説明

脱臭・殺菌装置

【課題】高濃度のオゾン水を生成し、散布できる脱臭・殺菌装置を提供する。
【解決手段】オゾン水生成器100′におけるオゾン水生成のための原料水の循環経路と、オゾン水散布用スプレー200′のオゾン水流入管201との接続部分に切替弁208を配し、その切替弁208の切替えにより、貯水槽10よりオゾン水生成部100′へ原料水を供給し、生成されたオゾン水を再び貯水槽10へ送り込む循環を連続的に繰り返すオゾン水生成処理と、貯水槽10内の一定濃度のオゾン水をオゾン水散布用スプレー200′のノズル205を介して散布する処理とを行える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の電気分解によりオゾンを得て、そのオゾンより所定濃度のオゾン水を製造するとともに、生成されたオゾン水を散布できる脱臭・殺菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
より快適な生活環境が求められる近時において、特定された汚染源、汚染物質を除去するための方法が種々知られている。例えば、自動車等の車両に搭載された空調装置(エアコン)は、過酷な環境、使用条件下で作動させることが多いため、長期間の使用によりエバポレータ(蒸発器)にカビや細菌が付着して汚染源となり、それらが使用空間に撒き散らされると、悪臭の発生により使用者に不快感を与えるだけでなく、アトピー感作、アレルギー症状、アレルギー疾患、呼吸器疾患等を増加させる要因ともなっている。これは、エアコンの冷房運転中、冷やされた空気が結露して、エバポレータが常に湿った状態になり、エアコンを止めてエバポレータが常温に戻ったとき、蓄積した花粉や埃によりエアコン内部にカビや細菌が増殖するからである。
【0003】
そこで、エアコンそのものの洗浄が問題になるが、自動車等のエアコンは、その設置場所等により清掃も容易でなく、例えば、ダッシュパネル(外装カバー)を外したり、電気系統の一部を外すといった作業を伴うため、エアコンそのもののクリーニングが難しい。一方、特許文献1には、エアコンのエバポレータの上流側にオゾン水噴霧ノズルを設けて、殺菌、脱臭効果を得るようにした空気調和機が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、空調装置をオゾンによって脱臭する技術が記載されている。具体的には、ブロワファンとエバポレータとを連通するダクト内にオゾンを供給し、内気循環モードでブロワファンを所定時間作動させ、その後、ダクト内へのオゾン供給を停止して外気導入モードに切り替え、ブロワファンをさらに所定時間作動させている。
【0005】
【特許文献1】実公平2−40411号公報
【特許文献2】特開平8−258562公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のエアコンの洗浄問題に鑑みて、自動車用品店等では、例えばエアコン洗浄剤や消臭剤が販売されているが、これらを使用してもエバポレータ細部の埃や花粉を取りきるのは困難であり、かかる洗浄の問題の根本的な解決策にはならない。また、特許文献1に記載の空気調和機では、ポンプ、オゾン水製造機、ノズル部等がエアコンの構成要素として必須であり、そのためのスペースの確保やメンテナンスの問題のみならず、エアコン自体が大きくなるという問題がある。特許文献2に記載のオゾン発生装置においても、ダクトの外部にオゾン発生器を設け、そのオゾン発生器から伸びている拡散パイプをブロワファンとエバポレータとの間に配置しているため、上記と同様の問題がある。
【0007】
他方、エアコンの洗浄にオゾン水を使用する場合において、オゾン水そのものの生成方法も課題の一つとなる。すなわち、オゾン水の生成方法として従来より知られているオゾン曝気法は、無声放電電界中に酸素ガスを通過させ、その酸素をオゾン化して高濃度のオゾンガスを作り、このオゾンガスと水とを気液接触させて、オゾンを水に溶解するものであるが、この方法は、高濃度のオゾン水を得るのに適していても、高濃度の気相のオゾンを製造するオゾナイザが必要なため、オゾン水生成装置が大型化するという問題がある。また、高濃度のオゾンガスを発生させてから水に溶解させるため、人体に有害なオゾンガス漏洩の危険性があり、さらには、原料気体として純酸素を用意する必要があったり、あるいは空気を使用する場合でも、空気の除湿装置や酸素濃縮装置を設ける必要がある等、取扱いが煩雑になる。
【0008】
また、水電解法は、貴金属電極を使用して水を電気分解し、それにより発生したオゾンを電解中の水に直接溶解させてオゾン水を得ているが、電源装置を含めた装置全体が小型で、原料の水が入手しやすい等の利点を有していても、電力のほとんどが水を酸素と水素に電気分解するために消費され、高濃度のオゾン水を得るには不向きである。そこで、高濃度のオゾン水を生成するため、イオン交換膜の一方の面に陽極としての触媒金属電極を当接し、他面側に陰極としての金属電極を当接して、陽極の一面側に沿わせて原料水を流過させるとともに、陽極側と陰極側に直流電圧を印加して、陽極側にオゾンを発生させるオゾン水製造方法がある。この方法では、イオン交換膜が固体電解質となり、両電極が数百ミクロンの近距離で互いに向き合うため効率的な電気分解が行われ、結果として陽極側に発生する酸素にオゾンが混ざることになる。
【0009】
しかし、上述したオゾン水製造装置は、原料水のオゾン水化の進行を促進する目的で貯水槽内の水を連続的に攪拌しているため、その攪拌によって、オゾンが溶融した水に空気が混合し、オゾン濃度が上がらないという問題がある。したがってオゾンの発生効率が低く、高濃度のオゾン水の供給が望まれていても、その要求を満たすことができない。また、攪拌のための設備が装置を大型化し、高価格にするという問題もある。さらには、製造されたオゾン水を直ちに使用するための機構がないため、生成後しばらくの間、放置される場合が多く、そのためオゾンの自己分解によりオゾン水が低濃度化し、オゾン水本来の効果を発揮し得ないという事態も生じる。
【0010】
そこで、本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、高濃度で、かつ濃度の経時変化が少ないオゾン水を作るとともに、生成されたオゾン水を直ちに散布等により使用できる脱臭・殺菌装置を提供することである。また、本発明のさらなる目的は、通常の方法では困難な箇所においてもオゾン水の散布等ができ、使用量が比較的少ない一般家庭や小規模事業所等での用途に適した、簡易かつ小型の脱臭・殺菌装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る脱臭・殺菌装置は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、オゾン水を使用して脱臭および殺菌を行う脱臭・殺菌装置であって、貯水槽に収容された原料水を電気分解してオゾンを生成し、そのオゾンを水に溶解してオゾン水を生成するオゾン水生成手段と、前記貯水槽の原料水を前記オゾン水生成手段に導くとともに、そのオゾン水生成手段で生成されたオゾン水を前記貯水槽に還流する還流手段と、前記貯水槽内のオゾン水を汲み出して散布する散布手段とを備え、前記オゾン水生成手段と前記還流手段と前記散布手段とが一体化された構造となっていることを特徴とする。
【0012】
例えば、前記オゾン水生成手段は所定の電極板からなる電極部を有し、その電極部で電気分解により生成されたオゾン水を前記還流手段によって前記貯水槽に還流する循環を所定時間繰り返すことで所定濃度のオゾン水を生成することを特徴とする。
【0013】
例えば、前記還流手段による還流に使用する第1のポンプ手段と、前記散布手段による前記貯水槽からのオゾン水の汲み出しに使用する第2のポンプ手段とを個別に設けたことを特徴とする。また、例えば、前記還流手段による原料水の循環経路と前記散布手段へのオゾン水の供給経路とを切り替える切替手段を配し、その切替手段による切替えによって、前記循環に使用するポンプと前記散布手段へのオゾン水の供給に使用するポンプとを単一のポンプ手段で共用したことを特徴とする。
【0014】
また、例えば、前記散布手段は、オゾン水の導入管と、所定長の導管の先端に配され複数の噴出孔を備えてなるノズルと、前記導入管とノズル間に配された散布調整部とを有し、前記散布調整部に設けたレバーの操作に従って前記ノズルの噴出孔よりオゾン水を放出することを特徴とする。
【0015】
例えば、前記オゾン水生成手段を前記貯水槽の外部に独立して配した構造を有することを特徴とする。また、例えば、前記貯水槽内に前記オゾン水生成手段を内蔵し、このオゾン水生成手段が前記電極部とともに前記貯水槽に対して着脱自在な構造を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、きわめて簡易で小型な装置構成で所定時間、原料水を循環させ、円滑な電気分解を持続することによってオゾンの発生効率が向上するため、高濃度のオゾン水を連続的に製造でき、かつ、そのようにして生成されたオゾン水を生成後直ちに使用可能となる。その結果、貯水槽内の非流動状態の原料水を用いて、高い殺菌性や、脱臭、酸化および脱色等の浄化性を有するオゾン水を安価かつ容易に生成でき、高濃度を維持したまま使用することができる。
【0017】
また、本発明によれば、脱臭・殺菌装置においてオゾン水生成器とオゾン水散布用スプレーとを一体化した構造とすることで、生成されたオゾン水の濃度低下が生じないうちに、高濃度のオゾン水を散布することができ、しかも、オゾン水の特性から残留物質がないため、脱臭・殺菌に伴う二次的な汚染も回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態例について図面に基づいて説明する。
<第1の実施の形態例>
図1は、本発明の第1の実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置の構成を示している。図1にす、本実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置1は、オゾン水生成器100とオゾン水散布用スプレー200からなる。オゾン水生成器100は、原料水2を満たした所定の容積を有する貯水槽10と、貯水槽10の外部に配され、原料水2よりオゾン水を生成するためのオゾン水生成部(セルユニットともいう)21と、貯水槽10よりその流出口10aを介して原料水2をオゾン水生成部21へ導くとともに、生成されたオゾン水を、流入口10bを介して貯水槽10へ還流させるという、水の循環を連続的に繰り返すための循環ポンプP1とを有している。また、オゾン水生成部21は、原料水2を電気分解するための電極部20を備えている。なお、制御部3は、所定濃度のオゾン水を生成するため、不図示の電源供給部等を含んでなり、オゾン水生成器100全体の制御を司る。
【0019】
上述したオゾン水生成のための水の循環は、貯水槽10→循環ポンプP1→循環水流入チューブ12→オゾン水生成部21→循環水流出チューブ14→貯水槽10の経路で一定時間、繰り返され、非流動状態にある貯水槽10内の原料水を攪拌することなく、原料水中におけるオゾン濃度を目的とする高い濃度にする。そのため、オゾン水生成器100の制御部3は、あらかじめ原料水2の温度と水量をもとに実験で得た所定濃度のオゾン水の生成時間(換言すれば、上記の循環を連続して行う時間)を、水量別、水温別のデータテーブルとして、不図示のデータ格納部に有している。
【0020】
より具体的には、オゾン水生成器100の制御部3は、オゾン水生成開始の際、貯水槽10に貯蔵された原料水の水量と水温とに基づき、上記水量別、水温別データを参照して循環ポンプP1の作動時間を算出(選定)する。そして、その選定結果をもとに所定時間、原料水2の循環を繰り返す。原料水中のオゾン濃度は、循環の回数が多いほど(生成時間が長いほど)高くなり、水温が低いほど高濃度のオゾン水が得られるが、生成時間が一定時間を超えると、オゾン濃度は飽和状態になる。また、同一水温の場合、水量が多いほど、一定の濃度のオゾン水を得るために長い生成時間(循環時間)を要する。したがって、本実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置のオゾン水生成器100は、原料水の循環によりオゾン水を生成するので、濃度を高めるための攪拌機構が不要となり、装置自体を小型化できる。
【0021】
なお、ここでの原料水2としては、イオン交換樹脂層を通した純水、蒸留水、水道水、または天然水でもよく、あるいは、これらの水から、活性炭層を通して塩素を除去し、カルシウム、シリカ等が多少残存した水等、多少の電気導電度を確保できるものを使用してもよい。
【0022】
オゾンが溶解している水(オゾン水)は、洗浄・殺菌・漂白・脱臭等、多目的に利用され、特に殺菌性が強いため洗浄水等として多用されている。脱臭・殺菌装置1のオゾン水散布用スプレー200は、生成された一定濃度のオゾン水を脱臭および殺菌したい箇所へ散布(噴霧)するためのものであり、貯水槽10の底部近傍まで達する長さのオゾン水流入管201と、このオゾン水流入管201を介して貯水槽10よりオゾン水を汲み上げるための汲上ポンプP2と、汲み上げられたオゾン水を、例えば霧状にするための複数の噴出孔を備えたノズル205を有している。ノズル205と汲上ポンプP2との間には、オゾン水の噴霧の切替え(入/切)を行うための握りレバー203を有してなる散布制御部202が配されている。
【0023】
握りレバー203は、脱臭・殺菌装置1の使用者が片手でオゾン水噴霧の切替えを行える大きさであり、ノズル205は、込み入った箇所、複雑な場所に配された部材、例えばエアコンのエバポレータ等の脱臭および殺菌を行えるよう、それらの部材あるいは所定の部位に直接オゾン水を散布できる長さと大きさを有する。また、自動車用の空調(カーエアコン)の場合、取付け場所の制約上、エバポレータに直接オゾン水を噴霧できない。そのため、ノズル205は、エアコンの室内のブロワー(ファン)を動作させながら、空気の取り入れ口である外気導入口にオゾン水を噴霧できる形状および大きさを有する。なお、汲上ポンプP2は、電動式あるいは手動蓄圧式のいずれであってもよい。
【0024】
図2は、オゾン水生成部21の構造を示す斜視図であり、図3は、その平面構成を示している。オゾン水生成部21の電極部20は、平板状の固形電解質膜(イオン交換膜)5の一方の面に陽極電極6を密着させ、他方の面に陰極電極7を密着させた構造を有し、オゾン発生電極として機能する。ここでは、固形電解質膜5として、オゾンに対する耐久性の強い、例えば、ナフィオン膜(デュポン社製)を使用し、陽極電極6として、例えば、メッシュ状の白金を使用する。また、陰極電極7には銀製の網を使用する。
【0025】
オゾン水生成部21は、図3に示すように陽極側水路11と陰極室13とに分離された構造を有し、陽極側水路11の一端に配した原料水流入口21aより流入した原料水2は、陽極電極6の表面に連続して接触する。また、オゾン水生成部21の中間部位には、後述する電気分解により陽極側で発生したオゾン水と陰極側で発生した水素との混合を避けるため、図2に示すように垂直方向に延びる隔壁16が設けられている。そして、陽極側水路11へ流入した原料水2は、電極部20における電気分解によって生成されたオゾンが溶融したオゾン水となって、陽極側水路11の他端に配した流出口21bより貯水槽10に還流される。
【0026】
陽極電極6と陰極電極7間に、不図示のリード線を介して所定の直流電圧(例えば、12V)が印加されると、陽極側では、陽極電極6を通してイオン交換膜である固形電解質膜5に原料水が供給され、水の電気分解により酸素(O2)が発生し、通電電流が一定値を超えたときに、O2からオゾンガス(O3)が得られる。これらのガスは、陽極側水路11の陽極電極表面における水流に巻き込まれ、オゾンは直ちに水に溶解してオゾン水(溶解オゾン)となる。また、水の分子から引き離された陽イオン(水素イオン)は陰電極側に移動する。そして、陰極電極側で水素(H2)が発生する。なお、発生した酸素ガスは、オゾンガスに比べて水への溶解度が低い(オゾンは、酸素に比べ10倍程度、水に溶けやすい)ため、そのほとんどが水中において未溶解の気泡となる。
【0027】
陽極電極6と陰極電極7の電極材は上記の例に限定されるものではなく、例えば、陽極材として金やニッケル等を、陰極材として金、白金、チタン等を使用してもよい。陽極側に白金やニッケル等を使用すると、触媒機能で発生するオゾン量が増加することが知られている。また、イオン交換膜を使用した電気分解では、電極がイオン交換膜に接触している部位とイオン交換膜が露出する面との境界部位付近で電気分解が急速に行われ、オゾンの発生率が高い。そのため、電極の形態として金網状のものを使用することで、陽極電極6とイオン交換膜5との接触境界部位を多くとることができる。
【0028】
オゾン水生成器100のオゾン水生成部21では、陽極電極6で発生した酸素ガスの泡が容易にオゾン水生成部21の上部方向へ排出されるよう、陽極側水路11は、その原料水流入口21aよりも原料水流出口21bが垂直方向において上位となるよう傾斜した構造を有する。さらに、陽極側水路11内における圧力損失を少なくするため、原料水流出口21bの径D2を原料水流入口21aの径D1よりも大きくしてある。圧力損出が大きいと、陽極側水路11内が加圧状態となって固形電解質膜5と陽極電極6との間隙部にある水が流れづらくなり、これらの狭い間隙部において水が淀むという現象が生じるからである。
【0029】
また、原料水が陽極電極6の表面に接触する相対的な流速を速めるため、陽極側水路11のうち、電極面内の前側に位置する壁8に厚みを持たせ、陽極側水路11を部分的に狭くしてある(図3において符号9で示す部分)。こうすることで、陽極電極面に発生したオゾンを水流により効率良く剥離し、拡散することができる。すなわち、電極面内において部分的に水路を狭くしたことで、その箇所における原料水の流速が速くなり、原料水を面積の小さい電極面に効率的に接触させる均一流とすることができ、同時に、発生した酸素およびオゾンが発生箇所から即座に他の場所に移動する。よって、円滑な電気分解を持続できるのでオゾンの発生効率が改善され、原料水へのオゾンの溶解効率を向上させることができる。
【0030】
一方、電気分解により陰極電極7側で発生した水素ガスは、気泡となって、陰極室13内の貯留水中を上昇し、オゾン水生成部21の上部に設けた貫通孔81から外部に放出される。オゾン水生成部21が、隔壁16を隔てて陽極側水路11と陰極室13とに分離されているので、陰極電極7側で発生した水素が、生成されたオゾン水と混合することはない。
【0031】
このように本実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置は、あらかじめメモリ等に格納された水量別、水温別のオゾン水生成データに基づいて、貯水槽内に特別の攪拌装置を設けることなしに貯水槽とオゾン水生成部との間で原料水の循環を所定時間だけ繰り返すことで、そのオゾン水生成器において所望の高濃度のオゾン水を短時間に生成できる。また、生成されたオゾン水をオゾン水散布用スプレーのポンプで汲み上げ、ノズルを介して、脱臭および殺菌したい箇所へ自在に噴霧できるため、複雑な構造を有する狭い部分にもオゾン水の散布が可能であり、それらの箇所に発生したカビや雑菌を除去して、異臭の発生や有害な雑菌の拡散を防ぐことができる。
【0032】
さらに、オゾン水生成器において貯水槽とオゾン水生成部とを分離した構成とし、必要な水量を収容できる槽を適宜、オゾン水生成部に接続するだけで、所定量、所定濃度のオゾン水を簡単に生成することができる。また、オゾン水生成部を貯水槽と分離して、その外部に配したことにより、オゾン水生成中に、オゾン水生成部における電気分解に伴って発生する熱の影響を受けてオゾン濃度が変動することが少ない。
【0033】
さらには、水量別、水温別のオゾン水生成データをもとに原料水の循環を所定時間、繰り返すことで所定濃度のオゾン水を生成できるため、オゾン水の生成過程において、センサ等によってオゾン濃度を逐一測定する必要がない。よって、そのための設備、センサ等が不要になる分、脱臭・殺菌装置を小型、軽量、および低価格とすることができる。
【0034】
<第2の実施の形態例>
次に、本発明の第2の実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置について説明する。図4は、オゾン水生成器100′とオゾン水散布用スプレー200′からなる、第2の実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置1′の構成を示している。なお、ここでは、図1に示す、上述した第1の実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置1と同一構成要素には同一符号を付して、それらの詳細な説明を省略する。
【0035】
本実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置1′は、オゾン水生成器100′の循環水流出チューブ14と、オゾン水散布用スプレー200′のオゾン水流入管201との接続部分に切替弁208を配した構成になっている。この切替弁208は、例えば手動式、機械式、油圧式、電磁式等の二方向切替え弁であり、脱臭・殺菌装置1′のオゾン水生成器100′でオゾン水を生成する場合、すなわち、循環ポンプPにより貯水槽10より流出口10aを介して原料水2を取水し、その原料水2を、オゾン水を生成するためのオゾン水生成部21に導き、生成されたオゾン水を、流入口10bを介して貯水槽10へ送り込むという、水の循環を連続的に繰り返す際には、図4の矢印a方向の流れが生じるように切替弁208の切替えを行う。
【0036】
なお、オゾン水生成器100′におけるオゾン水の生成方法等は、上述した第1の実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置1のオゾン水生成器100における生成方法と同じであり、オゾン水生成部21の構造も同じであるため、それらの説明を省略する。
【0037】
一方、生成された一定濃度のオゾン水を脱臭および殺菌したい箇所へ散布(噴霧)する場合には、切替弁208を、図4の矢印b方向の流れが生じるように切り替える。すなわち、切替弁208をb方向に切り替えた後、循環ポンプPを作動させることにより、貯水槽10内の一定濃度のオゾン水は、流出口10aを介してオゾン水生成部21に導かれる。このとき、制御部3は、オゾン水生成部21の動作を停止させるので、オゾン水はそのままオゾン水生成部21を通過して切替弁208に達し、オゾン水散布用スプレー200′のオゾン水流入管201に導入される。
【0038】
ここでは、オゾン水生成器100′の循環ポンプPによって、脱臭・殺菌装置1′のオゾン水散布用スプレー200′へオゾン水が送り込まれるため、オゾン水の散布に対して専用のポンプは不要となる。したがって、切替弁208がb方向に切り替えられているとき、握りレバー203を操作しながらノズル205を脱臭および殺菌したい箇所へ向けてオゾン水を噴霧することで、例えば霧状のオゾン水を散布できる。
【0039】
このように、オゾン水生成のための原料水の循環経路と、オゾン水散布用スプレーのオゾン水流入管との接続部分に切替弁を配し、その切替弁の切替えにより、貯水槽よりオゾン水生成部へ原料水を供給し、そこで生成されたオゾン水を再び貯水槽へ送り込む循環を連続的に繰り返すオゾン水生成処理と、貯水槽内の一定濃度のオゾン水をオゾン水散布用スプレーのノズルを介して散布する処理とを行える構成とすることで、上述した第1の実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置と同様の効果に加えて、脱臭・殺菌装置のオゾン水生成器でオゾン水を生成するための循環用ポンプと、生成されたオゾン水を散布するためのポンプとを共用できるため装置構成が簡単になり、小型・軽量かつ廉価な脱臭・殺菌装置を提供することができる。
【0040】
<第3の実施の形態例>
次に、本発明の第3の実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置について、その具体的な構造および動作を詳細に説明する。図5は、オゾン水生成器100″とオゾン水散布用スプレー200″からなる、本実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置の外観斜視図であり、図6は、その脱臭・殺菌装置の縦断面図である。この脱臭・殺菌装置1″のうち、オゾン水生成器100″は、その上部が、例えば1〜2リットル程度の水(原料水)2を収容できる貯水槽10からなり、装置の下部には、電源コード40に接続された、不図示の電気モータで駆動される循環ポンプP等が配されるとともに、装置下部の背面には、オゾン水散布用スプレー200″のオゾン水流入管201が貫設されている。
【0041】
貯水槽10の内部には、オゾン生成手段としてのオゾン水生成部23が直立した状態で配されるとともに、このオゾン水生成部23の下部には、後述する構成を備える電極部24が設けられている。また、オゾン水生成部23は、貯水槽10の背部側壁とほぼ同じ大きさを有し、清掃等を含むメンテナンスを容易にするため、貯水槽10の背部側壁に沿って電極部24とともにスライドさせて収容、あるいは抜去できる着脱自在の構造を有する。さらに貯水槽10は、四方の外壁を、耐オゾン性を有する、例えば、適当な厚さの透明な塩化ビニル板等で構成して内容水の状態が外部から確認できるようになっているが、完全な密閉構造ではなく、例えば、天井板10cの適当な位置に貫通孔を設けることにより、原料水中で発生する酸素ガス(O2)を装置外へ発散させるようにしている。また、オゾン水生成部23は、垂直方向に天井板10cまで延びる隔壁55を有し、後述する電気分解により陽極側で発生したオゾン水と陰極側で発生した水素との混合を防止している。
【0042】
ここで使用する原料水2は、上記第1の実施の形態例等と同様、イオン交換樹脂層を通した純水、蒸留水、水道水、あるいは天然水、またはこれらの水から、活性炭層を通して塩素を除去し、カルシウム、シリカ等が多少残存した水等、多少の電気導電度を確保できるものを使用する。
【0043】
貯水槽10の底面部のほぼ中央の位置にT字形状のキャップ25が配されている。このキャップ25は、所定径の導管をT字型に連結したもので、その水平方向の両端部と垂直方向の下端部それぞれが互いに連通した、計3個の開口部(水平端開口部25a,25b、および下端開口部25c)を有する。オゾン水生成時、キャップ25全体が常時、貯水槽10内において原料水2に浸された状態にある。また、キャップ25の下端開口部25cは、図6に示すように、通水管16aを介して循環ポンプPの吸入部15aに接続され、循環ポンプPの流出部15bは、通水管16bを介して、オゾン水生成部23の電極部24の一端に設けた原料水流入口26に接続されている。
【0044】
通水管16bとオゾン水散布用スプレー200″のオゾン水流入管201との接続部には、二方向の切替えを行う切替弁210が配されており、循環ポンプPの流出部15bから流出したオゾン水を通水管16b側、あるいはオゾン水散布用スプレー200″のオゾン水流入管201側へ切り替えることができるようになっている。すなわち、脱臭・殺菌装置1″のオゾン水生成器100″でオゾン水を生成する場合、図6の矢印c方向の流れが生じるように切替弁210を切り替えることで、循環ポンプPの作動により、貯水槽10→キャップ25→切替弁210→オゾン水生成部23(原料水流入口26)→オゾン水流出口28→貯水槽10の経路で原料水を連続的に循環させる。
【0045】
一方、生成されたオゾン水を、脱臭および殺菌したい箇所へ噴霧する場合には、図6の矢印d方向の流れが生じるように切替弁210を切り替えることで、循環ポンプPにより、貯水槽10内の一定濃度のオゾン水は、流出部15bと切替弁210を介して、オゾン水散布用スプレー200″のオゾン水流入管201に導入される。なお、切替弁210の切替えは、オゾン水生成器100″の前面下部に配した切替スイッチ34を、例えば“オゾ水生成”側、あるいは“オゾン水散布”側に操作することで行う。
【0046】
具体的には、脱臭・殺菌装置1″の使用者が切替スイッチ34を“オゾ水生成”側に設定し、電源スイッチ31を投入(ON)すると、循環ポンプPが吸入および吐出動作を開始し、貯水槽10内の原料水2は、キャップ25の水平端開口部25a,25bより取り込まれ(吸入され)、下端開口部25c、切替弁210を通ってオゾン生成部23の原料水流入口26に送られる。そして、図5において矢印で示すように、原料水流入口26より流入した原料水2は、電極部24の陽極電極45の前面に配した水路27を通過する。その際、原料水2が陽極電極45の表面に連続して接触する。
【0047】
陽極電極45の表面に連続して原料水2が接触することで、後述する電気分解によってオゾンが発生し、原料水2が、生成されたオゾンを含む水となり、図5で矢印にて示すように、オゾン水生成部23の電極部24の他端に設けたオゾン水流出口28を通って貯水槽10内に拡散される。なお、電源スイッチ31がON状態にあるとき、例えば、発光ダイオード(LED)や電球等からなるパイロットランプ33が点灯し、脱臭・殺菌装置1″が動作状態にあることを表示する。
【0048】
本実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置1″のオゾン水生成器100″における原料水2は、オゾン水を生成する場合、上記のように貯水槽10→キャップ25→オゾン水生成部23→貯水槽10の経路で循環を繰り返すが、その際、キャップ25は、水平端開口部25a,25bによる原料水の吸入作用により、貯水槽10内における原料水2の渦巻き流防止手段として機能する。すなわち、オゾン水流出口28から流出した、オゾンが溶解した水は、貯水槽10内において水平方向に回転する水流を形成するので、そのままでは、貯水槽10内の水が渦巻き流となる。このような渦巻き流は、原料水2の水面近傍の空気を巻き込むことになるため、原料水に空気が混合してオゾン濃度が低下する要因となる。そこで、貯水槽10の底部に配したキャップ25の水平端開口部25a,25bより、異なる2方向から槽内の原料水を吸入することで渦巻き流の発生を防止するとともに、槽内の水に濃度差が生じることを回避している。したがって、本実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置1″のオゾン水生成器100″では、従来のように攪拌等によって槽内に生じた渦巻き流により、オゾンの溶融した水に空気が混合して槽内の水のオゾン濃度が上がらないという問題は生じない。
【0049】
電極部24はオゾン発生電極として機能し、平板状の固形電解質膜(イオン交換膜)43の一方の面に陽極電極45を密着させ、他方の面に陰極電極47を密着させた構造を有する。固形電解質膜43としては、オゾンに対する耐久性の強い、例えば、ナフィオン膜(デュポン社製)を使用する。また、陽極電極45として、例えば、メッシュ状の白金を使用し、陰極電極47には銀製の網を使用する。イオン交換膜を使用した電気分解では、電極がイオン交換膜に接触している部位とイオン交換膜が露出する面との境界部位付近で電気分解が急速に行われるため、電極として金網状のものを使用することで、陽極電極45とイオン交換膜43との接触境界部位を多くとることができ、オゾンの発生率が高くなる。
【0050】
オゾン水生成時、陽極電極45と陰極電極47との間に所定の直流電圧(例えば、12V)が印加され、原料水が供給されると、オゾン水生成器100″の陽極側では、陽極電極45を通してイオン交換膜である固形電解質膜43に水の電気分解により酸素(O2)とオゾン(O3)のガスが発生する。オゾンガスは直ちに水に溶解してオゾン水(溶解オゾン)となり、水の分子から引き離された陽イオン(水素イオン)は陰電極側に移動して、陰極電極側で水素が発生する。酸素ガスは、オゾンガスよりも水への溶解度が低いため、そのほとんどが水中において未溶解の気泡となる。
【0051】
なお、陽極電極45と陰極電極47の電極材は上記の例に限定されるものではなく、例えば、陽極材として金やニッケル等を、陰極材として金、白金、チタン等を使用してもよい。陽極側に白金やニッケル等を使用すると、触媒機能で発生するオゾン量が増加する。また、陽極電極45と陰極電極47間へは、不図示のケーブル、あるいは電極部24の下部に配したコネクタを介して所定電圧が供給される。
【0052】
電気分解により陰極電極47側で発生した水素ガスは、それが気泡となって、隔壁55の背部に位置する貯水部53内を上昇して、オゾン水生成部23の上部に設けた貫通孔56から外部に放出される。また、陽極電極45で発生した酸素ガスの一部と、未溶解で少量だけ混入するオゾンとが、水素ガスと一部反応して水に戻るが、上述のように渦巻き流防止手段としてのキャップ25と酸素ガスを排出する機構とを設けることで、オゾン濃度に影響を与えるほどの問題とはならない。
【0053】
他方、生成された一定濃度のオゾン水を脱臭および殺菌したい箇所へ散布(噴霧)する場合、上述したように切替スイッチ34を“オゾン水散布”側に操作して、図6の矢印d方向の流れが生じるように切替弁210を切り替えてから電源スイッチ31を投入(ON)する。この場合、循環ポンプPにより、貯水槽10内の一定濃度のオゾン水は、キャップ25を介して切替弁210に達し、そのままオゾン水散布用スプレー200″のオゾン水流入管201へ送り込まれる。したがって、切替弁210がd方向に切り替えられているとき、オゾン水散布用スプレー200″の握りレバー203を操作しながらノズル205を脱臭および殺菌したい箇所へ向けることで、それらの箇所や部位にオゾン水を散布(噴霧)できる。
【0054】
なお、上記の説明では、切替スイッチ34を“オゾン水生成”側、あるいは“オゾン水散布”側に設定して、切替弁210を上述した経路のいずれかに切り替えてから電源スイッチ31を投入するようにしているが、これに限定されない。例えば、脱臭・殺菌装置1″のオゾン水生成器100″がオゾン水を生成する動作をしているとき、一定濃度のオゾン水が生成されたのと同時に切替スイッチ34を“オゾン水生成”側から“オゾン水散布”側に操作して、オゾン水生成モードからオゾン水散布モードに直ちに移行できるようにしてもよい。
【0055】
また、オゾン水散布用スプレー200″を使用せずにオゾン水を散布する場合、貯水槽10の下部に配した水栓(コック)30を介して貯水槽10内の一定濃度のオゾン水をスプレー機器に移し、そのスプレー機器より脱臭および殺菌したい箇所へオゾン水を散布(噴霧)してもよい。この場合、脱臭・殺菌装置1″を設置した場所以外の場所においても、オゾン水生成器100″で生成したオゾン水を散布でき、例えば電源等が配されていない場所でも任意の箇所の脱臭および殺菌が可能となる。
【0056】
次に、本実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置におけるオゾン水の生成方法等について説明する。図7は、本実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置の電気的構成を示すブロック図であり、図8は、脱臭・殺菌装置におけるオゾン水の生成工程を示すフローチャートである。図7の制御部(CPU)60は、例えば、マイクロプロセッサからなる中央制御部であり、読み出し専用メモリ(ROM)63に格納された所定のプログラムに従って脱臭・殺菌装置100″全体の制御を行う。また、その制御に伴う制御データ等は、随時読み出し可能メモリ(RAM)61に保存される。
【0057】
脱臭・殺菌装置100″の制御部60は、最初に切替スイッチ34が“オゾン水生成”側、あるいは“オゾン水散布”側のいずれに設定されているかを判定し(図8のステップS1)、そのスイッチが“オゾン水生成”側に設定されている場合、オゾン水の生成を開始するため、ステップS3で、切替弁210を上述した“c”方向に切り替える。そして、続くステップS11において、濃度設定部35によりオゾン濃度の設定がされているかどうかを判断する。オゾン濃度が設定されていれば、制御部60は、その設定値を検知するとともに、直ちにその値を濃度表示部36に可視表示する(ステップS13)。
【0058】
この濃度設定部35は、例えば、図5に示すように回転式のダイヤル機構からなるものであり、そのダイヤルを所定方向に所定の角度だけ回すことで、あらかじめ決められた複数の濃度の中から所望の濃度を設定できる。また、濃度表示部36は、設定されたppm単位の濃度を、例えば、所定桁の数字でデジタル可視表示するもので、電気式、機械式のいずれでもよい。
【0059】
次に制御部60は、ステップS15において、貯水槽10内に設けた水位センサ71a,71b、および温度センサ73で、貯水槽10内の原料水2の水量と水温を検知する。そして、それらの検知データをもとに、オゾン水の生成開始時における原料水2の水量と水温を知る。ここで、水位センサを2個設けたのは、本実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置1″のオゾン水生成器100″で生成可能なオゾン水の量に対応させ、槽内の原料水の水量が、例えば、1リットル(l)、あるいは1.5リットル(l)のいずれであるかを検知するためである。
【0060】
本実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置1″のオゾン水生成器100″は、例えば、図9や図10に示すように、あらかじめ原料水の温度と水量をもとに実験的に確証を得たオゾン水の生成時間を、温度別、水量別のデータテーブルとしてデータ格納部75に有している。具体的には、図9は、原料水の水量が1リットル(l)のときの水温とオゾン水濃度と生成時間との関係を、図10は、原料水の水量が1.5リットル(l)のときの水温とオゾン水濃度と生成時間との関係をそれぞれ示しており、横軸は生成時間(分)、縦軸はオゾン水濃度(ppm)である。なお、実験で生成されたオゾン水のオゾン濃度は、例えば、オゾンカウンタZC−15型(平沼製)を使用してヨウ素電量滴定法によって測定した。
【0061】
本実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置1″において設定可能な(すなわち生成可能な)オゾン水濃度は、原料水の水量にもよるが10ppm程度である。一般的にオゾン水は、その境界は明確にはなっていないものの、「低濃度オゾン水」と「高濃度オゾン水」の2種類に大別できる。殺菌を直接の目的にする場合、「高濃度オゾン水」を使用する必要がある。すなわち、オゾン水は、その濃度が2〜3ppmのとき、大腸菌の殺菌、植物の活性化等に効果的であるが、他の抗生の強い細菌の殺菌には効果は少なく、漂白・脱臭にもあまり効果を期待できないとされている。また、例えば、医療用内視鏡、眼鏡、入れ歯、布巾、まな板、手指等を洗浄するといった、工業用、業務用としては5ppm以上、望ましくは7ppm以上の高濃度オゾン水を多量に供給できる装置が望まれている。
【0062】
そこで、本実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置1″では、このような高濃度のオゾン水の生成を可能とすべく、図9や図10に示すようなオゾン水生成時間を設定している。より具体的には、原水が1リットル、水温が15℃のとき、使用者が5ppmの濃度のオゾン水を得たいとして、その値を濃度設定部35を介して入力した場合、制御部60は、データ格納部75を検索して、図9に示す水温別の濃度曲線(グラフ)のうち、15℃濃度の曲線をもとに生成時間を得る。この場合、オゾン水の生成時間、つまり循環ポンプ15の運転時間は、3分となる。
【0063】
制御部60は、このように設定されたオゾン水濃度に対する、貯水槽10内の原料水の水量と水温に応じたオゾン水の生成時間をデータ格納部75より選定し(ステップS17)、続くステップS21において、電源スイッチ31が投入(ON)されたかどうか、つまり、使用者によりオゾン水の生成開始の指令があったかどうかを判断する。そして、生成開始の操作による指令が確認できたならば、ステップS23で、循環ポンプPを作動させて原料水の循環を開始する。
【0064】
次のステップS25で制御部60は、所定のオゾン水生成時間が経過したかどうかを判定する。所定時間が経過していなければ、処理をステップS23に戻して循環ポンプPの作動を継続し、上述した原料水の循環を繰り返す。しかし、所定の時間が経過した場合には、設定された濃度のオゾン水が生成されたとして、ステップS27において、循環ポンプPの作動を停止する。なお、制御部60は、循環ポンプPの作動停止と同時にパイロットランプ33を消灯し、スイッチ31をOFF状態に戻す。これにより、脱臭・殺菌装置1″の使用者は、所定濃度のオゾン水の生成が完了したことを知る。
【0065】
なお、温度センサ73で検知された温度が、図9や図10に示す水温以外の温度の場合には、制御部60は、図9および図10に示す濃度曲線をもとにデータの補間を行い、その結果に従って、そのときの水量に対するオゾン水の生成時間を算出する。よって、本実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置1″では、原料水の水温が所定の温度範囲にあれば、設定された高濃度のオゾン水を短時間に生成することができる。
【0066】
一方、ステップS1において、切替スイッチ34が“オゾン水散布”側に設定されていると判定された場合には、制御部60は、ステップS5において、切替弁210を上述した“d”方向に切り替える。そして、続くステップS6において、脱臭・殺菌装置1″の使用者によりオゾン水散布のために電源スイッチ31が投入されたかどうかを判断する。そして、電源スイッチ31が投入されたならば、制御部60は、ステップS8で循環ポンプPを作動させて、貯水槽10内のオゾン水をオゾン水散布用スプレー200″のオゾン水流入管201へ送り込む。
【0067】
制御部60は、ステップS10で、使用者がオゾン水の散布を停止するために電源スイッチ31を切ったか(OFF)どうかを判定する。オゾン水の散布停止の操作がない場合、循環ポンプPの作動を継続し、オゾン水散布用スプレー200″へのオゾン水の供給を継続する。しかし、オゾン水の散布を停止するために電源スイッチ31が切られた場合には、ステップS27において、制御部60は循環ポンプPの作動を停止する。これにより、オゾン水散布用スプレー200″へのオゾン水の供給が絶たれることになる。
【0068】
このように、脱臭・殺菌装置にオゾン水生成のための原料水の循環経路と、オゾン水散布用スプレーのオゾン水流入管へオゾン水を供給する経路とを切替弁によって分け、オゾン水生成時には、貯水槽よりオゾン水生成器へ原料水を供給し、生成されたオゾン水を再び貯水槽へ送り込むという循環を連続的に繰り返して、貯水槽内に一定濃度のオゾン水が貯留するように切替弁を制御し、オゾン水散布時は、貯水槽内のオゾン水をオゾン水散布用スプレーに供給して、ノズルを介してオゾン水を散布できるよう切替弁を制御する構成とすることで、脱臭・殺菌装置のオゾン水生成器でオゾン水を生成するための循環用ポンプと、オゾン水散布のためのポンプとを共用できるので装置構成が簡単になり、小型・軽量かつ廉価な脱臭・殺菌装置を提供することができる。
【0069】
また、本実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置は、そのオゾン水生成器において、あらかじめメモリ等に格納された水量別、水温別のオゾン水生成データに基づいて、貯水槽内に特別の攪拌装置を設けることなしに貯水槽とオゾン水生成器との間で原料水の循環を所定時間だけ繰り返すことで、所望の高濃度のオゾン水を短時間に生成できる。さらには、生成されたオゾン水を、その生成直後にオゾン水散布用スプレーに供給し、ノズルを介して、脱臭および殺菌したい箇所へ自在にオゾン水を噴霧できるため、オゾン水の濃度低下が生じないうちに、例えば、自動車のエバポレータ等の複雑な構造を有する狭い部分にも、そのオゾン水を散布することができ、それらの箇所でのカビ、雑菌、異臭の除去、雑菌の拡散を防止できる。
【0070】
また、本実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置では、量別、水温別のオゾン水生成データをあらかじめ用意しておき、それらに基づいて原料水の循環を所定時間、繰り返してオゾン水を生成するので、生成途中におけるオゾン濃度の測定が不要となる。したがって、オゾン水生成器にオゾン濃度測定のためのセンサ等を設ける必要がないので、脱臭・殺菌装置を小型化、低価格化できる。
【0071】
また、図9および図10に示すように、どの設定濃度においても、オゾン水の生成時間が十数分と短時間であるため、このような短時間の生成時間内におけるオゾンの自己分解は無視し得るほど小さい。さらに、これらのオゾン水生成時間には、電極部24での電気分解に伴って発生する熱の影響による温度変化も加味されている。よって、本実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置は、オゾン水の生成途中における原料水の温度変化をも考慮に入れた構成となっているため、生成されたオゾン水のオゾン濃度が設定値と大幅にずれることもない。さらには、オゾン水の経時変化が少ないことから、生成されたオゾン水を貯蔵するためにバッファ槽等を別途設ける必要もない。その結果、本実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置のオゾン水生成器には、高価な濃度計の設置が不要となる。
【0072】
さらには、非流動状態の原料水を貯めた貯水槽内にオゾン水生成器を収容し、循環ポンプ等の電源駆動部や切替弁を貯水槽の下部に配置するとともに、オゾン水生成器とオゾン水散布用スプレーとを一体化させることにより、脱臭・殺菌装置を小型、軽量化できる。よって、例えば、家庭用や美容用等の小型化用途、エアコンのエバポレータの脱臭・殺菌等の業務用途に適した、全体的にコンパクトかつ低価格の脱臭・殺菌装置を提供することができる。
【0073】
なお、図7に示す上記第3の実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置より、その構成の一部を除外して簡易化した装置は、上記第1の実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置に適用可能である。例えば、図7に示す装置構成から温度センサ、水位センサ、温度設定部、温度表示部等を割愛してなる装置は、所定時間、一定量の原料水を循環させてオゾン水を生成するという目的、および貯水槽内のオゾン水をオゾン水散布用スプレーに供給して、ノズルを介してオゾン水を散布する目的を達成できる点において、そのまま第2の実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置として動作可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1の実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置の構成を示す図である。
【図2】第1の実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置のオゾン水生成部の構造を示す斜視図である。
【図3】第1の実施の形態例に係るオゾン水生成部の平面構成を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置の外観斜視図である。
【図6】第3の実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置の縦断面構成を示す図である。
【図7】第3の実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図8】第3の実施の形態例に係る脱臭・殺菌装置におけるオゾン水の生成工程を示すフローチャートである。
【図9】水温と水量とオゾン水生成時間との関係を示すグラフである。
【図10】水温と水量とオゾン水生成時間との関係を示す他のグラフである。
【符号の説明】
【0075】
P,P1 循環ポンプ
2 汲上ポンプ
1,1′,1″ 脱臭・殺菌装置
2 原料水
3,60 制御部
5,43 固形電解質膜
6,45 陽極電極
7,47 陰極電極
10 貯水槽
10c 天井板
11 陽極側水路
12 循環水流入チューブ
13 陰極室
14 循環水流出チューブ
16,55 隔壁
20,24 電極部
21,23 オゾン水生成部
25 キャップ
26 原料水流入口
27 水路
28 オゾン水流出口
30 水栓(コック)
31 電源スイッチ
34 切替スイッチ
35 濃度設定部
36 濃度表示部
40 電源コード
53 貯水部
61 RAM
63 ROM
71a,71b 水位センサ
73 温度センサ
75 データ格納部
81 貫通孔
100,100′,100″ オゾン水生成器
200,200′,200″ オゾン水散布用スプレー
201 オゾン水流入管
202 散布制御部
203 握りレバー
205 ノズル
208,210 切替弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾン水を使用して脱臭および殺菌を行う脱臭・殺菌装置であって、
貯水槽に収容された原料水を電気分解してオゾンを生成し、そのオゾンを水に溶解してオゾン水を生成するオゾン水生成手段と、
前記貯水槽の原料水を前記オゾン水生成手段に導くとともに、そのオゾン水生成手段で生成されたオゾン水を前記貯水槽に還流する還流手段と、
前記貯水槽内のオゾン水を汲み出して散布する散布手段とを備え、
前記オゾン水生成手段と前記還流手段と前記散布手段とが一体化された構造となっていることを特徴とする脱臭・殺菌装置。
【請求項2】
前記オゾン水生成手段は所定の電極板からなる電極部を有し、その電極部で電気分解により生成されたオゾン水を前記還流手段によって前記貯水槽に還流する循環を所定時間繰り返すことで所定濃度のオゾン水を生成することを特徴とする請求項1記載の脱臭・殺菌装置。
【請求項3】
前記還流手段による還流に使用する第1のポンプ手段と、前記散布手段による前記貯水槽からのオゾン水の汲み出しに使用する第2のポンプ手段とを個別に設けたことを特徴とする請求項2記載の脱臭・殺菌装置。
【請求項4】
前記還流手段による原料水の循環経路と前記散布手段へのオゾン水の供給経路とを切り替える切替手段を配し、その切替手段による切替えによって、前記循環に使用するポンプと前記散布手段へのオゾン水の供給に使用するポンプとを単一のポンプ手段で共用したことを特徴とする請求項2記載の脱臭・殺菌装置。
【請求項5】
前記散布手段は、オゾン水の導入管と、所定長の導管の先端に配され複数の噴出孔を備えてなるノズルと、前記導入管とノズル間に配された散布調整部とを有し、前記散布調整部に設けたレバーの操作に従って前記ノズルの噴出孔よりオゾン水を放出することを特徴とする請求項4記載の脱臭・殺菌装置。
【請求項6】
前記オゾン水生成手段を前記貯水槽の外部に独立して配した構造を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の脱臭・殺菌装置。
【請求項7】
前記貯水槽内に前記オゾン水生成手段を内蔵し、このオゾン水生成手段が前記電極部とともに前記貯水槽に対して着脱自在な構造を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の脱臭・殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−61700(P2008−61700A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240191(P2006−240191)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(506129016)株式会社オゾテック (5)
【Fターム(参考)】