説明

脱色素剤としてのギンバイカエキスの使用

【課題】皮膚および/または体毛および/または頭髪の美白および/または明色化に好適な化粧品組成物、そのための美容的方法、皮膚の加齢斑を減少および/または消失させるための美容的方法、ならびに皮膚の色素斑を減少および/または消失させるおよび/または予防するための美容的方法の提供。
【解決手段】脱色素剤としての、ギンバイカ(myrtle)エキスを含有する化粧品組成物などの新規組成物、および脱色を目的としたその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギンバイカ(myrtle)エキスを含有する化粧品組成物などの新規組成物、および脱色素についてのその使用に関する。
【0002】
本発明は、本発明による化粧品組成物を、皮膚および/または体毛および/または頭髪へ適用することを含む、皮膚および/または体毛および/または頭髪の美白および/または明色化のための美容的方法、ならびに皮膚の色素斑を減少および/または消失させるおよび/または予防するための美容的方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
その1:
皮膚の色素沈着は、かなり特殊な細胞であるメラニン細胞のメラニン合成能力による。メラニンは、メラニンおよびその誘導体(黒褐色色素)、フェオメラニンおよびその誘導体(黄赤色色素)という、多様な分子型を呈することのできる色素である。メラニン細胞は表皮の基底層に在り、メラニンの輸送に必要とされる細胞質または樹状突起を有する。メラニンはメラノソーマに含有される粒子の形態で存在する。メラニンは、その内部で1つの酵素、具体的にはチロシナーゼの作用によりチロシンより合成される。形成されたメラノソーマは、樹状突起を経て角化細胞に移動した後、トランスロケーション現象によってこれらの細胞の中に入る。角化細胞が角質細胞に分化するときメラニンは細胞質内で分散し、落屑により消失する。
【0004】
チロシナーゼ阻害は、脱色素活性を有することを意図した製品の重要な目標となる。この阻害によりメラニン産生が遮断される。これはアルブチンまたはヒドロキノンなどの数多くの有効成分に当てはまる。この活性はin vitroで、酵素において直接、またはそのメラニン合成能力が評価されるメラニン細胞においてより全体的に観察することができる。メラノソーマの輸送を阻害する能力も、脱色素製品の対象目標となる。これは、これらのメラノソーマが移動するのに不可欠であり、そのためその構成成分であるメラニンの移動にも不可欠である樹状突起の形成を阻害する能力が製品に有るか無いかにより観察することができる。
【0005】
その2:
ギンバイカ、またはミルツス・コンムニス(Myrtus communis)はフトモモ科(myrtaceae)に属する。
【0006】
高さ2から3メートルに生長することもある低木であり、その幹は不揃いであり、ほぼなめらかな錆色の樹皮に覆われている。
【0007】
葉は対生配列であり、常緑で、固く、暗緑色である。枝は楕円形で先端はとがり、半透明の腺状斑があり、非常に短い葉柄に入り込む。
【0008】
花は白色で、香りがありかつ単生で葉腋において長い花柄で支持される。5月から6月に開花する。萼はその下部で子房と融合する。萼は、外向きで花弁より短い5つの三角形に分かれる。花冠は5つの分離した花弁を有する。雄ずいは固定されず数が多い。子房は3つに分かれ、その上に末端が単柱頭となる花柱がある。子房の3つの枠にはそれぞれ数多くの胚珠が包含されている。果実は球形の液果であり、卵形で、熟すと青みを帯びた黒色になる。その上に常緑の萼が5歯ある。アルブミンを含まない種子が多数包含されている。
【0009】
ギンバイカは土壌が白亜質であるか珪質であるかに関わらず生育する。霜に対する抵抗力はないので、高地で生育できない。フランスの地中海沿岸、特にプロバンスに非常に多い。南欧、アジアの西部および南部、北アフリカにも自生する。
【0010】
ギンバイカは葉、それのみならず果実にも多く含まれる精油を目的として特に使用される。水蒸気蒸留により、またはヘキサンなどの無極性溶媒を用いて抽出することのできるこの精油は、心地よい香りを有し緑色を帯びている。ユーカリプトール、リナロール、ゲラニオール、ピネンおよびリモネン、ならびにミルトールおよびミルテノールなどのより特異的な物質を含有する。
【0011】
葉は、タンニン、主として没食子タンニンを平均14%と高い割合で、ならびにフラボノイド類(ミリセトール、ケンペロールおよびそのグリコシル化誘導体)、クマリン類(エスクリン、エスクレチン)およびフェノール酸をも含有する。
【0012】
果実は、精油に加えて、その一部が加水分解可能な縮合タンニンからなる大量のポリフェノール化合物を含有する。ケルセチン、パツレチン、没食子酸およびエラグ酸などのより単純なフェノール化合物も確認される。
【0013】
伝統的に、ギンバイカはその精油を目的として使用される。例えば、G.GARNIERらは、その著書『フランスの花の医薬資源』(出版:1961年、Vigot Freres、パリ)において、「かつてミリトールという不適切な名称で投与されていた精油は、防腐および消毒性を有し、消化刺激剤として作用し、止血性であり、ならびにまた、落屑性皮膚疾患および主として乾癬に対して著しい作用を有する」と記載している。乾癬の適応症は「ミルツコムロンB’を含有するギンバイカエキス、その調製法ならびに皮膚科および美容術における用途」の標題を有するフランス国特許第2783425号にも記載されている。
【0014】
他の植物とともにギンバイカの精油を含有する組成物の防臭剤としての使用は、米国特許出願第2001006626号の主題でもあった。
【0015】
特願2001−220312号は、ギンバイカの精油を含有する水分補給蒸留水を記載する。
【0016】
また、美容術において、頭髪製品としてであるが、ギンバイカエキスは単独または組み合わせて、抗ふけ研究「ギンバイカエキスを含む毛髪用組成物、その調製法および抗ふけ治療への具体的な使用」:フランス国特許第2735026号および「ギンバイカエキスと抗真菌薬の複合」:フランス国特許第2741265号の主題であった。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、植物エキス:ギンバイカまたはミルツス・コンムニス由来の新規脱色素活性成分を提案する。本出願人は、まったく驚異的かつ革新的な方法で、ギンバイカエキスがメラニン細胞によるメラニンの合成および輸送を阻害する能力があることを立証している。
【0018】
本発明は、化粧品組成物における、脱色素剤としてのギンバイカエキスの使用に関し、ならびに、ギンバイカエキスを含有する化粧品組成物の皮膚および/または体毛および/または頭髪への適用を含む、皮膚および/または体毛および/または頭髪の美容的美白および/または明色化法、ならびに皮膚の色素斑を減少および/または消失させるおよび/または予防するための美容的方法にも関する。
【0019】
本発明のさらなる主題は、皮膚を脱色素することを意図した皮膚科用組成物を生成するためのギンバイカエキスの使用である。
【0020】
最終的に、本発明の目的は、生理学的に許容できる媒質中に、有利にはアスコルビルグルコシドなどの他の有効成分とともに、ギンバイカエキスを有効成分として含有する、化粧品または皮膚科用組成物などの、新規組成物を提供することである。
【発明の具体的説明】
【0021】
本発明の下では、ギンバイカエキスを当業者にとって既知である従来の抽出および濃縮手順に従って調製することができる。
【0022】
ギンバイカエキスを植物全体または植物の一部より得ることができる。本発明による具体的に有利な方法において、ギンバイカエキスは、葉、果実、またはギンバイカの葉および果実の混合物より得られる。
【0023】
したがって、ギンバイカの葉および/または果実に由来するギンバイカエキスの生成は以下の手順を含む:
−ギンバイカの葉および/または果実を粉砕し、
−極性溶媒などの溶媒を用いて粉砕したギンバイカの葉および/または果実から抽出し、
−濾過または遠心分離により抽出溶液を収集し、
−収集した溶液を蒸発により濃縮してギンバイカエキスを得るが、これを他の成分と混合して該組成物を得てもよい。
【0024】
好ましくは、ギンバイカの葉および/または果実は、乾燥したギンバイカの葉および/または果実である。
【0025】
より好ましくは、ギンバイカの葉と果実の重量比は90/10に近い。
【0026】
抽出段階において使用する溶媒は、有利にはC1からC4のアルコールもしくはアセトン、または水−アルコール混合液もしくはアセトン−水混合液などの極性溶媒である。
【0027】
葉および/または果実と溶媒との重量比は、典型的には1〜20の間であり、好ましくは1〜4の間であり、ならびに抽出温度は、一般的に室温と溶媒の沸点との間である。抽出時間は、典型的には1時間〜24時間の間である。
【0028】
本発明の1つの有利な実施形態によると、蒸発によって収集される溶液の濃縮は、粉末が得られるまで減圧下で、40〜100℃の温度で、得られる。濃縮操作時に、高沸点の溶媒、より具体的にはグリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコールまたはトランスクトールを添加することも可能である。このとき、ギンバイカエキスは液状である。
【0029】
有利には、ギンバイカエキスは、エキスの乾燥物に対して乾燥重量1〜50%の間、好ましくは10〜40%の間、より好ましくは20〜30%の間の量でポリフェノールを含む。
【0030】
ポリフェノールのうち、フラボノイドはタンニンと同様に、典型的に認められる。
【0031】
本発明の1つの有利な実施形態によると、ギンバイカエキスは、エキスの乾燥物に対して乾燥重量0.1〜5%の間、好ましくは1〜4%の間、より好ましくは2〜3%の間の量でフラボノイドを含む。
【0032】
本発明の他の有利な実施形態によると、ギンバイカエキスは、エキスの乾燥物に対して乾燥重量1〜50%の間、好ましくは5〜40%の間、より好ましくは10〜30%の間の量でタンニンを含有する。
【0033】
本発明の1つの具体的な特徴によると、ギンバイカエキスは、フラボノイドを0.5〜4%の間、典型的には1〜3.5%の間の量で、タンニンを5〜40%の間、典型的には10〜40%の間、例えば20〜40%の間の量で含有する。
【0034】
本発明の主題の1つは、化粧品組成物における脱色素剤としてのギンバイカエキスの使用に関する。
【0035】
有利には、本発明の化粧品組成物は、皮膚および/または体毛および/または頭髪を美白および/または明色化することを意図している。
【0036】
本発明によるギンバイカは、より明るく鮮やかでより透明感のある皮膚の色調で特徴付けられる、均一な顔色を得るために用いることができる。したがって皮膚の輝きが改善される。
【0037】
本発明の組成物により得られる利点は、タイプ(乾燥、普通、脂性)に関係なく敏感肌、より詳細には輝きを欠いた生気のない敏感肌を特に対象とする。
【0038】
脱色素剤としてのギンバイカエキスは:
−色素斑の強度および大きさを視覚的に緩和する
−色素沈着の原因となるメラニンの生成を調節および/または阻害する、
−目に見える色素斑を薄くする、
−新たな色素斑の発生を予防する、
という優れた能力も示しており、特に皮膚の老人斑などの表皮過剰色素沈着によるある種の見苦しい色素斑を脱色素するための利点が証明される。
【0039】
本発明のさらなる主題は、皮膚および/または体毛および/または頭髪を脱色素することを意図した化粧品または皮膚科用組成物などの組成物を生成するための、ギンバイカエキスの使用である。
【0040】
本発明によるギンバイカエキスの使用により、
−例えば紫外線により誘発された褐色の色素沈着斑などの炎症誘発性ストレスによる過剰色素沈着斑などの色素沈着斑を減少および/または消失、あるいは肝斑を減少および/または消失させ、
−色素沈着の原因となる、メラニンの生成を減少および/または阻害することが、有利に可能である。
【0041】
したがって、本発明によるギンバイカエキスは、皮膚加齢斑を減少および/または消失させることを目的とした、または紫外線によって誘発されたと思われる褐色の色素斑、あるいは肝斑を減少および/または消失させることを目的とした、化粧品組成物などの組成物において有利に使用することができる。
【0042】
本発明は、有効成分として、生理学的に許容できる、すなわち皮膚および/または頭皮、粘膜、頭髪、体毛および/または眼に適合性のある媒質中にギンバイカエキスを含有することを特徴とする、化粧品および/または皮膚科組成物にも関する。
【0043】
好ましくは、本発明の化粧品または皮膚科用組成物は、有効成分として、該組成物100gにつき1mg〜50gの間、好ましくは10mg〜10gの間の量のギンバイカエキスを含有する。
【0044】
有利には、該ギンバイカエキスの量は組成物100gにつき50mg〜1gの間にある。さらに有利には、該ギンバイカエキスの量は組成物100gにつき100mg〜500mgの間にある。
【0045】
好ましくは、該組成物は、少なくとも1つの第2の脱色素活性成分をも含有する。
【0046】
本組成物に添加することのできる該他の1つまたは複数の薬剤は、該組成物の有効性を最適化するために、組成物の各構成成分の相対的な割合を調節することのできる当業者にとって、既知である。
【0047】
有利には、アスコルビルグルコシドを含むビタミンCおよびその誘導体、サリチル酸、乳酸、グリコール酸、マレイン酸、アルブチン、コウジ酸、ビタミンB3,リノール酸およびこれを含む植物油、レチナールアルデヒドおよびその誘導体、レゾルシノールおよび具体的にはクマコケモモ、カンゾウ、クワの実、アービュタス、コウゾ、カミツレまたはタツナミソウである植物エキスからなる群から選択される有効成分について、目安としてかつ非限定的な意味合いで、言及することができる。
【0048】
とりわけ有利な方法において、本発明の組成物は、ギンバイカエキスをアスコルビルグルコシドとともに含む。
【0049】
ギンバイカエキスを少なくとも1つの他の脱色素有効成分とともに含有する本発明の組成物は、上述の用途の全てにおいて有利に用いられる。
【0050】
本発明の化粧品および/または皮膚科用組成物は、有利には局所または経口適用について化粧品および皮膚科の領域で通常用いられるあらゆる生薬の形態を有することができる。
【0051】
好ましくは、局所形態は以下の具体的な形態を取ることができ:
−ゲル化されていてもよい、水性水−アルコール溶液
−二相分散であってもよい、ローション型分散液、
−水中油型または油中水型乳液または複合乳液
−水性ゲル、
およびセラム、クリーム、ゲル、軟膏、乳液、ローション、ペーストまたはフォームの外観を有することができる。スプレー形態またはスティック型などの固形で適用することもできる。
【0052】
本発明の利点の1つは、タイプ(乾燥、普通、油性)に関係なく、敏感肌に対しても、本発明の組成物が良好な皮膚忍容性を有することにある。
【0053】
本組成物は、錠剤、カプセル剤、飲用懸濁剤用粉末などの経口形態とすることもできる。
【0054】
本組成物は、検討されている用途に通常用いられる全ての構成成分も含むことができる。水、溶媒、鉱油、動物および/または植物油、ロウ、色素、化学または鉱物フィルター、抗酸化剤、充填剤、界面活性剤、安定化剤、防腐剤、着香料および着色料について、特に言及することができる。
【0055】
成分の選択および/または量も、該組成物を適用する皮膚および/または体毛および/または頭髪の具体的なニーズ、ならびに本発明による組成物の性質および所望の粘稠度によって決定される。
【0056】
本発明は、本発明の化粧品および/または皮膚科用組成物の具体的実施形態を記載した、以下の非限定的な実施例によってよりよく理解されよう。
【実施例】
【0057】
実施例1〜4: ギンバイカエキスの調製
実施例1
ギンバイカの葉および乾燥果実100kgを粉砕した後、50%エタノール700kgで抽出する。抽出は還流および攪拌しながら1時間実施する。濾過後に溶液を収集し、その後減圧下、60℃で濃縮する。そのポリフェノール含有量が20〜40%の間およびフラボノイド含有量が1.5〜3,5%の間である乾燥物が得られるまで、濃縮に続いて乾燥を実施する。
【0058】
実施例2
第1の段階は実施例1のものと同じであるが、手順が最後の濃縮および乾燥段階について異なる。抽出後および濃縮中にプロピレングリコール200kgを加え、重量220kgの溶液が得られるまで濃縮を続行する。乾燥物の含有量は8〜12%の間であり、乾燥物に対するポリフェノールの含有量は20〜40%の間であり、乾燥物に対するフラボノイドの含有量は1.5〜3.5%の間である。
【0059】
実施例3
本実施例の出発原料は、実施例1の材料と異なる。異なるフラボノイドおよびポリフェオール含有量を有するエキスを得るために、他の抽出溶媒も用いる。
【0060】
乾燥、粉砕した葉1kgを、メタノール10kgで12時間冷抽出する。メタノール溶液を、60℃で真空濃縮した後、乾燥する。得られた乾燥エキスを粉砕する。粉末はポリフェノール30から40%およびフラボノイド3〜4%を含有する。
【0061】
実施例4
粉砕した葉および果実10kgを、水とエタノールの混合物(80対20の割合)とともに、還流下で3時間攪拌して抽出する。得られた溶液を、遠心分離した後濾過する。
【0062】
乾燥物に対するポリフェノールの含有量は、5から10%の間にある。フラボノイド含有量は、0.5から1.5%の間で変動する。
【0063】
実施例5: 脱色素活性の評価
5.1 培養メラニン細胞の樹状突起形成性
皮膚の色素沈着は、表皮のメラニン細胞と角化細胞との相互作用によって発生する。メラニン細胞の樹状突起は、色素沈着プロセスにおいて重要な役割を果たす。それらは、メラノソーマの表皮の基底部および基底上部への移動を可能にする。それらは、メラニン粒子がメラニン細胞の内部から樹状突起の先端に移動し、皮膚に拡散することを可能とする、微小管とアクチンフィラメントとの会合よりなる(Haraら、J Invest Dermatol, 2000)。
【0064】
メラニン細胞の分化は、メラニン生成および樹状突起形成性刺の激と換言することができる。このプロセスは、α−MSH、フォルコリンという数種類のcAMP−誘導性因子によって誘発される(Buscaら、2000)。
【0065】
脱色素または色素沈着刺激物質の、メラニン細胞樹状突起形成性の変化に対する効果の直接的形態評価は、ファロイジン−ローダミンを用いてメラニン細胞のアクチンフィラメントを標識することにより実施する。
【0066】
本出願人は、本試験において、あらかじめα−MSH処理したかまたは未処理であるメラニン細胞の樹状突起形成性の変化に対する、ギンバイカエキスの効果を評価した。使用した参照脱色素物質は、クリグマン・トリオ(Kligmann trio)であった。
【0067】
この薬剤は、ヒドロキノン(1%)、ヒドロコルチゾン(0.5%)およびレチン酸(0.0125%)の3つの有効成分の混合物より構成される。試験では、メラニン細胞の懸濁液をスライドガラスに載せて付着させた後、αMSHで1時間処理するかまたは処理を行わずに、実施例1に定義するようなギンバイカエキスの各濃度に1時間曝露する。次に細胞を染色発色剤ファロイジン−TRITCで処理して、そのアクチンネットワークおよびその樹状突起形成性を顕現化した後、鏡検してその形態を検討する。
【0068】
αMSHのみで処理したメラニン細胞は、未処理細胞と比較してそのメラニン細胞樹状突起形成性の増加を示すことから、αMSHの前染色効果が証明される。一方、αMSHで前処理した後、1/75000希釈したクリグマン・トリオで前処理、または0.3μg/mLもしくは1μg/mLのギンバイカエキスで前処理したメラニン細胞は、その樹状突起形成性の増加をまったく示さないか、または非常にわずかな増加のみを示した。
【0069】
従って、これらの2つの物質はメラニン生合成刺激の内因性因子であるαMSH阻害効果を示し、これにより脱色素活性を呈する能力が示される。
【0070】
5.2 メラニン生成に対する活性
メラニン細胞を、適切な培地内で、実施例1による各濃度のギンバイカエキス、および参照物質ヒドロキノンと接触させ、37℃で72時間放置して培養する。培養期間の終了時に、メラニン細胞を収集して洗浄する。次に、細胞をナトリウム溶液で処理してメラニンを抽出する。次に、較正曲線を用いて、450nm分光分析により、染色した溶液のメラニン含有量を評価した。被験製品のメラニン生成阻害活性は、抽出されたメラニン細胞溶液中のメラニン含有量の低下と換言することができる。これらの同じ細胞について、事前の細胞毒性試験を明確に実施し、試験濃度のエキスが無毒性であることを確認した。
【0071】
各被験製品によって示されたメラニン合成阻害活性を以下の表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
ヒドロキノンは、メラニン含量の阻害活性、従って被験濃度でのメラニン生成の阻害活性を効果的に示し、これによって活性評価試験が有効になる。
【0074】
ギンバイカエキスは、3つの試験濃度でメラニン生成阻害活性を示し、従って脱色素についての該製品の重要性を示す。
【0075】
実施例6: 化粧品セラム
化合物 量(/100g)
ミルツス・コンムニス乾燥エキス 0.1g〜0.5g
(実施例2)
アスコルビルグルコシド 1.0g〜10.0g
シクロメチコン 2.0g〜10.0g
カルボマー 0.5g〜0.6g
プロピレングリコール 1.0g〜5.0g
グリセリン 1.0g〜5.0g
トリエタノールアミン 0.5g〜2.5g
精製水 加えて全量を100gとする。
【0076】
実施例7: 実施例6に記載のセラムの有効性試験
第1試験
以下に示す臨床試験は、年齢25から45歳の日本人女性30名に対して実施したオープン試験である。
−いずれも敏感肌を有し(100%)
−顔面に色素沈着班を有し、少なくとも1つの色素斑は直径5mm超を有する。
【0077】
このコホート中には様々な肌タイプがあった:
−普通肌(17%)
−混合/脂性肌(26%)
−脂性肌(23%)
−混合/乾燥肌(17%)
−乾燥肌(17%)
【0078】
本試験は、先の実施例6の下に示したセラム組成物に関する。D0は試験開始日である(セラムの初回適用の前)。製品を12週間、D1からD84)1日2回朝と夕方に、色素沈着斑に特に注意して顔全体と頸部に適用した。
【0079】
本化粧品組成物は、通常の水分補給製品の代わりに適用した。
【0080】
異なる評価法を用いた。
【0081】
1.比色分析法/皮膚色素沈着の測定パラメータ:メラニン指数
メキサメーター(MEXAMETER)(商標)MX16(Courage and Khazaka)を用いて皮膚のメラニン指数を測定した。
【0082】
メキサメーターのプローブは、測定する領域にわたり、皮膚により吸収される3種類の波長を放射する。測定面の直径は5mmである。
【0083】
次に、レシーバーが皮膚により反射される光線を測定する。2つの波長を選択して、メラニンを測定する。
【0084】
ついで、機器は、測定点の皮膚のメラニン量に関し、メラニン指数を任意単位(a.u.)で表示する。
【0085】
プロトコル
測定領域:5mmを超える直径を有する色素斑、および該色素斑の近傍の健康な領域での皮膚のメラニン指数を測定した。
【0086】
測定時:D0(セラムの初回適用前)ならびに42(42日間の処置後)およびD84(84日間の処置後)に数値を読み取った。
【0087】
結果
各測定時および各個人について得られた測定結果を、面積毎の平均として算出した(過剰色素沈着領域、健康皮膚領域)。
【0088】
Δ(任意単位(a.u.)で表示)は、過剰色素沈着領域のメラニン指数と健康領域のメラニン指数との差を示す。
下記表2に得られた結果を示す:
【0089】
【表2】

【0090】
12週間の処理中、Δ値はD0の初期値と比較して有意に9%低下することが確認された。この低下は、7.5%のΔ値低下が認められた処置開始より6週間後(D42)と早期に確認された。
【0091】
このことは、被験組成物が色素斑のメラニン指数を低下させるという傾向と妥当に換言することができる。
【0092】
本出願人は、これにより本発明による組成物の適用が有意な顔色均一化効果を誘導することを立証した。
【0093】
2.臨床評価
皮膚科医が、試験に参加した各人の皮膚の初期状態を確認し(D0)、続いて処置28日後および84日後の皮膚の状態をフォローアップした。
【0094】
検討したパラメータは以下の通りである:
−色素沈着班の態様
−皮膚の輝き
−皮膚の明るさ
−均一な皮膚の色調。
【0095】
プロトコル
9ポイント「臨床蓄積システム」に従い、各パラメータを検討した。
軽微 中等度 顕著
+ 1 + 4 + 7
++ 2 ++ 5 ++ 8
+++ 3 +++ 6 +++ 9
【0096】
結果
Δ28およびΔ84を用いて、D0でのそれらの値に対するD28およびD84での各基準における変動(%で表示)をそれぞれ示した。
【0097】
D0、D28およびD84で、基準の評価は以下の通りであった(表3):
【0098】
【表3】

【0099】
4週間後(D28)、および有利には12週間後(D84)、評価した全ての基準において好ましく、有意な変動、すなわちより目立たない色素斑、およびより輝きのあるより明るく均一な色調が認められた。
【0100】
第1の有効性試験の結論
本試験により、本発明によるギンバイカエキスを含有する組成物の、色素斑を有する各タイプの敏感肌に対する有意な有効性を示すことができた。得られた利点は、より目立たない色素沈着斑ならびに明るさ、輝きおよび均一性および一様性の点において改善された顔色と換言することができる。
【0101】
第2試験
以下に記載するこの第2の臨床試験は、年齢22から48歳の日本人40名(女性37名および男性3名)に対して実施した盲検試験である。
【0102】
本試験は、先の実施例6の下に示したセラム組成物に関する。
【0103】
本試験の開始日をD0と表示する(セラムの初回適用の前)。製品は、1日1回夕方に洗浄した後、前腕部の内側の面に3ヶ月間(D1からD90まで)適用した(無作為に選択)。
【0104】
使用した測定法:比色分析法/皮膚色素沈着の測定パラメータ:パラメータbの変化
CR400(商標)クロマメーター(ミノルタ)を用いて、比色分析パラメータb(青色−黄色軸)を測定した。
【0105】
クロマメーターのプローブは、測定する領域に、皮膚により吸収される白色光のフラッシュを放射する。測定面の直径は8mmである。次に、ヒトの眼の網膜錐体に対応する3つのセンサーで、皮膚により反射された光線を記録する。機器は数値L、aおよびbを任意単位(a.u.)で表示する。これらの数値は、測定点における皮膚のメラニン量に関連する。
【0106】
プロトコル
測定領域:皮膚色素沈着を前腕部内側の表面(処置領域)および隣接する未処置領域(対照領域)で測定し、これらの測定領域は、事前に区画し、識別マスクで識別した。
【0107】
測定時:D0(セラムの初回適用前)、D30(1ヶ月処置後)、D60(2ヶ月処置後)およびD90(3ヶ月処置後)に数値を読み取る。
【0108】
結果
各測定時および各個人で得られた測定結果を、面積あたりの平均として算出した(処置領域、対象領域)。
【0109】
本発明によるセラムの適用後における皮膚の色の変化を評価するために、各測定時(D30、D60、D90)についてb値を面積毎に表示し、および対照領域と比較した処置領域の比色分析値間の差を表示した。
【0110】
【表4】

【0111】
まず、処置領域のb値はD90までの試験期間を通じて進行的および明瞭に減少し、これは処置領域の明色化と換言することができる。
【0112】
次に、3ヶ月の処置後(D90)、差(b処置領域−b対照領域)についてD0と比較して有意な減少が認められ、すなわちこの差は44.6%減少した。このことにより、被験組成物が皮膚の色素沈着を減少させる傾向が妥当に証明される。
【0113】
第2の有効性試験の結論
本出願人は、本発明による組成物の適用が脱色素効果を有することを立証した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱色素剤としての、化粧品組成物におけるギンバイカ(myrtle)エキスの使用。
【請求項2】
前記組成物が皮膚および/または体毛および/または頭髪を美白および/または明色化するためのものである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記組成物が皮膚の加齢斑を減少および/または消失させるためのものである、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記組成物が紫外線によって誘発されたと思われる褐色の色素斑、または肝斑を減少および/または消失させるためのものである、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
ギンバイカエキスの量が組成物100gあたり1mg〜50gの間にある、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
生理学的に許容できる媒質中に、脱色素活性成分として、ギンバイカエキスおよび少なくとも1つの他の脱色素剤も含有する、組成物。
【請求項7】
前記他の脱色素剤が、ビタミンCおよびアスコルビルグルコシドなどのその誘導体、サリチル酸、乳酸、グリコール酸、マレイン酸、アルブチン、コウジ酸、ビタミンB3,リノール酸およびこれを含む植物油、レチナールアルデヒドおよびその誘導体、レゾルシノール、クマコケモモエキス、カンゾウエキス、クワの実エキス、アービュタスエキス、コウゾエキス、カミツレエキスまたはタツナミソウエキスからなる群から選択され、単独または混合物として使用される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ギンバイカエキスの量が組成物100gあたり1mg〜50gの間にある、請求項6または7に記載の組成物。
【請求項9】
ギンバイカエキスを含有する化粧品組成物を、皮膚および/または体毛および/または頭髪へ適用することを含む、皮膚および/または体毛および/または頭髪を美白および/または明色化するための美容的方法。
【請求項10】
ギンバイカエキスを含有する化粧品組成物を、皮膚へ適用することを含む、皮膚の色素班を減少および/または消失させるおよび/または予防するための美容的方法。
【請求項11】
前記組成物が請求項6〜8のいずれか一項に定義されているるものである、請求項9または10に記載の美容的方法。

【公開番号】特開2009−275025(P2009−275025A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−204577(P2008−204577)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(500166231)ピエール、ファブレ、デルモ‐コスメティーク (30)
【氏名又は名称原語表記】PIERRE FABRE DERMO−COSMETIQUE
【Fターム(参考)】