説明

脱臭装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、注入条件に応じて汚泥等の臭気発生源に消臭用の薬剤を注入する脱臭装置に関し、特に上記注入条件を算出する脱臭装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の脱臭装置では、例えば特願昭63─272709号公報に示すように、臭気センサによって汚泥から発生する臭気成分濃度を検出し、制御器が上記検出した臭気成分濃度信号の積分信号と、該積分信号の微分信号との減算値に基づいて薬注ポンプを作動させ、薬剤の注入量を制御するものがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記装置は、短時間に変動する臭気ガスの発生量に対応して薬剤の注入量を制御することを目的にするため、季節や作業環境等の変化に基づく臭気ガス発生量の変化や汚泥成分の変化による薬剤の消臭効果の変動に対応できないという問題点があった。すなわち、薬注ポンプを作動させるために設定された制御条件では、作業環境の変化に応じて汚泥から発生するガスの発生量の変動に対応できず、このため、熟練した作業者が定期的にガスの発生状態を点検して、制御条件を変更する必要があり、作業者に負担を与え、作業効率が悪化するという問題点があった。
【0004】本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、季節や作業環境等の変化に基づく臭気ガス発生量の変化や汚泥成分の変化に迅速に対応して、薬剤の注入量を制御する制御条件を調整することができる脱臭装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するため、臭気発生源に消臭用の薬剤を注入する注入条件を設定し、該注入条件に応じて前記臭気発生源に薬剤を注入する脱臭装置において、前記臭気発生源から発生する臭気成分の濃度を測定するセンサ部と、前記測定された臭気成分濃度の測定結果から変動量を検出する変動量検出部と、前記検出された変動量に応じて薬剤の注入条件を算出する演算部とを具える脱臭装置が提供される。
【0006】
【作用】検出した臭気成分濃度の変動量が所定量をこえると、上記変動量に応じてガスの消臭効果を有する薬剤の注入条件を算出し、算出した注入条件に応じて前記臭気発生源に薬剤を注入する。従って、薬剤の注入量を制御する制御条件を季節や作業環境等の変化に基づく臭気ガス発生量の変化や汚泥成分の変化に対応して迅速に算出して調整することができる。
【0007】
【実施例】本発明の実施例を図1乃至図3の図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明に係る脱臭装置の概略構成を示すブロック図である。図において、臭気発生源である汚泥は、所定手段によって汚泥タンク11に搬送されて一時溜められており、その後汚泥ポンプ12によって凝集反応槽13に送られる。
【0008】凝集反応槽13には、臭気センサ14が設けられており、汚泥から発生する臭気ガスの成分濃度を測定している。測定値は、成分濃度信号として測定値に応じて薬注ポンプ17を制御するためポンプコントローラ回路16に送出されると共に、制御条件を変更するための制御条件調整部15に送出される。制御条件調整部15は、図2に示すように、ピークホールド回路20,21、比較回路22,23、カウンタ回路24,25からなる変動量検出部及び注入条件を算出する演算部である比較演算回路26等から構成されている。
【0009】ピークホールド回路20,21は、入力する成分濃度信号から一定周期毎の最大濃度値と最小濃度値をホールドして比較回路22,23に出力する。また、ピークホールド回路20,21は、比較演算回路26から一定周期で出力されるリセット信号によってホールドした濃度値をリセットしている。比較回路22は、予め設定された成分濃度の上限監視値と、ピークホールド回路20から一定周期毎に入力する最大濃度値を比較し、上記最大濃度値が上限監視値を越えた時にパルス信号をカウンタ回路24に出力する。比較回路23は、予め設定された成分濃度の下限監視値と、ピークホールド回路21から一定周期毎に入力する最小濃度値を比較し、上記最小濃度値が下限監視値を下回った時にパルス信号をカウンタ回路25に出力する。すなわち、比較回路22,23は、ガスの最大濃度値と最小濃度値が設定された上記監視値の範囲外になると、パルス信号を出力している。
【0010】カウンタ回路24,25は、上記比較回路22,23から入力するパルス信号をカウントしており、比較演算回路26から出力される読出信号に応じて上記カウント値を比較演算回路26に読み出すとともに、上記カウント値をリセットする。比較演算回路26は、上限回数と下限回数を予め内部メモリ27等に記憶しており、上記ガス濃度が設定された監視値の範囲外になった時の回数を示すカウンタ回路24,25からのカウント値を取り込むと、上記カウント値を上限回数及び下限回数と比較し、カウント値が上限回数と下限回数の範囲外になると、今まで設定していた制御条件を変更するため新たな制御条件に基づくオフセット信号をポンプコントローラ回路16に出力する。ポンプコントローラ回路16は、上記オフセット信号が入力すると、上記オフセット信号に応じて制御条件が変更される。なお、比較演算回路26がカウンタ回路24,25からカウント値を取り込む間隔は、変更した制御条件による効果が十分に把握できるだけの時間を持った間隔とする。
【0011】制御条件が変更された上記ポンプコントローラ回路16には、臭気センサ14の測定値が入力され、その測定値に応じてポンプコントローラ回路16から駆動信号が薬注ポンプ17に出力され、凝集反応槽13に消臭剤を所定量注入する。次に、上記脱臭装置の動作を図3の図面に基づき説明する。なお、図3において、汚泥からの臭気ガス発生量と消臭剤注入量との関係は、現在、Aの状態にあり、比較演算回路26の制御条件をaのように設定したとすると、比較演算回路26の制御は、C点を中心にした変動に対して行われる。すなわち、臭気ガスの発生量では、ガス制御目標値であるE点を中心にした変動に対して制御が行われる。
【0012】ここで、汚泥を発生している環境の変化(例えば、雨や気温の変化等)により、汚泥の状態が消臭剤との関係においてBの状態のように変化したとすると、比較演算回路26の制御の中心はD点に移動するため、臭気成分濃度の変動の中心は、E点からF点に移動する。このため、ピークホールド回路20から出力される最大濃度値が上限監視値を越える場合が多くなり、これに伴いカウンタ回路24から読み出されるカウント値が増加する。そして、比較演算回路26は、カウンタ回路24から取り込んだカウント値と上限回数とを比較し、上記カウント値が上限回数を超えると、超えた回数に応じて制御条件をbのように設定すべく、消臭剤注入量のオフセット値を増加させる。なお、上記オフセット値の増減量は、カウント値が上限回数を超えた回数に応じて予め設定されている。
【0013】そして、制御条件の変更の効果を上記と同様の手順で確認することによって、必要ならば再び制御条件の変更を行う動作を繰り返す。このように、制御条件がaよりbに移ると、比較演算回路26の制御は、C′点を中心にした変動に対して行われるようになり、臭気ガス発生量の中心をF点からE点に戻すことが可能になる。
【0014】また、ピークホールド回路21から出力される最小濃度値が下限監視値を下回ることが多くなる場合には、カウンタ回路25から読み出されるカウント値が増加する。そして、比較演算回路26は、カウンタ回路25から取り込んだカウント値と下限回数とを比較し、上記カウント値が下限回数を下回ると、下回った回数に応じて制御条件をcのように設定すべく、消臭剤注入量のオフセット値を減少させる。この場合も上記と同様に、臭気ガス発生量の中心をF点からE点に戻すことが可能になる。
【0015】従って、本実施例では、脱臭装置の作業時における環境に変化が生じても、年間を通じて制御条件を常に適切な状態に保持することができるので、汚泥に注入される消臭剤の注入量が適量になり、臭気ガスの消臭を効率的に行うことができる。さらに、本実施例では、制御条件の調整を人手を介さず自動的に行うことができるので、メンテナンス上の負荷の軽減を図ることができる。
【0016】なお、本実施例では、カウンタ回路から読み出されるカウント値を上限回数及び下限回数と比較しているが、本発明はこれに限らず、例えば上記カウント値に応じてオフセット値の調整を行うようにすることも可能である。また、制御条件を調整するために、濃度の最大濃度値と最小濃度値を求めているが、この他に平均濃度値を加えたり、又は平均濃度値のみで上記調整を実施することも可能である。
【0017】なお、実施例では、凝集反応槽にセンサを設けているが、汚泥タンクでも良く、また、それ以外の例えば、脱水機室等の作業場全体の臭気ガスを測定しても良い。
【0018】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では、臭気発生源に消臭用の薬剤を注入する注入条件を設定し、該注入条件に応じて前記臭気発生源に薬剤を注入する脱臭装置において、前記臭気発生源から発生する臭気成分の濃度を測定するセンサ部と、前記測定された臭気成分濃度の測定結果から変動量を検出する変動量検出部と、前記検出された変動量に応じて薬剤の注入条件を算出する演算部とを具えたので、季節や作業環境等の変化に基づく臭気ガス発生量の変化や汚泥成分の変化に迅速に対応して、薬剤の注入量を制御する制御条件を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る脱臭装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した制御条件調整部の構成を示すブロック図である。
【図3】臭気ガス発生量と消臭剤注入量の関係を示す図である。
【符号の説明】
11 汚泥タンク
12 汚泥ポンプ
13 凝集反応槽
14 臭気センサ
15 制御条件調整部
16 ポンプコントローラ
17 薬注ポンプ
20,21 ピークホールド回路
22,23 比較回路
24,25 カウンタ回路
26 比較演算回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 臭気発生源に消臭用の薬剤を注入する注入条件を設定し、該注入条件に応じて前記臭気発生源に薬剤を注入する脱臭装置において、前記臭気発生源から発生する臭気成分の濃度を測定するセンサ部と、前記測定された臭気成分濃度の測定結果から変動量を検出する変動量検出部と、前記検出された変動量に応じて薬剤の注入条件を算出する演算部とを具えたことを特徴とする脱臭装置。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【特許番号】特許第3172733号(P3172733)
【登録日】平成13年3月30日(2001.3.30)
【発行日】平成13年6月4日(2001.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−90681
【出願日】平成3年4月22日(1991.4.22)
【公開番号】特開平4−322719
【公開日】平成4年11月12日(1992.11.12)
【審査請求日】平成10年2月24日(1998.2.24)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【参考文献】
【文献】特開 平2−119918(JP,A)