説明

脳波測定用電極、脳波測定用部材、及び、脳波測定装置

【課題】頭皮への負担を抑えつつも、複数回の使用が可能な脳波測定用電極及びこの脳波測定用電極を用いた脳波測定用部材及び脳波測定装置を提供する。
【解決手段】脳波測定用電極40は、脳波を測定するための脳波測定用電極であって、基底部50と、基底部から突出して設けられた、ゴムからなる突出部60と、突出部の先端に設けられ、脳波測定用電極の外部と電気的に接続され、前記脳波の測定時に頭皮に接触する、金属からなる接触部70と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳波測定用電極、脳波測定用部材、及び、脳波測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の脳波測定用電極として、例えば特許文献1には、導電性ゲルで形成されることで導電性を有しかつ変形可能な突出部を備え、この突出部を頭皮に接触させることで、脳の活動によって生じる脳波を測定する脳波測定用電極(チップ部)が開示されている。特許文献1に開示されている脳波測定用電極は、突出部が頭皮に接触すると変形するので頭皮に加わる圧力を低減し頭皮への負担を小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−120866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されているような導電性ゲルを用いた脳波測定用電極は、脳波測定用電極(特に、突出部)が変形し易く、また、導電性ゲル部分の乾燥による劣化も早かった。このため、脳波測定用電極は使い捨てになってしまう場合があった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、頭皮への負担を抑えつつも、複数回の使用が可能な脳波測定用電極及びこの脳波測定用電極を用いた脳波測定用部材及び脳波測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る脳波測定用電極は、
脳波を測定するための脳波測定用電極であって、
基底部と、
前記基底部から突出して設けられた、ゴムからなる突出部と、
前記突出部の先端に設けられ、前記脳波測定用電極の外部と電気的に接続され、前記脳波の測定時に頭皮に接触する、金属からなる接触部と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
前記突出部は、導電性ゴムからなり、
前記接触部は、前記突出部を介して前記外部と電気的に接続されている、
ようにしてもよい。
【0008】
前記突出部に設けられ、変形可能な導体をさらに備え、
前記接触部は、前記導体を介して前記外部と電気的に接続されている、
ようにしてもよい。
【0009】
前記突出部に設けられ、変形可能な導体をさらに備え、
前記接触部は、前記導体と一体的に形成されており、前記導体を介して前記外部と電気的に接続されている、
ようにしてもよい。
【0010】
前記接触部は、複数の金属粒子からなる、
ようにしてもよい。
【0011】
前記接触部は、金属膜からなる、
ようにしてもよい。
【0012】
前記突出部は、少なくとも一部が、前記外部と電気的に接続される、金属膜で被覆されている、
ようにしてもよい。
【0013】
前記基底部上に設けられたスペーサーをさらに備え、
前記スペーサーは、前記脳波の測定時に、前記突出部の頭髪の合間に挿入される部分を短くする、
ようにしてもよい。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の第2の観点に係る脳波測定用部材は、
上記脳波測定用電極と、
前記脳波測定用電極が頭皮に接触するように取り付けられる、前記頭皮を覆う覆い部材と、
を備えることを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の第3の観点に係る脳波測定装置は、
上記脳波測定用電極を備える、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、脳波測定用電極について、頭皮への負担を抑えつつも、複数回の使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る脳波測定装置を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る脳波測定装置が備える電極部材及びキャップの要部断面図である。
【図3】図2の蓋部の拡大断面図である。
【図4】図2の脳波測定用電極の拡大断面図である。
【図5】図2の脳波測定用電極を、突出部が突出している方向から見た図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る脳波測定用電極の断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る脳波測定用電極の断面図である。
【図8】本発明の第4の実施形態に係る脳波測定用電極の断面図である。
【図9】本発明の第5の実施形態に係る脳波測定用電極の断面図である。
【図10】本発明における変形例1に係る脳波測定用電極などを表す断面図である。
【図11】本発明における第1の実施形態の変形例2に係る脳波測定用電極などを表す断面図である。
【図12】本発明における第1の実施形態の変形例3に係る脳波測定用電極などを表す断面図である。
【図13】本発明の実施例1乃至3に係る脳波測定用電極を作製するための鋳型の断面図である。
【図14】本発明の実施例1の脳波測定用電極を用いて脳波を測定した結果を示した図である。
【図15】本発明の実施例1の脳波測定用電極を用いて脳波を測定した結果を示した図である。
【図16】本発明の第1の実施形態に係る脳波測定用電極の概略斜視図である。
【図17】本発明における変形例4に係る脳波測定用電極の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(脳波測定用電極及び脳波測定装置)について詳しく述べる。
【0019】
(第1の実施形態)
図1に示すように、脳波測定装置1000は、電極部材100と、キャップ200と、リード線500と、信号解析装置700と、を備える。
【0020】
キャップ200は、頭に被るものであり、ホルダー部210と、キャップ部220と、を備える。キャップ部220は、ヘルメット状又は帽子状の形状を有するものであり、合成樹脂、布などの適宜の材料によって形成される。キャップ部220は、被験者(脳波を測定する対象となる人)の頭皮400を覆う。ホルダー部210は、キャップ部220に所定の間隔で複数設けられる。ホルダー部210は、キャップ部220に形成された貫通孔に取り付けられた円筒状の部材である。詳細は後述するが、各ホルダー部210には、電極部材100が取り付けられる。
【0021】
リード線500は、導体が絶縁体で覆われた絶縁電線等の導線である。リード線500は、一端が電極部材100と電気的に接続され、他端が信号解析装置700と電気的に接続されている。
【0022】
信号解析装置700は、コンピュータ等の電子機器である。信号解析装置700は、電極部材100及びリード線500を介して伝達された、脳波を表す電気信号を解析し、解析結果に応じて所定の動作を行う。
【0023】
電極部材100は、蓋部20と、金属線30と、脳波測定用電極40と、を備える。各電極部材100は、図2に示すように、ホルダー部210に取り付けられて用いられる(図2において、キャップ200の断面を表すハッチングを省略した)。
【0024】
蓋部20は、例えばエポキシ樹脂等の樹脂材料などによって、射出成形などの方法で形成されるものであり、ホルダー部210に合わせた形状で形成されている。具体的には、蓋部20は、図2及び図3に示すように、円柱状部材20aと、円柱状部材20aの外周面における頭皮400と反対側の部分(図2における上端部)から張り出すフランジ部20bと、を備える。蓋部20の頭皮400側(円柱状部材20aの頭皮400側の面(図2及び3では、円状部材20aの下面))には、脳波測定用電極40を挿入することができる円柱状の孔21が形成されており、脳波測定用電極40はこの孔21に挿入される。ホルダー部210の内周面及び円柱状部材20aの外周面には、蓋部20とホルダー部210とが螺合することができるようにネジ山が形成されている。フランジ部20bは、蓋部20とホルダー部210とが所定の度合いで螺合した場合において、ホルダー部210の上端面(頭皮400と反対側の面)に当接するように形成されている。なお、蓋部20は、導電性を有する合成樹脂などから形成されていてもよい。このとき、蓋部20は、脳波測定用電極40及び金属線30と電気的に接続されている。
【0025】
金属線30は、一端が脳波測定用電極40と電気的に接続され、他端がリード線500と電気的に接続されている。金属線30は、図2に示すように、蓋部20の中心を貫通し、脳波測定用電極40(後述の基底部50)のほぼ中心に挿入される(図面において、金属線30の断面を表すハッチングを省略し、金属線30を実線で示した)。このとき、金属線30は、脳波測定用電極40を貫通はしておらず、先端が脳波測定用電極40に突き刺さっているだけである。金属線30は、脳波測定用電極40に対しては回転不能で、蓋部20に対しては回転可能になっている。
【0026】
なお、金属線30は、脳波測定用電極40に挿入されずに、脳波測定用電極40における蓋部20と接している面に当接しているだけでもよい。このとき、脳波測定用電極40は、金属線30と電気的に接続されている。また、金属線30は、脳波測定用電極40と当接しているだけなので、脳波測定用電極40に対しては回転可能になっている。
【0027】
また、蓋部20における孔21の上面と接する面には、金属材料等から形成される、円形状(孔21の上面と同じ形状)の金属板を設けてもよい。このとき、金属線30は、脳波測定用電極40に挿入されずに、この金属板と電気的に接続されている。さらに、この金属板は、脳波測定用電極40と電気的に接続されている。また、基底部50に伝達された電気信号は、この金属板を介して金属線30に伝達される。金属板を設けることで、基底部50と金属板との接触面積を大きく取ることが出来、電気信号を伝達し易くしている。
【0028】
脳波測定用電極40は、図2及び図16に示すように、基底部50と、突出部60と、接触部70と、を備える。基底部50及び突出部60は、変形可能な導電性ゴムなどで、型成型などの適宜の方法で形成されている。導電性ゴムは、弾性を有することによって、変形可能である(以下、各種ゴムについて同じ)。なお、導電性ゴムは、例えば、有機導電性ポリマー、導電性粉体材料を含有した高分子材料(液状のシリコーン樹脂等)、イオン性液体を含侵させた高分子材料で形成される。また、上記導電性粉体材料には、例えば、グラファイト、カーボンナノチューブ、銀微粒子等の金属粒子、AgCl粒子、有機導電性ポリマーの粉体等が用いられる。
【0029】
基底部50は、蓋部20から見た場合に円形状である略円柱形状で形成されている。基底部50は、蓋部20と当接している側の円の中心に金属線30が挿入されて固着され、金属線30と電気的に接続されている。基底部50は、少なくとも一部が蓋部20の孔21に収納され、蓋部20との間の摩擦力によって保持されている。このとき、基底部50は、蓋部20に対して摺動可能である。なお、基底部50は、蓋部20の孔21を設けず、例えば、円柱状部材20aの下面に設けた固定部材(例えば、基底部50を引っ掛ける爪)、接着材、粘着材などの固定部によって、円柱状部材20aの下面に固定されてもよい。
【0030】
突出部60は、図4に示すように、上述したような導電性ゴムで形成された略円錐形状の部材である。突出部60は、図2に示すように、基底部50から頭皮400の方向に突出して設けられ、基底部50と電気的に接続されている。図5を参照すると、本実施形態における突出部60は、基底部50の頭皮400側に7つの突出部60が設けられている。なお、突出部60の数はこの数に限られないが、突出部60は複数設けられている方が望ましい。本実施形態では、突出部60と基底部50とは、同じ材料によって、一体的に形成されている。突出部60は、円柱形状、多角柱形状(底辺及び上辺が多角形の形状)、多角錐(底辺が多角形の形状)などの形状であってもよい。
【0031】
接触部70は、金属材料で形成された、すなわち導電性を有する金属塊である。頭皮400と接触するように突出部60の先端に直接設けられている。これによって、接触部70は、突出部60と電気的に接続されていることにもなる。接触部70は、例えば、基底部50及び突出部60を型成型するときに突出部60に直接融着されるか(例えば、インサート成型などの方法)、導電性の接着材などの固着材によって突出部60に固着されて、設けられる。接触部70を構成する金属塊は、例えば、銀、金、白金、チタン等の単一成分であってもよいが、合金、導電性の金属酸化物、導電性の塩化物等からなるものであることが望ましい。なお、接触部70は、内部と外部とで異なった成分を用いてもよく、例えば内部に銀を用い、外部に塩化銀を用いてもよい。なお、突出部60は、金属線30と電気的に接続されており、金属線30は、リード線500と電気的に接続されているので、突出部60及び接触部70は、信号解析装置700と電気的に接続されていることにもなる。「電気的に接続する」とは、接続対象の両者を直接接続することのほか、接続対象の両者(例えば、接触部70と信号解析装置700)を他の導電性部材(例えば、突出部60や金属線30)を介して接続されるようにして、前記両者のうち少なくとも一方(例えば、接触部70)から他方(例えば、信号解析装置700)に電気が流れるように前記両者を接続することをも含む。
【0032】
ここで、電極部材100(脳波測定用電極40)のキャップ200への取り付け方法(装着方法)を説明する。脳波測定用電極40が挿入された蓋部20をホルダー部210に挿入して回していくことで、両者がネジ山によって螺合し、蓋部20がホルダー部210に装着される。このとき、蓋部20を回すほど、蓋部20は、ホルダー部210内に進入し、頭皮400に近づく(図2では、下側に進む)。蓋部20には脳波測定用電極40が挿入されているため、蓋部20が頭皮400に近づくことによって、脳波測定用電極40が頭皮400に近づき、やがて頭皮400に接触する。その後、蓋部20をさらに回していくと、脳波測定用電極40は蓋部20の締め付け具合に応じた圧力で頭皮400を押圧することになる。従って、蓋部20の回し具合を調節することによって、電極部材100の頭皮400に与える圧力を微調整することが可能となる。なお、蓋部20がホルダー部210の内部に所定距離だけ進入すると、ホルダー部210の上端面(図2における頭皮400と反対側の端面)にフランジ部20bが当接する。これにより、蓋部20がホルダー部210に進入しすぎることを防止できる。蓋部20の回し具合の調節後に、リード線500が金属線30に接続される。
【0033】
基底部50を備える脳波測定用電極40は、蓋部20に摺動可能に挿入されているので、蓋部20に対して独立して回転することができる。通常は蓋部20と脳波測定用電極40とが共に回転することになるが、蓋部20が脳波測定用電極40を回動可能に支持しているため、脳波測定用電極40の突出部60の間に頭髪が入り込んだり、接触部70が頭皮に接触したりするなどして、脳波測定用電極40の回転を妨げる力が脳波測定用電極40に加わった場合には、蓋部20は脳波測定用電極40と独立して回転し、脳波測定用電極40が回転しないようになっている。これによって、脳波測定用電極40が頭髪に絡むリスクを軽減している。なお、金属線30をリード線500に接続するなどして回転出来ないようにし、蓋部20が回転しても、脳波測定用電極40は回転しないようにしてもよい。これにより、脳波測定用電極40は最初から回転しないので、脳波測定用電極40が頭髪に絡むリスクを軽減している。
【0034】
次に、頭皮400からの電気信号について説明する。頭皮400に接触した接触部70には、脳の様々な活動に応じて電気信号が頭皮400から伝達される。頭皮400に接触した接触部70は、電気信号を頭皮400から受け取る。この電気信号は脳波を表す。そして、伝達された電気信号は、突出部60、基底部50、金属線30、リード線500の順に伝達され(上述の金属板が基底部50に設けられた場合には、基底部50から、金属板を介して金属線30に電気信号が伝達される)、信号解析装置700に供給される。信号解析装置700は、供給された電気信号を解析して、電気信号が表す脳波を特定する。このようにして、信号解析装置700は、脳波を測定する。信号解析装置700は、測定した脳波を解析し、その人(測定した脳波の持ち主)の考えを分析し、分析結果に応じて所定の動作を行う。例えば、信号解析装置700は、分析結果を出力したり、分析結果に応答した動作を行ったりする。
【0035】
次に、突出部60について考える。本実施形態では、基底部50と頭皮400との間に突出部60を備えているため、蓋部20がホルダー部210内に進入することによって、突出部60が頭髪の間に入り込んで、突出部60の先端に設けられた接触部70が頭皮400に接触する。つまり、電極部材100は、頭皮400に接触しやすく、頭皮400から電気信号を受け取り易い。なお、仮に、突出部60が設けられていない場合には、頭皮400の表面に頭髪があると基底部50と頭皮400との間に頭髪が挟まり、接触部70が頭皮400に接触することが困難になり、頭皮400から電気信号を受け取れないおそれがある。また、突出部60は、上記のようにゴムで形成されて弾性を有し、変形可能であるので、頭髪が巻き付いても頭髪を強く引っ張ることがなく、被験者に痛みや不快感を与えるおそれが小さい。さらに、接触部70が頭皮400に接触すると、接触部70が金属材料から形成されている(電極部材100の頭皮400との接触部分が固い)ことにより被験者に痛みや不快感を与えるおそれがあるが、本実施形態に係る突出部60は、接触部70(金属材料)が頭皮400に与える固さを、突出部60が変形可能であることによって(特に、突出部60が可撓性を有して撓むことによって)柔軟に緩和し、被験者に痛みや不快感を与えるおそれが低い。さらに、電極部材100は、日常的に、かつ長時間にわたって連続的に使用されても、突出部60の変形(ここでは、撓む)により頭皮400への負担を抑えることができる。
【0036】
また、仮に、少なくとも突出部60(基底部50及び突出部60)を、導電性ゲルを用いて形成した場合には、突出部60は、変形し易く、また、乾燥による劣化が生じやすい。このため、脳波測定用電極40が使い捨てになってしまう場合があった。しかし、本実施形態では、突出部60(及び基底部50)に導電性ゴムを用いたので、強度があがり、導電性ゲルを用いた場合より脳波測定用電極40を複数回使用できる。このように、本実施形態に係る脳波測定用電極40は、突出部60がゴムで形成され、金属材料の接触部70で頭皮400からの電気信号を受け取る(検出する)ので、頭皮への負担を抑えつつも、複数回の使用が可能になっている。
【0037】
なお、本願発明者は、導電性ゴムから形成された接触部70(つまり、接触部70も含め、脳波測定用電極40を一体的に導電性ゴムによって形成した場合における接触部70)を頭皮400に接触させて脳波を測定したところ、脳波を表す電気信号が頭皮400から信号解析装置700にうまく伝達されず、脳波を精度良く測定できない場合があることを見出した。本願発明者は、この現象が生じる理由を、脳波を表す電気信号が頭皮400から脳波測定用電極40にうまく伝達されないことによるものであることを見出した。そこで、本実施形態では、接触部70を金属材料で形成している。このようにすることで、接触部70が導電性ゴムから形成された場合に比べて、頭皮400から脳波を表す電気信号を受け取り易くなり、脳波を精度良く測定することが出来た。これは、接触部70と頭皮400との接触面に起こる抵抗(接触抵抗)が低くなり、金属で形成された接触部70を介して電気信号を受け取り易くなったことが理由の一因と予測される。以上より、本実施形態に係る脳波測定用電極40(脳波測定装置1000)では、突出部60の先端に金属材料から形成される接触部70を設けることで、脳波を精度良く測定することができるとともに、突出部60に導電性ゴムを用いたので、頭皮400への負担を抑えることができる。
【0038】
なお、脳波測定用電極40を含む脳波測定装置1000は、例えば、近年その有用性が注目されているブレイン−マシン・インターフェイス(Brain−Machine Interface:BMI)又はブレイン−コンピュータ・インターフェイス(Brain−Computer Interface: BCI)として用いられる。BMI(以下、特に断りのない限り、本明細書においてBMIはBCIを包含する概念を表す言葉として用いられる。)とは、脳の活動によって生じる脳波を表す電気信号を読み取り、これを直接コンピュータ等の電子機器に入力する形式のインターフェースである。これにより、コンピュータ等の電子機器をより直感的に操作することが可能になると期待されている。また、手足を使わなくてもコンピュータ等を操作することが可能になるため、福祉、医療、介護分野等への応用も期待されている。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る脳波測定用電極40について、図6を参照しながら説明する。第2の実施形態を説明するにあたり、第1の実施形態と異なる点を中心に説明するとともに、同様の部材については同じ符号を付して説明する。第2の実施形態では、接触部70が、第1の実施形態のように単一の金属塊ではなく、第1の実施形態で用いた金属塊よりも小さな複数の金属粒子71で構成されている。金属粒子71は、第1の実施形態と同様に、金属材料で形成される。金属粒子71は、突出部60の先端に埋設されており、少なくとも一部が突出部60の頭皮400側に露出している。上記のような埋設によって、各金属粒子71は、突出部60と電気的に接続されている。これによって、第1の実施形態と同様に、各金属粒子71は、金属線30、リード線500、信号解析装置700などとも電気的に接続されていることになる。各金属粒子71は、金属材料で形成されているため、上記第1の実施形態と同様に、金属粒子71は、脳波を精度良く測定することが出来る。金属粒子71が受け取った電気信号は、各金属粒子71、突出部60、基底部50、金属線30、リード線500、信号解析装置700の順に伝達される。また、第2の実施形態に係る各金属粒子71は、第1の実施形態に係る脳波測定用電極40とは違い、接触部70を小さな複数の金属粒子71にすることで、頭皮400に加える圧力を分散し柔らかさを被験者に与える。
【0040】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る脳波測定用電極40について、図7を参照しながら説明する。第3の実施形態を説明するにあたり、第1の実施形態と異なる点を中心に説明するとともに、同様の部材については同じ符号を付して説明する。第3の実施形態に係る脳波測定用電極40は、図7に示すように、金属部70aと、第1の金属膜70bと、第2の金属膜70cと、を備える(図7において、第1の金属膜70b及び第2の金属膜70cの断面を表すハッチングを省略し、第1の金属膜70b及び金属膜70cを太線で示した)。金属部70aは、金属材料で形成された、すなわち導電性を有する金属塊であり、突出部60の先端に直接設けられている。第1の金属膜70bは、金属部70aを被覆する。第2の金属膜70cは、突出部60における頭皮400と接触する可能性のある部分を被覆する。第1の金属膜70bと第2の金属膜70cとは、金属材料によって、蒸着やメッキ等の方法で、一体的に形成される。第1の金属膜70bと第2の金属膜70cとは、別々に形成されるようにしてもよい。第1の金属膜70bと第2の金属膜70cとは、変形可能であり、突出部60が変形することを維持できるように構成される。第3の実施形態では、第1の金属膜70bと第2の金属膜70cとは、金属部70a、突出部60などと電気的に接続され、脳波測定用電極40の外部と電気的に接続されている。第3の実施形態における接触部70は、金属部70aと第1の金属膜70bとから構成されている。第1の金属膜70b及び金属膜70cは、頭皮に接触すると頭皮から電気信号を受け取ることができる。
【0041】
ここで、第2の金属膜70cが被覆されていない場合について考える。突出部60は、頭皮400に接触すると変形し、例えば、曲がるように変形する(撓む)場合がある。この場合、突出部60(特に、金属部70a近傍の側面)が頭皮400に接触する可能性がある。しかし、突出部60は、導電性ゴムから形成されているので頭皮400から電気信号を受け取ることが難しい場合がある。
【0042】
そこで、第3の実施形態では、金属材料で形成された第2の金属膜70cで、突出部60(特に、突出部60が変形するなどして、頭皮400と接触する可能性のある部分)を被覆する。これによって、突出部60が変形しても、第2の金属膜70cが頭皮400に接触するので、第2の金属膜70cによって、脳波測定用電極40は頭皮400から電気信号を受け取り易くなる。第1の金属膜70bが受け取った電気信号は、金属部70a、突出部60、基底部50、金属線30、リード線500、信号解析装置700の順に伝達される。または、第2の金属膜70cが受け取った電気信号は、突出部60、基底部50、金属線30、リード線500、信号解析装置700の順に伝達される。
【0043】
また、第1の実施形態のように突出部60の先端には金属塊を設けずに、突出部60の先端などに蒸着やメッキ等を施すことで第1の金属膜70bと第2の金属膜70cとを形成してもよい。第1の金属膜70bは、突出部60が変形しないときに、頭皮400に接触可能な部分であり、第1の金属膜70bは、突出部60が変形したときに、頭皮400に接触可能な部分である。つまり、接触部70は、この第1の金属膜70bだけで構成される。
【0044】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る脳波測定用電極40について、図8を参照しながら説明する。第4の実施形態を説明するにあたり、第1の実施形態と異なる点を中心に説明するとともに、同様の部材については同じ符号を付して説明する。第4の実施形態に係る脳波測定用電極40は、図8に示すように、金属板85aと、導線80と、をさらに備える(図8において、導線80の断面を表すハッチングを省略し、導線80を実線で示した)。金属板85aは、導電性を有する金属材料で形成され、電極部材100における蓋部20と当接している部分に設けられている。また、第4の実施形態では、金属線30が金属板85aと電気的に接続されている。このとき、金属線30は、金属板85aに対しては回転不能になるように(例えば、金属線30と金属板85aとをはんだ付けしない等によって)、金属板85aと電気的に接続されている。導線80は、導電性を有する金属材料からなり、変形可能な(ここでは、可撓性を有する)細い線状で形成されており、導線80によって突出部60の変形できなくなることはない。金属板85a及び導線80は、例えば、銀、金、白金、チタン等の単一成分であってもよいが、合金、導電性の金属酸化物、導電性の塩化物等からなるものであることが望ましい。導線80は、突出部60及び基底部50の内部を通り、一端が接触部70と電気的に接続され、他端が金属板85aと電気的に接続されている。これにより、接触部70が頭皮400から受け取った電気信号は、導線80を介して金属板85aに伝達される。また、第4の実施形態に係る突出部60及び基底部50は、変形可能であるが導電性を有してはいない弾性ゴム(合成ゴムや天然ゴムなど)で形成されている。これによって、第4の実施形態では、突出部60及び基底部50が導電性を有することなく(有機導電性ポリマー、導電性粉体材料を用いることなく)、金属板85a及び導線80を介して脳波を測定することが出来る。ただし、突出部60及び基底部50が導電性を有していてもよい。接触部70が受け取った電気信号は、導線80、金属板85a、金属線30、リード線500、信号解析装置700の順に伝達される。
【0045】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態に係る脳波測定用電極40について、図9を参照しながら説明する。第5の実施形態を説明するにあたり、第1の実施形態と異なる点を中心に説明するとともに、同様の部材については同じ符号を付して説明する。第5の実施形態に係る脳波測定用電極40は、図9に示すように、金属板85bと、ワイヤー(導線)82と、を備える(図9において、ワイヤー82の断面を表すハッチングを省略し、ワイヤー82を実線で示した)。金属板85bは、導電性を有する金属材料で形成され、脳波測定用電極40における蓋部20と当接している部分に設けられている。また、第5の実施形態では、第1の実施形態とは違い、金属線30が金属板85bと電気的に接続されている。このとき、金属線30は、金属板85bに対しては回転不能であるように(例えば、金属線30と金属板85bとをはんだ付けしない等によって)、金属板85bと電気的に接続されている。ワイヤー82は、導電性を有する金属材料からなり、変形可能な(可撓性を有する)細い線状で形成されており、ワイヤー82によって突出部60の変形できなくなることはない。金属板85b及び導線80は、例えば、銀、金、白金、チタン等の単一成分であってもよいが、合金、導電性の金属酸化物、導電性の塩化物等からなるものであることが望ましい。ワイヤー82は、図9に示すように、突出部60の内部を通り、ワイヤー82の一部を突出部60の頭皮400側(先端)から外部に露出させることで、この露出部分が第1の実施形態に係る接触部70と同じように頭皮400から電気信号を受け取る。つまり、第5の実施形態の接触部70は、ワイヤー82のうち、突出部60から外部に露出している部分で構成される。ワイヤー82は、一端又は両端が金属板85bと電気的に接続されている。また、第5の実施形態に係る突出部60及び基底部50は、変形可能であるが導電性を有してはいない弾性ゴム(合成ゴムや天然ゴムなど)で形成されている。これによって、第5の実施形態では、突出部60及び基底部50が導電性を有することなく、金属板85b及び導線80を介して脳波を測定することが出来る。ただし、突出部60及び基底部50が導電性を有していてもよい。接触部70が受け取った電気信号は、ワイヤー82、金属板85b、金属線30、リード線500、信号解析装置700の順に伝達される。
【0046】
(変形例)
なお、本発明は、上記実施形態に限定されず、上記実施形態の内容は適宜変更可能である。以下に、上記実施形態の変形例を示すが、下記の変形例は適宜組み合わせることができる。なお、上記各実施形態の構成も適宜組合せることができる。
【0047】
(変形例1)
上記実施形態に係る脳波測定用電極40は、図10に示すように、さらにスペーサー90を備えてもよい。スペーサー90は、頭髪に当接することで、突出部60における、頭髪の間に入り込む長さを調整するものである。スペーサー90は、合成樹脂等から形成され(例えば、絶縁性を有する。導電性を有していてもよい。)、基底部50の頭皮400側に固着されて各突出部60の間に設けられる。スペーサー90は、頭髪の密度又は量が少なくなるほど、突出部60が突出する方向の長さを長くし、突出部60における基底部50から突出している長さを短くするように形成される。これによって、頭髪の密度又は量が少ない場合には、突出部60における、頭髪の間に入り込む長さが短くなり、頭髪の密度又は量が多い場合には、突出部60における、頭髪の間に入り込む長さが長くなるので、突出部60の先端にある接触部70は、頭皮400に過度に突き刺さらず、適度な押圧を頭皮400に加えることが可能になり、頭皮400に与えるストレスが軽減される。
【0048】
(変形例2)
次に、上記実施形態に係る蓋部20は、図11が示すようなものを用いてもよい。蓋部20は、図11に示すように、蓋部20が備える円柱状部材20aの内周面に凸部22aを、さらに備える。蓋部20の凸部22aは、円柱状部材20aの内周面を一周するようにリング状に形成されている。蓋部20の孔21に変形可能な脳波測定用電極40が挿入されると、脳波測定用電極40は、図11に示すように、凸部22aに圧迫されてわずかに変形する。このため、脳波測定用電極40は、凸部22aに引っかかるので、蓋部20からの不慮の脱落を防ぎ、電極部材100の取り扱いをさらに容易にすることができる。なお、先に述べたように凸部22aは蓋部20の内周面を一周するようリング状に形成されているため、脳波測定用電極40が水平方向に回転可能である。
【0049】
(変形例3)
次に、上記実施形態に係るホルダー部210及び蓋部20は、図12が示すようなものを用いてもよい。蓋部20は、図12に示すように、円柱部材20aの外周面に凸部22bをさらに備える。凸部22bは、円柱部材20aの外周面を一周するようなリング状で形成されている。ホルダー部210は、図12に示すように、内周面に複数の凹部230をさらに備える。各凹部230は、ホルダー部210の内周面を一周するようなリング状で形成される。また、各凹部230が凸部22bと噛み合うことで、電極部材100は頭皮400との距離(図12では、上下方向)が固定される(不慮の脱落帽子になる)。以上のように、ホルダー部210の内周面に複数の凹部230を設けることで、蓋部20はホルダー部210に対して多段階的に位置が決まる。このため、脳波測定用電極40を頭皮400に接触させたあとに、電極部材100のホルダー部210に対して挿入される度合いを変更したい場合に、電極部材100を回すことなくその度合いを変更することができる。また、各凹部230及び凸部22bがリング状で形成されていることで、蓋部20は、ホルダー部210に対して、蓋部20におけるホルダー部210と接している面の方向(図12では、左右方向)に摺動可能である。なお、円柱部材2a及びホルダー部210には、互いに螺合するネジ山が形成されていない。
【0050】
(変形例4)
次に、上記実施形態に係る突出部60は、通常図16に示すように、中央に位置する突出部60を中心に広がる同心円状に広がる配置で形成されているが、図17に示すように、くし状の配置(列)を、複数有するように形成されてもよい。突出部60は、くし状の配置で、一列に形成してもよい。図17は変形例4に係る脳波測定用電極40の全体の一部を切り出して説明した図であり、基底部50の断面を表すハッチングを省略した。
【実施例1】
【0051】
本発明に係る脳波測定用電極40について、実施例1を示しながらさらに詳細に説明する。実施例1では、図2等に示した第1の実施形態に係る電極部材100(脳波測定用電極40)、及びキャップ200を作製した。まず、キャップ部220に相当する市販の頭部保護用キャップに、直径16mmの円柱状の貫通孔を数カ所形成した。次に、この円柱状の貫通孔に市販のステンレス製雌ねじ(直径16mm)を、シリコーン系接着剤を用いて取り付けた。この雌ねじは、第1の実施形態におけるホルダー部210として機能するものである。
【0052】
蓋部20は、所定の形状の鋳型にエポキシ系常温硬化樹脂テクノビット(登録商標)4004を流し込み、それを硬化させることによって作製した。このとき、直径0.5mm、長さ20mmの銀線(金属線30に相当)を中心に差し込み、銀線の両端が蓋部20の外に出るように銀線を差し込む。なお、銀線のうち脳波測定用電極40に挿入される長さが約5mmとなるように銀線の位置を調整した。硬化後、エポキシ系常温硬化樹脂テクノビットを取り出した。そして、上記成形物を取り出したあとに、蓋部20のフランジ部20bが配置された側の面(図2における上面)から露出した銀線にリード線500をはんだ付けした。
【0053】
脳波測定用電極40は、図13に示す鋳型600を用いて作製した。鋳型600は、図13に示すように、上鋳型610と下鋳型620とから構成されている。上鋳型610と下鋳型620とは分離可能である。実施例1において、上鋳型610には、高さが5mm、円柱状の孔の内径が16mm、下鋳型620には、内径1.5mm、深さ5mmの略円錐形の孔が7箇所形成されているものを用いた。下鋳型620の略円錐形の各孔に合金(接触部70の金属塊に相当)を挿入し、鋳型600に導電性樹脂ペーストを流し込んだ。そして、60℃で15時間以上かけて導電性樹脂ペーストを固化させ、鋳型600から固化した導電性樹脂ペーストを取り出した。この取り出した導電性樹脂ペーストが第1の実施形態に係る脳波測定用電極40である。なお、導電性樹脂ペーストは、液状のシリコーン樹脂、カーボンナノチューブ、をそれぞれ92.5%、7.5%の重量基準で混練することによってペースト状にしたものである。
【実施例2】
【0054】
次に、実施例2では、図8に示した第4の実施形態に係る脳波測定用電極40を作製した。キャップ220及び蓋部20は、実施例1と同様の手順により作製した。ただし、実施例2では、蓋部20に挿入される銀線を脳波測定用電極40に挿入しないように蓋部20を作製する。
【0055】
実施例2においても、実施例1と同じ鋳型600を用いて、脳波測定用電極40を作成する。実施例2では、下鋳型600の円錐形の各孔に合金を挿入したのちに、銀線(導線80に相当)を鋳型600に挿入した。このとき、銀線は、一端が各合金と電気的に接続されるように鋳型600に挿入した。なお、銀線は、直径0.5mm、長さ10mmである。次に、実施例1とは違い、鋳型600にカーボンナノチューブを含有しない樹脂ペースト、つまり導電性のない樹脂ペーストを流し込んだ。そして、樹脂ペーストを固化させ、鋳型600から固化した樹脂ペーストを取り出す。最後に、銀線の他端と電気的に接続するように、固化した樹脂ペーストに金属板(金属板85aに相当)を貼り付けた。以上より、第4の実施形態に係る脳波測定用電極40が得られる。
【実施例3】
【0056】
次に、実施例3では、図9に示した第5の実施形態に係る脳波測定用電極40を作製した。キャップ220及び蓋部20は、実施例1と同様の手順により作製した。ただし、実施例3では、蓋部20に挿入される銀線を脳波測定用電極40に挿入しないように蓋部20を作製する。
【0057】
実施例3においても、実施例1と同じ鋳型600を用いて、脳波測定用電極40を作成する。実施例3では、下鋳型620の円錐形の各孔に銀線(ワイヤー82に相当)を挿入した。なお、銀線は、直径0.1mm、長さ20mmのものであり、略中央でヘアピン状に折り曲げたものである。次に、鋳型600にカーボンナノチューブを含有しない樹脂ペースト、つまり導電性のない樹脂ペーストを流し込み、樹脂ペーストを固化させた。そして、鋳型600から固化した樹脂ペーストを取り出した。最後に、銀線の一端と電気的に接続するように、固化した樹脂ペーストに金属板(金属板85bに相当)を貼り付けた。以上より、第5の実施形態に係る脳波測定用電40が得られる。
【0058】
(測定結果)
以下、第1の実施形態(実施例1)に係る電極部材100による脳波の測定結果を示す。そこで、BMIの電極として、脳波測定用電極40を用いて、脳波の測定結果を示す。なお、BMIとは、脳の活動により生じる脳波を表す電気信号等を読み取り、これを直接電子機器に入力する形式のインターフェースである。
【0059】
実施例1において作製されたキャップ、脳波測定用電極(脳波測定用電極付きキャップ)を用いて脳波測定を以下の手順により実施した。まず、被験者にキャップを被せた。次に、キャップの各貫通孔に取り付けられたホルダー部に、電極部材をそれぞれ突出部が頭皮の方向を向くように挿入した。なお、電極部材(特に、脳波測定用電極)は、使用する直前に消毒用エタノールにより消毒して用いた。蓋部がホルダー部に対して所定の位置に来るように、蓋部を回転させながらホルダー部に取り付けた。ホルダー部に脳波測定用電極を締め付ける際に、最初は蓋部の回転に伴い脳波測定用電極も回転したが、突出部が頭髪又は頭皮と当接すると、脳波測定用電極は回転せず蓋部のみが独立して回転し、脳波測定用電極を頭皮に押圧した。このため、脳波測定用電極が被験者の頭髪を巻き込むことはなかった。このとき、被験者に装着感を確認したが、痛みや不快感を訴える被験者はいなかった。従って、実施例1において作製した脳波測定用電極が、頭髪を巻き込んだり、頭皮に対して過度の圧力を加えたりして被験者に痛みや不快感を与えるおそれが小さいことが確認された。
【0060】
脳波測定用電極が頭皮に対して所定の位置と圧力とで固定された後、電極部材に接続されているリード線を市販の脳波計測器(g.tec社製)と接続し、頭皮と脳波測定用電極との間のインピーダンスを測定した。測定値はいずれも15kΩ以下であり、BMIに十分な程度の導通が確保されていることが確認された。また、実施例2、実施例3において作製した脳波測定用電極についても同様に測定を行い、こちらも測定値が15kΩ以下であることが確認された。
【0061】
さらに、図14、図15を用いて、実施例1に係る脳波測定用電極で測定された脳波の例(グラフ)を示す。図14、図15に示したグラフは、脳波計測器のアナログ−デジタル変換回路(Analog−to−digital converter)を用いてアナログ電圧をデジタル電圧に変換し、1LSB(最小分解能)を0.24pVとして、電圧(測定した脳波)のデータを示したものである。ただし、図14、図15に示したグラフでは、頭皮からの電気信号(電圧)を、50Hzを中心とした帯域幅2Hzの双2次フィルタ(biquad filter)によるノッチフィルターと1Hzから45Hzの20次のバンドパスフィルタとをソフトウェア上で掛けて処理したもの(脳波)を示した。なお、図14、図15に示したグラフは、縦軸に電圧[μV]、横軸[ms]に時間をとったものである。実施例1に係る脳波測定用電極(金属材料から形成された接触部)を用いて脳波を測定すると、図14が示すようなα波を測定することができた。また、脳波測定中において、被験者が約600[ms]、約1400[ms]のときに瞬きをすると、図15が示すような、スパイク上の波形(約600[ms]、約1400[ms])を測定することが出来た。導電性ゴムだけから形成された脳波測定用電極(導電性ゴムから形成された接触部)を用いて脳波を測定したところ、α波及び瞬きを表す脳波をそもそも測定することができなかった。したがって、実施例1に係る脳波測定用電極を用いて脳波を測定すると、接触部が導電性ゴムから形成された場合に比べて、脳波を精度良く測定できることが確認された。以上のように、実施例1に係る脳波測定用電極は、頭皮に対して過度の圧力を加えることなく、脳波を精度よく測定できることが確認された。また、実施例2、3についても、実施例1と同様のインピーダンスが得られているので、実施例2、3に係る脳波測定用電極を用いた場合でも、実施例1と同様に、頭皮に対して過度の圧力を加えることなく、脳波が精度よく測定できると考えられる。
【0062】
以上、実施の形態、変形例及び実施例を挙げて本発明について詳細に説明したが、本発明の範囲は上記の実施の形態などに限定されるものではないことは言うまでも無い。当業者により為される改良、置換、組み合わせ等は、本発明の要旨を超えない限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0063】
1000 脳波測定装置
100 電極部材
20 蓋部
20a 円柱状部材
20b フランジ部
21 孔
22a 凸部
22b 凸部
30 金属線
40 脳波測定用電極
50 基底部
60 突出部
70 接触部
71 金属粒子
70a 金属部
70b 第1の金属膜
70c 第2の金属膜
80 導線
82 ワイヤー
85a 金属板
85b 金属板
90 スペーサー
200 キャップ
210 ホルダー部
220 キャップ部
230 凹部
400 頭皮
500 リード線
600 鋳型
610 上鋳型
620 下鋳型
700 信号解析装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳波を測定するための脳波測定用電極であって、
基底部と、
前記基底部から突出して設けられた、ゴムからなる突出部と、
前記突出部の先端に設けられ、前記脳波測定用電極の外部と電気的に接続され、前記脳波の測定時に頭皮に接触する、金属からなる接触部と、
を備えることを特徴とする脳波測定用電極。
【請求項2】
前記突出部は、導電性ゴムからなり、
前記接触部は、前記突出部を介して前記外部と電気的に接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の脳波測定用電極。
【請求項3】
前記突出部に設けられ、変形可能な導体をさらに備え、
前記接触部は、前記導体を介して前記外部と電気的に接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の脳波測定用電極。
【請求項4】
前記突出部に設けられ、変形可能な導体をさらに備え、
前記接触部は、前記導体と一体的に形成されており、前記導体を介して前記外部と電気的に接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の脳波測定用電極。
【請求項5】
前記接触部は、複数の金属粒子からなる、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の脳波測定用電極。
【請求項6】
前記接触部は、金属膜からなる、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の脳波測定用電極。
【請求項7】
前記突出部は、少なくとも一部が、前記外部と電気的に接続される、金属膜で被覆されている、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の脳波測定用電極。
【請求項8】
前記基底部上に設けられたスペーサーをさらに備え、
前記スペーサーは、前記脳波の測定時に、前記突出部の頭髪の合間に挿入される部分を短くする、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の脳波測定用電極。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の脳波測定用電極と、
前記脳波測定用電極が頭皮に接触するように取り付けられる、前記頭皮を覆う覆い部材と、
を備えることを特徴とする脳波測定用部材。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の脳波測定用電極を備える、
ことを特徴とする脳波測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−111361(P2013−111361A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262032(P2011−262032)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(803000056)財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 (341)