)の後部では被処理物の送り出しが円滑になって、排塵処理室(80)内の詰まりを抑制できる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1または請求項2または請求項3記載の発明による効果に加えて、被処理物の排塵処理歯(71a)への絡みつきを防止し、排塵処理室(80)内の詰まりを抑制することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4記載の発明による効果に加えて、被処理物の排塵処理歯(71a)への絡みつきによる排塵処理室(80)の詰りを更に効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】穀類の収穫作業を行うコンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの脱穀装置の側面断面図である。
【図4】コンバインの脱穀装置の平断面図である。
【図5】排塵処理室の斜視図である。
【図6】排塵処理室の側面図である。
【図7】汎用コンバインの側断面図である。
【図8】汎用コンバインの選別室の平断面図である。
【図9】第一シーブの拡大斜視図である。
【図10】別実施例の汎用コンバインの選別室の平断面図である。
【図11】別実施例の第一シーブの拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
図1には本実施例の穀類の収穫作業を行うコンバインの左側面図を示し、図2にはコンバインの平面図を、図3にはコンバインの脱穀装置の拡大右側断面図を示す。
【0020】
なお、本実施の形態ではコンバインの前進方向に向かって前側と後側をそれぞれ前、後といい、左側と右側をそれぞれ左、右ということにする。
図1ないし図2に示すコンバイン1の走行フレーム2の下部には、ゴムなどの可撓性材料を素材として無端帯状に成型した左右一対のクローラ4を持ち、乾田はもちろんのこと、湿田においてもクローラ4が若干沈下するだけで自由に走行できる構成の走行装置3を備え、走行フレーム2の前部には刈取装置6を搭載し、走行フレーム2の上部には図示しないエンジンならびに脱穀装置15、操縦席20およびグレンタンク30を搭載する。
【0021】
刈取装置6は、図示しない刈取昇降シリンダの伸縮作用により刈取装置6全体を昇降して、圃場に植生する穀稈を所定の高さで刈取りが出来る構成としている。刈取装置6の前端下部に分草具7を、その背後に傾斜状にした穀稈引起し装置8を、その後方底部には刈刃(図示せず)を配置している。刈刃と脱穀装置15のフィードチェン14の始端部との間に、図示しない前部搬送装置、扱深さ調節装置、供給搬送装置などの搬送装置9を順次穀稈の受継搬送と扱深さ調節とができるように配置している。
【0022】
コンバイン1の刈取装置6の作動は次のように行われる。まず、エンジンを始動して変速用、操向用などの操作レバーをコンバイン1が前進するように操作し、刈取・脱穀クラッチ(図示せず)を入り操作して機体の回転各部を伝動しながら、走行フレーム2を前進走行させると、刈取、脱穀作業が開始される。圃場に植立する穀稈は、刈取装置6の前端下部にある分草具7によって分草作用を受け、次いで穀稈引起し装置8の引起し作用によって倒伏状態にあれば直立状態に引起こされ、穀稈の株元が刈刃に達して刈取られ、前部搬送装置に掻込まれて後方に搬送され、扱深さ調節装置、供給搬送装置に受け継がれて順次連続状態で後部上方に搬送される。
【0023】
穀稈は供給搬送装置からフィードチェン14と該フィードチェン14の上側に配置され、フィードチェン14に向けて弾性付勢されながら機体に支持された挟扼杆16との間の始端部側に受け継がれ、脱穀装置15に供給される。脱穀装置15は、上側に扱胴69を軸架した扱室66を前板56と後板57の間に配置し、扱室66の下側に選別室50を一体的に設け、供給された刈取穀稈を脱穀、選別する。
【0024】
脱穀装置15に供給された穀稈は、後で詳細に説明するが、主脱穀部である扱室66に挿入され、扱室66に軸架され回転する扱胴69の多数の扱歯69aと、フィードチェン14による移送と、扱網74との相互作用により脱穀され、被処理物(穀粒や藁屑)は脱穀装置15内の選別室50の揺動棚51で受け止められ、上下前後方向に揺動する揺動棚51上を移動しながら、唐箕79からの送風を受けて風力選別され、比重の重い穀粒はシーブ53、54および選別網63を通過し、一番螺旋65から、搬送螺旋を内蔵している一番揚穀筒73(図4)を経てグレンタンク30へ搬送され、一時貯留される。一番揚穀筒73の長手方向の軸芯上にグレンタンク30の籾排出口を設けている。
【0025】
脱穀装置15の扱室66の終端に到達した脱穀された残りの穀稈で長尺のままのものは、フィードチェン14に挟持されて搬送され、脱穀装置15の後部の排藁処理室82に投入されて圃場に放出される。排藁処理室82内には排藁カッターが設けられており、排藁カッターにより切断された穀稈は、圃場に放出される。
【0026】
グレンタンク30内の底部に穀粒移送用のグレンタンク螺旋(図示せず)を設け、グレンタンク螺旋を駆動する螺旋駆動軸に縦オーガ18および横オーガ19からなる排出オーガを連接し、グレンタンク30内に貯留した穀粒を排出オーガ排出口からコンバイン1の外部に排出する。
【0027】
刈取装置6で刈り取った穀稈は刈取装置6に装着された穀稈搬送、調節装置で扱深さが調節され、脱穀装置15の主脱穀部である扱室66内に挿入される。扱室66に軸架された扱胴69は、その表面に多数の扱歯69aが設けられており、図示しない駆動機構により、エンジンからの動力により、図4の矢印W方向に回転する。扱室66に挿入された穀粒の付いた穀稈は、移動するフィードチェン14により図4の矢印A方向に移送されながら、矢印W方向に回転する扱胴69の扱歯69aと扱網74との相互作用により脱穀される。穀稈から分離された被処理物(穀粒や藁屑)は扱網74を通過して、揺動棚51で受け止められる。
【0028】
揺動棚51は、扱室66の扱網74の下方に配置した移送棚52とその後方に配置した上方の第1チャフシーブ53、第2チャフシーブ54とその下方の選別網63と最後端部に配置したストローラック62などから構成されている。
【0029】
第1チャフシーブ53と第2チャフシーブ54は、揺動しながら各シーブ間から被処理物を漏下させ、唐箕79からの送風により風力選別する点で共通しているが、被処理物の搬送方向前方側の第1チャフシーブ53の方が後方側にある第2チャフシーブ54に比べて各シーブの大きさが小さく、各シーブ間の距離が多少狭い構成である。被処理物の搬送方向前方側では、被処理物中における単粒の含有率が高く、藁屑の漏下を抑えながら単粒だけを漏下させ、藁屑をより後方へ移送するために、このような構成としている。
【0030】
また、第1チャフシーブ53の上方に、揺動棚51上の被処理物を拡散させる拡散ガイド83を、被処理物の搬送方向に向かって拡散ガイド88の前端が前記移送棚52の上方に位置するように設けている。
【0031】
そして移送棚52には複数個のラック状の選別板52aを備えており、移送棚52は第1チャフシーブ53の前方に配置されている。移送棚52は扱胴69の下方に配置して二番処理物を受け止め得る構成になっている。
【0032】
扱網74(図3)の前方の領域で漏下する脱穀初期に脱粒した穀粒は単粒であり夾雑物も含んでいないので第1チャフシーブ53や第2チャフシーブ54上で粗選別する必要が無く、直接選別網63で後述する唐箕79からの送風により風選することができ、これらチャフシーブ53、54の負荷を軽くし、能率的な脱穀が可能となる。
【0033】
また、揺動棚51は図示しない揺動棚駆動機構の作動により上下前後方向に揺動するので、被処理物は矢印D方向(図3)に移動しながら、揺動棚51上に漏下した比重の重い穀粒は選別網63を矢印E方向に通過し、一番棚板64で集積され、一番螺旋65から一番揚穀筒73を経てグレンタンク30へ搬送される。グレンタンク30に貯留された穀粒は、縦オーガ18と横オーガ19を経由してコンバイン1の外部へ搬送される。
【0034】
揺動棚51の上の被処理物のうち軽量のものは、揺動棚51の揺動作用と唐箕79のファン79aによる送風に吹き飛ばされて揺動棚51から第1チャフシーブ53と第2チャフシーブ54に向けて矢印D方向に移動し、ストローラック62の上で大きさの小さい二番穀粒は矢印G方向に漏下して二番棚板85上に集められ、二番螺旋86で二番揚穀筒(図示せず)へ搬送される。
【0035】
二番穀粒(二番物ということがある)は、正常な穀粒、枝梗粒、藁屑などの混合物であり、二番揚穀筒の中を二番揚穀筒螺旋(図示せず)により揚送されて、二番処理室入口から二番処理室67の上方へ放出される。
【0036】
二番処理室67に軸架する二番処理胴70はエンジンからの動力を伝動する駆動機構により、図4の矢印J方向に回転する。二番穀粒は二番処理胴70に植設してある多数の処理歯70aに衝突しながら矢印I方向(図4)に進行する間に二番穀粒の分離と枝梗粒の枝梗の除去を行い、被処理物の一部は二番処理胴70の下方に設けられた二番処理網(図示省略)を通り抜けて選別室50に漏下し、被処理物の大部分は移送棚52から第1チャフシーブ53と第2チャフシーブ54方向に送られ、穀粒は第1チャフシーブ53と第2チャフシーブ54と選別網63を通り、一番螺旋65に集められる。
【0037】
このように二番物を移送棚52上に回収して第1チャフシーブ53、第2チャフシーブ54による再処理をすることにより、穀粒と藁屑との分離が良好になる。
扱室66を図4の矢印A方向に進行し、扱室66の終端に到達した被処理物の中の脱穀された穀稈で長尺のままのものは、図4に示す矢印A1方向に搬送され、排藁処理室82に投入される。
【0038】
また、扱室66の扱胴69による被処理物搬送方向終端部側に到達した被処理物の中で、藁屑など短尺のものは、扱室66の扱胴69による被処理物の搬送方向終端部と排塵処理室68の排塵処理胴71による被処理物の搬送方向始端部とを連通する連通口75から矢印A2(図4)方向に投入されて、扱室66からの取り込みを良好にする棒状の排塵処理歯71aの作用により排塵処理室68に入り、排塵処理室68では回転する排塵処理胴71の排塵処理歯71aと排塵処理室枠72の上側から底部にかけて送り方向へ傾斜して立設する板状送りガイド81により矢印K方向(図3)に搬送されながら処理される。
【0039】
なお、排塵処理胴71は、前記二番処理胴70と一体的に形成されており、回転方向は二番処理胴70と同一方向である。
排塵処理歯71aは、周方向には一定間隔で搬送方向には上手が狭く下手が広く間隔に配設することで送り抵抗を軽減している。この排塵処理歯71aは前後に分割した支持プレート(前側支持プレート71b,後側支持プレート71d)に溶接等により一体化されており、前側支持プレート71b及び後側支持プレート71dを取付ネジ部71cで排塵処理胴71の外周面に締結している。そのため、排塵処理負荷により磨耗しやすい前側支持プレート71bのみを交換したり、前側支持プレート71bと後側支持プレート71dを相互に交換したりすることができ、メンテナンスが容易である。
【0040】
なお、排塵処理歯71aを周方向3本として送り方向広い間隔と狭い間隔のものを周方向等間隔に配置する構成でも良く、排塵処理歯71aを排塵処理胴71に対して送り方向から僅かに後方へ倒した後退角を持たせて送り抵抗を弱くしても良く、その際に排塵処理胴71の後端近くの排塵処理歯71aの後退角を他の部分の排塵処理歯71aよりも大きくして被処理物の持ち回りを少なくする。
【0041】
また、送りガイド81は、連通口75に対抗する位置では他の位置よりも送り方向へ寝かせて被処理物の取り込みを良くしても良い。
さらに、排塵処理室枠72に設ける各送りガイド81を連結して送り傾斜角度を一体的に変更可能にしたり、連通口75側のみを固定し他を一体的に変更可能にしても良い。
【0042】
格子状の排塵処理室枠72における排塵処理胴71の下側及び扱室66側の外周の部位は、排塵処理室68の濾過体を構成している。
排塵処理室枠72の濾過体部分(左右方向で扱室66側)と排塵処理歯71aの回転軌跡との間隔は、濾過体が設けられていない左右方向で扱室66とは反対側の部位と排塵処理歯71aの回転軌跡との間隔よりも狭く、被処理物の漏下を促進する。
【0043】
前記排塵処理室枠72の後端は、排藁処理室82の下方に通じる排塵シュートが設けられ、排塵処理室68の後端部に達した被処理物を脱穀装置15の外部へ排出する。
排塵処理室68に入った少量の穀粒を含む藁屑を主体とする被処理物の中の漏下物(穀粒)は排塵処理室枠72から揺動棚51上に漏下し、揺動棚51に設けられたストローラック62に誘導されて二番棚板85から二番揚穀筒を経由して二番処理室67に送られる。
【0044】
なお、同軸上にある二番処理胴70と排塵処理胴71の駆動は、図示しないがエンジンからの駆動力がプーリを介して伝動して行われる。
図3に示すように、脱穀装置15の後部に被処理物を吸引するための吸引ファン87を設け、排塵処理室68を含む脱穀装置15内で発生する排塵のうち、比重の軽い藁屑、枝梗および塵埃を含む空気を吸引ファン87の回転による吸引風で吸引し、第3排塵口88から矢印L方向へ吹き出して、コンバイン1の外部へ放出する。
【0045】
一方、吸引ファン91の回転による送風で吸引されない被処理物は揺動棚51の終端部であるストローラック62の後端に設けられ、脱穀装置15の後壁15aに形成された第2排塵口89からコンバイン1の外部に排出される。
【0046】
揺動棚51上を後方へ移送されてきた藁屑でチャフシーブ53,54やストローラック62の目合いから濾過しないものは、揺動棚51の揺動やストローラック62の移送作用によって第2排塵口103から脱穀装置15の外部に排出されるが、この藁屑中には穀粒がわずかに含まれることがあり、このように藁屑とともにコンバイン1の外部に排出される穀粒を三番穀粒と言い、三番穀粒が脱穀装置15の外部に排出されることを三番ロス(三番損失)、三番穀粒の回収ロスなどと言う。
【0047】
図7は、汎用型コンバイン100を示し、クローラ90からなる走行装置91を装備した車台92上に、茎稈供給口を前側にした脱穀装置93と操縦席94を設けた操縦部95を左右に搭載し、操縦部95の後側に収穫物を溜めるグレンタンク96を搭載している。
【0048】
車台92の前側には、脱穀装置93と操縦部95を合わせた横幅を持つ刈取掻込ケース97を設け、刈取掻込ケース97には横搬送オーガ98を内装し底部に刈取装置101を設け、この刈取掻込ケース97の茎稈排出口と脱穀装置93の茎稈供給口をバーコンベア99を内装したフィダーケース116で連結している。刈取掻込ケース97の前上部には掻込みリール102を設けている。
【0049】
脱穀装置93は、上部に螺旋式扱胴114を前後方向に軸架して下側に第一受網103と第二受網104を張設した扱室109を配置し、その下側には、揺動選別棚105を設け、更に、その下方に、選別方向の上手側から順番に、唐箕106、一番移送螺旋110、二番移送螺旋111を軸装し、後部下方に排塵口112を開口した選別室113を設けて構成し、螺旋式扱胴94の前下方に設ける茎稈供給口から供給される収穫物を脱穀しその穀粒を選別しグレンタンク96に溜める。
【0050】
操縦部95には、オペレータが搭乗して座る操縦席94と走行装置91の操縦を行う操縦装置と脱穀装置93の駆動断続を行う脱穀制御装置を設けている。
グレンタンク96は、脱穀装置93で選別した穀粒を一時的に溜める中空ケースで、溜めた穀粒を排出オーガ115でトラックの穀粒タンクへ移送するようにしている。
【0051】
前記揺動選別棚105は、受棚121と第一シーブ122と第二シーブ123と篩線124で構成している。
受棚121は、扱網74を通って落下する被処理物を受ける平板で、上面に被処理物を第一シーブ122の左右中央へ案内する第一ガイドプレート130を設けている。
【0052】
第一シーブ122と第二シーブ123は、帯鉄を立てたシーブ117を前後方向に並設した構成で粒状物が各シーブ117の隙間から落下するようにしたもので、各シーブ117の隙間に入り込んで詰まる茎片等を除去するようにスクレーパ118を横方向一定間隔で上方から差し込んで設けて、各スクレーパ118をその上側で前後方向一定間隔で設ける連結体131で連結して各スクレーパ118が一体で左右動するように、揺動アーム128に連結した第一アーム125と、揺動アーム128と連結アーム127と第二揺動アーム132と第二アーム126で、それぞれ第一シーブ122と第二シーブ123のスクレーパ118を左右に揺動する。 揺動アーム128は、駆動モータに連結したワイヤ129で揺動駆動する。
【0053】
各スクレーパ118を連結する連結体131は各シーブ117から豆類の粒径以上の間隔S1で浮かせて設け、各シーブ117上で豆類の後方への飛び跳ねを連結体131で防ぎ、連結体131の下を通っての後方移送は妨げない。
【0054】
唐箕106からの送風は、第一シーブ122と第二シーブ123に向かう選別風K1の他に受棚121上に回り込む乾燥風K2が有って、受棚121や第一シー部122と第二シーブ123上の被処理物を乾燥して選別分離を良くする。
【0055】
なお、収穫物が蕎麦や金時豆や菜種など脱粒性が良い収穫物の場合は、スクレーパ118を第一シーブ122にのみ設けるだけでも良い。
なお、図10と図11に示す如く、第一シーブ122上において、被処理物を後方へ向かって斜めに隣のスクレーパ118へ案内する第二ガイドプレート120を設けて、豆類の後方への飛び跳ねを防ぎながら莢を後方へ流れ易くすることも良い。第二ガイドプレート120の後端は隣のスクレーパ118まで豆類の径より広い間隔を持たせている。
【符号の説明】
【0056】
66 扱室
71 排塵処理胴
71a 排塵処理歯
71b 前側支持プレート
71d 後側支持プレート
80 排塵処理室
81 送りガイド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(66)の後部に連通する排塵処理室(80)を設けた脱穀装置において、前記排塵処理室(80)に軸支した排塵処理胴(71)の外周面に多数の棒状の排塵処理歯(71a)を突出させて設け、該排塵処理銅(71)の周囲を覆う排塵処理胴枠(72)の内側に板状の送りガイド(81)を設け、該送りガイド(81)を、排塵処理胴(71)の回転方向上手側の部位に対して排塵処理胴(71)の回転方向下手側の部位が後方に位置するように傾斜させて配置したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記排塵処理歯(71a)を排塵処理胴(71)の外周面に取り付けるための支持プレートを、排塵処理胴(71)の前部外周に備える前側支持プレート(71b)と排塵処理胴(71)の後部外周に備える後側支持プレート(71d)とに分割し、該前側支持プレート(71b)及び後側支持プレート(71d)を排塵処理胴(71)に対して着脱自在な構成とした請求項1に記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記排塵処理歯(71a)の設置間隔を、排塵処理胴(71)の前部での設置間隔よりも排塵処理胴(71)の後部での設置間隔のほうが広くなるように設定した請求項1または請求項2に記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記排塵処理歯(71a)を排塵処理胴(71)の回転方向に対して後退角を持たせて立設した請求項1または請求項2または請求項3記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記排塵処理胴(71)の後部に設けた排塵処理歯(71a)の排塵処理胴(71)の回転方向に対する後退角を、排塵処理胴(71)の前部に設けた排塵処理歯(71a)の後退角よりも大きく設定した請求項4に記載の脱穀装置。
【請求項1】
扱室(66)の後部に連通する排塵処理室(80)を設けた脱穀装置において、前記排塵処理室(80)に軸支した排塵処理胴(71)の外周面に多数の棒状の排塵処理歯(71a)を突出させて設け、該排塵処理銅(71)の周囲を覆う排塵処理胴枠(72)の内側に板状の送りガイド(81)を設け、該送りガイド(81)を、排塵処理胴(71)の回転方向上手側の部位に対して排塵処理胴(71)の回転方向下手側の部位が後方に位置するように傾斜させて配置したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記排塵処理歯(71a)を排塵処理胴(71)の外周面に取り付けるための支持プレートを、排塵処理胴(71)の前部外周に備える前側支持プレート(71b)と排塵処理胴(71)の後部外周に備える後側支持プレート(71d)とに分割し、該前側支持プレート(71b)及び後側支持プレート(71d)を排塵処理胴(71)に対して着脱自在な構成とした請求項1に記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記排塵処理歯(71a)の設置間隔を、排塵処理胴(71)の前部での設置間隔よりも排塵処理胴(71)の後部での設置間隔のほうが広くなるように設定した請求項1または請求項2に記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記排塵処理歯(71a)を排塵処理胴(71)の回転方向に対して後退角を持たせて立設した請求項1または請求項2または請求項3記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記排塵処理胴(71)の後部に設けた排塵処理歯(71a)の排塵処理胴(71)の回転方向に対する後退角を、排塵処理胴(71)の前部に設けた排塵処理歯(71a)の後退角よりも大きく設定した請求項4に記載の脱穀装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−94075(P2013−94075A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237418(P2011−237418)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]