説明

脱色素剤としての新規チロシナーゼ特異性アンチジーンオリゴヌクレオチド

本発明は、相補的塩基間のフーグスティーン型対合により、ヒトチロシナーゼをコードする遺伝子と特異的にハイブリダイズするアンチジーンオリゴヌクレオチドに関し、該オリゴヌクレオチドは前記ヒトチロシナーゼ遺伝子とともに三重らせん構造を形成する。本発明はまた、化粧用組成物または皮膚用組成物における、皮膚脱色素剤または皮膚漂白剤としての前記オリゴヌクレオチドの使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、相補的塩基間のフーグスティーン型対合により、ヒトチロシナーゼをコードする遺伝子と特異的にハイブリダイズするアンチジーンオリゴヌクレオチドであって、該ヒトチロシナーゼ遺伝子とともに三重らせん構造を形成するオリゴヌクレオチドに関する。本発明はまた、化粧用組成物または皮膚用組成物における、皮膚脱色素剤または漂白剤としての前記オリゴヌクレオチドの使用に関する。
【0002】
ヒトにおいて、色素沈着は、皮膚、毛包または目におけるメラニン色素の合成および分布により生じる。色素沈着は、遺伝的には予め決められたものであるが、多数の内的要因または外的要因により調節される。メラノサイトによって生成されたメラニン、また、メラノサイトの数、それらのチロシナーゼ活性、およびメラニンをケラチノサイトへ送出するそれらの能力、ならびにメラニン粒子を含有するメラノソームの大きさにより、ヒトの皮膚の色が調節される。各個体に関し、皮膚の色は、主に紫外(UV)線から受ける照射の量に応じて異なる。換言すると、各個体について、その個体が最も弱いUV照射を受けると、最小の皮膚の色素沈着が生じ、これは最も白い皮膚色に相当する。より強いUV照射を受けると、より強い皮膚の色素沈着が生じ、最大の色素沈着は、強いUV照射に対して持続的に曝される時の最も黒い皮膚色に相当する。
【0003】
更に、周知のように、世界中の人種(population)に存在する皮膚の色素沈着は遺伝的には非常に多岐にわたる。故に、先に定義した最小の色素沈着に相当する皮膚色は、人種に応じて、非常に白い色と非常に黒い色という二極端の間にある、より黒いまたはより白い色相(shade)を有する。また、人種に応じて、最小の色素沈着と、最大の色素沈着との皮膚の色相についての差異は、程度の差はあるが大きい。故に、白い皮膚(最小の色素沈着)を有する一部の人種に属する個体は、UV放射の作用に対して迅速に、および/または著しく反応するので、これらの個体が意図的に長期間太陽に曝されたのではない場合でも、直ちに黒い色相の皮膚を呈する可能性がある。以下の説明では、これらの個体を「UV放射に対して非常に反応性である個体」と表現する。これは、とりわけ、アジア人種、または一部の「混血」人種の場合に当てはまる。
【0004】
更に、個体は、より黒いおよび/またはより有色である領域および/または斑点が、自身の皮膚、とりわけ、顔または手に出現するために、皮膚の色が不均質になるという事態に遭遇する。これらの斑点は、メラノサイトにおけるメラニン形成活性が増強するために生じる表皮ケラチノサイトにおけるメラニン濃度の高さに起因する。
【0005】
皮膚の色素沈着が形成される機序にはメラニン合成が含まれる。この機序は特に複雑であり、模式的に表すと以下の主工程を含む:
チロシン→ドーパ→ドーパキノン→ドーパクロム→メラニン。
【0006】
チロシナーゼおよびチロシナーゼ関連タンパク質1(TRP−1)は、この一連の反応に関与する必須酵素である。これらは、とりわけ、チロシンをドーパ(ジヒドロキシフェニルアラニン)に変換するための反応、およびドーパをドーパキノンに変換するための反応を触媒し、これによりメラニン色素が形成される。
【0007】
ある分子が表皮メラノサイトの活性を阻害することによってこれらの細胞に直接作用する場合、および/または、メラニン生合成工程の1つを阻止する場合、その他、形成されたメラニンを分解する場合には、該分子は脱色素分子であると認識される。これは、とりわけ、分子がメラニン形成に関与する酵素の1つを阻害する場合、またはメラニン合成鎖の化学的化合物と反応する場合である。
【0008】
既知の脱色素物質は、特に、ハイドロキノンおよびその誘導体、アスコルビン酸およびその誘導体、プラセンタ抽出物、コウジ酸、アルブチン、イミノフェノール、カルニチンとキノンとの組み合わせ、アミノフェノールアミド誘導体、およびベンゾチアゾール誘導体である。これらの物質は幾つかの欠点を有し得る。これらの物質は不安定である可能性があるか、高濃度での使用を必要とする可能性があるか、それらの作用方法に関する特異性が欠如している可能性があるか、または細胞毒性または刺激性を有する可能性がある。
【0009】
効果的かつ無害な脱色素物質の局所使用は、化粧料および皮膚科学において特に求められている。これらの物質は、特に、メラノサイトの活性亢進による局所的な色素過剰(例えば、特発性黒皮症)、メラノサイトの活性亢進による局在的な色素過剰(例えば、太陽黒子および老人性黒子と呼ばれる色素斑)、偶発的な色素過剰(例えば、光感作または病変後の瘢痕形成)、および幾つかの形態の白皮症(例えば、白斑)の治療に使用される。後者の場合、皮膚の再色素沈着が不可能である場合、脱色素化された区域の周辺での色素沈着が低減され、皮膚の色がより均一になる。
【0010】
脱色素物質はまた、一部の個体、特に上記に定義したようなUV照射に対して非常に反応性である個体によって、該個体の着色、特に顔や手の着色を薄くするための皮膚漂白剤としても使用され、それにより、皮膚の色をできる限り白く維持するか、またはUV光線の色素沈着作用を少なくとも低減する。
【0011】
故に、専門家が直面する課題は、既知の物質の欠点を有さない、即ち、皮膚に対して非刺激性、非毒性および/または非アレルギー性であり、かつ組成物中で安定である、ヒトの皮膚および/または体毛用の新規脱色素物質または新規漂白剤を設計、生成または単離することである。
【0012】
メラノサイトの機能障害を治療するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用については、US20040014700に記載されている。更に、脱色素化を行うための幾つかの方策は、二重鎖RNAオリゴヌクレオチドを用いてチロシナーゼ合成を阻害することにある(仏国特許第2840217号)。上述の出願において、検討中の生物学的標的は、メッセンジャーRNAである。
【発明の開示】
【0013】
本発明の目的は、メラニン形成過程に作用する脱色素剤を提供することにあり、該脱色素剤は、第一には、実質的に均質な色素沈着の場合に皮膚および/または体毛を漂白すること、即ちその色素沈着を低減することを目的とし、第二には、皮膚の色素過剰を治療すること、即ち、皮膚が不均質な色素沈着を呈する際に使用することを目的とする。
【0014】
本発明者らは、チロシナーゼをコードする遺伝子とハイブリダイズすることができ、かつ、この遺伝子のみとハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドが脱色素活性を有することを見出した。
【0015】
従って、上述のmRNAターゲッティング方策とは逆に、本発明の目的は、該遺伝子それ自体とハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを使用することにある。この利点は、本発明のオリゴヌクレオチドはDNA二重鎖形状の遺伝子とハイブリダイズすることができるが、特にUS20040014700または仏国特許第2840217号に記載されるオリゴヌクレオチドにはこの能力がないということである。この新規方策の別の利点は、大半の遺伝子が2倍体細胞内に2つの対立遺伝子を有するので、該遺伝子の数が、その遺伝子がコードするメッセンジャーRNAまたはタンパク質よりも少ないエンティティであるということである。結果として、この活性は非常に低い濃度でも存在し、これらオリゴヌクレオチドの利点を増大する。更に、本発明によるオリゴヌクレオチドは、細胞毒性を示さず、工業的に合成し、特長付けし、高純度で単離することができる。
【0016】
故に、本発明によるオリゴヌクレオチドは、チロシナーゼ遺伝子に対して直接的に相互作用することによって、メラニン形成機構のかなり上流に干渉してその発現を調節し、結果としてチロシナーゼをコードするメッセンジャーRNAの発現を阻害する。この結果、メラノサイト中のチロシナーゼの量が低下する。本発明によるオリゴヌクレオチドは、従来より使用されている物質が提起する課題に対する理想的な解決策を提供する。チロシナーゼ活性を阻害する既知の物質は、特異性が低い(弱い)ために複数の許容し得ない副作用を有する。チロシナーゼを直接的に阻害して脱色素効果を得る代わりに、試験を行った様々な配列の中で、以下に記載される配列番号1の配列が、チロシナーゼ遺伝子の発現、結果としてチロシナーゼをコードするメッセンジャーRNAの生成、および故に該酵素の生成を可能な限り上流で調節することによって、従来の研究者らが直面してきた課題を解決することを見出した。
【0017】
従って、第一の態様では、本発明は、相補的塩基間のフーグスティーン型対合により、ヒトチロシナーゼをコードする遺伝子と特異的にハイブリダイズする配列5’−C*TTC*TC*TC*TTTTTC*C*TTTTTC*−3’(配列番号1、C*は5−メチルシトシンを表す)を含む15個〜25個のヌクレオチドの配列を含んでなるアンチジーンオリゴヌクレオチドに関し、このオリゴヌクレオチドは、ヒトチロシナーゼ遺伝子とともに三重らせん構造を形成する。好ましくは、このアンチジーンオリゴヌクレオチドは、18個〜21個のヌクレオチドまたは21個〜25個のヌクレオチド、好ましくは21個のヌクレオチドを含んでなる。
【0018】
本発明において、「チロシナーゼをコードする遺伝子」という表現は、チロシナーゼ遺伝子のゲノム配列を意味するものと意図されている。
【0019】
本発明によるオリゴヌクレオチドは、細胞内のDNA二重らせんから形成された遺伝子に対して直接的にハイブリダイズする。従って、これらのオリゴヌクレオチドにより、チロシナーゼをコードするメッセンジャーRNAの量、故に該遺伝子により生成されたこの酵素の量を最終的に調節することができる。
【0020】
ワトソン−クリック対合スキームに従って水素結合を形成するオリゴヌクレオチドに基づいて二重らせん構造を形成するUS20040014700および仏国特許第2840217号に記載された発明とは異なり、本明細書では、「ハイブリダイゼーション」という用語は、第一には、ワトソン−クリックスキームに従って二重らせんを形成する核酸の2つの鎖上に通常分布されている相補的塩基と、第二には、トリプレックス、つまり三重らせん構造を形成するための第三鎖との間で水素結合を形成すること(フーグスティーン型または予備(reserve)フーグスティーン型対合としても知られている)を意味するのに使用される。
【0021】
核酸配列間の相補性度は、アライメント後に、第一配列と、第二配列に相補的な配列とを比較することによって決定される。相補性度は、そのようにして比較された2つの配列間でヌクレオチドが相補的である相補的位置の数を測定し、この相補的位置の数を、位置の総数で除算し、得られた結果を100倍することによって計算され、これら2つの配列間の相補性度(パーセンテージで表す)が得られる。
【0022】
「特異的ハイブリダイゼーション」という用語は、特に、特異的結合が所望される条件下で非ターゲッティング配列に対してオリゴヌクレオチドが非特異的に結合するのを回避するのに十分な相補性度があるということを意味する。本発明によるオリゴヌクレオチドは、好ましくは特異的に、チロシナーゼをコードする遺伝子とハイブリダイズする。特に、本発明のオリゴヌクレオチドは、チロシナーゼをコードする遺伝子のDNAとだけハイブリダイズすることができる。本発明によるオリゴヌクレオチドは、特異的にハイブリダイズするために、同一性および数の点で十分な数のヌクレオチドを含む。従って、本発明の主題は、遺伝子翻訳開始コドンを有する領域の上流で、および/または該領域と、特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドである。
【0023】
本発明において、「チロシナーゼをコードするDNA」という表現は、エクソンとイントロンの両方、特にエクソンを意味するよう意図されている。
【0024】
また、本発明の主題は、それらの糖成分、それらの核酸塩基成分またはそれらのヌクレオチド間骨格に1つ以上の化学修飾を含むオリゴヌクレオチドであり、該化学修飾は、高いバイオアベイラビリティ、標的配列に対する親和性の増大、細胞内在化の増大もしくはより良好な生物学的安定性、または細胞ヌクレアーゼの存在下での安定性の増大などの所望の物理化学的特性を、本発明によるオリゴヌクレオチドに付与する。
【0025】
例として、これらの特性を付与し得る修飾は、固定核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、該ヌクレオシドの糖成分上の2’−O−アルキル誘導体および2’−O−フルオロ誘導体、ならびにヌクレオチド間骨格上のホスホロチオエート誘導体またはメチルホスホネート誘導体、またはその他、5’位または3’位に挿入型反応基を有する誘導体(例えば、アクリジン)、もしくは標的配列と架橋を形成することができる誘導体(例えば、ソラレンおよびアジド基)である。
【0026】
「PNA」という用語は、当業者に既知であり、DNAの化学構造と類似するが、その骨格がペプチド結合により連結されたN−(2−アミノエチル)グリシンの反復単位からなる化学構造を意味する。様々なプリン塩基およびピリミジン塩基がメチレンカルボニル結合により骨格に連結される。該構造を以下に示す:
【0027】
【化1】

【0028】
「LNA」という用語は、当業者に既知であり、2’−O,4’−Cメチレン架橋を含有する核酸類似体を示す。この架橋は、強靭な二環構造を形成することにより、リボフラノース環の柔軟性を阻止する。該構造を以下に示す:
【0029】
【化2】

【0030】
本明細書中の「オリゴヌクレオチド」という用語は、天然の核酸塩基と、天然のホスホジエステル結合により互いに連結されるヌクレオシドを形成するペンタフラノシル(糖)基とから形成されたポリヌクレオチドを指す。故に、「オリゴヌクレオチド」という用語は、天然種、または天然のサブユニットもしくはそれに近い相同体から形成された合成種を指す。
【0031】
「オリゴヌクレオチド」という用語はまた、天然のオリゴヌクレオチドに類似する機能を有するが、非天然部分を有し得る成分を指す。オリゴヌクレオチドは、修飾された糖成分、核酸塩基成分またはヌクレオチド間結合を有し得る。先に示したように、可能な修飾の中で、好ましい修飾は、Braasch DAおよびCorey DRにより記載されたような固定核酸(LNA)(Chem. Biol. 2001, 8, 1-7)、Faria MおよびGiovannangeli C.により記載されたようなN3’−P5’ホスホルアミダイト誘導体(J. Gene Med 2001, 3, 299-310)、Wang GおよびXu XSにより記載されたペプチド核酸(PNA)(Cell Res. 2004, 14, 111-118)、糖成分上の2’−O−アルキル誘導体(特に、2’−O−エチルオキシメチルもしくは2’−O−メチル誘導体)、ならびに/またはヌクレオチド間骨格用のホスホロチオエートもしくはメチルホスホネート、またはその他、5’位または3’位に挿入型反応基を有する誘導体(例えば、アクリジン)、もしくは標的配列と架橋を形成することができる誘導体(例えば、ソラレンまたはアジド基)である。
【0032】
キメラオリゴヌクレオチドも、本発明の好ましい修飾に含まれる。これらのオリゴヌクレオチドは、化学的に異なり、かつ各々が少なくとも1つのヌクレオチドを含んでなる少なくとも2つの領域を含有する。これは特に、より良好な生物学的安定性、高いバイオアベイラビリティ、細胞内在化の増大または標的DNAに対する親和性の増大などの1つ以上の有利な特性を付与する修飾ヌクレオチドを含む1つ以上の領域を包含する。
【0033】
好ましくは、本発明によるキメラオリゴヌクレオチドは、固定核酸(LNA)、N3’−P5’ホスホルアミダイト誘導体、ペプチド核酸、または、全体的にもしくは部分的にホスホジエステル、ホスホロチオエートもしくはメチルホスホネート、またはホスホジエステルおよび/もしくはホスホロチオエートおよび/もしくはメチルホスホネート結合の組み合わせであり得るヌクレオチド間骨格を有する分子である。
【0034】
「オリゴヌクレオチド」という用語はまた、プラスミドタイプの円形投与ベクター、または、核酸もしくはペプチドタイプの線状投与ベクターがグラフトされたオリゴヌクレオチドを指すこともある。
【0035】
本発明の主題はまた、上述のオリゴヌクレオチドを少なくとも1つ、および、化粧料として、または皮膚科学的に許容可能な賦形剤またはキャリアを少なくとも1つ含有する化粧用または皮膚用組成物である。このような組成物はまた、1種以上の活性成分を含有し得る。この活性成分は、場合により、所望の脱色素効果を補完するか、または増強することを目的とする。
【0036】
本発明はまた、チロシナーゼをコードする遺伝子と特異的にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドの、化粧剤としての使用、特に、皮膚もしくは体毛を脱色素化および/もしくは漂白するため、ならびに/またはヒトの皮膚上の色素斑を低減するための使用に関する。
【0037】
特に、本発明は、これらのオリゴヌクレオチドを化粧剤として用いた化粧用組成物を含む。該組成物は、特に、皮膚の着色を薄くする、太陽からの照射の作用による色素斑の形成を予防または治療する、特に手の上の老化性色素斑(老人性黒子)を低減する、またはその他、身体もしくは四肢の毛髪の色を薄くすることを意図している。
【0038】
また、本発明は、チロシナーゼの過剰発現および活性亢進により反映される疾患の治療または予防において局所投与により使用するための皮膚用薬剤を製造するための、上述のオリゴヌクレオチドの使用に関する。この薬剤は、メラノサイトの活性亢進による限局的な色素過剰(例えば、特発性黒皮症)、偶発的な色素過剰(例えば、光感作または一部の病変後の瘢痕形成の場合)を治療または予防する際に、および白斑などの一部の白皮症の形態における色素コントラストを低減するために使用できる。
【0039】
本発明の主題はまた、化粧料として、および/または皮膚科学的に許容可能な媒質中に、チロシナーゼをコードする遺伝子に対するオリゴヌクレオチド配列を含んでなる脱色素組成物である。
【0040】
本発明による化粧用組成物および薬剤は局所使用に適するものであり、故に、化粧料として、または皮膚科学的に許容可能な媒質、すなわち、皮膚と適合する媒質を含有する。本発明によるオリゴヌクレオチド配列は、これら組成物の総重量の0.00001%〜10%、および好ましくは0.0003%〜3%の量で存在し得る。
【0041】
本発明の組成物は、局所適用に適したいずれかの形態、特に、水性、水性アルコール性もしくは油性溶液、水中油型もしくは油中水型の単純もしくは複合エマルション、水性もしくは油性ゲル、液状、ペースト状もしくは固体状無水物、高分子ナノ球体もしくはナノカプセルなどの固体粒子の水性もしくは油性分散液、またはその他、仏国特許第2534487号に記載されるようなイオン性もしくは非イオン性の脂質小胞の水性分散液の形態であり得る。
【0042】
これらの組成物は、多少なりとも流体であり、かつ、白色もしくは着色クリーム、軟膏、ミルク、ローション、美容液(セラム)、ペーストまたはフォームの外観を有してもよい。場合により、該組成物をエアロゾル形態で皮膚に適用することができる。該組成物はまた、粉体または非粉体固体形状、例えば、スティック形状であり得る。また、該組成物は、顔または手の斑に対する局所適用を可能とする、単回投与、パッチ、ペンシルまたはアプリケーターの形態であり得る。
【0043】
化粧用組成物は、特に、ケア製品および/または化粧品として使用するべく処方され得る。
【0044】
既知の方法では、本発明の組成物はまた、化粧料および皮膚科学分野において慣用されているアジュバント、例えば、親水性もしくは親油性ゲル化剤、親水性もしくは親油性活性剤、防腐剤、酸化防止剤、溶媒、香料、充填剤、サンスクリーン、顔料、臭気吸収剤および染料を含有し得る。これらの様々なアジュバントの量は、当技術分野において従来より使用される量である。これらのアジュバントは、その性質に応じて、脂肪相、水相、脂質小胞、ならびに/または、ナノ粒子および/もしくはナノ球体内へ導入することができる。
【0045】
本発明の化粧用組成物または皮膚用組成物がエマルションの場合、脂肪相の割合は、該組成物の総重量に対して5重量%〜80重量%、好ましくは5重量%〜50重量%であり得る。エマルション形態をなす該組成物中で使用される油分、乳化剤および共乳化剤は、当技術分野で従来より使用されるものから選択される。乳化剤および共乳化剤は、該組成物の総重量に対して0.3重量%〜30重量%、好ましくは0.5重量%〜20重量%の割合で該組成物中に存在する。
【0046】
本発明によるオリゴヌクレオチドと組み合わせて使用できる油分としては、鉱物油(液状石油ゼリー(petroleum jelly))、植物性油(アボカドオイル、大豆油)、動物性油(ラノリン)、合成油(ペルヒドロスクアレン)、シリコーン油(シクロメチコン)およびフルオロ油(パーフルオロポリエーテル)が挙げられる。脂肪族アルコール(セチルアルコール)、脂肪酸およびワックス(カルナバワックス、オゾケライト)も脂肪物質として使用できる。
【0047】
本発明によるオリゴヌクレオチドと組み合わせて使用できる乳化剤および共乳化剤としては、例えば、脂肪酸およびポリエチレングリコールのエステル(例えば、ステアリン酸PEG−20)、ならびに脂肪酸およびグリセロールのエステル(例えば、ステアリン酸グリセリル)が挙げられる。
【0048】
本発明によるオリゴヌクレオチドと組み合わせて使用できる親水性ゲル化剤としては、特に、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)、アクリルコポリマー(例えば、アクリレート/アルキルアクリレートコポリマー)、ポリアクリルアミド、多糖類、天然ゴムおよび粘土が挙げられる。親油性ゲル化剤としては、改質粘土(例えば、ベントン(bentones))、脂肪酸の金属塩、疎水性シリカおよびポリエチレンが挙げられる。
【0049】
本発明の主題は、少なくとも1つの上述のオリゴヌクレオチドと、1種以上の他の活性剤とを含んでなる化粧用または皮膚用組成物である。
【0050】
本発明はまた、ヒトの皮膚を脱色素化および/または漂白するための美容的または皮膚科学的方法に関し、該方法は、チロシナーゼをコードする遺伝子に対するオリゴヌクレオチド配列を含む化粧用組成物を、色素沈着した皮膚に適用することにある。より詳細には、本発明は、皮膚の1つ以上の色素沈着領域に、先に定義した組成物を所要期間適用することを含んでなる、皮膚を脱色素化および/または漂白するための美容的方法に関する。場合により、脱色素効果が現れるまで、この操作を繰り返すことができる。この美容的用途のために、オリゴヌクレオチド含有量は、該組成物の総重量の0.0003%〜3%であるのが好ましい。
【0051】
本発明はまた、1種以上の活性剤と組み合わせて、同時に、別個にまたは連続して投与されるべき医薬を製造するための、上述のようなオリゴヌクレオチドの使用に関する。
【0052】
本発明の化粧用組成物はまた、化粧料に使用できる1種以上の活性成分を含み得る。前述の活性剤は、純粋なもの、またはこれらの活性剤を含有する抽出物から得られたものを、本発明によるオリゴヌクレオチドと組み合わせて使用される。該活性剤は、特に以下の化合物から選択される:エラグ酸およびその誘導体;レゾルシノールおよびその誘導体;アルブチンおよびその誘導体;ビタミンCおよびその誘導体;パントテン酸塩・スルホン酸塩およびそれらの誘導体;α−メラノサイト刺激ホルモン(α−MSH)またはその受容体もしくは副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)に直接的または間接的に干渉する分子;ポリオール(例えば、グリセロール、グリコールまたはプロピレングリコール);角質溶解剤および/または落屑剤(例えば、サリチル酸およびその誘導体);単独の、またはグラフト化したα−ヒドロキシ酸(例えば、乳酸またはリンゴ酸);レチノイン酸;レチンアルデヒド;リポソーム性であってもなくてもよい製剤中のレチノールおよびその誘導体(例えば、パルミチン酸塩、プロピオン酸塩または酢酸塩);単独の、もしくは組み合わせた抗糖化剤および/または抗酸化剤(例えば、トコフェロールおよびその誘導体、エルゴチオネイン、チオタウリン、ヒポタウリン、アミノグアニジン、チアミンピロリン酸、ピリドキサミン、リシン、ヒスチジン、アルギニン、フェニルアラニン、ピリドキシン、アデノシン三リン酸);抗炎症剤(例えば、グリシルレチン酸ステアリル);鎮静剤およびそれらの混合物、1種以上の化学または物理サンスクリーン(例えば、メトキシケイ酸オクチル、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、酸化チタニウムおよび酸化亜鉛);ならびにデオキシリボ核酸および/または核酸から選択される。これらの活性剤と本発明のオリゴヌクレオチドの間に相溶性がない場合、一方および/または他方を小球体、特に、仏国特許第2534487号に記載されるような両親媒性、イオン性もしくは非イオン性脂質から形成されたリポソームもしくは小胞、および/またはナノ粒子、および/またはナノ球体、および/またはナノカプセル内に配合することができる。
【実施例】
【0053】
以下の実施例は、本発明を例証するものであるが、本発明を制限するものではない。
【0054】
以下の実施例において、全ての百分率は、特記されない限り重量を基準としており、以下に図面の説明を行う。
【0055】
図面は実験結果に関するものである(図1および図2については実施例3、図3については実施例4)。
【0056】
実施例1:オリゴヌクレオチド合成
天然の塩基を有するオリゴヌクレオチドを、標準のホスホルアミダイト(phosphoramidite)誘導体の化学的性質を用いて、構築者のプロトコールに従って、自動合成器(Perseptive Biosystems Expediteモデル8909)により合成した。ヌクレオシドのβ−シアノエチルジイソプロピル−ホスホルアミダイト誘導体を使用した。ヨウ素溶液を用いて、亜リン酸酸化工程を行った。カラム(Controlled Pore Class、Perseptive Biosystems)から開裂させ、33%の水性アンモニア溶液で55℃にて18時間処理することによって配列を完全に脱保護化した後、オリゴヌクレオチドを、酢酸ナトリウムの存在下でエタノールから析出させることにより精製した。次いで、塩化ナトリウムの勾配を用いた溶出によるイオン交換クロマトグラフィーにより、およびトリエチル酢酸アンモニウムの存在下でアセトニトリルの勾配を用いた溶出によるC18逆相クロマトグラフィーにより、高圧液体クロマトグラフィー対照実験を行った。
【0057】
LNAオリゴヌクレオチドは、Proligo社またはEurogentec社によって合成された。
【0058】
例として、オリゴヌクレオチドを合成した。これらのオリゴヌクレオチドを表1に記載する。シトシンの隣にある星印(*)は、これらの塩基が5位においてメチル化されていることを示す。この表の上から5個の配列(配列番号1〜配列番号5と番号を付している)に対して試験を行った。これらオリゴヌクレオチドの、チロシナーゼ遺伝子上のそれらの標的配列とのハイブリダイゼーション特性および脱色素活性を以下の実施例において報告する。
【0059】
表1において、配列の各末端に付した番号は、基となる配列中のオリゴヌクレオチドの位置を示している。
【0060】
これらの配列は、ヒトチロシナーゼ遺伝子の「HSTYRO1E」配列(Kikuchi et al., Biochem. Biophys. Acta 1009; 3; 283-286 (1989)により公開(Genbank受託番号M27160))から、またはヒトチロシナーゼ遺伝子の「HSU03039」配列(Ponnazhagen et al., J. Invest. Dermatol., 102, 5, 744-748 (1994)により公開)から推定される。
【0061】
更に、チロシナーゼをコードする遺伝子に対する、本発明のオリゴヌクレオチドの特異性を確認するための比較として、本発明の配列番号1の配列に基づく2種のヌクレオチドを合成した。
【0062】
・表1の配列番号6で示される「反転対照」配列。配列番号1の配列の塩基の順番が反転している。
【0063】
・同じく表1の配列番号7で示される「スクランブル対照」配列。配列番号1の配列の塩基と、性質および数の点においては同じであるが、任意の順番で並んでいる塩基を含む。
【0064】
【表1】

【0065】
実施例2:ゲルシフトによる、配列番号1と、ヒトチロシナーゼ遺伝子上のその二重らせん標的配列との相互反応に関する試験
ゲルシフト技術により、オリゴヌクレオチドと、その標的DNA配列とのハイブリダイゼーションを証明することができる。標的DNAと、放射標識された本発明のオリゴヌクレオチドとを混合することによってDNA−オリゴヌクレオチド複合体を生成する。その移動は、遊離オリゴヌクレオチドと比較して低速であろう。減速したオリゴヌクレオチドの量を測定することにより、三重らせん形成効率を測定することができる。
【0066】
500マイクロモルの溶液を使用し、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて、γ−[32P]ATPで配列番号1および配列番号6を標識する。放射標識された配列番号1および配列番号6を排除カラム上で単離する。
【0067】
15%アクリルアミド−尿素ゲル上での電気泳動(70Wで1時間30分移動させる)によりオリゴヌクレオチドの純度を確認する。次いで、真空下にて70℃でゲルを乾燥させ、PhosphoImager(Storm 860, Molecular Dynamics)を用いて放射線フットプリントを読み取る。
【0068】
標識されたオリゴヌクレオチドと、ヒトチロシナーゼ遺伝子配列の一部を含むDNA断片との間のハイブリダイゼーションを、様々な標的DNA/オリゴヌクレオチド濃度比率値で4℃にて一晩行う。条件を表2に示す。放射標識された配列番号1および配列番号6の配列を2つの形態で試験する:修飾した形態(LNA)および修飾していない形態(DNA)。
【0069】
非変性8%ビスアクリルアミドゲル上での電気泳動を、3Wの電力で、37℃にて1時間行う。次いで、真空下にて70℃でゲルを乾燥させ、一晩露光プレートと接触させる。
【0070】
【表2】

【0071】
得られた画像から、オリゴヌクレオチドとその標的配列との複合体の形成効率(百分率で表す)を、LumiAnalystソフトウェア(Roche(Meylan, France))を用いて測定することができる。
【0072】
試験の結果を以下の表3に示す。
【0073】
これらの結果は、LNA塩基からなる配列番号1と、その標的配列とのハイブリダイゼーションからの収率が、標的DNA/オリゴヌクレオチド比率に応じて変化することを示している。等モル比の場合には11%、比率が2の場合には65%、および比率が4の場合には77%である。DNA塩基からなる配列番号1の場合、チロシナーゼ遺伝子断片とのハイブリダイゼーションからの収率は25%〜33%であり、これらの値は標的DNA濃度には依存しない。
【0074】
一方、配列番号6は、LNA誘導体が関与するか、DNA形態が関与するかに関わらず、チロシナーゼDNA配列とは相互反応しない(表3)。
【0075】
【表3】

【0076】
実施例3:正常なヒトメラノサイト上でのヒトチロシナーゼ遺伝子発現の阻害についての、リアルタイム定量的RT−PCRによる試験
正常なヒトメラノサイトを、直径60mmのペトリ皿に710,000細胞/皿の速度で、培地1に播種する(表4)。配列番号1〜7のそれぞれの配列について、Superfect(Qiagen(Courtaboeuf, France))で複合化した配列を500ナノモルの濃度で添加した培地1からなる即時溶液を調製する。播種から24時間後、細胞をこれらの様々な溶液で一回処理し、次いで処理から8時間後に回収し、全RNAを抽出する。
【0077】
【表4】

【0078】
全RNA(全ての細胞RNA、故にチロシナーゼメッセンジャーRNAを含む)を抽出し(Reasy Kit(Qiagen(Courtaboeuf, France))、アッセイし、バイオアナライザー2100(Agilent Technologies(Massy, France))を用いてその品質を確認した。次いで、それをDNAアーゼで処理して、残留するであろうゲノムDNAの全ての痕跡を除去する。DNA増幅反応であるリアルタイムでの定量的PCR反応を行うため、Superscript II酵素(Qiagen)による逆転写反応により、RNAから相補的DNA(cDNA)を生成することができる。次いで、この得られた逆転写産物を用いて、表5に記載した反応混合物に応じて、LightCycler(Roche(Meylan, France))上でリアルタイムでの定量的PCRを行い、初期の細胞集団に存在する目的のメッセンジャーRNAを定量化する。
【0079】
【表5】

【0080】
上述の逆転写反応から得られ、細胞cDNAを含有する2μlの産物を、リアルタイムでの定量的PCR反応に使用される表5に記載の標準的な反応混合物に添加する。サンプルについて測定したチロシナーゼ遺伝子をコードする転写産物量は、非変性β−2−ミクログロブリン遺伝子をコードする転写産物量と関連している。この比率について得られた結果を以下の表6にまとめ、添付した図1および図2に示す。LNA塩基からなる配列番号1は、チロシナーゼ遺伝子転写産物量を49%有意に低下させる。DNA塩基からなる配列番号1については、転写産物量の低下は30%である。一方、配列番号2〜5の配列は、チロシナーゼ遺伝子発現の阻害に対して何ら有意な活性を示さず、配列番号6および7の配列でさえも示さず、これらの配列はそれぞれ、この活性を有する唯一のものである配列番号1の配列の反転対照およびスクランブル対照である。
【0081】
【表6】

【0082】
実施例4:チロシナーゼのドーパ−オキシダーゼ活性を測定することによる、正常なヒトメラノサイトでのヒトチロシナーゼ遺伝子発現の阻害についての試験
実施例1の表1に示す本発明のオリゴヌクレオチド(配列番号1〜配列番号5)を、それらのメラニン形成作用について、故にメラノサイトによるメラニン色素の生成を調節するそれらの能力について試験する。比較要素として、「反転対照」(配列番号6)および「スクランブル対照」(配列番号7)オリゴヌクレオチドも、この作用について試験する。
【0083】
メラニン形成のための反応機序では、チロシナーゼおよびTRP−1が酵素複合体を形成し、この酵素複合体がL−ドーパからドーパキノン、次いでドーパクロムへの変換を触媒することが想起される(Kobayashi T. et al., J. Biol. Chem. 273, 31810-5 (1998); Sarangarajan R., Boissy R.E., Pigment Cell Res., 16, 437-44 (2001))。チロシナーゼはまた、その多機能な性質により「ドーパ−オキシダーゼ」と呼ばれることに留意すべきである。実際、チロシナーゼは、チロシンのドーパへの酸化中、ドーパ−オキシダーゼとして同じ機能を発揮する。
【0084】
本試験の原理は、基質として使用するL−ドーパをドーパクロムへ変換する際にドーパ−オキシダーゼにより触媒される反応の速度の測定に基づいている。所要期間に光学密度を測定することによってドーパクロムの出現を定量化し、それにより、試験した各オリゴヌクレオチドおよび対照アッセイに関する、L−ドーパ変換のための反応速度を計算することができる。この反応速度が利用できる酵素の量にとりわけ依存している場合、前述の例の試験により既に観察された、チロシナーゼ遺伝子発現に対する、本発明の被試験オリゴヌクレオチドの阻害作用を、得られた結果から検証することができる。対照アッセイと比較した反応速度の低下は、形成された酵素量の低下、故に酵素活性の低下に相当し、結果として、メラニン形成の低下、故に脱色素効果に相当する。
【0085】
通常のヒトメラノサイトを、96ウェルマイクロプレート内の培地1に、10,000細胞/ウェルの速度で播種する(表4)。配列番号1〜配列番号7の各々の配列に関し、Superfect(Qiagen(Courtaboeuf, France))で複合化した配列が500ナノモルの濃度で添加された培地1からなる即時溶液を調製する。播種から24時間後に細胞を一旦処理し、次いで該処理から72時間後、450nmでの分光光度法によりドーパ−オキシダーゼ活性を測定する。結果を表7および添付図面の図3に示す。
【0086】
【表7】

【0087】
表7は、500ナノモルの配列番号1により処理された正常なヒトメラノサイトにおいて、ドーパ−オキシダーゼ活性が14%有意に阻害されることを示している。
【0088】
配列番号6および配列番号7は、ドーパ−オキシダーゼ活性に対する活性を有さない。これは、LNA塩基からなる配列番号1の配列で観察された阻害効果が標的配列に特異的であることを示している。
【0089】
実施例5:顔の色を白くするための化粧パウダー
【表8】

【0090】
この粉末は二重作用を有している。該粉末は皮膚のクレンジングを可能にし、また、数日間の規則的な使用を通じて肌の色を白くすることができる。当該粉末は1日に1回または2回、顔の皮膚に適用することができる。
【0091】
実施例6:ゲル−エマルション形態の脱色素用化粧デイクリーム
【表9】

【0092】
日光の、更には太陽から直接の、多少なりとも強い照射に曝される個体の中には、色の白さを保ち、色素沈着斑が出現しないことを望む者もいる。上述のゲル−エマルションを使用することにより、この目的を達成することができる。この組成物を、一般的には午前中に顔に適用する。該組成物は、顔の平坦なまたは凸凹のある色素沈着に対して、予防的かつ治癒的に作用する。
【0093】
実施例7:太陽からの照射から保護する流体化粧用組成物(SPF30)
【表10】

【0094】
この組成物は、太陽からの強い照射に曝露される前に使用されるべきものである。該組成物は、この現象を起こしやすい個体における色素斑の出現を予防する。高濃度のサンスクリーンの存在により、メラニン量の減少から生じる天然保護の低下を補償することができる。
【0095】
実施例8:病気またはトラウマによる皮膚の色素過剰を治療するための皮膚用クリーム
【表11】

【0096】
このクリームを使用することにより、病気またはトラウマによる皮膚の色素過剰を低減することができる。また、このクリームにより、白斑の場合の脱色素化領域周辺での色のコントラストを低減することもできる。
【0097】
実 施例9:肌の色を白くするための顔用化粧ローション
【表12】

【0098】
肌の色を白くするためのこのローションは、皮膚からメイクアップ(化粧)を除去して皮膚をクレンジングした後に使用する。
【0099】
実施例10:顔用美白化粧美容液(セラム)
【表13】

【0100】
一般的には顔用クリームを適用する前に、この非常に濃縮された美容液組成物の液滴を顔に適用する。この美容液は、通常、1〜2週間の治療として使用することにより、肌の色を白くするか、またはその白さを持続させる。
【0101】
実施例11:体毛の色を薄くするための化粧クリーム
【表14】

【0102】
脱色すべき毛髪がある領域、特に腕に対して、該毛髪の色が徐々に薄くなるのに十分な時間、このローションを適用する。
【0103】
実施例12:手用シミ防止化粧ゲルクリーム
【表15】

【0104】
このクリームは、手の上の斑(太陽黒子および/または老人性黒子)の着色を低減するために、該斑に対して直接適用しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】LNA塩基からなる配列番号1のオリゴヌクレオチドと、配列番号6のオリゴヌクレオチドが、500nMのオリゴヌクレオチドで8時間処理した正常なヒトメラノサイトにおけるチロシナーゼの発現に及ぼす効果。「*」という記号は、未処理細胞と比較した、統計的に有意な差異(p<0.05)を表している。
【図2】DNA塩基からなる配列番号1のオリゴヌクレオチドが、500nMのオリゴヌクレオチドで8時間処理した正常なヒトメラノサイトにおけるチロシナーゼ遺伝子の発現に及ぼす効果。「*」という記号は、未処理細胞と比較した、統計的に有意な差異(p<0.05)を表している。
【図3】配列番号1のオリゴヌクレオチドが、正常なヒトメラノサイトにおけるチロシナーゼのドーパ−オキシダーゼ活性に及ぼす効果。ドーパ−オキシダーゼ活性をOD/分で測定し、XTT試験を行って得られた生存率に関して標準化する。「*」という記号は、未処理細胞と比較した、統計的に有意な差異(p<0.05)を表している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相補的塩基間のフーグスティーン型対合により、ヒトチロシナーゼをコードする遺伝子と特異的にハイブリダイズする配列5’−C*TTC*TC*TC*TTTTTC*C*TTTTTC*−3’(配列番号1、C*は5−メチルシトシンを表す)を含む15個〜25個のヌクレオチドの配列を含んでなるアンチジーンオリゴヌクレオチドであって、前記ヒトチロシナーゼ遺伝子とともに三重らせん構造を形成する、アンチジーンオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
18個〜21個のヌクレオチド、または21個〜25個のヌクレオチド、好ましくは21個のヌクレオチドを含んでなる、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
糖成分、核酸塩基成分および/またはヌクレオチド間骨格中に少なくとも1つの化学修飾を含んでなるキメラオリゴヌクレオチドである、請求項1または2に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
LNA(固定核酸)またはPNA(ペプチド核酸)を含むものである、請求項3に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
前記ヌクレオシドの糖成分上の2’−O−アルキル誘導体および2’−O−フルオロ誘導体、前記ヌクレオチド間骨格上のホスホロチオエートまたはメチルホスホネート誘導体、5’位および/または3’位に挿入型反応基を有する誘導体(特に、アクリジン)、および標的配列と架橋を形成することができる誘導体(特に、ソラレンおよびアジド基)からなる群から選択される少なくとも1つの修飾を含んでなる、請求項3に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含んでなる、化粧用または皮膚用組成物。
【請求項7】
前記オリゴヌクレオチドが、前記組成物の総重量の0.00001%〜10%、好ましくは0.0003%〜3%の量で存在するものである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
局所適用に適する形態、特に、水性、水性アルコール性もしくは油性溶液、水中油型もしくは油中水型の単純もしくは複合エマルション、水性もしくは油性ゲル、液状、ペースト状もしくは固体状無水物、固体粒子(高分子ナノ球体もしくはナノカプセルなど)の水性もしくは油性分散液、またはイオン性もしくは非イオン性脂質小胞の水性分散液の形態である、請求項6または7に記載の組成物。
【請求項9】
美容ケア製品および/または化粧品として使用されるように処方されたものである、請求項6〜8のいずれか一項に記載の化粧用組成物。
【請求項10】
化粧料において使用することができる1種以上の活性成分、特に1種以上の化学的または物理的サンスクリーンを更に含んでなる、請求項6〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
皮膚を脱色素化または漂白するための美容的処置方法であって、請求項6〜10のいずれか一項に記載された組成物を、皮膚の1つ以上の色素沈着領域に所与の時間適用し、所望により、脱色素効果が現れるまでこの操作を繰り返すことを含んでなる、方法。
【請求項12】
体毛を脱色素化または漂白するための美容的処置方法であって、請求項6〜10のいずれか一項に記載された組成物を、毛髪を有する皮膚の1つ以上の領域に所定時間適用し、所望により、脱色素効果が現れるまでこの操作を繰り返すことを含んでなる、方法。
【請求項13】
前記オリゴヌクレオチドの含有量が、前記組成物の総重量の0.0003%〜3%である、請求項11または12に記載の美容的処置方法。
【請求項14】
チロシナーゼの過剰発現および活性亢進により反映される疾患の治療または予防、特に、メラノサイトの活性亢進による局所的な色素過剰(特発性黒皮症など)、良性メラノサイト増殖および活性亢進による局在的な色素過剰(老化色素斑(老人性黒子)など)および偶発的な色素過剰(光感作または病変後の瘢痕形成など)の治療または予防、ならびに白斑症(白斑など)の形態の治療を目的とした局所適用薬剤を製造するための、請求項1〜5のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−506763(P2009−506763A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528527(P2008−528527)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065902
【国際公開番号】WO2007/026009
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(508066212)
【氏名又は名称原語表記】L V M H RECHERCHE
【出願人】(594016872)サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス) (83)
【出願人】(506356162)ミュージアム ナショナル ディストワール ナチュレル (3)
【Fターム(参考)】