説明

脳機能改善油脂

【課題】
鰻の蒲焼加工で発生する残渣から油脂成分を回収する方法として、前処理に人手をかけず、DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸の酸化・変質が少なく、安価で高品質の有用成分を得ることで学習能力増強、記憶力増強、痴呆予防などすぐれた脳機能改善効果を有する機能性油脂として、多機能性食品や医療品などの提供を図る。
【解決手段】
鰻加工残渣の苦だまや腸管のついた肝など内臓のついた中骨をそのまま原料スラリーとして、蛋白質分解酵素にて加水分解させ酵素分解塔の上部に設けた静置部から得られる油脂成分が脳機能改善効果を有する機能性油脂であることをラットへの摂食実験を行い、脳ホスファチジルコリンの脂肪酸組成を調べ、鰻の加工残渣である頭のみや中骨のみと比べて有意に高い値を示すことで鰻の内臓を含む原料が顕著に脳機能改善効果を有する機能性油脂であることを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鰻の内臓を含む原料を蛋白質分解酵素で分解し、ドコサヘキサエン酸とエイコサペンタエン酸を総量で10重量%以上含有した脳機能改善効果を有する機能性油脂を提供する。
【背景技術】
【0002】
鰻を蒲焼加工した際に、中骨や頭や内臓などが加工残渣として鰻重量の約2割発生する。その多くが廃棄物として処理されているため資源として有効利用されていない。現在、加工残渣中の中骨については、骨粗鬆症の予防に効果のあるカルシウム粉末の原料として微粉末化する試みがなされている(特許文献1〜7)。これらの試みは一般的に動物あるいは魚類を対象にするもので鰻に特定化した技術は少ない。
【0003】
鰻の蒲焼加工の際の加工残渣については、中骨については、その一部がカルシウム粉末として有効利用されている以外には、殆どが産業廃棄物として排出され、飼料や肥料として処理されている。
【0004】
カルシウム以外の有効成分を回収する試みとしては、魚体又は加工残渣中の蛋白質を酵素又は微生物で分解しスラリー状として、ろ過して固形物を分離し、魚油や魚蛋白質を得る方法(特許文献8)あるいは酵素たとえばプロテアーゼで蛋白質を処理する事により調味エキスを作製したり、脂肪分をリパーゼで分解して油分と抽出エキスを有効利用する試み(特許文献9)がある。
【0005】
しかし、これまで鰻の油脂成分については、摂食効果に関する免疫調節機能が明らかにされていない事からも、その製法についての研究が行なわれてこなかったので、一般的には産業廃棄物として回収された加工残渣から飼料或いは肥料として利用する為に加熱水で煮出したり、高圧釜で分解して湯面の上層に浮遊した油脂成分を採取し、これを水酸化ナトリウム水溶液などの化学薬品で繰り返し洗浄し、さらに精製して油脂を回収している。
【0006】
これらの方法では煮沸に90℃程度、さらに精製段階で230℃以上の高温で処理しているため、この時、油脂成分中の不飽和二重結合が酸化・異性化・重合などで品質が低下した物しか得られない。
【0007】
これに対して、鰯、鮪、鰹などの魚肉のすり身の製造時に生じる排液について、排液を20℃以下の低温で遠心分離する事で、加熱工程を伴わない天然に含まれる魚油の健康上有用な成分を失わない方法も提案(特許文献10)されてはいるが、加工残渣に含まれる油脂成分の回収効率としては不充分である。
【0008】
一方、魚油に含まれる不飽和脂肪酸とりわけn−3系列のエイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)は血中の中性脂肪、総コレストロールの減少、HDLコレストロールの増加、血漿板凝集能の低下、血液粘度の低下などが知られており、特にDHAについて、学習能力増強、記憶力増強、痴呆予防など脳機能改善効果を有するなどの生理活性を有する事が明らかにされてきている。しかるにこれら不飽和脂肪酸はその分子中に2重結合が多く存在する為、酸化されやすく、上記の特異な生理活性を失うだけでなく、その酸化物の毒性による害作用の恐れがある。
【0009】
そこで、これらEPAやDHAを含有する魚油などについて、不飽和脂肪酸の酸化に対する安定化のため、ブチルヒドロクシアニソール(BHA)やジブチルヒドロキシトルエン(BHT)などが使用されたが、その安全性が問題となり、最近は天然物由来のトコフェロール等が使用されるようになってきたが、酸化防止効果は必ずしも充分とはいえない。
【0010】
【特許文献1】特開平2−231059「魚骨粉の製造方法」 中骨を圧力5〜20kg1平方メートルの高圧水で洗浄し、存在する蛋白質を蛋白質分解酵素で分解し、分解物を洗浄除去し、次いで中骨を真空加熱蒸発法で乾燥した後、粉砕する方法
【特許文献2】特開2001−48793「鰻又は穴子の骨を原料とする粉末栄養補給剤の製造方法」 鰻又は穴子の骨をミンチングし、1、5〜4、0kg/平方センチ、70〜180℃の高圧高温工程により、骨髄液を除去した骨粉の製造方法
【特許文献3】特開平4−121166「食用骨粉の製造方法」 苛性ソーダを用いて蛋白、脂肪を加水分解することにより、脱蛋白、脱脂肪を容易する。
【特許文献4】特開2001−346547「鰻又は穴子の骨を原料とする微粉末栄養補給剤の製造方法」骨粒を食塩濃度10%以上の水溶液に6時間以上浸漬し、塩分を洗い流して骨髄液を除去して脱脂状骨粒を得た後、乾燥する。
【特許文献5】特公昭55−30831「微細骨粉の製造法」 微生物等を用いて蛋白質や脂肪を除去する方法
【特許文献6】特開昭52−136968「微細骨粉の製造法」 蒸煮処理した動物骨を微生物培養液もしくは培養物で付着蛋白質及び脂肪分を分解発酵した後、洗浄滅菌乾燥し、更に粉砕後有機溶剤で抽出除去し、低温度アルカリ水溶液で加熱処理し、洗浄乾燥し、微粉砕機で微粉砕骨粉とする。
【特許文献7】特開平11−318389「無臭・フィッシュカルシウム剤の製造方法」 中骨を蒸湯処理・水洗い、粉砕し有機物分解酵素、酵母で分解し、両性界面活性剤で処理し、更に酸化剤処理し、低温乾燥して無臭カルシウム剤を製造
【特許文献8】特公平4−24027「動物、魚介類よりカルシウム製造方法」
【特許文献9】特開2002−234「うなぎ骨の有効処理方法」 骨を煮出し骨と煮出し液とに分別し、骨に付着する蛋白質をエンドペプチターゼ型酵素で分解し、更に脂肪分もリパーゼで分解した後に骨を乾燥して粉砕する。一方、煮出し液の上層の油分と下層の抽出エキス分も回収し利用する。
【特許文献10】特開2004−91524「低温抽出魚油」 魚肉すり身排液から遠心分離法により抽出された構成の低温抽出魚油
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、鰻の蒲焼加工で発生する加工残渣である中骨や頭並びに内臓などから、カルシウムをはじめ蛋白質並びに油脂分やビタミン類などの高付加価値成分を有効活用するなかで、とりわけ、魚の油脂成分には学習能力増強、記憶力増強、痴呆予防などすぐれた脳機能改善効果を有するDHAやEPAなど不飽和脂肪酸が豊富に含まれていることが知られており、しかも鰻の脂質含量は20%以上で、鰤の18%、鯖の17%、鮭の8%、鯵の6、9%、ひらめの1、2%等に比較して非常に多いにもかかわらずこれまで鰻の油脂成分の回収方法について体調調節機能などとの関係が明らかにされず有効活用されていない。
【0012】
鰻の加工残渣から油脂成分を回収する方法として、前処理に人手をかけず、DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸の酸化・変質が少なく、安価で高品質の有用成分が得られることが理想である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の最大の特徴は、鰻の蒲焼加工の加工残渣の有効活用にあたり、残渣の約7割を占める苦だまや腸管のついた肝など内臓のついたままの中骨を蛋白質分解酵素で分解して得られる油脂成分が脳機能改善効果を有する機能性油脂であることと分解液から酸化・変質が少ない油脂成分を回収する連続酵素分解プロセスにあり、図1に物質流れのモデル図を示す。
加工残渣の中骨、頭、内臓の前処理方法として、苦だまや腸管のついた肝など内臓のついたままの中骨を簡単に水洗いしただけのものをミンサーで粗粉砕した原料スラリー1を酵素分解塔2に送入し、蛋白質分解酵素で連続的に60℃〜70℃で、滞留時間1〜6時間の短時間で加水分解反応させ、酵素分解塔の上部に攪拌部と静置部を隔壁で分離した静置部から油脂成分3を回収する。反応液を振動篩などで篩い分けし4、骨粒5の固形分を回収する。篩下の分解液6を孔拡散式平膜分離装置7に送り、水8を拡散水として蛋白質分解物のペプチド・アミノ酸の拡散した拡散液9を回収する。非拡散液の蛋白質分解酵素ならびに未分解蛋白質10は酵素分解塔2に循環使用する。同様に頭のみをそのまま水洗いしたものを、水切りしてミンサーで粗粉砕した原料スラリー1並びに中骨と内臓はわざわざ分離して、中骨のみとして水洗いしたものを、水切りしてミンサーで粗粉砕した原料スラリー1から得られた油脂成分3とコントローラーとしてのサフラワー油と比較して、ラットへの摂食試験を行ない、摂取効率並びに摂食試験終了後ラットの臓器中の生理活性物質の測定を行った。

【発明の効果】
【0014】
本発明により得られた鰻の油脂成分は、70℃以下の比較的低温で短時間に行なわれるので、油の酸化や異性化などの品質の低下を防ぐことが出来、かつ60℃以上にすることで雑菌の増殖を防止できる。しかも、高価な酵素は循環使用できるのでコスト面でも安価に回収できる。このようして得られた鰻油は一般的な酸化生成物による刺激臭も少なく、DHA、EHAの含有量も多い。特に苦だまや腸管のついた肝など内臓のついたままの中骨を酵素分解して得られた油脂成分がラットの脳ホスファチジルコリンの脂肪酸組成に及ぶす影響が頭のみのものや、中骨のみからの油脂成分に比べて極めて特異的にDHA組成が多く、内臓を含む鰻の加工残渣が脳機能改善効果を有する機能性油脂であることか明らかにされた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
鰻の加工残渣から苦だまや腸管のついた肝など内臓のついたままの中骨を簡単に水洗いしただけのものをミンサーで粗粉砕しスラリー化したものを1時間当り1KGに対して、耐熱性蛋白質分解酵素15gを連続的に温度60℃〜70℃の酵素分解塔に送入し、滞留時間3時間で分解反応を行う。酵素分解塔の上部は攪拌部と静置部を隔壁で分離し、静置部から連続的に油脂成分を回収するプロセスを用いる。耐熱性蛋白質分解酵素としてはヤクルト薬品工業株式会社製「アロアーゼXA−10」、天野エンザイム株式会社製「プロテアーゼSアマノG」「サモアーゼPC10F」などが使用されるが、これらに限定されるものではない。蛋白質分解酵素の添加量は原料に対して0、01〜5重量%程度が好ましい。0、01重量%以下でも蛋白質分解酵素によっては分解が可能であるが滞留時間を長くする必要が生じ、油脂成分の酸化・変質の点から好ましくない。また5重量%以上では経済的に不利となる。分解反応の温度は60℃〜70℃が好ましく、60℃以下では雑菌繁殖の恐れがあると共に分解時間が長くなるので油脂成分の品質の点で好ましくない。70℃以上では滅菌の面では好ましいが、分解酵素の失活並びに油脂成分の温度劣化の点で好ましくない。
【0016】
3時間後に酵素分解塔の下部に取り付けたフィーダーにて一定量の分解液を抜取り始め、これに含まれる固形物の骨粒を振動フルイなどで分離回収する。水溶性の分解液には蛋白質の分解生成物であるペプチド成分並びにアミノ酸成分と未分解の蛋白質成分並びに蛋白質分解酵素が含まれている。この分解液から蛋白質分解酵素並びに未分解の蛋白質物質を分離し、酵素分解塔に循環使用する。 蛋白質分解酵素並びに未分解蛋白質物質と蛋白質の分解生成物であるペプチド成分並びにアミノ酸成分とを物理的性質の違いで分離する事で蛋白質分解酵素並びに未分解蛋白質物質のみを酵素分解塔に循環使用する。
【0017】
物理的性質の違いで分離する方法として、膜分離法があるが、なかでも最も好ましいものとして孔拡散式平膜分離装置が推奨される。孔拡散式平膜分離装置では蛋白質の分解反応成分であるペプチドやアミノ酸などの低分子量成分を水に拡散させて回収し、該蛋白質分解酵素、未反応蛋白質などの分子量30000以上の高分子成分、および直径20nm以上の粒子を含む水溶液は拡散速度が遅いので、非拡散液としてそのまま酵素分解塔に循環し使用する。
【0018】
孔拡散式平膜分離装置内には平均孔径30nm、空孔率60%、膜厚300ミクロンメートルの再生セルロース膜が使用されている。目的とする反応生成物の分子量と酵素の分子量及び分散状態によって用いる平膜での平均孔径を変化させる。平均孔径を15nm以下に設定すれば拡散速度が遅くなるため、必要とする膜面積を大きくしなければならない。1平方メートル当たり、1時間当たり、3キログラムの反応生成物水溶液の拡散量を基準とした操作条件を採用する。
【0019】
本発明中で利用される膜の孔特性の評価方法を以下にまとめて示す。
平均孔径(nmの単位)=2(J・d・V/P/A・Pr)1/2
ここでJは純水のろ過速度(ml/分)
dは膜厚(ミクロン)
Vは水の粘度(センチポイズ)
Pは膜間差圧(mmHg)
Aは有効ろ過面積(平方メートル)
Prは空孔率(無次元) 空孔率=1−膜の見掛け密度/膜素材高分子の密度
孔拡散式平膜分離装置とは、幾何学的な孔の存在が明らかな平面状な膜(通常、平均孔径5nm以上の膜)を用いて拡散により物質分離を行う装置で、特に、孔内での物質の拡散が分離性能を支配するように連動した送液ポンプを用いた装置。
【実施例1】
【0020】
鰻の蒲焼加工の時に残渣として苦だまや腸管のついた肝など内臓のついたままの中骨をそのまま水洗いし、孔径6mmΦのプレートをつけてミンサーで粗粉砕して原料スラリーとした。酵素分解塔の内容量が9L並びに孔拡散式平膜分離装置の内容量5Lの連続酵素分解システムに水11kgを入れ、これに耐熱性蛋白質分解酵素(ヤクルト薬品工業株式会社製アロアーゼXA−10)45gを溶解させて循環を行い、分解塔のジャケットを70℃に加熱して内液温度を65℃に保った。循環を一旦停止し、原料スラリーを1kg/hrで酵素分解塔に送入し、3時間後に酵素分解塔から反応液を抜き出し始め、固形分である骨粒を振動篩で分離し、分解液を平膜分離装置に送液し循環を再開した。同時に孔拡散式平膜分離装置には拡散水として、水道水を6kg/hrで送入し、被拡散液から分解生成物を水道水に拡散させ、拡散液を回収した。分解液から水道水に拡散されない蛋白質分解酵素並びに未反応の蛋白質などの高分子物質は非拡散液として孔拡散式平膜分離装置から排出され、酵素液として再び酵素分解塔に送入した。引き続き原料スラリーを1kg/hrで送入し、送入開始から8時間後に原料スラリーの送入を停止した。酵素分解塔の上部には攪拌部と静置部が隔壁で分離され、原料スラリーの分解が進むと分解液中の油脂成分が静置部に分離される。送入開始3時間後から塔上部に設けた静置部にから油脂層を連続的に抜き出した。
得られた油脂層をさらに遠心分離機でバッチ的に処理して、水層を分離除去した油脂成分を栄養機能性の評価のため、ラットによる摂食効果を調べた。
【実施例2】
【0021】
実施例1と同様にして鰻の加工残渣として頭のみを原料スラリーとして連続酵素分解し、頭のみの分解物から得られた油脂成分について、栄養機能性の評価のため、ラットによる摂食効果を調べた。
【実施例3】
【0022】
実施例1と同様にして鰻の加工残渣として中骨についた苦だまや肝等の内臓物をよく取り除き中骨のみを原料スラリーとして連続酵素分解し、中骨のみの分解物から得られた油脂成分について、栄養機能性の評価のため、ラットによる摂食効果を調べた。
表1〜表4にラットの摂食実験による栄養機能性評価結果を示す。
【0023】
表1に摂取量および体重増加に及ぼす影響を示した。
【0024】
【表1】

【0025】
コントロールとして用いた高リノール酸含有のサフラワー油と比べて、鰻の加工残渣からの油のラットへの摂取量および体重増加に及ぼす影響は表1の結果から、摂取量並びに摂取効率が有意に高く、栄養分の有効利用を支持する成分が鰻油中に含まれている事が判る。
【0026】
表2に摂食試験終了後、組織重量に及ぼす影響を調べた結果を示した。
【0027】
【表2】

【0028】
実施例1の骨・内臓油については肝臓、脾臓、睾丸周辺脂肪、褐色脂肪重量が有意に高く、
実施例2の頭油で肝臓、睾丸周辺脂肪、褐色脂肪重量が有意に高く、実施例3の骨油で睾丸周辺脂肪、褐色脂肪重量が有意に高い結果が得られた。睾丸周辺脂肪は白色脂肪組織であり、肥満につながる結果であるが、体脂肪の燃焼につながる褐色脂肪組織の重量増加は肥満抑制に寄与する。
【0029】
表3に食餌脂肪の脂肪酸組成を示す。
【0030】
【表3】

【0031】
表4に脳ホスファチジルコリンの脂肪酸組成に及ぼす影響を示す。
【0032】
【表4】

【0033】
表3の食餌脂肪の脂肪酸組成結果から、実施例1、2、3のいずれの油にも、コレステロールの低下、血栓生成の抑制、制癌作用などの生理活性を有すると共に、記憶力の増進作用、学習能力の向上作用、脳の発育促進作用など機能性作用を有する高度不飽和脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)などが10%前後含まれている。
しかるに、表4の脳ホスファチジルコリンの脂肪酸組成結果では、DHAレベルで実施例1の内臓付き中骨からの油脂成分についてのみ有意に高い値が得られ、実施例2および3では有意な変化が認められないという結果となっており、本発明による鰻の内臓を含む原料を蛋白質分解酵素で酵素分解して得られる、ドコサヘキサエン酸とエイコサペンタエン酸を総量で10重量%以上含有した油脂成分は記憶力の増進作用、学習能力の向上作用、脳の発育促進作用など脳機能改善効果を期待できる機能性油脂であることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明による鰻の内臓を含む原料を、蛋白質分解酵素で60℃〜70℃の温度で短時間に分解することで、酸化変性による有効成分の劣化を防ぎ、品質的にも経済的にもすぐれたプロセスで分離回収する方法で得られた油脂成分は、記憶力の増進作用、学習能力の向上作用、脳の発育促進作用など脳機能改善効果を期待できる機能性油脂であることが明らかとなり、多機能性食品や医療品産業などに利用される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】工程図
【符号の説明】
【0036】
1 原料スラリー
2 酵素分解塔
3 油脂成分
4 篩い分け
5 骨粒
6 分解液
7 孔拡散式平膜分離装置
8 水道水(拡散水)
9 拡散液
10 非拡散液


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鰻の内臓を含む原料を蛋白質分解酵素で酵素分解して得られる、ドコサヘキサエン酸とエイコサペンタエン酸を総量で10重量%以上含有した脳機能改善効果を有する機能性油脂。
【請求項2】
請求項1において、鰻の内臓を含む原料と蛋白質分解酵素を酵素分解装置に供給し、滞留時間1〜6時間の短時間で加水分解反応させることにより、油脂成分を調整するプロセスにおいて、酵素分解装置の上部を攪拌部と静置部とに隔壁にて分離した静置部から得られるドコサヘキサエン酸とエイコサペンタエン酸を総量で10重量%以上含有した脳機能改善効果を有する機能性油脂。
【請求項3】
請求項1において、鰻の内臓を含む原料と0、05〜5重量%の蛋白質分解酵素を連続的に酵素分解装置に供給し、温度60℃〜70℃、滞留時間1〜6時間の短時間で加水分解反応させ、酵素分解装置の上部を攪拌部と静置部とに隔壁にて分離した静置部から連続的に得られるドコサヘキサエン酸とエイコサペンタエン酸を総量で10重量%以上含有した脳機能改善効果を有する機能性油脂。


【図1】
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【公開番号】特開2007−82464(P2007−82464A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−275088(P2005−275088)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(502366446)株式会社福岡養鰻 (4)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】