説明

脱臭装置

【課題】放電手段の放電効率の更なる向上を図り、脱臭効率に優れた脱臭装置を提供する。
【解決手段】空気が流通する送風経路内に配設された放電電極30と対向電極とを有し、放電電極と対向電極との間で高電圧放電をさせてオゾン及び紫外線を発生させる放電手段と、放電電極と対向電極との間に配置され、送風経路内を流通する空気中に含まれる被分解物質を光触媒作用によって分解する光触媒モジュールとを備える脱臭装置において、放電電極は、平板状をなし板面に沿って突出する第1突起40及び第2突起42を備え、第1突起の突出方向の長さL1が、第2突起の突出方向の長さL2の3倍以上に設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中に含まれている臭気成分等の被分解物質を分解して脱臭を行う脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放電手段において高電圧放電させることで発生させた紫外線を、酸化チタンなどの光触媒が担持された光触媒モジュールに照射し光触媒を活性化することで、空気中に含まれた臭気成分などの被分解物質を分解する脱臭装置が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−355958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような脱臭装置では、放電手段が放電する放電量が多くなればなるほど紫外線の発生量が増加し脱臭効率が向上することから、従来より、放電手段が有する放電電極に小さな突起を多数配設することで放電効率の向上が図られている場合がある。
【0005】
しかしながら、放電電極に設ける突起の配設密度を高くすると、隣接する突起が同電位となり相互作用が働くため、突起密度を増加させても放電量が増えにくいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題を考慮してなされたものであり、放電手段の放電効率の更なる向上を図り、脱臭効率に優れた脱臭装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る脱臭装置は、空気が流通する送風経路内に配設された放電電極と対向電極とを有し、前記放電電極と前記対向電極との間で高電圧放電をさせてオゾン及び紫外線を発生させる放電手段と、前記放電電極と前記対向電極との間に配置され、前記送風経路内を流通する空気中に含まれる被分解物質を光触媒作用によって分解する光触媒モジュールとを備える脱臭装置において、前記放電電極は、平板状をなし板面に沿って突出する第1突起及び第2突起を備え、前記第1突起の突出方向の長さが、前記第2突起の突出方向の長さの3倍以上に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の脱臭装置では、上記構成により、放電手段による放電量を増加させることができ脱臭効率の向上を図ることができる
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の1実施形態に係る脱臭装置の概略図である。
【図2】図1の脱臭装置における放電電極を示す平面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】第1突起の突出方向の長さとオゾン発生量との関係を示す図である。
【図5】異なる形状の放電電極を用いた脱臭装置のオゾン発生量を示す図である。
【図6】本発明の第1の変更例に係る脱臭装置における放電電極の要部拡大平面図である。
【図7】比較例に係る脱臭装置における放電電極の要部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
本実施形態に係る脱臭装置10は、例えば、冷蔵庫やレンジフードなどに取り付けられ、送風経路12内を流通する空気に含まれるアンモニア等の臭気成分やホルムアルデヒド等の有害物質といった被分解物質である有機物質を分解し脱臭するものであり、筒状の送風経路12の内部に配設されたプレフィルタ14,放電手段16,光触媒モジュール18、オゾン分解触媒20及び送風ファン22とを備える。
【0012】
プレフィルタ14は、送風経路12において最上流側に配置されており、空気中に含まれている塵埃をフィルタリングする。プレフィルタ14の後段(すなわち、送風経路12の下流側)には、電源装置24からパルス状高電圧が印加され紫外線及びオゾンを発生させる放電手段16が配置されている。
【0013】
放電手段16は、送風経路12の空気流通方向Fを横切るように配置された平板状の放電電極30と、空気流通方向Fの前後から所定間隔をあけて放電電極30を挟むように対向配置された一対の平板状の対向電極15,15とを備える。
【0014】
放電電極30は、厚さが0.5mm程度のタングステン等の金属板からなり、図2及び図3に示すように、エッチングによって複数個の矩形状の貫通孔32が格子状に穿設され、放電電極30の外周部を構成する枠部34と、枠部34の内側において互いに直交する横桟部36及び縦桟部38とを備えてなる。
【0015】
枠部34、横桟部36及び縦桟部38には、突出方向の長さ(突出長)が異なる2種類のピン状(先端が尖った三角形状)の第1突起40及び第2突起42が放電電極30の板面に沿って複数個突設されている。
【0016】
詳細には、枠部34には、放電電極30の外方に向かって突出する第1突起40及び第2突起42が設けられるとともに、貫通孔32の内方に向かって突出する第2突起42が設けられている。第1突起40は、本実施形態では縦桟部38の延長線上に配設され、隣り合う第1突起40の間に複数個の第2突起42が配設されている。第1突起40は、第2突起42に比べて突出長が長く、具体的には、第1突起40の突出長L1は、第2突起42の突出長L2の3倍以上に設定されている。
【0017】
また、横桟部36及び縦桟部38には、貫通孔32の内方に向かって突出する第2突起42が設けられている。
【0018】
ここで、図3を参照して放電電極30の各寸法の一例を挙げると、放電電極30に穿設した貫通孔32が一辺7.9mmの正方形、横桟部36及び縦桟部38の幅W=1.0mmに対して、第1突起40は、突出長L1=1.0mm、幅W1=0.5mmの鋭角三角形状をなしており、第1突起40の幅W1が縦桟部38の幅Wより小さく設定され、縦桟部38の延びる方向(図3における上下方向)に縦桟部38を延長した領域の内側に第1突起40が位置している。第2突起42は、突出長L2=0.3mm、幅W2=0.1mmの鋭角三角形状をなし、繰り返しピッチP=0.6mmで設けられている。
【0019】
対向電極15,15は、例えばステンレス等の金属板からなり、エッチングによって空気を流通させるためのスリット15a,15aが設けられている。
【0020】
光触媒モジュール18は、放電電極30及び対向電極15,15との間に配置されている。光触媒モジュール18は、多孔質状のセラミック(例えば、アルミナ,シリカなど)からなる基体の表面に酸化チタン等の光触媒材料を塗布し、その光触媒材料を乾燥または焼結させることで基体表面に担持させたものとして構成されている。
【0021】
オゾン分解触媒20は、二酸化マンガンを主体にしたハニカム形状の焼結体からなり、放電電極30の空気流通方向Fの下流側に所定距離をあけて送風経路12内に配設され、放電電極17および対向電極15,15との間で生成したオゾンを酸素に分解する。
【0022】
上記構成の脱臭装置10は、送風ファン22を回転駆動させ送風経路12内に空気を矢符F示す方向に流通させると共に、電源装置24によって放電電極30と放電電極30と対向電極15,15との間に負極性の高電圧を印加して放電させることで、紫外線とオゾンを発生させる。
【0023】
これにより、臭気成分等の被分解物質を含んだ空気は、プレフィルタ14でフィルタリングされた後、対向電極15のスリット15aを介して放電手段16内に至る。放電手段16においては、高電圧放電により発生した紫外線が光触媒モジュール18に照射され、光触媒モジュール18に担持された光触媒材料がその紫外線の光エネルギーを受け活性を帯びて光触媒作用を成し、空気中に含まれているの被分解物質を酸化分解する。
【0024】
また、放電手段16内を通過する空気は、高電圧放電により発生したオゾンと混合されて、下流側のオゾン分解触媒20に至る。オゾン分解触媒20では、空気中の被分解物質と混合された状態のオゾンが分解されると活性酸素が発生し、その活性酸素の酸化力によって被分解物質が酸化分解される。以上のようにして被分解物質が分解され脱臭された空気が、送風ファン22によって送風経路12の吐出口から吐出される。
【0025】
ここで、図4及び図5を参照して本発明の発明者らが行った実験結果の一例を示す。図4は、放電電極30に設けた第1突起40の突出長L1のみを変化させた場合のオゾン発生量の変化を示すもので、横軸は第2突起42に対する第1突起40の突出長比RL(L1/L2)、縦軸は第1突起40の突出長L1が第2突起42の突出長L2と等しい放電電極30、すなわち、突出長比RL=1の放電電極30を用いた放電手段16によるオゾン発生量に対する比率(オゾン発生比)ROを示す。なお、高電圧放電によってオゾンと紫外線を発生させる場合、オゾン発生量が増加すればそれに比例して紫外線の発生量も増加する。
【0026】
図4に示すように、突出長比RLが3以上、つまり、第1突起40の突出長L1が第2突起42の突出長L2の3倍以上になるとオゾン発生比ROが1.7以上となり、突出長比RLが3より小さく第1突起40の突出長L1が第2突起42の突出長L2の3倍より小さくなると、オゾン発生比ROが大きく減少し、放電が行われにくく紫外線の発生量も減少することが分かった。
【0027】
また、図5は、放電電極30のみが異なりその他の条件が同一に設定された脱臭装置10によるオゾン発生量(cc/h)をまとめた表であり、実施例1が図3に示す本実施形態の放電電極30を用いた場合、実施例2が図6に示す本発明の変更例に係る放電電極30を用いた場合、比較例が図7に示す比較例に係る放電電極100を用いた場合を示す。
【0028】
なお、図6に示す本発明の変更例に係る放電電極30は、第1突起40が、放電電極30の外方に向かって枠部34に設けられておらず、貫通孔32の内方に向かって枠部34、横桟部36及び縦桟部38に設けられている点で、図3に示す本実施形態の放電電極30と相違するが、第1突起40及び第2突起42の大きさは本実施形態の放電電極30の第1突起40及び第2突起42と同一に設定されている。また、図7に示す比較例に係る放電電極100は、本実施形態の放電電極30から第1突起40が取り除かれ第2突起42のみが設けられている。
【0029】
図5に示すように、第1突起40を備えた放電電極30を用いた実施例1及び実施例2は、第1突起40を備えていない放電電極100を用いた比較例に比べて、単位時間あたりのオゾン発生量が1.4倍以上となり、放電が行われ易く紫外線の発生量も増加することが分かった。
【0030】
また、第1突起40を設ける場合であっても、図3に示す実施例1のように第1突起40を放電電極30の枠部34から外方に向けて突設することで、第1突起40を配設する個数を増やしても近接する第1突起40の先端部の距離が近づくことにより生じる第1突起40同士の相互作用を抑えることができ、図6に示す実施例2のように第1突起40を貫通孔32の内方に向けて突設する場合に比べて、単位時間当たりのオゾン発生量が多くなり、紫外線の発生量も増加することが分かった。
【0031】
また、本実施形態の脱臭装置10のように放電電極30に複数個の貫通孔32を穿設すると放電電極30の剛性が低下するため、送風経路12の空気流通方向Fを横切るように配置された放電電極30が、送風経路12内を流通する風の抵抗によって変形して放電電極30と対向電極15との距離が変化するおそれがある。放電電極30と対向電極15との距離が変化すると放電が発生しにくくなるが、本実施形態の脱臭装置10では、突出長の長い第1突起40が、縦桟部38の延長線上に配設され放電電極30における変形しにくい位置に配設されている。そのため、本実施形態の脱臭装置10では、第1突起40と対向電極15との距離が変化することに起因する放電量の低下を抑えることができ、安定した放電が行われる。
【符号の説明】
【0032】
10…脱臭装置 12…送風経路 14…プレフィルタ
15…対向電極 15a…スリット 16…放電手段
18…光触媒モジュール 20…オゾン分解触媒 22…送風ファン
24…電源装置 30…放電電極 32…貫通孔
34…枠部 36…横桟部 38…縦桟部
40…第1突起 42…第2突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気が流通する送風経路内に配設された放電電極と対向電極とを有し、前記放電電極と前記対向電極との間で高電圧放電をさせてオゾン及び紫外線を発生させる放電手段と、
前記放電電極と前記対向電極との間に配置され、前記送風経路内を流通する空気中に含まれる被分解物質を光触媒作用によって分解する光触媒モジュールとを備える脱臭装置において、
前記放電電極は、平板状をなし板面に沿って突出する第1突起及び第2突起を備え、前記第1突起の突出方向の長さが、前記第2突起の突出方向の長さの3倍以上に設けられていることを特徴とする脱臭装置。
【請求項2】
前記第1突起は、前記放電電極の外周部から外方に向かって突設されていることを特徴とする請求項1に記載の脱臭装置。
【請求項3】
前記放電電極は、複数個の矩形状の貫通孔が格子状に穿設され、前記放電電極の外周部を構成する枠部と、前記枠部の内側において互いに直交する横桟部及び縦桟部とを備え、
前記第1突起が前記横桟部及び前記縦桟部の少なくとも一方の延長線上に突設されていることを特徴とする請求項2に記載の脱臭装置。
【請求項4】
前記送風経路における前記対向電極の下流側にオゾン分解手段が配設されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の脱臭装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−139845(P2011−139845A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3118(P2010−3118)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】