説明

脱線防止構造、およびこの脱線防止構造が備えられた有機質堆肥化醗酵装置

【課題】 気温の高温化に伴う主レールの伸長による主レールの蛇行変形を防止できる脱線防止構造およびこの脱線防止構造が備えられた有機質堆肥化醗酵装置を提供する。
【手段】 車輪31を走行させる金属製主レール20の長手方向の少なくとも一端部20c(20d)が気温により主レール20の長手方向の伸縮を許容するように開放状態にして主レール20がレール設置構造部100の上100aに備えられ、主レール20には、長手方向に所定間隔をあけて、主レール20の長手方向に延びる長孔60が複数形成されており、各長孔60には、主レール20の幅方向の移動を規制しかつ主レール20の気温による長手方向の伸縮を許容するための嵌め込み具70の一方側70aが嵌入されているとともにこの嵌め込み具70の他方側70bがレール設置構造部100に固定されている。よって、気温変化により主レール20が伸縮しても主レール20の蛇行変形を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気温の高温化に伴う主レールの伸長により、その主レールが蛇行変形を起こすことを防止することができる脱線防止構造、およびこの脱線防止構造が備えられた有機質堆肥化醗酵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生ゴミ・畜糞・糞尿汚泥などの廃棄有機物は、発酵させて堆肥化することで有効に利用することができる。この堆肥化し得る装置として、大形の発酵槽を備えた有機物堆肥化装置が提案されている。そのような堆肥化装置では、廃棄有機物は発酵槽内に収容され、所定条件の下で発酵させることによって堆肥化される。一般には、発酵槽は上面視長方形状をなしており、その長手方向に延びる側壁上面に主レールを設けている。この主レール上を走行する攪拌機により、発酵槽内の廃棄有機物の攪拌を行って、発酵を均一に進行させている。
【0003】
従来のそのような有機物堆肥化装置としては、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−338588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている発酵槽の長手方向の側壁の上面に固定されている主レールは、主レール一本当たりの長さが長手方向に30mないし150m程度と非常に長い場合が多い。そのうえ、主レールは金属製であるため温度による影響を受け易い。そのため、主レールが気温の上昇に伴って熱膨張して伸び、逆に気温が下がると冷却されて収縮し縮むことがある。その結果、発酵槽の側壁の上に固定されている主レールがその長手方向に伸び、この主レールの長手方向の伸び量は、数cmから数十cmに及ぶことがある。
したがって、気温の高温化に伴う主レールの伸長により、その主レールが蛇行変形を起こし、主レール上を走行する台車の車輪が脱線するといった事故に発展する虞がある。
【0006】
そこで本発明は、上記の点に鑑み提案されたもので、気温の高温化に伴う主レールの伸長により、その主レールが蛇行変形などを起こすことを防止することができる脱線防止構造、およびこの脱線防止構造が備えられた有機質堆肥化醗酵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、車輪を走行させる金属製の主レールの長手方向の少なくとも一端部が気温により主レールの長手方向の伸縮を許容するように開放状態にして主レールがレール設置構造部の上に備えられ、主レールには、長手方向に所定間隔をあけて、主レールの長手方向に延びる長孔が複数形成されており、各長孔には、主レールの幅方向の移動を規制しかつ主レールの気温による長手方向の伸縮を許容するための嵌め込み具の一方側が嵌入されているとともに、この嵌め込み具の他方側がレール設置構造部に固定されていることを特徴とする脱線防止構造である。そしてさらに、そのような特徴を有する脱線防止構造が備えられた有機質堆肥化醗酵装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、車輪を走行させる金属製の主レールの長手方向の少なくとも一端部が気温により主レールの長手方向の伸縮を許容するように開放状態にして上記主レールがレール設置構造部の上に備えられている。そして、上記主レールに形成された各長孔には、主レールの気温による長手方向の伸縮を許容するための嵌め込み具の一方側が嵌入され、この嵌め込み具の他方側が上記レール設置構造部に固定されている。
これによって、気温により主レールが伸縮しようとしたときには、その主レールの各長孔の内周側が、レール設置構造部に固定された嵌め込み具の一方側に対し、スライドすることができて、主レールの伸縮を自由に許容させることができる。
しかも、レール設置構造部に固定された嵌め込み具の一方側は、主レールの各長孔に嵌入されて主レールの幅方向に移動を規制するため、主レールが不本意に幅方向に移動してしまう不具合もない。
【0009】
以上より、本願発明は、気温の変化により主レールが伸縮しても、主レールが蛇行変形するのを防止することができる。したがって、主レール上を走行する車輪が主レールから脱線を防ぐことができる。
【0010】
また、上述した脱線防止構造とは異なる態様として、上記主レールの幅方向の端部において、少なくとも車輪が乗せられる側の主レールの幅方向の端部の裏面が上記レール設置構造部の上で支持されるようにする。
この脱線防止構造は、主レールの幅方向の端部の裏面が上記レール設置構造部の上で支持される態様であるため、I型鋼やH形鋼のレールのように上フランジとなる部位がない。よって、I型鋼やH形鋼のレールのように気温の上昇に伴ってレールの上フランジの幅方向先端部近傍が下方に垂れる虞もない。したがって、車輪がレールから脱線する虞もない。
さらに、主レールの幅方向の端部では特に、主レール上の車輪をより強固に支持することができる。
【0011】
また、さらなる安全性の向上と製造コストの低減を図るための態様として、上記主レールを平形にして、その裏面全体を上記レール設置構造部の上で支持されるようにしているものが挙げられる。
このようにすることにより、I型鋼やH形鋼のレールのように上フランジとなる部位がため、気温の上昇に伴ってレールの上フランジの幅方向先端部近傍が下方に垂れる虞もない。
【0012】
さらにこの脱線防止構造は、主レールの裏面から主レールの上面までの形状が均一であるため、主レールをレール設置構造部の上に確実に固定することができる。それに加え、平形の主レールの上面を走行する移動台車の荷重に対してより強固なレールとすることができる。よって、移動台車の車輪を安定して走行させることができる。
【0013】
また、上記脱線防止構造の主レールの素材は、金属製の平形であるのでI型やH型の形状のレールに比べてシンプルな構造であるため、施工が簡単であるとともに安価に製造することができるというコスト面でのメリットもある。
【0014】
また、上述した脱線防止構造を好適に実現できるものとして、上記主レールの裏面と上記レール設置構造部との間には介在板が介在されている。
これによって、介在板の厚さを微調節させたり、介在板を複数重ねて高さ調整を行ったりすることにより、レール設置構造部の上面から主レールの上面までの上下方向の高さを調整することができる。
しかも、レール設置構造部の上面の不陸を修正し防止することができる。よって、上記主レールは、レール設置構造部の上に不陸なく水平に備えることができる。
【0015】
このような脱線防止構造に係る作用効果を好適に実現できるものとして、上記に記載の脱線防止構造が備えられた有機質堆肥化醗酵装置が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る脱線防止構造が備えられた有機質堆肥化醗酵装置の一例を示す平面図である。
【図2】本実施形態に係る脱線防止構造が備えられた有機質堆肥化醗酵装置の断面図であり、図4(a)に図示したV−V線に相応する部分の断面図でもある。
【図3】移動台車上の攪拌機を幅方向に所定の距離移動させたときの平面図である。
【図4】(a)は本実施形態に係る脱線防止構造が備えられた有機質堆肥化醗酵装置の平面図であり、(b)は(a)の要部拡大平面図である。
【図5】他の実施形態に係る脱線防止構造が備えられた有機質堆肥化醗酵装置の一例を示す断面図である。
【図6】他の実施形態に係る脱線防止構造が備えられた有機質堆肥化醗酵装置の一例を示す断面図である。
【図7】他の実施形態に係る脱線防止構造が備えられた有機質堆肥化醗酵装置の一例を示す断面図である。
【図8】(a)、(b)は他の実施形態に係る脱線防止構造が備えられた有機質堆肥化醗酵装置の一例を示す断面図である。
【図9】他の実施形態に係る脱線防止構造が備えられた有機質堆肥化醗酵装置の一例を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその断面図である。
【図10】(a)、(b)は他の実施形態に係る脱線防止構造が備えられた有機質堆肥化醗酵装置の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
この実施形態に係る脱線防止構造は、図1の平面図に示すような有機質堆肥化発酵装置1の主レール20に用いられる。図1は、本実施形態に係る脱線防止構造が備えられた有機質堆肥化醗酵装置1の一例を示す平面図である。
【0019】
以下の説明では、「主レール20の細長い方向」を「長手方向」とし、この長手方向に対して直角な方向を「幅方向」とする。また、主レール20は、直線状のものやカーブに使用される曲線状のものがあるが、本実施形態では直線状のレールを適用した場合について説明する。
【0020】
有機質堆肥化発酵装置1は、1槽の発酵槽10を備えている。
この発酵槽10は、その四方を側壁で囲まれていて、堆肥化する廃棄有機物5を収容して発酵させる槽である。この発酵槽10の大きさは、例えば、長手方向に150m程度、幅方向に10m程度の大きさであり、その形状は上面視長方形をなしている。また、発酵槽10の四方を構成する側壁は、コンクリート材からなる。
【0021】
発酵槽10の長手方向の側壁を、上記レール設置構造部100とする。発酵槽10は上面視長方形であるため、2つの側壁100は互いに平行に位置しそれぞれ直線状に長手方向に延びている。そして、その側壁100の上面100aにはそれぞれ、長手方向にわたって一本の主レール20が敷設されている。
【0022】
上記主レール20は、移動台車30の車輪31を走行させるのに利用される金属製のレールである。2つの側壁100の上面100aそれぞれに敷設されている主レール20の上面20aは、その上面高さが互いに水平となるように設定されている。
【0023】
また、主レール20は、その形状はシンプルに平たい帯状の平鋼材からなるレールである(以下、この形状を「平形」と称する)。この主レール20の幅方向の断面形状は、図2の断面図に示すように、断面視四角形をなしている。前記「断面視四角形」とは、主レール20を長手方向に直交する垂直面(幅方向)に沿って切断した面の形状を示す。
なお、図2は、側壁100の上面100aに主レール20を支持させ、主レール20の長孔60にアンカーボルト70を嵌め込みその下方側70bを側壁100に埋め込んで固定している断面図であり、後述する図4(a)に図示したV−V線に相応する部分の断面図でもある。
【0024】
主レール20が平形であることが、I型鋼やH型鋼のレールに比べて格段に安全性の向上と製造コストの低減を図るための態様であることについて説明する。
詳しくは、I型鋼やH型鋼のレールは、上フランジ(頭部)、ウェブ(腹部)および下フランジ(底部)から構成されている。これらのレールの上フランジは、常に車輪が接触する部位であり、下フランジは、レールの敷設面に安定して敷設している。一般的にレールの上フランジの上面を走行する車輪の縁には、車輪の外周に突出した出っ張り部が設けられている。この出っ張り部がレールの上フランジの内側に当たることで車輪が脱線するのを防止している。
【0025】
しかしながら、レールのウェブは、レール上を走行する移動台車の荷重を上フランジから下フランジに伝達する部分であり、そのうえ、十分な剛性をもちながら材料の使用量を最低にする考慮がなされているため、ウェブの幅方向の寸法は上フランジおよび下フランジそれぞれの幅方向の寸法に比べてかなり短い。そのため、レールの上フランジの幅方向先端部近傍は、気温の上昇に伴って下方に垂れる虞がある。そうなると、車輪の上記出っ張り部がレールの上フランジに接触することができずに、車輪がレールから脱線してしまう可能性が生じる。
【0026】
それに対し、平形の主レール20は、主レール20の裏面20bの全体を側壁100の上面100aで支持されているとともに、主レール20の裏面20bから主レール20の上面20aまでの形状が均一である。
このような構成であることにより、上記のように上フランジが垂れることに伴う事故が発生する虞もない。さらに、主レール20は、側壁100の上面100aに強固に確実に固定することができることに加え、この主レール20の上面20aを走行する移動台車30の荷重に対してより頑丈なレールとすることができる。よって、移動台車30の車輪31は、主レール20上を安定して走行させることができる。
【0027】
また、主レール20の素材は、平形の鋼材であるのでI型鋼やH型鋼の形状の型鋼に比べてシンプルな構造である。したがって、施工が簡単であるとともに安価に製造することができるというコスト面でのメリットもある。
【0028】
次に、移動台車30と、この移動台車30が側壁100の上を長手方向に走行できることについて、図1の平面図に基づいて説明する。
移動台車30は、発酵槽10の幅方向の間隔よりやや大きい矩形の枠体によって構成されていて、この移動台車30上には攪拌機40を搭載している。この攪拌機40が有する攪拌コンベア(不図示)により発酵槽10内の廃棄有機物5を攪拌することができる。
さらに、移動台車30の幅方向両端部それぞれには、主レール20の上面20aを走行する複数の車輪31を有している(この実施形態では、移動台車30の裏面30bの幅方向両端部それぞれに3個の車輪31を長手方向に所定の間隔をあけて取り付けている)。
よって、移動台車30は、移動台車30の車輪31を主レール20の上面20aにのせて発酵槽10の側壁100の上面100aを長手方向に往復自在に走行することができる。
【0029】
次に、攪拌機40は、移動台車30の上を幅方向に移動することができることについて、図1の平面図に基づいて説明する。
移動台車30の上面30aには、幅方向に延びる副レール50が設けている。副レール50は、長手方向に延びている主レール20に対して直交した幅方向に延びている位置関係にある。そして、攪拌機40の長手方向両端部それぞれには、この副レール50の上面50aを走行する車輪41を有している(この実施形態では、攪拌機40の裏面40bの長手方向両端部それぞれに2個の車輪41を幅方向に所定の間隔をあけて取り付けている)。
よって、攪拌機40は、攪拌機40の車輪41を副レール50の上面50aにのせて、移動台車30の上面30aを幅方向に往復自在に移動することができる。
【0030】
なお、副レール50の近傍には、攪拌機40に取り付けられているリミットスイッチ(不図示)を作動させる作動部材(不図示)が設けられている。このリミットスイッチの作動によって、攪拌機40が発酵槽10に対して所定の位置に達したときにその位置で停止するようにされている。また、主レール20の近傍にも、リミットスイッチが取り付けられている移動台車30をその位置で停止させる作動部材(不図示)が設けられている。
【0031】
次に、移動台車30が主レール20上を長手方向に走行し、発酵槽10内の廃棄有機物5を攪拌する様子について、図1に基づいて説明する。図1において、破線で表示された移動台車30は走行始めの位置のあることを図示してあり、実線で表示された移動台車30は発酵槽10の上を長手方向にある程度の位置まで図1中矢印の方向に走行していることを図示している。
【0032】
まず、移動台車30は、側壁100の上面100aに敷設した主レール20の上面20aに車輪31をのせて、発酵槽10上を図1中矢印の方向に走行させる。攪拌機40は、移動台車30上にて幅方向の所定の位置に停止させておく。
走行している移動台車30が発酵槽10上に位置したとき、上記攪拌機40が有する攪拌コンベアは、その自由端側を発酵槽10内の廃棄有機物5中に下降させておく。そして、下降させた攪拌コンベアは、発酵槽10内の廃棄有機物5の攪拌を行う。このとき、作動している攪拌コンベアは、発酵槽10内に収容されている大量の廃棄有機物5を掘り返し、細かくなるように耕す。いわゆる「切り返し」作業を行う。
そうして、移動台車30は、発酵槽10の長手方向の一方側から他方側にかけて、発酵槽10内に収容されている廃棄有機物5の撹拌を行いながら走行し、発酵を均一に進行させて堆肥化させている。
【0033】
次に、二度目の攪拌処理について、特に、一度目とは異なる幅方向の位置にて長手方向の攪拌処理を行うことについて、図3の平面図に基づいて説明する。図3は、移動台車30上の攪拌機40を幅方向に所定の距離移動させたときの平面図である。
【0034】
詳しくは、一度目の長手方向にわたる攪拌処理で、発酵槽10の幅方向全体の廃棄有機物5を処理できず、幅方向の一部の廃棄有機物が攪拌処理できなかった場合、攪拌機40は、移動台車30上を幅方向に移動してその攪拌処理できなかった幅方向の位置にまで移動し、その位置にて一度目の時と同様に長手方向に攪拌処理を行う必要がある。
そのために、攪拌機40は、移動台車30の上面30aに幅方向に敷設している副レール50の上面50aにその車輪41をのせて、一度目(図3中破線部分)の位置とは異なる幅方向の位置(図3中実線部分)に移動させる。それから一度目の時と同様に、移動台車30は、発酵槽10の側壁100の上面100aに長手方向に敷設している主レール20の上面20aにその車輪31をのせて、発酵槽10の長手方向の一方側から他方側にかけて走行し、発酵槽10内の廃棄有機物5の攪拌を行う。
【0035】
この二度目の処理でも幅方向の一部の廃棄有機物が攪拌処理できなかった場合は、さらに攪拌機40を幅方向に移動させて上記攪拌処理を繰り返す。
【0036】
以上より、有機質堆肥化醗酵装置1は、その発酵槽10内が収容している全領域の廃棄有機物5を攪拌し、発酵を均一に進行させて堆肥化させることができる。
【0037】
図4(a)は、本実施形態に係る脱線防止構造が備えられた有機質堆肥化醗酵装置の平面図であり、(b)は(a)の要部拡大平面図である。図4に示すように、本実施形態に係る脱線防止構造が備えられた有機質堆肥化醗酵装置1は、移動台車30の車輪31を走行させる金属製の主レール20の長手方向の少なくとも一端部20c(20d)が気温により主レール20の長手方向の伸縮を許容するように開放状態にして主レール20が側壁100の上面100a備えられている。そして、主レール20には、長手方向に所定間隔をあけて、主レール20の長手方向に延びる長孔60が複数形成されており、上記各長孔60には、主レール20の幅方向の移動を規制しかつ主レール20の気温による長手方向の伸縮を許容するための嵌め込み具たるアンカーボルト70の上方側70aが嵌入されているとともに、この嵌め込み具70の下方側70bが側壁100に埋め込んで固定されている脱線防止構造が備えられた有機質堆肥化醗酵装置1である。
【0038】
まず、長孔60について説明する。
長孔60は、図4(a)の平面図に示すように、一本の主レール20の長手方向一方側端部20cから他方側端部20dにかけて、長手方向に所定の間隔をあけて複数個(図中では3個)形成している。長孔60一つ一つの形状は、その幅方向に対して長手方向に延びている形状をしている。
図4(a)において、主レール20は、長手方向に短く図示されているが、これは図面作成の便宜上短く図示したものであり、実際の主レール20は長手方向に数mから数十m(標準長は25m)と細長い。
【0039】
また、図4(a)に示すように、主レール20に複数個(本実施形態では3個)形成されている長孔60は、各長孔60間が長手方向に等間隔Pとなるように構成されている。このように構成することにより、車輪31を介して支える移動台車30の荷重を均等に分担し、かつ、移動台車30に与える振動を最小限かつ均等に済むことができる。なお、長孔60間の所定の間隔が長手方向に等間隔であるか否かは、主レール20もしくは発酵槽10の設置環境による。
【0040】
また、長孔60は、図2の断面図に示すように、常に車輪31が接触する主レール20の上面20aから、側壁100の上面100aに安定して敷設している主レール20の裏面20bまで貫通している。
【0041】
さらに、上記3個の長孔60それぞれに嵌め入まれているアンカーボルト70は、その上方側70aは、主レール20の幅方向の移動を規制し、かつ、主レール20の気温の変化に伴う主レール20の長手方向の伸縮を許容するために嵌入されている。
一方、アンカーボルト70の下方側70bは、側壁100に埋め込んで固定されている。
【0042】
このとき、アンカーボルト70の上端部70cは、図2の断面図に示すように、主レール20の上面20aまたは長孔60の上開口部60aからはみ出ない程度である。
アンカーボルト70の上端部70cの上面と長孔60の上面とが仮想同一平面上に位置している程度でもよいが、アンカーボルト70の上端部70cは、長孔60の上開口部60aより低い位置に位置していることが好ましい。
【0043】
また、図4(b)に示すように、主レール20に形成している長孔60の形状は、長孔60の長手方向の最大寸法Xが長孔60の幅方向の最大寸法Yよりも長くなるように設定されている。なお、図4(b)は、図4(a)の要部拡大平面図である。
また、ここでの「最大寸法」の「最大」について図4(b)に基づいて説明する。
本実施形態での長孔60は、長方形の空間の長手方向一方側および他方側それぞれ半円形の空間を連結した略長円形状の孔をなしている。長孔60の寸法を表す際、このような半円部分のどの位置を基準に長孔60の長手方向の寸法をとるかによって長孔60の長手方向の寸法が異なってくる場合に、最もその寸法が最大となる位置間の寸法を「最大寸法」を表現する。
そこで、長孔60の長手方向一方側の半円部分で長手方向に最も外側(一方側)の箇所を長手方向一方側端部60cとし、かつ、長孔60の長手方向他方側の半円部分で長手方向に最も外側(他方側)の箇所を長手方向他方側端部60dとする。よって、長手方向一方側端部60cと長手方向他方側端部60dとの長手方向の間を長孔60の長手方向の最大寸法Xとしている。
【0044】
また、長孔60の幅方向の寸法Yは、長孔60に嵌め入れて側壁100に埋め込んで固定しているアンカーボルト70の幅方向の寸法と、ほぼ同等または同等となるように設定している。しかも、側壁100に固定されたアンカーボルト70の上方側70aは、主レール20の各長孔60に嵌入されて主レール20の幅方向に移動を規制するため、主レール20が不本意に幅方向に移動してしまう不具合もない。
【0045】
さらに、主レール20に形成された3個の長孔60それぞれに嵌め入れて側壁100に埋め込んで固定しているアンカーボルト70のみで、主レール20を発酵槽10の側壁100の上面100aに固定することができる。この場合、長孔60は、主レール20の長手方向一方側端部20cおよび他方側端部20dにできるだけ近い位置にも形成し、それらの長孔60にアンカーボルト70を嵌め入れて主レール20を側壁100の上面100aにそれぞれ固定するのが好ましい。このように構成することで、主レール20の長手方向両方側端部20c、20dの近傍の幅方向の移動も規制されることになり、主レール20の幅方向の移動をより確実に規制できる。
【0046】
それに加え、長孔60の長手方向の寸法Xは、長孔60に嵌め入れたアンカーボルト70の長手方向の寸法よりも長いために、長孔60とアンカーボルト70との長手方向の間に空間が生じている。このため、主レール20が、気温の上昇に伴って熱膨張して伸びたり、また、逆に気温が下がると冷却されて収縮し縮んだり、この主レール20が気温の変化によって長手方向に伸縮しようとしたときには、主レール20の伸縮を各長孔60の内周側が、側壁100に固定されたアンカーボルト70の上方側70aに対し、スライドすることができて、主レール20の伸縮を自由に許容させることができる。
【0047】
なお、主レール20の長手方向一方側端部20cおよび他方側端部20dは、開放状態にしている。前記「開放状態」とは、この場合、主レール20の長手方向両端部20c、20dが固定されていないことを指す。本実施形態において、主レール20を発酵槽10の側壁100に固定している手段は、主レール20の3個の長孔60に嵌め入れ側壁100に埋め込んで固定しているアンカーボルトのみである。さらに、「開放状態」とは、気温の上昇に伴って主レール20が熱膨張して伸長してもこの主レール20が障害とならない、伸長しても障害となるものがない状態のことを指している。
【0048】
以上のような構成にしたことにより、気温の変化により主レール20が伸縮しても、主レール20の蛇行変形が防止することができる。したがって、主レール20の上面20aから移動台車30の車輪31が脱線を防ぐことができる。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変形または修正が可能である。
【0050】
他の実施形態の一例として、主レール20の少なくとも一端部が固定されている状態について説明する。
上記本実施形態では、複数の長孔60および各長孔60に嵌入したアンカーボルト70のみで一本の主レール20を側壁上面100aに固定し、主レール20の長手方向一方側端部20cおよび他方側端部20dを開放状態にしていた。主レール20の長手方向の少なくとも一端部さえ開放状態であればよいので、主レール20を側壁上面100aにさらに確実にかつ強固に固定する構成として次のような例が挙げられる。
【0051】
図5は、他の実施形態に係る脱線防止構造の一例の図を示す断面図であり、主レール20の上面20aから突出したアンカーボルト70の上方側70aの外周にアンカーナット75を締めて固定している断面図である。
例えば、主レール20の長手方向一方側端部20cを開放状態にし、長手方向他方側端部20d近傍を固定手段75により固定する。
詳しくは、長手方向他方側端部20dに最も近い位置に上記長孔60または穴を形成しておき、そこにアンカーボルト70を嵌入する。そして、このアンカーボルト70の下方側70bは、側壁100に埋め込んで固定する。このアンカーボルト70の上方側70aは、上記長孔60または穴から突出し主レール20から上方に突出した状態になっている。
【0052】
さらにアンカーボルト70の上方側70aの外周は、雄ねじ部70dが形成されているので、この突出した雄ねじ部70dに固定手段たるアンカーナット75を嵌め込ませる。そして、このナット75をレンチで締め付けることによって、このナット75を主レール20の上面20aにまで固定することができる。
【0053】
よって、主レール20は、規定のトルク値まで締め付けられたナット75により、側壁上面100aにさらに確実にかつ強固に固定することができる。
【0054】
また、図5において、中心軸Lを中心として外周に広がるアンカーナット75の外径は、同中心軸Lを中心として外周に広がる長孔60の内径より大きくなるように設定しておく。このように設定しておくことで、主レール20の上面20aに、アンカーボルト70の外周に取り付けたアンカーナット75をより強固に締め付けることができる。
【0055】
図6は、さらに他の実施形態に係る脱線防止構造の一例の図を示す断面図であり、主レールに座ぐり加工を施している断面図である。
また、例えば、主レール20の長手方向一方側端部20cおよび他方側端部20dを開放状態にしておき、主レール20の長手方向の途中において、主レール20と側壁上面100aとの固定手段たるアンカーナット75により固定させてもよい。この場合、アンカーナット75を取り付ける位置は、主レール20の長手方向途中の位置であり、その上面20aには移動台車30の車輪31が走行する。そのために、図6に示すように、前もって主レール20の上面20aに座ぐり加工処理を施す必要がある。
【0056】
次に主レール20に座ぐり加工を施す施工処理について説明する。
まず、主レール20に座ぐり加工を施す。この場合の座ぐり加工は、アンカーナット75を取り付ける主レールの長手方向途中の位置に、切削工具を用いて主レール20の上面20aから所定の深さを削り、アンカーナット75を主レール20に埋め込むための所定の深さを有する座ぐり穴77を加工している。この座ぐり穴77の底面77bは、フラットな有底に加工してきれいにアンカーナット75の下面75bが接地するように加工されている。
【0057】
そして、この座ぐり穴77の底面77bには、長孔60の上開口部60aが形成されている。アンカーボルト70は、この長孔60の上開口部60aを通して嵌め入れられ、その下方側70bを側壁100に埋め込んで固定している。このとき、アンカーボルト70の上方側70aは、座ぐり穴77の底面77bから上方に突出した状態になっている。
【0058】
このとき、アンカーボルト70の上端部70cは、主レール20の上面20aまたは座ぐり穴77の上開口部77aからはみ出ない程度に位置している。アンカーボルト70の上端部70cは、主レール20の上面20aまたは座ぐり穴77の上開口部77aより低い位置に位置していることが好ましい。具体的には、アンカーボルト70の上端部70cは、座ぐり穴77の底面77bから座ぐり穴77の上開口部77aまでの上下方向の間において、座ぐり穴77の底面77bから上方に四分の三程度の位置にその上端部70cが位置している程度が好ましい。
【0059】
また、図6において、中心軸Lを中心として外周に広がる座ぐり穴77の内径は、同中心軸Lを中心として外周に広がるアンカーナット75の外径よりある程度大きく、レンチを容易に挿入してアンカーボルト70の外周に取り付けたアンカーナット75を締め付けることができる程度の大きさになるように座ぐり加工しておく。
【0060】
つづいて、アンカーボルト70の上方側70aの外周は、雄ねじ部70dが形成されているので、この突出した雄ねじ部70dの外周に固定手段たるアンカーナット75を嵌め込ませる。そして、このナット75をレンチで締め付けることによって、このナット75を座ぐり穴77の底面77bにまで固定することができる。
よって、主レール20は、規定のトルク値まで締め付けられたナット75により、側壁上面100aにさらに確実にかつ強固に固定することができる。そして、主レール20の長手方向一方側端部20cおよび他方側端部20dを開放状態にしておくことができる。
【0061】
また、図7に示すように、主レール20の裏面20bと側壁100の上面100aとの間に、介在板80を挟んで固定しておくことも可能である。
【0062】
この介在板80は、特に、主レール20を敷設する側壁上面100aが不陸状態で平らではなく凹凸がある場合に、より効果的である。例えば、主レール20が敷設されている各箇所で介在板80の厚さを微調節させたり、介在板80を複数重ねて高さ調整を行ったりすることにより、側壁100の上面100aから主レール20の上面20aまでの上下方向の高さを調整することができる。
【0063】
しかも、側壁100の上面100aの不陸を修正し防止することができる。よって、上記主レール20は、側壁100の上面100aに不陸なく水平に敷設することができる。
【0064】
なお、介在板80はは、主レール20の裏面20bと側壁100の上面100aとの間に介在させたときに、主レール20に形成された長孔60と介在板80に形成した長孔80aとが同じ位置となるように構成することでアンカーボルト70をスムースに嵌入し、側壁上面100aに埋め込み固定することができる。
【0065】
上記実施形態では、主レール20自体の幅方向の断面形状が四角形であるレールを用いていたが、以下のようなレールを使用し本願発明の課題を解決するための手段として適用することも可能である。
【0066】
例えば、図8(a)の断面図に示すように、主レール20の断面視の形状を逆凹字状に設定することも可能である。
【0067】
例えば、主レール20の幅方向の端部20f、20gにおいて、少なくとも車輪31が乗せられる側の主レール20の幅方向の端部の裏面20bが側壁100の上100aで支持されるように設定することも可能である。すなわち、長手方向に延びる主レール20は、主レール20の幅方向一方側端部20fおよび他方側端部20gそれぞれからレール壁20hが垂下している。そして、このレール壁20hの裏面20bが側壁100の上100aで支持されるようにする。
【0068】
このような構成にすることにより、この形状の主レール20は、上記I型鋼やH型鋼のレールと異なりウェブとなる部位がないため、上記のような上フランジが下方に垂れる虞がない。したがって、車輪がレールから脱線する虞もない。
さらに、主レールの幅方向の端部では特に、主レール上の車輪をより強固に支持することができる。
【0069】
上記断面視逆凹字状の主レール20にも、長手方向に所定間隔をあけて、主レール20の長手方向に延びる長孔60が複数形成されている。そして、各長孔60には、主レールの幅方向の移動を規制しかつ主レール20の気温の変化による長手方向の伸縮を許容するためのアンカーボルト70の一方側70aが嵌入されているとともに、このアンカーボルト7の他方側70bが側壁100に埋め込んで固定されている。
【0070】
また、例えば、従来のI型鋼にも本願発明の課題を解決するための手段を適用することができる。詳しくは、図8(b)に示すように、I型主レール20の長孔60は、常に車輪31が接触する主レール20の上フランジ20aから、移動台車30の荷重を上フランジ20aから下フランジ20cに伝達する部分であり十分な剛性をもつウェブ20bを通って、発酵槽10の側壁上面100aに安定して定着している主レール20の下フランジ20cまで貫通している。そして、各長孔60には、主レールの幅方向の移動を規制しかつ主レール20の気温の変化による長手方向の伸縮を許容するためのアンカーボルト70の一方側70aが嵌入されているとともに、このアンカーボルト7の他方側70bが側壁100に埋め込んで固定されている。
【0071】
以上より、本願発明の課題を解決するための手段として適用することができるのであれば、主レール20の形状としては、正方形、矩形、H形、L形、コ形、中空角形等の断面形状並に太さの異なる鋼材から適宜選択することができる。
【0072】
上記実施形態では、主レール20上の移動台車30、副レール50上の攪拌機40それぞれを発酵槽10に対して所定の位置に達したときにその位置で停止するために、リミットスイッチと、このリミットスイッチを作動させる作動部材を設けていたが、移動台車30、攪拌機40を所定の位置にて停止させる部材は上記以外の手段でもよい。
【0073】
上記実施形態では、アンカーボルトの上面視形状を丸形、長孔の上面視形状を長円形にしていたが、主レール20の幅方向の移動を規制しかつ主レール20の気温の変化による長手方向の伸縮を許容することができるのであればそれぞれ丸形でも多角形でもでもよい。
【0074】
上記実施形態では、側壁100およびその上面に敷設している主レール20は、長手方向に非常に長かったが、発酵槽10が小さく、長手方向の側壁100と主レール20が短い場合、主レール20を車輪31を走行させるガイド機構として利用することができる。
【0075】
また、上記実施形態では、発酵槽10は1槽のみであったが、複数の発酵槽を並列に配置した構成にも本発明を適用することは可能である。この際、発酵槽毎にその長手方向の側壁の上面にそれぞれ主レールが設けられる。
【0076】
上記本実施形態では、主レール20が一本の場合について説明した。
次に、他の実施形態の一例として、図9(a)に示すように、主レール20が長手方向に複数本敷設している場合について説明する。
【0077】
この場合、長手方向に複数本敷設した主レール20は、図9(a)に示すように、隣接する主レール20との間に所定の隙間Qを設けている。この所定の隙間Qの長手方向の寸法は、主レール20が気温の上昇に伴って熱膨張して伸びても、隣接する主レール20それぞれと互いに押圧し合わない程度での長さであり、主レール20の伸長を自由に許容することができる長さである。
【0078】
以上のような構成にしたことにより、主レール20が長手方向に複数本敷設していたとしても、隣接する主レールとの間に所定の隙間Qがあいているため、気温の高温化により主レール20が伸長によって隣接する主レール20と互いに押圧し合って主レール20が蛇行変形するといった虞を防止することができる。したがって、主レール20の上面20aから移動台車30の車輪31が脱線を防ぐことができる。
【0079】
なお、主レールが長手方向に複数本敷設されている場合でも、上記開放状態の作用効果を得ることができる。すなわち、無端走行経路ではなく有端走行経路である場合、長手方向に敷設している複数本の主レールのうち、長手方向一方側端部の主レール20の長手方向一方側端部20cと、長手方向他方側端部の主レール20の長手方向他方側端部20dとはいわゆる開放状態である。よって、気温の上昇に伴って主レール20が熱膨張して伸長しても上記本実施形態の開放状態と同様の効果を奏することができる。
【0080】
また、上記実施形態では、発酵槽10の側壁100の上面100aに直線状の主レール20を平行に敷設してその上に攪拌機を備えた移動台車30を走行させていたが、次のような曲線状のレールや無端走行経路状の走行レールにも本願発明を適用することができる。その例を図9(a)、(b)に基づいて説明する。図9(a)は他の実施形態の一例である有機質堆肥化醗酵装置に採用されている無端走行経路状脱線防止構造の説明図であり、図9(b)は(a)のV−V線に相応する部分の概略断面図である。
【0081】
図9(a)に示すように、無端走行経路Rは、互いに反対向きに延びる2つの直線路R2、R4と、それらの直線路R2、R4同士を連絡する2つの半円弧状の曲線路R1、R3とによって長円形に形成されている。
【0082】
2つの直線路R2、R4は、真っ直ぐなセンターレール201と、このセンターレール111に等間隔を隔てて平行にその両側に振り分けて配備されたまっすぐな一対のサイドレール202によって形成されている。他方、2つの曲線路R1、R3は、一対のサイドレール202の一端部同士および他端部同士を連絡する円弧状の一対のターンレール203により形成されている。そして、上記センターレール201の一端部と他端部との2箇所に、電動台車の内車輪に当たってその内車輪の転動を阻止する車輪止め205、206が各別に設けられている。移動台車30は、上記センターレール201とサイドレール202との間隔に相応する長さの矩形の枠体によって構成されており、その内辺部の前後方向中央部に内車輪を有しており、外辺部の前後両端部のそれぞれに外車輪を有している。
また、上記した各レール201、202、203は、各隣接するレールとの間に所定の隙間Qを設けている。
【0083】
上記した各レール201、202、203は、図9(b)に示すように、細長い醗酵槽10の側壁100や、それらの側壁100の間に立設した隔壁101を利用してそれらの上面に水平に配備されている。
【0084】
そして、上記各レール201、202、203の長手方向に所定の間隔をあけて、レールの長手方向に延びる長孔60を複数形成し、各長孔60に嵌め込み具であるアンカーボルト70を嵌入し、その下方側を上記各側壁100、隔壁101に埋め込んで固定している。
【0085】
さらに他の実施形態の一例として、図10(a)、(b)に示すように、隣り合う主レール207、208(主レール207、208の総称を主レール20とする)を雌雄型嵌合により連結する場合について説明する。
この実施形態での主レール207、208は、その長手方向一方側端部および他方側端部のいずれかに雄型嵌合部材または雌型嵌合部材を形成し、隣接する主レールと雌雄型嵌合している。
以下の説明では、雌雄型嵌合の一例として、凹凸型嵌合について説明する。それに伴い、「雄型嵌合部材」を「凸部材」とし、「雌型嵌合部材」を「凹部材」とそれぞれ称する。
【0086】
まず、この背景について説明する。
気温の温度変化に伴う主レール20の長手方向の伸び量は、主レール20の長さによって異なる。そのため、長孔60の長手方向の長さや数も主レール20の長さによって異なり、主レール20が短いほうが長いほうに比べて、長孔60の長さも短くて、かつ数も少なく済む。
そのため、従来、発酵槽10の側壁100の上面100aに載置するための数十mないし数百mの主レール20を製造するにあたっては、6m程度の主レール207、208、…を所定の本数を長手方向に並べ、その継手間に溶接棒と溶接工具とを用いて溶接接合することにより製造していた。
【0087】
次に、この実施形態における凹凸型嵌合について、図10(a)の要部拡大平面図に基づいて説明する。この実施形態は、長手方向に短い主レール207、208、…を複数本用いて、一本の長い主レール20を製造する場合に、特に効果的である。
【0088】
図10(a)に示すように、主レール207の長手方向一方側端部207aは、この端部207aの長手方向一方側壁面部207bと、この長手方向一方側壁面部207bから突出する嵌合用凸部207cと、を有している。
それに対し、上記主レール207の長手方向一方側端部207aに長手方向に隣接する他の主レール208の長手方向他方側端部208aは、この端部208aの長手方向他方側壁面部208bと、この長手方向他方側壁面部208bから窪む嵌合用凹部208cと、を有している。
【0089】
そして、図10(a)に示すように、それぞれの嵌合用凸部207cと嵌合用凹部208cとを嵌合させる。このとき、主レール207の長手方向一方側壁面部207bと、隣接する主レール208の長手方向他方側壁面部208bとの間に隙間Mが形成される。さらに、凸部207cの先端面部207dと凹部208cの凹み面部208dとの間の隙間にも隙間Nが形成される。なお、この所定の隙間M、Nの長手方向の寸法は、主レール207(208)が気温の上昇に伴って熱膨張して伸びても、隣接する主レール208(207)それぞれの対向する上記壁面部が互いに押圧し合わない程度での長さであり、主レール207、208の伸長を自由に許容することができる長さである。また、所定の隙間MとNとの長手方向の寸法は同等でもよい。
【0090】
よって、この主レール207、208が気温の変化によって長手方向に伸縮しようとしたときには、主レール207、208の伸縮を各嵌合用凹部208cの内周側が、嵌合用凸部207cに対し、スライドすることができて、主レール207、208の伸縮を自由に許容させることができる。
【0091】
一方、嵌合用凹部208cの幅方向の寸法と、嵌合用凸部207cの幅方向の寸法とが同等もしくはほぼ同等に設定している。このため、凹凸型嵌合時は、主レール207、208は幅方向に移動を規制されるため、主レール207、208が不本意に幅方向に移動してしまう不具合もない。
【0092】
長孔60は、図10(b)の平面図に示すように、一本の主レール20の長手方向一方側端部20cから他方側端部20dにかけて、長手方向に所定の間隔をあけて複数個(図中では3個)形成している。長孔60一つ一つの形状は、その幅方向に対して長手方向に延びている形状をしている。
【0093】
この実施形態における長孔60は、上記実施形態に記載した長孔60と同等のものである。しかしながら、この実施形態における主レール207、208、209は、上記実施形態の主レール20と比べて長手方向の長さが短い。例として、各主レール207、208、209の長手方向の長さが6m程度で、長孔60a、60b、60c(その総称を長孔60とする)が各主レール207、208、209の長手方向に3個形成している場合について説明する。
この実施形態では、主レール207と、この主レール207の長手方向中心近傍に形成されている長孔60aに嵌入したアンカーボルト701とを直接溶接固定する。この溶接箇所は、主レール207の上面207eであり、移動台車30の車輪31が走行する部位でもある。そのため、長孔60aまたは穴を通してアンカーボルト701の下方側701bを側壁100に埋め込んで固定しておいて、アンカーボルト701の上方側701aを溶接させる際には、主レール207の上面207eをある程度窪ませておき、溶接棒と溶接工具を用いてアンカーボルト701の上方側701aを溶接する。主レール207の上面207eと、溶接後のアンカーボルト701の表面701cおよびその周囲とが、車輪31の走行に問題がない程度の略同一平面となるようにする。
【0094】
なお、上記溶接固定した長孔60aの長手方向一方側および他方側に位置する長孔60b、60cは、上記実施形態と同等の作用効果を奏する。
【0095】
なお、図10(b)には、一本の主レール207において、長手方向一方側端部207aに嵌合用凸部207cを、長手方向他方側端部207fに嵌合用凹部207gを設けた構成について図示している。この構成に限らず、一本の主レール207において、長手方向一方側端部207aおよび他方側端部207fがともに嵌合用凸部207cでも嵌合用凹部207gでもよく、長手方向一方側端部207aおよび他方側端部207fの少なくとも一方が壁面207bでもよい。
【0096】
なお、この実施例では、上面視凹凸型の構成としたが、側面視凹凸型の構成としてもよい。また、雌雄型嵌合の形状はそれぞれ凹凸に限らず、互いに嵌合でき、本願発明を解決できる構成であれば限定しない。
【0097】
以上のような構成にしたことにより、隣接するレール207、208同士の間を溶接せずに連結することができる。したがって、従来は一本50mないし100mの主レール20を製造するにあたって、6m程度の主レール207、208、…を所定の本数を長手方向に並べてその継手間に対して溶接棒や溶接工具を用いて溶接接合することにより製造していた。それに対し今回の嵌合構造により嵌合用凹部208cに嵌合用凸部207cを嵌め込んで各主レール207、208の中央のアンカーボルト701、701を溶接固定するだけで済むので、従来のような溶接の手間が解消され、溶接棒のコスト削減や溶接の手間による時間の損失が大幅に解消される。
【0098】
また、主レール207、208、…が長手方向に複数本敷設していたとしても、隣接する主レール207、208との間に所定の隙間M、Nがあいているため、気温の高温化により主レール207(208)が伸長によって隣接する主レール208(207)と互いに押圧し合って主レール207、208が蛇行変形するといった虞を防止することができる。したがって、主レール20の上面20aから移動台車30の車輪31が脱線を防ぐことができる。
【0099】
上記実施形態では、本発明に係る脱線防止構造を有機質堆肥化醗酵装置1に備えた実施例について記載したが、本願発明の課題を解決するための手段を適用するであれば有機質堆肥化醗酵装置1以外の装置にも適用することができる。
【0100】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変形してよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、気温の変化によってレールが伸縮し、レールが蛇行変形するのを防止することを目的とした脱線防止構造、およびこの脱線防止構造が備えられた有機質堆肥化醗酵装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 有機質堆肥化醗酵装置
5 廃棄有機物
10 発酵槽
100 長手方向の側壁(レール設置構造部)
100a 上面
20 主レール
20a 上面
20b 裏面
20c 長手方向一方側端部
20d 長手方向他方側端部
20f 幅方向一方側端部
20g 幅方向他方側端部
20h レール壁
207c 嵌合用凸部
207g 嵌合用凹部
208c 嵌合用凹部
30 移動台車
31 車輪
40 攪拌機
41 車輪
50 副レール
50a 上面
60 長孔
60a 上開口部
60c 長手方向一方側端部
60d 長手方向他方側端部
70 アンカーボルト(嵌め込み具)
70a 一方側(上方側)
70b 他方側(下方側)
70c 上端部
70d 雄ねじ部
75 アンカーナット
75b 下面
77 座ぐり穴
77a 上開口部
77b 底面
80 介在板
M 主レールの長手方向一方側壁面部と、隣接する主レールの長手方向他方側壁面部との間の隙間
N 嵌合用凸部の先端面部と、それを嵌合する嵌合用凹部の凹み面部との間の隙間
Q 主レール間の長手方向の寸法
X 長孔の長手方向の寸法
Y 長孔の幅方向の寸法
Z 長孔と嵌め込み具との間の空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を走行させる金属製の主レールの長手方向の少なくとも一端部が気温により主レールの長手方向の伸縮を許容するように開放状態にして上記主レールがレール設置構造部の上に備えられ、
上記主レールには、長手方向に所定間隔をあけて、主レールの長手方向に延びる長孔が複数形成されており、
上記各長孔には、主レールの幅方向の移動を規制しかつ主レールの気温による長手方向の伸縮を許容するための嵌め込み具の一方側が嵌入されているとともに、この嵌め込み具の他方側が上記レール設置構造部に固定されていることを特徴とする脱線防止構造。
【請求項2】
上記主レールの幅方向の端部において、少なくとも車輪が乗せられる側の主レールの幅方向の端部の裏面が上記レール設置構造部の上で支持されることを特徴とする請求項1に記載の脱線防止構造。
【請求項3】
上記主レールを平形にして、その裏面全体を上記レール設置構造部の上で支持されるようにしたことを特徴とする請求項2に記載の脱線防止構造。
【請求項4】
上記主レールの裏面と上記レール設置構造部との間には介在板が介在されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の脱線防止構造。
【請求項5】
上記請求項1、2、3、4の何れかに記載の脱線防止構造が備えられた有機質堆肥化醗酵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−86994(P2012−86994A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233306(P2010−233306)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(595166516)
【Fターム(参考)】