説明

脳機能改善作用を有するペプチド

【課題】脳機能を改善するペプチドを提供する。
【解決手段】X-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中、i)XはAsn-Ileであり、Yは存在しないかVal-Metを表す、または、ii)Xは存在しないかIleを表し、Yは存在しない)からなるペプチド、または、X-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(式中Xは存在しないか、Leu-Thr-Gln-Thr-ProまたはProのいずれかを表す)からなるペプチド、またはそれらの塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳機能を改善するための組成物、その有効成分であるペプチド、および脳機能を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脳機能の低下に起因する症状及び疾患には、うつ病、統合失調症、せん妄、認知症(脳血管性認知症、アルツハイマー病など)などがある。現代社会の高齢化に伴って、特に認知症患者の増加は大きな社会問題となってきている。認知症の症状は人によって様々であるが、共通して見られる症状としては、記憶障害、見当識障害、判断力・思考力の低下などが挙げられる。認知症の中で患者数の多いのは脳血管性認知症とアルツハイマー病である。例えば、脳血管性認知症は、脳血流障害により大脳皮質や海馬の神経細胞が損傷されるために認知・記憶障害が現れる。そのために、脳血管障害を生じる可能性のある高血圧、糖尿病、高コレステロール血症などの基礎疾患を治療することに加え、脳血流を改善する薬物や脳神経細胞を保護する薬物が適用される。一方、アルツハイマー病は、原因が未だはっきりと解明されていないが、その患者には脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンのレベルの低下が認められることから、コリン作動性神経の機能低下が原因の一つであると考えられている(例えば、Science, 217, 408-414(1982)参照)。そのため、アルツハイマー病においては、アセチルコリンの濃度を高めてコリン作動性神経の機能低下を防ぐことを目的とする治療方法が主流となっている。
現在、アルツハイマー病の治療薬として、例えば塩酸ドネペジル等のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤が市販されている。しかし、塩酸ドネペジル等のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤は肝臓毒性や強い副作用を有するため長期間服用できず、また高価であるという問題があった。
また、ペプチドに関して健忘改善効果を示した報告として、例えばXPLPR(XはL、I、M、F、W)(配列番号17)が300mg/kgの側脳室内投与または経口投与によりスコポラミン誘発健忘に対する改善効果を示すことが報告されており、そのメカニズムの一つとして脳内C3aレセプターによるアセチルコリンの放出が示唆されている(特許第3898389号公報)。スコポラミンはムスカリン受容体拮抗薬としてコリン作動性神経の機能低下を引き起こすとされており、脳機能障害誘発剤として働くため、アルツハイマー病治療薬開発の際のモデル動物作製に用いられている。このスコポラミンの作用による脳機能障害の予防および/または改善作用については、例えばY字迷路試験、八方向迷路試験、受動的回避試験などの行動薬理試験により効果を実証することができる。また、正常動物を用いた同様の行動薬理試験によって、脳機能の改善および/または強化の効果を実証することができる。しかし、何れのペプチドも、作用を示すために大量の経口投与、もしくは腹腔内投与、脳室内投与等の投与をする必要があり、経口摂取可能な物質として十分な効果を示すものではない。また、本発明におけるペプチドおよびその類縁体について評価した報告はなく、脳機能改善に関わる作用は不明であった。
したがって、高齢化社会の進行に伴い、脳機能の低下に起因する症状あるいは疾患を予防し、さらに改善効果を示すような医薬品、さらには食品への適用に優れたより安全な化合物の開発がますます強く要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3898389号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Science, 217, 408-414(1982)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、脳機能を改善するために低用量で経口摂取可能な組成物、および前記組成物の有効成分としてのペプチドを提供する。また、本発明は、脳機能を改善する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、X-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中、i)XはAsn-Ileであり、Yは存在しないかVal-Metを表す、または、ii)Xは存在しないかIleを表し、Yは存在しない)からなるペプチドまたはその塩である。
(2)本発明は、特に、Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(配列番号3)からなるペプチドまたはその塩である。
(3)本発明は、特に、Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met(配列番号6)からなるペプチドまたはその塩である。
(4)本発明は、特に、Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(配列番号1)からなるペプチドまたはその塩である。
(5)本発明は、Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(配列番号2)からなるペプチドまたはその塩である。
(6)本発明は、X-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(式中Xは存在しないか、Leu-Thr-Gln-Thr-ProまたはProのいずれかを表す)からなるペプチドまたはその塩である。
(7)本発明は、特に、Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(配列番号9)からなるペプチドまたはその塩である。
(8)本発明は、特に、Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(配列番号10)からなるペプチドまたはその塩である。
(9)本発明は、特に、Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(配列番号11)からなるペプチドまたはその塩である。
(10)本発明は、X-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、またはIleまたはAsn-Ileのいずれかを表し、式中Yは存在しないか、またはVal-Metを表す)(配列番号1〜6)またはその塩を有効成分とする、脳機能改善用組成物である。
(11)本発明は、Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluまたはその塩を有効成分とする、脳機能改善用組成物である。
(12)本発明は、Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluまたはその塩を有効成分とする、脳機能改善用組成物である。
(13)本発明は、Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluまたはその塩を有効成分とする、脳機能改善用組成物である。
(14)本発明は、Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Metまたはその塩を有効成分とする、脳機能改善用組成物である。
(15)本発明は、X-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、Thr-Gln-Thr-Pro、Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro、Leu-Thr-Gln-Thr-ProまたはProのいずれかを表し、式中Yは存在しないかVal-Metを表す)(配列番号7〜16)またはその塩を有効成分とする、脳機能改善用組成物である。
(16)本発明は、Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(配列番号7)またはその塩を有効成分とする、脳機能改善用組成物である。
(17)本発明は、Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(配列番号8)またはその塩を有効成分とする、脳機能改善用組成物である。
(18)本発明は、Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluまたはその塩を有効成分とする、脳機能改善用組成物である。
(19)本発明は、Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluまたはその塩を有効成分とする、脳機能改善用組成物である。
(20)本発明は、Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluまたはその塩を有効成分とする、脳機能改善用組成物である。
(21)本発明は、経口摂取用である、(10)〜(20)のいずれかに記載の組成物でもある。
(22)特に本発明は、脳機能の改善が健忘予防または記憶力増強である、(10)〜(21)のいずれかに記載の組成物である。
(23)本発明は、非ヒト動物にX-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、またはIleまたはAsn-Ileのいずれかを表し、式中Yは存在しないか、またはVal-Metを表す)またはその塩を投与することを含む、脳機能を改善する方法でもある。
(24)本発明は、非ヒト動物にPro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluまたはその塩を投与することを含む、脳機能を改善する方法でもある。
(25)本発明は、特に非ヒト動物にIle-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluまたはその塩を投与することを含む、脳機能を改善する方法でもある。
(26)本発明は、非ヒト動物にAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluまたはその塩を投与することを含む、脳機能を改善する方法でもある。
(27)本発明は、非ヒト動物にAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Metまたはその塩を投与することを含む、脳機能を改善する方法でもある。
(28)本発明は、X-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、Thr-Gln-Thr-Pro、Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro、Leu-Thr-Gln-Thr-ProまたはProのいずれかを表し、式中Yは存在しないかVal-Metを表す)またはその塩を投与することを含む、脳機能を改善する方法でもある。
(29)本発明は、非ヒト動物にThr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluまたはその塩を投与することを含む、脳機能を改善する方法でもある。
(30)本発明は、非ヒト動物にPro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluまたはその塩を投与することを含む、脳機能を改善する方法でもある。
(31)本発明は、非ヒト動物にLeu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluまたはその塩を投与することを含む、脳機能を改善する方法でもある。
(32)本発明は、非ヒト動物にPro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluまたはその塩を投与することを含む、脳機能を改善する方法でもある。
(33)本発明は、非ヒト動物にVal-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluまたはその塩を投与することを含む、脳機能を改善する方法でもある。
(34)本発明は、投与が経口投与である、(23)〜(33)のいずれかに記載の方法でもある。
(35)特に本発明は、脳機能を改善することが健忘予防または記憶力増強である(23)〜(34)のいずれかに記載の方法でもある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1はペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(NIPPLTQTPVVVPPFLQPE)のスコポラミン誘発健忘予防効果を示す。水(対照)、または、スコポラミン単独、または、NIPPLTQTPVVVPPFLQPE 0.05nmol/kg体重若しくは0.5nmol/kg体重若しくは1.5nmol/kg体重若しくは 5nmol/kg体重若しくは50nmol/kg体重若しくは500nmol/kg体重をスコポラミンと共にマウスに投与し、それぞれ実施例1記載の方法によって健忘予防効果を評価した。図1の縦軸は自発的交替行動変化率を示す。グラフは左から順に対照群、スコポラミン対照群、NIPPLTQTPVVVPPFLQPE 0.05nmol/kg体重、0.5nmol/kg体重、1.5nmol/kg体重、5nmol/kg体重、50nmol/kg体重、500nmol/kg体重投与群の自発的交替行動変化率を示す。健忘が誘発されているかを確認するため、水投与対照群とスコポラミンを単独投与したスコポラミン対照群間の有意差検定をスチューデントのt検定によって行った。**は水投与対照群に対しP<0.01であることを示す。NIPPLTQTPVVVPPFLQPE投与群とスコポラミン対照群との有意差検定はダネット型多重比較検定によって行った。##はスコポラミン対照群に対してP<0.01であることを示す。
【図2】図2はペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(NIPPLTQTPVVVPPFLQPE)、Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met(NIPPLTQTPVVVPPFLQPEVM)、Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(IPPLTQTPVVVPPFLQPE)、Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro(NIPPLTQTPVVVPPFLQP)のスコポラミン誘発健忘予防効果を示す。水(対照)、または、スコポラミン単独、または、NIPPLTQTPVVVPPFLQPE 50nmol/kg体重若しくはNIPPLTQTPVVVPPFLQPEVM 50nmol/kg体重若しくはIPPLTQTPVVVPPFLQPE 50nmol/kg体重若しくはNIPPLTQTPVVVPPFLQP 50nmol/kg体重をスコポラミンと共にマウスに投与し、それぞれ実施例2記載の方法によって健忘予防効果を評価した。図2の縦軸は自発的交替行動変化率を示す。健忘が誘発されているかを確認するため、水投与対照群とスコポラミンを単独投与したスコポラミン対照群間の有意差検定をスチューデントのt検定によって行った。**は水投与対照群に対しP<0.01であることを示す。各ペプチド投与群とスコポラミン対照群との有意差検定はダネット型多重比較検定によって行った。##はスコポラミン対照群に対してP<0.01であることを示す。
【図3】図3はペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(NIPPLTQTPVVVPPFLQPE)、Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met(PPLTQTPVVVPPFLQPE)のスコポラミン誘発健忘予防効果を示す。水(対照)、または、スコポラミン単独、または、NIPPLTQTPVVVPPFLQPE 500nmol/kg体重若しくはPPLTQTPVVVPPFLQPE 500nmol/kgをスコポラミンと共にマウスに投与し、それぞれ実施例3記載の方法によって健忘予防効果を評価した。図3の縦軸は自発的交替行動変化率を示す。健忘が誘発されているかを確認するため、水投与対照群とスコポラミンを単独投与したスコポラミン対照群間の有意差検定をスチューデントのt検定によって行った。**は水投与対照群に対しP<0.01であることを示す。各ペプチド投与群とスコポラミン対照群との有意差検定はダネット型多重比較検定によって行った。#はスコポラミン対照群に対してP<0.05であることを示す。
【図4】図4はペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(NIPPLTQTPVVVPPFLQPE)の記憶力増強効果を示す。水(対照)またはNIPPLTQTPVVVPPFLQPE 500nmol/kgをマウスに投与し、それぞれ実施例4記載の方法によって記憶力増強効果を評価した。図4の縦軸は探索時間の割合を示す。探索時間の割合について、対照群とペプチド群の間の有意差検定をスチューデントのt検定によって行った。*は水投与対照群に対してP<0.05であることを示す。
【図5】図5はペプチドThr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(TQTPVVVPPFLQPE)のスコポラミン誘発健忘予防効果を示す。水(対照)、または、スコポラミン単独、または、TQTPVVVPPFLQPE 50nmol/kg体重をスコポラミンと共にマウスに投与し、それぞれ実施例5記載の方法によって健忘予防効果を評価した。図5の縦軸は自発的交替行動変化率を示す。健忘が誘発されているかを確認するため、水投与対照群とスコポラミンを単独投与したスコポラミン対照群間の有意差検定をスチューデントのt検定によって行った。**は水投与対照群に対しP<0.01であることを示す。TQTPVVVPPFLQPE投与群とスコポラミン対照群との有意差検定をスチューデントのt検定によって行った。#はスコポラミン対照群に対してP<0.05であることを示す。
【図6】図6はペプチドPro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(PLTQTPVVVPPFLQPE)、Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(LTQTPVVVPPFLQPE)、Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(PVVVPPFLQPE)、Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(VVVPPFLQPE)のスコポラミン誘発健忘予防効果を示す。水(対照)、または、スコポラミン単独、または、PLTQTPVVVPPFLQPE 500nmol/kg体重若しくはLTQTPVVVPPFLQPE 500nmol/kg体重若しくはPVVVPPFLQPE 500nmol/kg体重若しくはVVVPPFLQPE 500nmol/kg体重をスコポラミンと共にマウスに投与し、それぞれ実施例6記載の方法によって健忘予防効果を評価した。図6の縦軸は自発的交替行動変化率を示す。健忘が誘発されているかを確認するため、水投与対照群とスコポラミンを単独投与したスコポラミン対照群間の有意差検定をスチューデントのt検定によって行った。**は水投与対照群に対しP<0.01であることを示す。各ペプチド投与群とスコポラミン対照群との有意差検定をスチューデントのt検定によって行った。#はスコポラミン対照群に対してP<0.05、†はスコポラミン対照群に対してP<0.1であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の組成物はペプチドX-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、またはIleまたはAsn-Ileのいずれかを表し、式中Yは存在しないか、またはVal-Metを表す)またはペプチド、X-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、Thr-Gln-Thr-Pro、Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro、Leu-Thr-Gln-Thr-ProまたはProのいずれかを表し、式中Yは存在しないかVal-Metを表す)、特にペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met、またはペプチドIle-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドThr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドLeu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドVal-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluを有効成分とする。有効成分であるペプチドX-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、またはIleまたはAsn-Ileのいずれかを表し、式中Yは存在しないか、またはVal-Metを表す)またはペプチド、X-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、Thr-Gln-Thr-Pro、Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro、Leu-Thr-Gln-Thr-ProまたはProのいずれかを表し、式中Yは存在しないかVal-Metを表す)、特にペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met、またはペプチドIle-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-GluまたはペプチドThr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドLeu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドVal-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluは有機化学的に合成したペプチドであってもよく、また天然物由来のペプチドであってもよい。これらのペプチドの有機化学的合成法としては、固相法(t-Boc法、Fmoc法)や液相法といった一般的な方法を用いることができ、例えば、島津製作所製のペプチド合成装置(PSSM-8型)といったペプチド自動合成装置を用いて合成したものであってもよい。ペプチド合成の反応条件等については、当業者の技術常識に基づき、選択する合成方法や適切な反応条件等を任意で設定することができる。化学的に合成されたペプチドの精製方法も当業者にはよく知られたものである。
本明細書において、ペプチドX-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、またはIleまたはAsn-Ileのいずれかを表し、式中Yは存在しないか、またはVal-Metを表す)またはペプチド、X-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、Thr-Gln-Thr-Pro、Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro、Leu-Thr-Gln-Thr-ProまたはProのいずれかを表し、式中Yは存在しないかVal-Metを表す)、特にペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met、またはペプチドIle-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-GluまたはペプチドThr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドLeu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドVal-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluについて言及する場合、特に明示した場合および文脈上除外されることが明らかである場合を除き、「X-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、またはIleまたはAsn-Ileのいずれかを表し、式中Yは存在しないか、またはVal-Metを表す)または、X-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、Thr-Gln-Thr-Pro、Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro、Leu-Thr-Gln-Thr-ProまたはProのいずれかを表し、式中Yは存在しないかVal-Metを表す)、特にAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met、またはIle-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはPro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはThr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはPro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはLeu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはPro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはVal-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu 」および「ペプチドX-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、またはIleまたはAsn-Ileのいずれかを表し、式中Yは存在しないか、またはVal-Metを表す)またはペプチド、X-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、Thr-Gln-Thr-Pro、Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro、Leu-Thr-Gln-Thr-ProまたはProのいずれかを表し、式中Yは存在しないかVal-Metを表す)、特にペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met、またはペプチドIle-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-GluまたはペプチドThr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドLeu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドVal-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu」にはその塩が含まれる。そのような塩には、例えばナトリウム塩、カリウム塩、塩酸塩などの生理的条件下で存在しえる塩が含まれる。また、本発明の組成物は、本発明の組成物の有効成分であるペプチドX-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、またはIleまたはAsn-Ileのいずれかを表し、式中Yは存在しないか、またはVal-Metを表す)またはペプチド、X-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、Thr-Gln-Thr-Pro、Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro、Leu-Thr-Gln-Thr-ProまたはProのいずれかを表し、式中Yは存在しないかVal-Metを表す)、特にペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met、またはペプチドIle-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドThr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドLeu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドVal-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu以外に他のペプチドおよび遊離アミノ酸またはその塩を含んでいても良い。なお、本発明との関連において、アミノ酸の三文字表記および一文字表記ならびにペプチドの表記は当業者によく知られた一般的規則に従う。
【0009】
本発明の組成物またはペプチドX-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、またはIleまたはAsn-Ileのいずれかを表し、式中Yは存在しないか、またはVal-Metを表す)またはペプチド、X-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、Thr-Gln-Thr-Pro、Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro、Leu-Thr-Gln-Thr-ProまたはProのいずれかを表し、式中Yは存在しないかVal-Metを表す)、特にペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met、またはペプチドIle-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドThr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドLeu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドVal-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluの脳機能改善作用は、例えばY字型迷路を用いた、アルツハイマー病治療薬の評価系に準じた系を用いて確認することができる。具体的には、ラットまたはマウスにスコポラミンのようなムスカリン受容体拮抗薬を用いることでコリン作動性神経の機能低下を起こし、脳機能障害を引き起こすことで健忘症を誘発する薬剤単独または本発明の組成物またはX-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、またはIleまたはAsn-Ileのいずれかを表し、式中Yは存在しないか、またはVal-Metを表す)またはX-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、Thr-Gln-Thr-Pro、Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro、Leu-Thr-Gln-Thr-ProまたはProのいずれかを表し、式中Yは存在しないかVal-Metを表す)、特にAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met、またはIle-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはPro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはThr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはPro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはLeu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはPro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはVal-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu をそのような薬剤と同時に投与、またはそのような薬剤の投与に先立って本発明の組成物またはX-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、またはIleまたはAsn-Ileのいずれかを表し、式中Yは存在しないか、またはVal-Metを表す)または、X-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、Thr-Gln-Thr-Pro、Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro、Leu-Thr-Gln-Thr-ProまたはProのいずれかを表し、式中Yは存在しないかVal-Metを表す)、特にAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met、またはIle-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはPro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはThr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはPro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはLeu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはPro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはVal-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluを投与し、Y字型迷路を用いた試験において異なるアームへの自発的交替行動変化率や迷路への総進入回数を指標として本発明の組成物の健忘予防作用を確認することができる。
これらの試験において陰性対照としてはたとえば水のみを投与した動物を用いることができる。薬剤によって誘導した健忘に対するX-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、またはIleまたはAsn-Ileのいずれかを表し、式中Yは存在しないか、またはVal-Metを表す)または、X-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、Thr-Gln-Thr-Pro、Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro、Leu-Thr-Gln-Thr-ProまたはProのいずれかを表し、式中Yは存在しないかVal-Metを表す)、特にAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met、またはIle-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはPro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはThr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはPro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはLeu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはPro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはVal-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluの予防作用を確認する実験の際には、スコポラミンのような脳機能障害を引き起こすことで健忘症を誘発する薬剤のみを投与した動物も対照として加えることができる。
【0010】
本発明の組成物またはペプチドX-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、またはIleまたはAsn-Ileのいずれかを表し、式中Yは存在しないか、またはVal-Metを表す)またはペプチド、X-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、Thr-Gln-Thr-Pro、Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro、Leu-Thr-Gln-Thr-ProまたはProのいずれかを表し、式中Yは存在しないかVal-Metを表す)、特にペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met、またはペプチドIle-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドThr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドLeu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドVal-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluの脳機能改善作用は、例えばラットまたはマウスを用いた新奇物体認識試験を行うことで確認することが出来る。具体的には、本発明の組成物またはペプチドX-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、またはIleまたはAsn-Ileのいずれかを表し、式中Yは存在しないか、またはVal-Metを表す)またはペプチド、X-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないかThr-Gln-Thr-Pro、Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro、Leu-Thr-Gln-Thr-ProまたはProのいずれかを表し、式中Yは存在しないかVal-Metを表す)、特にペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met、またはペプチドIle-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドThr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドLeu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドVal-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluを投与し、実験箱を用いた試験において2つの物体を記憶させる訓練試行を行った後、時間の経過により記憶の除去を行い、2つの物体の内の1つの物体を新奇なものに交換した場合に、交換した物体を覚えていれば、新奇な物体への探索時間が増加することを指標として本発明の組成物の記憶力増強作用を確認することができる。これらの試験において陰性対照としてはたとえば水のみを投与した動物を用いることができる。
【0011】
本発明の組成物はその有効成分がペプチドX-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、またはIleまたはAsn-Ileのいずれかを表し、式中Yは存在しないか、またはVal-Metを表す)またはペプチド、X-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、Thr-Gln-Thr-Pro、Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro、Leu-Thr-Gln-Thr-ProまたはProのいずれかを表し、式中Yは存在しないかVal-Metを表す)、特にペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met、またはペプチドIle-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドThr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドLeu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドVal-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluであり、経口投与または経口摂取することにより上述の所望の効果を達成することができる。本発明の組成物の投与又は摂取期間は、投与又は摂取する対象、たとえばヒトや非ヒト動物の年齢やその対象の健康状態等を考慮して種々調整することができる。非ヒト動物には非ヒト高等脊椎動物、特に非ヒト哺乳類が含まれ、イヌ、ネコ等の愛玩動物、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ等の家畜が含まれるがこれらに限られない。本発明の組成物は1回の投与でも効果が見られるが、1日1回以上、継続摂取することで継続した効果が期待できる。本発明の組成物を医薬として用いる場合の形態は、経口投与用の製剤の形態とすることができる。例えば、錠剤、丸剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、マイクロカプセル、散剤、顆粒剤、液剤等が挙げられる。医薬として製造する場合は、例えば、適宜必要に応じて、製薬的に許容される担体、賦形剤、補形剤、防腐剤、安定化剤、結合剤、pH調節剤、緩衝剤、増粘剤、ゲル化剤、保存剤、抗酸化剤等を用い、一般に認められた製剤投与に要求される単位用量形態で製造することができる。
本発明の組成物は飲食品用素材または動物用飼料素材として用いることもでき、例えば、本発明の組成物または本発明の組成物の有効成分であるペプチドX-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、またはIleまたはAsn-Ileのいずれかを表し、式中Yは存在しないか、またはVal-Metを表す)またはペプチド、X-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、Thr-Gln-Thr-Pro、Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro、Leu-Thr-Gln-Thr-ProまたはProのいずれかを表し、式中Yは存在しないかVal-Metを表す)、特にペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met、またはペプチドIle-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドThr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドLeu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドVal-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluを脳機能改善の効能を有する特定保健用食品等の機能性食品とすることができる。
所望の効果を得るための本組成物またはペプチドX-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、またはIleまたはAsn-Ileのいずれかを表し、式中Yは存在しないか、またはVal-Metを表す)またはペプチド、X-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、Thr-Gln-Thr-Pro、Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro、Leu-Thr-Gln-Thr-ProまたはProのいずれかを表し、式中Yは存在しないかVal-Metを表す)、特にペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met、またはペプチドIle-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドThr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドLeu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドVal-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluの投与または摂取量は、1回あたり有効成分であるペプチドX-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、またはIleまたはAsn-Ileのいずれかを表し、式中Yは存在しないか、またはVal-Metを表す)またはペプチド、X-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、Thr-Gln-Thr-Pro、Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro、Leu-Thr-Gln-Thr-ProまたはProのいずれかを表し、式中Yは存在しないかVal-Metを表す)、特にペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met、またはペプチドIle-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドThr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドLeu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドVal-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluの量として一般に0.1μg/kg体重〜1mg/kg体重が好ましい。1日あたりの摂取回数に応じて、食品、例えば機能性食品における1回あたりの摂取量を前記量より更に低くすることも可能である。適切な摂取量は、上述の通り種々の要因を考慮して更に調整することができる。
【0012】
本発明の組成物またはその有効成分であるペプチドX-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、またはIleまたはAsn-Ileのいずれかを表し、式中Yは存在しないか、またはVal-Metを表す)またはペプチド、X-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、Thr-Gln-Thr-Pro、Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro、Leu-Thr-Gln-Thr-ProまたはProのいずれかを表し、式中Yは存在しないかVal-Metを表す)、特にペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met、またはペプチドIle-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドThr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドLeu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドVal-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluを含む食品、例えば機能性食品は、必要に応じて、食品に用いる他の成分、例えば、糖類、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル、フレーバー、例えば、各種炭水化物、脂質、ビタミン類、ミネラル類、甘味料、香料、色素、テクスチュア改善剤等又はこれらの混合物等の添加物を添加し、栄養的バランスや風味等を改善してもよい。本発明の組成物またはその有効成分であるペプチドX-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、またはIleまたはAsn-Ileのいずれかを表し、式中Yは存在しないか、またはVal-Metを表す)またはペプチド、X-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、Thr-Gln-Thr-Pro、Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro、Leu-Thr-Gln-Thr-ProまたはProのいずれかを表し、式中Yは存在しないかVal-Metを表す)、特にペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met、またはペプチドIle-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドThr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドLeu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドVal-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluを含む動物用飼料もヒト用食品と同様にして調製することができる。
例えば前述の機能性食品は、固形物、ゲル状物、液状物の何れの形態とすることができ、例えば、各種加工飲食品、乾燥粉末、錠剤、カプセル剤、顆粒剤等が挙げられ、更には各種飲料、ヨーグルト、流動食、ゼリー、キャンディ、レトルト食品、錠菓、クッキー、カステラ、パン、ビスケット、チョコレート等とすることができる。
本発明の組成物を含む特定保健用食品等の機能性食品を製造する場合、添加形態や製品形態によるが、最終製品に対して、含有される有効成分であるペプチドX-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、またはIleまたはAsn-Ileのいずれかを表し、式中Yは存在しないか、またはVal-Metを表す)またはペプチド、X-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、Thr-Gln-Thr-Pro、Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro、Leu-Thr-Gln-Thr-ProまたはProのいずれかを表し、式中Yは存在しないかVal-Metを表す)、特にペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met、またはペプチドIle-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドThr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドLeu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドVal-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluの含有量が100g当り1μg〜10g、好ましくは10μg〜1g、さらに好ましくは100μg〜100mgとなるように調製する。
【0013】
本発明の組成物またはその有効成分であるペプチドX-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、またはIleまたはAsn-Ileのいずれかを表し、式中Yは存在しないか、またはVal-Metを表す)またはペプチド、X-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中Xは存在しないか、Thr-Gln-Thr-Pro、Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro、Leu-Thr-Gln-Thr-ProまたはProのいずれかを表し、式中Yは存在しないかVal-Metを表す)、特にペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met、またはペプチドIle-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドThr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドLeu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドPro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu、またはペプチドVal-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Gluは、脳機能を改善することで、健忘を予防し、記憶能力を増強させることができる。また、本発明の組成物またはその有効成分である前記ペプチドは脳機能の低下に起因する症状及び疾患であるうつ病、統合失調症、せん妄、認知症(脳血管性認知症、アルツハイマー病など)などの治療または予防に使用することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例に限られない。
【実施例1】
【0014】
Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(NIPPLTQTPVVVPPFLQPE)の健忘予防作用
ddY系雄性マウス(約7週齢)を用い(n=15-75)、餌及び水は自由摂取させた。被験物質として、Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu 0.05nmol/kg体重(0.1μg/kg体重)、0.5nmol/kg体重(1μg/kg体重)、1.5nmol/kg体重(3μg/kg体重)、5nmol/kg体重(10μg/kg体重)、50nmol/kg体重(100μg/kg体重)、500nmol/kg体重(1000μg/kg体重)を用いた。被験物質は自発的交替行動を評価するY字迷路試験の実施60分前にマウスに単回経口投与した。また、Y字迷路試験の実施30分前には、マウスに脳機能障害(記憶障害および/または認知障害)を誘発するため、スコポラミンを1mg/kg体重となるよう背部に皮下投与した。Y字迷路試験では、一本のアームの長さが40cm、壁の高さが12cm、床の幅が3cm、上部の幅が10cmで3本のアームがそれぞれ120度の角度で接続されたY字迷路を実験装置として用いた。マウスをY字迷路のいずれかのアームの先端に置き、8分間にわたって迷路内を自由に探索させ、マウスが移動したアームを順に記録した。マウスが測定時間内に各アームに移動した回数をカウントし、これを総進入数とし、この中で連続して異なる三つのアームを選択した組み合わせ(例えば、3本のアームをそれぞれA、B、Cとした際に、進入したアームの順番がABCBACACBの場合は重複も含めて4とカウントする)を調べ、この数を自発的交替行動数とした。自発的交替行動数を総進入数から2を引いた数で割り、それに100を掛けて求めた値を自発的交替行動変化率とし、これを自発的交替行動の指標とした。本指標が高値である程、短期記憶が保持されていたことを示す。測定値は群毎に平均値±標準誤差で表した。対照群とスコポラミン対照群との有意差検定はスチューデント(Student)のt検定で行った。また、スコポラミン対照群とNIPPLTQTPVVVPPFLQPE投与群との有意差検定は、一元配置分散分析後にダネット(Dunnett)型多重比較検定で行った。結果を図1に示す。NIPPLTQTPVVVPPFLQPEは0.05nmol/kg体重〜500nmol/kg体重(0.1μg/kg体重〜1000μg/kg体重)の範囲で健忘予防作用を有することが示された。
【実施例2】
【0015】
Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(NIPPLTQTPVVVPPFLQPE)関連ペプチドの健忘予防作用
ddY系雄性マウス(約7週齢)を用い(n=15-45)、餌及び水は自由摂取させた。被験物質として、Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu 50nmol/kg体重(100μg/kg体重)、またはAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met(NIPPLTQTPVVVPPFLQPEVM)50nmol/kg体重(120μg/kg体重)、またはIle-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(IPPLTQTPVVVPPFLQPE)50nmol/kg体重(100μg/kg体重)、またはAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro(NIPPLTQTPVVVPPFLQP)(配列番号18)50nmol/kg体重(100μg/kg体重)、またはThr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe(TQTPVVVPPF)(配列番号19)50nmol/kg体重(50μg/kg体重)を用いた。被験物質は自発的交替行動を評価するY字迷路試験の実施60分前にマウスに単回経口投与した。また、Y字迷路試験の実施30分前には、マウスに脳機能障害(記憶障害および/または認知障害)を誘発するため、スコポラミンを1mg/kg体重となるよう背部に皮下投与した。Y字迷路試験では、一本のアームの長さが40cm、壁の高さが12cm、床の幅が3cm、上部の幅が10cmで3本のアームがそれぞれ120度の角度で接続されたY字迷路を実験装置として用いた。マウスをY字迷路のいずれかのアームの先端に置き、8分間にわたって迷路内を自由に探索させ、マウスが移動したアームを順に記録した。マウスが測定時間内に各アームに移動した回数をカウントし、これを総進入数とし、この中で連続して異なる三つのアームを選択した組み合わせ(例えば、3本のアームをそれぞれA、B、Cとした際に、進入したアームの順番がABCBACACBの場合は重複も含めて4とカウントする)を調べ、この数を自発的交替行動数とした。自発的交替行動数を総進入数から2を引いた数で割り、それに100を掛けて求めた値を自発的交替行動変化率とし、これを自発的交替行動の指標とした。本指標が高値である程、短期記憶が保持されていたことを示す。測定値は群毎に平均値±標準誤差で表した。対照群とスコポラミン対照群との有意差検定はスチューデント(Student)のt検定で行った。また、スコポラミン対照群と各ペプチド投与群との有意差検定は、一元配置分散分析後にダネット(Dunnett)型多重比較検定で行った。結果を図2に示す。NIPPLTQTPVVVPPFLQPEは50nmol/kg体重(100μg/kg体重)、NIPPLTQTPVVVPPFLQPEVMは50nmol/kg体重(120μg/kg体重)、IPPLTQTPVVVPPFLQPEは50nmol/kg体重(100μg/kg体重)で健忘予防作用を有することが示された。NIPPLTQTPVVVPPFLQPは50nmol/kg体重(100μg/kg体重)およびTQTPVVVPPFは50nmol/kg体重(50μg/kg体重)については、スコポラミン対照群と比較して有意差が認められず、健忘予防作用を示さなかった。
【実施例3】
【0016】
Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(NIPPLTQTPVVVPPFLQPE)関連ペプチドの健忘予防作用
ddY系雄性マウス(約7週齢)を用い(n=14-15)、餌及び水は自由摂取させた。被験物質として、Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu 500nmol/kg体重(1000μg/kg体重)、またはPro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(PPLTQTPVVVPPFLQPE) 500nmol/kg体重(1000μg/kg体重)を用いた。被験物質は自発的交替行動を評価するY字迷路試験の実施60分前にマウスに単回経口投与した。また、Y字迷路試験の実施30分前には、マウスに脳機能障害(記憶障害および/または認知障害)を誘発するため、スコポラミンを1mg/kg体重となるよう背部に皮下投与した。Y字迷路試験では、一本のアームの長さが40cm、壁の高さが12cm、床の幅が3cm、上部の幅が10cmで3本のアームがそれぞれ120度の角度で接続されたY字迷路を実験装置として用いた。マウスをY字迷路のいずれかのアームの先端に置き、8分間にわたって迷路内を自由に探索させ、マウスが移動したアームを順に記録した。マウスが測定時間内に各アームに移動した回数をカウントし、これを総進入数とし、この中で連続して異なる三つのアームを選択した組み合わせ(例えば、3本のアームをそれぞれA、B、Cとした際に、進入したアームの順番がABCBACACBの場合は重複も含めて4とカウントする)を調べ、この数を自発的交替行動数とした。自発的交替行動数を総進入数から2を引いた数で割り、それに100を掛けて求めた値を自発的交替行動変化率とし、これを自発的交替行動の指標とした。本指標が高値である程、短期記憶が保持されていたことを示す。測定値は群毎に平均値±標準誤差で表した。対照群とスコポラミン対照群との有意差検定はスチューデント(Student)のt検定で行った。また、スコポラミン対照群と各ペプチド投与群との有意差検定は、一元配置分散分析後にダネット(Dunnett)型多重比較検定で行った。結果を図3に示す。NIPPLTQTPVVVPPFLQPEは500nmol/kg体重(1000μg/kg体重)、PPLTQTPVVVPPFLQPEは500nmol/kg体重(1000μg/kg体重)で健忘予防作用を有することが示された。
【実施例4】
【0017】
Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(NIPPLTQTPVVVPPFLQPE)の記憶力増強作用
ddY系雄性マウス(約7週齢)を用い(n=14-15)、餌及び水は自由摂取させた。被験物質として、Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu 500nmol/kg体重(1000μg/kg体重)を用いた。被験物質は記憶保持を評価する新奇物体認識試験の実施60分前にマウスに単回経口投与した。新奇物体認識試験では、30×30×30 cmの箱を実験装置として用いた。馴化操作として、床敷きを敷いた実験装置内にマウスを5分間入れて自由に装置内を探索させた。馴化操作の翌日に訓練試行を実施した。訓練試行では実験装置内に3種類の物体のうち2個を選んで設置した(物体は床の中心線に沿って両サイドの壁からそれぞれ8 cmの位置に置き、その位置をX1及びX2とした。)なお、設置する物体の選択については、動物及び群間で偏りがないようにあらかじめランダムに選択した。被験物質または水を経口投与した60分後にマウスを実験装置に5分間入れ、マウスが各物体に対して1 cm以内に接近して探索した時間(秒)を測定した。訓練試行の48時間後に保持試行を実施した。保持試行では訓練試行と同様に実験装置内に物体を2個設置するが、そのうち1個は訓練試行で使用したものとは異なる物体(新奇物体)に替え、その位置をYとした。(例として、訓練試行で物体AをX1に物体BをX2に設置した場合、保持試行では物体Aに替えて物体Cを新奇物体として設置し、その位置をYとした。)訓練試行及び保持試行について、マウスが各物体に対して1 cm以内に接近して探索した時間(秒)を測定した(ただし、物体の上に乗っている状態を除く。)。訓練試行及び保持試行について、それぞれ2個の物体に対して探索を行った時間の比率を求めた。各物体に対する探索時間の比率 (%) は各群とも平均値±標準誤差で表した。有意差検定は、保持試行での新奇物体(Yに設置された物体)に対する探索時間の比率と、訓練試行で新奇物体が置かれていた場所に設置されていた物体(X1またはX2に設置された物体)に対する探索時間の比率について、対照群とペプチド群の間でスチューデント(Student)のt検定で行った。結果を図4に示す。NIPPLTQTPVVVPPFLQPEは500nmol/kg体重(1000μg/kg体重)で記憶力増強作用を有することが示された。
【実施例5】
【0018】
Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(NIPPLTQTPVVVPPFLQPE)関連ペプチドの健忘予防作用
ddY系雄性マウス(約7週齢)を用い(n=27-40)、餌及び水は自由摂取させた。被験物質として、Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(TQTPVVVPPFLQPE)50nmol/kg体重(80μg/kg体重)を用いた。被験物質は自発的交替行動を評価するY字迷路試験の実施60分前にマウスに単回経口投与した。また、Y字迷路試験の実施30分前には、マウスに脳機能障害(記憶障害および/または認知障害)を誘発するため、スコポラミンを1mg/kg体重となるよう背部に皮下投与した。Y字迷路試験では、一本のアームの長さが40cm、壁の高さが12cm、床の幅が3cm、上部の幅が10cmで3本のアームがそれぞれ120度の角度で接続されたY字迷路を実験装置として用いた。マウスをY字迷路のいずれかのアームの先端に置き、8分間にわたって迷路内を自由に探索させ、マウスが移動したアームを順に記録した。マウスが測定時間内に各アームに移動した回数をカウントし、これを総進入数とし、この中で連続して異なる三つのアームを選択した組み合わせ(例えば、3本のアームをそれぞれA、B、Cとした際に、進入したアームの順番がABCBACACBの場合は重複も含めて4とカウントする)を調べ、この数を自発的交替行動数とした。自発的交替行動数を総進入数から2を引いた数で割り、それに100を掛けて求めた値を自発的交替行動変化率とし、これを自発的交替行動の指標とした。本指標が高値である程、短期記憶が保持されていたことを示す。測定値は群毎に平均値±標準誤差で表した。対照群とスコポラミン対照群との有意差検定はスチューデント(Student)のt検定で行った。また、スコポラミン対照群とTQTPVVVPPFLQPE投与群との有意差検定はスチューデント(Student)のt検定で行った。結果を図1に示す。TQTPVVVPPFLQPEは50nmol/kg体重(80μg/kg体重)で健忘予防作用を有することが示された。
【実施例6】
【0019】
Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(NIPPLTQTPVVVPPFLQPE)関連ペプチドの健忘予防作用
ddY系雄性マウス(約7週齢)を用い(n=11-40)、餌及び水は自由摂取させた。被験物質として、Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(PLTQTPVVVPPFLQPE)500nmol/kg体重(900μg/kg体重)、またはLeu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(LTQTPVVVPPFLQPE) 500nmol/kg体重(850μg/kg体重)、またはPro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(PVVVPPFLQPE) 500nmol/kg体重(630μg/kg体重)、またはVal-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(VVVPPFLQPE) 500nmol/kg体重(580μg/kg体重)を用いた。被験物質は自発的交替行動を評価するY字迷路試験の実施60分前にマウスに単回経口投与した。また、Y字迷路試験の実施30分前には、マウスに脳機能障害(記憶障害および/または認知障害)を誘発するため、スコポラミンを1mg/kg体重となるよう背部に皮下投与した。Y字迷路試験では、一本のアームの長さが40cm、壁の高さが12cm、床の幅が3cm、上部の幅が10cmで3本のアームがそれぞれ120度の角度で接続されたY字迷路を実験装置として用いた。マウスをY字迷路のいずれかのアームの先端に置き、8分間にわたって迷路内を自由に探索させ、マウスが移動したアームを順に記録した。マウスが測定時間内に各アームに移動した回数をカウントし、これを総進入数とし、この中で連続して異なる三つのアームを選択した組み合わせ(例えば、3本のアームをそれぞれA、B、Cとした際に、進入したアームの順番がABCBACACBの場合は重複も含めて4とカウントする)を調べ、この数を自発的交替行動数とした。自発的交替行動数を総進入数から2を引いた数で割り、それに100を掛けて求めた値を自発的交替行動変化率とし、これを自発的交替行動の指標とした。本指標が高値である程、短期記憶が保持されていたことを示す。測定値は群毎に平均値±標準誤差で表した。対照群とスコポラミン対照群との有意差検定はスチューデント(Student)のt検定で行った。また、スコポラミン対照群と各ペプチド投与群との有意差検定はスチューデント(Student)のt検定で行った。結果を図6に示す。PLTQTPVVVPPFLQPEは500nmol/kg体重(900μg/kg体重)、LTQTPVVVPPFLQPEは500nmol/kg体重(850μg/kg)、PVVVPPFLQPEは500nmol/kg体重(630μg/kg)、VVVPPFLQPEは500nmol/kg体重(580μg/kg)で健忘予防作用を有することが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Y(式中、i)XはAsn-Ileであり、Yは存在しないかVal-Metを表す、または、ii)Xは存在しないかIleを表し、Yは存在しない)からなるペプチドまたはその塩。
【請求項2】
Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(配列番号3)からなるペプチドまたはその塩。
【請求項3】
Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met(配列番号6)からなるペプチドまたはその塩
【請求項4】
Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(配列番号1)からなるペプチドまたはその塩。
【請求項5】
Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(配列番号2)からなるペプチドまたはその塩。
【請求項6】
X-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(式中Xは存在しないか、Leu-Thr-Gln-Thr-ProまたはProのいずれかを表す)からなるペプチドまたはその塩。
【請求項7】
Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(配列番号9)からなるペプチドまたはその塩。
【請求項8】
Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(配列番号10)からなるペプチドまたはその塩。
【請求項9】
Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(配列番号11)からなるペプチドまたはその塩。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−31139(P2012−31139A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119960(P2011−119960)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【分割の表示】特願2011−520254(P2011−520254)の分割
【原出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000104353)カルピス株式会社 (35)
【Fターム(参考)】