説明

脳波測定用器具、センサ及び脳波の測定方法

【課題】本発明は、装着している間に食塩水が滴ることを抑制すると共に、長時間装着しても頭痛が発生することを抑制することが可能な脳波測定用器具、該脳波測定用器具に適用することが可能なセンサ及び該脳波測定用器具を用いる脳波の測定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】脳波測定用ヘルメット100は、電解質を含むカードランゲル122bが表面に固定されている電極122aを有する。センサ122は、電解質を含むカードランゲル122bが表面に固定されている電極122aを有する。脳波の測定方法は、脳波測定用ヘルメット100を、カードランゲル122bが頭皮に接触するように、頭部に装着する工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳波測定用器具、センサ及び脳波の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脳波を測定する際には、電極を頭皮に固定するために、ペーストと呼ばれる粘着基剤が用いられているが、脳波を測定した後に、ペーストを洗い流さなければならないという問題があった。そこで、ペーストを使用しない脳波の測定方法として、頭部に脳波測定用ヘルメットを装着する方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、キャップに設けた複数の電極のリード線から脳波測定用の信号を出力する脳波測定用ヘッドギアが開示されている。このとき、各電極が保液性を有するフェルト片と、フェルト片より短い深さの有底孔を有する突出部を設けた支持部とを有し、リード線がカーボン繊維束で構成されその一部が有底孔内に露出しており、フェルト片が、有底孔に挿入された後、食塩水を吸水した状態で頭皮に接触する。
【0004】
特許文献2には、ヘルメットを貫通してヘルメットに固定された第1の円筒部と、第1の円筒部内をスライド可能な第2の円筒部と、第1の円筒部内をスライドさせたときにヘルメットの内側から飛び出た第2の円筒部の端部に遊合状態で嵌め込むことが可能な球部、及び球部を支持する面を底面とした筒状の支持部を有するコネクター部と、支持部の内部に保持される導電部であって、電解質溶液を含浸させた状態で頭皮と接触されるフェルトと接触する導体、及び導体を支持部を通ってその外部に接続するための導線を有するものを備えた脳波測定用電極が開示されている。
【0005】
しかしながら、ヘルメットを装着している間に食塩水が滴ることに加え、ヘルメットを長時間装着すると、フェルトの硬さに起因する頭痛が発生するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−165386号公報
【特許文献2】特開2008−302089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、装着している間に食塩水が滴ることを抑制すると共に、長時間装着しても頭痛が発生することを抑制することが可能な脳波測定用器具、該脳波測定用器具に適用することが可能な電極及び該脳波測定用器具を用いる脳波の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、脳波測定用器具において、電解質を含むカードランゲルが表面に固定されている電極を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の脳波測定用器具において、前記カードランゲルは、弾性率が1×10Pa以上1×10Pa以下であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の脳波測定用器具において、前記カードランゲルは、電気抵抗率が1×10Ω・m以下であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、センサにおいて、電解質を含むカードランゲルが表面に固定されている電極を有することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、脳波の測定方法において、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の脳波測定用器具を、前記カードランゲルが頭皮に接触するように、頭部に装着する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、装着している間に食塩水が滴ることを抑制すると共に、長時間装着しても頭痛が発生することを抑制することが可能な脳波測定用器具、該脳波測定用器具に適用することが可能なセンサ及び該脳波測定用器具を用いる脳波の測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の脳波測定用器具の一例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
【0016】
図1に、本発明の脳波測定用器具の一例として、脳波測定用ヘルメットを示す。
【0017】
脳波測定用ヘルメット100は、半球状の本体110の所定の位置に、脳波測定部材120を保持すると共に、脳波測定部材120の位置を調整する円筒状のアジャスター111が設置されている。このとき、アジャスター111の内周に、突起部111aが形成されている。また、本体110のアジャスター111が設置される位置には、開口部が形成されている。
【0018】
脳波測定部材120は、下方が開口している円筒状の支持ケース121の外周に、突起部111aと係合する係合部121aが形成されている。また、支持ケース121の上面にネジ穴121bが形成されており、センサ122を固定するネジ123がネジ穴121aとネジ係合している。
【0019】
センサ122は、接着剤等によりネジ123と接合されている円盤状の電極122aの底面に、円柱状のカードランゲル122bが固定されている。また、電極122aは、リード線122cを介して、電気信号処理装置(不図示)に接続されている。このため、頭皮にカードランゲル122bを押し当てることにより、脳波を測定することができる。
【0020】
なお、アジャスター111は、カードランゲル122bの頭皮と接触する位置が国際10−20法に従うように本体110に配置されているが、脳波を測定することが可能であれば、特に限定されない。
【0021】
電極122aとしては、特に限定されないが、銀−塩化銀電極等が挙げられる。
【0022】
カードランゲル122bは、電解質を含む。
【0023】
電解質としては、特に限定されないが、塩化ナトリウム等が挙げられる。
【0024】
カードランゲル122bの弾性率は、1×10〜1×10Paであることが好ましく、1×10〜1×10Paがさらに好ましい。カードランゲル122bの弾性率が1×10Pa未満であると、カードランゲル122bの弾力性が不十分となることがあり、1×10Paを超えると、脳波測定用ヘルメット100を装着する際にカードランゲル122bが折れやすくなったり、脳波測定用ヘルメット100を長時間装着すると頭痛が発生したりすることがある。
【0025】
なお、カードランゲル122bの弾性率は、レオメーター(FUDO社製)を用いて測定することができる。
【0026】
カードランゲル122bの電気抵抗率は、1×10Ω・m以下であることが好ましく、3.5×10Ω・m以下がさらに好ましい。カードランゲル122bの電気抵抗率が1×10Ω・mを超えると、カードランゲル122bの導電性が不十分となることがある。
【0027】
なお、カードランゲル122bの電気抵抗率は、脳波計Polymate(デジテックス研究所社製)の付属ソフトAP Moniterを用いて測定することができる。
【0028】
カードランゲル122bは、カードランが電解質水溶液中に分散されている分散液を加熱することにより得られる。
【0029】
分散液中のカードランの含有量は、通常、4〜7質量%であり、5〜6質量%が好ましい。分散液中のカードランの含有量が4質量%未満であると、カードランゲル122bの弾力性が不十分となることがあり、7質量%を超えると、脳波測定用ヘルメット100を装着する際にカードランゲル122bが折れやすくなったり、脳波測定用ヘルメット100を長時間装着すると頭痛が発生したりすることがある。
【0030】
分散液中の電解質の含有量は、通常、0.05〜10質量%であり、0.5〜3質量%が好ましい。分散液中の電解質の含有量が0.05質量%未満であると、カードランゲル122bの導電性が不十分となることがあり、10質量%を超えると、頭皮がべたついて、洗髪が必要になることがある。
【0031】
分散液を加熱する温度は、通常、80〜90℃であり、83〜87℃が好ましい。分散液を加熱する温度が80℃未満であると、カードランゲル122bの弾力性が不十分となることがあり、90℃を超えると、脳波測定用ヘルメット100を装着する際にカードランゲル122bが折れやすくなったり、脳波測定用ヘルメット100を長時間装着すると頭痛が発生したりすることがある。
【0032】
脳波測定用ヘルメット100を用いて脳波を測定する方法としては、公知の方法を用いることができる。
【0033】
脳波測定用ヘルメット100以外の脳波測定用器具としては、脳波測定用キャップ等が挙げられる。
【0034】
なお、センサ122は、皮膚にカードランゲル122bを押し当てることにより、心電図、筋電図等の測定にも適用することができる。
【実施例】
【0035】
[実施例1]
イオン交換水80g中にカードラン(キリン協和フーズ社製)5gを加え、T.K.ディスパー(特殊機化工業社製)を用いて、800rpmで10分間分散させた。次に、2N水酸化ナトリウム水溶液5gを加え、T.K.ディスパー(特殊機化工業社製)を用いて、2000rpmで5分間溶解させた。さらに、2N塩酸5gを加え、T.K.ディスパー(特殊機化工業社製)を用いて、3000rpmで5分間分散させた後、脱気して、カードラン分散液を得た。
【0036】
内径が15mm、長さが9cmの円柱状の容器にカードラン分散液を充填した後、80℃で20分間加熱し、ゲル化させた。得られたゲルを切断し、直径が15mm、長さが5.5cmの円柱状のカードランゲルを得た。カードランゲルは、弾性率が7.8×10Paであり、電気抵抗率が3.067×10Ω・mであった。
【0037】
得られたカードランゲルを用いて、脳波測定用ヘルメット100を作製した。
【0038】
脳波測定用ヘルメット100を被験者の頭部に装着し、電気信号処理装置として、脳波計Polymate(デジテックス研究所社製)を用いて、脳波を測定した。その結果、脳波測定用ヘルメット100を装着している間に食塩水は滴らなかった。また、脳波測定用ヘルメット100を2時間装着しても、被験者に頭痛が発生しなかった。
【0039】
[比較例1]
カードランゲル122bの代わりに、生理食塩水を含浸させたフェルトを用いた以外は、実施例1と同様にして、脳波測定用ヘルメットを作製し、脳波を測定した。その結果、脳波測定用ヘルメットを装着している間に食塩水が滴った。また、脳波測定用ヘルメットを2時間装着すると、被験者に頭痛が発生した。
【符号の説明】
【0040】
100 脳波測定用ヘルメット
122 センサ
122a 電極
122b カードランゲル
122c リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質を含むカードランゲルが表面に固定されている電極を有することを特徴とする脳波測定用器具。
【請求項2】
前記カードランゲルは、弾性率が1×10Pa以上1×10Pa以下であることを特徴とする請求項1に記載の脳波測定用器具。
【請求項3】
前記カードランゲルは、電気抵抗率が1×10Ω・m以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の脳波測定用器具。
【請求項4】
電解質を含むカードランゲルが表面に固定されている電極を有することを特徴とするセンサ。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の脳波測定用器具を、前記カードランゲルが頭皮に接触するように、頭部に装着する工程を有することを特徴とする脳波の測定方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−161419(P2012−161419A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23071(P2011−23071)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【出願人】(304021288)国立大学法人長岡技術科学大学 (458)
【Fターム(参考)】