説明

脳に光線療法を施すための着装可能なデバイス

装置(500)は、患者の脳を治療するため患者に装着することができる。前記装置は、患者に装着したときに患者の頭皮の少なくとも一部を覆う本体(510)を含んでいる。前記装置は、複数のエレメント(520)をさらに備えている。それぞれのエレメントは、装置を患者に装着したときに患者の頭皮の対応する部分に適合する第1部分(522)を有している。それぞれの構成要素は、そのエレメントに取り外し可能な形で接触する光源に適合する第2部分(524)を有している。それぞれの構成要素は、患者の脳の少なくとも一部に照射する光源からの光を実質的に透過する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、光線療法に関するものであり、より具体的には、脳卒中に冒された脳組織の光線療法のための新規の装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脳血管発作(CVA)とも呼ばれる脳卒中は、その脳のその領域に供給する動脈内に詰まっている凝血塊により、または破裂性大動脈瘤もしくは動脈破裂を原因とする脳内出血により引き起こされる脳の不連続領域への血流の急激な途絶である。脳卒中の結果は、影響を受けた脳領域における機能喪失であり、影響を受ける脳領域により制御されている身体の領域の付随する身体機能喪失である。脳内の主要な損傷の程度と場所に応じて、機能喪失は、軽度あるいは重度と大きく異なり、また一時的な場合も、永久的な場合もある。喫煙、ダイエット、物理的活動のレベル、および高コレステロールなどの生活要因が、脳卒中の危険性を増大させるため、脳卒中は、先進国では人間の苦悩の主な原因となっている。脳卒中は、米国を含む、大半の先進国においては第3位の死因である。
【0003】
最近まで、脳卒中治療は、脳卒中発生時に一次救命処置を施す(その後、リハビリ)ことに制限されている。最近では、新しい薬物療法は、血塊を分解するか、または生存しているものの危険な状態にある神経細胞がさらに損傷するのを防ぐ方法を採るようになってきた。
【0004】
血栓溶解療法には、さらなる血塊形成を防ぎ、また虚血性脳梗塞の後に血流を維持するためにアスピリンまたは静脈内ヘパリンが含まれる。血栓溶解薬には、組織プラスミノゲン活性化因子(TPA)およびその遺伝子工学バージョン、およびストレプトキナーゼが含まれる。しかし、ストレプトキナーゼは、早期に(脳卒中が発生してから3時間以内に)投与されない限り、患者の見通しを改善しない。TPAは、早期に投与されれば、予後診断を実質的に改善するが、出血から死亡する危険性をわずかに増大する。それに加えて、脳卒中患者の半分以上が、脳卒中の後3時間以上過ぎてから病院に到着し、また早く到着しても、CTスキャンで最初に、脳卒中が出血性でないことを確認しなければならないため、薬剤投与が遅れる。さらに、アスピリンまたは他の血液抗凝結薬を飲んでいる患者および凝固異常のある患者には、TPAを与えるべきではない。
【0005】
神経保護薬は、初期梗塞の領域周辺の危険なゾーン内に生存しているものの危険にさらされている神経細胞を標的とする。このような薬物は、そのような神経細胞死を遅らせるか、または防止し、脳損傷の範囲を縮小することを目指している。いくつかの神経保護薬は、抗興奮毒性である、つまり、ある種の条件の下で細胞膜損傷を引き起こすグルタミン酸などの興奮性アミノ酸の興奮毒性効果を阻害する働きをする。シチコリンなどの他の薬物は、損傷した細胞膜を修復する形で作用する。Tirilazed(Freedox)などのラザロイドは、脳卒中を発症した際に生成される酸素フリーラジカルにより酸化的ストレスに対抗する。脳卒中治療用の他の薬物は、PARPと呼ばれる酵素を阻害する作用物質、および血液供給をさらに制限する血管けいれんを予防するため血管を弛緩させるニモジピン(Nimotop)などのカルシウムチャネル遮断薬を含む。しかし、ニモジピンの効果は、脳卒中発症後6時間を超えて投与されると低下し、虚血性脳梗塞には役立たない。それに加えて、薬物療法は、酷い副作用と免疫反応を起こす危険性を伴う。
【0006】
脳卒中の外科治療には、70%超の動脈狭窄を示す患者の脳卒中再発の危険性を減らすのに特に有効である、頸動脈血管内膜切除術が含まれる。しかし、動脈内膜切除術は、非常に侵襲的であり、脳卒中再発の危険性は、外科処置後一時的に増大する。実験的脳梗塞治療法には、細いカテーテルを使用して血塊からの閉塞を除去または縮小する血管造影型または血管形成型手術が含まれる。しかし、このような手術は、可溶性がきわめて限られており、塞栓性脳卒中の危険性が高まる。破裂する前に動脈瘤を修復するものなどの他の外科的介入は、外科処置と動脈瘤を未処置のまま残すこととの相対的危険度については意見の相違があるため、まだ議論の余地がある。
【非特許文献1】T.Karu、“Photobiological Fundamentals of Low Power Laser Therapy”、IEEE Journal of Quantum Electronics、1987年、第23巻、1703頁
【非特許文献2】T.Karu、“Mechanisms of interaction of monochromatic visible light with cells”、Proc.SPIE、1995年、第2630巻、2〜9頁
【非特許文献3】M.T.Wong-Rileyら、NeuroReport、2001年、第12巻、3033〜3037頁
【非特許文献4】J.T.Eellsら、Proceedings National Academy of Science、2003年、第100巻、3439〜3444頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような背景の下、脳卒中治療のための新しい、改善された治療装置および治療方法を発見することに高い重要性が存在する。特に、薬物療法の制限も回避する脳卒中治療の比較的安価で、かつ非侵襲的手法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
いくつかの実施構成では、患者の脳を治療するため、前記装置を、患者に装着することが可能である。装置を患者に装着したとき、患者の頭皮の少なくとも一部を覆う本体を含んでいる。装置は、さらに複数のエレメントを備えている。各エレメントは、装置を患者に着装したときに患者の頭皮の対応する部分に適合する第1部分を有している。エレメントは、前記エレメントに取り外し可能な形で接触する光源に適合する第2部分を有する。各エレメントは、患者の脳の少なくとも一部に照射する、光源からの光を実質的に透過する。
【0009】
いくつかの実施構成では、患者の脳を治療する装置は、患者に装着できる。前記装置は、患者に着装したたときに患者の頭皮の少なくとも一部を覆うための手段を備えている。装置は、さらに、光を患者の脳の一部に伝送するための手段を備えている。伝送手段は、装置を患者に着装したときに患者の頭皮の対応する部分に適合する第1部分を有している。伝送手段は、その伝送手段に取り外し可能な形で接触する光源に適合する第2部分を有している。
【0010】
いくつかの実施構成では、光学インターフェースは光源を患者の頭部に接続する。前記光学インターフェースは、複数の光学窓を備えている。前記光学インターフェースは、さらに、複数の光学窓の向きを決めるための支持体を備えている。少なくとも1つの光学窓の少なくとも片側は、形状を合わせられる表面を有している。
【0011】
いくつかの実施構成では、患者を治療する方法は、患者の頭皮上の少なくとも約10個の治療部位を識別するステップを含んでいる。この方法は、さらに、電磁放射線源を各治療部位に向けるステップを含んでいる。この方法は、さらに、電磁放射線源から電磁放射線をそれぞれの治療部位に伝播するステップを含んでいる。電磁放射線は、約800ナノメートルから約830ナノメートルまでの範囲内の波長を有している。
【0012】
いくつかの実施構成では、システムは患者を治療する。このシステムは、約800ナノメートルから約830ナノメートルまでの波長範囲内の治療用電磁エネルギーを印加する患者の頭皮の複数の部位を識別するための支持体を備えている。システムは、さらに、治療用電磁エネルギーの電磁波光源とこの支持体を併用するための命令を備えている。
【0013】
いくつかの実施構成では、患者の頭皮の近くで位置決めするための患者インターフェースは、支持体を備えている。前記患者インターフェースは、さらに、支持体上に膨張可能な容器を備える少なくとも1つの光学窓を備えている。この容器は、治療用波長を有し、約2立方センチメートルから約50立方センチメートルまでの範囲の体積を有する電磁放射線に対し実質的に透過的である。
【0014】
いくつかの実施構成では、虚血性脳梗塞の症状を示す患者に治療を施す方法が提示される。この方法は、複数の患者の照射グループに属する複数の患者に適用された場合、患者の照射グループと虚血性脳梗塞の症状を示し、プラセボを受ける患者のグループとで神経機能スケールに少なくとも2%の平均差異を生じる放射線パラメータを使用する電磁放射線を患者の頭皮の複数の治療部位に照射する。
【0015】
本発明の概要を説明することを目的として、上では本発明のいくつかの態様、利点、および新規性のある特徴について記載した。しかし、必ずしもそのような利点のすべてが、本発明の特定の実施形態により達成されうるわけではないことは理解されるであろう。そこで、本発明は、本明細書で教示または示唆されているような他の利点を必ずしも達成することなく本明細書で教示されているような1つの利点または複数の利点の群を達成または最適化する形で具現化または実施されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、患者の頭部にぴったりはまるキャップを備える治療装置を示す略図である。
【0017】
図2は、1つのエレメントを備える治療装置の一部の一実施形態およびそれと頭皮および脳との関係を示す、図1の線2-2によって切り取った部分断面の概略図である。
【0018】
図3は、エレメントを通して流動材料を搬送するための入口導管と出口導管に接続された容器を備えるエレメントを持つ一実施形態を示す概略図である。
【0019】
図4Aは、頭皮と接触する部分および頭皮から離間した部分を持つエレメントを備える治療装置の一部の他の実施形態を示す、図1の線2-2によって切り取った部分断面の概略図である。
【0020】
図4Bは、複数の光源、および頭皮と接触する部分および頭皮から離間した部分を持つエレメントを備える治療装置の一部の他の実施形態を示す、図1の線2-2によって切り取った部分断面の概略図である。
【0021】
図5Aおよび5Bは、線4-4に沿って切り取った図4Bによるエレメントの一実施形態を示す断面の概略図である。
【0022】
図6A−Cは、光源が頭皮から離間した一実施形態を示す概略図である。
【0023】
図7Aおよび7Bは、エレメントによる光に対する拡散効果を示す概略図である。
【0024】
図8Aおよび8Bは、患者の頭皮に当たる異なる断面積を有し、患者の頭部を通過して伝播して患者の脳組織の一部を照射する光ビームを示す概略図である。
【0025】
図9Aは、キャップと、ライトブランケットを備える光源とを備える治療装置を示す概略図である。
【0026】
図9BおよびCは、ライトブランケットの一実施形態を示す概略図である。
【0027】
図10は、柔軟なストラップおよび筐体を備える治療装置を示す概略図である。
【0028】
図11は、ハンドヘルドプローブを備える治療装置を示す概略図である。
【0029】
図12は、プログラマブルコントローラを備える制御回路のブロック図である。
【0030】
図13は、光源およびコントローラを備える治療装置を示す概略図である。
【0031】
図14は、レーザダイオードを備える光源および鏡および複数のモーターを備えるガルボメーターを示す概略図である。
【0032】
図15Aおよび15Bは、互いに関して空間的にシフトされる照射パターンを示す概略図である。
【0033】
図16は、本明細書で説明されている実施形態による例示的な治療装置を示す概略図である。
【0034】
図17Aは、小さな血塊塞栓性脳卒中を有するウサギの個体群に対する、治療持続時間2分間の7.5mW/cm2のレーザ治療の効果を示すグラフである。
【0035】
図17Bは、小さな血塊塞栓性脳卒中を有するウサギの個体群に対する、治療持続時間10分間の25mW/cm2のレーザ治療の効果を示すグラフである。
【0036】
図18は、ウサギの小血塊塞栓性脳卒中の後のレーザ誘起行動改善に対する治療用窓を示すグラフである。
【0037】
図19は、患者の脳を治療するための患者が着装できる例示的な装置を示す概略図である。
【0038】
図20は、本明細書で説明されているいくつかの実施形態による複数のエレメントを有する例示的な装置を示す概略図である。
【0039】
図21は、例示的なエレメントを示す分解概略図である。
【0040】
図22Aは、インチ単位の例示的な寸法を有する例示的な光学コンポーネントを示す概略図である。
【0041】
図22BおよびCは、本明細書で説明されているいくつかの実施形態による他の例示的な光学コンポーネントを示す概略図である。
【0042】
図23は、インチ単位の例示的な寸法を有する例示的な第1支持リングを示す概略図である。
【0043】
図24は、インチ単位の例示的な寸法を有する例示的な第2支持リングを示す概略図である。
【0044】
図25は、本明細書に記載されているいくつかの実施形態に適合している例示的なラベルを示す概略図である。
【0045】
図26Aおよび26Bは、装置の右側の装置に対する例示的なラベル付け構成を示す概略図である。
【0046】
図26Cは、装置を上から見て扁平にした、図26Aおよび26Bの例示的なラベル付け構成を示す概略図である。
【0047】
図27A−Eは、図20〜25の装置の加工時に形成された構造の様々な段階を示す概略図である。
【0048】
図28は、患者の皮膚の下の患者身体部分を治療するために患者の皮膚に照射するため光を放射する装置を示す概略図である。
【0049】
図29は、例示的な光学デバイスに光学的に接続された例示的な光導管を示す概略図である。
【0050】
図30は、本明細書で説明されているいくつかの実施形態に適合している簡素化された光学デバイスを示す概略図である。
【0051】
図31Aは、図31Aの2つの断面の平面が互いに、また出力光学素子に一般に垂直である図29の光学デバイスから放射される光ビームの2つのビームプロファイル断面を示す図である。
【0052】
図31Bは、図29の光学デバイスから放射される光ビームのエンサークルドエネルギーを示す図である。
【0053】
図32Aは、滑らかな金メッキ円錐状内面を有する図30の光学デバイスから放射される光ビームの2つのビームプロファイル断面を示す図である。
【0054】
図32Bは、図30の光学デバイスから放射される光ビームのエンサークルドエネルギーを示す図である。
【0055】
図33は、グリットサンドブラスト処理された円錐状内面を有する図30の光学デバイスから放射される光ビームの2つのビームプロファイル断面を示す図である。
【0056】
図34Aおよび34Bは、それぞれ図29の光学デバイスのビームの広がりを示す図と、図30(サンドブラスト処理された内面を有する)の光学デバイスのビームの広がりを示す図とである。
【0057】
図35は、患者の頭皮の少なくとも1つの所定の領域を患者の脳に照射するレーザ光に制御可能なように曝すための例示的な方法の流れ図である。
【0058】
図36は、虚血性脳梗塞組織損傷に関与する伝達物質と損傷が発生する時点を示すグラフである。
【0059】
図37は、ミトコンドリア内の電子伝達系の概略図である。
【0060】
図38は、哺乳類の細胞を刺激するために使用される光の波長の関数として細胞増殖およびシトクロム酸化酵素活性の割合を示すグラフである。
【0061】
図39は、波長の関数として血液を通る光の透過率(任意の単位)を示すグラフである。
【0062】
図40は、脳組織による光の吸収度を示すグラフである。
【0063】
図41は、波長の関数としてエネルギー伝達効率を示すグラフである。
【0064】
図42は、様々なラット組織を通る808ナノメートル光の吸収度を示す棒グラフである。
【0065】
図43は、10mW/cm2の入力PDに対するPDと硬膜からの深さとの関係を示すグラフである。
【0066】
低出力レベル光療法(“LLLT”)またはフォトセラピーは、生物組織を切断し、焼灼し、または切除するために使用される出力よりも低い出力の光エネルギーを患者に施す治療投与を伴い、したがって、組織を無傷に保ちつつ望ましい生物刺激効果が得られる。非侵襲的光線療法では、身体の外部に位置する光源を使用して治療すべき内部組織に有効な量の光エネルギーを印加することが望ましい。(例えば、引例により本明細書に組み込まれている、Oronの米国特許第6,537,304号および米国特許出願第10/353,130号を参照のこと。)
【0067】
レーザ療法は、リンパ浮腫および筋肉外傷、および手根管症候群を治療するステップを含む、様々な設定において有効であることが証明されている。最近の研究によれば、レーザにより発生した赤外線は、脳を含む、様々な組織を透過し、機能を修飾することがわかった。それに加えて、レーザにより発生した赤外線は、血管形成を誘発し、増殖因子(形質転換増殖因子β)シグナル経路を修飾し、タンパク質合成を増強することができる。
【0068】
しかし、介在組織による光エネルギーの吸収は、介在組織を加熱しながら、標的組織部位に伝達される光エネルギーの量を制限することができる。それに加えて、介在組織による光エネルギーの散乱は、標的組織部位に伝達される出力密度またはエネルギー密度を制限することができる。身体の外面に印加される出力および/または出力密度を高めることによりこれらの効果を強引に回避しようとすると、介在組織が損傷する(例えば、火傷を負う)可能性がある。
【0069】
非侵襲的光線療法は、選択された治療パラメータを指定された制限範囲内に設定し、好ましくは介在組織の損傷を回避するようにすることにより制限される。この分野における既存の科学文献を調べると、損傷を引き起こさず、かつ有効であるという一組のパラメータを見つけられるかは疑わしいことがわかる。しかし、本明細書に記載されているように、いくつかの実施形態では、この目標を達成しうるデバイスおよび方法を実現している。
【0070】
このような実施形態は、介在組織による吸収が、損傷を引き起こすレベルを下回る光の波長を選択するステップを含むことができる。このような実施形態は、さらに、光源の出力を標的組織部位のところで非常に低いが、有効な出力密度(例えば、約100μW/cm2から約10μW/cm2までの範囲)に設定し、また光エネルギーを印加する時間の長さを数秒から数分の範囲に設定して、治療される標的組織部位における有効なエネルギー密度を達成するステップを含むこともできる。他のパラメータは、さらに、光線療法を使用する際に変更することもできる。これらの他のパラメータは、治療される組織に実際に伝達される光エネルギーに関与し、光線療法の有効性に重要な役割を果たしうる。いくつかの実施形態では、脳の照射を受ける部分は、脳全体を含むことができる。
【0071】
頭皮における温度上昇を抑制するエレメント
図1および2は、患者脳20を治療する治療装置10の一実施形態を示した概略図である。前記治療装置10は、有効な出力密度および光波長で脳20の一部を照射するように位置決めされた出力放射領域41を有する光源40を備えている。治療装置10は、さらに、光源40と患者の頭皮30との間に挿入されるエレメント50を備えている。エレメント50は、光により生じる頭皮30の温度上昇を抑制するように構成されている。
【0072】
本明細書で使用しているように、“エレメント”という用語は、複合デバイスの構成する部分、または異なる部分に対する参照としてだけでなく、最も広い意味で使用する。いくつかの実施形態では、エレメント50は、図1〜4に概略図として例示されているように、患者の頭皮30の少なくとも一部と接触するように構成されている。このようないくつかの実施形態では、エレメント50は、頭皮30の少なくとも一部から熱を伝導するとともに、頭皮30の少なくとも一部を覆う。他の実施形態では、エレメント50は、頭皮30から離間されるとともに、頭皮30と接触しない。
【0073】
いくつかの実施形態では、光源40から出て、頭皮30を通り、頭部の骨、組織、および体液(図1の領域22により概略図として示されている)を通り、脳20に光を伝播する光路内にエレメント50があるように、光は、頭皮30に到達するのに先立ってエレメント50を通過する。いくつかの実施形態では、光は、エレメント50の透過媒体を通過する一方で、他の実施形態では、光は、エレメント50のアパーチャを通過する。以下でさらに詳しく説明するように、エレメント50は、治療装置10の様々な実施形態と併用されうる。
【0074】
いくつかの実施形態では、前記光源40は、患者頭部にぴったりと被せられるキャップ60の内面に配置されている。キャップ60は、治療用装置10に対し構造的完全性をもたらすとともに、光源40およびエレメント50を適所に保持している。キャップ60の例示的な材料は、限定はしないが、適切な構造的完全性を備える、金属、プラスチック、または他の材料を含んでいる。キャップ60は、ライクラまたはナイロンなどの伸縮性のある織物またはメッシュ材料を含むインナーライニング62を備えることができる。いくつかの実施形態では、光源40は、複数の位置でキャップ60に取り外し可能な形で取り付けられるように構成されているため、脳20のいずれの部分においても脳卒中またはCVA治療のため選択された位置に、光源40の出力放射領域41を有効に配置することが可能である。他の実施形態では、光源40は、キャップ60の一体部分とすることが可能である。
【0075】
図1および2に例示されている前記光源40は、電源(図示せず)に接続している少なくとも1つの電源導管64を備えている。いくつかの実施形態では、電源導管64は、電気信号および電力を放射体(例えば、レーザダイオードまたは発光ダイオード)に伝送するように構成されている電線導管を備えている。いくつかの実施形態では、電源導管64は、光信号および出力を光源40の出力放射領域41に伝送する光導管(例えば、光導波路)を備えている。このようないくつかの実施形態では、光源40は、光導管64を介して受け取った光出力の少なくとも一部を伝送する光学素子(例えば、レンズ、ディフューザ、および/または導波路)を備えている。さらに他の実施形態では、治療装置10は、電源(例えば、電池)を含むとともに、電源導管64は、治療装置10の内部に実質的ある。
【0076】
いくつかの実施形態では、前記患者の頭皮30は、患者頭がい骨を覆う髪と皮膚とを含んでいる。他の実施形態では、髪の少なくとも一部は、光線療法による治療前に除毛されるため、治療装置10は、頭皮30の皮膚に実質的に接触する。
【0077】
いくつかの実施形態では、前記エレメント50は、患者の頭皮30に接触するように構成されているため、治療装置10と患者の頭皮30との間のインターフェースを形成する。図1に概略的に図示したように、いくつかのこのような実施形態では、エレメント50は、光源40に接続され、他のこのような実施形態では、エレメントは、頭皮30と合致するように同様に構成されている。このようにして、エレメント50は、頭皮30に対して光源40の出力放射領域41を位置決めする。このようないくつかの実施形態では、エレメント50は、頭皮30に対して光源40の位置を調節するように、機械的に調節可能である。頭皮30にぴったり合わせるとともに、光源40を適所に保持することにより、エレメント50は、そうでない場合に頭皮30に対する光源40の配置ミスによって頭皮30に生じる温度上昇を抑制する。それに加えて、いくつかの実施形態では、エレメント50は、治療装置10が患者の頭皮30に合うように機械的に調節可能である。
【0078】
いくつかの実施形態では、前記エレメント50は、治療装置10と患者の頭皮30との間の再利用可能なインターフェースを形成している。このような実施形態では、エレメント50は、治療装置の使用と次の使用との間、特に異なる患者による使用と次の使用との間にクリーニングまたは滅菌することができる。他の実施形態では、エレメント50は、治療装置10と患者の頭皮30との間に使い捨ておよび交換可能なインターフェースを形成している。いくつかの実施形態では、事前滅菌、および事前パッケージされた交換可能インターフェースを使用することにより、使用直前にクリーニングまたは滅菌処理を行うことなく、滅菌されたインターフェースを有効に提供することができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、前記エレメント50は、材料(例えば、ゲルまたは液体)を含んだ容器(例えば、空洞または袋)を備えている。容器は、柔軟で、かつ頭皮30の輪郭に合致するように構成することができる。エレメント50の容器に含まれる他の例示的な材料には、限定はしないが、グリセロールおよび水などの熱交換材料を含んでいる。いくつかの実施形態のエレメント50は、図2に概略的に図示したように、患者の頭皮30の全体を実質的に覆っている。他の実施形態では、エレメント50は、頭皮30に照射される部分近くの頭皮30の局所部分のみを覆っている。
【0080】
いくつかの実施形態では、前記エレメント50の少なくとも一部は、光源40から頭皮30に至る光の光路内にある。このような実施形態では、エレメント50は、光源40の出力放射領域41により放射される光の波長で実質的に光学的に透過的であるとともに、光の後方反射を低減するように構成されている。後方反射を低減することにより、エレメント50は、脳20に伝送される光量を増大させるとともに、そうでない場合に頭皮30の温度上昇をもたらしうる高出力光源40を使用する必要性を減少させる。このようないくつかの実施形態では、エレメント50は、後方反射を低減するように構成された、透過光の光路内に1つまたは複数の光学コーティング、フィルム、層、膜などを備えている。
【0081】
このようないくつかの実施形態では、前記エレメント50は、光の光路内で頭皮30とエレメント50との間の空隙を実質的に減らすように頭皮30にぴったり合わせることにより後方反射を低減する。そうでない場合、このような空隙とエレメント50および/または頭皮30との間に屈折率の不整合によって、光源40から脳20に伝播する光の少なくとも一部が光源40に向かって後方反射してしまう。
【0082】
それに加えて、前記エレメント50のいくつかの実施形態は、光源40により放射される光の波長において、頭皮30の屈折率(例えば、約1.3)と実質的に整合する屈折率を有することによりエレメント50と頭皮30との間の屈折率不整合後方反射を低減する材料を備えている。本明細書に記載されている実施形態に適合した屈折率を有する材料の具体例には、限定はしないが、グリセロール、水、およびシリカゲルを含んでいる。例示的な屈折率整合ゲルには、限定はしないが、マサチューセッツ州フェアヘーブン所在のNye Lubricants,Inc.が市販しているものを含んでいる。
【0083】
いくつかの実施形態では、前記エレメント50は、頭皮30の温度上昇を抑制するように、頭皮30から熱を除去することにより頭皮30を冷却するように構成されている。いくつかのそのような実施形態では、エレメント50は、冷却剤を収めるように構成されたリザーバー(例えば、チェンバーまたは導管)を備えている。冷却剤は、頭皮30の近くにあるリザーバー内を流れる。頭皮30は、頭皮30から流れ去る冷却剤を熱するため、能動冷却により頭皮30から熱が除去される。いくつかの実施形態における冷却剤は、エレメント50と、冷却装置などの熱伝達デバイスとの間で循環することにより、冷却剤は頭皮30によって熱せられるとともに、熱伝達デバイスにより冷却される。冷却剤の例示的な材料には、限定はしないが、水または空気を含んでいる。
【0084】
いくつかの実施形態では、前記エレメント50は、図3に概略的に図示されているように、入口導管52および出口導管53に接続された容器51(例えば、柔軟な袋)を備えている。流動材料(例えば、水、空気、またはグリセロール)は、入口導管52から容器51内に流れ込み、頭皮30から熱を吸収するとともに、出口導管53を通って容器51から流れ出ることができる。このようないくつかの実施形態では、頭皮30に対する容器51の機械的適合と、光による頭皮30の過剰な加熱を防ぐ十分な熱的結合を提供することができる。いくつかの実施形態では、容器51を使い捨てにしてよく、交換容器51を次の患者に使用することができる。
【0085】
さらに他の実施形態では、前記エレメント50は、容器の外に流れ出ないが、受動的冷却により頭皮30から熱を除去するため頭皮30に熱的結合される材料を含む容器(例えば、柔軟な袋)を備えている。例示的な材料には、限定はしないが、水、グリセロール、およびゲルを含んでいる。いくつかのそのような実施形態では、非流動性材料は、頭皮30の冷却を促進するように光線療法治療に先立って事前に冷却することができる(例えば、冷蔵庫に入れることにより)。
【0086】
いくつかの実施形態では、前記エレメント50は、頭皮30の少なくとも一部に圧力を加えるように構成されている。エレメント50は、十分な圧力を加えることにより、血液の少なくとも一部を光エネルギーの光路の外へ強制的に出して頭皮30の一部を青白化することができる。エレメント50が頭皮30に圧力を加えることにより生じる血液の除去は、頭皮30内の血液による光エネルギーの対応する吸収を減少させる。その結果、頭皮30において血液による光エネルギーの吸収で生じる温度上昇が、低減される。さらなる結果として、脳20の皮下標的組織に伝送される光エネルギーの割合が増大する。いくつかの実施形態では、頭皮30の照射される部分を青白化するために1平方インチ当たり2ポンドを超える圧力が使用される一方で、いくつかの他の実施形態では、頭皮30の照射される部分を青白化するために1平方インチ当たり少なくとも1ポンドの圧力が使用される。頭皮30の照射される部分を青白化するための圧力の他の範囲も、本明細書に記載されているいくつかの実施形態に適合している。頭皮30の照射される部分を青白化するために使用される最大圧力は、患者快適レベルおよび組織損傷レベルによりいくつかの実施形態において制限される。
【0087】
図4Aおよび4Bは、前記頭皮30の青白化を促進するように構成されたエレメント50のいくつかの実施形態を概略的に図示している。図4Aに概略的に図示されている治療装置10の一部の断面図において、エレメントのいくつかの部分72は、患者の頭皮30に接触し、エレメントの他の部分74は、頭皮30から離間している。頭皮30と接触しているエレメントの部分72は、光源40から頭皮30に伝播する光の光路を形成している。頭皮30と接触するエレメントの部分72は、さらに、頭皮30に圧力を加えることにより、エレメントの部分72の直下から外に血液を強制的に出す。図4Bは、光源40が複数の光源40a,40b,40cを備える一実施形態の類似の図を概略的に示している。
【0088】
図5Aは、図4Bの直線4-4に沿った断面の一実施形態を概略的に図示している。前記頭皮30と接触しているエレメントの部分72は、一方向に沿って伸びるリッジを含み、頭皮30から離間しているエレメントの部分74は、同じ方向に沿って伸びるトラフを含む。いくつかの実施形態では、リッジは、互いに実質的に平行であり、トラフは、互いに実質的に平行である。図5Bは、図4Bの直線4-4に沿った断面の他の実施形態を概略的に図示している。頭皮30に接触しているエレメントの部分72は、格子または配列の形態の複数の突起を備えている。より具体的には、前記部分72は、矩形であり、2つの実質的に垂直な方向に伸びるトラフを形成する、頭皮30から離間しているエレメントの部分74により分離されている。頭皮30に接触しているエレメント50の部分72は、エレメント50または頭皮30の全領域の実質的な部分とすることができる。
【0089】
図6A〜6Cは、前記光源40が頭皮30から離間している一実施形態を概略的に図示している。このようないくつかの実施形態では、光源40から放射される光は、光源40から出て頭皮30を通り脳20に伝播し、図6Aに示されているように、頭皮30に通常平行な方向に分散する。光源40は、各光源40から放射された光が脳20において隣接する光源40から放射された光と重なり合うように、互いに十分遠く好適的に離間されている。図6Bは、脳20表面、またはその下の基準の深さにおける円形スポット42の重なりとして、この重なりを概略的に図示している。図6Cは、図6Aおよび6Bの線L-Lに沿って脳20の基準の深さにおける出力密度のグラフとして、この重なりを概略的に図示している。隣接する光源40(図6Cに破線で示されている)から出力密度を合計するステップは、治療する組織においてより一様な光分布を得るのに役立つ。このような実施形態では、合計された出力密度は、好ましくは、脳20の損傷閾値よりも低く、有効性閾値よりも高い。
【0090】
いくつかの実施形態では、前記エレメント50は、頭皮30に到達する前に光を拡散させるように構成されている。図7Aおよび7Bは、エレメント50による光に対する拡散効果を概略的に図示している。図7Aにより例示されているように、光源40により放射される光の代表的なエネルギー密度プロファイルは、特定の放射角度でピークとなる。図7Bにより例示されているように、エレメント50により拡散した後、光のエネルギー密度プロファイルは、特定の放射角度で実質的なピークを持たないが、放射角度のある範囲にわたって実質的に均一に分布する。光源40により放射された光を拡散することによって、エレメント50は、照射される領域全体にわたって光エネルギーを実質的に均一に分布させることにより、そうでない場合頭皮30における温度上昇を生じることになる“ホットスポット”を抑制する。それに加えて、光を頭皮30に到達する前に拡散させることにより、エレメント50は、頭皮30に当たる光のスポットサイズを事実上増大することができるため、以下でさらに詳しく説明されるように、頭皮30における出力密度を有効に低下させることができる。それに加えて、複数の光源40を用いた実施形態では、エレメント50は、光を拡散して全光出力分布を変え、異質性を低減することができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、前記エレメント50は、光の出力密度が頭皮30および脳20の最大許容レベルよりも小さくなるように光を十分に拡散させる。いくつかの他の実施形態では、エレメント50は、標的組織において光の出力密度が治療値に等しくなるように光を十分に拡散させる。エレメント50は、限定はしないが、カリフォルニア州トーランス所在のPhysical Optics Corp.で市販しているようなホログラフィックディフューザと、コネティカット州エイボン所在のReflexite Corp.のDisplay Optics P/N SN1333とを含む例示的なディフューザを備えることができる。
【0092】
出力密度
脳卒中治療用の光線療法は、組織に印加される光エネルギーの出力密度(つまり、単位面積当たりの出力、または単位時間当たり単位面積当たりの光子数)、およびエネルギー密度(つまり、単位面積当たりのエネルギーまたは単位面積当たりの光子数)が、低レベル光線療法の相対的有効性を決定するのに重要な因子であることが明らかであるという発見に少なくとも一部は基づいている。この発見は、脳卒中または脳血管障害(CVA)後、初期の梗塞周辺の危険なゾーン内に生存しているものの危険にさらされている神経細胞を治療し、救うことに関して特に適用可能である。本明細書に記載した好ましい方法は、光エネルギーの選択された波長が与えられたときに、組織に伝達される光の出力密度および/またはエネルギー密度(組織に伝達される全出力または全エネルギーとは反対に)が、光線療法の相対的有効性を決定するのに重要な因子であることが明らかであるという発見に少なくとも一部は基づいている。
【0093】
理論または特定の機構に縛られることなく、特定の範囲の出力密度およびエネルギー密度で伝達される光のエネルギーは、細胞内環境に所望の生物刺激効果をもたらし、危険な状態にある神経細胞内のすでに機能していないか、またはあまり機能していないミトコンドリアに適切な機能が戻るようにする。生物刺激効果は、標的組織内の発色団との相互作用を含み、これは、ATPの生成を促し、それにより脳卒中によって血流減少が生じ傷ついた細胞にエネルギーを供給することができる。脳卒中は、脳の各部への血流の閉塞または他の遮断に相当するため、光線療法により血流を増やす効果は、脳卒中患者への光線療法の有効性においてあまり有意ではない。出力密度および曝露時間の役割に関する詳細は、引用により本明細書に組み込まれているHans H.F.I.van BreugelおよびP.R.Dop Bar、“Power Density and Exposure Time of He-Ne Laser Irradiation Are More Important Than Total Energy Dose in Photo-Biomodulation of Human Fibroblasts In Vitro”、Lasers in Surgery and Medicine、第12巻、528〜537頁(1992年)に記載されている。
【0094】
光線療法で使用される出力密度の有意性は、図8Aおよび8Bに概略的に図示されているように、脳組織の光線療法で使用される装置および方法に関して悪影響を有し、介在組織による散乱の効果を示す。組織による光の散乱に関する詳細は、引用により本明細書に組み込まれている、V.Tuchin、“Tissue Optics: Light Scattering Methods and Instruments for Medical Diagnosis”、SPIE Press(2000年)、Bellingham、WA、3〜11頁に記載されている。
【0095】
図8Aは、前記患者の頭皮30の一部90に当たり、患者の頭部を通り、患者脳組織20の一部100を照射する光ビーム80を概略的に図示している。図8Aの例示的な実施形態では、頭皮30に当たる光ビーム80は、平行であり、半径2cmの円形断面および約12.5cm2の断面積を有している。比較のため、図8Bは、頭皮30のより小さな部分92に当たり、脳組織20の一部102を照射する非常に小さい断面を有する光ビーム82を概略的に図示している。図8Bの頭皮30に当たる光ビーム82は、平行であり、半径1cmの円形の断面および約3.1cm2の断面積を有している。図8Aおよび8Bに図示されている光ビーム80,82の平行、断面、および半径は、例であり、他のパラメータを有する他の光ビームも、本明細書で記載されている実施形態に適合している。特に、同様の考慮事項が集束ビームまたは発散ビームに適用され、これらは、介在組織により同様に散乱される。
【0096】
図8Aおよび8Bに示されているように、前記光ビーム80,82の断面は、頭部組織との相互作用からの散乱により頭部を通して伝播しながら大きくなって行く。分散の角度は、15度であり、照射される脳組織20は、頭皮30の下2.5cmにあると仮定すると、図8Aの光ビーム80により照射される脳組織20の部分100の結果として得られる面積は、約22.4cm2である。同様に、図8Bの光ビーム82により照射される脳組織20の部分102の結果として得られる面積は、約8.8cm2である。
【0097】
前記脳組織20の部分100に対する10mW/cm2の出力密度での照射は、約224mWの部分100内の全出力に対応する(10mw/cm2×22.4cm2)。光ビーム80の約5%のみが、頭皮30と脳組織20との間を透過すると仮定すると、頭皮30における入射光ビーム80は、約4480mwの全出力(224mw/0.05)および約358mW/cm2の出力密度(4480mW/12.5cm2)を有している。同様に、脳組織20の部分120に対する10mW/cm2の出力密度での照射は、約88mWの部分102内の全出力に対応し(10mW/cm2×8.8cm2)、同じ5%の透過率では、頭皮30における入射光ビーム82は、約1760mWの全出力(88mW/0.05)および約568mW/cm2の出力密度(1760mW/3.1cm2)を有している。これらの計算結果は、表1にまとめられている。
【0098】
【表1】

【0099】
これらの例示的な計算結果は、前記脳20における所望の出力密度を得るために、頭皮30においてより高い全出力を、頭皮30におけるより大きなスポットサイズとともに使用できることを示している。したがって、頭皮30におけるスポットサイズを大きくすることにより、頭皮30における出力密度を低くして脳20において所望の出力密度を得ることができ、頭皮30を過熱する可能性を低減することができる。いくつかの実施形態では、選択されたより小さな領域に対する頭皮30の照射を定めるために光をアパーチャに通すことができる。
【0100】
光源
いくつかの実施形態では、光を発生するための光発生器として単一の前記光源40が使用され、他の実施形態では、光を発生する光発生器として複数の光源40が使用されている。光源40は、好ましくは、可視光線波長から近赤外線波長までの範囲の光を発生する。いくつかの実施形態では、光源40は、1つまたは複数のレーザダイオードを備え、それぞれコヒーレント光を送出する。光源40からの光がコヒーレントである実施形態において、放射された光は、光のコヒーレント干渉により“スペックリング(speckling)”を発生しうる。このスペックリングは、構成的干渉により生じる強度スパイクを含み、治療される標的組織の近くで発生しうる。例えば、平均出力密度は、約10mW/cm2としてよく、治療すべき脳組織の近くのそのような1つの強度スパイクの出力密度は、約300mW/cm2としてよい。いくつかの実施形態では、スペックリングによるこの増大した出力密度は、より深い組織の照射にインコヒーレント光を使用する治療に比べてコヒーレント光を使用する治療の有効性を高めうる。
【0101】
他の実施形態では、前記光源40は、インコヒーレント光を発する。インコヒーレント光の例示的な光源40は、限定はしないが、白熱灯または発光ダイオードを含んでいる。ヒートシンクを光源40とともに使用することによって(コヒーレントまたはインコヒーレント光源に対し)、光源40から熱を除去するとともに、頭皮30における温度上昇を抑制できる。
【0102】
いくつかの実施形態では、前記光源40は、実質的に単色光である光(つまり、1つの波長を有する光、または狭い帯域の波長を有する光)を発生する。脳に伝送される光の量は最大化されるので、光の波長は、いくつかの実施形態では、介在組織に対し透過ピークもしくはその近く(または吸収極小もしくはその近く)となるように選択される。このようないくつかの実施形態では、波長は、約820ナノメートルの組織の透過スペクトルにおけるピークに対応する。他の実施形態では、光の波長は、好ましくは、約630ナノメートルから約1064ナノメートルまでの範囲、より好ましくは約780ナノメートルから約840ナノメートルまでの範囲内であり、最も好ましくは、約785、790、795、800、805、810、815、820、825、または830ナノメートルの波長を含む。約730ナノメートルから約750ナノメートルまでの範囲の中間波長(例えば、約739ナノメートル)が、頭がい骨を透過するのに好適であるのは明らかであるが、他の波長も適しており、使用できる。
【0103】
他の実施形態では、前記光源40は、複数の波長を有する光を発生する。例えば、いくつかの実施形態では、(808±5)ナノメートルの波長の帯域が使用される。いくつかの実施形態では、光源40は、第2の波長を有する光と同時に第1の波長を有する光を発生するように構成されている。いくつかの他の実施形態では、光源40は、第2の波長を有する光とともに順に第1の波長を有する光を発生するように構成されている。
【0104】
そのようないくつかの実施形態では、それぞれの波長は、標的組織内の1つまたは複数の発色団と協働するように選択される。以下で詳細に説明されるように、理論または特定の機構により縛られることなく、発色団の照射が標的組織内のATPの生成を高め、それにより有益な効果を生じる。
【0105】
いくつかの実施形態では、前記光源40は、約830ナノメートルの波長を有する少なくとも1つの連続放射GaAlAsレーザダイオードを備えている。他の実施形態では、光源40は、約808ナノメートルの波長を有するレーザ光源を含んでいる。さらに他の実施形態では、光源40は、少なくとも1つの垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL)ダイオードを備えている。本明細書で説明されている実施形態に適合する他の光源40は、限定はしないが、発光ダイオード(LED)およびフィルタリングされたランプを含む。
【0106】
前記光源40は、皮下標的組織において予め決められた出力密度を達成するのに十分な出力の光エネルギーを放射することができる(例えば、硬膜から約2センチメートルの深さ)。現在、組織の光線療法は、標的組織に組織のレベルで少なくとも約0.01mW/cm2および最大約1W/cm2までの出力密度の光を照射する場合に最も効果的である。様々な実施形態において、表面下出力密度は、所望の臨床成績に応じて、それぞれ、少なくとも約0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、または90mW/cm2である。いくつかの実施形態では、標的組織における表面下出力密度は、約0.01mW/cm2から約100mW/cm2、約0.01mW/cm2から約50mW/cm2、約2mW/cm2から約20mW/cm2、または約5mW/cm2から約25mW/cm2である。これらの表面下出力密度は、治療される組織に対し所望の生物刺激効果をもたらす上で特に効果的である。
【0107】
皮膚表面から身体組織、骨、および体液を通り、皮下標的組織に伝播するエネルギーの減衰を考慮すると、好ましくは約10mW/cm2から約10W/cm2、またはより好ましくは約100mW/cm2から約500mW/cm2までの範囲の表面出力密度が、典型的には、皮下標的組織において選択された出力密度を実現するのに使用される。そのような表面出力密度を実現するために、光源40は、好ましくは少なくとも約25mWから約100Wの全出力を有する光エネルギーを放射することができる。様々な実施形態では、全出力は、それぞれ、約30、50、75、100、150、200、250、300、400、または500mW以下に制限される。いくつかの実施形態では、光源40は、全出力を供給するために組み合わせて使用される複数の光源を含んでいる。光源40の実際の出力は、好ましくは、制御可能な形で可変である。このようにして、放射される光エネルギーの出力は、治療される皮下組織において選択された出力密度に応じて調節できる。
【0108】
いくつかの実施形態では、皮膚表面において約25mWから約100Wまでの範囲の全出力を供給することができる単一レーザダイオードのみを備える前記光源40を利用する。このようないくつかの実施形態では、レーザダイオードは、光ファイバを介して頭皮30に光学的に接続されうるか、または頭皮30を焼くか、または別の形で損傷する出力密度を回避する十分な大きさのスポットサイズを形成するように構成することができる。他の実施形態では、光源40は、皮膚表面において少なくとも約25mWから約100Wまでの範囲の全出力を供給することができる格子または配列の形で配置されている複数の光源(例えば、レーザダイオード)を利用している。他の実施形態の光源40は、さらに、これらの制限を外れた出力能力を有する光源を含んでもよい。
【0109】
図9Aは、キャップ60と発光ブランケット110を含む光源とを備える前記治療装置10の他の実施形態を概略的に図示している。図9Bは、柔軟な基盤111(例えば、柔軟な回路基板)、電源導管インターフェース112、およびひれ状の構成で配置されている光ファイバ114により形成されるシートを備えるブランケット110の一実施形態を概略的に図示している。図9Cは、柔軟な基盤111、電源導管インターフェース112、およびメッシュに織り込まれている光ファイバ114により形成されるシートを備えるブランケット110の一実施形態を概略的に図示している。ブランケット110は、好ましくは、治療する脳20の部分に対応する頭皮30の領域を覆うようにキャップ60内に配置されている。
【0110】
このようないくつかの実施形態では、前記電源導管インターフェース112は、光出力をブランケット110に供給する光ファイバ導管64に接続されるように構成されている。いくつかの実施形態の光出力インターフェース112は、受け取った光出力を様々な光ファイバ114に分配するビームスプリッタまたは他の光学デバイスを備えている。他の実施形態では、電源導管インターフェース112は、電力をブランケット110に供給する電線導管64に接続されるように構成されている。このようないくつかの実施形態では、電源用導管インターフェース112は、1つまたは複数のレーザダイオードを備え、その出力は、ブランケット110の様々な光ファイバ114に分配される。他のいくつかの実施形態では、ブランケット110は、光を放射することにより電源導管インターフェース112からの電気信号に応答する電界発光シートを備えている。このような実施形態では、電源導管インターフェース112は、電気信号を電界発光シートの適切な部分に分配するように構成された回路を備えている。
【0111】
前記ブランケット110の頭皮30により近い側は、好ましくは、ブランケット110から出て頭皮30に向かう散乱したた光の量を増やすように粗くされた表面などの光散乱面を備えている。ブランケット110の頭皮30から遠い側は、好ましくは、頭皮30から放射される光が、頭皮30に向かって後方反射するように反射コーティングで被覆されている。この構成は、液晶ディスプレイ(LCD)の“背面照射”に使用される構成と類似している。ブランケット110の他の構成は、本明細書に記載されている実施形態に適合している。
【0112】
いくつかの実施形態では、前記光源40は、目に入った場合眼損傷を引き起こす光を発生する。そのような実施形態では、装置50は、放射される光が目に入らないように眼球保護を施すように構成することができる。例えば、光を直接見るのを阻止するように不透明材料を適所に配置することができる。それに加えて、装置50が適所にない、または他の適切な安全措置が講じられていない限り、光源40が作動しないようにインターロックを備えることができる。
【0113】
光伝達装置
本明細書に記載されている脳卒中を治療する光線療法は、例えば、引例により本明細書に組み込まれている米国特許第6,214,035号、米国特許第6,267,780号、米国特許第6,273,905号、および米国特許第6,290,714号において図示および記載されているような低出力レベルレーザ治療装置を使用して実施することができるとともに、記載されうる。
【0114】
本明細書に記載されている実施形態による他の好適な光線療法装置は、図10に図示されている。図示されている前記治療装置10は、光源40、エレメント50、および患者頭部の領域上に治療装置10を固定するように構成された柔軟なストラップ120を備えている。光源40は、ストラップ120それ自体の上に、またはストラップ120に接続された筐体122内に配置することができる。光源40は、好ましくは、可視光線から近赤外線までの波長範囲内の波長を有する光エネルギーを放射することができる複数のダイオード40a,40bなどを備える。エレメント50は、光源40と患者の頭皮30との間に配置されるように構成されている。
【0115】
前記治療装置10は、さらに、光源40に動作可能に接続された電源(図に示せず)と、光源40および電源に動作可能に接続されたプログラマブルコントローラ126とを備えている。プログラマブルコントローラ126は、予め決められた出力密度を脳組織20に伝達するように光源40を制御するように構成されている。いくつかの実施形態では、図10に概略的に図示されているように、光源40は、プログラマブルコントローラ126を備えている。他の実施形態では、プログラマブルコントローラ126は、治療装置10の独立したコンポーネントである。
【0116】
いくつかの実施形態では、ストラップ120は、患者の頭皮30にぴったり合う適切なサイズのエラストマー材料のループを備えている。他の実施形態では、前記ストラップ120は、張り合わせるベルクロストリップ、バックル、スナップ、フック、ボタン、タイなどの好適な固定手段130に固定されるエラストマー材料を含んでいる。ストラップ120の正確な構成は、光源40により放射される光エネルギーが標的脳組織20に向けられるようにストラップ120が光源40を選択された位置に維持することができるという制限のみ課せられる。
【0117】
図10に図示されている例示的な実施形態では、筐体122は、ストラップ120に固定されている柔軟なプラスチックまたは織物の層を含んでいる。他の実施形態では、前記筐体122は、プレートまたはストラップ120の拡大された部分を備えている。様々なストラップ構成および光源40の空間的分布は、治療装置10で脳組織の選択された部分を治療できるように本明細書に記載されている実施形態に適合している。
【0118】
さらに他の実施形態では、光エネルギーを伝達する前記治療装置10は、図11に概略的に図示されているように、ハンドヘルドプローブ140を備えている。前記プローブ140は、本明細書に記載されているように光源40およびエレメント50を備えている。
【0119】
図12は、本明細書に記載されている実施形態による前記プログラマブルコントローラ126を備える制御回路200のブロック図である。前記制御回路200は、光源40により放射される光エネルギーの出力を調節し、脳20の標的領域に対して予め決められた表面下出力密度などの予め決められたエネルギー伝達プロファイルに対応する予め決められたの表面出力密度を頭皮30において発生させるように構成されている。
【0120】
いくつかの実施形態では、前記プログラマブルコントローラ126は、論理回路210と、論理回路210に接続されているクロック212と、論理回路210に接続されているインターフェース214とを備えている。いくつかの実施形態のクロック212は、論理回路210が印加された光のタイミング間隔を監視および制御することができるように、タイミング信号を論理回路210に供給する。タイミング間隔のいくつかの例として、限定はしないが、総治療時間、印加された光パルスのパルス時間幅、および印加された光パルス間の時間間隔があげられる。いくつかの実施形態では、光源40は、頭皮30上の熱負荷を低減し、かつ選択された出力密度を脳20の特定領域に伝達するために、選択的にオン、オフすることができる。
【0121】
いくつかの実施形態の前記インターフェース214は、論理回路210が印加される光を制御するために使用する信号を論理回路210に供給する。インターフェース214は、ユーザインターフェース、または治療の少なくとも1つのパラメータを監視するセンサに対するインターフェースを備えることができる。このようないくつかの実施形態では、プログラマブルコントローラ126は、センサからの信号に応答して、好ましくは治療パラメータを調節し、測定される応答を最適化する。次いで、プログラマブルコントローラ126は、光線療法を最適化するために様々な治療パラメータの閉ループ監視および調節を行うことができる。ユーザからインターフェース214により供給される信号は、限定はしないが、患者の特徴(例えば、皮膚の種類、脂肪率)と、選択された印加される出力密度と、標的時間間隔と、印加される光に対する出力密度/タイミングプロファイルとを含みうるパラメータを示す。
【0122】
いくつかの実施形態では、前記論理回路210は、光源駆動装置220に接続されている。光源駆動装置220は、電源230に接続されており、この電源はいくつかの実施形態では電池を含み、他の実施形態では交流電源を含んでいる。光源駆動装置220は、さらに、光源40にも接続される。論理回路210は、クロック212からの信号と、ユーザインターフェース214からのユーザ入力とに応答して、制御信号を光源駆動装置220に送信する。論理回路210からの制御信号に応答して、光源駆動装置220は、光源40に印加される出力を制御する。図12の制御回路200に加えて、他の制御回路も本明細書に記載されている実施形態に適合している。
【0123】
いくつかの実施形態では、論理回路210は、治療の少なくとも1つのパラメータを監視するセンサからの信号に応答して、印加される光を制御する。例えば、いくつかの実施形態は、頭皮30の温度に関する情報を論理回路210に供給するために頭皮30に熱的に接続されている温度センサを備えている。このような実施形態では、論理回路210は、温度センサからの情報に応答し、印加される光のパラメータを調節して頭皮温度を予め決められたレベル以下に維持するように制御信号を光源駆動装置220に送信する。他の実施形態は、限定はしないが、血流センサ、血液ガス(例えば、酸素化)センサ、ATP生成センサ、または細胞活動センサを含む、例示的な生物医学センサを備える。そのような生物医学センサは、リアルタイムフィードバック情報を論理回路210に供給することができる。そのようないくつかの実施形態では、論理回路110は、センサからの信号に応答して、好ましくは、印加される光のパラメータを調節して測定される応答を最適化する。したがって、論理回路110は、光線療法を最適化するために印加される光の様々なパラメータの閉ループ監視および調節を行うことができる。
【0124】
いくつかの実施形態では、図13に概略的に図示されているように、前記治療装置310は、有効な出力密度および波長の光を患者の脳20一部に照射するように構成された光源340を備えている。治療装置310は、さらに、前記光源340に電力を供給するためのコントローラ360を備え、これにより、患者の頭皮30上に複数の異なる照射パターンを選択的に発生させる。各照射パターンは、患者の頭皮30と比較して小さな少なくとも1つの照射領域と、少なくとも1つの非照射領域とからなる。
【0125】
いくつかの実施形態では、前記光源340は、頭皮30の異なる部分を照射するように放射される光を調節するための装置を備えている。そのようないくつかの実施形態では、装置は、光源40を頭皮30に対して物理的に移動させる。他の実施形態では、装置は、光源40を移動させないが、頭皮30の異なる部分に放射された光を当てる。例示的な一実施形態では、図14に概略的に図示されているように、光源340は、レーザダイオード342およびガルボメーター(galvometer)344を備え、両方ともコントローラ360に電気的に接続されている。ガルボメーター344は、複数のモーター350により調節可能なアセンブリ348上に取り付けられた鏡346を備えている。レーザダイオード342により放射される光は、鏡346に向けられ、鏡346を選択的に移動し、レーザダイオード342を選択的に作動させることにより患者の頭皮30の選択された部分に反射される。いくつかの実施形態では、治療装置310は、本明細書に記載されているように頭皮30における温度上昇を抑制するように構成されるエレメント50を備えている。
【0126】
図15Aは、本明細書に記載されている実施形態による照射パターン370を概略的に図示している。前記照射パターン370は、少なくとも1つの照射領域372と、少なくとも1つの非照射領域374とを備えている。いくつかの実施形態では、照射パターン370は、光が照射領域372に入っているが非照射領域374内には入っていない患者の頭皮30に当たるように鏡346をスキャンすることにより生成される。いくつかの実施形態では、照射領域372および非照射領域374を時間の経過に応じて修正する。
【0127】
この選択的照射は、一方の照射領域372から次の照射領域へと光を移動することにより頭皮30の特定の場所の熱負荷を軽減するために使用できる。例えば、図15Aに概略的に図示されている前記照射パターン370を頭皮30に照射することにより、頭皮30の照射領域372は光との相互作用により加熱され、非照射領域374は加熱されない。図15Bに概略的に図示されている相補的照射パターン370'を頭皮30に続いて照射することにより、先の非照射領域374は現在の照射領域372'であり、先の照射領域372は現在の非照射領域374'である。図15Aの照射パターン370の照射領域372と図15Bの照射パターン370'の照射領域372'とを比較すると、照射領域372,372'は、互いに著しく重なり合うことはないことがわかる。このようにして、光の吸収による頭皮30の熱負荷を頭皮30上に分散させることができ、これにより、頭皮30の1つまたは複数の部分を過度に加熱することを避けることができる。
【0128】
図16は、本明細書に記載されている実施形態による他の治療装置400を概略的に図示している。前記治療装置400は、筐体420内に複数の光源410を備えている。各光源410は、有効な出力密度および光波長で脳20の対応する部分を照射するように位置決めされた出力放射領域を有している。いくつかの実施形態では、2つまたはそれ以上の光源410により照射される脳20の部分が少なくとも一部は互いに重なり合うように、これらの部分は重なり合う。本明細書に記載されているように、光源410は、コントローラ(図示せず)によって一斉にまたは別々に作動されて、所定の照射パターンを発生することができる。
【0129】
図16の前記治療装置400は、光源410患者の頭皮30との間に差し挟まれたキャップ430をさらに備えており、光は頭皮30に到達する前にキャップ430を通過する。いくつかの実施形態では、キャップ430は、その波長で実質的に光学的に透過的であり、光の後方反射を低減する。いくつかの実施形態のキャップ430は、頭皮30にぴったり合うことで、頭皮30とキャップ430との間の空隙を実質的に減らしている。いくつかの実施形態では、キャップ430は、頭皮30の屈折率と実質的に一致する屈折率を有する材料を含んでいる。いくつかの実施形態では、キャップ430は、頭皮30の皮膚および/または頭髪の屈折率と実質的に一致する屈折率を有する材料を含んでいる。
【0130】
図16に概略的に図示されている実施形態では、前記キャップ430は、患者の頭皮30に被せることができる。そのようないくつかの実施形態では、患者はキャップ430を着装し、リクライニングの位置で自分の頭部を光源410に近づける。キャップ430は、本明細書に記載されているように、光源からの光により引き起こされる頭皮30における温度上昇を抑制するように構成されている(例えば、頭皮30を冷却する、頭皮30の一部を青白化する、頭皮30に到達する前に光を拡散させるなどによって)。
【0131】
例示的な着装可能装置
図19は、患者脳を治療するために患者が着装できる例示的な装置500を概略的に図示している。前記装置500は、本体510および複数のエレメント520を備えている。本体510は、装置500が患者によって着装されたときに患者の頭皮の少なくとも一部を覆う。各エレメント520は、装置500を患者に着装したときに患者の頭皮の対応する部分に適合する第1部分522を有している。各エレメント520は、そのエレメントに取り外し可能な形で接触する光源(図19に図示せず)に適合する第2部分524を有している。各エレメント520は、患者脳の少なくとも一部に照射する光源からの光を実質的に透過する(例えば、実質的に透明であるか、または実質的に半透明である)。いくつかの実施形態では、光源からの光はそれぞれのエレメント520から伝送された後に、患者頭蓋を透過し、有効な量の光を患者脳の少なくとも一部に伝達する出力密度を有している。
【0132】
図20は、本明細書に記載されているいくつかの実施形態による複数のエレメント520を有する例示的な装置500を概略的に図示している。図20に示されている本体510は、治療部位の配置のインジケータとして使用される複数のアパーチャ512または開口部を有している。各エレメント520は、複数のアパーチャ512のうちの対応するアパーチャに位置決めされ、光学窓として使用される。いくつかの実施形態では、複数のエレメント520は、少なくとも約10個のエレメント520を含み、いくつかの他の実施形態では、複数のエレメント520は、20個のエレメント520を含んでいる。他のいくつかの実施形態では、複数のエレメント520は、15から25個のエレメント520を含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、前記本体510は、図20に概略的に図示されているようにフードを備え、他の実施形態では、本体510は、キャップを備えるか、または患者の頭部に着装できるとともに、患者の頭部上でエレメント520の向きを決める支持体として使用される他の構成を有している。いくつかの実施形態では、本体510は、概ね患者の頭皮に適合する伸縮可能な材料を備えている。いくつかの実施形態では、本体510は、ナイロン裏地ポリクロロプレンを備えている。いくつかの実施形態では、本体510は、様々なサイズの頭部に対応できるように様々なサイズ(例えば、小、中、大)のものが用意されている。いくつかの実施形態では、装置500は、次の患者に感染症または疾病が広がるのを有効に回避するために1回使用した後に使い捨てることができる。
【0134】
図21は、例示的なエレメント520を分解して概略的に図示している。例示的なエレメント520は、光学コンポーネント532、第1支持リング534、第2支持リング536、およびラベル538を備えている。また、エレメント520の他の構成は、本明細書に記載されているいくつかの実施形態に適合している。
【0135】
いくつかの実施形態では、前記光学コンポーネント532は、柔軟な材料(生体適合性のある)を含む実質的に透過的な(例えば、実質的に透明または実質的に半透明な)袋を備えている。図22Aは、インチ単位の例示的な寸法を有する例示的な光学コンポーネント532を概略的に図示している。図22Aの袋は、実質的に透過的な液体(例えば、水)またはゲルを含む膨張可能な容器を含んでいる。いくつかの実施形態では、袋は、約0.5インチから約3インチまでの範囲内の外径を有している。例えば、図22Aの袋は、約1.37インチの外径を有している。いくつかの実施形態では、袋は、約2立方センチメートルから約50立方センチメートルまでの範囲の体積を有している。
【0136】
前記袋と袋に含まれる液体は両方とも、患者の脳に印加される波長(例えば、約810ナノメートルの波長)を有する光に対し実質的に透過的である。いくつかの実施形態では、液体は、患者の頭皮の屈折率と実質的に一致する屈折率を有し、それにより、エレメント520と患者の頭皮との間で光学的整合性を有効にとることができる。図22Aの例示的な光学的コンポーネント532は、単一の袋を備えているが、いくつかの他の実施形態では、光学コンポーネント532は、実質的に透明な液体で満たされた複数の袋を備えている。
【0137】
図22Bおよび22Cは、複合材料を前記袋に含む他の例示的な光学コンポーネント532を概略的に図示している。例えば、図22Bおよび22Cにおいて、袋は、第1材料523および第2材料525を含んでいる。いくつかの実施形態では、第1材料523は、柔らかい、実質的に透過的な、断熱材料(例えば、ゲル)を含んでいる。本明細書に記載されているいくつかの実施形態に適合する例示的なゲルは、限定はしないが、マサチューセッツ州フェアヘーブン所在のNye Corporationが市販しているOC-431A-LVP、OCK-451、およびOC-462光学ゲルを含んでいる。いくつかの実施形態では、第2材料525は、堅い、実質的に透過的な、熱伝導性材料(例えば、シリカ)を含んでいる。
【0138】
いくつかの実施形態では、図22Bに概略的に図示されているように、第2材料525は、第1材料523内に分散された複数のボールを含んでいる。いくつかの実施形態のボールは、約2ミリメートル未満の直径を有している。他のいくつかの実施形態では、図22Cに概略的に図示されているように、第1材料523は、複数の第1層を含み、第2材料525は、複数の第2層を含んでいる。複数の第1層は、複数の第2層と積み重ねられ、これにより、第1材料523と第2材料525との交互に重なる層を有するスタックを形成している。いくつかの実施形態では、複数の第1層の各層は、約2ミリメートル未満の厚さを有するとともに、複数の第2層の各層は、約2ミリメートル未満の厚さを有している。いくつかの他の実施形態では、複数の第1層の各層および複数の第2層の各層は、約0.5ミリメートル未満の厚さを有している。光学コンポーネント532内の第1材料523および第2材料525の他の構成は、さらに、本明細書に記載されているいくつかの実施形態と適合する。
【0139】
いくつかの実施形態の前記光学コンポーネント532は、第1部分522および第2部分524に加えられる圧力に応じて有効に変形する。例えば、負荷を加えない状態では、図22Aの光学コンポーネント532は、約0.41インチの厚さを有するが、約4ポンドの圧力を加えた場合、図22Aの光学コンポーネント532は、約0.315インチの厚さを有する。光学コンポーネント532の第1部分522は、光学コンポーネント532が押し付けられる患者の頭がい骨の部分に実質的に適合するように有効に変形する。例えば、いくつかの実施形態では、第1部分522は、光学コンポーネント532の適合可能な表面を備えている。したがって、このようないくつかの実施形態では、光学コンポーネント532は、空隙を実質的に含まない患者の頭皮とのインターフェースを有効に形成する。光学コンポーネント532の第2部分524は、押し付けられる光源に実質的に適合するように有効に変形する。例えば、いくつかの実施形態では、第2部分524は、光学コンポーネント532の適合可能な表面を備えている。したがって、このようないくつかの実施形態では、光学コンポーネント532は、空隙を実質的に含まない光源とのインターフェースを有効に形成する。
【0140】
いくつかの実施形態では、前記光学コンポーネント532は、光学コンポーネント532を透過する光により引き起こされる患者の頭皮における温度上昇を抑制するヒートシンクとして有効に使用される。いくつかのそのような実施形態では、光学コンポーネント532は、患者の頭皮に対する効果的なヒートシンクを形成する十分に高い熱容量を有している。例えば、水を満たした袋(約4180ジュール/キログラムKの熱容量を有する)に対し、直径が約32ミリメートル、厚さ約10ミリメートルの概ねディスク形状の袋は、十分な体積および十分な熱容量を有し、効果的なヒートシンクを形成する。したがって、いくつかの実施形態では、各エレメント520は、エレメント520を透過する光により引き起こされる患者の頭皮における温度上昇を有効に抑制する。
【0141】
図23は、インチ単位の例示的な寸法を有する例示的な第1支持リング534を概略的に図示している。いくつかの実施形態では、前記第1支持リング534は、実質的に堅い材料を含んでいる。適合性のある材料の例は、限定はしないが、プラスチック(例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン、すなわちABS)を含んでいる。図23に図示されているように、いくつかの実施形態の第1支持リング534は、本体510の対応するアパーチャ512に取り付けられるように構成されている。図23に図示されている例示的な第1支持リング534は、概ね平坦な部分542と、環状部分544と、第2支持リング536に接続するように構成される1つまたは複数の突起部546とを備えているが、これについては以下でさらに詳しく説明する。概ね平坦な部分542は、本体510の対応するアパーチャ512の直径よりも大きい外径を有し、本体510に機械的に接続されるように構成されている(例えば、接着剤により)。環状部分544は、本体510の対応するアパーチャ512の直径以下の外径を有し、アパーチャ512を通り抜けるように構成されている。1つまたは複数の突起部546は、突起部546と環状部分544の幅全体が、本体510の対応するアパーチャ512の直径よりも大きいように環状部分544から概ね放射状に広がっている。
【0142】
図24は、インチ単位の例示的な寸法を有する例示的な第2支持リング536を概略的に図示している。いくつかの実施形態では、前記第2支持リング536は、実質的に堅い材料を含んでいる。適合性のある材料の例は、限定はしないが、プラスチック(例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレンつまりABS)を含んでいる。図24に図示されているように、いくつかの実施形態の第2支持リング536は、1つまたは複数の突起部546と、第1支持リング534の環状部分544とに接続されるように構成されている。いくつかの実施形態では、第2支持リング536は、第1支持リング534の1つまたは複数の突起部546にぴったり合うように構成される1つまたは複数の陥凹部(図示せず)を備えている。いくつかのこのような実施形態では、第1支持リング534および第2支持リング536は連動して、エレメント520を本体510の適所に有効に保持している。いくつかの他の実施形態では、第1支持リング534は、第2支持リング536の1つまたは複数の対応する突起部に嵌まるように構成される1つまたは複数の陥凹部を備えている。
【0143】
図25は、本明細書に記載されているいくつかの実施形態に適合している例示的なラベル538を概略的に図示している。前記ラベル538は、様々なエレメント520を互いに区別するために1つまたは複数の番号、英字、または記号(例えば、バーコード)を各エレメント520に有効に付けている。いくつかのそのような実施形態では、ラベル538は、ビニル材料を含み、光線療法装置のユーザから見えるように第2支持リング536に(例えば、接着剤により)機械的に接続されている。限定はしないが、第2支持リング536の外面に塗装またはエッチングされているラベル538を含む、他の種類のラベル538も、本明細書で開示されている実施形態に適合している。
【0144】
図26Aおよび26Bは、前記装置500の左側および右側を概略的に図示し、装置500に対する例示的なラベル付け構成をそれぞれ示している。図26Cは、装置500を上から見て扁平にした、図26Aおよび26Bの例示的なラベル付け構成を概略的に図示している。図26A〜26Cのラベル付け規則は、患者脳の両半分の照射と適合性がある。他のラベル付け規則も、本明細書に記載されている実施形態に適合している。
【0145】
いくつかの実施形態では、前記ラベル538は、連続したエレメント520に光学的に接続することができる光源を使用して、予め決められた順序でエレメント520を通して一度に各治療部位を1つずつ様々な治療部位において患者脳を順次照射するようにオペレータを誘導するために有効に使用される。例えば、図26A〜26Cのラベル付け構成では、オペレータは、最初に、エレメント“1”を照射し、次いでエレメント“2”,“3”,“4”などを照射し、20個の各治療部位を一度に1つずつ順次照射することができる。いくつかのこのような実施形態では、エレメント520の順序は、互いに近接したエレメント520を順次照射したときに生じる温度上昇を有効に下げるように選択されている。
【0146】
いくつかの実施形態では、前記ラベル538は、照射済みのエレメント520およびまだ照射されていないエレメント520を追跡するために有効に使用される。いくつかのこのような実施形態では、各ラベル538(例えば、プルオフタブ)の少なくとも一部は、対応するエレメント520が照射されたときに装置500から取り外されるように構成されている。いくつかの実施形態では、ラベル538は、どのエレメント520が次に照射されるべきかをコントローラに知らせるために照射に先立ってオペレータがコントローラに入力する符号系列を有している。いくつかの他の実施形態では、各ラベル538は、バーコード、またはコントローラに電気的に接続されたセンサにより読み取り可能な無線周波数識別装置(RFID)を備えている。このような実施形態のコントローラは、どのエレメント520が照射されたかを追跡し、このようないくつかの実施形態では、コントローラは、光源が適切なエレメント520に光学的に接続されている場合のみ光源を作動させる。
【0147】
図27A〜27Eは、図20〜25の前記装置500の組立時に形成される構造の様々な段階を概略的に図示している。図27Aは、マネキン頭部固定具560上に取り付けられている本体510を概略的に図示している。本体510は、裏を外側にした構成で取り付けられており、各アパーチャ512が本体510内に切り込まれた後を図27Aは示している。各アパーチャ512において、第1支持リング534は、図27Bに示されているように、本体510に接続されている。いくつかの実施形態では、接着剤の層(例えば、ミネソタ州セントポール所在の3M Companyから市販されているCA40 スコッチウェルド(登録商標)瞬間接着剤)が平坦な部分542の表面に塗布され、次いで、この表面が、アパーチャ512を通して広がっている環状部分544とともに本体510上に押し付けられる。図27Cは、各第1支持リング534に取り付けられている光学コンポーネント532を概略的に図示している。いくつかの実施形態では、接着剤(例えば、コネティカット州ロッキーヒル所在のHenkel Corporationから市販されているロックタイト(登録商標)3105紫外線硬化型接着剤)の層が平坦な部分542の表面に塗布され、次いで、この表面が光学コンポーネント532の対応する表面と一緒に押し付けられ、紫外線を当てることにより接着剤を硬化させる。図27Dは、マネキン頭部固定具560から取り外され、表を外側にした構成に戻された後の本体510を概略的に図示している。図27Eは、ラベル538が第2支持リング536に貼られ、第2支持リング536が第1支持リング534に取り付けられた後の装置500を概略的に図示している。
【0148】
例示的な発光装置
図28は、患者皮膚下の患者身体部分を治療するために患者皮膚に照射するため光を放射する装置600を概略的に図示している。前記装置600は、患者皮膚により実質的に透過される波長を有する光源610を備えている。装置600は、光源610に光学的に接続された光学導管620をさらに備えている。装置600は、光導管620に光学的に接続された光学デバイス630を備えている。光学デバイス630は、光導管620に光学的に接続された光学ディフューザ640を備えている。光学デバイス630は、堅く、かつ実質的に熱伝導性を有する材料を含む出力光学素子650をさらに備えている。出力光学素子650は、光導管620に光学的に接続されている(例えば、光学ディフューザ640を介して)。患者皮膚を透過した光の一部は、有効な出力密度の光として患者皮膚下の患者身体の少なくとも一部を照射する。
【0149】
いくつかの実施形態では、前記光源610は、約630ナノメートルから約1064ナノメートルまでの範囲内の少なくとも1つの波長を有する光を放射するレーザを備えている。他のいくつかの実施形態のレーザは、約780ナノメートルから約840ナノメートルまでの範囲内の少なくとも1つの波長を有する光を放射する。いくつかの実施形態では、レーザは、約808ナノメートルの中心波長を有する光を放射する。いくつかの実施形態のレーザは、最大約6ワットまでのレーザ光を発生することができ、約0.16の開口数を有している。
【0150】
図29は、例示的な光学デバイス630に光学的に接続された例示的な光導管620を概略的に図示している。いくつかの実施形態では、前記光導管620は、光ファイバ622と、光ファイバ周囲の保護鞘624とを備えている。いくつかの実施形態の光ファイバ622は、約0.22の開口数を有するステップ型光ファイバ(例えば、口径1ミリメートルのマルチモードファイバ)である。いくつかの実施形態では、光導管620は、導電性導管をさらに備えており、導電性導管は、光学デバイス630と光源610との間で(例えば、光学デバイス630内のトリガスイッチまたは温度センサから)信号を伝送し、および/または電力を光学デバイス630(例えば、熱電冷却器用の)に供給する。
【0151】
いくつかの実施形態では、前記保護鞘624は、張力緩和装置625と、光学デバイス630の対応する調節可能なSMAマウント631に機械的に接続するSMAコネクタ627とを備えている。いくつかの実施形態の保護鞘624は、複数の堅いセグメントを有し、各セグメントは概ねシリンダ状の管形状および長軸を有している。各セグメントは、隣接するセグメントの長軸間の角度が予め決められた角度よりも小さい角度に制限されるように、隣接するセグメントに関節式に接続されている。いくつかの実施形態では、保護鞘624を使用することで、光導管620を移動させたり、曲げたりすることができるが、光ファイバ622が切断されないように曲がりの曲率半径を十分に大きな値に有効に制限している。
【0152】
図29に概略的に図示されている例示的な光学デバイス630は、光学ディフューザ640および出力光学素子650(例えば、レンズ)を備えている。いくつかの実施形態では、前記出力光学素子650は、皮膚を実質的に透過し、かつ実質的に熱伝導性はない波長で実質的に光学的に透過的なガラス(例えば、BK7ガラス)を備えている。他のいくつかの実施形態では、出力光学素子650は、堅く、皮膚を実質的に透過し、かつ実質的に熱伝導性がある波長で実質的に光学的に透過的である。
【0153】
いくつかの実施形態では、前記出力光学素子650は、概ね患者の頭皮に向かって面する前面と患者の頭皮から概ね離れる方向に面する後面を有する。いくつかの実施形態では、前面は、照射時に皮膚と接触するか、または皮膚と接触している介在材料と接触するように適合されている。このようないくつかの実施形態では、出力光学素子650の熱伝導性は、熱を出力光学素子650の前面から出力光学素子650の後面と熱で連絡しているヒートシンクに流せるように十分な大きさである。いくつかの実施形態では、出力光学素子650は、照射で皮膚が過度に熱せられることによる皮膚の損傷または患者の不快感を防ぐ、または最小限に抑える、または軽減する十分な速度で前面から熱を背面に伝える。
【0154】
前記出力光学素子650と頭皮との間の空隙の存在は、照射による皮膚の加熱を制御する際に問題を生じうる。いくつかの実施形態では、出力光学素子650は、頭皮に接触することによって、出力光学素子650と皮膚との間の空隙の発生を有効に回避する。介在材料が皮膚および出力光学素子650に接触するいくつかの他の実施形態では、出力光学素子650は、介在材料と接触することによって、出力光学素子650と介在材料との間または介在材料と皮膚との間に空隙を生じさせることを有効に回避することができる。
【0155】
いくつかの実施形態では、前記出力光学素子650の熱伝導性は、少なくとも約10ワット/メートルKの熱伝導性を有している。他のいくつかの実施形態では、出力光学素子650の熱伝導性は、少なくとも約15ワット/メートルKである。本明細書に記載されているいくつかの実施形態による出力光学素子650に対する材料の例は、限定はしないが、熱伝導性が約23.1ワット/メートルKであるサファイアと、熱伝導性が約895ワット/メートルKから約2300ワット/メートルKまでの範囲であるダイヤモンドとを含んでいる。
【0156】
いくつかの実施形態では、前記光学ディフューザ640は、光カプラ620から放射された光626を受け取るとともに、拡散することによって、出力光学素子650に到達する前に光ビームを有効に均質化する。一般に、組織光学系は、非常に散乱性が高く、サイズが約3ミリメートル未満のビーム非一様性は、患者大脳皮質の照射にほとんど影響を及ぼさない。いくつかの実施形態では、光学ディフューザ640は、約3ミリメートル未満の非一様性を有するように光ビームを有効に均質化する。いくつかの実施形態では、光学ディフューザ640は、約1度の拡散角度を有する。
【0157】
いくつかの実施形態では、前記出力光学素子650は、光学ディフューザ640から伝播する拡散光626を受け取るとともに、光学デバイス630から光626を放射する。いくつかの実施形態では、出力光学素子650は照準レンズを含んでいる。いくつかの実施形態では、出力光学素子650から放射される光ビームは、約30ミリメートルの公称口径を有している。ビームの直径を決定するために使用される光ビームの周は、いくつかの実施形態では、光ビームの強度が光ビームの最大強度の1/e2である点群として定義される。いくつかの実施形態の最大有効直径は、患者頭部のサイズと照射による患者頭部の加熱とにより制限される。いくつかの実施形態の最小有効直径は、加熱と、実際に実装されうる治療部位の総数とにより制限される。例えば、患者頭がい骨を小ビーム直径を有するビームで覆うには、それに応じて多数の治療部位を使用することになる。いくつかの実施形態では、治療部位毎の照射時間は、所望の照射線量が得られるようにそれに応じて調節されうる。いくつかの実施形態では、ビーム強度プロファイルは、半ガウス型プロファイルを有している一方で、いくつかの他の実施形態では、ビーム強度プロファイルは、“シルクハット”型プロファイルを有している。
【0158】
いくつかの実施形態では、前記光学デバイス630は、光学レンズを備えており、光学レンズは、光導管620から光を受け取り、その光を出力光学素子650に伝送する。そのようないくつかの実施形態では、出力光学素子650は光学ディフューザを備えている。いくつかの実施形態では、出力光学素子650は、光学レンズおよび光学ディフューザの両方を備えている。
【0159】
いくつかの実施形態では、前記光学デバイス630は、出力光学素子650に熱的に接続されているヒートシンク660をさらに備えている(例えば、ウィスコンシン州ジャーマンタウン所在のEllsworth Adhesivesから市販されているResinlab EP1200などの熱接着剤によって)。熱伝導性出力光学素子650をヒートシンク660に熱的に接続させることにより、いくつかの実施形態では、治療部位(例えば、皮膚)から離して熱伝導用の導管を有効に備えている。いくつかの実施形態では、出力光学素子650は、患者皮膚に押し付けられ、治療部位から熱を逃がす。上述のように出力光学素子650が患者皮膚に接触するエレメント520に押し付けられる他のいくつかの実施形態では、エレメント520は、患者皮膚と出力光学素子650との間に熱伝導性を有効にもたらす。
【0160】
図29に概略的に図示されているように、いくつかの実施形態のヒートシンク660は、反射内面662、第1端部664、および第2端部666を備えている。前記ヒートシンク660は、光学ディフューザ640からの光626が、第1端部664内に入り、ヒートシンク660を通り、第2端部666を出て、出力光学素子650に伝送されるように、配置されている。いくつかの実施形態の内面662は、実質的にシリンダ状である一方で、いくつかの他の実施形態では、内面662は、実質的に円錐状である。円錐状内面662を有するいくつかの実施形態では、第1端部664の内面662は、第1内径を有するとともに、第2端部666の内面662は、第1内径よりも大きい第2内径を有している。
【0161】
いくつかの実施形態では、前記ヒートシンク660は、アルミニウムを使用し、反射内面は、金メッキされている。いくつかの他の実施形態では、反射内面662を、粗面化することにより(例えば、グリットサンドブラスト処理により)、内面662からの光の正反射を低減している。
【0162】
いくつかの実施形態では、図29に概略的に図示されているように、前記光学デバイス630は、複数の換気スロット672を具備する筐体670をさらに備えている。いくつかの実施形態の換気スロット672により、空気流がヒートシンク660から熱を奪うことによって、ヒートシンク660を冷却することができる。
【0163】
いくつかの実施形態では、前記筐体670は、片手で簡単に持てるサイズである(例えば、約5 1/2インチの長さを有している)。いくつかの実施形態の筐体670は、衝撃減衰材料(例えば、ゴム)を含む1つまたは複数の保護緩衝装置674をさらに備えている。いくつかの実施形態の筐体670は、光学デバイス630を適所に保持し、手で順に移動して患者皮膚の選択された部分を照射できるように構成されている。
【0164】
いくつかの実施形態では、図29に概略的に図示されているように、前記光学デバイス630は、少なくとも1つのトリガスイッチ680をさらに備えている。トリガスイッチ680は、光源610に電気的に接続されている。いくつかの実施形態のトリガスイッチ680は、出力光学素子650を表面に押し当てることにより作動する。いくつかの実施形態の光源610は、トリガスイッチ680が作動したときのみ光を放射することによりトリガスイッチ680に応答する。したがって、このようないくつかの実施形態では、光学デバイス630を使用するために、出力光学素子650は、上で記載したように、患者皮膚に対し、またはエレメント520に対し押し付けられる。
【0165】
いくつかの実施形態では、前記光学デバイス630は、図29に概略的に図示されているように、出力光学素子650に熱的に接続されている熱電冷却器690をさらに備えている。いくつかの実施形態の熱電冷却器690では、冷却側が出力光学素子650に熱的に接続されるとともに、高温側がヒートシンク660に熱的に接続されている。いくつかの実施形態の熱電冷却器690は、出力光学素子650から熱を有効に除去する。光学デバイス630のいくつかの実施形態は、患者皮膚を能動的に冷却し、それにより、回避しなければ患者に不快感をもたらす大きな温度勾配が患者皮膚に生じるのを有効に回避する熱電冷却器690を備えている。いくつかの実施形態では、光学デバイス630は、出力光学素子650の温度または光学デバイス630の他の部分の温度を示す電気信号を発生する1つまたは複数の温度センサ(例えば、熱電対、サーミスタ)をさらに備える。
【0166】
図30は、本明細書に記載されているいくつかの実施形態に適合している簡素化された光学デバイス630を概略的に図示している。図30の前記光学デバイス630は、より小さなヒートシンク660を有し、熱電冷却器を備えていない。図30に概略的に図示されているように、いくつかの実施形態のヒートシンク660は、第1内径を有する第1端部664と、第2内径が第1内径よりも大きい第2端部666を有する反射円錐内面662とを備えている。いくつかの実施形態では、図30の光学デバイス630は、図29の光学デバイス630に比べて小型で、軽量で、手で扱いやすいため有効である。
【0167】
図31Aは、図31Aの2つの断面の平面が、互いに概ね垂直であるとともに、レンズを備える出力光学素子650に対して概ね垂直である、図29の光学デバイス630から放射される光ビームの2つのビームプロファイル断面を示している。図31Aのビーム直径は、約30ミリメートルである。図31Bは、図29の光学デバイス630から放射される光ビームのエンサークルドエネルギーを図示している。エンサークルドエネルギーの約90%は、約25.7ミリメートルの直径の範囲内にある。
【0168】
図32Aは、滑らかな金メッキ円錐状内面662を有する図30の光学デバイス630から放射される光ビームの2つのビームプロファイル断面を図示している。図32Aの2つの断面の平面は、概ね互いに垂直であるとともに、出力光学素子650に垂直である。図32Aのビーム直径は、約30ミリメートルである。光ビームは、ビームプロファイルの中心近くに高フラックス領域を有する。この高フラックス領域は、ホットスポットとみなされ、ホットスポットは、3ミリメートル×3ミリメートルの領域上で平均された局所フラックスが、平均フラックスよりも10%広い光ビームの領域として定義される。図32Bは、図30の光学デバイス630から放射される光ビームのエンサークルドエネルギーを図示している。エンサークルドエネルギーの約90%は、約25.6ミリメートルの直径の範囲内にある。
【0169】
前記滑らかな内面662を有するいくつかの実施形態では、十分に大きな角度で光ファイバ622から放射される光の複数の反射が、出力光学素子650の近くに集束され、ビームプロファイルのホットスポット領域に寄与する。図33は、グリットサンドブラスト処理された円錐状内面662を有する図30の光学デバイス630から放射される光ビームの2つのビームプロファイル断面を図示している。この内面662は、粗面化され、内面662からの正反射の量を減らす。このようないくつかの実施形態では、ビームプロファイルは、ホットスポット領域を持たない。光学デバイス630のいくつかの実施形態は、実質的にホットスポットなしで光ビームを有効に発生させることにより、回避しなければ患者に不快感をもたらすことになる大きな温度勾配が患者皮膚に生じるのを回避する。
【0170】
いくつかの実施形態では、出力光学素子650から放射されるビームの広がりは、照射される体内組織内の光の散乱角度よりも著しく小さく、典型的には数度である。図34Aおよび34Bは、図29および図30(サンドブラストをした内面を有する)の光学デバイスのビームの広がりをそれぞれ図示している。ビームの広がりは、2つの別々の平面においてビームプロファイルを測定し、さらに出力光学素子650からビーム直径(例えば、エネルギーの90%を囲む直径)の増大と比較することにより測定した。いくつかの実施形態では、ビームの広がりは、約12度の全角を有している。図29の光学デバイス630の開口数は、約0.152であり、図30の光学デバイス630の開口数は、約0.134であり、約2.5度未満の差に等しい。
【0171】
光伝達方法
いくつかの実施形態では、患者は、患者の頭皮上の複数の治療部位(例えば、少なくとも約10)を識別し、電磁放射線源を各治療部位に向け、その光源から電磁放射線を各治療部位に伝播することにより治療される。いくつかの実施形態では、この光源からの電磁放射線は、約800ナノメートルから約830ナノメートルまでの範囲内の波長を有している。
【0172】
以下でさらに詳しく記載されるように、いくつかの実施形態では、治療部位は、治療部位にそれぞれ対応する複数の光学的透過素子を備える装置を使用して識別される。このようないくつかの実施形態では、各治療部位は、各光学的透過素子と接触している光源からの電磁放射線により照射される。他のいくつかの実施形態では、治療部位は、代わりに、他の印により識別される。例えば、各治療部位は、頭皮上に形成されたマーキングにより、または頭皮に近接して配置されている構造物により識別されうる。次いで、各治療部位は、照射されうる。いくつかの実施形態では、各治療部位は、頭皮と接触しているか、または頭皮と接触する介在光学的透過素子と接触している電磁放射線源により照射される。いくつか例実施形態では、頭皮は、電磁放射線源または介在要素のいずれにも接触されない。
【0173】
いくつかの実施形態では、各治療部位は、一方の治療部位から他方の治療部位へ順次移動される単一の電磁放射線源を使用して照射される。他のいくつかの実施形態では、複数の光源を使用して、複数の治療部位を同時に照射する。そのようないくつかの実施形態では、光源の数は、治療部位の数よりも少なく、複数の光源は、治療部位を順次照射するために順次移動される。
【0174】
着装可能な装置および発光装置の使用方法
図35は、患者の頭皮の少なくとも1つの予め決められた領域を患者脳に照射するレーザ光に制御可能なように曝すための例示的な方法700の流れ図である。以下でさらに詳しく記載されるように、前記方法700は、着装可能な装置500および本明細書に記載されている発光装置600を参照しながら記載される。着装可能な装置500および発光装置600の他の構成も、本明細書に記載されている実施形態による方法700に同様に適合している。
【0175】
前記方法700は、動作ブロック710内に発光装置600を備えるステップを含んでいる。いくつかの実施形態では、発光装置600は、レーザ光源610、光源610に光学的に接続されている光導管620、および光導管620に光学的に接続されている光学デバイス630を備えている。図28〜34に記載されているほかに、発光装置600の他の構成は、本明細書で記載されているいくつかの実施形態にも適合している。
【0176】
前記方法700は、動作ブロック720内で患者の頭皮上に着装可能な装置500を置くステップをさらに含んでいる。装置500は、本体510および複数のエレメント520を備えている。各エレメント520は、装置500を患者に着装したときに患者の頭皮の対応する部分に適合する第1部分522を有している。各エレメント520は、光学デバイス630がエレメント520に接触するときに光学デバイス630に適合する第2部分524も同様に有している。各エレメント520は、光学デバイス630により放射されるレーザ光を実質的に透過する。図19〜27Eに記載されているほかに、着装可能な装置500の他の構成は、本明細書に記載されているいくつかの実施形態にも適合している。
【0177】
前記方法700は、発光装置600を、動作ブロック730で照射される患者の頭皮の予め決められた領域の少なくとも一部に対応するエレメント520に接触させるステップをさらに含んでいる。方法700は、患者の頭皮の予め決められた領域部分に、発光装置600により放射され、動作ブロック740内のエレメント520を通る光で照射するステップをさらに含んでいる。
【0178】
いくつかの実施形態では、動作ブロック710内に前記発光装置600を備えるステップは、患者を治療するために使用する発光装置600を準備するステップを含んでいる。いくつかの実施形態では、発光装置600を準備するステップは、レーザ光が出力される際に通る発光装置600の部分をクリーニングするステップを含んでいる。いくつかの実施形態では、発光装置600を準備するステップは、発光装置600から出力されるレーザ光の出力較正を検証するステップを含んでいる。このような検証は、発光装置600からの光強度を測定し、測定された強度を予想強度レベルと比較するステップを含むことができる。
【0179】
いくつかの実施形態では、動作ブロック720において着装可能な前記装置500を患者の頭皮上に置くステップは、治療のため患者の頭皮の準備を行うステップを含んでいる。例えば、いくつかの実施形態では、治療のため患者の頭皮の準備を行うステップは、照射される患者の頭皮の予め決められた領域から頭髪を除毛するステップを含んでいる。頭髪を(例えば、剃毛により)除毛することで、発光装置600からのレーザ光を吸収する頭髪による患者の頭皮の加熱を有効に低減する。いくつかの実施形態では、動作ブロック720において着装可能な装置500を患者の頭皮上に置くステップは、各エレメント520が患者の頭皮の対応する部分と接触するように着装可能な装置500を位置決めするステップを含んでいる。
【0180】
いくつかの実施形態では、動作ブロック730内において前記発光装置600をエレメント520に接触させるステップは、エレメント520の第1部分522が患者の頭皮に適合し、エレメント520の第2部分524が発光装置600に適合するように発光装置600をエレメント520に押し付けるステップを含んでいる。いくつかの実施形態では、このようにして発光装置600をエレメント520に対し押し付けることにより、エレメント520と接触している患者の頭皮の部分に圧力が加えられ、エレメント520と接触している患者の頭皮の部分を有効に青白化する。
【0181】
いくつかの実施形態では、動作ブロック740において患者の頭皮の予め決められた領域部分を照射するステップは、予め決められた圧力レベルで前記発光装置600をエレメント520に押し付けることにより発光装置600からの光の出力をトリガするステップを含んでいる。いくつかの実施形態では、発光装置600から光を出力するステップは、発光装置600をエレメント520に対し押し付けることにより予め決められた圧力レベルが維持される場合にのみ続く。いくつかの実施形態では、光は、予め決められた期間に、発光装置600から出力されエレメント520に通される。
【0182】
いくつかの実施形態では、この方法は、治療過程において患者頭皮の予め決められた領域の追加部分を照射するステップをさらに含んでいる。例えば、上述のように前記第1エレメント520に対応する予め決められた領域の第1部分を照射した後に、発光装置600を予め決められた領域の第2部分に対応する第2エレメント520と接触させ、発光装置600により放射され、エレメント520を通る光で予め決められた領域の第2部分を照射することができる。患者の頭皮の予め決められた領域の様々な部分を、予め決められた順序で次々に照射することができる。いくつかの実施形態では、予め決められた順序は、着装可能な装置500のエレメント520に対応する印により表される。いくつかのそのような実施形態では、レーザ放射装置600は、予め決められた領域の様々な部分が予め決められた順序から外れて照射されるのを防ぐために、着装可能な装置500の印と連係するインターロックシステムを備える。
【0183】
いくつかの実施形態では、前記患者を治療するシステムは、約800ナノメートルから約830ナノメートルまでの波長範囲内の治療用電磁エネルギーを印加する患者の頭皮の複数部位を識別する支持体(例えば、本明細書に記載されているような着装可能な装置500)を備えている。システムは、治療用電磁エネルギーの電磁波光源(例えば、本明細書に記載されているような発光装置600)とともに、この支持体を使用するための命令をさらに備えている。いくつかの実施形態で使用する命令は、本明細書に記載されている方法700に適合する命令を含んでいる。
【0184】
いくつかの実施形態では、患者を治療するシステムは、電磁波光源(例えば、本明細書に記載されているような発光装置600)を備えている。システムは、光源を患者の頭皮の複数の場所に光学的に接続することにより、電磁波放射線源を使用して治療用電磁エネルギーを患者脳に伝達する命令をさらに備えている。いくつかの実施形態で使用する命令は、本明細書に記載されている方法700に適合する命令を含んでいる。
【0185】
光線療法
光線療法の好ましい方法は、選択された波長について、組織に伝達される光エネルギーの出力密度(単位面積当たりの光強度または出力(W/cm2))またはエネルギー密度(単位面積当たりのエネルギー(J/cm2)、または出力密度に曝露時間を掛けた値)は、光線療法の相対的有効性を決定するのに重要な因子であり、有効性は、組織に伝達される全出力または全エネルギーに直接関係していないという発見の少なくとも一部に基づいている。本明細書に記載されている方法では、脳卒中後の梗塞領域を含む可能性のある前記患者の脳20の一部に伝達されるような出力密度またはエネルギー密度は、梗塞領域周辺の危険ゾーン内に生存しているものの危険にさらされている神経細胞を治療し、救うために光線療法を使用するのに重要な因子である。いくつかの実施形態では、最適な出力密度またはエネルギー密度を意図される標的組織に、許容誤差範囲内で印加する。
【0186】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている光線療法の装置および方法は、患者の脳血流量を増大させる。このようないくつかの実施形態では、脳血流量は、照射の直前と比較して、照射直後では10%、15%、20%、または25%増大する。
【0187】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている光線療法の装置および方法は、脳卒中または神経変性の他の発生源を治療するために使用される。本明細書で使用されているように、“神経変性”という用語は、脳卒中またはCVAなどの一次的な破壊事象だけでなく、一次的な破壊事象の発生によって細胞により誘発される二次的遅延漸進的破壊機構からも生じる細胞破壊の過程を指している。一次的な破壊事象は、脳卒中を含む、疾病過程または肉体的怪我もしくは損傷を含むだけでなく多発性硬化症と、筋萎縮性側索硬化症と、日射病と、てんかんと、アルツハイマー病と、AIDSを含む他の原因から生じる認知症と、局所的脳虚血を含む脳虚血と、CNSにおける圧迫もしくは圧縮損傷などの身体外傷(脳、脊髄、神経細胞、または網膜の圧迫もしくは圧縮損傷、あるいは急性損傷もしくは神経変性を引き起こす損傷を含む)といった他の疾病および病気も含んでいる。二次的破壊機構は、神経毒分子の生成および放出をもたらす機構を含んでおり、アポトーシス、、ミトコンドリアの膜透過性の変化による細胞エネルギー貯蔵の枯渇、過剰なグルタミン酸の再取り込みの放出または不全、再灌流傷害、ならびにサイトカインおよび炎症の活性をを含んでいる。一次的機構および二次的機構は両方とも、神経細胞に対する“危険ゾーン”の形成に寄与し、危険ゾーンにある神経細胞は、一次的破壊事象を少なくとも一時的に生き延びているが、遅延効果を持つ過程によって死の危険にさらされている。
【0188】
本明細書で使用されているように、“神経保護”という用語は、神経変性損失が一次的破壊事象または二次的破壊機構に関係する疾病機構によるものかどうかに関係なく、一次的破壊事象後の神経変性による神経細胞の他の何らかの形の不可逆的損失を遅くするか、または防ぐための治療方針を指している。
【0189】
本明細書で使用されているような“認知機能”という用語は、知ること、考えること、学習すること、知覚すること、記憶すること(即時記憶、近時記憶、または遠隔記憶を含む)、および判断することに関係する機能を含む、認知および認知過程もしくは精神過程または機能を指している。認知機能喪失の症状は、患者の人格、心的状態、および挙動の変化をさらに含みうる。認知機能に影響を及ぼす疾病または病気は、アルツハイマー病、認知症、AIDSまたはHIV感染、クロイツフェルトヤコブ病、頭部外傷(スポーツ外傷から生じうる複数の震盪または他の外傷などの単事象外傷および長期外傷を含む)、レビー小体病、ピック病、パーキンソン病、ハンチントン病、薬物またはアルコール依存症、脳腫瘍、脳水腫、腎臓または肝臓病、脳卒中、うつ病、および認知機能の障害を引き起こす他の精神病、および神経変性を含んでいる。
【0190】
本明細書で使用されているような“運動機能”という用語は、運動協動性、単純および複合運動性行為の遂行などを含む筋肉運動、主に随意性筋肉運動に関係する身体機能を指している。
【0191】
本明細書で使用されているような“神経機能”という用語は、認知機能と運動機能の両方を含んでいる。
【0192】
本明細書で使用されているような“認識促進”および“運動促進”という用語は、認知機能および運動機能の改善または増大をそれぞれ指している。
【0193】
本明細書で使用されているような“神経学的増強”という用語は、認識促進と運動促進の両方を含んでいる。
【0194】
本明細書で使用されているように、“神経保護効果のある”という表現は、一定量の光エネルギーの特性を指し、その量は、mW/cm2を単位として測定される光エネルギーの出力密度である。神経保護効果のある量の光エネルギーは、認識促進および/または運動促進をもたらす、神経変性の防止、回避、縮小、または除去の目標を達成する。
【0195】
本明細書で使用されているような“神経機能促進効果”という用語は、一定量の光エネルギーの特性を指し、その量は、mW/cm2を単位として測定される光エネルギーの出力密度である。この量の光エネルギーは、神経保護、運動促進、および/または認識促進の目標を達成する。
【0196】
したがって、脳卒中治療またはそのような治療を必要としている患者の神経機能の促進のための方法は、可視光から近赤外線までの波長範囲の波長を有する神経機能促進効果のある量または神経保護効果のある量の光エネルギーを前記患者の脳20の標的領域に伝達するステップを含んでいる。いくつかの実施形態では、患者の脳20の標的領域は、梗塞領域、つまり、“危険ゾーン”内の神経細胞を含んでいる。他の実施形態では、標的領域は、危険ゾーン外の脳20の部分を含んでいる。理論または特定の機構に縛られることなく、危険ゾーンに近接する正常な組織を照射することで、正常な組織内のATPおよび銅イオンの生成が高まり、次いで、梗塞周囲の領域内の損傷した細胞に移行し、それにより有益な効果をもたらす。光線療法に関わる生物医学的機構または反応に関する追加情報は、引用により本明細書に組み込まれている、Tiina I.Karu、“Mechanisms of Low-Power Laser Light Action on Cellular Level”、Proceedings of SPIE、第4159巻(2000年)、Effects of Low-Power Light on Biological Systems V、Ed.Rachel Lubart、1〜17頁に記載されている。
【0197】
いくつかの実施形態では、神経保護作用のある量の光エネルギーを伝達するステップは、前記脳20の標的領域において予め決められた出力密度に対応する頭皮30における光エネルギーの表面出力密度を選択するステップを含んでいる。上述のように、組織内を伝播する光は、組織により散乱され、吸収される。所定の圧力密度を脳20の選択された標的領域に伝達するために頭皮30に印加される出力密度の計算では、好ましくは、皮膚および他の組織(骨および脳組織など)を通って伝播するので光エネルギーの減衰を考慮する。頭皮30から脳20に伝播する光の減衰に影響を及ぼすことが知られている因子は、限定はしないが、皮膚色素沈着、治療すべき領域上の髪の存在および色、脂肪組織の量、傷害組織の存在、頭がい骨の厚さ、および脳20の標的領域の配置、特に頭皮30の表面に対する領域の深さを含んでいる。例えば、脳20において頭皮30の表面から3cm下の深さで50mW/cm2の所望の出力密度を得るために、光線療法は、500mW/cm2の印加出力密度を使用することができる。皮膚色素沈着のレベルが高いほど、予め決められた出力密度の光エネルギーを脳20の表面下部位に伝達するために頭皮30に印加される出力密度は高い。
【0198】
いくつかの実施形態では、脳卒中の影響に苦しんでいる患者を治療するステップは、前記治療装置10を頭皮30と接触させ、患者脳20の標的領域の隣に配置するステップを含んでいる。患者脳20の標的領域は、標準医療用画像撮像技術を使用するなどして予め識別することができる。いくつかの実施形態では、治療は、患者脳20の標的領域において予め選択された出力密度に対応する頭皮30における表面出力密度を計算するステップをさらに含んでいる。いくつかの実施形態の計算は、光エネルギーの透過および標的領域における出力密度に影響を及ぼす因子を含んでいる。これらの因子は、限定はしないが、患者の頭がい骨の厚さ、髪の種類および髪の色、皮膚の色および色素沈着、患者の年齢、患者の性別、および脳20内の標的領域までの距離を含んでいる。次いで、印加される光の出力密度および他のパラメータが、計算結果に応じて調節される。
【0199】
前記患者の脳20の標的領域に印加されるように選択された出力密度は、限定はしないが、印加される光の波長、CVAの種類(虚血性または出血性)、および影響のある脳領域の範囲を含む患者の臨床状態を含む多数の因子に依存する。患者の脳20の標的領域に伝達される光エネルギーの出力密度は、さらに、所望の生物学的効果を得るために、他の1つまたは複数の治療薬、特に、神経保護薬と組み合わせるようにさらに調節することができる。このような実施形態では、選択された出力密度は、さらに、追加の治療薬または選択された治療薬に依存しうる。
【0200】
好ましい実施形態では、治療部位毎の治療は、約10秒から約2時間の間、より好ましくは約1分から約10分までの間、最も好ましくは約1分から5分の間に、連続的に進行する。例えば、いくつかの実施形態における治療部位毎の治療時間は、約2分である。他の実施形態では、光エネルギーは、好ましくは、少なくとも約5分の少なくとも1回の治療期間、より好ましくは少なくとも10分の少なくとも1回の治療期間に伝達される。いくつかの実施形態の最短治療時間は、生物学的反応時間により制限される(マイクロ秒オーダー)。いくつかの実施形態の最大治療時間は、加熱と実用的治療時間により制限される(例えば、脳卒中の発症から24時間以内に治療を完了する)。光エネルギーは、治療期間にパルスを発生することができるか、または光エネルギーは、治療期間に連続的に印加できる。
【0201】
いくつかの実施形態では、治療は、1治療期間後に終了できる一方で、他の実施形態では、治療は、少なくとも2治療期間繰り返すことができる。その後の治療期間と治療期間との間の時間は、好ましくは少なくとも約5分、より好ましくは少なくとも約1日から2日、最も好ましくは少なくとも約1週間である。数日間にわたって治療が実施されるいくつかの実施形態では、装置10は、複数の同時日数にわたって着装可能である(例えば、図1、3、9A、10、および13の実施形態)。治療時間の長さおよび治療期間の頻度は、患者の機能回復と、梗塞の画像解析の結果とを含む、複数の因子に依存しうる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の治療パラメータは、患者を監視するデバイス(例えば、磁気共鳴映像)からのフィードバック信号に応答して調節することができる。
【0202】
治療中に、光エネルギーを連続供給するか、またはパルスで供給することができる。光がパルス状である場合、それらのパルスは、好ましくは、少なくとも約10ナノ秒の長さであり、最大約100kHzまでの周波数で発生する。連続波の光も使用できる。
【0203】
脳卒中治療に現在使用されている血栓溶解治療は、典型的には、脳卒中の発症後数時間以内に開始される。しかし、脳卒中の発症者が治療を受けるまでに何時間も過ぎていることが多いため、血栓溶解療法開始までの短い制限時間によって、多くの患者が治療を受けられない。対照的に、脳卒中の光線療法による治療は、虚血事象が発生した後数時間経過してから治療が開始するとより効果がある。したがって、本発明の光線療法の方法は、より高い割合の脳卒中患者を治療するために使用されうる。
【0204】
いくつかの実施形態では、脳内に虚血事象を抱えている患者に神経保護効果をもたらす。この方法は、脳に虚血事象を発症した患者を識別するステップを含んでいる。この方法は、虚血事象の発症時刻を推定するステップもさらに含んでいる。この方法は、神経保護効果のある量の光エネルギーの脳への印加を開始するステップをさらに含んでいる。光エネルギーの印加は、虚血事象の発症時刻の後2時間以上経過してから開始される。いくつかの実施形態では、光線療法は、好ましくは虚血事象が発症した後24時間以内、より好ましくは虚血事象が発症した後2時間以降、なおいっそう好ましくは虚血事象が発症した後3時間以降、最も好ましくは虚血事象が発症した後5時間以降に実施されると有効である。いくつかの実施形態では、治療パラメータのうちの1つまたは複数を、虚血事象以降の経過時間の長さに応じて変えることができる。
【0205】
理論または特定の機構に縛られることなく、治療を遅らせる操作は、ATP生成の誘発、および/または梗塞周辺の領域内の血管形成の可能な誘発に必要な時間のため実行される。したがって、好ましい一実施形態によれば、脳卒中治療のための光線療法は、好ましくは脳卒中症状の発症から約6時間から24時間経過した後、より好ましくは脳卒中症状の発症から約12時間から24時間経過した後に実行される。しかし、治療が約2日後に開始する場合、その有効性は大きく減少する。
【0206】
いくつかの実施形態では、光線療法は、改善された治療効果を求めて他の種類の治療と組み合わされる。治療は、電磁場を脳にかけるのと同時に、患者の頭皮に光を通し、脳の標的領域に到達させるステップを含むことができる。このような実施形態では、光は、標的領域において有効な出力密度を有し、電磁場は、有効な電界強度を有する。例えば、装置50は、例えば、引例により本明細書に組み込まれている、Holcombに発行された米国特許第6,042,531号で説明されているように、電磁気治療用システムも備えることもできる。いくつかの実施形態では、電磁場は磁場を含み、他の実施形態では、電磁場は無線周波数(RF)場を含む。他の実施例では、治療は、有効な量の超音波エネルギーを脳に施すとともに、患者の頭皮に有効な出力密度の光を通し、脳の標的領域に到達させるステップを含むことができる。このようなシステム50は、例えば、引例により本明細書に組み込まれている、Fryらに発行された米国特許第5,054,470号に記載されているように、超音波治療用システムも含むこともできる。
【0207】
(光線療法の実施例)
(実施例1)
試験管内実験を実施し、神経細胞に対する光線療法の一効果、つまりATP生成に対する効果を実証した。正常ヒト神経前駆(NHNP)細胞を、メリーランド州ボルティモア所在のCloneticsを通して低温保存された状態で得た(カタログ番号CC-2599)。NHNP細胞を解凍し、メーカーの取り扱い説明書に従いその細胞とともに付属している試薬を使ってポリエチレンイミン(PEI)上で培養した。細胞を回転楕円体として96穴ウェルプレート(底が透明な黒色プラスチック、ニュージャージー州フランクリンレーク所在のBecton Dickinson)に播種し、2週間かけて成熟神経細胞に分化させた
【0208】
光ドージングアセンブリ(Photo Dosing Assembly:PDA)を使用して、正確に計測された照射量のレーザ光を96穴ウェルプレート内のNHNP細胞に当てた。PDAは、LUDLモーター駆動x、y、zステージ(ニューヨーク州ホーソン所在のLudl Electronic Products)を使用するNikon Diaphot倒立顕微鏡(ニューヨーク州メルビル所在のNikon)を備えていた。カスタム設計のアダプタおよび光ファイバケーブルを使用して、808ナノメートルのレーザを顕微鏡の背面落射蛍光用ポート内に導いた。レーザビームが人の皮膚を通過した後に生体内状態を模倣することを意図している“斑”パターンを形成するために拡散レンズをビームの経路内に取り付けた。ビームは、96穴ウェルプレートの底に到達したときに直径25ミリメートルの円に発散した。この寸法は、4つの隣接するウェルのクラスタにレーザ光が同時に当たるように選択された。細胞は、96穴ウェルプレート毎に合計12個のクラスタがレーザ光を当てられるようにパターン内に播種された。ステージ位置決めは、Silicon Graphicsワークステーションにより制御され、レーザタイミングは、デジタルタイマーを使用して手で取った。NHNP細胞用のプレートを通過する測定された出力密度は50mW/cm2であった。
【0209】
2つの独立のアッセイを使用して、NHNP細胞に対する808ナノメートルのレーザ光の効果を測定した。第1のものは、CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay(ウィスコンシン州マディソン所在のPromega)であった。このアッセイでは、細胞ATPとのルシフェラーゼ反応により生成される“グロータイプ(glow-type)”の発光シグナルを生成する。CellTiter-GIo試薬をウェル内の培地の体積に等しい量だけ加えた結果、細胞溶解が生じ、続いて持続する発光反応が生じたが、これは、レポーター発光計(Reporter luminometer)(カリフォルニア州サニーベール所在のTurner Biosystems)を使用して測定された。NHNP細胞内に存在するATPの量は、発光計により相対発光単位(RLU)で定量化された。
【0210】
使用される第2アッセイは、alamarBlueアッセイ(カリフォルニア州カマリロ所在のBiosource)であった。増殖細胞の内部環境は、非増殖細胞のと比べてより縮小されている。特に、NADPH/NADP、FADH/FAD、FMNH/FMN、およびNADH/NADの比は、増殖時に高くなる。レーザ照射は、さらに、これらの比に影響を及ぼす。alamarBlueのような化合物は、これらの代謝中間物により還元され、細胞状態を監視するために使用されうる。alamarBlueの酸化には、測定可能な色のシフトが伴う。酸化していない状態では、alamarBlueは、青色に見え、酸化すると、色は赤色に変化する。このシフトを定量化するために、340PCマイクロプレート読み取り分光光度計(カリフォルニア州サニーベール所在のMolecular Devices)を使用して、NHNP細胞、培地、および10%(v/v)希釈したalamarBlueを含むウェルの吸光度を測定した。それぞれのウェルの吸光度は、570ナノメートルおよび600ナノメートルで測定され、alamarBlueの還元率は、メーカーによって用意されている式を使用して計算された。
【0211】
次いで、上述の2つの計量(RLUおよび還元率)を使用して、808ナノメートルの波長で50mW/cm2のレーザ光を当てたNHNP培養ウェルを比較した。CellTiter-Gloアッセイでは、20ウェルに、1秒間、レーザ光を当てて、レーザ光を当てていない20ウェルのコントロール群と比較した。レーザ光照射が完了してから10分後にCellTiter-Glo試薬を加え、細胞が溶解し、ルシフェラーゼ反応が安定化した後にプレートを読み取った。コントロールウェルについて測定された平均RLUは3808±3394であったが、レーザ群は、7513±6109に対しATPの2倍の増大を示した。標準偏差は、ウェル内のNHNP細胞が比較的少数であるためいくぶん高かったが(目視観察でウェル毎に約100)、対応のないスチューデントt検定をデータに対し実行したが、その結果得られた0.02のp値は2倍の変化が統計的に有意であることを示している。
【0212】
より高い細胞密度および5秒のレーザ光照射時間で、alamarBlueアッセイを実行した。播種密度(メーカーにより提供されている分析証明書に基づきウェル毎に7,500〜26,000個の細胞の範囲となるように計算される)は、細胞の一部が回転楕円体内に残留しており、完全には分化していないため決定するのが困難であった。それでも、播種条件が同一であったため、同じプレートからのウェルを比較することができる。レーザ光照射直後にalamarBlueを加え、9.5時間後に吸光度を測定した。還元率に対する平均測定値は、8つのレーザ光照射ウェルに対し22%±7.3%、3つの非レーザ光照射コントロールウェルに対し12.4%±5.9%であった(p値=0.076)。これらのalamarBlueの結果は、細胞に対するレーザ治療の類似の陽性結果を示しているという点で先の発見を支持する。
【0213】
細胞ATP濃度の増大および細胞内の高い還元状態は、両方とも、細胞代謝に関係し、細胞が生存可能であり、正常であるという指標である。これらの結果は、これらが試験管内神経細胞培地内の細胞代謝に対するレーザ照射の陽性結果を示すという点で新しく、有意である。
【0214】
(実施例2)
第2実施例では、低エネルギー赤外線レーザを使用して経頭蓋レーザ療法を調べ、ウサギ小血塊塞栓性脳卒中モデル(RSCEM)における行動欠陥を治療した。この実施例は、引例により本明細書に組み込まれる、P.A.Lapchakら、“Transcranial Infrared Laser Therapy Improves Clinical Rating Scores After Embolic Strokes in Rabbits”、Stroke、第35巻、1985〜1988頁(2004年)において詳述されている。
【0215】
麻酔されたオスニュージーランドホワイトラビットの脳血管系内に血栓を注入することによりRSCEMが生成され、その結果、二分評定スケールにより定量的に測定可能な虚血誘発挙動欠陥が生じた。治療が行われない場合、微小血塊が少なければ肉眼的に明らかな神経機能不全を一切引き起こさなかったが、微小血塊が多ければ常に脳障害を引き起こすか、または死をもたらした。行動が正常なウサギには、機能障害の兆候はなかったが、行動が異常なウサギには、平衡感覚障害、頭部の傾き、旋回行動、発作型活動、または四肢麻痺があった。
【0216】
レーザ治療では、レーザプローブを皮膚と直接接触させた。レーザプローブは、OZ Optics Ltd.の光ファイバ-ケーブルと直径約2センチメートルのレーザプローブを装着した低エネルギーレーザ(808±5ナノメートルの波長)を備えていた。計測器設計の研究から、これらの仕様では、レーザをウサギの頭がい骨および脳に、2.5から3センチメートルの深さまで透過させることができ、レーザビームは、中心線上のブレグマよりも後方の皮膚表面上に置かれた場合に脳の大半を取り囲むことがわかっている。プローブの下の表面皮膚温度は、最大3℃まで上昇したが、レーザプローブの真下の病巣脳温度は、25mW/cmのエネルギー設定を使用して10分間レーザ治療を行ったときに0.8℃から1.8℃までの範囲の温度だけ上昇した。病巣脳温度は、レーザ治療を行ってから60分以内に正常に戻った。
【0217】
コンピュータにより量子用量反応データに当てはめたロジスティック(S字型)曲線を使用して血塊用量と行動欠陥または神経学的欠損との間の定量的関係を評価した。これらのパラメータは、動物の群の50%(P50)における神経学的機能不全を生じた微小血塊の量(mg単位)の尺度である。それぞれの治療条件について別々の曲線が生成され、行動の改善を示すコントロールと比較してP50値の増大が統計的に有意であった。適宜ボンフェローニ補正を含むt検定を使用してデータを分析した。
【0218】
レーザ治療で生理的変数が変わったかどうかを調べるために、14羽のウサギを無作為に2群に分け、コントロール群とレーザ治療群(10分間に25mW/cm2)とした。Bayer Elite XL 3901 B Glucometerを使用して、塞栓を生じたすべてのウサギについて血糖値を測定し、またBraun Thermoscan Type 6013デジタル体温計を使用して体温を測定した。塞栓から60分以内に、コントロール群と2時間の塞栓後観察時間の間に維持されたレーザ治療群の両方に血糖値の上昇があった。血糖値は、脳卒中誘発行動欠陥の程度に関係なく、24時間だけ制御レベルに戻った。レーザ治療は、どの時点においても血糖値に有意な影響を及ぼしたわけではなかった。塞栓もレーザ治療も、ウサギのいずれの群においても体温に有意な影響を及ぼさなかった。
【0219】
図17Aは、2分間の治療における7.5mW/cm2のレーザ治療に対するミリグラム単位の血塊重量の関数として異常であるか、または死んでいた集団の割合に対するグラフである。図17Aに示されているように、コントロール曲線(点線)は、0.97±0.19mgのP50値(n=23)を有している。脳卒中が発症してから3時間後に開始したそのようなレーザ治療は、行動遂行を著しく改善し、P50値は2.1±0.54mg(n=28、*P=0/05)(実線)に増大した。この効果は持続し、塞栓後3週間測定可能であった。しかし、第2設定では、塞栓後に長い遅延(24時間)があった場合に行動が改善されなかった(破線)(P50=1.23±0.15mg、n=32)。
【0220】
図17Bは、10分間の治療期間における25mW/cm2のレーザ治療に対するミリグラム単位の血塊重量の関数として異常であるか、または死んでいた集団の割合に対するグラフである。図17Bに示されているように、コントロール曲線(点線)は、1.10±0.17mgのP50値(n=27)を有する。塞栓が発症してから1時間後(破線)または6時間後(実線)に開始したそのようなレーザ治療も、行動遂行を著しく高め、P50値はそれぞれ2.02±0.46mg(n=18、*P<0.05)および2.98±0.65mg(n=26、*P<0.05)に上昇した。
【0221】
図18は、ウサギの小血塊塞栓性脳卒中後のレーザ誘起行動改善に対する治療用窓を示すグラフである。結果は、x軸に示されているように塞栓が発症してから1、3、6、または24時間後に開始したレーザ治療に対する時点(括弧内の数)によるウサギの数に対する平均値±SEMとして与えられる臨床評価スコアP50(mg血塊)として図に示されている。水平線は、コントロールP50値(*P<0.05)の平均値を表している。
【0222】
RSCEMの結果から、レーザ治療は、体温および血糖値に影響を及ぼすことなくウサギの塞栓性脳卒中の発症後の行動評価スコアを著しく改善することがわかった。それに加えて、レーザ治療は、脳卒中を発症してから最大6時間後に開始した場合に有効であるが、これは、同じ前臨床脳卒中モデルにおける他の以前に有効であった単一療法よりも後である。さらに、この効果は持続し、塞栓を生じた後最大21日間測定可能であった。ウサギのレーザにより引き起こされる改善の大きさは、臨床開発が進行中である、すでに試験されている血栓溶解剤(アルテプラーゼ、テネクテプラーゼ、およびマイクロプラスミン)および神経保護化合物(NXY-059)と類似している。
【0223】
神経機能スケール
神経機能スケールを使用して、本明細書に記載されている様々な実施形態の有効性を定量化するか、または他の何らかの形で特徴付けることができる。神経機能スケールでは、一般に、多数のレベルまたはポイントを使用し、それぞれのポイントは患者の症状の態様に対応する。患者に対するポイントの数は、患者の症状を定量化するために使用することができ、患者の症状の改善は、ポイントの数の変化により表すことができる。例示的な一神経機能スケールは、National Institute of Health Stroke Scale(NIHSS)であり、これは、有効性の短期測定(例えば、24時間)に使用されうる。NIHSSは、包括的、また客観的スケールであり、7分物理調査、13項目スケール、および42ポイントを使用する。ゼロポイントは、正常な調査に対応し、42ポイント(最大)は、基本的に昏睡状態に対応し、15〜20ポイントは、脳卒中の作用が特に重大であることを示す。NIHSSは、虚血性脳梗塞の治療でtPAトライアルですでに使用されており、24時間で4ポイント変更があり、3カ月で0または1の総スコアは良好な転帰を示す。他の神経機能スケールは、限定はしないが、修正ランキンスケール(mRS)、バーセルインデックス(BI)、グラスゴー転帰、グラスゴーコーマスケール、カナダ神経スケール、およびSIS-3およびSIS-16などの脳卒中インパクトスケールを含む。いくつかのスケールでは、患者の病状の改善は、ポイントの数の減少により示される。例えば、mRSは合計6ポイントを有し、ゼロは正常機能に対応し、6は死亡に対応する。他のスケールでは、患者の病状の改善は、ポイントの数の増大により示される。例えば、5ポイントを有するグラスゴー転帰では、ゼロは死亡に対応し、5は完全な回復に対応する。いくつかの実施形態では、神経機能スケールのうちの2つまたはそれ以上を互いに組み合わせて使用することができ、また有効性の長期測定結果を与えることができる(例えば、3カ月で)。
【0224】
脳卒中については、米国食品医薬品局(FDA)および神経学会が、脳卒中発症後90日の臨床患者予後に興味を示していた。有効性を測定するための最も一般的で、受け入れられている計測手段のうちの2つが、NIHSSとmRSである。FDAは、神経機能スケールを使用する方法において柔軟である。例えば、mRSを(i)0-1のスコアで成功とする二分法で使用することを許容しているか、または(ii)5ポイントスケールに沿って患者の改善を示すスケールのシフトを見て分析することができる。
【0225】
本明細書においてされているいくつかの実施形態では、虚血性脳梗塞の症状を示す患者は、患者の頭皮上の複数の治療部位を照射することにより治療される。照射は、患者の治療群に属す患者に適用されたときに、二分法または他の方法で分析され、NIHSS、mRS、BI、グラスゴー転帰、グラスゴーコーマスケール、カナダ神経スケール、SIS-3、およびSIS-16からなる群から選択される少なくとも1つの神経機能スケールに基づき治療群とプラセボ群との間で少なくとも2%平均差を生じる照射パラメータ(例えば、波長、出力密度、照射時間など)を使用して実行される。いくつかの他の実施形態では、二分法または他の方法で分析され、NIHSS、mRS、BI、グラスゴー転帰、グラスゴーコーマスケール、カナダ神経スケール、SIS-3、およびSIS-16からなる群から選択される神経機能スケールのうちの少なくとも1つに基づき治療群とプラセボ群との間で少なくとも4%平均差、少なくとも6%平均差、または少なくとも10%平均差を生じる。いくつかの実施形態では、患者の頭皮への照射は、患者の病状の変化を生じさせる。このようないくつかの実施形態では、患者の病状の変化は、患者の病状を示すポイントの数の変化に対応する。このようないくつかの実施形態では、照射は、神経機能スケールに基づき1ポイントの変化、2ポイントの変化、3ポイントの変化、または3ポイントよりも多い変化を生じる。
【0226】
可能な作用機構
以下の節では、現在、本明細書に記載されている光線療法のいくつかの実施形態について発明者にとって明らかなものとして、理論と可能な作用機構について説明する。本出願の請求項の範囲は、いずれかの理論または潜在的作用機構の正確さ、関連性、または詳細に依存するものと解釈すべきではない。したがって、本出願の請求項は、理論または特定の機構に縛られることなく解釈されるべきである。
【0227】
光は、視覚、24時間周期ホルモンの調節、メラニン生成、およびビタミンD合成などに深い生物学的影響を及ぼしうることがよく知られている。また、ミトコンドリア内のチトクロムC受容体を標的とする光の特定波長は、劇的に機能を保つだけでなく、心筋梗塞および脳卒中の規模を縮小することができることも知られている。また、これらの効果は、複数の種にまたがって再現されることも証明されている。これは、ミトコンドリア標的受容体(つまり、チトクロムC内の銅イオン)が、種の間で保存されるためであり、驚くことではない。これらの効果は、新しい細胞の生成(神経細胞新生)、既存の組織の保存(神経保護)、またはその両方の組合せによるものとしてよい。
【0228】
急性心筋梗塞および脳卒中の虚血状態の生体内治療有効性についての光への臨床および細胞応答は、複数の検証済み動物モデルにおいて実証されている。以下でさらに詳しく説明されるように、これらの効果は、波長特有である。理論または特定の機構に縛られることなく、波長特異性は、知られているミトコンドリア受容体(チトクロムC酸化酵素)に依存しうる。これらの受容体の標的を定めた結果、アデノシン三リン酸(ATP)の生成、ミトコンドリアの生存上昇、およびチトクロムC酸化酵素活性の維持を行える。
【0229】
脳卒中では、主要な動脈の閉塞の結果、重度の虚血の中心領域が生じる(例えば、血流が閉塞前レベルの20%未満に下がる)。中心領域は、ATPおよびエネルギー生産を急速に喪失し、神経細胞は脱分極される。梗塞のこの中心は、梗塞の中心の2倍程度までの大きさになりうる虚血性周辺部により囲まれる。周辺部内の細胞は、血流欠乏の重大な減少をあまり示さない(例えば、正常の20から40%)。周辺部内の神経細胞は、過分極され、電気的に沈黙する傾向がある。周辺部の細胞は、梗塞の発症後数時間から数日程度続く細胞死の進行を経験する。また、梗塞の発症の後の炎症も、最終的な梗塞規模の決定に関与し、抗炎症性調整剤が梗塞の規模を縮小することができる。梗塞は、動的であり、梗塞の異なる部分は数時間から数日にわたって異なる程度の影響を受ける。光子療法は、脳卒中の周辺部領域における細胞生存に有利に働きうる多数の生理学的過程に関わっている。
【0230】
試験管内
細胞に対する光の作用は、1つまたは複数の特定の光受容体により媒介される。光受容体分子は、最初に、光を吸収する。電子の励起状態へのこの吸収事象および促進の後、これらの高エネルギー状態からの1つまたは複数の一次分子過程は、細胞の段階で測定可能な生物学的効果をもたらしうる。作用スペクトルは、波長、周波数、または光子エネルギーの関数として生物活性を表す。Karuは、作用スペクトルは光受容体分子の吸収スペクトルに似ていなければならないと提案した最初の研究者であった。発生するエネルギー伝達に対し吸収事象が生じるので、作用スペクトルの刺激波長は、光受容体の吸収スペクトルの範囲内にある。
【0231】
Karuは、さらに、細胞の段階における光子療法の特定の機構を最初に提案した(例えば、T.Karu、“Photobiological Fundamentals of Low Power Laser Therapy”、IEEE Journal of Quantum Electronics、1987年、第23巻、1703頁、T.Karu、“Mechanisms of interaction of monochromatic visible light with cells”、Proc.SPIE、1995年、第2630巻、2〜9頁を参照)。Karuの仮説は、細胞呼吸反応連鎖の構成要素による単色可視光および近赤外線の吸収に基づいていた。電子的に励起された状態の吸収および促進により、これらの分子のレドックス特性および電子移動の加速に変化が生じる(一次反応)。真核細胞のミトコンドリア内の一次反応の後に、細胞質、細胞膜、および核内に二次反応が次々に発生する。Karuは、複数の二次反応の哺乳類細胞に対する作用スペクトルを定義した(DNA、RNA合成、細胞接着)。これらの二次マーカーのすべてに対する作用スペクトルは、非常によく似ており、共通光受容体のあることが示唆された。次いで、Karuは、これらの作用スペクトルを還元状態と酸化状態の両方におけるチトクロムC酸化酵素の銅中心の吸収スペクトルと比較した。チトクロムC酸化酵素は、4つの酸化還元活性金属中心を含み、近赤外線スペクトル範囲内で強い吸光度を有する。チトクロムC酸化酵素のスペクトル吸収度と作用スペクトルは非常によく似ていた。これに基づき、Karuは、一次光受容体は、チトクロムC酸化酵素内で混合原子価銅中心であることを示唆した。
【0232】
チトクロムC酸化酵素は、すべての真核生物のミトコンドリア電子伝達系の終末酵素であり、ほとんどすべての細胞の適切な機能、特に、脳および心臓などの代謝活性の高い器官の適切な機能に必要である。チトクロムCは、さらに、テトロドトキシンによる電位依存性ナトリウムチャネルの阻害により生じるチトクロムC酸化酵素活性および一次神経細胞内のアップレギュレーションされたチトクロムC活性の減少を逆転するために赤外線の照射の刺激効果に関与する臨界発色団であることが示唆されている。研究者により(例えば、M.T.Wong-Rileyら、NeuroReport、2001年、第12巻、3033〜3037頁、J.T.Eellsら、Proceedings National Academy of Science、2003年、第100巻、3439〜3444頁)生体内で、マウス網膜神経細胞がメタノール中毒により誘発される損傷から保護されることが実証されている。メタノールの毒性代謝物は、チトクロムCを阻害するギ酸である。
【0233】
複数の研究者が、試験管内と生体内の両方で赤外線からATPの合成を増大することを実証している。Karuは、632ナノメートル、670ナノメートル、および820ナノメートルの波長で試験管内の細胞を照射すると、ミトコンドリア活性が増大しうることを証明した。
【0234】
生体内
急性心筋梗塞(AMI)および虚血性脳梗塞に対し動物モデルにおける光子療法の有効性を実証する研究が、公刊されているものも未公刊のものも含めて多数ある。これらの研究は、光子療法が、チトクロムCによる光の初期吸収によりシグナル伝達事象が次々に開始するのを誘発することを示唆している。これらのシグナル伝達事象は、見かけ上、遺伝子、転写因子をアップおよびダウンレギュレーションするだけでなく、ミトコンドリア作用を増大する。
【0235】
理論または特定の機構に縛られることなく、脳卒中においては、梗塞の大きさを縮小することが、(i)既存の組織の保存(神経保護)、および(ii)新しい組織の生成(神経細胞新生)の2つの方法のうちの一方または両方の組合せで発生しうる。多数の試験管内および生体内研究が、これらの潜在的機構を両方とも支持している。神経細胞新生に対するNIR光の潜在的効果は、直截的であり、新しい細胞の数を増やすか、または虚血性傷害の結果として生成される新しい細胞の喪失を防ぐ。神経保護作用は、(i)組織生存の直接的刺激、(ii)組織生存の間接的刺激(例えば、増殖因子活性の増大)、および(iii)有毒因子の減少の少なくとも3つの機構から生じうる。
【0236】
図36は、虚血性脳梗塞組織損傷に関与する伝達物質と損傷が発生する時点を示すグラフである。図36は、梗塞の重症度を低くするために光子療法が潜在的介入できる複数の潜在的場所を示している。虚血性脳梗塞が発症した後早い時期に、興奮性アミノ酸(EAA)が、NMDA受容体の活性化を介してCa2+流入を誘導し、神経およびグリア細胞損傷を引き起こす。多数の即時型初期遺伝子(IEG)が、30分以内にc-fos、c-junなどを発現する。活性酸素種(ROS)は、脂質過酸化反応を引き起こし、さらに損傷を引き起こす食細胞を活性化した。ROSは、大半の細胞成分を損傷する。次いで、サイトカインが発現され、多形核好中球(PMN)を虚血脳に移行させる。マクロファージおよび好中球は、脳実質内に続く。アポトーシスは、さらに脳卒中損傷を増大させるカスパーゼ活性を介して発生する。
【0237】
既存の組織の保存(神経保護)は、組織の直接的刺激の結果生じうる(例えば、ATP合成またはミトコンドリアからのチトクロムC放出の防止による)。虚血の結果、酸素およびブドウ糖が不足して虚血ゾーンにATPが枯渇する。結果として生じるATPの不足は、重大度に応じて、細胞機能を低下させる。極端な場合には、エネルギー枯渇により、細胞脱分極、カルシウム流入、ならびに壊死およびアポトーシス過程の活性化が生じる。近赤外線(NIR)は、培養下の様々な細胞種類、および心臓組織中のATPの生成を刺激する。梗塞心臓組織を1回照射すると、治療後4時間すると組織ATPレベルの統計的に有意な3倍の増大が生じる。NIRの効果は、照射が終了した後も長く続く。この持続効果は、さらに、一部は、ミトコンドリア作用の保存によるものである可能性がある。NIR照射梗塞心臓組織は、損傷したミトコンドリアの50%を超える減少を示した。虚血の後、すぐには失われない心筋組織は、“気絶した(stunned)”状態にあり、数日間、気絶した状態のままである可能性がある。特に、これは、気絶した状態であるのは組織内のミトコンドリアである。気絶状態にあるミトコンドリアは、損なわれていないが、代謝的に活性でないミトコンドリアであることを示す特徴的形態変化がある。そのようなものとして、血流を回復させた場合でも、ミトコンドリアは、酸素およびブドウ糖を使用可能なエネルギー(ATP)に変換することができない。
【0238】
神経保護作用は、さらに、ミトコンドリアからのチトクロムC放出を防ぐことにより組織の直接的刺激の結果として生じうる。ミトコンドリアから細胞質内へのチトクロムCの放出は、強いアポトーシスシグナルである。チトクロムCが放出された結果、カスパーゼ-3が活性化し、アポトーシス経路が活性化する。アポトーシスを起こした細胞は、脳卒中の発症後数時間のうちに出現するが、細胞数のピークは、再灌流の24時間から48時間後である。脳卒中のマウスモデルでは、細胞質チトクロムCは、閉塞してから少なくとも24時間後に検出されうる。試験管内では810ナノメートルの光は、チトクロム酸化酵素活性のTTX誘導減少を防ぐことができる。光子療法は、さらに、チトクロムCが細胞質内に放出されるのを防ぐことにより生体内でチトクロム酸化酵素活性を維持することができ、その結果、アポトーシスが防止される。チトクロムCの放出は、Bcl/Bax系により調節される。Baxは、放出を促進し、Bclは、放出を減少させる。試験管内の筋原線維培養液中で、NIR光は、Bcl-2発現を促進し、Bax発現を阻害するが、これはチトクロムC放出データの防止と適合している。
【0239】
神経保護は、さらに、間接的刺激からも生じうる(例えば、血管形成または細胞生存遺伝子および/または増殖因子のアップレギュレーションにより)。血管形成および脳卒中に関して、最近の研究は、脳血流量(CBF)は、影響のある領域において代償性新血管形成を引き起こしうることを示している。CBFが低いと、結果として、低酸素誘導因子-1(HIF-1)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、およびVEGF受容体のアップレギュレーションが生じる。マウスのpMCAoモデルでは、VEGFの注入の結果、梗塞の大きさが減少する。AMIモデルでは、VEGFは、光子療法で増大する。
【0240】
細胞生存遺伝子および/増殖因子のアップレギュレーションに関して、光子療法は、特定の有益な遺伝子のアップおよびダウンレギュレーションを行うことができることが示されている。これらの遺伝子産物は、アポトーシスを防止または寛解することができ、これは、脳卒中周辺部全体およびAMIの気絶状態にある心筋内で発生することが知られている。AMIモデルでは、心臓保護分子HSP70およびVEGFの発現が増大される。脳卒中では、同等の神経保護分子をアップレギュレーションすることが可能であり、組織を保存し、その結果、梗塞の大きさを縮小できる。BDNF、GDNF、EGF、FGF、NT-3などを含む、VEGFに加えて、様々な因子が神経保護に関わっている。神経細胞生存を促進するためにアップレギュレーションされうる因子は多数あり、少なくともそのうちの1つはNIR光治療により増大する。
【0241】
神経保護は、さらに、有毒因子の減少からも生じうる(例えば、抗酸化保護または組織機能および生存に有害な因子の削減)。抗酸化保護に関して、NIR光は、フリーラジカルにより誘発される損傷を低減することができる。フリーラジカル損傷の副産物は、脳卒中後の損傷した脳組織内に見られる。この損傷は、再灌流傷害時に好中球により媒介されると考えられる。公称スピントラップ剤NXY-059(フリーラジカルスカベンジャー)は、脳卒中の発症後2.25時間以内に与えられれば梗塞の大きさを縮小する(マウスでは、すぐに与えるほど効果が高い)。NIR光は、AMIモデルにおけるカタラーゼの発現を誘発しうる。カタラーゼは、フリーラジカル損傷を防止することができる強力な抗酸化薬であり、脳卒中の領域内で生成された場合、NXY-059と同じ機構を介して損失を防ぐことができる。軸索生存は、カタラーゼにより改善されることが知られている。
【0242】
それに加えて、多数のサイトカインおよび他の因子が、組織機能および生存に有害な再灌流の際に生成される。これらの因子は、既存の食細胞およびリンパ球細胞の活性を促進するとともに、追加細胞を損傷領域に引き寄せる。NIR光は、神経細胞損傷のモデルにおいてサイトカインのレベルを下げることができる。特に、IL-6およびMCP-1(炎症性サイトカイン)は、脊髄損傷のモデルにおいて誘導される。NIR光は、IL-6およびMCP-1を著しく低減し、脊髄神経の再成長を促進する。IL-6は、ヒトの脊髄損傷にも重要な役割を果たすと考えられる。
【0243】
神経細胞新生に関して、最近の数年間に、脳は場合によっては新しい神経細胞を生成する能力を有することが確定している。神経幹細胞は、脳室周囲領域内、および海馬に存在することが知られている。成人の脳内に天然に存在する増殖因子は、それらの幹細胞からの新しい神経細胞の生成を刺激することができる。脳卒中の発症後、神経細胞新生が、海馬内で開始し、一部の細胞は実際に損傷領域に移行し、成熟神経細胞となる。
【0244】
NIR光は、形成される新しい細胞の数を増やすか、または新しく生成される細胞の喪失を防ぐことにより効果的である場合がある。後者は、より有意であり、新しく生成された細胞の大半は、脳卒中の発症後2から5週間以内に死ぬ(マウスモデル)。Oronによる未公刊の研究では、NIR光は、梗塞心臓内に埋め込まれた心筋細胞の生存率を高めることが示されている。他の研究では、分化に通常必要な特定の増殖因子が存在しなくても、ヒト神経前駆細胞は810ナノメートルの照射の刺激で分化するように誘導できることが示されている。これらのデータは、赤外線照射が増殖因子とまったく同じようにな刺激シグナルとして作用するとすれば神経細胞新生が発生する可能性のあることを示唆している。AMIのブタ研究からの早期のデータは、810ナノメートルを照射したブタの心筋は、心臓発生の証拠を示すことを示している。この結果は、コントロールに対するレーザ治療群内の有意なデスミン染色の存在により実証され、また成長中の心筋細胞であるように見えるものの存在を実証する微細構造的解析により実証された。
【0245】
波長選択
以下の節では、本明細書に記載されている光線療法のいくつかの実施形態に対する波長の選択に関して、発明者に対して現在明らかであるものとして、理論と可能な作用機構について説明する。本出願の請求項の範囲は、いずれかの理論または潜在的作用機構の正確さ、関連性、または詳細に依存するものと解釈すべきではない。したがって、本出願の請求項は、理論または特定の機構に縛られることなく解釈されるべきである。
【0246】
いくつかの実施形態では、電磁放射線による非侵襲的送達および加熱は、患者の脳の治療において使用すべき電磁放射線波長の範囲に実用上の制限を課す。いくつかの実施形態では、患者の脳の治療で使用される電磁放射線の波長は、(1)試験管内でミトコンドリア作用を刺激することができること、(2)組織を透過できること、(3)標的組織内の吸収、(4)生体内の他の虚血モデルにおける有効性、および(5)所望の1つまたは複数の波長の所望の出力を持つレーザ光源を利用可能であることという5つの考慮事項のうちの1つまたは複数を考慮して選択される。これらの効果の組合せにより、生体内で治療薬として使用する少数の波長が決まる。これらの因子がいくつかの実施形態において組み合わされ、それにより、それぞれの波長に対する効率因子を形成できる。800ナノメートルを中心とする波長は、特に効率的である。それに加えて、808ナノメートルの光は、すでに、ミトコンドリア作用を刺激し、マウスとイヌの心筋梗塞モデルにおいて機能することが判明している。以下の節では、これらの考慮事項を詳しく説明する。
【0247】
ミトコンドリアに対する光刺激効果
ミトコンドリアは、酸素および炭素源を水と二酸化炭素に転換し、この過程でエネルギー(ATPとして)および還元等量(レドックス状態)を生成する。ミトコンドリア内の電子伝達系の過程詳細は、図37に概略的に示されている。ブドウ糖と酸素から放出される化学エネルギーは、ミトコンドリアの内膜上のプロトン勾配に変換される。この勾配は、次に、アデノシン三リン酸分解酵素複合体によりATPを生成するために使用される。それに加えて、電子伝達連鎖を下る電子の流れは、NADPHおよびNADH(およびFADなどの他の因子)を生成する。これらの補因子は、最適な範囲内に細胞内の酸化還元電位を維持する上で重要である。この過程は、ミトコンドリア作用の化学浸透圧説と呼ばれている(Dr.Peter Mitchellは、これらの重要な過程を解明したことでノーベル化学賞を受賞している)。
【0248】
電子伝達連鎖には、複合体I〜IVとアデノシン三リン酸分解酵素(複合体Vとも呼ばれる)の5つの大きさ連鎖があり、それぞれの複合体は多数の個別タンパク質を含む(図37を参照)。重要な複合体の1つである複合体IV(チトクロム酸化酵素)は、酸素の代謝作用に関わる成分である。チトクロムC酸化酵素タンパク質は、銅中心を通して複合体IV内の電子伝達に関わる重要因子である。これらの銅中心は、近赤外線領域内の光エネルギーの吸収に重要な発色団(光受容体)として提案されている。
【0249】
余談だが、チトクロムC酸化酵素は、ここ数年、アポトーシスの調節(プログラムされた細胞死)の重要因子としてもてはやされている。ミトコンドリアから細胞質ゾル内へのチトクロムC酸化酵素の放出は、プロアポトーシスシグナルである。
【0250】
光は、複合体IVを直接活性化することができ、またアデノシン三リン酸分解酵素(および還元当量)を介してATPの生産を間接的に推進することができると仮定している人もいる。例えば、Karuは、これらの過程の活性化スペクトルを研究し、最大刺激エネルギー依存細胞機能がチトクロムC酸化酵素内の銅中心の吸収帯に対応する波長を見いだした。図38は、哺乳類の細胞を刺激するために使用される光の波長の関数として細胞増殖およびシトクロム酸化酵素活性の割合を示すグラフである。これらの結果に基づくと、620、680、760、および820ナノメートル(±10ナノメートル)の波長は、細胞活動を促進することがわかる。620および820ナノメートルの波長は、635および810ナノメートルの最強の銅吸収最大値に近い。
【0251】
他の群からの追加のデータは、チトクロムC酸化酵素が重要な標的であることを示唆している。光(670ナノメートル)は、ナトリウムチャネル遮断薬テトロドトキシン(TTX)の毒性効果から初代神経細胞を救済しうる。TTXは、治療される神経細胞内のシトクロム酸化酵素を還元し、この還元作用は、光治療により逆転される(シトクロム酸化酵素活性の増大)。生体内モデルでは、670ナノメートルの光を使用して、網膜損傷のメタノール媒介モデルにおける網膜機能を救済する。メタノールは、代謝されてギ酸になるが、これは、チトクロムC酸化酵素を標的とする選択的ミトコンドリア毒素である。光(670ナノメートル)の照射は、メタノールによる誘発される損傷から網膜を救った。
【0252】
組織透過性および吸収
試験管内および試験管内に近い類似の条件(網膜研究)により、すでに、光が動物に有益な効果をもたらしうることが実証されている。それでも、これらの効果は、非関与組織を透過する能力があるとしてもほとんど必要としなかった。介在組織を通した照射による脳卒中および心筋梗塞の治療では、影響を受ける組織を透過できる波長のみが、その疾病を治療する潜在力を有する。
【0253】
光は、様々な発色団により吸収されうる。チトクロムC酸化酵素などのいくつかの発色団は、光エネルギーを細胞に対する化学エネルギーに変換することができる。他の発色団は、単純なものでよく、光エネルギーは、熱に転換され、例えば、水となる。光エネルギーの吸収は、波長に依存し、また発色団に依存する。
【0254】
水またはヘモグロビンなどのいくつかの発色団は、遍在しており、組織内への光エネルギーの透過がほとんど、またはまったくない程度に光を吸収する。例えば、水は、約1300ナノメートルより上の光を吸収する。したがって、この範囲内のエネルギーは、水が含まれることで組織を透過する能力をほとんど持たない。しかし、300から1300ナノメートルの範囲内の波長では水は透明であるか、または透明に近い。他の例は、ヘモグロビンであるが、これは、300から670ナノメートルの範囲の領域内でもっぱら吸収するが、670ナノメートルを超えると十分透明である。
【0255】
これらの幅のある仮定に基づき、体内への“IR窓”を定義することができる。この窓内では、透過することが多少ありえるいくつかの波長がある。この説明は、介在組織の波長依存散乱硬化を含まない。
【0256】
様々な組織の吸収/透過は、様々な波長の有用性を調べるために直接測定されている。図39は、波長の関数として血液を通る光の透過率(任意の単位)を示すグラフである。血液は、700ナノメートルを超える領域ではあまり吸収せず、特に、780ナノメートルよりも上の波長では透明である。700ナノメートルよりも下のは波長は、ほとんど吸収され、治療に関して有用である可能性はない(局所的な指示を除く)。
【0257】
図40は、脳組織による光の吸収度を示すグラフである。脳内の吸収は、620から900ナノメートルの範囲の波長に対して強い。この範囲は、さらに、ミトコンドリア内の銅中心が吸収する範囲でもある。脳は、特にミトコンドリアに富んでおり、代謝的に非常に活性の高い組織である(脳は、血流と酸素消費量の20%を占める)。そのようなものとして、620から900ナノメートル範囲の光の吸収は、光刺激効果が発生する場合に予想される。
【0258】
図39および40を組み合わせることにより、図41に示されているように、エネルギー伝達の効率を波長の関数として計算することができる。780から880ナノメートルまでの範囲の波長は、脳を標的とした場合に好ましい(0.6以上の効率)。ピーク効率は、約800から830ナノメートルである(1.0以上の効率)。これらの波長は、水またはヘモグロビンによって吸収されず、脳を透過する可能性がある。これらの波長は、脳に到達すると、その脳により吸収され、有用なエネルギーに転換される。
【0259】
これらの効果は、マウスの組織で直接的に実証されている。808ナノメートルの光の吸収は、図42に示されているように、様々なマウスの組織を通して測定された。皮膚および脂肪などの軟組織は、光をほとんど吸収しない。ミトコンドリアに富んでいる筋肉は、光を吸収する度合いが大きい。骨でさえも、かなり透過的である。しかし、上で指摘されているように、脳組織は、脊髄組織とともに、808ナノメートルの光もよく吸収する。
【0260】
他の組織における有効性
2つの波長は、虚血/ミトコンドリア損傷の動物モデルにおいて、つまり、670ナノメートルと808ナノメートルで、有効性を実証している。670ナノメートルの波長を有する光は、網膜損傷において有効であることを示している。808ナノメートルの波長を有する光は、心筋梗塞の動物モデルにおいて有効であることを実証している(軟組織損傷と同様に)。
【0261】
軟組織損傷に対する近赤外線の効果は、手根管症候群(830ナノメートル)および膝腱炎(830ナノメートル)についてFDA認可治験で確定されている。両方の場合に、830ナノメートルの光は、症状の解決に対するプラセボよりも優れていた。
【0262】
808ナノメートルの波長を有する光は、さらに、マウス、イヌ、およびブタにおける梗塞の大きさを縮小し、および心筋梗塞(MI)モデルの死亡率を下げるために使用された。MIモデルは、類似の過程-アポトーシス、カルシウム流入、ミトコンドリア損傷-が脳卒中およびMIに関与していたため、波長選択に特に関係している。
【0263】
光のいくつかの波長は、生物過程の活性化に関連しており、他の波長はそうでない。特に、光媒介ミトコンドリア活性化は、生物刺激のマーカーとして使用されている。生体内マーカーの不足がある場合、光活性化の試験管内マーカーの使用は、多数の潜在的波長を絞り込むのに役立った。ミトコンドリアを活性化する波長が決定され、これらの波長は、生体内モデルで使用された。
【0264】
標的組織への透過も、重要である。生物学的効果が刺激される場合、その刺激は、標的組織および細胞に到達しなければならない。この点に関して、800から900ナノメートルまでの範囲の波長は、有用であり、体内を透過することができる。特に、800から830ナノメートルまでの波長は、脳を透過し、その脳により吸収されることに対して効率的である。
【0265】
808ナノメートルの光の使用は、脳卒中の治療のための強固な基盤となる。この光の波長は、標的組織(脳)を透過することができ、標的組織により吸収され、ミトコンドリア作用を刺激し、虚血(MI)の関係動物モデルにおいて機能する。この仮定は、808ナノメートルの光が脳卒中(マウスの)に関連する神経学的欠損および梗塞の大きさを縮小することができるという目を見張る発見により支持される。
【0266】
他の波長は、これらの特性のうちのいくつかを有する。例えば、670ナノメートルの光は、ミトコンドリア作用を促進し、網膜神経細胞を保存することができる。しかし、この波長は、ヘモグロビンによって大いに吸収されるので、組織をよく透過しない。したがって、脳卒中の治療には役立たない。
【0267】
いくつかの実施形態では、630から904ナノメートルの範囲の波長を使用できる。この範囲は、試験管内でミトコンドリアを活性化し、動物モデルに効果を有する波長を含む。これらの波長は、さらに、体内を透過することができる主要な帯域を含む。
【0268】
人間の脳内の透過
出力密度(PD)測定は、人間の脳組織の連続する層に約808ナノメートルの波長を有するレーザ光を通す透過度を決定するために行われた。レーザ光が人間の頭がい骨を通過した後ビームプロファイルを近似したビーム伝達システムを使用して大脳皮質の表面に、最大出力が約35ワットの(808±5)ナノメートルの波長を有するレーザ光を当てた。Ocean Optics分光光度計Model USB 2000、Serial No.G1965を使用し人間の脳組織のセクションを通してピーク出力密度測定を実行し、Sony Model DCR-IP220、Serial No.132289を使用して、散乱の後のビーム直径の近似値を求めた。
【0269】
新鮮なヒトの脳および脊髄標本(死亡した後6時間以内に採取した)を集めて、生理ダーキンス溶液に浸けた。軟膜層、くも膜層、および血管系は、無傷であった。脳を中心線で矢状方向に切断し、その切断部を容器に入れ、厚さ4.0センチメートル(±0.5センチメートル)、2.5センチメートル(±0.3センチメートル)、および1.5センチメートル(±0.2センチメートル)で測定した。PD測定結果が表2に示されている。
【0270】
【表2】

【0271】
図43は、10mW/cm2の入力PDに対するPDと硬膜からの深さとのグラフであり、以下で説明されるように、明るいバーはPDの予測値に対応し、暗いバーは7.5μW/cm2の推定最小作業PDに対応する。
【0272】
以前の動物実験結果に基づき、脳卒中動物モデルにおける有効性を示すことができる脳の組織内の最小の知られているPDの控え目な推定値は、7.5μW/cm2である。この推定最小作業PDは、10mWがマウスの脳表面に印加され、7.5μW/cm2のPDが表面から1.8センチメートルのところで直接測定された実験から導かれる。この脳卒中モデルは、一貫して、脳卒中についてレーザプローブから1.8センチメートルを含む、著しい有効性をもたらした。この7.5μW/cm2は、控え目な推定値であり、脳表面の同じ出力密度も一貫して3センチメートルのウサギ血塊シャワーモデルにおいて有意な有効性をもたらすことに留意されたい。また、ヒトの脳実験における出力密度測定結果は、レーザエネルギーが容易に透過すべきであるCNSで満たされた溝からの影響を考慮に入れないことに留意されたい。しかし、最小出力密度ハードルとして7.5μW/cm2を控え目に仮定し、溝からの予想される透過のメリットを無視したとしても、上述の実験により、皮質上で透過される約10〜15mW/cm2(人の例示的な線量測定法に従って)は、脳の表面から少なくとも3.0センチメートルのところで有効になることが確認されている。
【0273】
生体内熱測定
生体内熱測定を実施して、約808ナノメートルの波長を有するレーザ光の生体組織への加熱効果を決定した。808ナノメートルのGaAlAsレーザ光源を生きているウサギとマウスの頭部の皮膚に直接接触させた。このレーザ光源は、ほぼガウス型のビームプロファイルを有し、ビーム直径は2.5〜4.0ミリメートル(1/e2)であった。熱電対プローブ(ニュージャージー州クリフトン所在のPhysitemp Instruments Inc.のModel Bat-12)を皮下組織内の、硬膜の下に入れ、様々な出力密度で測定を記録した。これらの測定の結果は、表3に報告されている。
【0274】
【表3】

【0275】
硬膜下領域には治療用エネルギー密度の4倍の密度の最小加熱(例えば、0.5℃未満)がある。皮質内の可能な加熱を最小にする生体組織の“ヒートシンク”効果は、ヒートシンクと血流体積が大きいためマウスまたはウサギよりもヒトの方が著しく大きく、脳卒中の領域内の加熱の望ましくない効果をさらに制限する。したがって、本明細書に記載されているいくつかの実施形態では、治療線量のエネルギーが、硬膜の望ましくない加熱を引き起こすことなく脳卒中の領域に伝達される。
【0276】
本明細書に示されている説明および図面は、本発明、その原理、およびその実用的応用を他の当業者に伝えることを意図したものである。当業者であれば、特定の使用の要求条件に最もよく合う形で、本発明を様々な形態において適合させ、応用することができる。したがって、記載されているような本発明の特定の実施形態は、網羅的である、または本発明の制限であることを意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0277】
【図1】患者の頭部にぴったりはまるキャップを備える治療装置を示す概略図である。
【図2】1つのエレメントを備える治療装置の一部の一実施形態およびそれと頭皮および脳との関係を示す、図1の線2-2によって切り取った部分の断面概略図である。
【図3】エレメントを通して流動材料を搬送するための入口導管と出口導管に接続された容器を備えるエレメントを持つ一実施形態を示す略図である。
【図4A】頭皮と接触する部分および頭皮から離間した部分を持つエレメントを備える治療装置の一部の他の実施形態を示す、図1の線2-2によって切り取った部分の断面概略図である。
【図4B】複数の光源、および頭皮と接触する部分および頭皮から離間した部分を持つエレメントを備える治療装置の一部の他の実施形態を示す、図1の線2-2によって切り取った部分の断面概略図である。
【図5A】線4-4に沿って切り取った図4Bによるエレメントの一実施形態を示す断面概略図である。
【図5B】線4-4に沿って切り取った図4Bによるエレメントの一実施形態を示す断面概略図である。
【図6A】光源が頭皮から離間した一実施形態を示す概略図である。
【図6B】光源が頭皮から離間した一実施形態を示す概略図である。
【図6C】光源が頭皮から離間した一実施形態を示す概略図である。
【図7A】エレメントによる光に対する拡散効果を示す概略図である。
【図7B】エレメントによる光に対する拡散効果を示す概略図である。
【図8A】患者の頭皮に当たる異なる断面積を有し、患者の頭部を通過して伝播して患者の脳組織の一部を照射する光ビームを示す概略図である。
【図8B】患者の頭皮に当たる異なる断面積を有し、患者の頭部を通過して伝播して患者の脳組織の一部を照射する光ビームを示す概略図である。
【図9A】キャップとライトブランケットを備える光源とを備える治療装置を示す概略図である。
【図9B】ライトブランケットの一実施形態を示す概略図である。
【図9C】ライトブランケットの一実施形態を示す概略図である。
【図10】柔軟なストラップおよび筐体を備える治療装置を示す概略図である。
【図11】ハンドヘルドプローブを備える治療装置を示す概略図である。
【図12】プログラマブルコントローラを備える制御回路のブロック図である。
【図13】光源およびコントローラを備える治療装置を示す概略図である。
【図14】レーザダイオードを備える光源および鏡および複数のモーターを備えるガルボメーターを示す概略図である。
【図15A】互いに関して空間的にシフトされる照射パターンを示す概略図である。
【図15B】互いに関して空間的にシフトされる照射パターンを示す概略図である。
【図16】本明細書で説明されている実施形態による例示的な治療装置を示す概略図である。
【図17A】小さな血塊塞栓性脳卒中を有するウサギの個体群に対する、治療持続時間2分間の7.5mW/cm2のレーザ治療の効果を示すグラフである。
【図17B】小さな血塊塞栓性脳卒中を有するウサギの個体群に対する、治療持続時間10分間の25mW/cm2のレーザ治療の効果を示すグラフである。
【図18】ウサギの小血塊塞栓性脳卒中の後のレーザ誘起行動改善に対する治療用窓を示すグラフである。
【図19】患者の脳を治療するための患者が着装できる例示的な装置を示す概略図である。
【図20】本明細書で説明されているいくつかの実施形態による複数のエレメントを有する例示的な装置を示す概略図である。
【図21】例示的なエレメントを示す分解概略図である。
【図22A】インチ単位の例示的な寸法を有する例示的な光学コンポーネントを示す概略図である。
【図22B】本明細書に記載されているいくつかの実施形態による他の例示的な光学コンポーネントを示す概略図である。
【図22C】本明細書に記載されているいくつかの実施形態による他の例示的な光学コンポーネントを示す概略図である。
【図23】インチ単位の例示的な寸法を有する例示的な第1支持リングを示す概略図である。
【図24】インチ単位の例示的な寸法を有する例示的な第2支持リングを示す概略図である。
【図25】本明細書に記載されているいくつかの実施形態に適合している例示的なラベルを示す概略図である。
【図26A】装置の右側の装置に対する例示的なラベル付け構成を示す概略図である。
【図26B】装置の左側の装置に対する例示的なラベル付け構成を示す概略図である。
【図26C】装置を上から見て扁平にした、図26Aおよび26Bの例示的なラベル付け構成を示す概略図である。
【図27A】図20〜25の装置の加工時に形成された構造の様々な段階を示す概略図である。
【図27B】図20〜25の装置の加工時に形成された構造の様々な段階を示す概略図である。
【図27C】図20〜25の装置の加工時に形成された構造の様々な段階を示す概略図である。
【図27D】図20〜25の装置の加工時に形成された構造の様々な段階を示す概略図である。
【図27E】図20〜25の装置の加工時に形成された構造の様々な段階を示す概略図である。
【図28】患者の皮膚の下の患者身体部分を治療するために患者の皮膚に照射するため光を放射する装置を示す概略図である。
【図29】例示的な光学デバイスに光学的に接続された例示的な光導管を示す概略図である。
【図30】本明細書で説明されているいくつかの実施形態に適合している簡素化された光学デバイスを示す概略図である。
【図31A】図31Aの2つの断面の平面が互いに、また出力光学素子に一般に垂直である図29の光学デバイスから放射される光ビームの2つのビームプロファイル断面を示す図である。
【図31B】図29の光学デバイスから放射される光ビームのエンサークルドエネルギーを示す図である。
【図32A】滑らかな金メッキ円錐状内面を有する図30の光学デバイスから放射される光ビームの2つのビームプロファイル断面を示す図である。
【図32B】図30の光学デバイスから放射される光ビームのエンサークルドエネルギーを示す図である。
【図33】グリットサンドブラスト処理された円錐状内面を有する図30の光学デバイスから放射される光ビームの2つのビームプロファイル断面を示す図である。
【図34A】図29の光学デバイスのビーム広がりを示す図である。
【図34B】図30(サンドブラスト処理された内面を有する)の光学デバイスのビームの広がりを示す図である。
【図35】患者の頭皮の少なくとも1つの所定の領域を患者の脳に照射するレーザ光に制御可能なように曝すための例示的な方法の流れ図である。
【図36】虚血性脳梗塞組織損傷に関与する伝達物質と損傷が発生する時点を示すグラフである。
【図37】ミトコンドリア内の電子伝達系の概略図である。
【図38】哺乳類の細胞を刺激するために使用される光の波長の関数として細胞増殖およびシトクロム酸化酵素活性の割合を示すグラフである。
【図39】波長の関数として血液を通る光の透過率(任意の単位)を示すグラフである。
【図40】脳組織による光の吸収度を示すグラフである。
【図41】波長の関数としてエネルギー伝達効率を示すグラフである。
【図42】様々なラット組織を通る808ナノメートル光の吸収度を示す棒グラフである。
【図43】10mW/cm2の入力PDに対するPDと硬膜からの深さとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0278】
500 装置
510 本体
512 アパーチャ
520 エレメント
522 第1部分
523 第1材料
524 第2部分
525 第2材料
532 光学コンポーネント
534 第1支持リング
536 第2支持リング
538 ラベル
542 平坦な部分
544 環状部分
546 突起部
560 マネキン頭部固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の脳を治療するため患者が着装できる装置(500)であって、
前記装置が前記患者に着装されたときに前記患者の頭皮の少なくとも一部を覆う本体(510)と、
複数のエレメント(520)であって、各エレメントは前記装置が前記患者に着装されたときに前記患者の頭皮の対応する部分に適合する第1部分(522)を有し、各エレメントは前記エレメントに取り外し可能な形で接触する光源に適合する第2部分(534)を有し、各エレメントは前記患者の脳の少なくとも一部に照射する前記光源からの光を実質的に透過する複数のエレメント(520)と
を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記本体は、複数のアパーチャ(512)を備え、各エレメントは前記複数のアパーチャのうちの対応する1つに位置決めされることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記本体は、フードを備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記本体は、伸縮性材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記本体は、ナイロン裏地ポリクロロプレンを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記各エレメントは、前記エレメントを透過する光により引き起こされる前記頭皮における温度上昇を抑制することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記各エレメントは、柔軟な材料を含む実質的に透明な袋を備え、
前記袋には液体が入ることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記液体は、水を含むことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記液体は、前記頭皮の屈折率と実質的に一致する屈折率を有することを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記各エレメントは、柔軟な材料を含む実質的に透明な袋を備え、
前記袋には第1物質(523)と第2物質(525)が入ることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記第1物質は、柔軟で実質的に透過的な断熱物質を含み、前記第2物質は、堅く、実質的に透過的な熱伝導物質を含むことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記第1物質は、ゲルを含み、前記第2物質は、シリカを含むことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記第2物質は、前記第1物質内に分散された複数のボールを含むことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記第1物質は、複数の第1層を含み、前記第2物質は、複数の第2層を含み、前記複数の第1層は前記複数の第2層の上に積み重ねられ、それにより、前記第1物質と前記第2物質の交互に重ねた層を有するスタックを形成することを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項15】
前記各エレメントは、空隙を実質的に含まない前記頭皮との対応するインターフェースを形成することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記光源からの前記光は、各エレメントを透過した後に、前記患者の頭蓋を透過し、有効な量の光を前記患者の脳の少なくとも一部に伝達する出力密度を有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記装置は、1回使用した後に使い捨てできることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項18】
患者の脳を治療するため患者に着装できる装置(500)であって、
前記装置が前記患者に着装されたときに前記患者の頭皮の少なくとも一部を覆うための手段と、
前記患者の脳の少なくとも一部光を透過するための手段であって、前記透過手段は前記装置が前記患者に着装されたときに前記患者の頭皮の対応する部分に適合する第1部分を有し、前記透過手段は前記透過手段と取り外し可能な形で接触する光源に適合する第2部分を有する透過手段とを備えることを特徴とする装置。
【請求項19】
光源を患者の頭部に接続するための光学インターフェースであって、
複数の光学窓と、
前記複数の光学窓を向き付けるための支持体と
を備え、
少なくとも1つの光学窓の少なくとも片側が形状を合わせられる表面を有することを特徴とする光学インターフェース。
【請求項20】
前記少なくとも1つの光学窓は、膨張可能な容器を備えることを特徴とする請求項19に記載の光学インターフェース。
【請求項21】
前記膨張可能な容器は、約0.5インチから約3インチまでの範囲内の直径を有することを特徴とする請求項20に記載の光学インターフェース。
【請求項22】
前記複数の光学窓は、少なくとも約10個の光学窓を備えることを特徴とする請求項21に記載の光学インターフェース。
【請求項23】
前記複数の光学窓は、約15個から25個までの光学窓を備えることを特徴とする請求項22に記載の光学インターフェース。
【請求項24】
患者を治療するためのシステムであって、約800ナノメートルから約830ナノメートルまでの波長範囲内の治療用電磁エネルギーを印加する患者の頭皮の複数の部位を識別するための支持体と、
前記治療用電磁エネルギーの電磁波光源と前記支持体を併用するための命令と
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項25】
患者の頭皮の近くに位置決めするための患者用インターフェースであって、前記インターフェースは、
支持体と、
前記支持体上の膨張可能な容器を備える少なくとも1つの光学窓と
を備え、
前記容器は治療用波長を有し、また約2立方センチメートルから約50立方センチメートルまでの範囲内の体積を有する電磁放射線を実質的に透過することを特徴とする患者用インターフェース。
【請求項26】
少なくとも約10個の光学窓を備えることを特徴とする請求項25に記載の患者用インターフェース。
【請求項27】
少なくとも約10個の膨張可能な容器を備えることを特徴とする請求項25に記載の患者用インターフェース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26A】
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【図26B】
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【図26C】
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【図27A】
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【図27B】
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【図27C】
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【図27D】
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【図27E】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31A】
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【図31B】
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【図32A】
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【図32B】
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【図33】
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【図34A】
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【図34B】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【公表番号】特表2009−525069(P2009−525069A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552492(P2008−552492)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/002474
【国際公開番号】WO2007/089744
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(506083383)フォトテラ・インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】