説明

脳密度表示装置、脳密度測定方法、及びプログラム

【課題】簡易な設備により、脳密度を推定し表示する脳密度表示装置を提供する。
【解決手段】 密度測定器20は、被験者の頭部と、外部標準サンプル30とを同時に測定し、外部標準サンプル30が含まれた密度画像(プロトン濃度画像)を生成する。脳密度表示装置10は、密度測定器20により生成された密度画像の中から、外部標準サンプル30の信号強度を特定し、特定された信号強度に基づいて、生成された密度画像の密度レベルを補正し、補正された密度画像を3次元の標準脳の形状に変換して表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳密度表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物の量は体積と密度の積として表現される。しかし、これまで医療臨床の場で脳密度を加味した画像解析の方法はなかった。このため、脳萎縮については、体積の減少だけで言及するしかなく、脳密度を加味した画像解析技術が求められていた。
なお、特許文献1には、三次元位置計測装置を用いて、被験者の頭表位置から脳機能を推定する脳機能部位推定システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−160281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、簡易な設備により、脳密度を推定し表示する脳密度表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る脳密度表示装置は、外部標準サンプルと、前記外部標準サンプルと共に、頭部の密度を示す信号を計測する脳密度計測手段と、前記脳密度計測手段により計測された外部標準サンプルの信号と、前記脳密度計測手段により計測された頭部の信号とに基づいて、脳密度を示す密度画像を生成する密度画像生成手段とを有する。
好適には、密度画像生成手段により生成された密度画像を、三次元で表わされた標準脳の形状に変換する標準脳化手段をさらに有する。
好適には、前記外部標準サンプルは、純水を含み、前記脳密度計測手段は、純水のプロトン濃度信号と、頭部のプロトン濃度信号とを同時に計測し、前記密度画像生成手段は、計測された純水のプロトン濃度信号に基づいて、計測された頭部のプロトン濃度信号の信号レベルを補正する。
【0006】
また、本発明に係る脳密度測定方法は、頭部の近傍に、既定の液体が含まれた外部標準サンプルを設置するステップと、設置された外部標準サンプルと共に、頭部の密度を示す信号を計測するステップと、計測された外部標準サンプルの信号と、計測された頭部の信号とに基づいて、脳密度を示す密度画像を生成するステップとを有する。
【0007】
また、本発明に係るプログラムは、脳密度画像の中から、外部標準サンプルの信号強度を抽出するステップと、抽出された外部標準サンプルの信号強度に基づいて、脳密度画像を補正するステップと、補正された脳密度画像を表示させるステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な設備により、脳密度を推定し表示できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】脳密度表示システム1の概要を例示する図である。
【図2】脳密度表示プログラム100の機能構成を例示する図である。
【図3】脳密度計測処理(S10)を説明するフローチャートである。
【図4】脳密度表示システムで表示されるプロトン密度画像を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
図1は、脳密度表示システム1の概要を例示する図である。
図1に例示するように、脳密度表示システム1は、脳密度表示装置10、密度測定器20、及び外部標準サンプル30からなる。
脳密度表示装置10は、被験者の頭部の密度を測定する密度測定器20と、信号ケーブル40を介して接続されている。また、外部標準サンプル30は、密度測定器20の測定エリアに配置される。
【0011】
脳密度表示装置10は、CPU及び記憶媒体などを備えるコンピュータであり、脳密度表示プログラム100(図2を用いて後述)がインストールされている。
密度測定器20は、被験者の頭部における物質濃度(又は密度)を測定する装置である。例えば、密度測定器20は、医療用MRIであり、特定原子核のスピン情報に基づいて、特定物質の濃度画像を生成する。本例の密度測定器20は、脳のプロトン密度画像(PWI)を撮影する医療用MRIである。
外部標準サンプル30は、密度の測定時において、被験者の頭部の近傍に配置される標準サンプルである。例えば、外部標準サンプル30は、既定濃度の液体が封入された容器である。本例の外部標準サンプル30は、純水を封入した石英容器である。
【0012】
上記構成により、密度測定器20は、被験者の頭部と、外部標準サンプル30とを同時に測定し、外部標準サンプル30が含まれた密度画像(プロトン濃度画像)を生成する。脳密度表示装置10は、密度測定器20により生成された密度画像の中から、外部標準サンプル30の信号強度を特定し、特定された信号強度に基づいて、生成された密度画像の密度レベルを補正し、補正された密度画像を3次元の標準脳の形状に変換して表示する。標準脳としては、例えば、Tarailach脳又はMontreal脳などがある。
【0013】
図2は、脳密度表示プログラム100の機能構成を例示する図である。
図2に例示するように、脳密度表示プログラム100は、密度計測部102と、サンプル抽出部104と、脳密度算出部106と、標準脳化部108と、表示部110とを有する。なお、脳密度表示プログラム100は、脳密度表示装置10のハードウェア資源(CPU、及び記憶媒体など)を利用して実行される。また、脳密度表示プログラム100は、一部又は全部をASIC等のハードウェアにより実現されてもよい。
【0014】
密度計測部102は、被験者の頭部近傍に存在する物質の密度を計測する。本例の密度計測部102は、密度測定器20により生成されたプロトン濃度画像を、信号ケーブル40を介して取得し、頭部近傍における各位置のプロトン濃度情報を特定する。
【0015】
サンプル抽出部104は、密度計測部102により計測された物質密度の中から、外部標準サンプル30の物質密度を抽出し、抽出された外部標準サンプル30の物質密度(信号強度)を密度基準値として脳密度算出部106に出力する。例えば、サンプル抽出部104は、外部標準サンプル30が既定の形状である場合、又は、外部標準サンプル30が既定の位置(座標)に配置されている場合に、その形状又は位置(座標)に基づいて、プロトン濃度画像の中から、外部標準サンプル30の位置を特定し、特定された位置のプロトン濃度を密度基準として特定する。また、サンプル抽出部30は、プロトン濃度画像の中から、最もプロトン濃度の高い領域を外部標準サンプル30に対応すると判断し、プロトン濃度の最大値を密度基準値としてもよい。
【0016】
脳密度算出部106は、サンプル抽出部104により抽出された外部標準サンプルの信号強度に基づいて、密度計測部102により生成された頭部の密度画像を補正する。本例の脳密度算出部106は、外部標準サンプルの信号強度(密度基準値)が既定の基準と略一致するように、頭部の密度画像全体の信号レベルを補正する。
【0017】
標準脳化部108は、脳密度算出部106により生成された頭部の密度画像を、三次元で表わされた標準脳の形状に変換する。本例の標準脳化部108は、線形補間法又はスプライン補間法などを用いて、脳密度算出部106により生成された頭部(脳)の密度画像を、標準脳の形状に変形させる。
【0018】
表示部110は、標準脳化部108により標準脳の形状に変換された密度画像を、ディスプレイ等の表示機器に出力する。また、表示部110は、脳密度の平均画像及び標準偏差マップと、各被験者の密度画像とを比較可能な態様で表示してもよい。また、表示部110は、この密度画像を、脳血流SPECTの標準脳viewerとして国内で認知されているeZIS viewerに変換して表現してもよい。
【0019】
図3は、脳密度計測処理(S10)を説明するフローチャートである。
図3に例示するように、ステップ100(S100)において、オペレータは、密度測定器20の測定エリア内で、被験者の頭部近傍に外部標準サンプル30を配置する。なお、外部標準サンプル30の配置は機械などで自動化してもよい。
【0020】
ステップ110(S110)において、密度測定器20は、被験者の頭部と、その近傍に配置された外部標準サンプル30とを同時に測定し、頭部及び外部標準サンプル30のプロトン密度画像(PWI)を生成し、生成されたプロトン密度画像を脳密度表示装置10に送信する。脳密度表示装置10の密度計測部102は、密度測定器20からプロトン密度画像を受信し、受信したプロトン密度画像をサンプル抽出部104及び脳密度算出部106に出力する。
【0021】
ステップ120(S120)において、サンプル抽出部104は、密度計測部102から入力されたプロトン密度画像の中から、外部標準サンプル30に対応する領域を特定し、特定された領域の密度を密度基準値として脳密度算出部106に出力する。
【0022】
ステップ130(S130)において、脳密度算出部106は、サンプル抽出部104から入力された密度基準値に基づいて、密度計測部102から入力されたプロトン密度画像を補正し、補正されたプロトン密度画像を標準脳化部108に出力する。
【0023】
ステップ140(S140)において、標準脳化部108は、脳密度算出部106から入力された頭部のプロトン密度画像を、既定の標準脳の形状に変形し、変形された頭部のプロトン密度画像を表示部110に出力する。
ステップ150(S150)において、表示部110は、標準脳化部108から入力されたプロトン密度画像を、脳密度表示装置10のディスプレイに表示させる。図4は、表示されるプロトン密度画像の一例である。このように、本例の脳密度表示システム1は、プロトン密度(水の密度)を脳の密度と見立てて計測し表示する。
【0024】
以上説明したように、本実施形態の脳密度表示システム1は、被験者の頭部と、外部標準サンプル30とのプロトン密度を同時に測定し、測定された外部標準サンプル30のプロトン密度に基づいて、測定された頭部のプロトン密度画像を補正する。さらに、脳密度表示システム1は、補正されたプロトン密度画像を、3次元の標準脳の形状に変形させて表示する。
量の増減は本来、体積のみでなく密度を加味して考える必要がある。しかし、脳画像で密度を加味した画像技術がなく、脳萎縮の程度は体積の低下で代用するしかなかったが、上記脳密度表示システム1によれば、物質密度を水で標準化することにより脳密度画が生成できる。さらに、本システム1は、これを、SPMあるいはiSSPという脳形態の標準型にあてはめることで、体積補正を行い標準化脳量画像を作成してもよい。これをもとに他者との比較が可能になり、Z-score mapも作成できる。これを基にアルツハイマー病など脳疾患(神経難病、脳血管障害、精神科疾患)の脳量(萎縮)に置ける疾患特異性を見いだされることが期待できる。
【符号の説明】
【0025】
10 脳密度表示装置
20 密度測定器
30 外部標準サンプル
100 脳密度表示プログラム
102 密度計測部
104 サンプル抽出部
106 脳密度算出部
108 標準脳化部
110 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部標準サンプルと、
前記外部標準サンプルと共に、頭部の密度を示す信号を計測する脳密度計測手段と、
前記脳密度計測手段により計測された外部標準サンプルの信号と、前記脳密度計測手段により計測された頭部の信号とに基づいて、脳密度を示す密度画像を生成する密度画像生成手段と
を有する脳密度表示装置。
【請求項2】
前記密度画像生成手段により生成された密度画像を、三次元で表わされた標準脳の形状に変換する標準脳化手段
をさらに有する請求項1に記載の脳密度表示装置。
【請求項3】
前記外部標準サンプルは、純水を含み、
前記脳密度計測手段は、純水のプロトン濃度信号と、頭部のプロトン濃度信号とを同時に計測し、
前記密度画像生成手段は、計測された純水のプロトン濃度信号に基づいて、計測された頭部のプロトン濃度信号の信号レベルを補正する
請求項1に記載の脳密度表示装置。
【請求項4】
頭部の近傍に、既定の液体が含まれた外部標準サンプルを設置するステップと、
設置された外部標準サンプルと共に、頭部の密度を示す信号を計測するステップと、
計測された外部標準サンプルの信号と、計測された頭部の信号とに基づいて、脳密度を示す密度画像を生成するステップと
を有する脳密度測定方法。
【請求項5】
脳密度画像の中から、外部標準サンプルの信号強度を抽出するステップと、
抽出された外部標準サンプルの信号強度に基づいて、脳密度画像を補正するステップと、
補正された脳密度画像を表示させるステップと
をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−105734(P2012−105734A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255241(P2010−255241)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(504160781)国立大学法人金沢大学 (282)
【Fターム(参考)】