説明

脱酸素剤組成物

本発明の脱酸素剤組成物は、一般式CaO・mSiO・nHO(但し、mは1.6〜6.5、nは正の数)で示され、ジャイロライト型珪酸カルシウムと無定型の二酸化珪素からなる湾曲した板状結晶が集合した花冠状の結晶構造を有する珪酸カルシウム系化合物からなる担体100重量部と、前記担体に担持された210重量部を超える量の有機系易酸化性組成物とを含有する。本発明の脱酸素剤組成物は、流動性が大きいので、脱酸素剤包装体の生産性に優れ、単位容積当たりの酸素吸収量が大きく、コンパクトな形状の脱酸素剤包装体とすることが可能である。また、鉄成分が不純物として混入することが避けられるので、金属探知器に検出されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は脱酸素剤組成物に関する。詳しくは、有機物を主剤とする有機系脱酸素剤組成物に関する。
【背景技術】
食品、医薬品などの保存技術の一つとして脱酸素剤による技術があり、カビ防止、酸化防止、変色防止などに使用されている。脱酸素剤は、通常、易酸化性組成物を通気性包装材料からなる小袋等に連続的に充填包装した脱酸素剤包装体として製造され、食品、医薬品などの保存物品とともに酸素を透過しにくい袋、容器などのガスバリア性包装体に収納して保存される。脱酸素剤としては、鉄などの易酸化性無機物を主剤とするもの、アスコルビン酸化合物、多価フェノール化合物、不飽和炭化水素化合物などの易酸化性有機物を主剤とするものなどが知られている。
鉄などの易酸化性無機物を主剤とする所謂無機系脱酸素剤は、食品・医薬品などの保存物品に適用した場合、金属性異物の混入を検査するために金属探知器を使用すると、これに感応する。この場合には、金属探知器に不感な有機物を主剤とする所謂有機系脱酸素剤が用いられている。
有機系脱酸素剤は、通常、主剤の有機物の他に酸素吸収活性、酸素吸収速度の調整、充填性などの粉体特性の改良のため、例えば、特開平5−269376号公報に記載されているように、無機フィラーがともに用いられている。特に、液状の有機系脱酸素剤は、無機担体に担持されるが、天然物由来の無機担体には、酸化鉄などの鉄成分が不純物として含有されている場合があり、食品包装に適用する際には安全管理用の金属探知器に感応することがある。これを防ぐためには、天然物無機担体を酸洗浄して鉄成分の除去を行う方法が提案されている。
一方、天然物無機担体の代わりに、鉄成分が含まれない高純度の化学合成した無機担体を使用することが出来る。しかし、通常の合成無機担体は、粒度が小さく、微粉性のものが多く、その結果、充填時の流動性が悪いために、充填時に粉立ちが発生するといった問題点、また、液状の有機系脱酸素剤の担持量に限界があるために、単位容積あたりの脱酸素能力が鉄系脱酸素剤に比較してかなり低いといった問題点がある。
易酸化性組成物を通気性包装材料からなる小袋等に充填包装した脱酸素剤包装体では、脱酸素剤組成物容量当たりの易酸化性組成物の含有量が小さいと、目的とする酸素吸収量に対し多量の脱酸素剤組成物を使用せざるを得ず、その結果、脱酸素剤包装体一包当たりの通気性包装材料の使用量が増大してコストが嵩むといった問題点がある。
また、有機系易酸化組成物の易酸化物主剤として特にアスコルビン酸系化合物を用いた場合、この酸化反応を促進させる担体として活性炭が知られている。しかし、活性炭を担体に使用すると活性炭の粉立ちが発生し易く、これが脱酸素剤包装体の表面に付着した場合には、保存物品に再付着して外観を悪くするといった問題点がある。
【発明の開示】
本発明は、上記の問題点を解決し、金属探知器に検知されず、更に、多量の有機物を担持することができ、単位容積あたりの脱酸素能力が優れた、有機物を主剤とする脱酸素剤組成物を提供することを目的とする。単位容積あたりの脱酸素能力が優れた脱酸素剤は、酸素吸収量に比較して容量をとらないので、包装材料の使用量が低減される。
本発明者らは、上記の問題点の解決について鋭意研究を重ねた結果、一般式:
CaO・mSiO・nH
(但し、mは1.6〜6.5、nは正の数)で示され、花冠状の結晶構造を有する珪酸カルシウム系化合物からなる担体は、その100重量部に対して210重量部を超える量の有機系易酸化性組成物を担持することができること、および、そのような多量の有機系易酸化性組成物を担持した珪酸カルシウム系化合物は、単位容積あたりの総脱酸素量、脱酸素速度及び取り扱い性に優れた、有機物を主剤とする脱酸素剤組成物であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
特に、本発明の脱酸素剤組成物は、多量の有機系易酸化性組成物を担持しているために、単位容積あたりの脱酸素能力が大きい。そのため、脱酸素剤組成物を通気性包装材料で包装してなる脱酸素剤包装体のサイズを小さくすることができ、使用する通気性包装材料の使用量も小さくすることができるので、工業的に実施をする上で重要である。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例1で使用した原末結晶構造の走査電子顕微鏡写真(約15,000倍)である。
【発明を実施するための最良の形態】
珪酸カルシウム系化合物としては、約25種類の結晶性珪酸カルシウム系化合物と非晶性珪酸カルシウム系化合物が知られている。一般式:
CaO・mSiO・nH
で表される珪酸カルシウム系化合物のうち、SiO/CaOのモル比が1.0〜1.5の領域では、ゾノトライト(Xonotlite)型、トバモライト(Tobermorite)型、ジャイロライト(Gyrolite)型などの結晶がある。
本発明おいて、有機系易酸化性組成物を担持するための担体として使用する珪酸カルシウム系化合物は、一般式:
CaO・mSiO・nH
(但し、mは1.6〜6.5、nは正の数)で示され、花冠状の結晶構造を有する珪酸カルシウム系化合物である。
SiO/CaOのモル比mは、1.6〜6.5であり、1.7〜4.2が好ましく、2.0〜3.0がより好ましく、2.0〜2.5が最も好ましい。HO/CaOのモル比nは、正の数であり、1.0以上が好ましく、1.0〜1.5がより好ましい。
本発明で使用する珪酸カルシウム系化合物は、ジャイロライト型珪酸カルシウムと無定型の二酸化珪素からなる湾曲した板状結晶(花弁状結晶)からなり、これらの結晶が集合して花冠状の結晶構造となった、高度に空隙の発達した多孔質の粉体である。この珪酸カルシウム系化合物は、特異的に吸水量が高く、圧縮成型性に優れた粉末として、化学的に合成される。
本発明で言う花冠状の結晶構造とは、花弁状、即ち湾曲した板状結晶が不規則に集合して形成された、バラの花に似た結晶構造(図1)であり、薄片が一定の方向ではなく多方向に成長した集合体からなるものを言う。花冠状の結晶構造を構成する花弁状結晶の大きさ及び形状は、使用する原料の種類、原料混合比、製造条件などによって幅があるが、一般には長手方向の径が0.1〜30μm、厚みが0.005〜0.1μm程度の円状、楕円状である。本発明でいう径とは、球状、角柱状、円柱状その他の形状からなる粒子の最大長を意味する。珪酸カルシウム系化合物の結晶構造は、図1に示したように、1万倍前後の走査電子顕微鏡写真により確認できる。
本発明で使用する花冠状珪酸カルシウム系化合物は、ジャイロライト型結晶構造に起因する大量の細孔を有する。このことが、珪酸カルシウム系化合物が優れた保水性を有する理由であると推定される。
珪酸カルシウム系化合物は、珪酸ナトリウム又は珪酸カリウム等の水溶性珪酸塩と、塩化カルシウム、硝酸カルシウム又は水酸化カルシウム等の水溶性カルシウム化合物とを5〜100重量倍、好ましくは15〜70重量倍の水性媒体中で反応させた後、150〜250℃で1〜50時間水熱反応させることにより、水不溶性粉末状として得られる。反応させるに際しては、例えばpHを調節することにより、不溶の二酸化珪素をジャイロライト型珪酸カルシウムの形成と同時に存在させる。不溶の二酸化珪素の存在が、花弁状及び花冠状の結晶構造の形成に寄与する(特開昭54−93698)。
本発明においては、化学合成された珪酸カルシウム系化合物を造粒して粒状物にし、これを乾燥させて担体として使用することが好ましい。造粒により包装袋に充填する際の脱酸素剤組成物粉末の飛散が抑制される。造粒の方法は、パンチングプレートに通す方法、転動による方法等を採ることができる。粒状物の平均粒子径は、一般に100μm以上が好ましく、100μm〜15mmがより好ましく、300μm〜10mmがさらに好ましい。特に好ましい粒子径は、球状に近い粒子であれば、100μm〜5mmであり、角柱状、円柱状その他の細長い形状からなる粒子であれば、500μm〜7mmである。平均粒子径100μm未満の粒子は、流動性が不十分であり、高速充填機による脱酸素剤自動包装に適さない。
造粒の際には、バインダーを添加しても良い。適当なバインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、ポリウレタンなどの合成高分子化合物、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの可溶性セルロース化合物、グアーガム、キサンタンガム、トラガントガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウムなどの天然高分子化合物などが挙げられる。バインダーを添加する場合、その使用量は、珪酸カルシウム系化合物100重量部(水分を除く)当たり、0.01〜20重量部、好ましくは、0.05〜10重量部、さらに好ましくは、0.5〜5重量部である。
造粒の際には、脱酸素反応を促進させたり、脱酸素反応により発生した臭気成分を除去するための添加物を添加しても良い。添加物としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、鉄塩、マンガン塩、銅塩、コバルト塩などの遷移金属塩触媒、炭酸塩、重炭酸塩などの炭酸ガス調整剤、シリカゲル、ゼオライトなどの吸着材、エチレン尿素、スルファミン酸などのアルデヒド除去剤が挙げられる。
更に、必要に応じて脱臭剤、流動性改良剤としての粉末フィラーなどを添加しても良い。添加の方法は、担体表面を被覆したり、別粒子として混合することも可能である。
また、化学合成された珪酸カルシウム系化合物を活性炭と共に混合造粒して平均粒子径100μm以上の粒状物にし、これを担体として使用することができる。造粒操作により、流動性が良く、粉立ちせず、包装材料への充填取り扱い性が良好で、かつ充填密度が高い脱酸素剤組成物が得られる。珪酸カルシウム系化合物と共に混合造粒担される活性炭は、椰子殻炭、木質炭、石炭系等の一般的に使用される活性炭である。本発明に使用される活性炭の形状は特に限定されるものではないが、珪酸カルシウム系化合物との混合性を考えた場合、平均粒子径10〜100μmの粉末状のものが好適に用いられる。
本発明において、活性炭と珪酸カルシウム系化合物の混合比は、活性炭の混合比を上げるほど脱酸素速度が増大し、特に低温においても比較的高い脱酸素速度が得られる。活性炭と珪酸カルシウム系化合物の混合比は、目的とする酸素吸収速度と酸素吸収容量によっても変わってくるが、珪酸カルシウム系化合物100重量部に対して、活性炭10〜150重量部が好ましく、活性炭30〜100重量部がより好ましい。活性炭の配合比が大きすぎると、易酸化性組成物の含浸可能量が低下するため、脱酸素剤組成物容量当たりの総酸素吸収量が小さくなりすぎる。活性炭の配合比が小さすぎると、脱酸素速度の増大効果が小さくなる。
本発明において、有機系易酸化性組成物の使用量は、前記担体100重量部に対して210重量部以上、担持する。これにより容量が小さくても酸素吸収量が大きい優れた脱酸素剤を得ることができる。有機系易酸化性組成物は、より多く担体に担持した方が良く、本発明の担体100重量部に対して、240重量部以上を担持させることが好ましい。本発明の担体100重量部に対する担持量の上限は、通常450重量部、好ましくは400重量部である。工業的には、良好な流動性が維持される限界となる易酸化性組成物添加量を求め、この易酸化性組成物限界添加量の9割程度に相当する量を配合することが好ましい。
担持の方法は、乾燥させた担体に液体状の易酸化性組成物を含浸する。また、担体の調製を液体状の易酸化性組成物を含浸させながら行う方法、担体の造粒を液体状の易酸化性組成物を含浸させながら行う方法が適宜用いられる。
本発明において、担体に担持する有機系易酸化性組成物は、脱酸素剤の主剤である有機化合物、この有機化合物主剤を化学的に酸化され易い状態にするための添加物及び、所望により、水との混合物からなる。有機系易酸化性組成物は、水溶液状、スラリー状または油状の液体にして担体に含浸させることができるが、均一な溶液状であることが好ましい。
脱酸素剤の主剤である易酸化性有機化合物としては、例えば、アスコルビン酸及びその塩;エリソルビン酸及びその塩;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール;グルコース、キシロースなどの単糖類;キシリトール、マンニトール、ソルビトールなどの糖アルコール;カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、没食子酸、ピロガロール及びトコフェロールなどの多価フェノール化合物;植物油、魚油、トール油などの不飽和油脂及びこれらの不飽和脂肪酸;ブタジエンオリゴマー、イソプレンオリゴマーなどの不飽和結合を有する重合物を挙げることが出来る。酸素吸収性能、入手しやすさ、価格などの点から、アスコルビン酸及びその塩、没食子酸並びにブタジエンオリゴマーが好ましく、アスコルビン酸及びその塩がより好ましく用いられる。
上記の有機化合物を化学的に酸化され易い状態にするための添加剤としては、アルカリ金属化合物もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩などのアルカリ剤鉄塩、マンガン塩、銅塩、コバルト塩などの遷移金属塩触媒、などが挙げられ、この中から適宜1種ないしは数種を選択して用いればよい。
担体に担持する易酸化性有機物は、担持量が多いほど酸素吸収性能が増加し好ましい。このため、易酸化性有機物と水の割合は、溶解度、溶解液の粘度にもよるが、易酸化性有機物が析出しない範囲で出来るだけ高濃度である方が好ましい。アスコルビン酸(塩)を易酸化性有機物として使用する場合は、アスコルビン酸(塩)100重量部に対して、水60〜200重量部、アルカリ剤1〜35重量部、遷移金属塩触媒5〜30重量部を配合してなる易酸化性組成物が好適である。多価アルコールを易酸化性有機物として使用する場合は、多価アルコール100重量部に対して、水15〜115重量部、遷移金属塩触媒3〜6重量部を配合してなる易酸化性組成物が好適である。また、添加物量は易酸化性有機物や用いる添加剤によって最適濃度は変わってくるが、添加剤の割合を高濃度にするほど酸素吸収能力は向上し好ましいが、保存安定性や大気下での取り扱い時に失効するという問題、コストへの影響が大きくなると言った問題があるため添加量を増やし過ぎることは好ましくない。
本発明の脱酸素剤組成物は、これを通気性包装材料で包装して脱酸素剤包装体として用いることができる。通気性包装材料は、紙、樹脂フィルム、不織布、開孔した樹脂フィルム、又は、これらの積層体が使用される。本発明の脱酸素剤組成物を通気性包装材料で包装してなる脱酸素剤包装体は、脱酸素剤組成物が多量に包装された大型の脱酸素剤包装体であっても金属探知器に検知されることがない。
以下に実施例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
本発明で用いた実験方法を以下に記載する。
(1)流動性測定
JIS K−6721に定める器具である漏斗を脱酸素剤組成物が円滑に落下する場合を流動性良好(A)とし、落下が中断する場合または全く落下しない場合を流動性不良(B)とした。
(2)金属探知器適性測定
脱酸素剤組成物20gをポリエチレン袋に充填し、0.6mmφの鉄球を検知し、0.5mmφの鉄球を検知しない条件に調整した金属探知器(アンリツ工業(株)製)にかけた。検知されない場合を(A)、検知された場合を(B)とした。
(3)総脱酸素量測定
脱酸素剤組成物2gを、開孔ポリエチレン/紙/開孔ポリエステルをこの順にラミネートした包装材料を用いて開孔ポリエチレンを内側にして形成した袋内に開口部から充填し、開口部を熱シールにより閉じて脱酸素剤包装体とした。この脱酸素剤包装体をポリエステル/アルミ箔/ポリエチレンの積層体からなるガスバリアー性袋内に過剰量の湿潤空気(2L)とともに封入し、25℃又は5℃下に十分な時間(7日間)放置して酸素吸収させた後、ガスバリアー性袋内酸素濃度をガスクロマトグラフにより分析して、酸素濃度の減少から脱酸素剤組成物の見かけ容量(1mL)当たりの酸素吸収量(mLO)を総脱酸素量として算出した。
(4)初期脱酸素速度測定
25℃又は5℃下にて4時間放置した他は前記操作と同様の操作を行い、酸素濃度の減少から、脱酸素剤組成物の見かけ容量(1mL)当たりの初期4時間の酸素吸収量を求め、初期1時間平均の脱酸素量を初期脱酸素速度として算出した。
【実施例1】
平均粒子径25μmの、ジャイロライト型珪酸カルシウムと無定型二酸化珪素からなる花冠状の湾曲板状結晶からなる珪酸カルシウム系化合物粉体((株)トクヤマ製、商品名フローライトR;以下、「原料粉末」という)0.5kgと水1.8L及びバインダーとしてポリ酢酸ビニルエマルジョン50%水溶液0.08kgを混合後、直径1.0mmの円形開孔を施したパンチングプレートから押し出し造粒し、短径1.0mm、長さ2〜5mmの円柱状粒状物2.3kgを得た。これを整粒機に通した後、流動層乾燥機を用い、100℃で30分間、実質的に水分を含まなくなるまで熱風乾燥して0.6kgの担体1を得た。
なお、原料粉末は、CaO・mSiO・nHO(mは2.0〜2.5、nは1.0〜1.5)の一般式で表され、SiO:56〜63wt%、CaO:20〜27wt%、Al:0.3〜0.6wt%、NaO:0.2〜0.6wt%、Fe:0.1wt%未満の化学組成であった。
一方、アスコルビン酸ナトリウム45%水溶液10kgに硫酸第一鉄7水塩0.8kg、炭酸ナトリウム1.0kgを溶解して水溶液状の易酸化性組成物を用意した。
前記担体1の一部に前記易酸化性組成物を少量ずつ添加、混合しながら含浸し、添加量の異なる脱酸素剤組成物を得た。添加量の異なる各脱酸素剤組成物の流動性を評価していって、流動性良好である限界となる易酸化性組成物の添加量を限界添加量として求めた。
次に、前記担体1を0.1kg使用し、これに前記限界添加量の90%に相当する、0.34kgの前記易酸化性組成物を少量ずつ添加、混合しながら含浸し、脱酸素剤組成物1を得た。
得られた脱酸素剤組成物1の流動性、金属探知器適性、総脱酸素量及び脱酸素速度を前記方法にて分析した。結果は、表1に示した。
【実施例2】
原料粉末0.4kg、粉末活性炭0.1kg、水1.7l及び50%ポリ酢酸ビニルエマルジョン0.08kgを混合後、実施例1と同様に造粒、乾燥し、0.6kgの担体2を得た。
次に、前記得られた担体2を0.1kg使用し、実施例1と同様に、これに易酸化性組成物限界添加量の90%に相当する0.28kgの前記易酸化性組成物を少量ずつ添加、混合しながら含浸し、脱酸素剤組成物2を得た。
得られた脱酸素剤組成物2の流動性、金属探知器適性、総脱酸素量及び脱酸素速度を前記方法にて分析した。結果は、表1に示した。
【実施例3】
原料粉末0.3kg、粉末活性炭0.2kg、水1.7l及び7%ポリビニルアルコール水溶液0.48kgを混合後、実施例1と同様に造粒、乾燥し、0.6kgの担体3を得た。
次に、前記得られた担体3を0.1kg使用し、実施例1と同様に、これに易酸化性組成物限界添加量の90%に相当する0.25kgの前記易酸化性組成物を少量ずつ添加、混合しながら含浸し、脱酸素剤組成物3を得た。
得られた脱酸素剤組成物3の流動性、金属探知器適性、総脱酸素量及び脱酸素速度を前記方法にて分析した。結果は、表1に示した。
比較例1
一次粒子径0.05μmの化学合成された粉末二酸化珪素(シオノギ製薬(株)製、商品名カープレックス)0.5kg、水1.8l及び50%ポリ酢酸ビニルエマルジョン0.08kgを混合後、実施例1と同様に造粒、乾燥し、0.6kgの担体4を得た。
次に、前記得られた担体Cを0.1kg使用し、実施例1と同様にして、これに易酸化性組成物限界添加量の90%に相当する0.20kgの前記易酸化性組成物を少量ずつ添加、混合しながら含浸し、脱酸素剤組成物4を得た。
得られた脱酸素剤組成物Cの流動性、金属探知器適性、総脱酸素量及び脱酸素速度を前記方法にて分析した。結果は、表1に示した。
比較例2
直径1mm、長さ2〜6mmの水分を実質的に含まない円柱状焼成珪藻土を0.1kg使用し、実施例1と同様に、これに易酸化性組成物限界添加量の90%に相当する0.10kgの前記易酸化性組成物を少量ずつ添加、混合しながら含浸し、脱酸素剤組成物5を得た。
得られた脱酸素剤組成物5の流動性、金属探知器適性、総脱酸素量及び脱酸素速度を前記方法にて分析した。結果は、表1に示した。
比較例3
天然珪酸カルシウムであるワラストナイト(Wollastonite)粉末0.1kgに前記易酸化性組成物を実施例1と同様に含浸させようとしたが、易酸化性組成物を少量加えた段階で全体が塊状になってしまい、流動性のある脱酸素剤組成物を調製することは到底できなかった。
比較例4
粒径150〜1000μmの粒状活性炭を0.1kg使用し、実施例1と同様に、これに易酸化性組成物限界添加量の90%に相当する0.19kgの前記易酸化性組成物を少量ずつ添加、混合しながら含浸し、脱酸素剤組成物6を得た。
得られた脱酸素剤組成物6の流動性、金属探知器適性、総脱酸素量及び脱酸素速度を前記方法にて分析した。結果は、表1に示した。

【産業上の利用の可能性】
本発明で使用する担体は、従来の担体と比べ液状の有機系易酸化性組成物を大量に含浸出来、しかも粉粒体としての流動性を保持する。その結果、単位体積当たりの酸素吸収能力を大きくすることができ、より小型で使いやすく、かつ包装材料コストの低減された脱酸素剤を得ることができる。
本発明の脱酸素剤組成物は、流動性が大きいので、取り扱いやすく、小袋への充填性、すなわち、脱酸素剤包装体の生産性に優れる。さらに、単位容積当たりの総酸素吸収量及び酸素吸収速度が大きいので、コンパクトな形状の脱酸素剤包装体とすることが可能になり、しかも金属探知器に検出されない脱酸素剤包装体を提供することが出来る。
担体が、珪酸カルシウム系化合物と活性炭との混合物からなる場合には、低温においても脱酸素速度の比較的高い非鉄系脱酸素剤組成物が提供される。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
CaO・mSiO・nH
(但し、mは1.6〜6.5、nは正の数)で示され、ジャイロライト型珪酸カルシウムと無定型の二酸化珪素からなる湾曲した板状結晶が集合した結晶構造を有する珪酸カルシウム系化合物からなる粒状物からなる担体100重量部と、前記担体に担持された210重量部を超える量の有機系易酸化性組成物とを含有することを特徴とする脱酸素剤組成物。
【請求項2】
前記有機系易酸化性組成物を、前記担体100重量部に対して240重量部を超える量、担持せしめてなる請求項1記載の脱酸素剤組成物。
【請求項3】
前記担体が、珪酸カルシウム系化合物100重量部及びバインダー0.01〜20重量部を混合造粒してなる粒状物である請求項1または2記載の脱酸素剤組成物。
【請求項4】
前記担体が、珪酸カルシウム系化合物100重量部、活性炭10〜150重量部及びバインダー0.01〜20重量部を混合造粒してなる粒状物である請求項1または2記載の脱酸素剤組成物。
【請求項5】
前記バインダーが、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、ポリウレタン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グアーガム、キサンタンガム、トラガントガム、カラギーナン、およびアルギン酸ナトリウムからなる群より選ばれた少なくとも一の化合物である請求項3または4記載の脱酸素剤組成物。
【請求項6】
前記式中、nが1.0〜1.5である請求項1〜5のいずれかに記載の脱酸素剤組成物。
【請求項7】
前記有機系易酸化性組成物が、易酸化性有機化合物、前記易酸化性有機化合物を化学的に酸化され易い状態にするための添加剤及び/又は水を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の脱酸素剤組成物。
【請求項8】
前記易酸化性有機化合物が、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、エリソルビン酸、エリソルビン酸塩、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、グルコース、キシロース、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、没食子酸、ピロガロール、トコフェロール、植物油、魚油、トール油、植物油由来の不飽和脂肪酸、魚油由来の不飽和脂肪酸、トール油由来の不飽和脂肪酸、ブタジエンオリゴマー、およびイソプレンオリゴマーからなる群より選ばれた少なくとも一の有機化合物である請求項7記載の脱酸素剤組成物。
【請求項9】
前記添加剤が、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、鉄塩、マンガン塩、銅塩、コバルト塩、炭酸塩、および重炭酸塩からなる群より選ばれた少なくとも一種である請求項7または8記載の脱酸素剤組成物。
【請求項10】
前記有機系易酸化性組成物が、アスコルビン酸(塩)100重量部に対して、水60〜200重量部、アルカリ剤1〜35重量部、遷移金属塩触媒5〜30重量部を配合してなる組成物である請求項7〜9のいずれかに記載の脱酸素剤組成物。
【請求項11】
前記有機系易酸化性組成物が、多価アルコール100重量部に対して、水15〜115重量部、遷移金属塩触媒3〜6重量部を配合してなる組成物である請求項7〜9のいずれかに記載の脱酸素剤組成物。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載の脱酸素剤組成物を通気性包装材料で包装してなる脱酸素剤包装体。

【国際公開番号】WO2004/033088
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【発行日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−542782(P2004−542782)
【国際出願番号】PCT/JP2002/010434
【国際出願日】平成14年10月8日(2002.10.8)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】