説明

脱臭具

【課題】 設置するための新たな場所を特に必要としない脱臭具を提供することを課題とする。
【解決手段】 粒状脱臭剤を含有し、かつ鉛直方向に開口した1つ以上の凹部または鉛直方向の貫通部を有するコルクブロックからなる脱臭具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用及び業務用の冷蔵庫や流し下、下駄箱などに使用できる脱臭具に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫には様々な食品を数多く収納することから種々の悪臭が発生することがある。また、流し下や下駄箱などでも独特な臭気が発生して問題となることが多い。これらの場所に使用される脱臭具としては、活性炭を箱詰めしたものや、植物抽出物や界面活性剤などの消臭効果のある物質をゲルにしたものを容器に充填したものが知られているし、あまり一般的ではないが、シート状の消臭具を庫内に貼り付けたり、敷いたりするタイプ(特許文献1参照)や、次亜塩素酸ソーダで悪臭を酸化分解するタイプも知られている。また、冷蔵庫の場合は、活性炭などを用いた脱臭装置が庫内に内蔵されているものもある。
【0003】
このように多種の脱臭具が提案され商品化されているが、比較的多く使用される活性炭タイプ、ゲルタイプ、酸化分解タイプのように脱臭剤が容器に収納されて使用される脱臭具では、脱臭具の設置場所が意外に大きく必要で邪魔になりやすい欠点がある。特に収納可能容積が限られている冷蔵庫内では、脱臭具が食品の収納可能容積を減少させてしまう欠点があった。一方、シート状の脱臭具は冷蔵庫内の収納可能容積を実質的に減少させないで済む利点があるものの、収納棚の上に敷くタイプの脱臭具では、収納棚に設けられた冷気の通り道をふさいでしまい、庫内の冷気の循環を損なうという問題点があった。また、壁面に貼り付けるタイプの脱臭具も、取り付けるために両面テープなどが必要なため取り外し後の糊残りがあったり、食器等と接触し外れてしまったりする問題点があった。さらに、冷蔵庫に内蔵されるタイプでは、冷蔵庫の買い替えの周期約10年間は取替えができないという欠点があり、使用開始から年月がたつと、上記の棚置きのタイプの脱臭具が併用されるのが一般である。
【特許文献1】特開2001−187125号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、脱臭具を設置するための新たな場所を特に必要としない脱臭具を提供することを課題とする。例えば、冷蔵庫内でも食品の収納可能容積をほとんど減少させず、かつ、悪臭を吸収するために必要な庫内の通風性を損なわずに設置することができる脱臭具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、粒状脱臭剤を含有し、かつ鉛直方向に開口した1つ以上の凹部または鉛直方向の貫通部を有するコルクブロックからなる脱臭具である。ここで、前記コルクブロックは、4面または6面の側面を有し、前記の各側面は略長方形であることは好ましい。また、前記コルクブロックは、略直方体または略六角柱であることは好ましい。また、前記凹部又は貫通部は、鉛直方向の中心軸を有して上に拡がる円錐台形状であることは好ましい。また、前記凹部または貫通部の形状は、収納される容器の外形に合わせたものであることは好ましい。また、前記の凹部または貫通部の数が、1または偶数であることは好ましい。また、前記粒状脱臭剤が、活性炭であることは好ましい。
【発明の効果】
【0006】
従来、利用されないで見過ごされてきたデッドスペースを有効利用して設置できるため、新たな空間や場所を特に必要としない。例えば、冷蔵庫内では食品の収納可能容積をほとんど減少させず、かつ、庫内の通風性を損なわずに設置することができる。また、容器の周辺を多孔質の脱臭具が覆っているため、アイスクリーム等の冷蔵された容器の保冷作用や容器表面に凝縮した水分の吸収作用も同時に発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態例について、図面も用いて詳しく説明する。本発明の脱臭具は、粒状脱臭剤を含有するコルクブロックからなる。コルクは、コルク樫の樹皮の内側のコルク質の部分を原料とし、スベリンが45%、リグニンが27%、タンニンが6%、ロウが5%、他にセルロース多糖類、灰分などから成り立っており、コルクそのものには大きな通気性はないが、いったん粉砕してからブロックに成形することでコルク粒子間の隙間が生じる。そのため、単純な木やプラスチックに比べ非常に通気性が良いという特徴が生じる。そのため、悪臭がコルクブロック内部に浸透しやすく、内部に粒状脱臭剤が埋設されていても効率よく脱臭に寄与することが可能になる。また、形状もバインダー樹脂との混合後に成型することにより、自由に作ることができる。
【0008】
脱臭具に使用する粒状脱臭剤としては、活性炭や上記特許文献1に記載の脱臭剤やその他の公知の脱臭剤が使用でき、1種類でも良いし、複数書類を混合して用いることもできるが、使いやすさや安全性の観点から粒状活性炭を用いるのがよい。粒状活性炭は、粒子状であっても良いしさらに細かい粉末状であっても良いが、表面積をできるだけ大きくする観点からは粉末状のものを用いるのが好ましい。活性炭は、石炭、ヤシ殻、木材のいずれの由来のものでも良く、特に制限されない。なお、コルクは、使用後に廃棄する際には可燃ごみとして廃棄できる。また、活性炭の含有量は、必要な脱臭容量を満たして、かつコルクブロックが製作できる範囲内で適宜調整すればよく、コルクに対して5質量%以上40質量%以下の範囲内とするのが好ましい。より好ましくは10質量%以上30質量%以下の範囲内である。
【0009】
コルクの接着剤またはバインダーとしては、ポリウレタン系や天然樹脂系の公知の接着剤または樹脂バインダを用いるのがよい。安全性の観点からは天然樹脂系のバインダーを用いるのが好ましい。天然樹脂系バインダーとしては、例えば、ドイツのアウロ社製NP−0381等が挙げられる。バインダーの使用量は、コルクブロックの強度を高く維持し、かつコルクの多孔性を失わないようにするために、コルクと粒状脱臭剤の合計質量に対して1/20〜1/2の質量比の範囲内で用いるのが好ましく、1/10〜1/4の範囲内とするのがより好ましい。
【0010】
脱臭具となるコルクブロックは、鉛直方向に開口した1つ以上の凹部または鉛直方向の1つ以上の貫通部のいずれか又は両方を有する。この凹部または貫通部は、その内部に容器を鉛直上方から下方に嵌め込んで固定するためのものである。凹部または貫通部の形状は、円筒形でも四角柱でも良いが、凹部または貫通部に挿入される容器の外形状に合わせるようにする。一般の容器の多くは、上が拡がり裾が窄まった円錐台形状をなしているから、コルクブロックの凹部または貫通部も、そのような容器の一般的な側面形状に合わせて上が拡がり裾が窄まった円錐台形状とするのが好ましい。容器がいずれの形状であっても、凹部は、容器に合わせて容器を鉛直上方から下方に嵌め込めるようにして設けられている。このようにコルクブロック内に容器を固定する、逆に言えば、容器の外側面に沿ってコルクブロックが配置されるようにすることにより、脱臭具を設置する新たな場所が必要無くなる。このようなコルクブロックの例を図1に示す。
【0011】
図1のコルクブロック1は、略長方形の4つの側面2、3と、同じく略長方形の上面8と底面7とからなる略直方体形状をなしており、その上面8には、鉛直方向の中心軸を有して上部が拡がり下部が窄まった円錐台形の側面形状をなす側面5と、底面6とからなる凹部10が設けられている。この凹部10に、任意の容器の底部を鉛直上方から嵌め込むことにより、その容器をコルクブロック(脱臭具)に固定する。ここで、側面を略長方形としているのは、幾何学的に厳密な長方形でなくとも良いことを意味し、向かい合う2辺が厳密な平行でなくとも良いし、辺の直線がやや曲がっていても良い。また、底がやや窄まった台形に近い形でも良い。
【0012】
なお、コルクブロック1の縦横の寸法は、容器を収納できて、コルクブロックの強度が使用に耐える程度に維持される範囲でできるだけ小さくするのが、脱臭具の設置に必要な面積を小さくする観点から好ましい。具体的には、上面8において、凹部または貫通部と4つの側面の各々との直線最短距離が、コルクの強度が許す限り小さい方がよい。例えば、容器が下に窄まった円錐台形で、上端外側にフランジを有している場合、上面を略正方形にし、容器のフランジ外径と同じ長さを略正方形の一辺の長さとするのが良い。
【0013】
一般に、冷蔵庫や食品保存庫等で使用するプラスチック製等の容器類は、容器部とふたに分割されており、ふたと容器部の勘合を良くするために容器部の底部より上部の外縁部は外側に張り出している。そのために隣り合う他の容器や壁面との間にデッドスペースが生じる。上記の脱臭具は、このデッドスペースを埋めるように、保存容器の外周に沿った形に成型してあり、冷蔵庫内や食品保存庫内ではこのデッドスペースに設置されるから、収納スペースを削減することなく脱臭剤を設置することができる。同様に脱臭具をボトルの首にかけるようなドーナツ状形状等にしても良い。
【0014】
また、脱臭具に嵌め込まれた容器を冷蔵庫から取り出す際に、脱臭具ごと取り出すことで、脱臭具のコルクブロックが保冷容器の役割を果たし、容器内容物の温度変化を遅くすることができる。さらに、その際に、脱臭具がなければ容器表面に凝結により生じるはずの水滴も防止できる。また、プラスチック容器は一般に安っぽく見られることが多く、そのまま食卓に出すことがはばかられることがある。しかし、コルクで覆うことにより高級感を演出することが可能となり、食卓にプラスチック容器をそのまま出すことも可能になる。
【0015】
また、使用する保存容器がレンジなどの温度に耐える材質の場合には、食品類を保存容器に入れたままで加熱することができ、かつ、コルクブロックの中に保存容器を包み込むようにすれば保温性を持たせることができる。また、活性炭入りコルクをレンジで加熱すると同時に活性炭に吸着されていた悪臭を脱着することができる。つまり、レンジで加熱する際に同時に活性炭を再活性化することができる。
【0016】
脱臭具が有する鉛直方向に開口した凹部または鉛直方向の貫通部は、1つの脱臭具に2つ以上あっても良いが、好ましくは1つかまたは偶数とするのがよい。凹部が複数の場合に偶数とするのは、コルクブロックの製造の容易さのためと、脱臭具設置に必要な面積をできるだけ小さくするためである。このように、複数の凹部または貫通部を設けて、複数の保存容器を同時に収納できるように脱臭具を作ることも可能である。これにより、冷蔵庫などに収納する際に、複数の食品の容器を同時に収納できる。例えば、らっきょと福神漬けの容器を同時に収納できるようになり、食品の整理や整頓がしやすくなるばかりか取り扱いも容易になる。
【0017】
6つの凹部を設けた脱臭具の例を図2に示す。図2の脱臭具20は、同じ大きさと形状をした6つの容器を同時にはめ込めるように、上面21に、円錐台の側面形状をした面22と底面23とで構成される6つの凹部21が設けられている。このように複数の凹部を設けることで、例えば、調味料セットのような、使用時にセットで利用する容器群をまとめて取り扱うことが可能になる。
【0018】
コルクブロックの側面は、複数の略長方形の組み合わせとするのが好ましい。より好ましくは、コルクブロックが略直方体又は略六角柱となるように、略鉛直の側面の数を4面または6面とする。側面の形状をこのように簡単化することで、コルクブロックの製造が簡単になり、また、脱臭具の設置に必要な面積の割には脱臭容量が大きな脱臭具が得られる。側面を6面とした脱臭具の例を図3に示す。図3の脱臭具30は、上面32が略六角形であり、それに対応して略長方形の側面33が6枚ある。なお、各平面の接続部分の角部が丸まるように加工されてもよい。また、コルクブロックの表面に、脱臭能に影響する表面積を増加せしめるための溝などの模様を設けるようにしても良い。また、コルクブロックに練炭状の穴をあけて、コルクブロックの表面積を増大させても良い。
【0019】
次に、脱臭具の製造方法について説明する。脱臭具を構成するコルクブロックは、コルク樫の樹皮を剥いで乾燥して得られたコルク原料から目的の形状を切り出し、表面に粒状脱臭剤を貼り付けるようにしても良いが、コルクを有効利用してコルクブロックの任意の形状を得るには、通常のコルクブロックの製造方法に基づいて、コルク原料をいったん製粒機で破砕したのち、得られた破砕物にバインダーと粒状脱臭剤とを混合して攪拌し、しかるのち加圧成型して目的の形状とするのが望ましい。
【0020】
具体的には、コルク粉砕品と粉末活性炭あるいは粒状活性炭を混合し、バインダー樹脂とともに圧縮成型し、コルクブロックからなる脱臭具を作る。その際、食器や保存容器の大きさに適合する凹部または貫通部を1つまたはそれ以上設けるようにし、凹部または貫通部に食器や保存容器を挿入して使用する。コルクブロックとする際には、破砕されたコルクの一部を着色したり、部分的に焼いたりして着色し、通常の破砕コルクと混合しバインダー樹脂とともに熱圧縮成型することにより、装飾性のあるコルクブロックとしてもよい。また、コルクブロックの表面に焼き鏝などで文字やデザインによる装飾を焼き付けてもよい。
【実施例1】
【0021】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、その範囲内で様々な変型が可能であり、以下の具体的態様に限定されるものではない。
[実験例1]
【0022】
破砕コルク粒100部、パウダー状コルクが40部、粒状活性炭20部、粉末活性炭20部、樹脂バインダー(ウレタン樹脂)30部を混合攪拌し、圧縮成型し、85mm×85mm×40mmの直方体の脱臭具サンプルを作った。
【0023】
この脱臭具サンプルを用いて、以下のようにして脱臭試験を行った。まず脱臭具サンプルから一辺が4cmの立方体を切り取り、上部にサンプル投入口と側部中央に直径1cm程度の測定用の穴のあいた20リットル入りポリタンクの底面中央に置いた。そこに、硫化水素濃度を50ppmに調整された空気を1分間毎秒500cc程度で流し込み、内部の硫化水素濃度を50ppmとした。この状態でポリタンクに蓋とシリコンゴム栓をして密閉し、8時間後の硫化水素濃度を検知管で測定した。評価結果を表1に示した。なお、評価結果は三点の平均である。良好な脱臭性能を示した。
[比較実験例1]
【0024】
脱臭具サンプルを用いなかった以外は、実験例1と同様にして脱臭試験を行った。評価結果を表1に示す。硫化水素濃度はほとんど変化していなかった。
[実験例2]
【0025】
硫化水素50ppmに代えてアンモニア濃度200ppmとした以外は、実験例1と同様にして脱臭試験を行った。評価結果を表1に示した。良好な脱臭性能を示した。
[比較実験例1]
【0026】
脱臭具サンプルを用いなかった以外は、実験例2と同様にして脱臭試験を行った。評価結果を表1に示す。アンモニア濃度はわずかに低下していたものの、変化はわずかであった。
[実施例1]
【0027】
実験例1と同様の組成と方法で、上面が一辺の長さが90mmの略正方形で高さも90mmの立方形状であり、その上面から下に向かって、上底直径が85mmで下底直径が75mmで深さが80mmの円錐台形の凹部を設けて、図1に示したのと同様の形状の脱臭具を作成した。
【0028】
この脱臭具の凹部に、底部の外径が72mmで上端の最外径が90mm、高さが86mmの保存容器を底部から挿入した。なお、保存容器の上端には、高さ6mmで直径方向の厚みが4mmのフランジが設けられている。保存容器は、凹部にすっぽり嵌り、容器時用端のフランジだけが脱臭具の上面から上に出た形となった。保存容器の最大幅が90mmであり、脱臭具の最大幅も90mmであるから、保存容器の設置に必要な場所と同じ大きさであった。また、保存容器に氷を含む0℃の水を7割高さまで注ぎ、脱臭具を用いない以外は同様にした保存容器の場合と比較したところ、脱臭具を用いた場合の保温性(保冷性)が高くて良好な結果であった。
【0029】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】脱臭具の一例を示した(1)正面図、(2)上面図、(3)斜視図である。
【図2】脱臭具の他の例を示した斜視図である。
【図3】脱臭具のさらに他の例を示した斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状脱臭剤を含有し、かつ鉛直方向に開口した1つ以上の凹部または鉛直方向の貫通部を有するコルクブロックからなる脱臭具。
【請求項2】
前記コルクブロックは、4面または6面の側面を有し、前記の各側面は略長方形であることを特徴とする請求項1に記載の脱臭具。
【請求項3】
前記コルクブロックは、略直方体または略六角柱であることを特徴とする請求項2または3に記載の脱臭具。
【請求項4】
前記凹部又は貫通部は、鉛直方向の中心軸を有して上に拡がる円錐台形状であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の脱臭具。
【請求項5】
前記凹部または貫通部の形状は、収納される容器の外形に合わせたものであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の脱臭具。
【請求項6】
前記の凹部または貫通部の数が、1または偶数であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の脱臭具。
【請求項7】
前記粒状脱臭剤が、活性炭であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の脱臭具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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