説明

脱臭フィルタ

【課題】 触媒機能での自己再生タイプの脱臭フィルタを使用し、厨房や食品加工場からのオイル分を含んだ臭気物質を除去する場合、ハニカムフイルタなどを使用するガス流入口に経時変化でオイル分、じん埃などが付着し貫通孔が閉塞することが生じる。この場合脱臭フィルタ全てを取り替えなければならないといった問題があった。
【解決手段】 そこで、高比表面積のセラミックス材料からなる無機系粉末原料と気孔形成剤と有機バインダーと水分と潤滑剤にオイル分解機能および脱臭機能を持った超微細なナノ粒子状金属触媒を添加したハニカム構造体の脱臭フィルタを長さ30mm程度のプレ層としてハニカム構造体の脱臭フィルタの前に密着して設置しょうとしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は厨房や食品加工場からのオイル分を含んだ臭気物質の除去に効果的な自己再生タイプの脱臭フィルタに関し、特に脱臭フィルタの前部に合体して設けてメンテナンス用プレ層として利用できるようにした脱臭フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、厨房や食品加工場からのオイル分を含んだ臭気物質を除去するために吸着作用を使用した吸着脱臭法が知られている。そして一般的に用いられる吸着脱臭法は活性炭であるが、一定期間使用するとそれ以後の効果が著しく低下し実質的に脱臭ができなくなるため一定期間毎に活性炭を交換せざるを得ないといった問題があった。
【0003】
そこで、この問題を解決するためセラミックスからなる粉末原料と酸化チタンあるいはマンガン酸化物あるいは銅酸化物あるいは銀化合物などの脱臭および分解機能を持った触媒にバインダーおよび水を混練し、押出成形機にて多孔質の隔壁により仕切られた複数の貫通孔を有するハニカム構造体を形成して脱臭フィルタとしたものが知られている、あるいはセラミックスからなる粉末原料にバインダーおよび水を加えて混練し、押出成形機にて多孔質の隔壁により仕切られた複数の貫通孔を有するハニカム構造体に、酸化チタンあるいはマンガン酸化物あるいは銅酸化物あるいは銀化合物とバインダー成分からなる吸着機能を持った触媒層を密着させて脱臭フィルタとしたものが開発され、自己再生タイプの脱臭フィルタとして最近使用されるようになってきた。
【0004】
しかし、これらの触媒は製造と性能上、金属触媒を使わざるを得ないことから、従来技術では大きな粒子のものを多量に使うようになるため、その分価格上昇になったり、また性能的には反応比表面積が小さく臭気ガスとの接触が弱く脱臭効果が十分でなかった。
【0005】
さらに、厨房や食品加工場からの臭気成分およびオイル分の分解も遅く、結果的にオイル分の分解、脱臭効果が得られないことにつながっている。しかも、オイル分でハニカム構造体の孔を塞いでしまうと臭気ガスと触媒との反応ができなくなるといった問題が生じた。
【発明の開示】

【発明が解決しょうとする課題】
【0006】
そこで、本発明はこれらの問題を解決したもので、本発明の第1の目的は厨房や食品加工場から発生するオイル分を含んだ臭気ガスに対しても高い捕集効率でありながら、圧力損失の小さい、しかも寿命の長い脱臭フィルタを提供しようとしたものである。
【0007】
本発明の目的は入口流入部に多く付着するじん埃、オイル分付着部の交換を簡易的にできるメンテナンス用プレ層として、使用できるようにしたものである。
【0008】
次に本発明の目的はハニカム構造体の孔に付着した臭気成分およびオイル分をすばやく金属触媒で分解反応し、孔の表面を常に斬新な状態で臭気ガスとの接触とガス分解を維持できるようにしたものである。
【0009】
また、オイル分を含んだガス成分に対し金属触媒で分解する自己再生機能をもっているのでオイル分を含んだ臭気に対しても半永久的に使用可能で且つ優れた脱臭機能を備えたものを提供しょうとしたものである。
【0010】
さらに、本発明の目的は種々の臭いが入り混じった悪臭を有効に除去できるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上述の課題を解決しょうとしたもので、本発明の第1の解決手段は1〜100Åの細孔を持った比表面積の高いセラミックスからなる無機系粉末原料と気孔形成剤と有機バインダーと水分と潤滑剤にオイル分解機能および脱臭機能を持った超微細なナノ粒子状金属触媒を添加し、オイル分、ガスとの接着および反応面積を拡大させる目的で混練物を焼成してハニカム状に成形した脱臭フィルタをメンテナンス用プレ層としてセラミックス製ハニカム状脱臭フィルタの前部に奥行き5〜50mmの外形寸法で合体して設けたことを特徴としたものである。
【0012】
前記脱臭フィルタを気流の入口部が50〜300mm、奥行き30〜500mm、貫通孔2〜10mmの外形寸法で脱臭フィルタを形成したことを特徴とするものである。
【0013】
そして、比表面積の高いセラミックスからなる無機系粉末原料としては、酸化珪素、酸化カルシウム、アルミナ、酸化カリウム、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化珪素、窒化ホウ素、カオリン、タルク、シリカ、および石英よりなる群から選ばれる少なくとも一種を含むものを主原料とするものを挙げることができる。中でも熱伝導性および耐熱性の点で酸化珪素あるいはゼオライトあるいはセピオライトを主成分とすることが好ましい。
【0014】
気孔形成材としては、クルミ粉、小麦粉、木粉、綿粉、ポリエチレン、あるいはポリプロピレンなどの合成樹脂などを挙げることができる。これらの細孔形成材は可燃性の粉体であり、焼成工程で実質的に焼失して無くなるためハニカム構造体に人工的にマクロ孔を形成することができる。用いる細孔形成の粒径は最終品でマクロ孔が1〜500μmになるものを用いる。例えば粒径は1〜500μmのクルミ紛などの細孔形成を用いることによりマクロ孔が1〜500μmのハニカム構造体を製造することができる。
【0015】
金属触媒としては平均粒径3〜50nmの亜鉛あるいは平均粒径0.05〜100μmの酸化チタンなどが好ましいが、その他、超微細なナノ粒子形状のアルミニウム、マンガン、銀、マグネシウム、酸化鉄などが挙げられる。
そして、原材料の成分割合は平均粒径3〜50nmの亜鉛の場合は1〜30%、あるいは平均粒径0.05〜100μmの酸化チタンの場合は.1〜30%が好ましい。
【0016】
有機バインダーはセラミックスからなる無機系粉末原料をつなぐものであり、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、またはポリビニルアルコールなどを用いることができる。これら有機バインダーは一種単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
投入する水分の量は通常上述した粉末原料100重量部に対して20〜50重量部程度であり、水を投入後得られた混合原料を真空混練機などで混練し可塑性とする。
【0018】
成形方法は押出し成形が好ましく例えば2軸スクリュー式連続押出成形機などを用いて行うことができる。
【0019】
また、ハニカム構造体を乾燥する方法としては、例えば電気ヒーター式乾燥機、ガスバーナー式乾燥機などを挙げることができる。
【0020】
次に脱臭フィルタの製造方法について述べる。
まず、セラミックスからなる無機系粉末原料と気孔形成剤と有機バインダーおよび水分に潤滑剤、更にはオイル分解機能および脱臭機能を持った超微細な平均粒径10〜20nmのナノ粒子状亜鉛を添加した材料を混練機にて混練して可塑性の混練物を得る。
【0021】
次いで、その混練物を2軸スクリュー式連続押出成形機のホッパーに供給し、成形ダイスより外観が方形立法体形状のハニカム構造体となって押し出される。
【0022】
ハニカム形状に成形されたハニカム構造体を電気ヒーター式乾燥炉で乾燥する。この際、ハニカム構造体は多量の水分を含んでいるため、そのものを焼成温度である450℃以上の炉に直接入れると急激な温度上昇に伴う水の膨張などによりハニカム構造体が割れたり変形を生ずる場合がある。このため焼成前に比較的ゆるやかに水分を取り除く乾燥を行うことが望ましい。
また、ハニカム構造体の焼成温度を400〜800℃とすることにより気孔形成剤は焼失してしまうためハニカム構造体の隔壁全体に0.01〜500μmの大きさの気孔が形成される。
【0023】
そして、オイル分解機能および脱臭機能を持った超微細な平均粒径10〜20mmのナノ粒子状亜鉛をした気孔表面を形成したハニカム構造体を気流の入口部が50〜300mm、奥行き30〜500mmの外形寸法に切断し脱臭フィルタを得た。
【0024】
また、前記のハニカム構造体を奥行き5〜50mm寸法に切断し、本発明の脱臭フィルタあるいは従来のセラミックス製ハニカム状脱臭フィルタの前部に合体して設け、じん埃、オイル分付着の交換容易なメンテナンス用プレ層用として使用できるようにした。
【0025】
次に上記課題解決手段による作用は次の通りである。すなわち脱臭フィルタを構成するハニカム構造体の隔壁にはオイル分解機能および脱臭機能を持った超微細な平均粒径10〜20mmのナノ粒子状亜鉛を含有した気孔表面を形成しているので、脱臭フィルタに吸入された厨房から発生したオイル分を含んだ臭気ガスは気孔表面の粒子状亜鉛に接触し、臭気のないまたは低臭気成分のエアーとなって脱臭フィルタを流出する。一方粘性のあるオイル分は気孔表面に付着するが粒子状亜鉛には触媒機能を有しているので、すばやく分解し孔の表面を常に斬新な状態を維持できる。
【発明の効果】
【0026】
上述したように、本発明の脱臭フィルタは次のような効果が得られる。
(1)セラミックスからなる無機系粉末原料にオイル分解機能および脱臭機能を持った金属触媒すなわち超微細な平均粒径10〜20nmのナノ粒子状亜鉛を一緒に練りこんでハニカム構造体としたので臭気ガスとの接触がよく反応速度がよくなって高効率のガス除去とオイル分解性能が得られる。
(2)例えば1〜1000Åの多孔質セラミックスからなる無機系粉末原料にに気孔形成材を一緒に練りこんでハニカム構造体としたので、気泡を多く作れ比表面積の高いものが得られる。これにより細孔の中に臭気ガスなどを吸着させて細孔の中にある金属触媒と反応させ無臭成分に変換させて低炭化水素系ガスなどの無臭エアとして放出される。
(3)ガス中のオイル分は細孔に付着するが金属触媒によって分解されるため、細孔の表面は常に斬新な吸着機能状態に維持される。
(4)ハニカム構造体はガスの流れが遮られることなく連続した通路を形成しているので、通気抵抗が低くファン動力などの省エネ効果につながる。
(5)ハニカム構造体自身には多くの気泡体となっているので、比重が軽くその分取り扱いがし易くなっている。
(6)厨房設備や食品加工場から発生する臭気ガスの濃度に応じて、脱臭フィルタの数を選定すれば良く、脱臭対策が簡単である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下本発明の脱臭フィルタを添付図1に基いて説明する。
【0028】
図中1は脱臭フィルタで、約50〜300mmの角形で長さが約30〜500mmの形状をしたハニカム構造体2から形成されている。3は厚みが1mm以下の隔壁で、この隔壁3によって貫通孔4が形成されている。さらに隔壁3の壁には1〜500μmの細孔と1〜1000Åの微細孔が形成されている。5はプレ層である。
【実施例1】
【0029】
セピオライト(セラミックス粉末原料)100重量部と平均粒径10〜20nmのナノ粒子状亜鉛(金属触媒)10重量部とポリプロピレン(気孔形成剤)5部とヒドロキシメチルセルロース(有機バインダー)8重量部とポリビニルアルコール(有機バインダー)2重量部と界面活性剤(潤滑剤)4重量部と水80重量部をニーダー混練機で混練する。
【0030】
前記原料混練物を押出し成形装置のホッパーに導入する。導入した原料混練物を押出しスクリューによって出口ダイスより下流側に押し出す。押し出された成形体は切断装置により気流の入口部が50〜300mm、奥行き30〜500mmの外形寸法に切断されコンベアにより搬送されて受け取りパレットに送られる。その後、成形体を乾燥室で乾燥させ、さらに焼成炉にて焼成して本発明の脱臭フィルタが得られた。
【実施例2】
【0031】
セピオライト(セラミックス粉末原料)120重量部と平均粒径0.05〜100μmの酸化チタン(金属触媒)20重量部と平均粒径10〜20nmのナノ粒子状亜鉛12部(金属触媒)とポリエチレン(気孔形成剤)7部とメチルセルロース(有機バインダー)6重量部とポリビニルアルコール(有機バインダー)3重量部とデキストリン(潤滑剤)6重量部と水90重量部をニーダー混練機で混練する。
【0032】
前記原料混練物を押出し成形装置のホッパーに導入する。導入した原料混練物を押出しスクリューによって出口ダイスより下流側に押し出す。押し出された成形体は切断装置により気流の入口部が50〜300mm、奥行き5〜50mm寸法にされコンベアにより搬送されて受け取りパレットに送られる。その後、成形体を乾燥室で乾燥させ、さらに焼成炉にて焼成してじん埃、オイル分付着のメンテナンス用プレ層として使用可能な本発明の脱臭フィルタが得られた。
【0033】
尚、本実施例では本発明の一実施例を述べたものでこれに限定されることなく、種々変更しても何ら本発明の要旨を変更するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は厨房から発生するオイル分を含んだ臭気ガスの脱臭フィルタで高性能な臭気除去を実施すると共に従来オイル分の付着により低下する脱臭機能を改良したもので、特殊な金属触媒を原材料に含んで成形することによって、付着したオイル分を分解して脱臭面を常に斬新な状態に自己再生できるようにしたもので実用上甚だ大なるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の脱臭フィルタの斜視図を示す。
【符号の説明】
【0036】
1・・・脱臭フィルタ 2・・・ハニカム構造体 3・・・隔壁
4・・・貫通孔 5・・・プレ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
じん埃、オイル分付着のメンテナンス用プレ層としてセラミックス製ハニカム状脱臭フィルタの前部に奥行き5〜50mmの外形寸法で合体して設けたことを特徴とする脱臭フィルタ。
【請求項2】
セラミックスからなる無機系粉末原料と気孔形成剤と有機バインダーと水分と潤滑剤とオイル分解機能を持った超微細なナノ粒子状金属触媒を添加した混練物を焼成してハニカム状に成形したことを特徴とする請求項1に記載の脱臭フィルタ。
【請求項3】
セラミックスからなる無機系粉末原料は100〜500m/gの表面積を持ったセピオライト粉末原料あるいはゼオライトであることを特徴とする請求項2に記載の脱臭フィルタ。
【請求項4】
オイル分解機能および脱臭機能を持った超微細な平均粒径のナノ粒子状金属触媒が平均粒径3〜50nmの亜鉛あるいは平均粒径0.05〜100μmの酸化チタンであることを特徴とする請求項2に記載の脱臭フィルタ。
【請求項5】
平均粒径3〜50nmの亜鉛が1〜30%の範囲で含有あるいは平均粒径0.05〜100μmの酸化チタンが0.1〜30%で含有していることを特徴とする請求項2に記載の脱臭フィルタ。
【請求項6】
セラミックスからなる無機系粉末原料と気孔形成剤と有機バインダーと水分と潤滑剤とオイル分解機能を持った超微細なナノ粒子状金属触媒を添加した混練物を焼成して、気流の入口部が50〜300mm、奥行き30〜500mm、貫通孔2〜10mmの外形寸法でハニカム状に成形したことを特徴とする脱臭フィルタ。

【図1】
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【公開番号】特開2010−22785(P2010−22785A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209334(P2008−209334)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000193047)進和テック株式会社 (36)
【出願人】(390040888)日本エアー・フィルター株式会社 (45)
【Fターム(参考)】