説明

脱臭抗菌剤、及びその製造方法

【課題】本発明は、脱臭抗菌作用の持続性があり、多目的に使用でき、さらに、生成工程がより簡易で、生成コストの安い脱臭抗菌剤を提供する。
【解決手段】二塩基酸と架橋剤と多価アルコールとから生成されたアルキド樹脂に、テトラヒドロホウ酸アルミニウムを加え、さらに、水素化カルシウム、金属酸化物(三酸化タングステン及び二酸化ケイ素からなる群から少なくとも1つ選択される)、金属元素(金属ケイ素、及び金属リチウムからなる群から少なくとも1つ選択される)、及びアミノ酸(グルタミン酸、アスパラギン酸、リシン、アルギニン、グリシン、及びメチオニンからなる群から少なくとも1つ選択される)のうち少なくともいずれか1つを加えることにより生成した脱臭抗菌剤により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を分解して得られた高活性の水素やイオン及びラジカルの還元力を利用することによる、トイレの尿石分解及び脱消臭、女性生理の悪臭分解消臭、殺菌、食品の防腐及び乾燥防止、酸化防止等の効果を奏する脱臭抗菌剤、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
汚物除去、異臭消臭、殺菌など行う場合、地球環境の汚染防止の観点から洗剤、薬剤などの代替として、酸化還元電位(以下「ORP」という。)の高い水(以下「酸化水」という。)、及びORPの低い水(以下「還元水」という。)を利用することが多くなってきた。還元水は水素の含有量が高くかつ還元力が強い。そのため、還元水を飲料水として体内に取り込むと、体内に存在する余剰の活性酸素と反応して、活性酸素を還元して無害化させるということで注目されている。
【0003】
酸化水、還元水とは、水の分解によって得られる水溶液であり、一般にORPが約+200mV以上の水を酸化水、ORPが約+200mV以下の水を還元水と呼んでいる。
さて、本願の発明者は以前より、水の分解によって生成される水素を用いて還元水を生成することに注目していた(例えば、特許文献1。)。
【0004】
特許文献1では、水と、ポリビニルアルコール、スクロース、シュウ酸、カルバゾール、アスコルビン酸とを混合させる第1の処理と、金属マグネシウムと、無水ホウ酸、金属アルミニウム、硫酸アンモニウムアルミニウム、メチオニン、シリカゲル、グルタミン酸ナトリウム、尿素よりなる群から選ばれた1以上の化合物とを混合させる第2の処理と、前記第1の処理による混合物と前記第2の処理による混合物とを混合させることにより酸化還元反応を開始させる第3の処理と、前記第3の処理により酸化還元反応が開始した混合物を冷却することにより前記酸化還元反応を停止させる第4の処理とを行うことで、水素による尿石分解・脱臭殺菌作用を有するペレットを製造している。このペレットは、常温・常圧下で水と反応して活性水素を発生させ、高還元性を有する水を生成する。
【0005】
また、特許文献2では、水素化物(水素化ナトリウム、水素化カルシウム、及び水素化リチウムからなる群から少なくとも1つ)、金属酸化物(酸化亜鉛、及び二酸化ケイ素からなる群から少なくとも1つ)、及び金属元素(金属亜鉛、金属マグネシウム、金属アルミニウム、金属ケイ素、及び金属リチウムからなる群から少なくとも1つ)のうち少なくともいずれか1つと、ポリスチレン樹脂と、複合金属水素化物(テトラヒドロホウ酸ナトリウム、テトラヒドロホウ酸カリウム、テトラヒドロホウ酸アルミニウム、またはテトラヒドロホウ酸リチウムからなる群から少なくとも1つ)とからなる脱臭抗菌剤が開示されている。特許文献1の場合、脱臭抗菌剤を水中に漬ける必要があった。
【特許文献1】特開2003−334569号公報
【特許文献2】特開2005−253547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特許文献1より脱臭抗菌作用の持続性があり、用途の幅も広がり、生成工程がより簡易で、生成コストの安い脱臭抗菌剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水を分解して水素を発生させることを可能とする脱臭抗菌剤である。この脱臭抗菌剤は空気中の水分に接すると、その水を分解して水素が発生し、この水素の還元力(酸化還元反応)により酸化を抑制し、悪臭の脱消臭、抗菌、尿石除去、防腐等を目的とする。これを実現するために以下の手段を提供する。
【0008】
本発明に係る、アルキド樹脂とテトラヒドロホウ酸アルミニウムとを含み、さらに、水素化カルシウム、金属酸化物、金属元素、及びアミノ酸のうち少なくともいずれか1つを含む脱臭抗菌剤において、前記アルキド樹脂は、二塩基酸と架橋剤と多価アルコールとから生成され、前記金属酸化物は、三酸化タングステン及び二酸化ケイ素からなる群から少なくとも1つ選択され、前記金属元素は、金属マグネシウム、金属アルミニウム、金属ケイ素、及び金属リチウムからなる群から少なくとも1つ選択され、前記アミノ酸は、グルタミン酸、アスパラギン酸、リシン、アルギニン、グリシン、及びメチオニンからなる群から少なくとも1つ選択されることを特徴とする。
【0009】
前記アルキド樹脂は、前記脱臭抗菌剤を形成するペレットに対して20〜30重量%含まれていることを特徴とする。
本発明に係る、アルキド樹脂とテトラヒドロホウ酸アルミニウムとを少なくとも含む脱臭抗菌剤の製造方法は、二塩基酸と架橋剤と多価アルコールとから前記アルキド樹脂を生成し、前記アルキド樹脂と前記テトラヒドロホウ酸アルミニウムとを混合して150℃〜180℃で1〜8時間焼成することを特徴とする。
【0010】
前記脱臭抗菌剤に、さらに、水素化カルシウムと、三酸化タングステン及び二酸化ケイ素からなる群から少なくとも1つ選択される金属酸化物と、金属マグネシウム、金属アルミニウム、金属ケイ素、及び金属リチウムからなる群から少なくとも1つ選択される金属元素と、グルタミン酸、アスパラギン酸、リシン、アルギニン、グリシン、及びメチオニンからなる群から少なくとも1つ選択されるアミノ酸のうち少なくともいずれか1つを混合して150℃〜180℃で1〜8時間焼成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る脱臭抗菌剤を用いることで、水分解反応で発生する常温常圧下での水素ガスにより、悪臭の還元分解、脱消臭、抗菌、及び防腐等をすることができる。また、本発明に係る脱臭抗菌剤を水に入れることで生成されるアルカリ性還元水素水の作用により、尿石の分解水溶性化、脱臭、抗菌、油の水溶性化、及び洗浄作用等の効果が得られる。
【0012】
また、本発明に係る脱臭抗菌剤は、特許文献1より脱臭抗菌作用の持続性があり、用途の幅も広がり、さらに、生成工程がより簡易で、生成コストも低く抑えることができる。
また、空気中の水分で水分解反応が進行し、水素ガスを発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、水を分解して水素を発生させることを可能とする脱臭抗菌剤である。この脱臭抗菌剤は空気中の水分によって反応(水を分解)して水素が発生し、大気中においてこの水素の還元力(酸化還元反応)により対象物(悪臭の基となる物質やよごれ)を還元させる。また、この使用した水は、アルカリ性であって、ORPがマイナス値であって、水素が溶解した水(アルカリ性還元水素水、または還元水素水という)となっているので、この水も還元力がある。
【0014】
ここで、本発明を用いた水の分解について説明する。樹脂に含まれる水素化金属化合物が水に接することにより、水が分解され水素が発生する。このとき、使用する水素化金属化合物や金属元素、樹脂等の種類や量を調整することで、発生する水素の発生期間、発生量等をコントロールするものである。それでは、以下に本発明の詳細を説明する。
【0015】
表1は、本発明に係る脱臭抗菌剤の組成物を示している。
【0016】
【表1】

本発明に係る脱臭抗菌剤は、表1に示すように、大きくA材とB材から構成されている。
A材は、樹脂(高分子化合物)からなる材料であり、アルキド樹脂が好ましい。A材のアルキド樹脂は、二塩基酸、架橋剤、多価アルコールから生成される。二塩基酸は、オキソグルタル酸、マロン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸(無水物)、及びグルタル酸から選択することができる。架橋剤は、アセナフテン及びポリスチレンから選択することができる。多価アルコールは、ペンタエリトリトール及びD-グルシトールから選択することができる。なお、二塩基酸、架橋剤、多価アルコールは、1〜1.5:1〜3:1〜2の割合(重量%)で構成される。
【0017】
A材の組み合わせとしては、例えば、二塩基酸としてオキソグルタル酸またはマロン酸を、架橋剤としてポリスチレンを、多価アルコールとしてペンタエリトルトールをそれぞれ、1〜1.5:1〜3:1〜2の割合(重量%)で混合する(組み合わせ1)。または、例えば、二塩基酸として4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸(無水物)またはグルタル酸を、架橋剤としてアセナフテンを、多価アルコールとしてD-グルシトールをそれぞれ、1〜1.5:1〜3:1〜2の割合(重量%)で混合する(組み合わせ2)。
【0018】
なお、A材として使用する樹脂は、B材を保持、また製造した脱臭抗菌剤としての取り扱い上の便宜、脱臭抗菌剤内のB材が水と接触する面積を調整する等の目的のために使用するのであるから、基本的には何でもよい。しかし、実際は、製造過程で150〜180℃に加熱すること、撥水性であること、また実用的、コスト的な面からアルキド樹脂を用
いるのが好ましい。
【0019】
B材は、少なくとも複合金属水素化物からなる材料であり、さらに水素化物、金属酸化物(酸性酸化物)、金属元素(ルイス酸)、アミノ酸のうち少なくともいずれか1つを含んでもよい。
【0020】
B材の複合金属水素化物としては、テトラヒドロホウ酸アルミニウム(Al(BH43)等を用いることができる。
B材の水素化物としては、水素化リチウム(LiH2)等を用いることができる。
【0021】
B材の金属酸化物として、三酸化タングステン(WO3)、または二酸化ケイ素(SiO2)等を用いることができる。これらは単一で用いてもよいし、または複数組み合わせても良い。
【0022】
B材の金属元素(ルイス酸)として、金属マグネシウム粉末(Mg2+)、金属アルミニウム粉末(Al3+)、金属ケイ素粉末(Si4+)、または金属リチウム粉末(Li+)等を用いることができる。これらは単一で用いてもよいし、または複数組み合わせても良い。
【0023】
B材のアミノ酸として、グルタミン酸、アスパラギン酸、リシン、アルギニン、グリシン、及びメチオニン等を用いることができる。これらは単一で用いてもよいし、または複数組み合わせても良い。
【0024】
さらに、B材の各材料について詳述する。複合金属水素化物について詳述すると、BH4-、AlH4などのヒドリド錯体の1分子は4個の極端に強い反応をするH-原子を持ち、2分子のH2OのH+を還元して、H2を生成し、O2-はB−O,Al−Oを生成する。BH4-、Li+AlH4-などの複合金属水素化物は、水中において水のH+を引き抜き、H2を生成する。同時にB3+、Li+、Al3+などの金属はルイス酸であり、水の酸素の非共有電子対と配位結合し、酸化物、水酸化物を生成する。
【0025】
次に、水素化物について詳述する。水分子は極性があり、酸素原子には2つの孤立電子対があるために、陽イオンとも陰イオンとも配位結合性が高く、特にルイス酸(Li+,Mg2+,Ca2+,Al3+,Si4+,AlH3,BH3)と配位結合が強いため、水の構造を破壊し、H2は水中に、OH-及びO2はルイス酸に結合して、金属酸化物か金属水酸化物を生成し、水中にはH2が増大する。すなわち、B材の材料の1つとして水素化物を使用することにより、水素の発生を促進させることができる。
【0026】
二酸化ケイ素SiO2は酸性酸化物であり、水と化合して、オキソ酸となり、水分解に使用するとPHが低下する。
次に、金属元素について詳述する。金属元素は、ルイス酸として用いる。水(H2O)は、硬いルイス塩基性溶媒で硬いルイス酸の金属類のLi+,Mg2+,Ca2+,Al3+,Si4+などの電子対受容体とは強く溶媒和する。複合金属水素化物、水素化物なども水中においてヒドリドイオン(H-)を脱離するとルイス酸であり、電子不足化合物(空孔)となる。
【0027】
ルイス酸、及び電子不足化合物は、水分子の電子を引き抜き、受容し、水分子を分解して、水素イオン(H+)及び水酸化物イオン(OH-)を生成する。複合金属水酸化物などのヒドリドイオン(H-)は脱離基であり、水分解時の水素イオン(H+)とH2を生成する(H+ + H- → H2)。水はドナー(供与体DN数18)であり、ルイス塩基であり、ルイス酸及び電子不足化合物はアクセプター(受容体AN)として働き、水分子の
共有結合の電子を引き抜き分解する。
【0028】
さらに、ルイス酸、例えばリチウムLiについて説明する。Li原子は水中において、イオン化ポテンシャル5.39eVと小さく、電子供与体であるので電子を放出しやすく、水中に電子を与える。イオン化によって水中に放出された電子の一部が多数の水分子のH原子中心に電子を取り囲み、溶媒和電子(水和電子e-aq)となる。残りの電子は、水分子と反応して発生した水素イオンH+と水和電子e-aqと結合して水和水素Haqを生成する(H+ + e-aq → Haq)。Hは等核ニ原子分子H2aqとなり、水中で安定なH2aqとなる。よって、B材の材料の1つとして金属原子を使用することにより、水素を水中に留めておくことができる。
【0029】
次にアミノ酸のペプチド合成について説明する。数種類のアミノ酸に脱水縮合剤(無水マロン酸など)及び触媒を用いて、オリゴペプチドを合成する。ジカルボン酸無水物とアミノ酸のアミノ基との反応によってできた生成物により光化学反応が起き、紫外部、可視部、赤外部の光を吸収する。アミノ酸がメチオニンの場合、光を吸収しメチオニンスルホキシドからメチオニンスルホンを生成する。また、アミノ酸がグリシンの場合、二量化してピペラジンジオンを生成する。また、アミノ酸がアルギニンとグルシンの組み合わせの場合、グアニジン酢酸とオルニチンを生成する。
【0030】
例えば、二塩基酸無水物としてマロン酸、アミノ酸としてグリシンを用いた場合、グリシンの−COOHの−OHと−NH2のHを脱水縮合すると、グリシルグリシルグリシンとマロン酸イミド(光学活性)が生成する。二塩基酸無水物とアミノ酸の組み合わせは多く、赤外〜紫外部まで示し、ペレットに対して10〜20%添加する。
【0031】
それでは、本発明に係る脱臭抗菌剤の製造方法の概要を説明する。なお、以下において%は、重量%を示す。合成は、常温常圧下で行った。まず、A材(アルキド樹脂樹脂(粉末))にB材(B材の組成は、後述のように用途によって変わる)を容器に入れる。
【0032】
A材及びB材は共に固体(粉状体)であり、この状態で均一に混合するまで攪拌する。攪拌後、電気炉又は乾燥機を用いて150℃〜180℃で約1〜8時間焼成する。例えば、A材が上述した組み合わせ1の場合、150℃〜180℃で約2〜6時間焼成する。また、例えばA材が上述した組み合わせ2の場合、150℃で約2〜6時間焼成する。
【0033】
この焼成の時間に幅があるのは、後述するように生成した脱臭抗菌剤の用途によって、その効果の持続時間を制御するためである。なお、これらの合成は、常湿下で行ったが、水素化物等を取り扱うため、乾燥気流化で行うのが好ましい。
【0034】
焼成後、炉より取り出し、冷却のため約30分間放置した後、真空パックする(脱臭抗菌剤は、吸湿性があるために空気中の水分を吸収しやすく長期保存するために真空パックする。)。
【0035】
なお、上述の焼成時間について補足すると、焼成時間が短ければ、重合した樹脂間の隙間が大きいので、脱臭抗菌剤を水に入れたとき、B材が水と接触する確率は高くなるため、その分、水分解が急速に起こる。そのため、水素が大量に発生するが、その分持続時間は短くなる。
【0036】
一方、焼成時間が長ければ、重合した樹脂間の隙間が小さくなるので、脱臭抗菌剤を水に入れたとき、B材が水と接触する確率は低くなるため、その分、水分解がゆっくり起こる。そのため、水素が少量発生するが、その分持続時間は長くなる。このようなことがら、使用目的、使用期間等に応じて、焼成時間を決定することができる。
【0037】
また、焼成温度を低く設定すれば、樹脂間の結合及び樹脂とB材との密着度が低下するので、脱臭抗菌剤を水に入れたとき、B材が水と接触する確率は高くなるため、その分、水分解が急速に起こる。そのため、水素が大量に発生するが、その分持続時間は短くなる。
【0038】
一方、焼成温度を高く設定すれば、樹脂間の結合及び樹脂とB材との密着度が高くなるので、脱臭抗菌剤を水に入れたとき、B材が水と接触する確率は低くなるため、その分、水分解がゆっくり起こる。そのため、水素が少量発生するが、その分持続時間は長くなる。このようなことからも、使用目的、使用期間等に応じて、焼成温度を決定することができる。
【0039】
それでは、以下でB材の組成、及び、脱臭抗菌剤の効果等について説明する。なお、以下の実施例における脱臭抗菌剤の合成は、特に限定しない限り、焼成時間は約5〜6時間、焼成温度は約180℃で行った。
【実施例1】
【0040】
本実施例は、水素ガスの発生させるための脱臭抗菌剤の合成を目的とする。本実施例のB材として、複合金属水素化物(Al(BH43)を用いる。本実施例では、Ex11−Ex17の7つの脱臭抗菌剤を生成した。表2に脱臭抗菌剤の合成に用いる試料の組成比を示す。
【0041】
【表2】

表2において、表の右側へ行くほどアルキド樹脂の組成比が低くなるので、水分子分解時にB材が水と接触する面が多くなり、水素がより多く発生した。
【実施例2】
【0042】
本実施例は、水素ガスの発生させるための脱臭抗菌剤の合成を目的とする。本実施例のB材として、複合金属水素化物(Al(BH43)、金属Liを用いる。本実施例では、Ex21−Ex25の5つの脱臭抗菌剤を生成した。表3に脱臭抗菌剤の合成に用いる試料の組成比を示す。
【0043】
【表3】

表3において、表の右側へ行くほどアルキド樹脂の組成比が低くなるので、水分子分解時にB材が水と接触する面が多くなり、水素がより多く発生した。
【実施例3】
【0044】
本実施例は、水素ガスの発生及び還元水素水の生成するための脱臭抗菌剤の合成を目的とする。本実施例のB材として、複合金属水素化物(Al(BH43)、金属元素(Li)、金属元素(Si)を用いる。本実施例では、Ex31−Ex39の9つの脱臭抗菌剤を生成した。表4に脱臭抗菌剤の合成に用いる試料の組成比を示す。
【0045】
【表4】

表4において、表の右側へ行くほどアルキド樹脂の組成比が低くなるので、水分子分解時にB材が水と接触する面が多くなり、水素がより多く発生した。
【実施例4】
【0046】
本実施例は、還元水素水の生成するための脱臭抗菌剤の合成を目的とするものである。本実施例のB材として、複合金属水素化物(Al(BH43)、金属酸化物(SiO2)を用いる。本実施例では、Ex41−Ex46の6つの脱臭抗菌剤を生成した。表5に脱臭抗菌剤の合成に用いる試料の組成比を示す。
【0047】
【表5】

表5において、表の右側へ行くほどアルキド樹脂の組成比が低くなるので、水分子分解時にB材が水と接触する面が多くなり、水素がより多く発生した。
【実施例5】
【0048】
本実施例は、還元水素水の生成するための脱臭抗菌剤の合成を目的とするものである。本実施例のB材として、複合金属水素化物(Al(BH43)、金属元素(Li)を用いる。本実施例では、Ex51−Ex56の6つの脱臭抗菌剤を生成した。表6に脱臭抗菌剤の合成に用いる試料の組成比を示す。
【0049】
【表6】

表6において、表の右側へ行くほどアルキド樹脂の組成比が低くなるので、水分子分解時にB材が水と接触する面が多くなり、水素がより多く発生した。
【実施例6】
【0050】
本実施例は、還元水素水の生成するための脱臭抗菌剤の合成を目的とするものである。本実施例のB材として、複合金属水素化物(Al(BH43)、金属元素(Si)を用いる。本実施例では、Ex61−Ex66の6つの脱臭抗菌剤を生成した。表7に脱臭抗菌剤の合成に用いる試料の組成比を示す。
【0051】
【表7】

表7において、表の右側へ行くほどアルキド樹脂の組成比が低くなるので、水分子分解時にB材が水と接触する面が多くなり、水素がより多く発生した。
【実施例7】
【0052】
本実施例は、還元水素水の生成するための脱臭抗菌剤の合成を目的とするものである。本実施例のB材として、複合金属水素化物(Al(BH43)、水素化物(CaH2)、金属元素(Li)、金属元素(Si)、金属元素(Mg)を用いる。本実施例では、Ex71−Ex77の6つの脱臭抗菌剤を生成した。表8に脱臭抗菌剤の合成に用いる試料の組成比を示す。
【0053】
【表8】

表8において、表の右側へ行くほどアルキド樹脂の組成比が低くなるので、水分子分解時にB材が水と接触する面が多くなり、水素がより多く発生した。
【0054】
<実施例1−7についての考察>
生成した脱臭抗菌剤を水中に入れると、水素が発生する。実施例1−実施例7では、この発生する水素の発生量を調整するものである。また、用途に応じて、発生させた水素を水中に留めておいたり、水面上(大気中)へ放出させたりするのを制御するものである。
【0055】
実施例1−3では主に、その発生した水素を水面上(大気中)で抗菌・脱臭等の用途で使用するために、脱臭抗菌剤を合成した。
実施例2は、水素化物が加えられているため、実施例1と比べて脱臭抗菌剤を水に入れたとき、実施例1よりも水素がより多く発生する。実施例3は、金属元素が加えられているため、実施例1または実施例2と比べて、発生した水素が水面上へ逃げるのを抑制することができるので、還元水素水の生成する用途にも利用することができる。
【0056】
実施例4−7では主に、その発生した水素を水中に留めておいて、その水を還元水素水としたものである。還元水素水には、抗菌、脱臭、洗浄、尿石除去等の用途で使用するために、脱臭抗菌剤を合成した。
【0057】
実施例5、実施例6は、実施例3と同様に金属元素が加えられているので、発生した水素が水面上へ逃げるのを抑制することができ、その結果還元水素水の生成することができる。
【0058】
実施例7では、水素化物が加えられているので、実施例5または実施例6と比べて洗浄力が向上し、より多目的用途に使用することができる。
なお、全ての実施例についていえることであるが、B材の複合水素化物や水素化物は水溶性で吸湿性のため、A材のアルキド樹脂より多くなると、脱臭抗菌剤は水中において、水分子分解時にB材の水素化物などは水との接触面が多くなる。そのため、脱臭抗菌剤を水に入れると、水分解が急激に起こり、脱臭抗菌効果の持続性は短縮するが、短時間に水素ガスが大量に発生する。一方、A材のアルキド樹脂は撥水性のため、あまり組成比率が多くなるとB材の水に対する接触面が小さくなり、水分解が低下するが、水素ガスは少量にしか発生しないが、水素ガス発生の持続性は向上する。
【実施例8】
【0059】
実施例1−7において、A材及びB材の組成比を変えて、様々な脱臭抗菌剤を合成したが、本実施例では、そのうちのいくつかを選択して、ORPの測定を行った。この測定は、脱臭抗菌剤が水を還元する作用の強さ及び持続性の検証のために行った。ここで、測定について説明する前に、PH−ORPダイヤグラムについて説明する。
【0060】
図1は、一般的に知られているPH−ORPダイヤグラムを示す。このPH−ORPダイヤグラムは、PHとORPの相関関係に基づく水の酸化還元において、水がどういう状態(H2O、O2、H2、OH-、H+)にあるかを示している。
【0061】
水の安定領域とは、水分子(H2O)や水酸化物イオン(OH-)の酸化と、水素イオン(H+)や水分子の還元反応により、電位領域の下限と上限との間の範囲の領域という。電位範囲はPHによって変化する。この中間の安定領域では、H2の発生もO2の発生も起こらず、H2OとH+、OH-が存在するのみである。
【0062】
上限の等濃度線以上では、O2が発生し、プラス(+)の電位を示し、下限の等濃度線以下ではH2が発生してマイナス(−)の電位を示す。表9にO2の存在する領域を示して
いるPHとORPの関係を示し、表9にH2の存在する領域(図1でいえば、斜線で示した領域)を示しているPHとORPの関係を示す。
【0063】
【表9】

【0064】
【表10】

以上を踏まえ、上記の実施例で生成した脱臭抗菌剤のORPの測定を行った。
(測定方法)使用した水:上水道水(500ml)、実施例5のEx51の脱臭抗菌剤:10g(使用する水に対して2%)、水へ脱臭抗菌剤を漬け込んでおく時間:24時間とし、PH、ORP測定後、毎日新しい上水道に取り替え、これを60日間繰り返した。この結果を表11に示す。
【0065】
【表11】

表11の結果を図1及び表10で確認すると、すべてH2の存在する領域(斜線で示した領域)に含まれることが分かる。例えば、60日目について見てみると、ORPが−680mVで、PHが8.89であるので、H2の存在する領域(斜線で示した領域)となる。よって、実施例5のEx51の脱臭抗菌剤を加えた水は、還元水であって、水素が含まれていることが分かる。
【実施例9】
【0066】
本実施例でも、条件を変えて、上記の実施例で生成した脱臭抗菌剤のORPの測定を行った。
(測定方法)使用した水:上水道水(500ml)、実施例6のEx61の脱臭抗菌剤:10g(使用する水に対して2%)、水へ脱臭抗菌剤を漬け込んでおく時間:24時間とし、PH、ORP測定後、毎日新しい上水道に取り替え、これを65日間繰り返した。この結果を表12に示す。
【0067】
【表12】

表12の結果を図1及び表10で確認すると、すべてH2の存在する領域(斜線で示した領域)に含まれることが分かる。例えば、65日目について見てみると、ORPが−735mVで、PHが9.01であるので、H2の存在する領域(斜線で示した領域)となる。よって、実施例6のEx61の脱臭抗菌剤を加えた水は、還元水であって、水素が含まれていることが分かる。
【実施例10】
【0068】
本実施例でも、条件を変えて、上記の実施例で生成した脱臭抗菌剤のORPの測定を行った。なお、本実施例は、水素ガス(水面上(大気中)に放出された水素)発生の検証を目的とする。
【0069】
(測定方法)使用した水:上水道水(50ml)、実施例3のEx33の脱臭抗菌剤:10g(使用する水に対して20%)、水へ脱臭抗菌剤を漬け込んでおく時間:60日間(水の取り替えなし)とし、PH、ORPを毎日測定し、これを60日間繰り返した。この結果を表13に示す。
【0070】
【表13】

表13の結果を図1及び表10で確認すると、すべてH2の存在する領域(斜線で示した領域)に含まれることが分かる。つまり表13のORPは全て−826mV以下であるので、H2の存在する領域(斜線で示した領域)となる。よって、実施例3のEx33の脱臭抗菌剤を加えた水は、還元水であって、水素が含まれていることが分かる。
【0071】
そして、本実施例では、(1)実施例8及び実施例9とは異なり、水を変えておらず、また、(2)実施例8及び実施例9の結果より脱臭抗菌剤は常時水素を発生させており、また、(3)水が水素を溶解する量には限度があり、(4)水素が発生する反応は不可逆である、ということから、溶解できなくなった水素は、水面上へ逃げる(大気中へ放出される)といえる。
【実施例11】
【0072】
本実施例でも、条件を変えて、上記の実施例で生成した脱臭抗菌剤のORPの測定を行った。なお、本実施例は、水素ガス(水面上(大気中)に放出された水素)発生の検証を目的とする。
【0073】
(測定方法)使用した水:上水道水(50ml)、実施例1のEx12、Ex14、Ex16を混合した脱臭抗菌剤(Ex12:Ex14:Ex16=1:1:1の重量比で混合):10g(使用する水に対して20%)、水へ脱臭抗菌剤を漬け込んでおく時間:60日間(水の取り替えなし)とし、PH、ORPを毎日測定し、これを60日間繰り返した。この結果を表14に示す。なお、本実施例では、Ex12の焼成時間:6時間、焼成温度:180℃、Ex14の焼成時間:4時間、焼成温度:180℃、Ex16の焼成時間:2時間、焼成温度:180℃であるEx12、Ex14、Ex16を用いた。
【0074】
【表14】

表14の結果を図1及び表10で確認すると、すべてH2の存在する領域(斜線で示した領域)に含まれることが分かる。つまり表13のORPは全て−826mV以下であるので、H2の存在する領域(斜線で示した領域)となる。よって、実施例1のEx12、Ex14、Ex16を混合した脱臭抗菌剤を加えた水は、還元水であって、水素が含まれていることが分かる。
【0075】
そして、本実施例では、(1)実施例8及び実施例9とは異なり、水を変えておらず、また、(2)実施例8及び実施例9の結果より脱臭抗菌剤は常時水素を発生させており、また、(3)水が水素を溶解する量には限度があり、(4)水素が発生する反応は不可逆である、ということから、溶解できなくなった水素は、水面上へ逃げる(大気中へ放出される)といえる。
【0076】
なお、混合させた脱臭抗菌剤を用いた理由は、この混合させた脱臭抗菌剤の構成要素の脱臭抗菌剤はそれぞれ、A材及びB材の組成比及び組成物が異なっているため、水素を発生させるという効果に差異がある。なお、ここでいう効果の差異とは、主に水素発生の持続性、速効性、発生量等をいう。
【0077】
Ex12、Ex14、Ex16の効果を比較すると、Ex16が最もアルキド樹脂の組成比が低いので水素発生が相対的に早く起こり、それに比べてEx12が最もアルキド樹脂の組成比が高いので水素発生が相対的に遅く起こる。このような効果を利用することで、混合脱臭抗菌剤の水素発生の持続性、速効性、発生量等をコントロールすることができ、用途に応じて、その構成要素の脱臭抗菌剤の構成比率を変更することができる。
【0078】
<実施例8−11についての考察>
実施例8−11により、本発明に係る脱臭抗菌剤を水に入れると、還元力を有し、水素を含む水(還元水素水)が生成されることが分かった。そして、実施例10及び実施例11においては、大気中にも水素ガスが放出されていることが分かった。そこで、以下では
、この脱臭抗菌剤の使用について述べる。
【実施例12】
【0079】
水素ガスの利用:水素ガスを発生させる場合には、用途に応じて複数の種類の脱臭抗菌剤(例えば、実施例11を参照)を混合して使用する。例えば、車内の抗菌、脱臭を目的とする場合には、車内で水素ガスを発生させ、この発生した水素は高活性であるため、悪臭等の基となる物質を還元し、その結果、車内の抗菌・脱消臭を行うことができる。ここで、複数の種類の脱臭抗菌剤を混合させることで、水素発生の持続性、速効性、発生量をコントロールすることができる。それでは、以下に使用例を示す。
【0080】
使用した車両は、普通乗用車である。脱臭抗菌剤は、実施例1のEx12,Ex14,Ex16及び実施例3のExの4つの脱臭抗菌剤を各5gづつティーパック(フィルタ)に詰めて、車内において水を入れた容器に入れておいた。このようにすることで、脱臭抗菌剤が水に接触して発生した水素が水面上(車内)へ放出され、車内の空気、及び車内の物品等に対して脱臭、抗菌作用を示す。水素がこの場合には、抗菌、脱臭効果が4〜5か月持続した。なお、車内空間の大きさ、使用する期間等によって、脱臭抗菌剤の量や大きさ(表面積)を調整することで、抗菌、脱臭効果を効率的に持続させることができる。
【実施例13】
【0081】
還元水素水の利用:実施例7のEx65が入った水を霧吹きスプレーにより車両に直接噴霧し、3〜5分後に吹きかけた水をふき取る。これにより、車両の洗浄(こびりついたよごれの除去等)を行うことができる。また、車内で噴霧することにより、車内の消臭もできる。また、カーペット等にも吹きかけることで、それについた汚れも除去することができる。
【0082】
トイレの給水タンクに入れておくことで、用を足した後に流す水が還元水素水となっているので、尿石除去及び脱臭をすることができる。また、野菜や鮮魚等の防腐目的にも使用することができる。また、油脂成分の分解等にも利用することができる。
【0083】
また、還元水素水は、その還元水素水から脱臭抗菌剤を取り出した後、約3〜6ヶ月使用することができるが、この期間に限定されずに、使用する用途に応じて、脱臭抗菌剤の量、脱臭抗菌剤の組成比、及び接触させる水の量等を調整することで、試用期間の長短を制御することができる。
【実施例14】
【0084】
水を分解して水素を発生させるペレットの樹脂の量は80%〜50%であるのに対し、空気中の水分などで水素を発生させ、消毒、除菌を行う反応の場合、樹脂量は全体のペレットの20%〜30%である。これにより、ペレット自体の水素発生と光、熱などによるペレットへの反応による水素発生によって消臭効果が発揮される。
【0085】
従って、水を使用せずに空気中の湿気などを使い水素を発生させるペレット(無水用ペレット)は、女性用ブーツ、スニーカーなどの靴製品の脱臭除菌などの他に、ブーツ等の湿気取り、タバコ臭、動物臭、カビ臭などの室内、車、押入れ、トイレの脱臭、除菌に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は、一般的に知られているPH−ORPダイヤグラムを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキド樹脂とテトラヒドロホウ酸アルミニウムとを含み、さらに、水素化カルシウム、金属酸化物、金属元素、及びアミノ酸のうち少なくともいずれか1つを含む脱臭抗菌剤であって、
前記アルキド樹脂は、二塩基酸と架橋剤と多価アルコールとから生成され、
前記金属酸化物は、三酸化タングステン及び二酸化ケイ素からなる群から少なくとも1つ選択され、
前記金属元素は、金属マグネシウム、金属アルミニウム、金属ケイ素、及び金属リチウムからなる群から少なくとも1つ選択され、
前記アミノ酸は、グルタミン酸、アスパラギン酸、リシン、アルギニン、グリシン、及びメチオニンからなる群から少なくとも1つ選択される
ことを特徴とする脱臭抗菌剤。
【請求項2】
前記アルキド樹脂は、前記脱臭抗菌剤に対して20〜30重量%含まれている
ことを特徴とする請求項1に記載の脱臭抗菌剤。
【請求項3】
二塩基酸と架橋剤と多価アルコールとからアルキド樹脂を生成し、
前記アルキド樹脂とテトラヒドロホウ酸アルミニウムとを混合して150℃〜180℃で1〜8時間焼成する
ことを特徴とする脱臭抗菌剤の製造方法。
【請求項4】
前記脱臭抗菌剤に、さらに、水素化カルシウムと、三酸化タングステン及び二酸化ケイ素からなる群から少なくとも1つ選択される金属酸化物と、金属マグネシウム、金属アルミニウム、金属ケイ素、及び金属リチウムからなる群から少なくとも1つ選択される金属元素と、グルタミン酸、アスパラギン酸、リシン、アルギニン、グリシン、及びメチオニンからなる群から少なくとも1つ選択されるアミノ酸のうち少なくともいずれか1つを混合して150℃〜180℃で1〜8時間焼成する
ことを特徴とする請求項3に記載の脱臭抗菌剤の製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2009−82572(P2009−82572A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258135(P2007−258135)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(504093799)有限会社木村研究所 (2)
【Fターム(参考)】