説明

脱酸素包装方法

【課題】包装方法から得られる包装体において脱酸素の効果が十分となり、包装方法の実施に必要な部材が簡単に得られると共に、包装方法自体の工程も簡単で、しかも酸素吸収材の誤飲誤食を生じるおそれのない包装体が得られる脱酸素包装方法を提案する。
【解決手段】内容物をトレイ1に載せ、次いで容器に収納し、しかるのち前記容器を密封する包装方法であって、前記トレイ1は酸素吸収性であり、前記容器はガスバリア性であることを特徴とする脱酸素包装方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を包装後に脱酸素状態に維持できる簡便な脱酸素包装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品などが収容された包装体内の酸素を除去するために、食品等を酸素吸収剤と共にガスバリア容器内に収容、密閉する脱酸素包装方法が多用されている。この包装方法は、内容物への酸素の影響を取り除くことにより、(a)酸素による油脂やビタミンの酸化・分解による風味、着色等の変化抑制、(b)カビや好気性菌等による変敗防止、(c)青果物等の追熟防止などが可能となるため、従来の塩蔵、砂糖漬けなど水分活性の調整、バリア性フィルム使用による真空包装やガス置換包装等に替わる包装方法として注目されている。
【0003】
ところで酸素吸収剤は、形状の違いによる分類から、酸素吸収性組成物を構成する各成分を配合し、通気性を有する小袋等に充填した小袋タイプや、組成物を熱可塑性樹脂等と混練したものを単層でシート化したシート(カード)タイプや、組成物を熱可塑性樹脂等と混練した層をガスバリア層等と共に多層化したフィルム、シートを容器に成形した容器タイプ等が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、鉄系脱酸素剤組成物を熱可塑性樹脂とを混練しシート化してなるシート状酸素吸収剤を、食品と共に、マイクロ波耐性を有するガスバリア性容器内に収納、密封し、マイクロ波加熱処理した後保存することを特徴とする脱酸素包装方法が開示されている。この包装方法は、脱酸素剤による酸化防止とマイクロ波による殺菌により、劣化または腐敗を起こしやすい食品に対して極めて有効な優れた包装方法である。
【0005】
また、特許文献2には、少なくとも一部が脱酸素多層体からなる酸素吸収性を有する包装容器に食品を充填し、真空・不活性ガス置換包装または不活性ガスフラッシュを行い、完全密封後、加熱処理を施して、殺菌と脱酸素とを同時に行うことを特徴とする脱酸素包装方法が開示されている。この包装方法は、予めガス置換包装または不活性ガスフラッシュして容器内の酸素濃度を一定濃度以下に下げておくことにより、次いで加熱処理を行った際に酸素吸収性能が向上して完全な脱酸素を行い、残留酸素に基づく食品の酸化劣化を防ぐ優れた脱酸素包装方法であると言える。
【0006】
しかしながら、これら従来技術の脱酸素包装方法は、いずれも酸素吸収剤の酸素吸収性能(酸素吸収速度および酸素吸収量)が充分でないために、酸素による内容物の腐敗および変敗を十分には抑制することができず、容器内の加熱処理が必須となるため、加熱が可能な内容物で、かつ内容物が水分を多く含む場合にしか適用できないといった問題があった。また、包装方法に使用する容器等の部材の構造が複雑であったり、包装方法自体の工程数や使用する部材数が多かったり、特別な設備を要する等の難点も指摘されていた。
【0007】
また、酸素吸収剤の形状が小袋状、シート状などの場合は、内容物が食品の場合、誤飲・誤食の恐れがあったり、酸素吸収剤が容器と一体化した場合には、酸素吸収速度が遅いため、容器内の酸素を除去するのに一定の時間を要してしまい、内容物の品質保持効果が十分ではないといった問題があった。
【特許文献1】特開2000−255647号公報
【特許文献2】特開2002−238521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、包装方法から得られる包装体において脱酸素の効果が十分となり、包装方法の実施に必要な部材が簡単に得られると共に、包装方法自体の工程も簡単で、しかも酸素吸収材の誤飲誤食を生じるおそれのない包装体が得られる脱酸素包装方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、内容物をトレイに載せ、次いで容器に収納し、しかるのち前記容器を密封する包装方法であって、前記トレイは酸素吸収性であり、前記容器はガスバリア性であることを特徴とする脱酸素包装方法である。ここで、前記トレイは、表面に複数の凹凸又は孔を有することは好ましい。また、前記トレイは、酸素吸収剤が表面に塗布されたものであることは好ましい。また、前記の酸素吸収剤は、アルミニウム金属単位とアルミニウム化合物単位とを含むものであることは好ましい。また、前記トレイは、酸素吸収性有機物と酸素吸収の助剤とを含有するものであることは好ましい。
【発明の効果】
【0010】
内容物を酸素吸収性を有するトレイと共にガスバリア性容器に収容、密封することで、内容物への酸素の影響を簡便に取り除くことができる。そのため、内容物の色調、品質が良好に保持されたまま、内容物の長期間の保存が可能となる。また、誤飲・誤食のおそれが生じない。また、使用する部材の製造が簡単で、かつ部材数が少なくてすむから、包装工程に手間がかからず包装設備も簡略化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明の食品の保存方法では、内容物を酸素吸収性を有するトレイに載せ、これをガスバリア性容器内に収容し、しかるのち密封する。
【0012】
本発明で使用する酸素吸収性を有するトレイは、内容物を載せ、商品の美粧性を向上させる効果と、ガスバリア性容器内の酸素を吸収し食品の酸素による劣化を防止する効果を有する。トレイの材質は、安全性の観点より食品接触が可能な材料であるほうが好ましいが、例えば紙製、樹脂製、あるいはこれらの組み合わせなどが挙げられる。紙製トレイに用いうる紙としては、例えば、和紙、洋紙、ボール紙、段ボール等が挙げられる。また、和紙、洋紙、ボール紙、段ボール、不織布等を樹脂製フィルム等でラミネートした物を使用しても良い。
【0013】
樹脂製トレイに用いうる樹脂としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、セルロースアセテート樹脂等が挙げられ、熱硬化性樹脂としてはユリア樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。用いられる樹脂は、これらの樹脂の単独でもよいし、複数種を混合した樹脂であっても良い。また、樹脂とする前の単量体を混合してから重合し、共重合体樹脂としても良い。
【0014】
トレイの形状は、これらの紙、樹脂等より構成される単層または多層構成等のフィルムまたはシートをトレイの形状に成形するのであるが、単層または必要により多層のシートから真空成形または圧空成形等により適宜成形すればよい。トレイは、場合により表面に設ける酸素吸収のための表面塗布層等を除いて、単層の単純なトレイとするのが、製造方法が簡便となり好ましい。
【0015】
トレイの成型にあたっては、酸素吸収性能を向上させるために、トレイに凹凸となる部分を形成したりトレイに孔を空けたりして、トレイの表面積を増大させることが好ましい。凹凸部分と孔とを併用しても良い。一般にトレイは、実用上必要な一定の大きさと皿形状だけを有していれば良く、細かい形状に関する制限が比較的少ない。そのため、比較的自由に凹凸や孔を設けることができ、酸素吸収に寄与する表面積を著しく増大せしめることが可能である。また、凹凸はトレイの上面(内容物を直接載せる面)に設けても、底面(トレイを台上に普通に置いた場合に台に接する面)に設けても良く、両方に設けても良い。また、側壁に設けることも可能である。これにより、トレイの外観や重量や内容物収容の機能をほとんど変化させずに酸素吸収性能を著しく向上できるため好ましい。
【0016】
このように、トレイ自体が酸素吸収材として機能することで、従来のような小袋タイプや容器タイプの酸素吸収剤では困難な、特別な製造設備や複雑な構造の酸素吸収材を必要としない、簡便な包装方法が実現できるようになる。また、酸素吸収材の誤飲や誤食も生じない。また、トレイは、その全表面から単に酸素を吸収するだけでよく、酸素バリヤ層や酸素透過層などを複合的に設ける必要がないため単純な構造とすることができ、製造も容易である。
【0017】
なお、トレイの高さは、収容する食品のずれを防止する観点より、0.5mm以上であることが好ましく、食品のボリューム感を損なわない観点より、収容する食品の高さの1.5倍以下であることが好ましい。
【0018】
次に、酸素吸収性トレイについて具体的に説明する。トレイの酸素吸収性能とは、トレイの酸素吸収量および酸素吸収速度を意味する。トレイの酸素吸収性能は高いほど好ましいのであるが、内容物への酸素の及ぼす影響を出来るだけ最小限にする観点から、内容物が腐敗しやすいものであったり(例えば、水分活性が0.85以上)、易酸化性であったりする場合に対応できるようにするため、特にガスバリア容器内の酸素濃度を24時間以内に1%以下にできる性能を有していることが好ましい。例えば、酸素吸収性を有するトレイ1個を内容物および1000ccの空気と共にガスバリア容器内に密封した場合に、トレイに要求される好ましい酸素吸収性能は、24時間以内に200cc以上の酸素ガスを吸収できることである。また酸素吸収性能は、ガスバリア容器内の酸素濃度を12時間以内に1%以下にできるものがより好ましい。なお、ここに言う酸素ガスの体積は、およそ1013hPa、23℃の状態で測定した体積で説明している。
【0019】
トレイに酸素吸収性を付与させる方法としては、例えば、(1)酸素吸収剤そのものをトレイにする方法、(2)酸素吸収剤をトレイの材質に混練する方法、(3)酸素吸収剤をトレイ表面に塗布あるいは担持させる方法が挙げられる。
【0020】
(1)酸素吸収剤そのものをトレイにする方法は、例えば酸素吸収剤が樹脂系酸素吸収剤の場合に用いることができ、酸素吸収剤をそのままトレイの形状に成形する方法である。この方法では、トレイを構成するすべての酸素吸収剤が理論上の酸素吸収能力まで酸素を吸収する為には時間がかかるため、他の態様に比べコスト的には劣るが、容器内の酸素吸収量が多いといった特徴を有する。
【0021】
(2)酸素吸収剤をトレイの材質に混練する方法としては、酸素吸収剤を構成する各成分をトレイを構成する少なくとも一つの層の材質に、均一に混合、錬合、付着、含浸することによって得られるフィルム、シート等をトレイの形状に成形して用いるのであるが、この酸素吸収剤を含む層は、単層で用いるのが簡便で好ましいが、2層以上にして設けても良い。
【0022】
また、酸素吸収性を有するトレイとして必要な諸性質を補強、改善する目的で、酸素吸収剤を含む層に他の層を積層してもよい。例えば、酸素吸収剤が金属系酸素吸収剤の場合、金属の酸化による錆等の溶出を抑える目的で、内容物とトレイが接触する面に紙、樹脂等より構成される層を積層するなどしても良い。この際、樹脂層としては、酸素吸収剤の酸素吸収反応を円滑に行う目的で、酸素ガス透過速度が5000ml/m2/day/MPa以上、ならびに、JISZ0208−1976(温湿度条件B)による透湿度が500g/m2・24hr以上である樹脂であることが好ましい。
【0023】
ここで樹脂層に用いられる樹脂としては、熱可塑性樹脂や水溶性高分子等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、セルロースアセテート樹脂等が挙げられ、熱硬化性樹脂ではユリア樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、これらの単独樹脂または共重合樹脂等が挙げられる。
【0024】
また、水溶性高分子としては、親水性天然高分子又はその誘導体(澱粉、コーンスターチ、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、グアーガム、ローカストビーンガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、ペクチン、マンナン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン、デキストリン、キサンタンガムなど)、セルロース誘導体(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルローススルフェート、シアノエチルセルロースなど)、ビニルアルコール系重合体(ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体など)、エチレン系重合体(エチレン−無水マレイン酸共重合体など)、酢酸ビニル系共重合体(酢酸ビニル−アクリル酸メチル共重合体など)、ポリアルキレンオキサイド(ポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロック共重合体など)、カルボキシル基又はスルホン酸基を有する重合体又はその塩[ポリ(メタ)アクリル酸又はその塩、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、アクリル酸−ポリビニルアルコール共重合体など]、ビニルエーテル系重合体(ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテルなどのポリビニルエーテルアルキルエーテル、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体など)、スチレン系重合体(スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムなど)、窒素原子含有重合体(ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム塩、ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート塩酸塩などのカチオン性重合体又はその塩、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなど)、ポリウレタン系重合体、ポリエステル系重合体などが挙げられる。またトレイ内に存在する酸素吸収剤は、酸素吸収性能の観点より、トレイ重量に対して1重量%以上90重量%以下であることが好ましい。
【0025】
(3)酸素吸収剤をトレイ表面に塗布あるいは担持させる方法は、酸素吸収剤が、例えば、溶液あるいはペースト状の場合に用いることができる方法である。この方法により得られたトレイは、トレイ表面に酸素吸収剤が露出しているので、小袋タイプと同様の酸素吸収性能を有し、上記の2つの態様と比べて、酸素吸収剤の性能を効率良く活用できる。さらに、酸素吸収剤に各種色素、バインダー等を混練し酸素吸収剤をインキのように使用すれば、トレイに美粧性を付与できる方法であり、最も好ましい様態である。トレイには、酸素吸収性の観点より、トレイの全表面積において酸素吸収剤が含有されていることが最も好ましいが、美粧性、食品と、食品とトレイとが接触したときの安全性の観点より、少なくともトレイの内容物と接触しない面の一部に酸素吸収剤が塗布あるいは担持されていることがより好ましい。また、酸素吸収速度の観点からは、酸素吸収剤がトレイ表面積の10%以上100%以下の範囲に塗布あるいは担持されていることがより好ましい。
【0026】
トレイ表面に酸素吸収材を塗布あるいは担持させるには、通常のコーティングによって塗布しても良いし、トレイを酸素吸収材溶液に浸漬したり、トレイに酸素吸収材溶液を噴霧したり、刷毛塗りしたりし、しかるのち乾燥させることで容易に得ることができる。
【0027】
次に、酸素吸収剤について説明する。酸素吸収剤は、ガスバリア性容器内の酸素を吸収する物質であり、酸素と反応する物質である主剤の違いから、金属系、低分子量有機化合物系、樹脂系に分けられる。
【0028】
金属系酸素吸収剤としては、例えば鉄、アルミニウム、亜鉛、銅、マグネシウム、マンガンなどの金属単位を主剤としたものが挙げられる。なお、金属単位とは、金属の微粒子、金属の粉末、金属の繊維等の、他の物と任意の比率で混合できる状態のものを意味する。低分子量有機化合物系酸素吸収剤としては、例えばビタミンC、ビタミンEなどのビタミン、ヒンダードフェノールのBHT、没食子酸、ピロガノールなどのポリフェノール、2重結合を含む不飽和油脂などが挙げられる。
【0029】
樹脂系酸素吸収剤としては、例えば分子中に炭素−炭素不飽和結合を有するポリオレフィンオリゴマーセグメントを結合したポリエステル系、ポリアミド系などの重縮合系樹脂、ポリオレフィン系またはビニル系付加重合体等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのアルキレングリコールと芳香族二塩基酸からの(共)重縮合体あるいはポリカーボネート、ポリアリレートなどの重縮合体等が挙げられる。ポリアミド系樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等の脂肪族ポリアミド類、ポリキシレンジアミンアジパミド(MXD6)等の芳香族ポリアミド類が挙げられる。ポリオレフィン系またはビニル系付加重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン/イソプレンコポリマー、スチレン/ブタジエン(SB、SBS)コポリマー等が挙げられる。
【0030】
上記のうち、実用性の観点から、金属系、樹脂系が好ましく、酸素吸収性の観点より、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、ポリアミド系重合体、ビニル系重合体がより好ましい。もっとも好ましい酸素吸収剤はアルミニウムまたはビニル系重合体を主剤とした酸素吸収剤である。なかでも、ビニル系重合体を主剤とした酸素吸収剤は、酸素吸収性能がガスバリア性容器内に存在する水分量に依存しないため、内容物が水分をほとんど含有しない場合や水分共存を嫌う場合(乾燥食品、医薬品、電子部材等)に好適に使用される。
【0031】
また、アルミニウムまたはビニル系重合体を主剤とした酸素吸収剤は、トレイに用いられて酸素吸収した場合に、酸素吸収剤の色が鉄剤のように赤黒く変化することがなく、酸素吸収後もトレイの白色が保持されて清潔感が維持できるため好ましい。また、これらは酸素吸収性能が高いため、トレイの限られた表面積から酸素吸収するにすぎなくとも、高い酸素吸収性能を有する酸素吸収性トレイが得られる点で好ましい。
【0032】
また、酸素吸収剤には、酸素吸収性能を向上させる目的で、助剤(添加剤、触媒)を添加しても良い。例えば、樹脂系酸素吸収剤には、樹脂中に遷移金属化合物を触媒量添加するのが好ましい。遷移金属化合物としては、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、ロジウム、ルテニウム、銀などの金属化合物が挙げられ、最も好ましくはコバルト化合物である。また金属系酸素吸収剤には、酸・アルカリ、金属化合物を添加するのが好ましい。例えば主剤がアルミニウムの場合、アルミニウム化合物を添加するのが好ましく、アルミニウム化合物としては、アルミニウム酸化物が好ましく、中でもベーマイトを添加するのが最も好ましい。特に酸素吸収剤がアルミニウム、ベーマイト、水から構成されている場合は、まったく意外にも、アルミニウム1gあたりの酸素吸収量が600ccにも達し、酸素吸収剤の使用量が少量であっても多量の酸素を吸収するため、上記「(3)酸素吸収剤をトレイ表面に塗布あるいは担持させる方法」を用いるのに特に好ましい態様である。また、アルミニウムを使用した酸素吸収剤は、酸素吸収の前後で色がわずかに変化する(灰色から白色)ため、インジケータとして併用することも可能である。
【0033】
また酸素吸収剤に光酸化開始剤、水素発生阻害剤、保水剤、pH調整剤、等を添加しても良い。例えば、酸素吸収剤の主剤がアルミニウムの場合、水素発生阻害剤としては、炭酸ガス、酸化銀、銀化合物、白金、チタン、ゼオライト、活性炭、硫化物、リン酸及びその塩、シュウ酸及びその塩、酒石酸及びその塩、珪酸及びその塩、安息香酸及びその塩、飽和直鎖第一アミン類(CH3(CH2nCH2NH2など)、飽和直鎖第二アミン類、飽和直鎖第三アミン類、芳香属アミン、チオ尿素類、イミダゾリン類、脂肪属アルデヒド、芳香属アルデヒドフェノール類、タンニン類等が挙げられる。中でも、炭酸ガス、酸化銀、銀化合物、白金、リン酸及びその塩、酒石酸及びその塩、珪酸及びその塩が好ましい。
【0034】
次にガスバリア性容器について説明する。ガスバリア性容器は、内容物を外気から遮断し、内容物が酸素ガスに触れ難いようにする。ガスバリア性容器は、ガスバリア性を有し、食品などの内容物とトレイとを内部に収容できて、外気から密封可能なものを意味し、たとえば、箱、袋、カップなどが挙げられる。
【0035】
ガスバリア性容器のガスバリア性は、酸素がガスバリア性容器外から容器内部に進入することを防止し、食品を長期保存する観点から、二酸化炭素ガス透過速度が1.0〜43350ml/m2/day/MPa、酸素ガス透過速度が1.0〜10000ml/m2/day/MPa、窒素ガス透過速度が1.0〜2850ml/m2/day/MPaの範囲内であることが好ましく、より好ましくは二酸化炭素ガス透過速度が1.0〜38500ml/m2/day/MPa、酸素ガス透過速度が1.0〜8000ml/m2/day/MPa、窒素ガス透過速度が1.0〜1480ml/m2/day/MPaである。さらに好ましくは二酸化炭素ガス透過速度が1.0〜12500ml/m2/day/MPa、酸素ガス透過速度が1.0〜3950ml/m2/day/MPa、窒素ガス透過速度が1.0〜760ml/m2/day/MPaである。
【0036】
また、ガスバリア性容器の材質としては、一般に容器に用いられる紙製、樹脂製、金属製(無機系)あるいはこれらの組み合わせが挙げられるが、食品用途に通常用いられるガスバリア性の材質が含まれていることが好ましい。その観点からは、無機系物質あるいはガスバリア樹脂より構成される単層からなる容器とするか、またはそれらを少なくとも1層含む多層構成として容器を構成するのがより好ましい。
【0037】
ガスバリア性容器を樹脂製とする場合、使用できる樹脂としては、例えばポリエチレン系樹脂(PE(HDPE、LLDPE等))、ポリプロピレン系樹脂(PP)、ポリブテン−1系樹脂(PB)、ポリ−4−メチルペンテン−1系樹脂をはじめとするポリオレフィン系樹脂(PO)、またはエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体樹脂(EMA等)、エチレン−ビニルアルコール系共重合体樹脂(EVOH等)をはじめとするポリオレフィン系樹脂変性物(PO変性物)、ポリエチレンテレフタレート系(含変性)樹脂(PET等)、ポリブチレンテレフタレート系(含変性)樹脂(PBT等)をはじめとする芳香族成分を一部含む、またはポリ乳酸系樹脂、ポリグリコール酸系樹脂をはじめとする脂肪族成分のポリエステル系樹脂(PEST)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(PVDC)、ポリ塩化ビニル系樹脂(PVC)をはじめとする塩素系樹脂、αオレフィン−一酸化炭素共重合樹脂(含同水添樹脂)、αオレフィン(例えば、エチレン等)−スチレン共重合樹脂(含同水添樹脂)、エチレン−環状炭化水素系化合物共重合樹脂(含同水添樹脂)、ポリアミド系樹脂(Ny)、カプロラクトン系樹脂、等が挙げられる。樹脂製ガスバリア性容器は、これらの少なくとも一種を主体とした樹脂組成物を単層とするか、もしくはこれらの複数を積層して用いて多層として容器としてもよい。なお、主体とするとは50質量%以上を占めることを言う。
【0038】
さらに、容器を構成する樹脂は、それ自体がガスバリア性の樹脂であるか、またはガスバリア性の樹脂を含んでいることが好ましい。そのようなガスバリア性の樹脂としては、高密度ポリエチレン系樹脂(HDPE)、ポリプロピレン系樹脂(PP)、エチレン−ビニルアルコール系共重合体樹脂(EVOH等)、ポリアミド系樹脂(Ny)、ポリエチレンテレフタレート系(含変性)樹脂(PET等)、ポリブチレンテレフタレート系(含変性)樹脂(PBT等)をはじめとする脂肪族成分のポリエステル系樹脂(PEST)等が挙げられる。
【0039】
ここで、ガスバリア性容器を構成する材料の厚みは、材料の特性によって異なり、前述のガスバリア性を満たす範囲内に適宜調整すればよい。例えば、基材層がエチレン−ビニルアルコール系共重合体樹脂(EVOH)のような酸素ガス透過量の少ない特性の材料の場合、厚さが数μmであっても必要とされるガスバリア性を満たしうるが、基材層がHDPEのように酸素ガス透過量の多い特性の材料の場合、厚さを増加することにより、必要とされるガスバリア性を満たす範囲に調整することが可能となる。
【0040】
また、樹脂容器の表面に、アルミ、シリカ、アルミナ、非晶性カーボン等の金属や無機材料をコーティングする等した材料もガスバリア性の観点より好ましい。紙製容器に関しても同様である。
【0041】
ガスバリア性容器に収納される内容物としては、酸化雰囲気が好ましくない内容物が特に制限無く挙げられ、特に、加熱殺菌が困難な内容物に好適である。例えば、医薬、写真用薬剤、IC製造用薬品など易酸化性または酸化を嫌う化学薬品類、飲料、酒類、食品等の香気を必要とする飲料や粉末、あるいは酸素を含有する雰囲気との接触を嫌う小型精密機械部材、金属材料、好気性菌類等の繁殖防止が求められる用途等が挙げられる。食品としては、米飯類、惣菜類、蒲鉾、竹輪等の水練製品類、クレープ、ケーキ、ワッフルなどの洋菓子類、きんつば、饅頭等の和菓子類、チーズ、ヨーグルト等の乳製品、ソーセージ等の畜肉加工品、するめ等の珍味類、うどん、そば、ラーメン等の半生麺や生麺、等が挙げられる。
[実施例]
【0042】
以下、本発明について実施例等を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例の具体的態様に限定されるものではない。実施例等における物性の評価方法は次の通りである。
(1)酸素吸収性能の評価
【0043】
室温(23℃)環境下において、ガスバリア性容器内(旭化成パックス株式会社製、商品名:ポリフレックスバッグ飛竜、型番:N−9、材質:Ny・厚み15μm/PE・厚み60μm、サイズ:200mm×300mm)に、トレイとトレイに載せた内容物(丸京製菓株式会社製、商品名:ふんわり焼、個数:1個)と500ccの空気と共に収容し、大気圧下でヒートシーラー(テクノインパルス社製、商品名:密封パック器/クリップシーラー、型番:Z−1)にて密封後、23℃雰囲気下に24時間放置した。酸素吸収性組成物の投入前および、投入から12時間後および24時間経過後の容器内の酸素ガス濃度を測定した。なお、酸素濃度(O2)は、酸素モニター(ジコー株式会社製、商品名:JKO−O2LJDII)により測定した。
【0044】
上記より得られた酸素濃度の測定結果の評価を以下の判断基準で行った。
・測定開始から12時間経過時点の容器内酸素濃度が1%以下・・・優れている。
・測定開始から12時間経過時点の容器内酸素濃度が1%以上で、測定開始から24時間経過時点の容器内酸素濃度が1%以下・・・良好である。
・測定開始から24時間経過時点の容器内酸素濃度が1%以上・・・不良である。
【実施例1】
【0045】
(酸素吸収性トレイの作成)アルミニウム粉末0.5g(エカ・グラニュラージャパン株式会社製、グレード:8F02A、粒度:8μm、純度:99.7%)及びベーマイト粉末(大明化学株式会社製、グレード:AE−001)1.5gを、8重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液(ヒドロキシプロピルメチルセルロースは信越化学社製、グレード:65SH−5を使用した)5gに添加した後、充分に攪拌し均一に分散させた。この分散液をディスポトレー(アズワン社製、材質はポリプロピレンでフィラー入り、サイズ:200mm×140mm×25mm)のトレイ裏面にバーコーターにて塗布し、炭酸ガス雰囲気(CO2濃度:99%以上)下で自然乾燥させて、目的の酸素吸収性のトレイを得た。
【0046】
このトレイを用いて酸素吸収性能の評価を行ったところ、12時間経過時の酸素濃度測定においてガスバリア性容器内の酸素濃度は1%以下であり、酸素吸収性能に優れている結果となった。
【実施例2】
【0047】
(酸素吸収性トレイの作成)SBラテックス(旭化成ケミカルズ株式会社製、スチレン・ブタジエンを主成分とするエマルジョン系ゴム接着剤である。グレード:A7901)4gに対し、酸素吸収の助剤として、ナフテン酸コバルト(和光純薬製)をコバルトが0.1重量%となるように処方したものを、実施例1で用いたものと同じ形状のディスポトレーの上面に流し込み、上面いっぱいに均一になるように広げた。この状態で、真空乾燥機(ヤマト科学株式会社製、商品名:DP63)を用いて35℃で48時間真空乾燥させて、酸素吸収性トレイを得た。
(性能評価)
【0048】
このトレイを用いて実施例1と同様の評価を行った。酸素濃度は12時間経過時の測定においては1%以上を示したが、24時間経過時の測定においては1%以下であり、酸素吸収性能は良好であった。
【実施例3】
【0049】
(酸素吸収性トレイの作成)ポリブタジエンゴム(旭化成ケミカルズ株式会社製、グレード:ジエン55AE)10gに対し、良溶媒としてトルエン80gを加えよく攪拌し、完全に溶解させた。次に貧溶媒としてメタノール170gを良く掻き混ぜながら添加してポリマーの塊を沈殿させ、ろ紙を用いて上澄みの液を取り除き、この操作を3回繰り返して沈殿物を得た。上記の溶解再沈法により得られたブタジエンゴムをトルエン40gで溶解し、これに酸素吸収の助剤としてオレイン酸コバルト(関東化学株式会社製)をコバルトとして0.1重量%含有するよう処方したものを、ステンレスバット(130mm角)に流し込み、真空乾燥機(ヤマト科学株式会社製、商品名:DP63)を用いて35℃で48時間真空乾燥させることにより、透明で厚み約300μmのシートを得た。
【0050】
このシートを圧空成形し、上面3に凹部2を、底面6に凹部2に応じた凸部5を設けて表面積を増大させた形状で、横幅及び奥行きが100mm×100mmで、凸部5を除いた高さが10mmの酸素吸収性のトレイ1を得た。凹部1つの大きさは、縦25mm、横10mm、深さ5mmで、樹脂の平均厚みは0.1mmであった。このトレイ1の図面を図1に示す。図1(1)はトレイ1の上面図、(2)は正面図、(3)はA−B断面図である。
【0051】
このトレイ1を用いて、実施例1と同様の評価を行った。酸素濃度は12時間経過時の測定においては1%以上を示したが、24時間経過時の測定においては1%以下であり、酸素吸収性能は良好であった。
【比較例1】
【0052】
ガスバリア性容器を酸素吸収性容器(サイズ:220mm×300mmの袋、材質:PET(13μ)/Ny(18μ)/AL箔(7μ)/鉄粉(粒径10μを6g)入りPP(30μ)/PP(71μ))に変更し、酸素吸収性トレイに代えて酸素吸収性を有しない通常のディスポトレイを用いた以外は、実施例1と同様にして内容物とトレイを容器に収納し、ヒートシーラーにて密封した。これを用いて実施例1と同様の評価を行った。24時間経過時のガスバリア性容器内の酸素濃度は1%以上であり、酸素吸収性能は不良であった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例3で用いた酸素吸収性トレイの、(1)上面図、(2)正面図、(3)A−B断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物をトレイに載せ、次いで容器に収納し、しかるのち前記容器を密封する包装方法であって、前記トレイは酸素吸収性であり、前記容器はガスバリア性であることを特徴とする脱酸素包装方法。
【請求項2】
前記トレイは、表面に複数の凹凸又は孔を有することを特徴とする請求項1に記載の脱酸素包装方法。
【請求項3】
前記トレイは、酸素吸収剤が表面に塗布されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の脱酸素包装方法。
【請求項4】
前記の酸素吸収剤は、アルミニウム金属単位とアルミニウム化合物単位とを含むものであることを特徴とする請求項3に記載の脱酸素包装方法。
【請求項5】
前記トレイは、酸素吸収性有機物と酸素吸収の助剤とを含有するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の脱酸素包装方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−161316(P2007−161316A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−361667(P2005−361667)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(303046266)旭化成ライフ&リビング株式会社 (64)
【Fターム(参考)】