説明

脱臭システム及び脱臭システムの使用方法

【課題】本発明が解決しようとする課題は、水分と混在した臭気成分を低温で効率良く脱臭する脱臭システム及び脱臭システムの使用方法を提供することである。
【解決手段】吸湿剤を含有するマイクロ波透過性の無機系多孔質担体に酸化触媒が担持されてなる粒状の脱臭触媒を、吸排気が可能なフレーム内部に充填されてなる脱臭触媒充填フィルターと、通風使用した状態の該脱臭触媒充填フィルターに直接照射できる位置に設置されたマイクロ波照射装置とが一体となっていることを特徴とする脱臭システム及び該脱臭システムの脱臭触媒充填フィルターにマイクロ波を照射しながら、通風することにより臭気除去を行う脱臭システムの使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分(蒸気)と一緒に放出される臭気成分を効率良く脱臭するために用いられる脱臭システム及び脱臭システムの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生ゴミ処理機に代表される水分と一緒に放出される臭気成分を対象とした脱臭システムとしては、活性炭等の脱臭剤をフィルター形状とした吸着メカニズムによる脱臭システム、加熱ヒーターと触媒フィルターを組み合わせることにより、高温で臭気を分解除去する触媒脱臭システム等がある(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、活性炭は、そのメカニズムから、活性炭内部の細孔に臭気成分が一定量吸着してしまうと、極端に吸着能が低下してしまうことが知られている。加えて、活性炭粒子内の細孔における吸着力が臭気成分特有の沸点でほぼ決定してしまうため、温度上昇や風の流れにより、吸着した臭気成分が再放出してしまうという問題がある。また、加熱ヒーターを使用した触媒システムについても、触媒が活性化する温度まで昇温させるのに時間が掛かるため、脱臭効果が感じられ難いなどの実用上の不具合に加えて、電力コストが大きくなることや、ヒーターによって加熱されたガスの冷却機構を設けなければならず、装置設計が難しくなるという課題があった。
【0003】
一方で、乾燥方式の生ゴミ処理機における生ゴミの処理方式として、微生物を利用したものや、マイクロ波を利用したシステムも実用化されており、生ゴミ処理槽の低温度化という課題は解決できつつある(例えば、特許文献2参照)。しかし、生ゴミから発生する臭気の処理に関しては、依然問題は解決されておらず、効率の良い脱臭システムが模索されている。
【0004】
特許文献2のようにマイクロ波を使うシステムは水分を選択的に加熱し蒸発減量させるのに適しており、マイクロ波を脱臭に利用しようとした提案(例えば、特許文献3参照)もなされてはいるが、脱臭剤や触媒にマイクロ波を照射するだけでは、選択的に素材を活性化させることができず、この方法もまた課題を残していた。
【0005】
また、脱臭剤が充填されたフィルターにマイクロ波を照射させることにより、脱臭性能を加熱再生させる脱臭システムも提案されている(例えば、特許文献4参照)。このシステムも、特許文献3と同様に、マイクロ波照射のみでは、脱臭剤の再生に十分な加熱を行うことができないため、穏やかな加熱により、吸着剤の内部の細孔から臭気分子を追い出す程度の効果しか得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−89860号公報
【特許文献2】特開2001−296028号公報
【特許文献3】特開平7−227420号公報
【特許文献4】特開平11−19454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、多量の水分と混在している臭気成分を低温で効率良く脱臭するシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記の脱臭システム及び脱臭システムの使用方法を発明した。
【0009】
(1)吸湿剤を含有するマイクロ波透過性の無機系多孔質担体に酸化触媒が担持されてなる粒状の脱臭触媒を、吸排気が可能なフレーム内部に充填されてなる脱臭触媒充填フィルターと、通風使用した状態の該脱臭触媒充填フィルターに直接照射できる位置に設置されたマイクロ波照射装置とが一体となっていることを特徴とする脱臭システム、
(2)上記(1)の脱臭システムの脱臭触媒充填フィルターにマイクロ波を照射しながら、通風することにより臭気除去を行う脱臭システムの使用方法。
【発明の効果】
【0010】
多量の水分が含有されたガス中に含まれる臭気成分を低温で効率良く脱臭できるシステムであることを特徴としている。本発明における脱臭メカニズムによると、まず、無機系多孔質担体に含有された吸湿剤により、排気ガス中に含まれる多量の水分が吸収される。次に、吸湿剤に取り込まれた水分にマイクロ波が照射されることにより水分が発熱し、無機系多孔質担体に担持されている酸化触媒が加熱されて、触媒活性が高まり脱臭に寄与する。本発明においては、酸化触媒の担体である無機系多孔質単体として、マイクロ波透過性の材料を選択することにより、粒状の酸化触媒が詰まった触媒充填フィルター全体にマイクロ波を照射することができる。また、生ゴミ処理機等においては、臭気の発生と同時に多量の水分(蒸気)が発生するため、効率良く触媒を活性化させることができ、その結果、不必要に装置内で発熱することがないため、低温で効率良く脱臭できる脱臭システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の脱臭システムの一例を示す概略図である。
【図2】本発明外の脱臭システムの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の脱臭システムは、吸湿剤を含有するマイクロ波透過性の無機系多孔質担体に酸化触媒が担持されてなる粒状の脱臭触媒を、吸排気が可能なフレーム内部に充填されてなる脱臭触媒充填フィルターと、通風使用した状態の該脱臭フィルターに直接照射できる位置に設置されたマイクロ波照射装置とが一体となっていることを特徴とする。
【0013】
本発明における吸湿剤としては、少なくとも水分を吸着できる機能を有するものであれば良いが、特に化学的に水分を吸着するとともに、吸湿しても固体状態を維持する化合物が好ましい。このような化合物としては、例えば金属酸化物、金属の無機酸塩・有機酸塩等が挙げられる。金属酸化物の中では、アルカリ土類金属酸化物が好ましく、無機酸塩としては硫酸塩を用いることが好ましい。
【0014】
アルカリ土類金属酸化物としては、例えば酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ストロンチウム(SrO)が挙げられる。硫酸塩としては、例えば硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、硫酸カルシウム(CaSO)、硫酸マグネシウム(MgSO)、硫酸コバルト(CoSO)、硫酸ガリウム(Ga(SO)、硫酸チタン(Ti(SO)、硫酸ニッケル(NiSO)等が挙げられる。この他にも、本発明の吸湿剤として、シリカゲル、炭酸カルシウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、水酸化リチウム等も好適な材料として使用することができる。
【0015】
本発明では、水分とマイクロ波が選択的に作用して発熱することが好ましいため、マイクロ波透過性の無機系多孔質担体を酸化触媒の担体として選択することを構成要素の一つに挙げている。例えば、マイクロ波を吸収して自己発熱により発熱するマイクロ波吸収発熱体として、炭化ケイ素や、酸化鉄、酸化クロム、酸化チタン等の酸化物、さらに、これらの物質を含む複合材料等が挙げられるが、これらマイクロ波吸収発熱体を用いると、脱臭システムがマイクロ波照射の間、常に加熱されることとなるため、適さない。
【0016】
マイクロ波透過性の無機系多孔質担体として使用するマイクロ波透過性の材料は、吸湿剤により吸着した水分がマイクロ波と作用して高温に発熱するため、耐熱性を有する材料で構成されることが好ましい。また、多量の水分に接触する可能性があることから、水に対して基本的に不溶又は難溶であり、水中に浸漬しても崩壊しない耐水性を有していることが好ましい。マイクロ波透過性の無機系多孔質担体としては、例えばガラス、陶磁器、ハイシリカゼオライト、アルミナ等を骨材に使用したセラミック材料などが挙げられる。また、例えば、活性炭、活性白土、ゼオライト、アルミナ、シリカゲル、活性アルミナ、粘土鉱物等も挙げられる。中でも、ゼオライト、アルミナ、活性炭、粘土鉱物が好適に用いられる。
【0017】
活性炭を用いる場合には、その原料としては、例えば木粉、ヤシ殻などの植物原料、無煙炭、石油ピッチ、コークス等の石炭、石油系原料、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂などの合成樹脂系原料などが挙げられるが、中でも、ヤシ殻から得られるヤシ殻炭や無煙炭、石油ピッチ、コークス等の石炭が好適である。これら活性炭原料は、例えば固定床、移動床、流動床などで賦活化される。賦活化は、例えば水蒸気、塩素、塩化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素等を用いるガス賦活、アルカリ、酸又は塩化亜鉛などの薬品を用いる薬品賦活などがあるが、本発明に用いられる活性炭は、その何れによって賦活化されたものでもよい。
【0018】
本発明に係わるマイクロ波透過性の無機系多孔質担体は、粘土鉱物であることが好ましく、親水性表面に吸着した臭気物質が水分によって除去され易く、再生にも適した脱臭剤として使用することもできる。例えば、化学組成はシリカを主成分としてAl、Fe、Mg、Znなどの構成金属成分を含有し、形状は四面体結晶を形成する層(4配位層)又は八面体結晶を形成する層(6配位層)からなる単位層が積層した層状構造を有する層状ケイ酸塩(フィロケイ酸塩)を主成分とする材料であり、具体的にはタルク、カオリナイト、セピオライト、ベントナイト、活性ベントナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、酸処理モンモリロナイト、活性白土、燐酸添着活性白土、スチブンサイト、アメサイト、フライポンタイトなどを主成分とする無機系多孔質担体が挙げられる。これらは、天然物、変性物、合成物又は複合化物の何れであっても良い。
【0019】
活性白土は、酸性白土あるいはフラースアースと呼ばれる粘土を硫酸処理して得られる無機系多孔質担体であり、モンモリロナイトを主成分とする。また、ゼオライトは、一般に含水アルミノケイ酸塩をいい、ケイ酸ナトリウムなどをシリカ源、水酸化アルミニウム等をアルミナ源として用い、これらと水酸化ナトリウム水溶液から作られるゲルを乾燥して得られる無機系多孔質担体であり、分子篩い作用と極性分子に選択性を有する。また、シリカゲルは、ケイ酸ナトリウム水溶液を硫酸で処理してゲル化し、硫酸ナトリウムを水洗除去して得られる無機系多孔質担体で、極性分子に選択性を有する。活性アルミナはアルミナ三水和物を加熱脱水して得られる無機系多孔質担体で、極性分子に選択性を有する。
【0020】
粘土鉱物は、一般に、二層又は三層構造として表される単位層が数層乃至数十層積層されて存在するが、このように単位層を積層させず、シリカ微粒子などからなるマトリックス中に単位層を分散させ、粘土鉱物の吸着表面積を拡大した粘土鉱物が合成されており、本発明のマイクロ波透過性の無機系多孔質担体として好ましいものである。
【0021】
本発明に用いられるマイクロ波透過性の無機系多孔質担体は、固体酸性部位と固体塩基性部位を併せ持つ両性吸着剤であっても良く、アンモニアやトリメチルアミンなどの塩基性臭気成分及び硫化水素やイソ吉草酸などの酸性臭気成分の両者を効率良く脱臭することができる。
【0022】
なお、マイクロ波透過性の無機系多孔質担体は、粒状、粉末状や、ペレット状、タブレット状、球状、顆粒状に成型して使用することが好ましい。このうち、ペレット状、球状の吸着剤は通気性が得やすく、ファンの動力などのシステム設計上、有利に用いられる。
【0023】
酸化触媒としては、金、白金、パラジウム、マンガンなどが好適な材料として挙げることができる。これらの触媒によって分解された臭気成分は、CO、HO、又はSO、N、NOに変化することにより、無臭化させることができる。中でも、白金、パラジウム等の貴金属触媒を酸化触媒として使用すると、300℃程度の温度で直接燃焼と同様の酸化分解を行うことができることが知られており、他の材料を使用した場合と比較してランニングコストが安く、装置をコンパクトに設計することが可能となる。
【0024】
吸湿剤をマイクロ波透過性の無機系多孔質担体に担持させる場合には、吸湿剤を分散又は溶解させた液にマイクロ波透過性の無機系多孔質担体を含浸する。また、酸化触媒を無機系多孔質担体に担持させる場合には、触媒成分を分散又は溶解させた液に無機系多孔質担体を含浸して直接担持させる。担持させるための媒体は、水でもよいが、担体の細孔が微細であるため、水よりも表面張力の小さな溶媒、例えばエタノール等のアルコール系溶媒を用いるとより好ましい。水のように表面張力の大きい溶媒は、細孔内に浸透しにくいため、細孔を十分に活用できない場合があるが、表面張力の小さな溶媒を用いることで、微細な細孔内にも入り込むことができ、細孔を十分に活用して、吸湿剤や触媒成分を効率良く担持することが可能である。マイクロ波透過性の無機系多孔質担体に触媒成分を含浸させた後、還元処理及び適宜加熱処理することにより、目的とする脱臭触媒を得ることができる。
【0025】
吸湿剤/マイクロ波透過性の無機系多孔質担体の質量比率は、1/100〜50/100が好ましく、5/100〜30/100がより好ましく、10/100〜20/100がさらに好ましい。該質量比率が1/100より小さい場合、十分な吸湿性が得られず、マイクロ波の照射による加熱効果が得られない場合がある。また、該質量比率が50/100より大きい場合、担体の強度が十分に得られず、崩れ、粉落ちの原因となる場合がある。
【0026】
酸化触媒の含有量は、マイクロ波透過性の無機系多孔質担体に対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%がさらに好ましい。該含有量が0.1質量%未満の場合、十分な脱臭性能が得られない場合がある。また、該含有量が20質量%を超えた場合、触媒量が過剰量となり、それ以上の脱臭効果が得られなくなる場合がある。
【0027】
本発明において、脱臭触媒充填フィルターは、吸排気が可能なフレームに脱臭触媒が充填されてなる。吸排気が可能なフレームとしては、マイクロ波透過性の材料で製造されることが好ましく、マイクロ波の照射の際、マイクロ波がフレームを透過して内部の脱臭触媒に照射される。通風方向に対して、入口側と出口側に相当する2ヶ所の通風断面部には、内部に充填された脱臭触媒が脱落しない程度の構造として、できるだけ通気性の高い材料を用いることが好ましい。例えば、ネット状の樹脂や耐熱性の不織布などが用いられる。
【0028】
マイクロ波は、例えば周波数1〜10GHz、出力100〜1000Wのマイクロ波を使用することができる、一般的には、2.45GHzが使用される。マイクロ波が、脱臭触媒全体に均一に照射されるように、マグネトロンを配置することが好ましい。
【0029】
マイクロ波照射装置は、脱臭触媒にマイクロ波を照射できさえすれば、どのような構成であってもよく、例えば、マグネトロンとその制御手段からなっていてもよい。また、通風手段も、空気を通風させることができれば、構成は如何なるものでも構わない。例えばファンを使用することができる。
【0030】
本発明の脱臭システムは、少なくとも、脱臭触媒充填フィルター、マイクロ波照射装置、通風手段を有することが好ましく、脱臭装置に具備される。図1を用いて、本発明の脱臭システムの一例を説明する。本発明の脱臭システムは、吸排気が可能なフレームに脱臭触媒2が充填された脱臭触媒充填フィルター3、脱臭触媒充填フィルター3に吸排気を行うための回転軸8を備えたファン6、脱臭触媒充填フィルター3にマイクロ波を照射するためのマイクロ波照射装置1とから構成される。脱臭触媒充填フィルター3の周囲はマイクロ波遮蔽材5で覆われているが、マイクロ波照射装置1と脱臭触媒充填フィルター3との間にはマイクロ波透過窓4が設置されていて、マイクロ波が直接照射できるようになっている。脱臭触媒充填フィルター3は、風向き7の方向で、通風状態となる。
【0031】
マイクロ波透過窓4としては、ポリスチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)などの樹脂材料の他、ガラス、陶磁器、ハイシリカゼオライト、アルミナ等を骨材に使用したセラミック材料等の材料を使用することができる。また、マイクロ波遮蔽材5としては、複合磁性材料、フェライト焼結体、電磁波吸収用シート等の材料を使用することができる。
【0032】
本発明の脱臭システムの使用方法では、本発明の脱臭システムの脱臭触媒充填フィルターにマイクロ波を照射しながら、通風することにより臭気除去を行う。脱臭触媒にマイクロ波を照射し脱臭触媒を加熱する際、脱臭触媒の温度が500℃以下となるように、マイクロ波を照射することが好ましい。500℃を超えた温度となると、脱臭触媒が変質、燃焼等してしまい、吸着能力が低下するからである。また、マイクロ波透過性の無機系多孔質担体が炭素を含む場合には、耐熱性の観点から、350℃以下となるようにマイクロ波を照射することが好ましい。
【0033】
マイクロ波の照射時間は、脱臭触媒の種類、臭気物質の量、マイクロ波の周波数及び出力等により相違するが、連続的に照射する場合は、例えば1〜20分間の照射時間が好適である。処理時間が長時間になるときは、断続的に照射時間(酸化触媒による分解)と照射停止時間(脱臭触媒の無機系多孔質担体への吸着による脱臭)を交互に組み合わせて使用することも有効である。
【実施例】
【0034】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0035】
実施例1
マイクロ波透過性の無機系多孔質担体として、アルミナとハイシリカゼオライトを骨材とする直径3mmφの球状セラミック粒子を用いた。このセラミック粒子に、吸湿剤として酸化カルシウム、酸化触媒として白金触媒を担持させて、脱臭触媒を製作した。通風断面の大きさが60mmφ、通風長さが50mmのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)共重合樹脂製フレーム(容積約130cc)の中に、この脱臭触媒50gを充填させることにより、脱臭触媒充填フィルターとした。脱臭触媒は、アルミナ45質量部、ハイシリカゼオライト35質量部、酸化カルシウム15質量部、白金触媒5質量部となるように、構成比率を調製した。脱臭触媒フィルターとマイクロ波発生器とを図1に示す位置関係で配置することにより、実施例1の脱臭システムとした。
【0036】
実施例2
マイクロ波透過性の無機系多孔質担体としてコージェライトを骨材とする直径3mmφの球状セラミック粒子を用いた。このセラミック粒子に、吸湿剤として酸化カルシウム、酸化触媒として白金/パラジウム触媒を担持させて、脱臭触媒を製作した。通風断面の大きさが60mmφ、通風長さが50mmのABS樹脂製フレーム(容積約130cc)の中に、この脱臭触媒を50g充填させることにより、脱臭触媒充填フィルターとした。脱臭触媒は、コージェライト75質量部、酸化カルシウム20質量部、白金/パラジウム触媒5質量部となるように、構成比率を調製した。白金とパラジウムの質量比は1:3となるよう処方した。脱臭触媒充填フィルターとマイクロ波発生器とを図1に示す位置関係で配置することにより、実施例2の脱臭システムとした。
【0037】
比較例1
無機系多孔質担体として、アルミナ及びマイクロ波吸収性に優れる酸化鉄と酸化マグネシウムを骨材とする直径3mmφの球状セラミック粒子を用いた。このセラミック粒子に、酸化触媒として白金触媒を担持させて脱臭触媒を製作した。通風断面の大きさが60mmφ、通風長さが50mmのABS樹脂製フレーム(容積約130cc)の中に、この脱臭触媒50gを充填させることにより、脱臭触媒充填フィルターとした。脱臭触媒は、アルミナ45質量部、酸化鉄30質量部、酸化マグネシウム20質量部、白金触媒5質量部となるように、構成比率を調製した。脱臭触媒充填フィルターとマイクロ波発生器とを図1に示す位置関係で配置することにより、比較例1の脱臭システムとした。
【0038】
比較例2
無機系多孔質担体として、アルミナ及び酸化鉄と酸化マグネシウムを骨材とする直径3mmφの球状セラミック粒子を用いた。このセラミック粒子に、酸化触媒として白金触媒を担持させて脱臭触媒を製作した。通風断面の大きさが60mmφ、通風長さが50mmのアルミニウム製フレーム(容積約130cc)の中に、この脱臭触媒50g充填させることにより、脱臭触媒充填フィルターとした。脱臭触媒は、アルミナ45質量部、酸化鉄30質量部、酸化マグネシウム20質量部、白金触媒5質量部となるように、構成比率を調製した。脱臭触媒充填フィルターとセラミックヒーターとを図2に示す位置関係で配置することにより、比較例2の脱臭システムとした。図2の脱臭システムは、吸排気が可能なフレームに脱臭触媒2が充填された脱臭触媒充填フィルター3、脱臭触媒充填フィルター3に吸排気を行うための回転軸8を備えたファン6、脱臭触媒充填フィルター3を加熱するためのセラミックヒーター9、通風管10とから構成される。通風管10は、アルミニウム製である。脱臭触媒充填フィルター3及び通風管10は、風向き7の方向で、通風状態となる。
【0039】
比較例3
吸湿剤を含有させない以外は、実施例1と同様にして、脱臭触媒充填フィルターとマイクロ波発生器とを図1に示す位置関係で配置することにより、比較例3の脱臭システムとした。
【0040】
比較例4
無機系多孔質担体として、アルミナ及びマイクロ波吸収性に優れる酸化鉄と酸化マグネシウムを骨材とする直径3mmφの球状セラミック粒子を用いた。このセラミック粒子に、吸湿剤として酸化カルシウム、酸化触媒として白金触媒を担持させて脱臭触媒を製作した。通風断面の大きさが60mmφ、通風長さが50mmのABS樹脂製フレーム(容積約130cc)の中に、この脱臭触媒50gを充填させることにより、脱臭触媒充填フィルターとした。脱臭触媒は、アルミナ45質量部、酸化鉄30質量部、酸化マグネシウム20質量部、酸化カルシウム20質量部、白金触媒5質量部となるように、構成比率を調製した。脱臭触媒充填フィルターとマイクロ波発生器とを図1に示す位置関係で配置することにより、比較例1の脱臭システムとした。
【0041】
<脱臭性能の試験方法>
実施例及び比較例で作製された各々の脱臭システムの脱臭性能について、以下に記述する方法で評価を行った。脱臭システムに供給する試験ガスの条件は、生ゴミ処理機の排出ガスに近い、温度60℃、湿度95%の高温度・高湿度の条件とした。さらに、アセトアルデヒドとアンモニアが各々10ppmの濃度となるように混合し、試験ガスを調製した。この試験ガスが脱臭触媒充填フィルター容積に対してSV値=15000(風速:約0.2m/sec)となるように風量調節を行い、脱臭効果を評価する方法とした。なお、試験系の運転システムは、試験ガス供給及びマイクロ波照射(又はセラミックヒーター加熱)を20分間行い、20分経過後からの10分間は、臭気ガス供給とマイクロ波照射(又はセラミックヒーター加熱)を停止させて通風運転のみとすることで、30分間を1サイクルとして、30サイクル連続運転させた。
【0042】
<除去率の初期性能・耐久性能>
上記の試験方法において、1サイクル目の3分後、20分後の臭気成分の除去率及び排出温度を計測した。臭気成分の除去率は、アセトアルデヒドとアンモニアの各々の除去率を求め、平均値を採用した。各々のガス検出には、ガス検知管(ガステック社製)を用いた。
【0043】
<臭気強度の官能評価>
上記の試験方法において、30サイクル目開始から10分間後の排気口の臭気を人の嗅覚によって6段階臭気評価法によって、強度を判定した。
【0044】
※6段階臭気強度の判定基準※
判定: 臭気強度レベル
0 : 無臭
1 : やっと感知できるにおい
2 : 何のにおいか判る弱いにおい
3 : 楽に感知できるにおい
4 : 強いにおい
5 : 強烈なにおい
【0045】
【表1】

【0046】
実施例の脱臭システムは、マイクロ波透過性の無機多孔質系担体を用いることにより、吸湿剤によって脱臭触媒担体の内部に蓄えられた水分に、マイクロ波が効率良く照射されて発熱し、脱臭触媒充填フィルター全体の酸化触媒が活性化されることで、高い除去率が得られていることが分かる。排出温度も40℃〜50℃と比較的低温の排出温度となった。
【0047】
これに対して、比較例1及び4の脱臭システムは、マイクロ波吸収発熱性の材料を使用したことによって、脱臭触媒充填フィルターの内部にまでマイクロ波が進入することができず、酸化触媒の一部しか活性化されず、大幅に除去率が低い結果となった。また、比較例3の脱臭システムでは、脱臭触媒が吸湿剤を含有していないため、大幅に除去率が低い結果となった。比較例2の脱臭システムは、熱源としてセラミックヒーターを使用することにより、触媒を高温に加熱する方式の脱臭システムであるが、セラミックヒーターが触媒を活性化する温度に達するまでに時間が掛かるため、試験開始間もない3分後の除去率は著しく低い結果となった。これに対して、20分後の性能では、セラミックヒーターが十分に加熱されて、高い除去効率に達するものの、排出温度が100℃以上の高温となるため、何らかの冷却手段を設けないと、実用性の観点から、実施困難である。本試験結果に示すとおり、本発明の脱臭システムは、ガス中に含まれる水分を利用して、効率良く触媒を活性化させることができ、排気が低温のまま高い脱臭効果が得られる脱臭システムであることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の脱臭システム及び脱臭システムの使用方法は、生ゴミ処理機のみならず、家庭用・業務用の空調関連機器や、工場排気処理などの空気清浄分野において、利用可能である。より具体的には、空気清浄機、家庭用冷蔵庫、業務用冷蔵庫、畜産業や食品加工業等の業務用の脱臭器又は脱臭装置にも応用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 マイクロ波照射装置
2 脱臭触媒
3 脱臭触媒充填フィルター
4 マイクロ波透過窓
5 マイクロ波遮蔽材
6 ファン
7 風向き
8 回転軸
9 セラミックヒーター
10 通風管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿剤を含有するマイクロ波透過性の無機系多孔質担体に酸化触媒が担持されてなる粒状の脱臭触媒を、吸排気が可能なフレーム内部に充填されてなる脱臭触媒充填フィルターと、通風使用した状態の該脱臭触媒充填フィルターに直接照射できる位置に設置されたマイクロ波照射装置とが一体となっていることを特徴とする脱臭システム。
【請求項2】
請求項1の脱臭システムの脱臭触媒充填フィルターにマイクロ波を照射しながら、通風することにより臭気除去を行う脱臭システムの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−206672(P2011−206672A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76770(P2010−76770)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】