説明

脱臭装置

【課題】小型化することができる、あるいは圧力損失を低減することができる、あるいは消費電力を低減することができる脱臭装置を提供することである。
【解決手段】本発明の実施態様によれば、板状の正電極と、誘電体と、板状の負電極と、を備えた脱臭装置が提供される。前記誘電体は、前記正電極と離隔して設けられている。前記負電極は、前記誘電体からみて前記正電極とは反対の側において前記誘電体と接触して設けられている。前記正電極と前記負電極とは、前記誘電体を介して対向して設けられている。前記正電極および前記負電極の主面は、前記被脱臭体の流動方向と並行している。前記正電極と前記負電極との間に電圧が印加されて前記正電極と前記誘電体との間に誘電体バリア放電が生ずる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、放電を利用することで脱臭成分などを分解する脱臭装置がある。このような脱臭装置には、放電電極が設けられている。そして、脱臭装置は、放電電極に高電圧を印加して放電を生じさせ、この放電により例えばオゾンなどを発生させる。
脱臭装置は、例えば既存のダクトの内部などに設置される。そのため、脱臭装置に対しては、小型化が望まれている。
【0003】
しかしながら、放電電極を小型化することは困難である。そのため、脱臭装置を小型化することが困難であるという問題がある。また、被脱臭体が放電電極の近傍を通過する際の圧力損失を低減することが困難であったり、放電に必要な消費電力を低減することが困難であるなどの他の問題がある。放電を利用した脱臭装置に対しては、装置の小型化や、圧力損失の低減や、消費電力の低減などが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−349247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、小型化することができる、あるいは圧力損失を低減することができる、あるいは消費電力を低減することができる脱臭装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施態様によれば、板状の正電極と、誘電体と、板状の負電極と、を備えた脱臭装置が提供される。前記誘電体は、前記正電極と離隔して設けられている。前記負電極は、前記誘電体からみて前記正電極とは反対の側において前記誘電体と接触して設けられている。前記正電極と前記負電極とは、前記誘電体を介して対向して設けられている。前記正電極および前記負電極の主面は、被脱臭体の流動方向と並行している。前記正電極と前記負電極との間に電圧が印加されて前記正電極と前記誘電体との間に誘電体バリア放電が生ずる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態にかかる脱臭装置を表す分解模式図である。
【図2】本実施形態の放電ユニットを表す断面模式図である。
【図3】本実施形態の放電ユニットを表す斜視模式図である。
【図4】本実施形態の放電ユニットを表す平面模式図である。
【図5】本実施形態の放電ユニットを表す平面模式図である。
【図6】本実施形態の第1のケースを表す分解模式図である。
【図7】本実施形態の放電ユニット130を表す分解模式図である。
【図8】本実施形態の第2のケース150を表す分解模式図である。
【図9】昇圧素子が設けられた側の誘電体の一端部を表す斜視模式図である。
【図10】誘電体の支持構造および支持方法を説明するための斜視模式図である。
【図11】本実施形態の第2の支持体を表す斜視模式図である。
【図12】本実施形態にかかる脱臭装置の内部を表す斜視模式図である。
【図13】本実施形態にかかる脱臭装置の内部を表す平面模式図である。
【図14】本実施形態にかかる脱臭装置の内部を表す平面模式図である。
【図15】本実施形態の電源部を表す斜視模式図である。
【図16】本実施形態の電源部を拡大して眺めたときの拡大模式図である。
【図17】本実施形態の電源部を拡大して眺めたときの拡大模式図である。
【図18】本実施形態の基板を表す平面模式図である。
【図19】基板の固定方法を説明するための平面模式図である。
【図20】本実施形態の電源部の固定構造を説明するための模式図である。
【図21】本発明者が実施した性能試験の結果の一例を例示するグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる脱臭装置を表す分解模式図である。
【0009】
本実施形態にかかる脱臭装置100は、第1のケース110と、集塵フィルタ120と、放電ユニット130と、オゾン分解触媒140と、第2のケース150と、を備える。図1に表した矢印A1のように、被脱臭体は、第1のケースの側から第2のケースの側へ向かって流れる。本願明細書においては、説明の便宜上、被脱臭体の上流側の方向を上方とし、被脱臭体の下流側の方向を下方とする。
【0010】
放電ユニット130は、電極部160と、電源部170と、を有する。電極部160には、正電極161(図2参照)および負電極162(図2参照)が設けられている。放電ユニット130は、正電極161と負電極162との間に高電圧を印加し放電を生じさせる。この放電により空気中の酸素分子が解離し、他の酸素分子と再結合することでオゾンが発生する。放電ユニット130の放電により発生したオゾンは、空気中に含まれる臭気成分を分解することができる。
【0011】
オゾン分解触媒140は、例えば主としてアルミニウムを含む材料により形成され、ハニカム形状を有し、触媒がハニカム表面に付着する。オゾン分解触媒140は、放電ユニット130の放電により発生したオゾンや空気中に含まれる臭気成分を吸着することができる。放電ユニット130の放電により発生したオゾンは、オゾン分解触媒140により吸着され還元される際に、オゾン分解触媒140の表面近傍に存在する気体中に含まれる臭気成分を分解することができる。また、放電ユニット130の放電により発生したオゾンは、オゾン分解触媒140に吸着された臭気成分を分解し、オゾン分解触媒140から脱離させることができる。そのため、オゾン分解触媒140に吸着された臭気成分が残存し続けることを抑制することができる。これにより、オゾン分解触媒140の寿命を向上させることができる。
【0012】
電極部160は、例えばアルミナ板などの基体の表面に光触媒を担持したモジュールを有していてもよい。これによれば、放電ユニット130の放電により発生した光が光触媒を活性化させる。そして、活性化した光触媒の作用により、モジュールの表面近傍に存在する気体中に含まれる臭気成分を分解することができる。そのため、臭気成分の分解性能をより向上させることができる。
なお、光触媒を担持させる基体は、アルミナ板に限定されるわけではなく、例えばオゾン分解触媒140や正電極161であってもよい。
【0013】
集塵フィルタ120は、比較的大きい塵や埃を捕集することができる。その他の構造については、後に詳述する。
なお、図1に表した脱臭装置100では、集塵フィルタ120は、第1のケース110よりも下方に設置されているが、これだけに限定されるわけではない。集塵フィルタ120は、例えば、第1のケース110よりも上方に設置され、第1のケース110に適宜固定されていてもよい。
【0014】
図2は、本実施形態の放電ユニットを表す断面模式図である。
また、図3は、本実施形態の放電ユニットを表す斜視模式図である。
また、図4および図5は、本実施形態の放電ユニットを表す平面模式図である。
なお、図2は、図1に表したB−B切断面における断面模式図である。また、図3は、放電ユニット130を上方から眺めたときの斜視模式図である。また、図4および図5は、図1に表した矢印A2の方向にみたときの平面模式図である。
【0015】
図2に表したように、放電ユニット130の電極部160は、正電極161と、負電極162と、誘電体164と、被覆体165と、第1の支持体167と、を有する。
また、放電ユニット130の電源部170は、フレキシブルプリント基板175と、トランスなどの昇圧素子177と、を有する。電源部170については、後に詳述する。
【0016】
図2および図3に表したように、正電極161、負電極162、および誘電体164は、板状を有する。正電極161と負電極162と誘電体164とは、互いに対向して設けられている。そして、正電極161と負電極162と誘電体164との主面は、被脱臭体の流動方向A1と並行している。ここで、本願明細書において「主面」とは、板厚を形成する面と略直交する面、あるいは板幅を形成する面をいうものとする。
【0017】
これにより、正電極161、負電極162、および誘電体164が被脱臭体の流動を阻害することを抑制することができる。すなわち、被脱臭体が正電極161、負電極162、および誘電体164の近傍を通過する際の圧力損失を低減することができる。
【0018】
正電極161は、誘電体164からみて負電極162とは反対側において誘電体164と離隔されて設けられている。正電極161と誘電体164との間の距離D1は、例えば約0.1mm(ミリメートル)以上、0.5mm以下程度である。正電極161は、金属などの導電性を有する材料により形成され、例えば約0.2mm以下程度の板厚を有する。例えば、正電極161は、金属製の薄板の打ち抜きやエッチングなどにより形成されている。なお、正電極161は、例えば約0.2mm以下程度の直径を有する金属細線(ワイヤ)により形成されていてもよい。
【0019】
負電極162は、誘電体164からみて正電極161とは反対側において誘電体164と接触して設けられている。負電極162は、金属などの導電性を有する材料により形成され、例えば約0.2mm以下程度の板厚を有する。例えば、負電極162は、金属製の薄板の打ち抜きやエッチングなどにより形成されている。あるいは、負電極162は、金属を含有するペーストを誘電体164に印刷することにより形成されている。負電極162を形成する材料としては、例えば銀や銅などを挙げることができる。
【0020】
誘電体164は、セラミックやガラスや熱硬化性樹脂などにより形成されている。そして、図2に表したように、誘電体164の表面には、負電極162を覆い誘電体164の表面に延在する被覆体165が設けられている。これによれば、負電極162が腐食したり、放電ユニット130の放電により発生したオゾンから損傷を受けることを抑制することができる。つまり、被覆体165は、負電極162の寿命を向上させることができる。
【0021】
図1に関して前述したように、正電極161と負電極162との間に高電圧を印加すると、放電が生ずる。このとき、正電極161と負電極162との間に誘電体164が介在し、誘電体164の表面には負電極162を覆うように被覆体165が設けられているため、正電極161と誘電体164との間において誘電体バリア放電が生ずる。この放電により空気中の酸素分子が解離し、他の酸素分子と再結合することでオゾンが発生する。
【0022】
図3〜図5に表したように、誘電体164の両端の中間位置には、複数の第1の支持体167が設けられている。第1の支持体167は、シリコン樹脂やエポキシ樹脂などの光硬化性樹脂あるいは熱硬化性樹脂などにより形成されている。
【0023】
図2に表したように、第1の支持体167は、凹部167aを有する。そして、負電極162および被覆体165が設けられた誘電体164は、第1の支持体167の凹部167aにおいて外形を支持され保持されている。
また、図3〜図5に表したように、第1の支持体167は、凸部167bを有する。一方、正電極161は、孔161bを有する。そして、第1の支持体167の凸部167bが正電極161の孔161bに挿入され嵌合することにより、正電極161は、第1の支持体167に支持され保持されている。あるいは、正電極161は、第1の支持体167に接着されていてもよい。
【0024】
複数の第1の支持体167は、誘電体164の長手方向において例えば約50mm以下の間隔で設置されている。これにより、正電極161の形状が例えば約0.2mm以下程度の板厚を有する板状、あるいは例えば約0.2mm以下程度の直径を有する線状であっても、正電極161と、誘電体164および負電極162と、の間の距離を略一定に保つことができる。そのため、例えば振動や衝撃が脱臭装置100に加わった場合でも、放電ユニット130は、より安定した放電を行うことができる。
【0025】
また、正電極161と誘電体164との間の距離D1は、第1の支持体167により例えば約0.1mm以上、0.5mm以下程度に保たれている。これによれば、正電極161と負電極162とが誘電体164を介して近接しているため、放電に必要な電圧(放電電圧)を低減することができる。また、放電電圧を低減できるため、放電ユニット130の電源部170および脱臭装置100を小型化および低コスト化することができる。さらに、放電電圧を低減できるため、消費電力を低減することができる。
【0026】
また、誘電体164は、放電の際にスパークが発生して正電極161や負電極162が損傷したり、溶けたりすることを抑制することができる。そのため、誘電体164は、正電極161および負電極162の寿命を向上させることができる。
【0027】
正電極161は、上面から上方へ突出した放電部161aを有する。放電部161aは、例えば棘や針などのような尖形状を有する。これにより、電界が放電部161aに集中しやすく、より強くなりやすい。そして、より強い電界が放電部161aから放電しやすい。そのため、オゾンがより発生しやすい。また、放電が起こりやすくなるため、放電に必要な電圧を低減することができる。そのため、前述した効果と同様の効果が得られる。
【0028】
また、放電部161aは、正電極161の上面から上方へ、すなわち被脱臭体の上流側へ向かって突出している。そのため、放電により発生したオゾンは、オゾン分解触媒140や第2のケース150へ向かって流動する際に、放電部161aが正電極161の下面から下方へ突出した場合よりも広範囲に広がりやすい。そのため、放電により発生したオゾンをオゾン分解触媒140が吸着する効率を向上させることができる。これにより、空気中に含まれる臭気成分を分解する効率を向上させることができる。
【0029】
次に、第1のケース110と、第2のケース150と、放電ユニット130と、の構造について図面を参照しつつ説明する。
図6は、本実施形態の第1のケースを表す分解模式図である。
第1のケース110は、筐体111と、遮蔽体113と、電源仕切板115と、を有する。遮蔽体113および電源仕切板115は、筐体111に固定されている。
遮蔽体113は、放電ユニット130の放電により発生する電磁波を遮蔽することができる。つまり、遮蔽体113は、グランドに導通されている。また、遮蔽体113は、比較的大きい塵や埃を捕集する機能を有する。さらに、遮蔽体113は、オゾン分解触媒140を保護し、オゾン分解触媒140が例えば外力などにより変形することを抑制することができる。
【0030】
電源仕切板115は、放電ユニット130の電源部170をオゾン発生領域から隔離することができる。ここで、本願明細書において「オゾン発生領域」とは、被脱臭体の流路内の領域、あるいは被脱臭体の流動方向A1にみたときの集塵フィルタ120およびオゾン分解触媒140の少なくともいずれかの設置領域をいうものとする。また、電源仕切板115は、電源部170が有する基板173(図7参照)の側に塵や埃が進入することを抑制することができる。
【0031】
図7は、本実施形態の放電ユニット130を表す分解模式図である。
図1に関して前述したように、放電ユニット130は、電極部160と、電源部170と、を有する。電極部160は、図2〜図5に関して前述した如くである。また、電極部160は、第2の支持体169を有する。第2の支持体169は、負電極162および被覆体165が設けられた誘電体164の両端を支持している。第2の支持体169については、後に詳述する。
【0032】
電源部170は、基板ケース171と、基板173と、フレキシブルプリント基板175と、昇圧素子177と、を有する。フレキシブルプリント基板175は、基板173に電気的に接続されている。また、昇圧素子177は、フレキシブルプリント基板175に電気的に接続されている。すなわち、昇圧素子177は、フレキシブルプリント基板175を介して基板173に電気的に接続されている。そして、基板173は、基板ケース171に固定されている。
【0033】
図8は、本実施形態の第2のケース150を表す分解模式図である。
第2のケース150は、筐体151と、遮蔽体153と、電源仕切板155と、基板ケース固定部材157と、を有する。遮蔽体153、電源仕切板155、および基板ケース固定部材157は、筐体151に固定されている。遮蔽体153および電源仕切板155は、図6に関して前述した遮蔽体113および電源仕切板115の機能と同様の機能を有する。
基板ケース固定部材157は、両端部においてバネ157aを有する。基板ケース固定部材157は、バネ157aにより放電ユニット130の基板173を固定することができる。これについては、後に詳述する。
【0034】
次に、本実施形態の誘電体の支持構造について、図面を参照しつつ説明する。
図9は、昇圧素子が設けられた側の誘電体の一端部を表す斜視模式図である。
また、図10は、誘電体の支持構造および支持方法を説明するための斜視模式図である。
また、図11は、本実施形態の第2の支持体を表す斜視模式図である。
なお、説明の便宜上、図9では誘電体の上方に設けられる第2の支持体169を省略している。また、図10(a)は、誘電体を支持する前の状態を表す斜視模式図であり、図10(b)は、誘電体を支持した後の状態を表す斜視模式図である。
【0035】
図9に表したように、昇圧素子177が載置されたフレキシブルプリント基板175の下方に、第2の支持体169が設けられている。図10(a)および図11に表したように、第2の支持体169は、上面から上方へ突出した突設部169aを有する。そして、突設部169aには、誘電体164を挿入可能な溝169bが形成されている。すなわち、溝169bの幅は、誘電体164の板厚と同等あるいはそれよりも大きい寸法を有する。そのため、誘電体164の主面と並行に、すなわち被脱臭体の流動方向A1(図1及び図2参照)と並行に誘電体164を移動させ、第2の支持体169の溝169bに挿入することができる。
【0036】
図9に表した範囲E1のように、第2の支持体169の突設部169aの側面にフレキシブルプリント基板175を当接させることでフレキシブルプリント基板175を位置決めすることができる。また、図11に表したように、第2の支持体169は、誘電体164の設置数と同じ、あるいはそれ以上の数の突設部169aおよび溝169bを有し、一体成形あるいは一括成形されている。これにより、部品点数の削減や、組立性の向上や、低コスト化を図ることができる。
【0037】
図10(a)に表したように、フレキシブルプリント基板175の上方には、下方と同様に第2の支持体169が設けられている。上方および下方の第2の支持体169は、それぞれの溝169bが互いに対向するように設けられる。そして、図10(a)に表した矢印A3、A4のように、上方および下方の第2の支持体169を移動させる。続いて、図10(b)に表したように、それぞれの溝169bにおいて誘電体164を挟設する。これにより、昇圧素子177が設けられた側の誘電体164の一端部が、第2の支持体169により支持される。また、これと同様にして、昇圧素子177が設けられた側とは反対の側の誘電体164の他端部が、第2の支持体169により支持される。
【0038】
第2の支持体169は、例えばゴムなどの弾性体により形成されている。そのため、例えば振動や衝撃が脱臭装置100に加わった場合でも、誘電体164、負電極162、および正電極161が変形したり損傷を受けることを抑制することができる。これにより、放電ユニット130は、より安定した放電を行うことができる。
なお、図9〜図11に関して説明した誘電体164の支持構造では、図9に表した状態ではんだペーストを塗布し、第2の支持体169ごとリフローすることで、昇圧素子177と、正電極161および負電極162と、をそれぞれ電気的に接続することができる。
【0039】
次に、本実施形態にかかる脱臭装置の内部構造ついて、図面を参照しつつ説明する。
図12は、本実施形態にかかる脱臭装置の内部を表す斜視模式図である。
また、図13および図14は、本実施形態にかかる脱臭装置の内部を表す平面模式図である。
なお、図13は、図1に表した矢印A2の方向にみたときの平面模式図である。また、図14は、上方からみたときの平面模式図である。説明の便宜上、図14では第1のケース110および集塵フィルタ120を省略している。
【0040】
図12〜図14に表したように、昇圧素子177は、被脱臭体の流路内の領域、すなわちオゾン発生領域に設けられている。図6に関して前述したように、本願明細書において「オゾン発生領域」とは、被脱臭体の流路の領域、あるいは被脱臭体の流動方向A1にみたときの集塵フィルタ120およびオゾン分解触媒140の少なくともいずれかの設置領域をいう。
【0041】
本実施形態の昇圧素子177は、入力された電圧を例えば約3kV(キロボルト)程度にまで上昇させる。より具体的には、昇圧素子177は、放電電圧が3kV以下となるように入力された電圧を上昇させる。例えば、本実施形態にかかる脱臭装置100が車載用として使用される場合には、基板173に設けられた図示しない昇圧素子が電圧を12Vから180Vまで上昇させた後、被脱臭体の流路内の領域に設けられた昇圧素子177が電圧を180Vから3kV以下まで上昇させる。この昇圧方法は、一例にすぎず、これだけに限定されるわけではない。
【0042】
昇圧素子177がオゾン発生領域に設けられているため、正電極161および負電極162と、昇圧素子177と、の間の接続距離は、昇圧素子177がオゾン発生領域の外部(例えば基板173など)に設けられた場合よりも短い。そのため、電圧降下量は、昇圧素子177がオゾン発生領域の外部に設けられた場合よりも少ない。これにより、昇圧素子177を小型化および低コスト化することができる。さらに、消費電力を低減することができる。
【0043】
なお、第1のケース110の筐体111の板厚D2は、例えば約0.6mm程度である。集塵フィルタ120の厚さ(被脱臭体の流動方向の寸法)D3は、例えば約10mm程度である。放電ユニット130の電極部160の厚さ(被脱臭体の流動方向の寸法)D4は、例えば約5.5mm程度である。オゾン分解触媒140の厚さ(被脱臭体の流動方向の寸法)D5は、例えば約13mm程度である。第2のケース150の筐体151の板厚D6は、例えば約0.5mm程度である。放電ユニット130の電源部170の厚さ(被脱臭体の流動方向と直交する方向の寸法)D7は、例えば約12mm程度である。また、正電極161とオゾン分解触媒140との間において異常放電が発生しないように、正電極161とオゾン分解触媒140とを所定間隔で離隔して設置することが望ましい。
【0044】
次に、放電ユニット130の電源部170の構造について、図面を参照しつつ説明する。
図15は、本実施形態の電源部を表す斜視模式図である。
また、図16および図17は、本実施形態の電源部を拡大して眺めたときの拡大模式図である。
なお、図15(a)は、電極部160が設けられる側から眺めたときの斜視模式図である。また、図15(b)は、電極部160が設けられる側とは反対の側から眺めたときの斜視模式図である。また、図16は、図15(a)に表した範囲E2の拡大模式図である。また、図17(a)は、図16に表した範囲E3の拡大模式図である。また、図17(b)は、図15(a)に表した範囲E4の拡大模式図である。
【0045】
図7に関して前述したように、昇圧素子177は、フレキシブルプリント基板175を介して基板173に電気的に接続されている。そして、図15(a)および図15(b)に表したように、基板173は、基板ケース171に固定されている。
【0046】
図16に表したように、基板ケース171には、ファームウェアを書き換えるときに使用されるコネクタ穴171aが設けられている。
【0047】
図16および図17(a)に表したように、基板ケース171には、基板173を保持あるいは固定する嵌合爪171bが設けられている。一方、基板173には、基板ケース171の嵌合爪171bと嵌合可能な嵌合凹部173aが設けられている。そのため、図17(a)に表した矢印A5のように基板173を移動させ、基板ケース171の嵌合爪171bと、基板173の嵌合凹部173aと、を嵌合させることで基板173を基板ケース171に固定することができる。
また、基板173を基板ケース171に固定するときに、図17(b)に表した矢印A6のように基板173を移動させ基板ケース171の内側面171cに当接させることで、基板173を位置決めすることができる。
【0048】
基板173の固定方法について、図面を参照しつつさらに説明する。
図18は、本実施形態の基板を表す平面模式図である。
また、図19は、基板の固定方法を説明するための平面模式図である。
なお、図18は、電極部160が設けられる側あるいはそれとは反対の側から眺めたときの平面模式図である。また、図19は、上方からみたときの平面模式図である。
【0049】
図18に表したように、基板173の上端および下端のそれぞれに、嵌合凹部173aが形成されている。なお、嵌合凹部173aの形成数は、図18に表した形成数(6つ)に限定されるわけではない。
図19(a)に表したように、基板173の嵌合凹部173aの幅D9は、基板ケース171の嵌合爪171bの幅D8よりも大きい。そのため、図19(b)に表した矢印A7のように基板173を移動させることで、嵌合爪171bを嵌合凹部173aに通すことができる。そして、図19(c)に表した矢印A8のように基板173を移動させることで、嵌合爪171bと嵌合凹部173aとを嵌合させ、基板173を基板ケース171に固定することができる。
【0050】
基板173には、種々の電子部品が実装されている。そのため、電子部品を含む基板173から熱が発生する。基板173は、嵌合凹部173aにおいて基板ケース171の嵌合爪171bと嵌合し接触しているため、基板173から発生した熱は、基板ケース171へ伝わる。そして、図12および図13に表したように、基板ケース171は、基板ケース固定部材157と接触している。そのため、基板ケース171へ伝わった熱は、基板ケース固定部材157を介して第1のケース110の筐体111や第2のケース150の筐体151などから外部へ放散される。このように、基板ケース171は、基板173を固定するだけではなく、基板173から発生した熱を伝えて放散させる機能を有する。
【0051】
次に、本実施形態の電源部170の固定構造について、図面を参照しつつ説明する。
図20は、本実施形態の電源部の固定構造を説明するための模式図である。
なお、図20(a)は、本実施形態の電源部の固定構造を表す斜視模式図であり、図20(b)は、本実施形態の電源部の固定構造を表す平面模式図である。また、図20(b)は、電極部160が設けられる側から眺めたときの平面模式図である。
【0052】
図8に関して前述したように、基板ケース固定部材157は、両端部においてバネ157aを有する。一方、図20(a)に表したように、基板ケース171は、内側面171cに凹部171dを有する。
【0053】
基板ケース171を固定する際には、まず、基板ケース171を所定位置に配置する。続いて、図20(b)に表した矢印A9のように、脱臭装置100の内部から外部へ向かって基板ケース固定部材157のバネ157aを押して基板ケース171の凹部171dに入り込ませる。そうすると、図20(a)および図20(b)に表したように、基板ケース固定部材157のバネ157aにより、基板ケース171が上方へ移動することを抑制される。言い換えれば、基板ケース171が基板ケース固定部材157に固定される。これにより、放電ユニット130の電源部170が基板ケース固定部材157に固定される。そのため、例えば振動や衝撃が脱臭装置100に加わった場合でも、フレキシブルプリント基板175が変形したり断線することを抑制することができる。
【0054】
次に、本発明者が実施した性能試験の結果の一例について、図面を参照しつつ説明する。
図21は、本発明者が実施した性能試験の結果の一例を例示するグラフ図である。
なお、図21(a)は、放電時間とオゾン発生量との関係を例示するグラフ図であり、図21(b)は、放電時間と放電電圧との関係を例示するグラフ図である。
【0055】
図21(a)に表したように、本実施形態にかかる脱臭装置100によれば、放電時間(動作時間)が経過しても、オゾン発生量の変化が比較的小さいことが分かる。つまり、放電時間が経過しても、オゾン発生量が比較的安定していることが分かる。これによれば、本実施形態にかかる脱臭装置100では、放電むらが比較的少なく、安定した放電を実行可能であることが分かる。
【0056】
また、図21(b)に表したように、本実施形態にかかる脱臭装置100によれば、放電時間が経過しても、放電電圧の変化が比較的小さいことが分かる。つまり、放電時間が経過しても、放電電圧が比較的安定していることが分かる。これによれば、本実施形態にかかる脱臭装置100では、例えば異常放電などの異常が発生して放電電圧が急上昇するなどの不具合は、生じていないことが分かる。そのため、消費電力を比較的安定化させることができる。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
100 脱臭装置、 110 第1のケース、 111 筐体、 113 遮蔽体、 115 電源仕切板、 120 集塵フィルタ、 130 放電ユニット、 140 オゾン分解触媒、 150 第2のケース、 151 筐体、 153 遮蔽体、 155 電源仕切板、 157 基板ケース固定部材、 157a バネ、 160 電極部、 161 正電極、 161a 放電部、 161b 孔、 162 負電極、 164 誘電体、 165 被覆体、 167 第1の支持体、 167a 凹部、 167b 凸部、 169 第2の支持体、 169a 突設部、 169b 溝、 170 電源部、 171 基板ケース、 171a コネクタ穴、 171b 嵌合爪、 171c 内側面、 171d 凹部、 173 基板、 173a 嵌合凹部、 175 フレキシブルプリント基板、 177 昇圧素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の正電極と、
前記正電極と離隔して設けられた誘電体と、
前記誘電体からみて前記正電極とは反対の側において前記誘電体と接触して設けられた板状の負電極と、
を備え、
前記正電極と前記負電極とは、前記誘電体を介して対向して設けられ、
前記正電極および前記負電極の主面は、被脱臭体の流動方向と並行し、
前記正電極と前記負電極との間に電圧が印加されて前記正電極と前記誘電体との間に誘電体バリア放電が生ずる脱臭装置。
【請求項2】
前記誘電体は、板状に形成され前記正電極と前記負電極とに対向し、
前記誘電体の主面は、被脱臭体の流動方向と並行してなる請求項1記載の脱臭装置。
【請求項3】
前記正電極は、前記被脱臭体の流動方向の上流側へ突出した尖形状の放電部を有する請求項1または2に記載の脱臭装置。
【請求項4】
前記誘電体は、セラミック、ガラス、および熱硬化性樹脂の少なくともいずれかを含む材料により形成された請求項1〜3のいずれか1つに記載の脱臭装置。
【請求項5】
前記負電極を覆い前記誘電体の表面に延在する被覆体をさらに備えた請求項1〜4のいずれか1つに記載の脱臭装置。
【請求項6】
前記正電極と前記誘電体とを支持し、前記正電極と前記誘電体との間の距離を所定距離に保つ支持体をさらに備えた請求項1〜5のいずれか1つに記載の脱臭装置。
【請求項7】
前記支持体は、光硬化性樹脂および熱硬化性樹脂の少なくともいずれかを含む材料により形成された請求項6記載の脱臭装置。
【請求項8】
前記正電極の板厚は、0.2ミリメートル以下であり、
前記所定距離は、0.1ミリメートル以上、0.5ミリメートル以下である請求項6または7に記載の脱臭装置。
【請求項9】
前記支持体は、前記誘電体の長手方向において50ミリメートル以下の間隔で設置された請求項6〜8のいずれか1つに記載の脱臭装置。
【請求項10】
前記被脱臭体の流路内に設けられ、入力された電圧を上昇させて前記正電極と前記負電極との間に印加する昇圧素子をさらに備えた請求項1〜9のいずれか1つに記載の脱臭装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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