説明

脱酸素剤包装体、その連包体、カバーフィルム付き連包体、生肉入り密閉容器及び生肉の保存方法

【課題】炭酸ガス共存下、または低温下などの一般に脱酸素するには過酷な条件下であっても、脱酸素を高速で行うことができる脱酸素剤包装体等を提供すること。
【解決手段】脱酸素剤組成物を収納する通気性包装材を有する脱酸素剤包装体であって、脱酸素剤組成物が、鉄粉100質量部に対して、ハロゲン化ナトリウムを0.1〜20質量部、水を20〜80質量部、活性炭を0.01〜130質量部配合させてなり、脱酸素剤包装体のうち少なくとも通気性包装材が60秒/100mL以下のガーレ式透気度を有する、脱酸素剤包装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱酸素剤包装体、その連包体、カバーフィルム付き連包体、生肉入り密閉容器及び生肉の保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属鉄等の酸化反応を利用した鉄系脱酸素剤は広く知られており、この鉄系脱酸素剤を食品等の物品と共に密封容器に収納して容器内の酸素を吸収除去することにより、主として酸素による酸化劣化を防止して食品等の鮮度および品質を保持するために利用されている。
【0003】
一方、食品等の鮮度および品質を保持するための保存技術としては、ガス置換、チルド、フローズンチルド雰囲気で保存する方法が存在する。ガス置換は、窒素または炭酸ガス等の不活性ガスで密閉容器内の酸素を追い出すことにより初期酸素濃度を下げ、酸化劣化を防止する方法である。チルド、フローズンチルド保存は、低温にすることにより密閉容器内の空間または収納された物品に付着している細菌の繁殖を抑制し、腐敗等を防止する方法である。
【0004】
また、食品等の鮮度および品質保持効果を高めるために、鉄系脱酸素剤を利用した保存方法と、ガス置換、チルド、フローズンチルドで保存する方法とを併用して使用することが必要となる場合もある。
【0005】
しかし、この場合、鉄系脱酸素剤の能力は通常の大気下、常温下より著しく低下し、特にガス置換と、チルドもしくはフローズンチルドとを併用する場合には、酸素吸収速度の低下が顕著に現れて、密閉容器内に透過してくる酸素により、品質劣化等をきたす問題があった。
【0006】
そこで、このような問題を解決するために種々の方法が提案され、その一つの方法として、例えば鉄系脱酸素剤に液体の反応促進剤を強制的に添加する方法が知られている(特許文献1および2)。この方法は、反応促進剤として水又は希酸を用い、鉄の酸化反応を促進させ、短時間で密閉容器内の酸素を取り除く方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2001−524834号公報
【特許文献2】特開2003−311119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1及び2記載の方法には、反応促進剤である液体を鉄系脱酸素剤に注入するための専用設備が高価であるうえ、作業時のトラブルが頻発するという問題があった。具体的には、反応促進剤を鉄系脱酸素剤に注入するためにシリンジを使用するが、注入時にシリンジの針が鉄系脱酸素剤を貫通したり、シリンジの針に脱酸素剤の内容物が詰まることなどが原因となり、鉄系脱酸素剤に反応促進剤を注入できないことがあった。
【0009】
このように、ガス置換、チルド、フローズンチルドの条件下、即ち炭酸ガス共存下、または低温下などの一般に脱酸素するのに過酷な条件下では、高速に脱酸素を行うことができる鉄系脱酸素剤包装体は見出されていないのが現状であり、炭酸ガス共存下、または低温下などの一般に脱酸素するのに過酷な条件下にあっても、高速に脱酸素を行うことができる鉄系脱酸素剤包装体が求められていた。
【0010】
本発明は、炭酸ガス共存下、または低温下などの一般に脱酸素するには過酷な条件下であっても、高速に脱酸素を行うことができる脱酸素剤包装体、その連包体、カバーフィルム付き連包体、生肉入り密閉容器及び生肉の保存方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討研究を行った結果、鉄系脱酸素剤組成物中の鉄、ハロゲン化金属、活性炭、水の各成分を特定の配合量とすることで、炭酸ガス共存下、または低温下などの一般に脱酸素するには過酷な条件下であっても、脱酸素剤組成物の脱酸素能力が顕著に高まることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち本発明は、脱酸素剤組成物と、前記脱酸素剤組成物を収納する通気性包装材を有する包装材とを備える脱酸素剤包装体であって、前記脱酸素剤組成物が、鉄粉100質量部に対して、ハロゲン化ナトリウムを0.1〜20質量部、水を20〜80質量部、活性炭を0.01〜130質量部配合させてなり、前記通気性包装材が60秒/100mL以下のガーレ式透気度を有する脱酸素剤包装体である。
【0013】
また本発明は、脱酸素剤組成物と、前記脱酸素剤組成物を収納する通気性包装材を有する包装材とを備える複数の脱酸素剤包装体の連包体であって、前記脱酸素剤組成物が、鉄粉100質量部に対して、ハロゲン化ナトリウムを0.1〜20質量部、水を20〜80質量部、活性炭を0.01〜130質量部配合させてなり、前記通気性包装材が60秒/100mL以下のガーレ式透気度を有する、連包体である。
【0014】
本発明の脱酸素剤包装体及び連包体によれば、炭酸ガス共存下、または低温下などの一般に脱酸素するには過酷な条件下であっても、脱酸素剤組成物の脱酸素能力を顕著に高めることが可能となり、高速に脱酸素を行うことができる。
【0015】
また本発明は、上記脱酸素剤包装体の連包体と、前記脱酸素剤包装体の前記通気性包装材の各々を覆うように設けられるカバーフィルムとを備えるカバーフィルム付き連包体であって、前記カバーフィルムのガーレ式透気度が、前記通気性包装材のガーレ式透気度よりも大きい、カバーフィルム付き連包体である。
【0016】
このカバーフィルム付き連包体によれば、カバーフィルムによって通気性包装材が覆われているため、通気性包装材がカバーフィルムによって覆われている間はカバーフィルムにおいて酸素の透過が十分に阻止される。このため、通気性包装材の外部から内部への酸素の侵入が十分に抑制され、脱酸素剤組成物の脱酸素反応を十分に抑制することが可能となる。その結果、以下の効果を得ることもできる。即ち、連包体は一般にはその製造直後に、酸素と反応しないように真空パックされた包装袋内に封入されることが一般的である。そして、ユーザーは、必要な時に、その包装袋を開封して、脱酸素が必要な食品等とともに包装容器内に収納する。通常であれば、脱酸素剤組成物が脱酸素を行うのに十分な余裕があり、ユーザーも早急に作業をする必要はない。しかし、本発明の脱酸素剤組成物は、上述したように、極めて高速に脱酸素を行うことができる。このため、包装袋から連包体を開封して取り出したのち、数時間で脱酸素反応が完了してしまい、脱酸素剤包装体が無駄になってしまうおそれがある。本発明のカバーフィルム付き連包体によれば、脱酸素剤組成物の脱酸素反応を十分に抑制することが可能となるため、ユーザーは、包装袋の開封後も、余裕を持って脱酸素剤包装体の密閉容器への収納作業を行うことができるようになる。一方、カバーフィルムを複数の脱酸素剤包装体の通気性包装材から剥離して、脱酸素剤包装体を、脱酸素が必要な食品等とともに密閉容器内に配置すると、その密閉容器中の酸素を通気性包装材の外部から内部に侵入させ、脱酸素剤組成物と反応させることが可能となる。このとき、脱酸素剤組成物を酸素と極めて高速で反応させることが可能となるため、密閉容器中の脱酸素を極めて高速で行うことができる。
【0017】
上記ハロゲン化ナトリウムが塩化ナトリウムまたは臭化ナトリウムであることが好ましい。
【0018】
この場合、高い化学反応性を有するフッ化ナトリウムよりも安全性が高いという利点やヨウ化ナトリウムのように酸化によって着色することがないという利点がある。
【0019】
また本発明の生肉入り密閉容器は、密閉容器中に、生肉と、上記の脱酸素剤包装体とを密封包装してなる生肉入り密閉容器であって、前記密閉容器内の雰囲気が、二酸化炭素濃度が20〜50容量%である、生肉入り密閉容器である。
【0020】
この生肉入り密閉容器によれば、密閉容器内の雰囲気が、二酸化炭素濃度を20〜50容量%としたものであるものの、生肉入り密閉容器中の酸素が通気性包装材の外部から内部に侵入し、脱酸素剤組成物と反応する際、脱酸素剤組成物を酸素と極めて高速で反応させることが可能となるため、生肉入り密閉容器中の脱酸素を極めて高速で行うことができる。このため、生肉が酸素に晒される時間を短縮でき、生肉の品質劣化を十分に抑制することができる。
【0021】
さらに本発明は、上記生肉入り密閉容器を−10〜5℃の温度で保存することにより生肉を保存する生肉の保存方法である。
【0022】
この生肉の保存方法によれば、密閉容器内の雰囲気が、二酸化炭素濃度が20〜50容量%、酸素濃度が0.1容量%以下であり、且つ、−10〜5℃の温度であって、一般に脱酸素するには過酷な条件下であるにもかかわらず、生肉とともに密閉容器内に配置されている脱酸素剤包装体によって、脱酸素を極めて高速で行わせることができる。従って、この生肉の保存方法によれば、生肉における細菌の繁殖を抑制することが可能となり、生肉の変色や腐敗等を防止することが可能となるので、生肉の品質劣化を十分に抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、炭酸ガス共存下、または低温下などの一般に脱酸素するには過酷な条件下であっても、高速に脱酸素を行うことができる脱酸素剤包装体、その連包体、カバーフィルム付き連包体、生肉入り密閉容器及び生肉の保存方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の脱酸素剤包装体の一実施形態を示す正面図である。
【図2】本発明の連包体の一実施形態を示す正面図である。
【図3】本発明のカバーフィルム付き連包体の一実施形態を示す正面図である。
【図4】本発明の生肉入り密閉容器の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、必要に応じて図面を参照しながら説明する。
【0026】
[脱酸素剤包装体]
まず本発明の脱酸素剤包装体の実施形態について説明する。図1は、本発明の脱酸素剤包装体の一実施形態を示す正面図である。図1に示すように、脱酸素剤包装体100は、脱酸素剤組成物(図示せず)と、脱酸素剤組成物を収納する通気性包装材を有する包装材10とを備える。脱酸素剤組成物は、鉄粉、ハロゲン化ナトリウム、活性炭、水を必須成分として含有している。具体的には、脱酸素剤組成物は、鉄粉100質量部に対して、ハロゲン化ナトリウムを0.1〜20質量部、水を20〜80質量部、活性炭を0.01〜130質量部配合させてなるものである。また脱酸素剤包装体100の通気性包装材は60秒/100mL以下のガーレ式透気度を有する。
【0027】
脱酸素剤包装体100によれば、炭酸ガス共存下、または低温下などの一般に脱酸素するには過酷な条件下、具体的には、二酸化炭素濃度が20〜50容量%、温度が−10〜5℃という、脱酸素するには過酷な条件下においても、脱酸素剤組成物の脱酸素能力を顕著に高めることが可能となり、高速に脱酸素を行うことができる。
【0028】
以下、脱酸素剤組成物及び包装材について詳細に説明する。
【0029】
まず脱酸素剤組成物について説明する。
【0030】
(鉄粉)
脱酸素剤組成物に配合する鉄粉としては、還元鉄粉、電解鉄粉、噴霧鉄粉などの種々のものが使用できるが、酸素との接触を良好とするために比表面積をできるだけ大きくすることが好ましく、例えば、10メッシュ以下、特に50メッシュ以下の鉄粉が好ましい。
【0031】
(ハロゲン化ナトリウム)
脱酸素剤組成物にはハロゲン化ナトリウムが配合される。ここで、ハロゲン原子としては任意のものが選択できるが、中でも、安全性が高く、着色が見られないという理由から、塩素原子または臭素原子が好ましい。即ち塩化ナトリウムまたは臭化ナトリウムがハロゲン化ナトリウムとして好ましい。
【0032】
ハロゲン化ナトリウムの配合量は鉄粉100質量部に対して0.1〜20質量部であり、好ましくは0.1〜10質量部であり、より好ましくは1〜10質量部であり、特に好ましくは2.5〜8質量部である。ハロゲン化ナトリウムの配合量が0.1質量部を下回ると、低温、高炭酸ガス濃度環境下において、脱酸素性能が不十分となるため好ましくない。また、20質量部を上回ると、脱酸素剤組成物が吸湿して水分が鉄粉表面を覆ってしまい、酸素吸収反応を停止させることがあるため好ましくない。
【0033】
ハロゲン化ナトリウムとしては通常、粉末または粒状のものを用いられる。ハロゲン化ナトリウムは鉄粉と混合して配合しても良いが、ハロゲン化ナトリウムを鉄粉表面に被膜させて被膜鉄粉(コーティング鉄粉)とすることが好ましい。ハロゲン化ナトリウムを鉄粉表面に被膜させる方法としては、鉄粉表面にハロゲン化ナトリウム水溶液を散布し乾燥させる方法、あるいは鉄粉とハロゲン化ナトリウム水溶液を混合し、これを乾燥させる方法などが例示できる。中でも、ハロゲン化ナトリウムの水溶液を用いて鉄粉表面にハロゲン化ナトリウムを散布させた後に乾燥する方法が、均一にハロゲン化ナトリウムを分散させることができるという理由から好ましい。ハロゲン化ナトリウムを鉄粉の被膜として配合する場合、ハロゲン化ナトリウムの配合量は、鉄粉100質量部に対して0.1〜20質量部配合することが好ましく、0.1〜8質量部配合することがより好ましい。
【0034】
(活性炭)
脱酸素剤組成物には活性炭が配合される。活性炭としては任意のものが使用でき、その材質には特に制限はないが、取扱い性、反応性などの点から、木質系やヤシ柄炭系などが好ましい。脱酸素剤組成物に対する活性炭の配合量は鉄粉100質量部に対して0.01〜130質量部であり、好ましくは0.1〜100質量部であり、より好ましくは0.5〜50質量部であり、特に好ましくは1.5〜10質量部である。配合量が0.01質量部を下回ると、低温、高炭酸ガス濃度環境下において、脱酸素性能が不十分となるため好ましくない。また、130質量部を上回ると、脱酸素剤組成物の体積を際限なく大きくすることが可能な場合は特に問題はないが、限られた体積にて収める場合は酸素吸収に必要な主成分となる鉄粉量の割合が相対的に低下するため好ましくない。
【0035】
(水)
脱酸素剤組成物には鉄粉100質量部に対して水が20〜80質量部の割合で配合される。配合量が20質量部を下回ると、酸素吸収に必要な水分量が不足するため好ましくない。また、80質量部を上回ると脱酸素剤の体積が際限なく大きくすることが可能な場合は特に問題はないが、限られた体積にて収める場合は酸素吸収に必要な主成分となる鉄粉量の割合が相対的に低下するため好ましくない。鉄粉100質量部に対する水の配合量は、好ましくは30〜60質量部である。
【0036】
脱酸素剤組成物に水を配合する方法に特に制限はないが、水を担体に担持して配合する方法が好ましい。担体は水を担持できるものであれば特に制限されるものではなく、例えば二酸化珪素、珪藻土、粘土、ゼオライト、セライト、酸性白土などの無機担体が例示できる。無機担体としては、多孔質材料が好ましく、このような多孔質材料としては、細孔容積0.2〜3.0mL/gであるものが好ましい。なお、上述した活性炭を水の担体として使用してもよい。
【0037】
(フィラー)
脱酸素剤組成物には、流動性の向上、副生成物の除去等を目的として、さらにフィラーを添加しても良い。フィラーの具体例としてはゼオライト、パーライト、珪藻土、活性白土、シリカ、カオリン、タルク、ベントナイト、活性アルミナ、石膏、シリカアルミナ、珪酸カルシウム、酸化マグネシウム、黒鉛、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、酸化鉄等の粉末または粒状物が挙げられる。
【0038】
上述した各成分を配合する方法には特に制限はないが、液体成分と固体成分とを均一に混合できる方法ならいずれの方法でも良い。例えば、鉄粉をハロゲン化ナトリウムで被覆した被覆鉄粉と水を担体に担持させた担持体と活性炭とを脱酸素剤組成物とする方法などを採用することができる。
【0039】
(包装材)
次に包装材10について説明する。包装材10は、2枚の通気性包装材を貼り合わせて袋状としたものや、1枚の通気性包装材と1枚の非通気性包装材とを貼り合わせて袋状としたもの、1枚の通気性包装材を折り曲げ、折り曲げ部を除く縁部同士をシールして袋状としたものが挙げられる。
【0040】
ここで、通気性包装材及び非通気性包装材が四角形状である場合には、包装材10は、2枚の通気性包装材を重ね合わせ、4辺をヒートシールして袋状としたものや、1枚の通気性包装材と1枚の非通気性包装材とを重ね合わせ、4辺をヒートシールして袋状としたもの、1枚の通気性包装材を折り曲げ、折り曲げ部を除く3辺をヒートシールして袋状としたものが挙げられる。また包装材10は、通気性包装材を筒状にしてその筒状体の両端部および胴部をヒートシールして袋状としたものであってもよい。
【0041】
包装材10が、通気性包装材を用いてヒートシールすることによって得られる場合、包装材10は、図1に示すように、脱酸素剤組成物を収納する収納部11と、その周囲に設けられるシール部12とを有することになる。
【0042】
本発明で用いる通気性包装材としては、60秒/100mL以下のガーレ式透気度を有するものが用いられる。ここで、ガーレ式透気度とは、JIS P8117−1998の方法により測定された値を言うものとする。より具体的には、東洋精機製作所製のガーレ式デンソメーターを使用して100mLの空気が通気性包装材を透過するのに要した時間を計測して測定された値を言う。通気性包装材のガーレ式透気度が60秒/100mLを超えると、低温、高炭酸ガス濃度環境下において、脱酸素性能が不十分となるため好ましくない。通気性包装材のガーレ式透気度は好ましくは60秒/100mL以下であり、より好ましくは50秒/100mL以下である。但し、ガーレ式透気度が0.1秒/100mLを下回ると、内容物の漏れが懸念される。
【0043】
上記通気性包装材としては、以下のプラスチックフィルムに通気性を付与したものが用いられる。即ちプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート等のフィルムと、シール層としてポリエチレン、アイオノマー、ポリブタジエン、エチレンアクリル酸コポリマー、エチレンメタクリル酸コポリマーまたはエチレン酢酸ビニルコポリマー等のフィルムとを積層接着した積層フィルム、あるいは、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート等のフィルムに、シール層としてホットメルト等の接着剤を塗布したフィルムなどが使用できる。さらに、上記通気性包装材又は非通気性包装材に耐破損性を向上させるためにワリフ、不織布等の補強材を積層して用いることも可能である。
【0044】
上記プラスチックフィルムの中で、強度、製造上の取り扱い性等を考慮すると、ポリエチレンテレフタレートのフィルムに、シール層としてポリエチレン等のヒートシール性フィルムを積層した積層フィルムが最も好ましい。積層フィルムの厚さは、20〜150μmであることが好ましく、30〜100μmであることが特に好ましい。薄すぎるとヒートシール性に劣り、厚すぎるとホットタック性に劣り包装適性が問題となる。
【0045】
通気性を付与する方法としては、冷針、熱針による穿孔加工の他、種々の方法が採用可能である。穿孔加工により通気性を付与する場合、通気性は、穿孔する孔の径、数、材質等により自由に調節することができる。通気性包装材のガーレ式透気度を60秒/100mL以下とするためには、例えば孔を、その長径が0.1〜2.0mmとなるように形成するとともに、開孔率(孔の合計面積/包装材の全面積)を0.01〜2.0%の範囲で選択するのが望ましい。
【0046】
[脱酸素剤包装体の連包体]
次に、本発明の脱酸素剤包装体の連包体について図2を参照して説明する。図2は、本発明の脱酸素剤包装体の連包体の一実施形態を示す正面図である。図2に示すように、脱酸素剤包装体の連包体200は、上述した複数の脱酸素剤包装体100を一定方向Aに沿って帯状に連ねてなるものである。なお、連包体200を、図2の二点鎖線に沿って切断すると、図1に示す脱酸素剤包装体100を得ることができる。
【0047】
この連包体200は、例えば以下のようにして製造することができる。即ち、2枚の矩形状の通気性包装材を重ね合わせ、最も長い1辺と、最も短い2辺をヒートシールし、最も短い2辺の間の部分について所定の間隔をあけてヒートシールして脱酸素剤組成物を収納する複数の収納部を形成し、各収納部に脱酸素剤組成物を収納したのち、残りの1辺をヒートシールすることにより得ることができる。あるいは、図2に示す連包体200のように、1枚の矩形状の通気性包装材を半分に折り曲げ、折り曲げ部の両端から延びる2辺をヒートシールし、それらヒートシールした2辺の間の部分(図2の二点鎖線に沿った部分)をヒートシールして脱酸素剤組成物を収納する複数の収納部11を形成し、各収納部11に脱酸素剤組成物を収納したのち、残りの1辺をヒートシールすることにより得ることができる。
【0048】
[カバーフィルム付き連包体]
次に、本発明のカバーフィルム付き連包体について図3を参照して説明する。図3は、本発明のカバーフィルム付き連包体の一実施形態を示す正面図である。図3に示すようにカバーフィルム付き連包体300は、脱酸素剤包装体の連包体200と、脱酸素剤包装体100の通気性包装材の各々を覆うように設けられるカバーフィルム220とを備える。
【0049】
ここで、カバーフィルム220としては、そのガーレ式透気度が、通気性包装材のガーレ式透気度よりも大きいものが用いられる。
【0050】
カバーフィルム220は、ガーレ式透気度が60秒/100mLを超えるものであればいかなるものでもよいが、好ましくはガーレ式透気度が1000秒/100mL以上であり、より好ましくは実質的に測定不能なものが良い。ガーレ式透気度が上記範囲にあると、脱酸素剤包装体を使用する前に、脱酸素剤組成物が環境中の酸素と反応することをより十分に抑制することができる。
【0051】
カバーフィルム220としては、具体的には通気性包装材のうち穿孔加工をしていない状態のプラスチックフィルムを用いることができる。
【0052】
カバーフィルム220は、例えば通気性包装材のうちヒートシール部以外の部分、即ち脱酸素剤組成物を収納する収納部11を覆い、収納部11の周囲にあるヒートシール部12で熱圧着により固定される。ここで、カバーフィルム220のうち収納部11を覆っている部分は引っ張られた状態にあり、且つ収納部11を押圧していることが好ましい。この場合、収納部11とカバーフィルム220とが十分に接触するため、収納部11からの酸素の浸入を十分に抑制することができる。またカバーフィルム220は収納部11と熱圧着されていないため、カバーフィルム220を収納部11から剥離する際、収納部11が破損することを防止することもできる。
【0053】
カバーフィルム220は、連包体200において脱酸素剤包装体100の配列方向Aに対して交差するように延びるシール部(以下、「縦シール」と呼ぶ)12Bに熱圧着により固定され、脱酸素剤包装体100の配列方向Aと同方向に延びるシール部(以下、「横シール」と呼ぶ)12Aには熱圧着により固定されないことが好ましい。この場合、カバーフィルム220を脱酸素剤包装体100の配列方向Aに沿って剥離する場合、カバーフィルム220と縦シール12Bとの接着力は、カバーフィルム220と横シール12Aとの接着力よりも弱い。このため、カバーフィルム220を脱酸素剤包装体100の配列方向Aに沿って剥離する際、カバーフィルム220が破損することが十分に防止され、カバーフィルム220の剥離作業を効率よく行うことができる。
【0054】
[生肉入り密閉容器]
次に、本発明の生肉入り密閉容器について図4を参照して説明する。図4は、本発明の生肉入り密閉容器の一実施形態を示す断面図である。図4に示すように、生肉入り密閉容器400は、密閉容器410中に、生肉Mと、上記の脱酸素剤包装体100とを密封包装してなり、密閉容器410内の雰囲気が、二酸化炭素濃度が20〜50容量%、好ましくは25〜40容量%である。
【0055】
この生肉入り密閉容器400によれば、密閉容器410内の雰囲気が、二酸化炭素濃度を20〜50容量%としたものであるものの、生肉入り密閉容器400中の酸素が通気性包装材の外部から内部に侵入し、脱酸素剤組成物と反応する際、脱酸素剤組成物を酸素と極めて高速で反応させることが可能となるため、生肉入り密閉容器400中の脱酸素を極めて高速で行うことができる。このため、生肉Mが酸素に晒される時間を短縮でき、生肉Mの品質劣化を十分に抑制することができる。
【0056】
本発明に用いられる密閉容器410としては、例えばシリカもしくはアルミナを蒸着したポリエステル、ナイロン6やポリメタキシリレンアジパミドに代表されるポリアミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、塩化ビニリデンなどのプラスチックフィルムやアルミ箔などの金属箔等のガスバリア性物質を用いて形成された包装容器や包装袋などが挙げられる。ここで、生肉Mの状態を視認できるようにする観点からは、透明なプラスチックフィルムを用いることが好ましい。このガスバリア性物質の酸素透過度は、特に制限されるものではないが、好ましくは100mL/(m・atm・24h)以下であり、より好ましくは10mL/(m・atm・24h)以下である。密閉容器410としては、例えば二軸延伸ポリプロピレン/EVOH/ポリエチレンの三層構造からなるプラスチックフィルムなどを用いることができる。密閉容器410は、例えば図4に示すように、容器30と、容器30の開口を覆う蓋部40とで構成することができる。
【0057】
本発明に用いられる生肉Mとしては、未だ加熱処理されていないものであれば、豚肉、牛肉、鶏肉、魚肉など、いかなるものであってもよい。
【0058】
密閉容器410内の雰囲気を、二酸化炭素濃度が20〜50容量%、好ましくは25〜40容量%とするのは、このような雰囲気が生肉Mの鮮度及び品質の保存に適しているためである。
【0059】
上記生肉入り密閉容器400は、密閉容器410中に、生肉Mと、上述した脱酸素剤包装体100とを密封包装することによって得られる。このとき、例えば二酸化炭素濃度が20〜50容量%、窒素濃度が80〜50容量%の混合ガスで密閉容器410内の雰囲気を置換しながら生肉Mと脱酸素剤包装体100とを充填し、密封包装する方法や、密閉容器410内を脱気した後、上記混合ガスと共に生肉Mと脱酸素剤包装体100とを充填し、密封包装する方法を採用することで上記の雰囲気を実現することができる。こうして生肉入り密閉容器400を得ることができる。
【0060】
[生肉の保存方法]
次に、本発明の生肉の保存方法は、上記生肉入り密閉容器400を−10〜5℃、好ましくは−5〜5℃の温度で保存することにより生肉を保存するものである。
【0061】
ここで、上記生肉入り密閉容器400を−10〜5℃の温度で保存するのは、生肉の保存においては、酸素濃度を出来る限り低減し、二酸化炭素濃度が20〜50容量%の環境下、5℃以下で保存することが推奨されているためである。
【実施例】
【0062】
以下に実施例を挙げて本願発明を詳細に説明するが、本願発明はこれによって限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
鉄粉100gに臭化ナトリウム4g、活性炭2gを乳鉢で混合し酸素吸収剤A1とした。また、珪藻土(昭和化学工業(株)製 商品名「RC417」)100gに水94g、塩化ナトリウム4.5gが溶解した水溶液を含浸させて水分供与剤Bとした。酸素吸収剤A1を6.0g、水分供与剤Bを6.0g各々計量し、両者を混合して得られた脱酸素剤C1(鉄100質量部に対して、水を50質量部配合)をガーレ式透気度60秒/100mLの有孔ポリエチレンをラミネートして得た小袋D1(60×75mm)に充填し、脱酸素剤包装体E1とした。
【0064】
得られた脱酸素剤包装体E1を混合ガス2500mL(酸素4容量%、炭酸ガス30容量%、窒素66容量%)が充填された、二軸延伸ポリエチレン/バリアナイロン/ポリエチレンの三層構造からなるガスバリア性多層袋内(ポリエチレン層側を内層とした)に収納後、密封して、5℃、100%RH下で放置したところ、8時間で袋内の酸素濃度が0.1容量%未満の脱酸素状態に到達した。
【0065】
(実施例2)
三方シール型自動充填包装機を用いて、ガーレ式透気度が60秒/100mLの有孔ポリエチレンからなる通気性包装材(幅150mm)を中心部で半分に折り曲げるとともに、該折り曲げ部分の両側に幅60mmのポリエチレンからなるカバーフィルムを1枚ずつ該包装材料の外側に配した。つぎに、該折り曲げ部の両端から延びる2辺を該カバーフィルムと共にヒートシールし(縦シール・シール幅15mm)、それらヒートシールした2辺の間の部分を、同じくカバーフィルムと共にヒートシールして脱酸素剤組成物を収納する複数の収納部(幅45mm)を形成した。そして、該収納部に酸素吸収剤A1を6.0g、水分供与剤Bを6.0g各々充填したのち、通気性包装材の残りの1辺をヒートシールすることにより(横シール・シール幅10mm)、一包当たりの大きさが60mm×75mmであり、その両面に60mm×60mmのカバーフィルムが縦シールにより熱圧着された脱酸素剤包装体(脱酸素剤包装体E2)1000包からなるカバーフィルム付き連包体を得た。
【0066】
次いで、カバーフィルム付き連包体からカバーフィルムを脱酸素剤包装体E2の配列方向に沿って剥離機を用いて剥離しながら、該包装体3包毎に縦シール部の中間部分を切断して、該包装体が3包連なった3連包体を作製した。そして、得られた3連包体を実施例1と同様の構造からなるガスバリア性多層袋中にステーキ用生肉と共に封入し、混合ガス7500mL(酸素2容量%、炭酸ガス30容量%、窒素68容量%)中に密封包装した。その後、0℃の過酷条件下にて保存した。その結果、24日保存後でも生肉に変化や異常は認められなかった。
【0067】
(実施例3)
鉄粉100gに塩化ナトリウム4g、活性炭2gを乳鉢で混合し酸素吸収剤A2とした。酸素吸収剤A2を6.0g、実施例1にて得られた水分供与剤Bを6.0g各々計量し、両者を混合して得られた脱酸素剤C2(鉄100質量部に対して、水を50質量部配合)を、実施例1と同様の小袋D1に充填し、脱酸素剤包装体E3とした。得られた脱酸素剤包装体E3を実施例1と同様の操作にて放置したところ、8時間で袋内の酸素濃度が0.1容量%未満の脱酸素状態に到達した。
【0068】
(比較例1)
鉄粉100gに塩化カルシウム4g、活性炭2gを乳鉢で混合し酸素吸収剤A3とした。酸素吸収剤A3を6.0g、実施例1にて得られた水分供与剤Bを6.0g各々計量し、両者を混合して得られた脱酸素剤C3(鉄100質量部に対して、水を50質量部配合)を、実施例1と同様の小袋D1に充填し、脱酸素剤包装体E4とした。得られた脱酸素剤包装体E4を実施例1と同様の操作にて放置したところ、22時間で袋内の酸素濃度が0.1容量%未満の脱酸素状態に到達した。
【0069】
(比較例2)
鉄粉100gに臭化カルシウム4g、活性炭2gを乳鉢で混合し酸素吸収剤A4とした。酸素吸収剤A4を6.0g、実施例1にて得られた水分供与剤Bを6.0g各々計量し、両者を混合して得られた脱酸素剤C4(鉄100質量部に対して、水を50質量部配合)を、実施例1と同様の小袋D1に充填し、脱酸素剤包装体E5とした。得られた脱酸素剤包装体E5を実施例1と同様の操作にて放置したところ、30時間で袋内の酸素濃度が0.1容量%未満の脱酸素状態に到達した。
【0070】
(比較例3)
実施例1にて作成した脱酸素剤C1をガーレ式透気度120秒/100mLの有効ポリエチレンをラミネートした小袋D2(60×75mm)に充填し、脱酸素剤包装体E6とした。得られた脱酸素剤包装体E6を実施例1と同様の操作にて放置したところ、26時間で袋内の酸素濃度が0.1容量%未満の脱酸素状態に到達した。
【0071】
(実施例4)
鉄粉100gに臭化ナトリウム0.2g、活性炭2gを乳鉢で混合し酸素吸収剤A5とした。酸素吸収剤A5を6.0g、実施例1にて得られた水分供与剤Bを6.0g各々計量し、両者を混合して得られた脱酸素剤C5(鉄100質量部に対して、水を48質量部配合)を、実施例1と同様の小袋D1に充填し、脱酸素剤包装体E7とした。得られた脱酸素剤包装体E7を実施例1と同様の操作にて放置したところ、8時間で袋内の酸素濃度が0.1容量%未満の脱酸素状態に到達した。
【0072】
(実施例5)
鉄粉100gに臭化ナトリウム10.0g、活性炭2gを乳鉢で混合し酸素吸収剤A6とした。酸素吸収剤A6を6.0g、実施例1にて得られた水分供与剤Bを6.0g各々計量し、両者を混合して得られた脱酸素剤C6(鉄100質量部に対して、水を53質量部配合)を、実施例1と同様の小袋D1に充填し、脱酸素剤包装体E8とした。得られた脱酸素剤包装体E8を実施例1と同様の操作にて放置したところ、8時間で袋内の酸素濃度が0.1容量%未満の脱酸素状態に到達した。
【0073】
(実施例6)
実施例2で得たカバーフィルム付き連包体を各々の縦シール部の中間部分で切断して、脱酸素剤包装体E2(カバーフィルム付き)を得た。この脱酸素剤包装体E2を25℃、50%RHの空気下に3時間放置した。3時間放置後、脱酸素剤包装体E2の表面に固定したカバーフィルムを剥離させて実施例1と同様の操作にて放置したところ、9時間で袋内の酸素濃度が0.1容量%未満の脱酸素状態に到達した。
【0074】
(実施例7)
鉄粉100gに臭化ナトリウム4g、活性炭0.1gを乳鉢で混合し酸素吸収剤A7とした。酸素吸収剤A7を6.0g、実施例1にて得られた水分供与剤Bを6.0g各々計量し、両者を混合して得られた脱酸素剤C7(鉄100質量部に対して、水を49質量部配合)を、実施例1と同様の小袋D1に充填し、脱酸素剤包装体E9とした。得られた脱酸素剤包装体E9を実施例1と同様の操作にて放置したところ、9時間で袋内の酸素濃度が0.1容量%未満の脱酸素状態に到達した。
【0075】
(比較例4)
鉄粉100gに臭化ナトリウム4gを乳鉢で混合し酸素吸収剤A9とした(活性炭0.0g)。酸素吸収剤A9を6.0g、実施例1にて得られた水分供与剤Bを6.0g各々計量し、両者を混合して得られた脱酸素剤C9(鉄100質量部に対して、水を49質量部配合)を、実施例1と同様の小袋D1に充填し、脱酸素剤包装体E11とした。得られた脱酸素剤包装体E11を実施例1と同様の操作にて放置したところ、30時間で袋内の酸素濃度が0.1容量%未満の脱酸素状態に到達した。
【0076】
(比較例5)
鉄粉100gに臭化ナトリウム4g、活性炭150gを乳鉢で混合し酸素吸収剤A10とした。酸素吸収剤A10を6.0g、実施例1にて得られた水分供与剤Bを6.0g各々計量し、両者を混合して得られた脱酸素剤C10(鉄100質量部に対して、水を117質量部配合)を、実施例1と同様の小袋D1に充填し、脱酸素剤包装体E12とした。得られた脱酸素剤包装体E12を実施例1と同様の操作にて放置したところ、40時間で袋内の酸素濃度が0.1容量%未満の脱酸素状態に到達した。
【0077】
実施例1〜7及び比較例1〜5の結果を表1に示す。
【表1】

【0078】
(実施例8)
実施例1にて得られた酸素吸収剤A1を6g、水分供与剤Bを3g各々計量し、両者を混合して得られた脱酸素剤C11(鉄100質量部に対して、水を25質量部配合)を、ガーレ式透気度2秒/100mLの有効ポリエチレンをラミネートして得た小袋D3(60×75mm)に3方シール包装にて充填し、脱酸素剤包装体E13とした。
【0079】
得られた脱酸素剤包装体E13を、混合ガス2500mL(酸素6容量%、炭酸ガス30容量%、窒素64容量%)が充填された実施例1と同様の構造からなるガスバリア性多層袋中にて、5℃、100%RH下で放置したところ、19時間で袋内の酸素濃度が0.1容量%未満の脱酸素状態に到達した。
【0080】
(実施例9)
実施例1にて得られた酸素吸収剤A1を6g、水分供与剤Bを5g各々計量し、両者を混合して得られた脱酸素剤C12(鉄100質量部に対して、水を42質量部配合)を、実施例8と同様の小袋D3に充填し、脱酸素剤包装体E14とした。得られた脱酸素剤包装体E14を実施例8と同様の操作にて放置したところ、16時間で袋内の酸素濃度が0.1容量%未満の脱酸素状態に到達した。
【0081】
(実施例10)
実施例1にて得られた酸素吸収剤A1を6g、水分供与剤Bを6g各々計量し、両者を混合して得られた脱酸素剤C13(鉄100質量部に対して、水を50質量部配合)を、実施例8と同様の小袋D3に充填し、脱酸素剤包装体E15とした。得られた脱酸素剤包装体E15を実施例8と同様の操作にて放置したところ、16時間で袋内の酸素濃度が0.1容量%未満の脱酸素状態に到達した。
【0082】
(実施例11)
実施例1にて得られた酸素吸収剤A1を6g、水分供与剤Bを7g各々計量し、両者を混合して得られた脱酸素剤C14(鉄100質量部に対して、水を59質量部配合)を、実施例8と同様の小袋D3に充填し、脱酸素剤包装体E16とした。得られた脱酸素剤包装体E16を実施例8と同様の操作にて放置したところ、13時間で袋内の酸素濃度が0.1容量%未満の脱酸素状態に到達した。
【0083】
(比較例6)
実施例1にて得られた酸素吸収剤A1を6g、水分供与剤Bを1g各々計量し、両者を混合して得られた脱酸素剤C15(鉄100質量部に対して、水を8.3質量部配合)を、実施例8と同様の小袋D3に充填し、脱酸素剤包装体E17とした。得られた脱酸素剤包装体E17を実施例8と同様の操作にて放置したところ、65時間で袋内の酸素濃度が0.1容量%未満の脱酸素状態に到達した。
【0084】
(比較例7)
実施例1にて得られた酸素吸収剤A1を6g、水分供与剤Bを2g各々計量し、両者を混合して得られた脱酸素剤C16(鉄100質量部に対して、水を17質量部配合)を、実施例8と同様の小袋D3に充填し、脱酸素剤包装体E18とした。得られた脱酸素剤包装体E18を実施例8と同様の操作にて放置したところ、45時間で袋内の酸素濃度が0.1容量%未満の脱酸素状態に到達した。
【0085】
実施例8〜11及び比較例6、7の結果を表2に示す。
【表2】

【0086】
表1及び2に示す結果より、実施例1〜11の脱酸素剤包装体は、比較例1〜7の脱酸素剤包装体に比べて、脱酸素時間が極めて短かった。
【0087】
特に、実施例1および実施例2のように、酸素吸収剤に含まれる酸化促進剤がナトリウム塩である脱酸素剤包装体により、密閉系容器内の酸素濃度を速やかに0.1容量%未満に到達させることができた。これに対し、比較例1および比較例2のように、酸素吸収剤に含まれる酸化促進剤がカルシウム塩である脱酸素剤は、密閉系容器内の酸素濃度を0.1容量%未満に到達させるためにより長い時間を必要とした。
【0088】
また実施例1のように、通気性包装材のガーレ式透気度が60秒/100mLである脱酸素剤包装体により、密閉系容器内の酸素濃度を速やかに0.1容量%未満に到達させることができた。これに対し、比較例3のように、通気性包装材のガーレ式透気度が120秒/100mLである脱酸素剤包装体では、密閉系容器内の酸素濃度を0.1容量%未満に到達させるためにより長い時間を必要とした。
【0089】
以上より、本発明の脱酸素剤包装体によれば、炭酸ガス共存下、または低温下などの一般に脱酸素するには過酷な条件下であっても、脱酸素を高速で行うことができることが確認された。
【符号の説明】
【0090】
10…包装材、11…収納部、12A…横シール,12B…縦シール、30…容器、40…蓋部、100…脱酸素剤包装体、200…連包体、220…カバーフィルム、300…カバーフィルム付き連包体、400…生肉入り密閉容器、410…密閉容器、M…生肉。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱酸素剤組成物と、前記脱酸素剤組成物を収納する通気性包装材を有する包装材とを備える脱酸素剤包装体であって、
前記脱酸素剤組成物が、鉄粉100質量部に対して、ハロゲン化ナトリウムを0.1〜20質量部、水を20〜80質量部、活性炭を0.01〜130質量部配合させてなり、
前記通気性包装材が60秒/100mL以下のガーレ式透気度を有する、脱酸素剤包装体。
【請求項2】
ハロゲン化ナトリウムが塩化ナトリウムまたは臭化ナトリウムである請求項1記載の脱酸素剤包装体。
【請求項3】
脱酸素剤組成物と、前記脱酸素剤組成物を収納する通気性包装材を有する包装材とを備える複数の脱酸素剤包装体を一定方向に沿って帯状に連ねてなる脱酸素剤包装体の連包体であって、
前記脱酸素剤組成物が、鉄粉100質量部に対して、ハロゲン化ナトリウムを0.1〜20質量部、水を20〜80質量部、活性炭を0.01〜130質量部配合させてなり、
前記通気性包装材が60秒/100mL以下のガーレ式透気度を有する、脱酸素剤包装体の連包体。
【請求項4】
ハロゲン化ナトリウムが塩化ナトリウムまたは臭化ナトリウムである請求項3記載の脱酸素剤包装体の連包体。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の脱酸素剤包装体の連包体と、
前記脱酸素剤包装体の前記通気性包装材の各々を覆うように設けられるカバーフィルムとを備えるカバーフィルム付き連包体であって、
前記カバーフィルムのガーレ式透気度が、前記通気性包装材のガーレ式透気度よりも大きい、カバーフィルム付き連包体。
【請求項6】
生肉と、請求項1又は2に記載の脱酸素剤包装体とを密閉容器中に密封包装してなる生肉入り密閉容器であって、
前記密閉容器内の雰囲気が、二酸化炭素濃度が20〜50容量%である、生肉入り密閉容器。
【請求項7】
請求項6記載の生肉入り密閉容器を−10〜5℃の温度で保存することにより生肉を保存する生肉の保存方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−57265(P2011−57265A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209996(P2009−209996)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】