説明

脳の神経変性疾患の治療法

【課題】哺乳類脳内の欠損のあるコリン作動性ニューロン、病変のあるコリン作動性ニューロン、および損傷のあるコリン作動性ニューロンの治療に使用される治療法であって、特にアルツハイマー病などの神経変性状態の治療に有用な治療法の提供。
【解決手段】一定濃度の組換えニュートロフィンを、同定された欠損のある脳細胞、病変のある脳細胞、または損傷のある脳細胞の内部、または極近傍への輸送で、ウイルスベクターを用いること。ニュートロフィン成分の一部として輸送されるニュートロフィンの濃度は、組成物溶液1ml当たり1010〜1015個のニュートロフィンをコードするウイルス粒子の範囲で変動し、各輸送部位は2.5μl〜25μlのニュートロフィン組成物を、輸送部位まで最長でも10分間で緩やかに受け取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する米国特許出願
本出願は、1998年4月15日に出願されて現在係属中の米国特許出願第09/060,543号の特許請求の範囲の一部継続出願であり、その優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、神経変性疾患の治療法、および治療的ニュートロフィンを哺乳類脳へ輸送する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の歴史
ニューロトロフィンは、哺乳類ニューロンの発生および調節に生理学的な役割を果たしている。成体では、CNSの前脳基底部のコリン作動性ニューロン、運動ニューロン、および感覚ニューロンは、神経栄養因子に対して反応し、それらの存在が喪失または損傷した後に再生可能である。このためニューロトロフィンは、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、末梢知覚性ニューロパシー、および脊髄損傷などの神経変性状態の治療に用いる薬剤として極めて有望であると考えられている。
【0004】
AD、ALS、および知覚性ニューロパシーの治療におけるニュートロフィンの使用に関する臨床試験は現在進行中である。しかし、副作用(例えば非標的細胞への拡散、または輸送用溶媒に対する免疫応答)が極めて少なく、(例えば血液脳関門の迂回、および標的細胞に至るニュートロフィンの長期投与の達成により)CNSに十分浸透する、ニュートロフィンを標的細胞へ輸送するプロトコルの探索は、ニュートロフィンの臨床的投与に至る明確な道筋を示していない。特に、複数の方法が提案されているものの、有効な輸送法および用量に関するパラメータは同定されていない。したがって、脳およびCNSの神経変性疾患の治療法の将来は明るいと思われるが、臨床プロトコルが成功しているとは未だ言えない。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
本発明は、ニュートロフィンを哺乳類脳へ輸送することに関する臨床的に有用なプロトコルを提供する。本発明は霊長類の神経変性状態の治療に特に有用であり、本発明により輸送されたニュートロフィンは、ニューロンの成長と神経機能の回復を促進する。
【0006】
より具体的には、本発明はニュートロフィンを、哺乳類脳内の欠損のある細胞、病変のある細胞、または損傷のある細胞へ実質内輸送する方法を含む。1つの局面では、本発明は、遺伝的に修飾されている標的となるコリン作動性ニューロン(「標的細胞」)内で治療的ニュートロフィンを産生させる際に使用される特定のプロトコルを提供する。標的細胞の遺伝的修飾は、治療を標的としたニューロンのインビボにおけるトランスフェクションにより、または標的ニューロンに隣接する細胞(ニューロンまたはグリア)を対象とした、所望のニュートロフィンをインサイチューで発現させる組換え発現ベクターのトランスフェクションにより達成される。
【0007】
個々の単位投与量のニュートロフィンを脳内に輸送する際の位置は、脳内で予め同定された欠損のある標的細胞、病変のある標的細胞、または損傷のある標的細胞に近いことを元に選択される。このような標的細胞の、内因性成長因子に対する曝露を強化するために、各輸送部位は、標的細胞から約500 μm以内で、且つ別の輸送部位から約10 mm以内の部位を選択する。各単位投与量のニュートロフィンの輸送用に選択される部位の総数は、治療対象領域の大きさによって変化する。
【0008】
理想的には、ウイルス発現ベクターを用いたニュートロフィンの輸送では、各単位投与量のニューロトロフィンは、薬学的に許容される液体中にウイルス発現ベクターを含み(「ニュートロフィン組成物」)、1 mlのニュートロフィン組成物当たり1010〜1015 個のNGF発現ウイルス粒子を提供する、2.5 μl〜25 μlの発現ベクター組成物を含む。この方法によりニュートロフィン組成物は、外科的切開を介して注入することで、脳内の各輸送部位に輸送される。この際、提供されるニュートロフィン組成物の容量に応じて、輸送は約5分〜10分で完了する。
【0009】
このような、神経系成長因子の輸送に関して標的化された、局所的に特異的なプロトコルであれば、非誘導的にCNSへ完全なまま輸送される神経栄養因子による潜在的な有害作用を避けながら、血液脳関門を越えて中枢神経系(CNS)の実質を介した物質の拡散によって課される限度が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1−1】ゲンバンクアクセッション番号X52599に示されたヒトベータ神経成長因子をコードするヌクレオチド配列のリプリントである。
【図1−2】図1−1の続きを示す図である。
【図1−3】図1−2の続きを示す図である。
【図2−1】ゲンバンクアクセッション番号E07844に示されたヒトNT-3をコードするヌクレオチド配列のリプリントである。
【図2−2】図2−1の続きを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
I.本発明による神経変性障害治療の標的組織
本発明は、ニュートロフィンによる脳内のニューロン、特に欠失がADなどの認知障害を伴う神経変性状態と関連するニューロンの良好な再生の方法に必要なパラメータを特定して定義する。
【0012】
本発明で定義される第1の方法パラメータは、適切な標的組織の選択である。脳の領域は、神経栄養因子に対する反応性が保持されることをふまえて選択される。ヒトでは、神経栄養因子に対する反応性を成人期に保持するCNSニューロンには、コリン作動性の前脳基底部ニューロン、嗅内皮質ニューロン、視床ニューロン、青斑核ニューロン、脊髄感覚ニューロン、および脊髄運動ニューロンが含まれる。このような複雑なネットワークのニューロンのコリン作動性区画内における異常は、AD、パーキンソン病、および筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー・ゲーリック病とも呼ばれる)を含むいくつかの神経変性障害と関連している。コリン作動性の前脳基底部(特に前脳基底部のCh4領域)は特に適切な標的組織である。
【0013】
霊長類の前脳では、巨大細胞ニューロンCh1〜Ch4は、大脳皮質、視床、および扁桃体の基底外側核に対するコリン作動性の神経支配を提供する。ADなどの神経変性疾患の被験者では、神経成長因子(NGF)受容体を含むCh4領域(マイネルトの核底部)のニューロンが、正常対照と比べて著しく萎縮している(例えばKobayashiら、Mol. Chem. Neuropathol.、15:193〜206 (1991)を参照)。
【0014】
正常被験者では、ニューロトロフィンは、発生中に交感神経細胞および感覚ニューロンの細胞死を防ぎ、ならびに成体のラットおよび霊長類におけるコリン作動性ニューロンの変性を防ぐ(Tuszynskiら、Gene Therapy、3:305〜314 (1996))。結果として生じる、前脳基底部の同領域における機能性ニューロンの喪失は、ADなどの神経変性状態にある被験者にみられる認知機能の低下の原因であると考えられている(Tuszynskiら、前掲、およびLehericyら、J. Comp. Neurol.、330:15〜31 (1993))。
【0015】
ヒトのADでは、前脳基底部のニューロンの喪失は、直径が約1 cmの実質内領域で起きる。このように大きな領域で、病変のあるニューロンを治療する際には、最大10か所の別個のインビボ遺伝子ベクター輸送部位にベクター組成物を用いた治療が望ましい。しかし、前脳基底部の局所的損傷を治療する際には、脳の病変部位は小さい可能性があるので、臨床的に重要な数のコリン作動性ニューロンの回復には少ない輸送部位(例えば5か所またはそれ未満)の選択で十分である。
【0016】
重要な点は、特定のインビボ遺伝子輸送部位が、ニューロン消失領域内でクラスターをなすように選択されるということである。このような領域は、磁気共鳴画像法(MRI)および生検を含む、いくつかの既知の手法で臨床的に同定することができる。ヒトの場合、MRIなどの非侵襲的なインビボにおける画像法が好ましい。ニューロン消失領域が同定されたら、輸送部位を定位分布を元に選択し、NGFの各単位投与量を脳内の標的部位、または標的細胞の500 μm以内で、別の輸送部位から約10 mm未満に輸送する。
【0017】
II.本発明による神経変性障害の治療における用量の必要条件および輸送プロトコル
本発明で定義される別のパラメータは、標的組織内に輸送されるニュートロフィンの用量である。この意味において「単位投与量」とは通常、1 mlのニュートロフィン組成物に含まれるニュートロフィンの濃度を意味する。ウイルスベクターの場合、ニューロトロフィン濃度は、1 mlのニュートロフィン組成物に含まれるウイルス粒子数で決定される。理想的には、ウイルス発現ベクターを用いたニュートロフィンの輸送では、各単位投与量のニューロトロフィンは2.5 μl〜25 μlのニュートロフィン組成物を含む。またこの組成物は、薬学的に許容される液体に含まれるウイルス発現ベクターを含み、1 mlのニュートロフィン組成物あたり1010〜1015個のNGF発現ウイルス粒子を提供する。
【0018】
ニュートロフィン組成物は、マイクロインジェクション、注入、スクレイプローディング(scrape loading)、エレクトロポレーション、または外科的切開を介して組成物を輸送部位組織内に直接輸送するのに適した他の手段により、標的組織に含まれる各輸送細胞部位に輸送される。輸送は約5〜10分かけて緩やかに行われる(時間は輸送対象のニュートロフィン組成物の総容量に依存する)。
【0019】
本発明で使用される直接輸送法が、インビボにおける遺伝子治療に関連した制限性の危険因子、すなわちNGFをコードする導入遺伝子を有するベクターの非標的細胞へのトランスフェクションの可能性を除くことを当業者であれば理解すると思われる。本発明では輸送は直接的であり、また輸送部位は、分泌性NGFの拡散が、制御され、予め決定された脳の領域に生じて、非標的細胞との接触を最低限に抑えながら標的ニューロンとの接触を最適化するように選択される。
【0020】
驚くべきことに霊長類では、ニュートロフィンをコードする機能的な導入遺伝子を有するウイルスベクター(AAV)が、脳およびCNSへの輸送後にヒトニュートロフィンを最長12か月間にわたって発現することがわかっている。したがって本発明は、ニュートロフィンを脳内で長期的に利用することが可能な供給源を提供する。
【0021】
III.本発明の実施に使用される材料
本発明の方法に有用な材料には、インビボで使用可能な組換え発現ベクター、パッケージング用の細胞株、ヘルパー細胞株、合成インビボ遺伝子治療用ベクター、調節可能な遺伝子発現系、封入用材料、薬学的に許容される担体、および対象となる神経系成長因子をコードするポリヌクレオチドなどがある。
【0022】
A.ニューロトロフィン
既知の神経系成長因子には、神経成長因子(NGF)、脳誘導神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3 (NT-3)、ニューロトロフィン-4/5 (NT-4/5)、ニューロトロフィン-6 (NT-6)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、線維芽細胞成長因子ファミリー(FGF 1〜15)、白血病抑制因子(LIF)、インスリン様成長因子ファミリーの一部の分子(例えばIGF-1)、ニューツリン(neurturin)、ペルセフィリン(persephin)、骨形成タンパク質(BMP)、イムノフィリン、トランスフォーミング成長因子(TGF)ファミリーの成長因子、ニューレグリン、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)などが含まれる。特にNGFおよびNT-3は臨床試験および動物研究で検討されており、有望な結果が得られている(例えばHeftiおよびWeiner、Ann Neurol.、20:275〜281 (1986);TuszynkiおよびGage、Ann. Neurol.、30:625〜636 (1991);Tuszynskiら、Gene Therapy、3:305〜314 (1996)、ならびにBleschおよびTuszynski、Clin. Neurosci.、3:268〜274 (1996)を参照)。既知の神経系成長因子のうち、NGFおよびNT-3 (ADでCh4領域の治療に使用)が本発明の用途に好ましい。
【0023】
ヒト(h)NGFおよびhNT3は、免疫原性が同種成長因子群と比べて比較的低いため、本発明によるヒト疾患の治療法における用途に好ましい。しかし、他の神経系成長因子が、本明細書に記載されたような適切な検討法による本発明における用途に適切であることも知られている。
【0024】
hNGFおよびhNT3をコードするポリヌクレオチドは、他の哺乳類種のニュートロフィンのコード配列として知られている(例えばマウスのNGFのコード配列は、ヒトのコード配列と相同性が極めて高い)。例えばhNGFのコード配列を含むcDNAは、ゲンバンクアクセッション番号E03015に報告されている(Kazuoら、日本特許出願JP19911175976-A。ゲノムhNGFのヌクレオチド配列(および推定アミノ酸配列)はゲンバンクアクセッション番号HSBNGFに報告されており(Ullrich、Nature、303:821〜825 (1983))、またmRNA配列はゲンバンクアクセッション番号HSBNGFACに報告されている(Borsaniら、Nucleic Acids Res.、18:4020 (1990))。hNT3のゲノムヌクレオチド配列は、ゲンバンクアクセッション番号E07844に報告されている(Asaeら、日本特許出願JP1993189770-A4)。以上の引例は、ニュートロフィンの合成に使用されるヌクレオチド配列およびアミノ酸配列に関する、当技術分野における知見を説明する目的で、参照として本明細書に組み入れられる。ゲンバンクヌクレオチドデータベースから得られたNGFおよびNT-3をコードするヌクレオチド配列の代表的なリプリントをそれぞれ図1および図2に示す。
【0025】
B.組換え発現ベクター
インビボで遺伝子を標的細胞に移す方法には以下の基本的な段階が含まれる:(1)発現がCNSの疾患または機能不全と相関する、適切な導入遺伝子または導入遺伝子群の選択;(2)遺伝子輸送用の適切かつ効率のよいベクターの選択および開発;(3)標的細胞に対するインビボにおける形質導入、および導入遺伝子の発現が安定かつ効率的に生じることの証明;(4)インビボにおける遺伝子治療の手順が重篤な有害作用を生じないことの証明;ならびに(5)宿主動物における所望の表現型上の作用の証明。
【0026】
他のベクターが使用されることがあるものの、本発明の方法に使用するための好ましいベクターはウイルスベクターおよび非ウイルスベクターである。選択されるベクターは以下の基準を満たすべきである:1)ベクターが標的細胞に必ず感染することにより適切な宿主域を有するウイルスベクターが必ず選択されること;2)輸送された遺伝子が(細胞死を誘導することなく)細胞内で長期間安定に維持されて発現可能であること;ならびに3)ベクターが標的細胞に損傷を与えるとしても極めてわずかであること。
【0027】
哺乳類の成体脳の細胞は分裂しないので、選択される組換え発現ベクターは、非分裂細胞内にトランスフェクト可能で、同細胞内で発現可能でなければならない。現時点で上記の能力をもつことが知られているベクターには、アデノウイルスやアデノ随伴ウイルス(AAV)などのDNAウイルス、ならびにHIVを骨格としたレンチウイルスおよびネコ免疫不全ウイルス(FIV)などの一部のRNAウイルスがある。上記能力を有する他のベクターには、単純ヘルペスウイルス(HSV)がある。
【0028】
例えば、最近開発されたHIVを骨格としたレンチウイルスベクターは、他のレトロウイルスと同様に、導入遺伝子を宿主細胞の核に挿入することができる(発現の安定性を促進する)が、他のレトロウイルスとは異なり、非分裂細胞の核に挿入させることが可能である。このようなレンチウイルスベクターは、直接注入後に脳細胞に安定にトランスフェクトし、ウイルスタンパク質に由来する検出可能な病原性を生じることなく外来導入遺伝子を安定に発現することがわかっている(参照として本明細書に組み入れられるNaldiniら、Science、272:263〜267 (1996)を参照)。HIV-1レトロウイルスベクターを最初に構築した研究者の開示により、当業者は、本発明の方法の用途に適したレンチウイルスベクターを構築することができる(レトロウイルスの構築に関する、より一般的な引用は例えばKriegler、「遺伝子導入および発現、実験マニュアル(Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual)」、W. Freeman Co. (NY 1990)、およびMurray、EJ編、「分子生物学の方法(Methods in Molecular Biology)」、第7巻、Humana Press (NJ 1991)を参照)。
【0029】
アデノウイルスおよびAAVは、インビボにおける使用にかなり安全であることがわかっており、インビボで長期の遺伝子発現を生じることがわかっている。したがって、神経系成長因子をコードする導入遺伝子の安全かつ長期におよぶ発現(障害ニューロンまたは疾患ニューロンの再成長の促進に必要なよりも長期にわたって維持されること)が必要な本発明の方法の用途に好ましく選択される。当業者は、アデノウイルスベクターおよびAAVベクターを構築する手法に通じており、同手法で、主張された発明に有用なベクター組成物を容易に作製することができる(例えば当技術分野における技術の程度を説明する目的で、内容が本明細書に組み入れられる、例えばStraus、「アデノウイルス(The Adenovirus)」、Plenum Press (NY 1984)、451〜496;Rosenfeldら、Science、252:431〜434 (1991);米国特許第5,707,618号[遺伝子治療に使用されるアデノウイルスベクター];および米国特許第5,637,456号[ベクターストックに含まれる機能的に活性のあるアデノウイルスの量を決定する方法]を参照)。
【0030】
現在、HIVやFIVなどのレンチウイルスを骨格とするベクターは、開発の初期段階にあるが、インビボにおける発現の安定性および安全性プロファイルに基づくインビボにおける遺伝子治療において魅力ある候補である。
【0031】
ヘルペスウイルス、アルファウイルス、およびポックスウイルスも特性が十分明らかにされているウイルスベクターであり、本発明の方法に適用することができる。これらのベクターのなかでもアデノ随伴ベクターは、病原性がないこと、また導入遺伝子を宿主ゲノムに挿入できることから、特に魅力ある選択肢である。
【0032】
ウイルス以外の輸送法も本発明の方法に使用するための選択肢となる。特にプラスミド(「裸の」状態、または脂質と複合体を形成した状態)、リポプレックス(lipoplex)(リポソームと複合体を形成した核酸)、アミノ酸ポリマーと核酸の複合体、および人工染色体は、細胞のトランスダクションが可能で外来導入遺伝子の輸送が可能なことが知られている非ウイルス性遺伝子媒体である。合成インビボ遺伝子治療用ベクターも、本発明の方法の用途における1つの選択肢である。
【0033】
本発明に使用される神経系成長因子の組換え発現のベクターの構築は、当業者に対して詳細な説明を必要としない従来の手法で達成することができる。ただし総説について当業者は、マニアティス(Maniatis)ら、「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」、Cold Spring Harbor Laboratory、(NY 1982)を参考にすることができる。
【0034】
簡単に説明すると、組換え発現ベクターの構築には標準的な連結法が用いられる。構築されたベクター中の正確な配列を確認するための分析では、ライゲーション混合物で宿主細胞を形質転換し、良好な形質転換体を適切であれば抗生物質耐性により選択することができる。形質転換体に由来するベクターを調製し、制限酵素で分析したり、および/または例えばメッシング(Messing)らの方法(Nucleic Acids Res.、9:309、1981)、マキアム(Maxam)らの方法(Methods in Enzymology、65:499,1980)、または当業者に周知の他の適切な方法で配列決定を行う。切断断片の大きさによる分離は、例えばマニアティスらの著書(「分子クローニング(Molecular Cloning)」、133〜134、1982)に記載された従来のゲル電気泳動法で行う。
【0035】
遺伝子の発現は、転写段階、翻訳段階、または翻訳後段階で制御されている。転写の開始は、遺伝子発現の初期の重要な段階である。転写の開始はプロモーター配列およびエンハンサー配列の影響を受け、これらの配列と相互作用する特定の細胞性因子の影響を受ける。多くの原核生物の遺伝子の転写単位は、プロモーター、また場合によってはエンハンサーまたは調節配列を含む(Banerjiら、Cell 27:299 (1981);Cordenら、Science 209:1406 (1980);ならびにBreathnachおよびChambon、Ann Rev Biochem 50:349 (1981))。レトロウイルスの場合、レトロウイルスゲノムの複製に関与する制御配列は末端反復配列(long terminal repeat:LTR)内に存在する(Weissら編、「腫瘍ウイルスの分子生物学:RNA腫瘍ウイルス(The molecular biology of tumor viruses:RNA tumor viruses)」、Cold Spring Harbor Laboratory、(NY 1982))。モロニーマウス白血病ウイルス(MLV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV)のLTRは、プロモーター配列およびエンハンサー配列を含む(Jollyら、Nucleic Acids Res. 11:1855 (1983);Capecchiら、「エンハンサーおよび真核生物の遺伝子発現(Enhancer and eukaryotic gene expression)」;GulzmanおよびShenk編、101〜102、Cold Spring Harbor Laboratories (NY 1991))。他の強力なプロモーターには、サイトメガロウイルス(CMV)に由来するプロモーター、および他の野生型ウイルスのプロモーターが含まれる。
【0036】
いくつかの非ウイルス性プロモーターのプロモーター領域およびエンハンサー領域についても報告されている(Schimdtら、Nature 314:285 (1985)、Rossiおよびde Crombrugghe、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:5590〜5594 (1987))。休止細胞において導入遺伝子の発現を維持し、また上昇させる方法には、I型コラーゲン(1および2)を含むプロモーター(ProckopおよびKivirikko、N. Eng. J. Med. 311:376 (1984);SmithおよびNiles、Biochem 19:1820 (1980);de Wetら、J. Biol. Chem.、258:14385 (1983))、SV40のプロモーター、およびLTRプロモーターの使用が含まれる。
【0037】
導入遺伝子の発現を誘導するウイルスのプロモーターおよびウイルス以外のプロモーターに加えて、エンハンサー配列を用いて導入遺伝子の発現レベルを高めることができる。エンハンサーは、天然の遺伝子の転写活性だけでなく、一部の外来遺伝子の転写活性も高めることができる(Armelor、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 70:2702 (1973))。例えば本発明では、コラーゲンエンハンサー配列をコラーゲンプロモーター2(I)とともに使用することで導入遺伝子の発現を高める。またSV40ウイルスのエンハンサー配列を用いて導入遺伝子の発現を高めることができる。このようなエンハンサー配列には、いずれも参照として本明細書に組み入れられるグルス(Gruss)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:943 (1981);ベノイスト(Benoist)およびシャンボン(Chambon)、Nature 290:304 (1981);ならびにフロム(Fromm)およびバーグ(Berg)、J. Mol. Appl. Genetics、1:457 (1982)に記載された72塩基対の反復が含まれる。このような反復配列は、さまざまなプロモーターと直列に存在すると、多種多様なウイルス遺伝子および細胞性遺伝子の転写を高めることができる(Moreauら、Nucleic Acids Res. 9:6047 (1981))。
【0038】
導入遺伝子の発現は、プロモーター活性を促進するサイトカインを用いて長期の安定な発現のために上昇させることもできる。複数のサイトカインが、コラーゲン2(1)およびLTRのプロモーターに続く導入遺伝子の発現を調節することが報告されている(Chuaら、connective Tissue Res.、25 161〜170 (1990);Eliasら、Annals N.Y. Acad. Sci、580:233〜244 (1990));Seligerら、J. Immunol. 141:2138〜2144 (1988);およびSeligerら、J. Virology 62:619〜621 (1988))。例えば、トランスフォーミング成長因子(TGF)、インターロイキン(IL)-1、およびインターフェロン(INF)は、LTRなどのさまざまなプロモーターによって誘導される導入遺伝子の発現を下方制御する。腫瘍壊死因子(TNF)およびTGF1は上方制御するので、プロモーターで誘導される導入遺伝子の発現を制御する際に使用できる可能性がある。有用であることが証明されている他のサイトカインには、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)および上皮成長因子(EGF)などがある。
【0039】
コラーゲンエンハンサー配列(Col1(E))を有するコラーゲンプロモーターを使用して、免疫的に防御された状態にかかわらず、処置を行った脳内で生じる可能性がある対ベクター免疫応答をさらに抑制することによって、導入遺伝子の発現を高めることもできる。また、ステロイド(例えばデキサメタゾン)を含む抗炎症性剤を、治療対象の宿主に対してベクター組成物の輸送直後に、また継続して(好ましくはサイトカイン介在性の炎症応答が沈静化するまで)投与することができる。シクロスポリンなどの免疫抑制剤を投与することで、LTRプロモーターおよびCol1(E)プロモーター-エンハンサーを下方制御して導入遺伝子の発現を抑制するインターフェロンの産生を抑えることもできる。
【0040】
C.薬学的調製物
本発明に使用されるニュートロフィン組成物を形成する際には、ニューロトロフィンをコードする発現ベクター(ウイルスベクターおよび非ウイルスベクターを含むがこれらに限定されない)を、薬学的に許容される懸濁液、溶液、または乳濁液中に含めることができる。適切な溶媒には、生理食塩水およびリポソーム調製物などがある。
【0041】
より具体的には、薬学的に許容される担体は、無菌の水溶液または非水溶液、懸濁液、および乳濁液を含む場合がある。非水性溶媒の例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルがある。水性担体には、水、アルコール/水溶液、乳濁液、または 懸濁液(生理食塩水および緩衝用溶媒を含む)がある。非経口的な溶媒には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース液、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、または不揮発性油がある。静脈注射用の溶媒には、溶液、および栄養補充液、電解質補充液(例えばリンゲルデキストロース液を元にした溶液)などがある。
【0042】
例えば抗菌物質、抗酸化物質、キレート剤、および不活性ガスなどの保存剤および他の添加物も含めることができる。また、ニュートロフィン導入遺伝子の組成物を、後に本発明で再構成および使用に利用するために、当技術分野で周知の手段で凍結乾燥することができる。
【0043】
コロイド分散系も標的遺伝子輸送に使用することができる。コロイド分散系には、高分子複合体、ナノカプセル、微粒子、ビーズ、および脂質を基材とする系(水中油型乳濁液、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む)が含まれる。リポソームは、インビトロおよびインビボにおける輸送用溶媒として有用な人工膜ベシクルである。大きさが0.2〜4.0 μmの大型単層ベシクル(LUV)は、大型の巨大分子を含むかなりの割合(%)の水性緩衝液を包むことができることが報告されている。RNA、DNA、および完全なウイルス粒子を水性の内層中に包むことが可能であり、生物学的に活性な状態で細胞に輸送することができる(Fraleyら、Trends Biochem. Sci.、6:77、1981)。哺乳類細胞に加えて、リポソームは、植物細胞、酵母細胞、および細菌細胞において機能的にコードする導入遺伝子の輸送に使用されている。リポソームを効率のよい遺伝子媒体とするためには以下の特性が求められる:(1)生物学的活性を損なわないようにアンチセンスポリヌクレオチドをコードする遺伝子の高効率封入;(2)非標的細胞と比較して標的細胞に対する選択的かつ実質的な結合;(3)標的細胞の細胞質へのベシクルの水性含有物の高効率輸送;および(4)遺伝情報の正確かつ効率的な発現(Manninoら、Biotechniques、6:682、1988)。
【0044】
リポソームの組成は通常、リン脂質、具体的には相転移温度が高いリン脂質の組み合わせ、通常はステロイド(特にコレステロール)との組み合わせである。他のリン脂質または他の脂質を使用することもできる。リポソームの物理的特性は、pH、イオン強度、および二価陽イオンの存在の影響を受ける。
【0045】
リポソーム作製に有用な脂質の例には、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミンなどのホスファチジル化合物、スフィンゴ脂質、セレブロシド、およびガングリオシドが含まれる。特に有用な脂質は、脂質部分が14〜18個の炭素原子、特に16〜18個の炭素原子を含み飽和しているジアシルホスファチジルグリセロールである。例示的なリン脂質には、卵に含まれるホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、およびジステアロイルホスファチジルコリンが含まれる。
【0046】
リポソームの標的化は、解剖学的因子および機構的因子を元に分類可能である。解剖学的な分類は、選択性、例えば器官特異的、細胞特異的、およびオルガネラ特異的な選択性の程度に基づく。機械的な標的化は、受動的か能動的かの違いを元に区別することができる。受動的な標的化では、リポソームが、洞様毛細血管を含む器官の細網内皮系(RES)の細胞に分布する天然の性質を用いる。一方、能動的な標的化には、天然の局在部位以外の器官および細胞型への標的化を達成するための、リポソームと特異的リガンド(モノクローナル抗体、糖、糖脂質、もしくはタンパク質など)との結合による、またはリポソームの組成または大きさの変化によるリポソームの変化が関与する。
【0047】
標的となる遺伝子輸送系の表面は、さまざまな方法で修飾することができる。リポソーム標的輸送系の場合、脂質基をリポソームの脂質二重層に取り込ませることで、標的リガンドをリポソーム二重層と安定に結合した状態に維持することができる。さまざまな連結基を用いて、脂質鎖と標的リガンドを連結することができる。
【0048】
IV.ベクター組成物の輸送法
本発明で定義されたプロトコルにより、ニュートロフィン組成物の直接輸送を、外科的切開を介したマイクロインジェクション(例えばCapecchi、Cell、22:479〜488 (1980)を参照);エレクトロポレーション(例えばAndreasonおよびEvans、Biotechniques、6:650〜660 (1988)を参照);注入、標的分子または共沈殿剤(例えばリポソームやカルシウム)との化学的複合体の形成、および標的組織を対象とした微粒子銃(Tangら、Nature、356:152〜154 (1992))を含む、当業者が熟知している手段で達成することができる。
【0049】
V.動物モデルおよび臨床評価
非ヒト霊長類の被験動物(実施例III)では、加齢の過程は、高齢のヒトでみられる脳内における神経学的変化をシミュレートする。コリン作動性ニューロンの欠損(例えばAD)にも似ている非高齢動物モデルは、老化の過程で変性する同じニューロンの自然発生的な変性を生じる、海馬由来の中隔を結ぶ脳弓系の離断である(例えば実施例IIを参照)。ラットおよび霊長類では、このような離断により、脳の中隔核および基底核(Ch4領域)において、コリン作動性および非コリン作動性の細胞体の逆行性変性が引き起される。
【0050】
以上の動物(特に脳の大きさと構造がヒトに酷似している非ヒト霊長類)は、ニュートロフィンによる処置が容易であり、高齢のヒトに匹敵する上記処置に対する臨床反応のモデルとなる。以上の動物モデルを対象とした本発明の方法の用途および有効性を示すデータを実施例で提供する。
【0051】
処置の臨床評価およびモニタリングは、上述のインビボ画像法、ならびに処置組織を対象とした生検および組織学的分析により実施することができる。後者の場合、前脳基底部のコリン作動性ニューロンの数を、例えば抗ニューロトロフィン抗体(分泌型ニューロトロフィンの免疫アッセイ法に使用)、またはNGF受容体(p75)、およびニューロン標識用のコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)を用いて組織試料中で測定することができる。処置を行った組織試料および対照の組織試料を対象としたインビトロにおける組織学的分析の代表的なプロトコルを実施例に記載する。
【0052】
実施について例示する、十分説明された実施例を有する本発明を以下に記載する。ただし、これらの実施例は、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲を制限するとみなすべきではない。実施例ではエクスビボにおける本発明の適用が説明されるが、得られる結果が、インビボにおける遺伝子輸送部位とともに本明細書に記載されたように、神経系成長因子をコードする上述の導入遺伝子のインビボ輸送により利用できること、ならびに実施例に記載された、移植部位の代用となる直接輸送する手段、および移植法を、当業者であれば理解すると思われる。
【0053】
実施例では、省略形「min.」は分を意味し、「hrs」および「h」は時間を意味し、また測定単位(「ml」など)は、標準的な省略形を意味する。引用されているすべての印刷物は参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0054】
実施例I
アデノ随伴ウイルスベクターの構築およびウイルス粒子の産生
アデノ随伴ウイルスベクターを構築する際には、以下の配列を含むように発現カセットをクローニングした:1)サイトメガロウイルスのプロモーター(CMVie);2)マルチクローニングサイト;3)内部リボソーム侵入部位とそれに続く、ヒト神経成長因子(NGF)の活性型β配列、または強化型の緑色蛍光タンパク質(EGFP)のコード配列;ならびに4)SV40のポリアデニル化配列。
【0055】
カセット全体を、ベクターpsub201 (アメリカン-タイプ-カルチャー-コレクション(American Type Culture Collection:ATCC))をXbaIで切断してAAVコード配列を除いてからクローニングした。NGF発現に関しては、ヒトNGF (ゲンバンクアクセッション番号X52599を参照)のコード配列をpsub-CXIEのマルチクローニングサイトに挿入して、ベクターpsub-CXIE-NGFを得た。このベクターをpsub-CXIEと命名し、対照となるGFPを発現するウイルス粒子の調製に使用した。上記ベクターを、NGFおよびGFPをコードする粒子の生産に使用した。
【0056】
組換えアデノ随伴ウイルスは、150 mmのプレートにつき18 μgの発現プラスミドpsub-CXIEまたはpsub-CXIE-NGF、18 μgのpXX2および54 μgのpXX6を、ほぼコンフルエントな293細胞を対象とした同時トランスフェクション法で作製した。トランスフェクトした細胞を48時間後に回収し、アデノ随伴ウイルスをイオジキサノール(Iodixanol)濃度勾配遠心およびヘパリンアフィニティクロマトグラフィーで精製した。ウイルスの濃縮および緩衝液の交換には、Biomax(商標) 100Kフィルターを使用した。ウイルスのアリコートは-80℃で保存した。ウイルス粒子数はサザンドットブロッティングで決定した。
【0057】
実施例II
コリン作動性細胞死の動物モデルにおけるインビボ遺伝子導入
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを、コリン作動性細胞死のインビボラットモデルの動物に注入し、神経変性を防ぐAAV-NGFベクター輸送の規模およびパラメータをインビボ遺伝子導入法で決定した。動物モデルを準備するために、成体フィッシャー344ラットを対象に脳弓の離断を行い、前脳基底部のコリン作動性ニューロンの細胞死を誘導した。NGF-AAVベクター(CXIE-NGF)、または対照となるEGFP-AAVベクター(CXIE)を、コリン作動性の前脳基底部に1010〜1012 粒子/ml (ニュートロフィン組成物)を含むストックベクター溶液を2.5 μl〜10 μl注入した。粒子は3〜5分間かけて右半球(脳表面からの座標:AP -0.3;ML -0.5;DV -6)に注入した。皮膚を閉鎖してラットを2〜4週間飼育した。
【0058】
AAVベクターを輸送すると、ベクター粒子の濃度および容積の上昇を伴うトランスフェクトション領域の拡大が誘導された。インビボにおける遺伝子発現の最大レベルは、ベクターの最高濃度、および注入最大量で達成された。2週間のこの実験により、インビボにおける持続的な遺伝子発現が明らかとなった。遺伝子発現は、グリアよりニューロンで顕著であった(>90%)。注入による有害作用は認められなかった。
【0059】
したがって、1010〜1012 粒子/mlの2.5 μl〜10 μlのベクターストックのベクター用量は忍容性に優れており、宿主のコリン作動性ニューロン系への最適なベクター輸送となり、有害作用、または標的のニューロン核を越えて広がる望ましくないベクターは認められなかった。NGFおよび強化型GFP発現はインビボにおいて少なくとも2週間は著明であった。
【0060】
実施例III
霊長類の老化によるアルツハイマー病のモデル
12歳の4頭の非高齢成体アカゲザル(Macaca mulatta(rhesus))を実験対象とした。非高齢アカゲザル(n=4、平均年齢=9.64±1.90歳)には外科的処置を行わず、その未処置の脳を調査対象とした。高齢のサルは、NGFレシピエント(n=6、平均年齢=22.55±0.56歳)、および対照サル(n=6、平均年齢=23.51±1.07歳)の2つの実験群に分けた。すべての手順および動物の扱いは、実験動物の健康、安全性、および苦痛の軽減に関する、NIH、AAALAC、USDA、神経科学会、および施設内(カリフォルニア大学サンディエゴ校)のガイドラインに厳密に準拠した。
【0061】
実施例IV
h-NGFを分泌する線維芽細胞の調製
NGFに対する反応性を示すために、高齢のサルを対象に、ヒトNGFを産生および分泌するように遺伝学的に修飾された自家線維芽細胞の実質内移植を以前に記載されたように行った。簡単に説明すると、皮膚生検で採取した自家線維芽細胞をインビトロで遺伝学的に修飾し、ヒトNGFの活性型部分を産生および分泌させた。トランスダクションの手順は、モロニーマウス白血病ウイルス(MLV)に由来する複製不能のレトロウイルスベクターを用いて行った。誘導細胞は、ネオマイシン類似体G418を含む培地で成長させることで選択した。
【0062】
生物学的に活性のあるNGFの生産は、記載されたようにPC12細胞から神経突起の伸長を誘導することで検証し、NGFのmRNAの生産はノーザンブロットで判定し、細胞で生産されたNGFの量は、ヒトNGFに特異的で5 pg/mlの感度のNGF ELISAで調べた。最適なNGF産生バルククローンを、連続継代により、インビボにおける移植に十分な数まで増幅した。細胞は、インビボにおける移植用に穏やかにトリプシン化して回収した。
【0063】
実施例V
h-NGFを生産するように遺伝学的に修飾した線維芽細胞の霊長類への実質内輸送
サルを対象に術前MRIスキャン(Tuszynskiら、Gene Therapy、3:305〜314、1996を参照)を行い、前脳基底部の標的移植領域を画像化した(Mesulamら、J. Comp. Neurol.、214:170〜197、1983を参照)。定位的移植用座標をMRIスキャンで決定した後に、個々のサルの実質内に自家NGF分泌性線維芽細胞の移植を行った。
【0064】
手術用の定位座標は、個々の被験動物の脳の磁気共鳴画像(MR)から作製した。Ch4の頭側と尾側の境界は、霊長類の組織学的脳切片、および標準的な霊長類の脳アトラスを参照として個々の被験動物のMRスキャンで決定した。Ch4の頭側-尾側の全距離をMRスキャンで測定し、5か所の移植片注入部位を、頭側-尾側の距離が等距離に分布するように選択した。
【0065】
腹側-背側(VD)および内側-外側(ML)の所望の注入部位は、細胞移植片が各座標において所望の標的のすぐ背側に配置されるように(500 μm以内)、且つ(対応するAP面における組織切片の調査により推定した)最大密度のコリン作動性ニューロン細胞体の内側-外側(ML)平面のちょうど中心に配置されるように選択した。したがって5個の移植片を、被験動物のCh4領域のそれぞれの側に、または1頭の被験動物あたり計10個の移植片を配置した。インビボ注入に関するリアルタイム座標は、MR画像上の換算表から計算した。被験動物を対象とした外科的処置は、MRスキャンを行った同じ定位装置内で行った。
【0066】
移植片を配置する際に、動物を霊長類用定位装置内に据え、正中線上の頭皮を切開して頭骨を露出させた。BFCシステムのAPおよびMLの定位座標を用いて開頭術部位の縁を決めた。開頭術後に、上矢状静脈洞の中点を測定してMLゼロ基準点を得た。硬膜を切開して、軟膜表面を反転させて露出させた。各注入部位の軟膜表面は、注入部位のVDゼロ基準点として用いた。
【0067】
AP面、ML面、およびVD面から得たゼロ基準点、ならびに動物のMRスキャンから計算した定位注入座標を用いて、5 μlの細胞を、Ch4標的領域の頭側-尾側の各5か所に、25ゲージのハミルトンシリンジを用いて両側に注入した(1頭につき10か所の移植片)。移植片は一般に、わずかに背側に位置するように(ただしCh4核の500 μm以内)した。注入速度は5 μl/分に調節した。細胞は、1.0×105 細胞/μlの濃度(1頭あたり計1千万個の移植細胞)で注入した。この濃度では、懸濁物に含まれる細胞は凝集することなく、インビボにおける生存細胞数が最大となるように十分高濃度で理想的に維持される。サルを3か月間飼育した後に屠殺した。
【0068】
数頭の対照高齢被験動物を対象に上述の手順で実質内移植を行った。移植細胞は、レポーター遺伝子であるβガラクトシダーゼを発現するように導入された自家線維芽細胞のいずれかを含むものとした(6匹のサルを対象)。βガラクトシダーゼの生産は、特異的な抗βガラクトシダーゼ抗体を用いてインビトロで評価した。細胞は、NGF移植片のレシピエントに関して上述された同数の実質内部位に移植した。
【0069】
すべての外科的手順において、25 mg/g ケタミンを腹腔内に注入して霊長類を前麻酔した。次に、気管内挿管によりイソフルランを投与して麻酔した。術後のサルを対象に詳細にモニタリングを行い、支持療法を行い、また適切な鎮痛薬を必要に応じて投与した。動物は、MRIスキャン実施に使用したものと同じ霊長類用定位装置(Crist Instruments)に据えた。正中線上の頭皮を切開して頭骨を露出させた。2.5×5 cmの矢状方向に開頭術を半頭蓋(hemicranium)の個々の側について行い、硬膜を切開して反転させ、定位的に誘導する細胞注入用部位を露出させた。10 μlの細胞を、25ゲージのハミルトンシリンジを用いて1 μl/分の速度で各側に注入した。術後にすべての実験動物を対象に不快感または毒性の徴候について詳細に観察を行った。3か月生存させた動物を対象に、噴門を介して1時間かけて、0.1M リン酸緩衝液を溶媒とする4%のパラホルムアルデヒド溶液を潅流し、続いて同緩衝液を溶媒とする5%ショ糖溶液を20分間かけて潅流した。この脳を冠状面に定位的にブロックした。
【0070】
実施例VI
加齢性のp75発現喪失の逆転
ADの脳では、前脳基底部のコリン作動性ニューロンの領域にNGFが蓄積し、前脳基底部ではNGFは少なくなる。この観察から、NGFの逆行性輸送が十分でないことが、ADで認められる前脳基底部のコリン作動性ニューロンの変性を促すという仮説が導かれる。ヒトでは、前脳基底部のコリン作動性ニューロンの機能不全は、加齢性の認知障害および記憶障害と密接に関連づけられている。
【0071】
哺乳類脳では、p75受容体がTrkA受容体と協同作用して、NGFに対する高親和性の結合部位を形成すると考えられている。TrkAの活性化は、軸索が切断されたコリン作動性ニューロンをNGFがレスキューするのに十分だが、NGFとp75との結合が破壊されるとNGFとTrkAの結合は低下する。したがって2種の受容体を同時に発現させれば、NGFに対する反応性がより大きくなると考えられる。これとは逆に発現しなくなれば、NGFに対する反応性の低下に至る可能性がある。p75とTrkAの発現はいずれもNGFで調節されているので、NGFシグナル伝達の喪失は、p75とTrkAの量をさらに減少させる。前脳基底部と皮質の両方におけるTrkAタンパク質の量の減少に至る、AD脳におけるTrkAの発現の喪失と組み合わせると、p75の発現低下は逆行性NGFシグナル伝達の低下に寄与する可能性がある。したがってp75の発現は、NGF結合、前脳基底部のコリン作動性ニューロンの機能不全、および認知障害のマーカーとなる。
【0072】
本発明の方法が、処置を行った霊長類の脳におけるp75発現に及ぼす作用を決定するために、サルに実施例IIIに記載された手順で処置を行った。次に各被験動物をケタミンおよびネンブタールで十分麻酔し、0.1 M リン酸緩衝液を溶媒とする4%のパラホルムアルデヒド溶液で噴門を介して1時間潅流を行った後に、同緩衝液を溶媒とする5% ショ糖溶液で20分間潅流を行った。次に脳を冠状面に定位的にブロックし、Ch4のAP全体を含む1個のブロックを得た。
【0073】
冠状切片を、40 μmに設定した凍結ミクロトーム上で切断した。6枚毎の切片に、p75の免疫応答性に関して処理を行った。簡単に説明すると、トリス緩衝食塩水(TBS)で切片を十分洗浄し、内因性ペルオキシダーゼを0.6% 過酸化水素溶液中でインキュベートすることで抑制した。切片をTBSで洗浄後に、TBS(TBS++)を溶媒とする0.5% Triton X-100を含む5% ロバ血清を用いてブロッキングした。一次抗体(TBS++を溶媒として1:100に希釈したモノクローナル抗体)中で24時間室温でインキュベートした。切片をTBS++で洗浄し、二次抗体(TBS++で1:500に希釈したビオチン化ロバ抗マウス抗体)中で1時間インキュベートし、TBS++で再び洗浄した後に、ベクターABCキットを用いて90分間インキュベートした。次にp75標識ニューロンをジアミノベンジジン(DAB)を色素源として用いて画像化した。次に切片をマウントしてカバーガラスをかぶせた。
【0074】
Ch4iニューロンに含まれるp75標識ニューロンの量を、立体解析学的な手順で測定した。本研究でCh4iを標的化した理由は、同領域が、記憶を調節する皮質領域に対するコリン作動性投射の起源の主要部位であるからである。
【0075】
Ch4は組織分布的に、前部(Ch4a)、中間部(Ch4i)、および後部(Ch4p)の3つの下位区画に分けることができる。前部区画は、さらに内側(Ch4am)部分と外側(Ch4al)部分に分けられる。これは血管構造、またはニューロン密度の希薄さで分けられている。しかしCh4aは、Ch4iに向かって後方に移動するので、Ch4amとCh4alの分割はそれほど明確ではなく、場所によっては消失する。この領域では、Ch4iの特徴的な構造である脚わなが、その外見を明確にし始める。脚わなはCh4iを腹側(Ch4iv)成分と背側(Ch4id)成分に分ける。Ch4iの前部境界となるこのレベルには、通常、Ch4idの側方の位置に存在する、前交連の一部もある。Ch4iの後部境界では、Ch4ivおよびCh4idが融合して、淡蒼球、被殻、および視索の交叉部に埋没した1つの核となる。
【0076】
立体解析学的なカウントは、Ch4iの全体について6枚毎の切片を対象に行った。アップル社製Macintosh PowerPC (商標)で作動し、オリンパス社製のVanox (商標) HBT-3顕微鏡にマウントしたJavelin (商標)製のビデオカメラに接続したNeuroZoom (商標)立体解析用コンピュータプログラムを用いて、よく知られたWest光学解析法で立体解析を実施した。簡単に説明すると、対象領域(Ch4i)の輪郭を、1倍の対物レンズを用いてNeuroZoomで決定した。特定の立体解析パラメータは次のようにNeuroZoomに設定した:
フラクション(面積率):5%
カウント用フレームサイズ:x=66.46 μm、y=53.73 μm
切片厚:40 μm
【0077】
以上のパラメータは、推定値の誤差係数(CE(P))が最小となるように、またサンプリングの効率が最大となるように調節した。
【0078】
NeuroZoomプログラムは、1つのカウント用フレームから次のフレームに至る動きを、顕微鏡にマウントしたLudl可動ステージを動かすことで制御した。Ch4iニューロンは、60倍の大開口数(1.40)の油浸対物レンズを用いてカウントした。細胞は、以下の基準に適合する場合にカウントに含まれるようにマークした:1)p75で標識されていること;2)細胞体がカウント用フレーム内にある(または選択境界に接している)が除外境界には接触していないこと;3)核の存在が明瞭に観察されること;および4)核が、選択容積内で良好に焦点が合うこと(即ち、上位12.5%および下位12.5%は除外し、核がこれらの除外容積のいずれにも焦点が合っていない)。多群比較は分散分析(ANOVA)で行い、フィッシャーの最小有意差法でポストホック解析を行った。
【0079】
p75標識Ch4iニューロンの数を4群のアカゲザルで比較した(2群は未処置群で、残り2群は遺伝的に修飾された線維芽細胞の実質内移植を受けた群)。若齢のサル(平均年齢=9.375±1.058歳)が未処置群の1群を構成し、高齢サル(平均年齢=25.139±2.455歳)が別の未処置群を構成した。前脳基底部に移植を受けた2つの高齢群のうち、1群(平均年齢=22.639±0.463歳)は、NGFを産生および分泌するように修飾された細胞の移植を受け、もう1群(平均年齢=23.321±0.927歳)は、βガラクトシダーゼを産生および分泌するように修飾された細胞の移植を受けた。
【0080】
未処置の高齢サルに由来するCh4i中のp75標識ニューロンは、未処置の若齢サルと比べて有意に少なかった(p<0.01)。NGFを移植した高齢サルに由来するp75標識Ch4iニューロンの平均数は、移植を受けた対照高齢サルと比べて有意に多かった(p<0.04)。またNGFを移植した高齢サルのp75標識Ch4iニューロンの数は、未処置の若齢サルの脳における同ニューロンの数と差は認められなかった(p=0.1288)。
【0081】
以上の結果は、前脳基底部のコリン作動性ニューロンにある低親和性のニューロトロフィン受容体(p75)の発現が自発的に失われること、またNGFを実質内に輸送することでp75の再発現を誘導可能であることを示している。
【0082】
実施例VII
導入遺伝子のインビボにおける取り込みを確認する組織像、NGFの発現、およびベータアミロイド誘導の欠損
試験動物を人道的に屠殺した後に採取した脳組織切片を40 μm間隔で凍結ミクロトーム上で切断した。6枚毎の切片をニッスル染色、またはヘマトキシリンおよびエオシンで処理した。アミロイドに対する免疫細胞化学的な標識は、アミロイドに特異的なモノクローナル抗体(抗A4)を用いて行った。一次抗体を含まない切片を処理することで標識の特異性を検証した。被験動物の代表的な切片を対象に、以下の各領域を対象に定量を行った:側頭葉皮質、前頭葉皮質、帯状皮質、島皮質、頭頂皮質、および後頭葉皮質;扁桃体および海馬;ならびにCh4領域の分割の中央部(マイネルト基底核)。被験動物に由来する試料切片は、領域および大きさについて厳密にマッチさせた。1領域あたりのアミロイドプラークの総数を定量して記録した。観察は、定量対象組織の内容に関して盲検的に行った。
【0083】
移植を受けた全被験動物で、各移植部位から500 μm以内の細胞移植片は生存していた。線維芽細胞の形態、および移植片全体の大きさについて、NGF移植片レシピエントと対照移植片レシピエントとの間に質的な差は認められなかった。移植片は、前脳基底部のCh4領域の分割の中央部に隣接して最も高頻度で認められたが、いずれの場合でも、少なくとも1つの移植片がCh4領域の分割の前部および後部に位置していた。
【0084】
アミロイドプラークは、成体の非高齢霊長類組織で全く検出されなかった。これとは対照的に、対照の高齢サルでは、前頭葉皮質、側頭葉の島皮質および帯状皮質、ならびに扁桃体においてアミロイドの免疫標識の有意な上昇が認められ、また非高齢サルに対して頭頂葉皮質および海馬では極めてわずかな上昇が認められた。いずれの群でもコリン作動性の前脳基底部にはプラークは全く認められなかった。
【0085】
高齢の対照サルでは、プラークは通常、ADで観察される典型的な「成熟」プラークの外見である免疫応答性沈着物について、濃い中心部のコアと、薄い周辺部のハロを示した。このような免疫標識パターンは、高齢の霊長類脳に関して報告された過去の報告とよく一致する。しかしアミロイド標識の上昇は、高齢のNGF移植脳では認められなかった。これは、3か月の実質内NGF輸送では、高齢の霊長類脳でベータアミロイドプラークの沈着が増加しないことを意味する。したがって、AD症状を示す霊長類の脳内へのNGF移植による恩典は、移植による外傷に応じてアミロイドの沈着を促すというリスクを冒すことなく達成される。
【0086】
最初に群間差を分散分析で統計学的に決定し、フィッシャーの最小有意差法を用いたポストホック解析を行った。しかし、非高齢の成体サルではアミロイドプラークが認められなかったので、NGF処理を行った高齢サルと対照の高齢サルとの比較は、対応のない二元配置のスチューデントt検定により行った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療的ニュートロフィンを、標的となる哺乳類脳内の欠損のあるコリン作動性ニューロン、病変のあるコリン作動性ニューロン、または損傷のあるコリン作動性ニューロンに輸送する方法であって、
ニュートロフィンをコードする導入遺伝子を含むニュートロフィン組成物を、標的ニューロンを含む脳領域内の1か所または複数の輸送部位に輸送する段階を含み、該導入遺伝子が、標的細胞内または標的細胞の500 μm以内で且つ別の輸送部位から10 mm以下の場所で発現され、さらにニュートロフィンと接触させることで、欠損、病変、または損傷が改善される方法。
【請求項2】
導入遺伝子をウイルス発現ベクターによって発現させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ウイルス発現ベクターがアデノウイルスである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ウイルス発現ベクターがアデノ随伴ウイルスである、請求項2記載の方法。
【請求項5】
ウイルス発現ベクターがレンチウイルスである、請求項2記載の方法。
【請求項6】
ウイルス発現ベクターがHIV-1である、請求項2記載の方法。
【請求項7】
ニュートロフィン組成物が、1 mlのニュートロフィン組成物当たり1010〜1015粒子濃度のニュートロフィンをコードするウイルス粒子を含む液体である、請求項2記載の方法。
【請求項8】
2.5 μl〜25 μlのニュートロフィン組成物を、各輸送部位に輸送する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
各輸送部位への輸送が、3分より多いかまたは3分で達成される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
各輸送部位への輸送が、10分未満または10分で達成される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
処置を受ける哺乳類がヒトであり、導入遺伝子がヒトニュートロフィンをコードする、請求項1記載の方法。
【請求項12】
ニューロトロフィンがヒトベータ神経成長因子(β-NGF)である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
ニューロトロフィンがヒトニューロトロフィン3 (NT-3)である、請求項11記載の方法。
【請求項14】
輸送部位が実質内である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
輸送部位が、コリン作動性の前脳基底部のCh4領域内である、請求項1記載の方法。
【請求項16】
導入遺伝子を非ウイルス発現ベクターによって発現させる、請求項1記載の方法。
【請求項17】
改善される疾患がアルツハイマー病である、請求項1記載の方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【公開番号】特開2013−6846(P2013−6846A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−180733(P2012−180733)
【出願日】平成24年8月17日(2012.8.17)
【分割の表示】特願2002−513507(P2002−513507)の分割
【原出願日】平成13年5月17日(2001.5.17)
【出願人】(506115514)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (87)
【Fターム(参考)】