説明

脳灌流監視装置

インピーダンス・プレチスモグラフィ(102、104)を使用して頭部内の時間変化する血液量の測定値を取得することと、頭皮内の時間変化する血液量の測定値を取得することと、脳血流量を推定するために前記頭部内の時間変化する血液量及び頭皮内の時間変化する血液量の測定値を使用すること、を含む脳血流量を推定する方法。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2002年1月15日に出願された米国仮特許出願第60/348,278号からの米国特許法119(e)条に基づく利益を主張する2003年1月15日に出願されたPCT/IL03/00042号の一部継続出願であるところの2004年7月15日に出願された米国特許出願第10/893,570号の一部継続出願である。本願は、代理人整理番号第371/04609号をもつ「脳への血流を監視するための装置」と題する同日に出願されたPCT出願に関連する。これら全ての出願の開示内容は、参照によりここに組み込まれるものである。
【技術分野】
【0002】
本発明の技術分野は頭部内の血流量の測定に関連する。
【背景技術】
【0003】
脳への血液の流れのいかなる障害も、脳細胞の機能への損傷や、障害が長引けば脳細胞の死滅をももたらすことがあり、様々な医学的事象や医学的処置の最中に脳血流量を測定する必要がある。脳細胞は他の細胞より酸素の欠乏に弱く、また脳細胞は通常は損傷後に再生できないため、脳への血流量の維持は特に重要である。
【0004】
不整脈、心筋梗塞、及び外傷性出血性ショック等の良く知られた状態の多くが脳への総血流量の低下の原因となり得る。急激な脳への血流量の増加もまた、重篤な損傷の原因となることがあり、そのような増加は一定の病状をもつ他の患者にも、又は手術中にも起こり得るが、特に新生児や未熟児において特に起こり易い。これら全ての場合において、脳内の血流の量、及び流量率の変化に関するデータは、脳組織への損傷のリスクや治療効果の評価において重要となり得る。そのようなデータを利用できれば、脳血流量を増加、減少、又は安定化させて、脳への永久的な損傷を防ぐるための様々な医学的処置の適時の実行を可能にするかもしれない。
【0005】
脳血流量の直接的かつ連続的な監視のための簡単な手段が無い場合には、脳血流量の変化に関する情報は、血圧等の容易に測定できる臨床的指標から間接的に推定される。しかし、異なる病状においては血圧と脳血流との関係も異なるため、血圧が適正と思われる場合でさえも脳血流量が不適正である局面もあり得る。脳血流量はまた、神経機能の監視によって間接的に推定されることもあるが、神経機能障害は検出される時までには多くの場合で不可逆性となってしまうため、脳機能がまだ可逆性である間に脳血流量の変化を直接的に検出することがより好ましい。
【0006】
脳血流量を測定するための既存の手段は、複雑であり、高価であり、また一部の例では侵襲的であり、このことが実用性を制限している。現在、研究においてのみ使用される3つの方法は、1)放射性キセノンを頚部頸動脈内に注入し、それが脳全体に拡散するときに放出する放射線を観察すること、2)やはり放射性物質の注入に基づいた、陽電子放出型断層撮影法(ポジトロンCT)、及び3)部屋ほどの大きさの、高価な磁気共鳴画像診断(MRI)装置を使用して行われ、結果を出すのに数分を要する磁気共鳴血管造影、である。これら3つの方法は、利用可能な特殊設備を有する病院その他のセンターにおいて実施できるのみであり、また、設置している病院においても、これらの方法を用いて患者を連続的に監視することは現実的ではない。
【0007】
4つ目の方法、経頭蓋ドップラー超音波映像法(TCD)は、超音波を用いて、侵襲的ではなく、即座に結果を与える。しかしながら、TCDは、頭蓋に音波を通すことが難しく、また、検査と結果の読解に長期間のトレーニングと実践を積んだ専門家による高度の技能を必要とするため、患者の約15%で血流量の正確な測定を与えない。TCDのもう一つの欠点は、脳内の局所的な血流量のみを測定し、全体の血流量を測定しないことである。ドップラー超音波は頸動脈中の血流量を測定するたに使用することもでき、頭部への血流量の推定値を提供するが、厳密には脳への血流量ではなく、また、脊椎に近いため超音波による測定が難しい椎骨動脈から頭部への血流量を含まない。
【0008】
一般に研究において、頭部その他の身体部分内の血流量の測定に用いられている更なる2つの技術は、電気インピーダンス・プレチスモグラフィ(IPG)とフォトプレチスモグラフィ(PPG)である。Millsに付与された米国特許第6,819,950号は、数ある病気の中でも、頸動脈狭窄を検出するためのPPGの使用を記載している。Cowingsに付与された米国特許第5,694,939号は、下肢におけるIPG及び指におけるPPGの使用を含む、血圧を制御するためのバイオフィードバック技術を記載している。Obergらに付与された米国特許第5,396,893号は、患者の心拍数及び呼吸数を監視する目的には、PPGはIPGよりも優れていると述べている。Belalcazarに付与された米国特許第6,832,113号は、心臓ペースメーカーを最適化するために、IPG又はPPGのいずれか一方を使用して血流量を測定することを記載している。Hovlandらに付与された米国特許第 6,169,914号は、膣プローブを使用した女性の性的興奮の監視のために、IPG及びPPGを含む様々なタイプのセンサを使用することを記載しており、また、異なるタイプのセンサを組み合わせて使用することを記載している。
【0009】
Yangらに付与された米国特許第6,413,223号は、2つのPPGセンサと1つのIPGセンサを含んだ、指を接触させて使用するプローブを記載している。組み合わされた3つのセンサからのデータは、動脈血流量の数学モデルを使用して分析され、IPG又はPPGを単独で使用して得られるものより正確な血流量の測定値を与える。
【0010】
J. H. SeipelとJ. E. Floamは、J. Clinical Pharmacology 15, 144-154 (1975)において、脳、頭蓋、頭皮及びふくらはぎの血液循環への薬物、ベータヒスチジン、の作用の臨床研究の結果を提示している。IPGの一形態であるレオエンセファログラフィ(REG)が、脳血流量の大きさを測定するために使用された。
【0011】
上述の全ての特許及び刊行物の開示内容は、参照によりここに組み込まれるものである。
【発明の開示】
【0012】
本発明のいくつかの実施形態の一つの態様は、1)心周期中の脳血液量及び恐らくは頭皮血液量などとの複合した変化量の測定値を取得するためにIPGを使用すること、2)PPG又は表面IPGや超音波等の別の方法を使用して、主に頭皮血液量の変化の測定値を取得すること、及び、3)脳血液量の変化を求めるために、2つの測定値を組み合わせること、による脳血流量の推定に関連する。脳血流量は次に任意選択的に脳血液量の時間微分によって求められる。変化する脳血液量とは関係の無い脳血流量の成分が一般に存在するため、心周期にわたる脳血液量の変化に関係する成分に加えて、血液量の時間微分を使用することは、絶対的な脳血流量ではなく、相対的な脳血流量の指標のみを与える。
【0013】
任意選択的に、頭皮血液量の時間変化する部分には比較的にほとんど依存せず、主として脳血液量の時間変化する部分に依存する測定値を取得するために、脳血液量の時間変化する部分は、IPG信号から重み付け又は規格化したPPG信号を減じることにより求められる。任意選択的に、各心周期において脳血流量と頭皮血流量との間に時間遅延があるという事実を利用して重み係数が推定され、血圧が減少する各心周期の終わりの部分、例えば各周期の最後の3分の1において、IPG信号は頭皮血液量の時間変化する部分によって支配されると仮定する。代替的に又は付加的に、重み係数は、IPG及びPPG信号のパワスペクトル及びクロスパワスペクトルを使用して推定される。例えば、クロスパワスペクトルは、IPG信号とPPG信号が近似する周波数範囲を求めるために用いられ、重み係数は、それらの周波数にわたって積分したIPG信号のパワスペクトルと、それらの周波数にわたって積分したPPG信号のパワスペクトルとの比の平方根に等しくなるように設定される。
【0014】
任意選択的に、IPG測定は、IPG電極ユニットを頭部の両側、例えば左右側頭部、に配置することによって行われる。任意選択的に、IPG電極ユニットの一方又は両方は、PPGセンサと組合されて、単一のユニットとなっている。任意選択的に、IPG電極ユニットは、分離した電流電極及び電圧測定電極を含む。例えば、電流電極は電圧測定電極を囲む同心円状の環の形状であってもよく、あるいは逆でもよい。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態の一つの態様は、IPG信号単体の特性を利用して脳血流量を推定することに関連する。例えば、脳血流量は各心周期におけるIPG信号のピーク値から、又は、各心周期の初期の後のIPG信号の上昇のピーク速度から、又は、各心周期の初期の後のIPG信号における最初の局所的なピークの高さ又は変曲点から、推定される。各心周期の初期は、例えば、ECGのR波のピークによって、又は、IPG又はPPG信号の最小値の時刻によって、又は、拡張期血圧の時刻によって、定義される。PPGデータによって表示される頭皮血液量は、各心周期の初期において一般的により緩やかにかつ遅延して上昇するため、たとえ残りの心周期の間のIPG信号が頭皮血液量に大きく影響されても、IPG信号における、ピーク又は最初の局所ピーク又は変曲点までの急速な初期の上昇速度は、脳血流量によって支配されることがある。任意選択的に、頭皮血液量が最初に緩やかに上昇していることと、IPG信号の初期の急速な上昇は実際に主として脳血流量が原因であること、を確認するためにPPGデータも取得される。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態は、例えば体重が1.5kg未満で、脳血流量の自動調節系の未発達のため一般に一定の脳への血流量を維持する能力に乏しい、未熟児の監視に特に有用である。脳への血流量の急激な変化は、呼吸の変化、血圧の変化、及び医療従事者による幼児の扱いが原因となり得る。そのような脳血流量の急激な変化は、直ちに検出して治療しなければ、未熟児の10%〜30%に発生する脳出血が原因となる損傷を含む、深刻な脳損傷の原因となる可能性がある。本発明は、様々な理由により脳出血又は虚血の危険がある成熟児の監視においても有用である。
【0017】
本発明は、1)頚動脈の一つにクランプが付けられて脳への血流量が低下する可能性のある頸動脈の手術中の患者、2)頸動脈又は大動脈の狭窄もしくは閉塞のある患者で、特に侵された動脈への動脈内カテーテル若しくはステント挿入などの手技を受けている場合、3)脳浮腫が血液潅流の低下を引き起こし得る脳損傷患者、4)脳血流量が低下する術後数日間の脳外科手術患者、5)大出血とそれに伴う低血圧によって脳血流量の低下を引き起こす可能性のある心臓手術などの大手術中の患者、において脳血流量の監視に有用となり得る。これら全てのカテゴリーの患者において、脳血流量の監視が監脳損傷が発生する前の迅速な治療をもたらす。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態の一つの態様は、電気及び頭皮血流量測定センサの両方を含むプローブに関連する。任意選択的に、プローブは一定の(任意選択的に所定の)頭蓋上の位置、例えば側頭部、に配置されるように構成されており、血流量測定プローブは、電場が感知される部位の血管床(例えば、ソース“source”)に照準が合わせられる。
【0019】
このようにして、本発明の一つの例示的な実施形態により、脳血流量を推定する方法であって、
a)インピーダンス・プレチスモグラフィを使用して、頭部内の時間変化する血液量の測定値を取得することと、
b)頭皮内の時間変化する血液量の測定値を取得することと、
c)脳血流量を推定するために、頭部内の時間変化する血液量及び頭皮内の時間変化する血液量の測定値を使用すること
からなる方法が提供される。
【0020】
任意選択的に、頭皮内の時間変化する血流量の測定値を取得することは、フォトプレチスモグラフィを使用することを含む。
【0021】
本発明の一つの例示的な実施形態において、脳血流量を推定することは、経時的に変化する相対的な脳血流量を推定することを含む。
【0022】
本発明の一つの例示的な実施形態において、時間変化する血液量の測定値を使用することは、時間変化する血液量の重み付けされた測定値間の差分を求めることを含む。
【0023】
本発明の一つの例示的な実施形態において、 時間変化する血液量の測定値は、心周期における血圧が降下している時期に、少なくとも近似的には同じ値をもつように重み付けされている。
【0024】
本発明の一つの例示的な実施形態において、時間変化する血液量の測定値は、時間変化する血液量の測定値間のクロスパワスペクトルが比較的に高くなる周波数において、近似的に等しいパワスペクトルをもつように重み付けされている。
【0025】
本発明の一つの例示的な実施形態において、インピーダンス・プレチスモグラフィを使用して頭部内の血液量の測定値を取得することは、
a)2つの電流電極を使用して頭部に電流を通すことと、
b)2つの電圧測定電極を使用して、電流と関連した頭部にかかる電圧を測定すること
を含む。
【0026】
任意選択的に、この方法は、電流電極の少なくとも一つを囲む環状電極を頭部に付けることと、環状電極をそれが囲む電流電極と同じ電圧に維持し、それによって電流電極からの放射状電流を抑制することを含む。
【0027】
代替的に又は付加的に、電圧測定電極は、電流電極とは異なり、かつ実質的に電流電極から電気的に切り離されている。
【0028】
本発明の一つの例示的な実施形態において、インピーダンス・プレチスモグラフィを使用して頭部内の血液量の測定値を取得することは、左右側頭部のそれぞれの上に2つの電流電極を配置することを含む。
【0029】
本発明の一つの例示的な実施形態において、インピーダンス・プレチスモグラフィを使用して頭部内の血液量の測定値を取得することは、2つの電圧測定電極のそれぞれを、頭部上の、電流電極の異なる1つに隣接する位置に配置することを含む。任意選択的に、フォトプレチスモグラフィを使用して頭皮内の血液量の測定値を取得することは、フォトプレチスモグラフィ・センサを、頭部上の、電流電極の一つ及び電流電極に隣接した電圧測定電極に隣接して配置することを含む。
【0030】
本発明の一つの例示的な実施形態により、脳血流量を推定する方法であって、
a)心周期における時間の関数として頭部を横切るインピーダンスを測定することと、
b)心周期における血圧が上昇している時期のインピーダンスの変化率から脳血流量を推定すること
を含む方法も提供される。
【0031】
本発明の一つの例示的な実施形態により、頭部上に配置するのに適した、脳血流量を推定するためのユニットであって、
a)インピーダンス・プレチスモグラフィに適した少なくとも一つの電極と、
b)頭皮内の血流量測定に適したプレチスモグラフィ・センサと
を備えたユニットが提供される。
【0032】
任意選択的に、センサはフォトプレチスモグラフィ・センサである。
【0033】
本発明の一つの例示的な実施形態において、ユニットは、フォトプレチスモグラフィ・センサからのデータ、及び、電極からのインピーダンス・プレチスモグラフィ・データとのうちの一方又は両方を処理するように構成された信号処理部を更に含んでいる。
【0034】
本発明の一つの例示的な実施形態において、少なくとも一つの電極は、
a)それが皮膚上に配置されたときに頭部を通り抜ける電流を注入するのに適した電流電極と、
b)それが皮膚上に配置され、かつ、電流電極が電流を注入しているときに、頭部を横切る電圧を測定するのに適した電圧測定電極と
を備えている。
【0035】
本発明の一つの例示的な実施形態において、電流電極及び電圧測定電極は、電流電極が電流を注入しているときに、表皮での電圧降下をほとんど排除して、電圧測定電極が真皮における電位と実質的に等しい電位を測定するように構成されている。
【0036】
本発明の一つの例示的な実施形態において、ユニットは、様々な成熟度の患者における使用に適し、電流電極は電圧測定電極を囲む環状部を含み、環状部の半径方向の厚さ、及び電流電極と電圧測定電極との間の隙間は、それぞれ様々な成熟度の患者における表皮の典型的な厚さの少なくとも2倍である。
【0037】
本発明の一つの例示的な実施形態において、環状部の半径方向の厚さと、電流電極と電圧測定電極との間の隙間は、それぞれ少なくとも1mmである。
【0038】
本発明の一つの例示的な実施形態において、環状部の半径方向の厚さと、電流電極と電圧測定電極との間の隙間は、それぞれ少なくとも2mmである。
【0039】
本発明の一つの例示的な実施形態において、ユニットは、電流電極を囲む環状電極を更に含み、それによって環状電極が電流電極と同じ電圧に保持されているときに電流電極からの放射状電流を抑制する。
【0040】
本発明の一つの例示的な実施形態により、脳血流量を推定するためのシステムであって、
a)ここに記載されるような少なくとも一つのユニットと、
b)頭部上に配置してインピーダンス・プレチスモグラフィを行うのに適した少なくとも一つの電極を備えたインピーダンス測定ユニットと、
c)ユニットが頭部の異なる側面上に配置されたときに、一つのユニットの少なくとも一つの電極のうちの一つと、インピーダンス測定ユニットの少なくとも一つの電極のうちの一つとの間で、頭部に電流を通すのに適した電源と、
d)一つのユニットの少なくとも一つの電極のうちの一つとインピーダンス測定ユニットの少なくとも一つの電極のうちの一つとの間で測定された電圧差と、フォトプレチスモグラフィ・センサによって生成されたフォトプレチスモグラフィ・データと、から取得されたインピーダンス・データを使用して脳血流量を計算するデータアナライザと
からなるシステムも提供される。
【0041】
任意選択的に、インピーダンス測定ユニットは、ここに記載されるようなユニットでもある。
【0042】
次節において、本発明の例示的な実施形態を図面を参照しながら説明する。図面は必ずしも縮尺を合わせて描かれておらず、また、異なる図面に示される同一又は関連する特徴には概して同じ引用符号が使用されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
図1A、1B及び1Cはそれぞれ、本発明の例示的な実施形態による、インピーダンス・プレチスモグラフィ(IPG)用電流電極102及び電圧電極104、及び、フォトプレチスモグラフィ(PPG)用センサ106を任意選択的に組み合わせたユニット100の側面、背面、及び正面図を示す。図1Cに示されるユニット100の表側は、図2に示されるように、皮膚に対して配置される側である。図2に示されるように、例えば頭部の両側に配置された、2つのそのようなユニットが、任意選択的にIPGのために使用され、一方のユニットから他方のユニットへ電流を通して、その間の電圧を測定する。上述の理由により、一般的に交流が使用されている。
【0044】
例えば、John G. Webster編「医療計測:応用と設計(Medical Instrumentation: Application and Design)」(Willey、1997)の中のWebster「血液流量及び血液量の測定(Measurement of Flow and Volume of Blood)」(この開示内容は参照により本願に組み込まれる)に記載されているように、PPGセンサ106は、ユニット100に隣接する皮膚内の酸素を豊富に含んだ血液の潅流度を決定するために皮膚の色を測定する。任意選択的に、PPGセンサ106は、生のセンサ信号を使用可能な出力信号に変換するデジタル信号プロセッサを内蔵している。任意選択的に、ユニット100は、一方又は両方のユニットにおける電極及び/又はPPGの電圧及び/又は電流及び/又は光反射データを処理するデジタル・シグナル・プロセッサも含んでいる。代替的に、センサ106からの生の信号及び/又は電極からのデータは、ユニット100内に配置されていない外部信号プロセッサによって、部分的に又は完全に処理される。
【0045】
代替的に、分離した電流電極及び電圧電極の代わりに、ユニット100は通電と電圧測定の両方の目的に使用される単一の電極を有する。しかしながら、通電と電圧測定のための分離電極を使用することは、測定された電圧が、電極と皮膚との間の高い接触抵抗、又は表皮の高い抵抗(その一方又は両方は、頭部の両側に付けられた電流電極間の電圧低下に影響する)にそれほど敏感にならない場合があるという潜在的な利点を有する。接触抵抗及び表皮抵抗は、血流量にほとんど又は全く依存しないため、通常はIPG信号が接触及び表皮抵抗に敏感でないことが望ましい。任意選択的に、電流電極102用に環形を用い、電圧電極104を環の中心に、しかし実質的に環から電気的に切り離して、配置することによって、目的が達成される。電極102の環の半径方向の厚さ及び、電極102と104との間の隙間は、任意選択的に電極の下の表皮の厚さよりも少なくとも幾らかは大きく、例えば少なくとも2倍大きい。任意選択的に、電極102の環の半径方向の厚さは、少なくとも2mm、又は少なくとも5mm、又は少なくとも1cmである。任意選択的に、電極102と104との間の隙間は、少なくとも2mm、又は少なくとも5mm、又は少なくとも1cm、またはその中間若しくはより小さな数値である。
【0046】
電極102及び104のこの形状と、電極の表面全体で皮膚と良好に接触する電流電極102とによって、表皮の厚さと比較して、表皮を横断する電流は広く分散する。高い抵抗の表皮における高い電場は、電流電極の下の領域にほとんどが閉じ込められ、電圧測定電極104に達する漏れ電場は非常に小さくなる。しかし、非常に小さな抵抗の真皮における電位は、ユニット100の下側で極めて均一となり、電極の電位はこの電位に近いものとなる。同様のことが、頭部の反対側に付けられたユニットの下側についても言える。頭部の両側に付けられた電圧電極104間の電圧差は、2つの電極の下側の真皮内の電位差に近いものになる。所与の電流に対して、図3と共に以下に説明するように、この電位差は、表皮を横断するインピーダンスではなく、側頭の真皮と頭皮のインピーダンス、頭蓋と脳のインピーダンスに依存する。
【0047】
電圧及び電流電極の代替の構成108が図1Dに図示されている。電流は、中心に配置された電極110を通して注入され、電圧は、電極110を囲む、電極110からは電気的に十分に絶縁された環状の電極112で測定される。追加の電極114も、電極112を囲む環の形状であり、電極110と同じ電圧を維持するために必要ないかなる電流も注入する。しかしながら、任意選択的に、電極110を通して注入された電流だけがインピーダンスの検出の目的に考慮される。構成108により、電極110と114との間の領域の下にある真皮において、半径方向の電場が極めて小さくなり、従って、半径方向の電流は極めて小さい。従って、電極110からの電流は大部分が頭部内へ向かい、この電流の多くは頭皮を流れずに脳を流れるが、一方で頭皮を流れる電流の大部分は電極114によって注入され、インピーダンス測定の目的としては無視される。この構成により、インピーダンス測定は、脳のインピーダンスへの感度がより高くなり、頭皮のインピーダンスへの感度はより低くなる。任意選択的に、電極112及び114の厚さと、電極110と112との間の隙間は、電極102及び104について上述したものと同じ寸法が考えられる。
【0048】
代替的に又は付加的に、脳を経由するインピーダンスに対する頭皮を経由するインピーダンスの割合を見積もるために、電極114を通る電流も測定され、電極110を通る電流と比較される。この割合は、重み係数を求めるための上述の方法に代えて、又は加えて、IPG信号からPPG信号を減じるときにPPG信号に対して使用される重み係数を求めるために使用されてもよい。
【0049】
代替的に、図1C及び1Dに示される電極構成の代わりに、米国特許出願第10/893,570号に記載されている任意の電極構成が使用され、又は電流電極が電圧電極に隣接する任意の別の電極構成が使用される。電流電極が表皮の厚さと比べて大きな寸法を有し、電圧電極が電流電極から同様の距離だけ隔てられていれば、電圧電極は真皮での電圧降下をほとんど排除して、電圧及び電流電極の下にある真皮における電位に近い傾向をもつ電位を測定する。
【0050】
図2は、本発明の例示的な実施形態による、頭部の両側の側頭の上に配置されたユニット202及び204を備えたヘッド200を示す。任意選択的に、ユニット202及び204のそれぞれは、図1A〜1Cにおけるユニット100に類似し、IPC電極とPPGセンサの双方を含む。電源206はユニット202と204の電流電極間で電流を通して、ユニット202と204の電圧電極間の電圧差が測定される。その間、PPGデータが両ユニットのPPGセンサによって任意選択的に供給される。代替的に、ユニット202及び204のうちの一方のみがそれと一体化したPGセンサを有し、あるいはPPGセンサの一方のみが使用され、又は、どちらのユニットもそれと一体化したPPGセンサを有さず、分離したPPGセンサが使用される。図4及び5の説明において後述するように、データアナライザ208は、脳血流量を推定するために、PPGデータと共に、電圧電極間の電圧差を使用する。
【0051】
任意選択的に、C形バネ仕掛け210はユニット202と204を接続し、ヘッドホンのように、ユニット202及び204を側頭上に保持する力を提供する。代替的に、ユニット202及び204を側頭の上の適所に保持するために心電計に使用されるような吸着カップが使用され、あるいは、ユニット202及び204を側頭の上の適所に保持するために任意の既知の方法、例えば粘着材、が使用される。
【0052】
代替的に、ユニット202及び204を側頭の上に置く代わりに、それらは頭部の別の部位、例えば額や後頭部、に置かれる。二つの電極は頭部の反対側面上に置かれる必要はないが、それらを少なくとも頭部のほぼ反対側面上に置くことは、比較的に多くの電流が、頭皮を通過するのではなく、頭蓋の内部を通過するという潜在的な利点を有する。両側頭上に電極を配置することは、電極を配置する前に皮膚の髭を剃る必要がないことや、側頭部では頭蓋が比較的に薄く、頭皮を通過するよりも多くの電流が脳を通過する要因にもなるといった潜在的な利点を有する。閉じた眼瞼の一方の上に、又は頭蓋底の大後頭孔の上に、又は耳の上や外耳道の内部に(PCT出願WO 03/059164号に示されるような外耳道に適したデザインの電極を使用して)電極を配置することは、比較的に効率良く頭蓋の内部に電流が入ることを可能にする。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態においては、頭部の上に配置されるそのようなユニットが2つ以上あり、例えば、電流は別のユニットの対の間を通り、一方で電圧差は別のユニットの対の間で測定され、電流が通るのは同じユニットの間である必要はない。そのような配置は、インピーダンス画像化アルゴリズムを使用して、頭部内のインピーダンス分布に関する更なる情報を提供することができるが、2つの電極のみを使用する場合よりもデータ分析はより複雑になり、また、電極の配置により長い時間がかかる。
【0054】
安全上の理由により、ユニットは一般に、例えば数キロヘルツから数10キロヘルツの周波数帯の交流を使用する。約100kHzを超える電流は、キャパシターとして振る舞う細胞膜を容易に通り抜け、細胞の内部を横断できるため、約100kHzを超える周波数は、より低い周波数よりも血流量への感度が低いインピーダンス・データを与えることができる。100kHzより十分に低い周波数においては、電流の大部分は細胞外液に閉じこめられ、インピーダンスは血液量により敏感になる傾向がある。
【0055】
図3は、図2におけるように両方の側頭の上にユニット202及び204が付けられた頭部200の、正面から見た断面図である。図3において、断面図は頭部全体にわたるように作られているが、側頭上のユニット202及び204の位置を示すために、断面図の前ある側頭の皮膚と頭蓋は残されている。ユニット202及び204における電流電極間の電流は異なる経路を通ることができる。頭皮302は表皮の下では比較的に低い抵抗率を有し、電流の大部分は、比較的に高い抵抗率をもつ頭蓋306の周りを進む、経路304を通って頭皮を通過する。頭蓋の内部308は、脳及び関連する血管を含み、比較的に低い抵抗率を有する。特に、電流電極が相当に広い場合、経路310の抵抗率の高い頭蓋を通る部分は比較的に短く、かつ広い断面積を有する一方で、比較的に低い抵抗率の頭皮を通る経路304は非常に長く、かつ断面積が非常に狭いため、電流のかなりの部分は経路310を通って頭蓋及び脳を通過する。図1Dに示される構成108が使用されると、電極110からの電流の比較的に多くの部分が、経路310を進んで、脳を通過するようになる一方で、電極114からの電流の比較的に多くの部分が経路304を進んで、頭皮を通過するようになる。
【0056】
IPG信号がどのようにして脳血液量及び頭皮血液量に依存し得るかを説明するために、ユニット202と204との間のインピーダンスR(電流に対する電圧の割合)が次式のように表現できることに言及する。
【数1】

ここで、Rは頭蓋と脳を通る経路310に沿ったインピーダンスであり、Rは経路310と平行で、頭皮を通る経路304に沿ったインピーダンスである。これらインピーダンスの各々は、心周期の位相によらない定数部と、脳内及び頭皮の血液量の変化のために心周期の位相によって変化する非常に小さな部分とを有する。従って、次の様に表せる。
【数2】

【数3】

その結果、ユニット202と204との間のインピーダンスはR=R+ΔRと表される。ここで、ΔRはインピーダンスの時間変化する小部分であり、ΔRとΔRの1次まで取った次式で与えられる。
【数4】

これらのインピーダンスは、典型的に使用される100kHzより十分に低い周波数においては、ほとんどが抵抗性であり、これらは細胞膜の外側に位置する血液の量に依存するため、このことは心周期にわたるインピーダンスの変化に対して特に正しいことに留意すべきである。比較的に高い抵抗は比較的に低い血液量と関係があり、従って脳血液量の変化及び頭皮内の血液量の変化について−ΔR及び−ΔRがそれぞれ測定される。PPG信号も頭皮内の血液量の変化を測定し、この信号は小さいため、近似的に−ΔRの線形関数となる。適当な重み付けをした−ΔRに比例するPPG信号をIPG信号−ΔRから減じることにより、−ΔRに比例する信号を得て、従って脳血液量の時間変動部分の線形関数を得る。各心周期における脳血液量の変化量及び/又は、脳血液量の時間微分の最大値の一方又は両方が、相対脳血流量の指標として任意選択的に使用される。
【0057】
脳から出る静脈血流量は時間でほぼ一定であるが、脳への動脈血流量は脈動するため、脳血液量は心周期の間ずっと変化する。拡張期血圧時においても幾らかの脳への血流量があり、この基準脳血流量は脳血液量の変化の測定によっては直接決定できない。しかしながら、時間で変化する要素が全脳血流量の重要な一部であるため、心周期中の脳血液量の時間変動の測定は臨床的に有用な脳血流量の相対的測定値を提供し得る。
【0058】
図4は、402とラベルされた実線の曲線で示されたIPG信号−ΔRと、点線の曲線で示された重み付けされたPPG信号404の、時間の関数として示された例示的なプロット400を示す。信号402及び404は両方とも任意単位でプロットされており、プロット400においてはこれらの比率のみが問題となるため、代わりに信号404が元のPPG信号で、信号402が重み付けされていると考えることも、又は両方の信号が重み付けされていると考えることもできる。心電図からのR波は、時刻406においてピークをもつ。各R波のピークの直ぐ後に、脳内及び頭皮内に血液が流れるにつれてIPG信号402とPPG信号404の両方が上昇しはじめるが、IPG信号の上昇の方がPPG信号の上昇よりも早く始まる。このことは、脳に血液を供給する動脈は、頭皮に血液を供給する細い動脈よりも径が大きく、血流への流体力学的抵抗が低いという事実が原因であると考えられる。各心周期において、その後、血液が頭皮内に流れる時間が取れると、IPG信号は頭皮中の血液量によるものが支配的になることが予想される。従って、各心周期の後の区間、例えば各心周期の最後の3分の1の間に、R波の次のピークの前に、血圧と信号402及び404が減少しているときに、重み付けされたPPG信号404がIPG信号402と近似的に等しくなるように、PPG信号404のための重み係数は任意選択的に選ばれている。
【0059】
代替的に、重み係数は、頭皮を通る電流に対する頭蓋を通る電流の比率を少なくとも近似的に見積もる別の方法によって選ばれる。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態において、重み係数は、ある周波数範囲にわたって積分されたIPG信号のパワスペクトルの、同じ範囲にわたって積分されたPPG信号のパワスペクトルに対する比率の平方根に等しくなるように設定される。任意選択的に、周波数範囲は、例えば、IPG及びPPG信号間の高いクロスパワスペクトルによって示されるような、PPG信号がIPG信号に近い範囲内である。例えば、周波数範囲は、クロスパワスペクトルのピークを中心とし、クロスパワスペクトルのピークのrms幅に等しいか又は比例する量だけピークの両側に延びる。代替的に、周波数範囲は、クロスパワスペクトルがIPG及びPPGパワスペクトルの大きさの幾何平均の一定の比率(例えば半分)よりも大きい全ての周波数を含むように定義される。任意選択的に、2つのパワスペクトルは、例えばクロスパワスペクトルの値によって、その周波数範囲内に重み付けされている。この場合、周波数での積分は、限定された周波数範囲にわたって行う必要はない。
【0061】
図5は、IPG信号402と重み付けされたPPG信号404との差分に等しい信号502のプロット500を時間の関数として示す。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態において、脳血液量はIPG信号のみから推定される。このことは、各心周期における初期において、また、IPG信号のピークに至るまでも、IPG信号の時間依存する部分の大部分が脳血液量の変化によって支配されるという証拠があることからも証明されるであろう。例えば、図6は、被験者が自発的に過呼吸している間に測定された、実線でプロットされるIPG信号602及び破線でプロットされるPPG信号604のプロット600を示す。過呼吸はIPG信号のピーク値に大きな心周期間の変動をもたらし、PPG信号のピーク値には遥かに小さな心周期間の変動をもたらす。PPG信号の時間依存がほとんど全て頭皮血液量の変化に原因すると考えられるため、IPG信号がPPG信号とはかなり異なる振る舞いをするという事実は、IPG信号が頭皮血液量の変化には支配されないが、別のもの、恐らくは脳血液量の変化に支配されることを示す。脳血液量の時間変動する部分を推定する一つの方法は、各心周期に対して脳血液量の変化がIPG信号のピーク値に比例すると単に仮定するものである。
【0063】
図7は、やはりIPG信号のみを使用して脳血液量の変化を推定する別の方法を説明する。プロット700は、4つの心周期に対するIPG信号702を時間の関数として示している。各心周期において、IPG信号の値が、最小値に続く(又はIPG信号の最小値とほぼ同時に発生するR波のピークに続く)最初の局所的なピークで測定される。任意選択的に、もし最初の局所的なピークの前にIPG信号に変曲点があれば、IPG信号の値が変曲点において測定される。このことは、例えば、プロット700に示される3番目の心周期において当てはまる。各心周期に対するIPG信号のこれらの値は、プロット700における小さなクロス704で示されている。各心周期におけるIPG信号のこれらの値を使用することは、各心周期におけるピークIPG信号を使用するよりも、脳血液量の変化をより良く反映するだろう。例えば、これらの値が各心周期の初期に現れるため、IPG信号が脳血液量の時間依存する部分によってより支配され、頭皮血液量には感度が低いときに、このことは当てはまる。
【0064】
図8は、IPG信号のみを使用して脳血液量の変化を推定する更に別の方法を説明する。プロット800は、3つの心周期に対する時間の関数としてIPG信号802と、IPG信号802の時間微分に比例する信号804を示している。信号804のピーク、即ち、IPG信号802のピーク上昇率は、各心周期で測定され、プロット800において小さなクロス806によって示される。各心周期の十分に早い時期に信号804のピークが発生する限りは、IPG信号802は、頭皮容積の変化によるよりも、脳血液量の変化によって大部分が支配され、信号804のピーク値は、その心周期中の脳血液量の変化の良い指標に、恐らくはIPG信号のピーク値よりも良い指標になるであろう。
【0065】
図6〜8において説明される方法の何れにおいても、例えば、脳血液量の変化を推定するためにIPG信号が使用される時期に、頭皮血液量が各心周期の初期においてはそれほど多く変化しないことを確認するために、PPG信号もまた任意選択的に記録される。本発明のいくつかの実施形態において、図5〜8において説明される方法の2つ以上が、例えば、それぞれの方法によって決定される脳血液量の変化の加重平均を取ることによって、脳血液量の変化を推定するために使用される。異なる病状をもつ異なる患者に対しては異なる方法が最も効果を発揮するだろう。例えば、もし患者が脳血流量が頭皮血流量よりも減少し易い病気に苦しんでいれば、心周期の初期においても頭皮血流量の変化がIPG信号を支配し、IPG信号とPPG信号の両方を使用する、図5において説明される方法を使用することが最善となるであろう。脳血流量及び頭皮血流量が同時に減少し易い場合、例えば心臓手術を受けている患者の場合には、IPG信号のみに依拠する方法の一つを用いた方がより好ましく、あるいは容易であろう。
【0066】
本発明を、これを実施するためのベストモードに即して説明してきた。当然のことながら、図面に示され、又は関連する明細書に記載された全ての特徴が、本発明のいくつかの実施形態により、実際の装置に与えられるわけではない。更に、示される方法及び器具の変形例は、特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲内に含まれる。更に、本発明は場合によって主に方法として説明されているが、本発明の範囲はその方法を実行するようにプログラムされた装置、例えば、専用回路、ハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェア(相当するソフトウェアを記録したコンピュータ読取可能な媒体を含む)を含む。また、ある実施形態の特徴は、本発明の別の実施形態の特徴と共に提供されてもよい。ここで使用するとき、用語「有する」、「持つ」、「含む」、「備える」、及びこれらの同根語は、「〜を含んでいるが、これに限定されない」を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1A】図1A、1B及び1Cは、それぞれ、本発明の例示的な実施形態によるIPG電極とPPGセンサを組み合わせたユニットの、側面、背面、及び正面からの概略図である。
【図1B】図1A、1B及び1Cは、それぞれ、本発明の例示的な実施形態によるIPG電極とPPGセンサを組み合わせたユニットの、側面、背面、及び正面からの概略図である。
【図1C】図1A、1B及び1Cは、それぞれ、本発明の例示的な実施形態によるIPG電極とPPGセンサを組み合わせたユニットの、側面、背面、及び正面からの概略図である。
【図1D】図1Dは、本発明の別の例示的な実施形態によるIPG電極の概略図である。
【図2】図2は、本発明の例示的な実施形態による、図1A〜1Cに示されるユニットの側頭部上への配置を示す略斜視図である。
【図3】図3は、図2におけるようなユニットをその上に配置した頭部の略断面図であり、IPG電極によって作り出される電流の、頭皮を通過する経路と脳を通過する経路を示す。
【図4】図4は、図2におけるように頭部上に配置されたユニットによって生成される、時間の関数としてのIPG及びPPG信号の略プロットを示す。
【図5】図5は、図4に示されるIPG信号とPPG信号との差分を取ることによって導出された、2心周期中の時間の関数としての脳血液量の変化の略プロットを示す。
【図6】図6は、時間の関数としてのIPG及びPPG信号の略プロットであって、図4に示された信号に類似するが、長時間のインターバルにわたって延長され、かつ被験者が過換気となっている間に測定されたものを示す。
【図7】図7は、本発明の例示的な実施形態による、時間の関数としてのIPG信号の略プロットを示し、脳血流量の変化を推定する方法を説明する。
【図8】図8は、本発明の例示的な実施形態による、時間の関数としてのIPG信号及びその時間微分の略プロットを示し、脳血流量の変化を推定する方法を説明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳血流量を推定する方法であって、
a)インピーダンス・プレチスモグラフィを使用して、頭部内の時間変化する血液量の測定値を取得することと、
b)頭皮内の時間変化する血液量の測定値を取得することと、
c)脳血流量を推定するために、前記頭部内の時間変化する血液量及び頭皮内の時間変化する血液量の測定値を使用すること
からなる方法。
【請求項2】
頭皮内の時間変化する血流量の測定値を取得することは、フォトプレチスモグラフィを使用することを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脳血流量を推定することは、経時的に変化する相対的な脳血流量を推定することを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記時間変化する血液量の測定値を使用することは、時間変化する血液量の重み付けされた測定値間の差分を求めることを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記時間変化する血液量の測定値は、心周期における血圧が降下している時期に、少なくとも近似的には同じ値をもつように重み付けされている、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記時間変化する血液量の測定値は、前記時間変化する血液量の測定値間のクロスパワスペクトルが比較的に高くなる周波数において、近似的に等しいパワスペクトルをもつように重み付けされている、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
インピーダンス・プレチスモグラフィを使用して頭部内の血液量の測定値を取得することは、
a)2つの電流電極を使用して頭部に電流を通すことと、
b)2つの電圧測定電極を使用して、前記電流に関連した、頭部にかかる電圧を測定することと、
を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記電流電極の少なくとも一つを囲む環状電極を頭部に適用することと、
前記環状電極をそれが囲む前記電流電極と同じ電圧に維持し、それによって前記電流電極からの放射状電流を抑制すること
を更に含む、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記電圧測定電極は、前記電流電極とは異なり、かつ実質的に前記電流電極から電気的に切り離されている、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
インピーダンス・プレチスモグラフィを使用して頭部内の血液量の測定値を取得することは、左右側頭部のそれぞれの上に前記2つの電流電極を配置することを含む、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
インピーダンス・プレチスモグラフィを使用して頭部内の血液量の測定値を取得することは、前記2つの電圧測定電極のそれぞれを、頭部上の、前記電流電極の異なる1つに隣接する位置に配置することを含む、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項12】
フォトプレチスモグラフィを使用して頭皮内の血液量の測定値を取得することは、フォトプレチスモグラフィ・センサを、頭部上の、前記電流電極の一つ及び前記電流電極に隣接した前記電圧測定電極に隣接して配置することを含む、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
脳血流量を推定する方法であって、
a)心周期における時間の関数として頭部を横切るインピーダンスを測定することと、
b)前記心周期における血圧が上昇している時期の前記インピーダンスの変化率から前記脳血流量を推定すること
を含む方法。
【請求項14】
頭部上への配置に適した脳血流量を推定するためのユニットであって、
a)インピーダンス・プレチスモグラフィに適した少なくとも一つの電極と、
b)頭皮内の血流量測定に適したプレチスモグラフィ・センサと
を備えたユニット。
【請求項15】
前記頭皮内の血流量測定に適したプレチスモグラフィ・センサは、フォトプレチスモグラフィ・センサを含む、ことを特徴とする請求項14に記載のユニット。
【請求項16】
前記フォトプレチスモグラフィ・センサからのデータ及び前記電極からのインピーダンス・プレチスモグラフィ・データの一方又は両方を処理するように構成された信号処理部を更に備える、請求項15に記載のユニット。
【請求項17】
前記少なくとも一つの電極は、
a) それが皮膚上に配置されたときに頭部を通り抜ける電流を注入するのに適した電流電極と、
b)それが皮膚上に配置され、かつ、電流電極が電流を注入しているときに、頭部にかかる電圧を測定するのに適した電圧測定電極と
を備えている、ことを特徴とする請求項15に記載のユニット。
【請求項18】
前記電流電極及び電圧測定電極は、前記電流電極が電流を注入しているときに、表皮での電圧降下をほとんど排除して、前記電圧測定電極が真皮における電位と実質的に等しい電位を測定するように構成されている、ことを特徴とする請求項17に記載のユニット。
【請求項19】
様々な成熟度の患者における使用に適し、前記電流電極は前記電圧測定電極を囲む環状部を含み、前記環状部の半径方向の厚さ、及び前記電流電極と電圧測定電極との間の隙間は、それぞれ前記様々な成熟度の患者における表皮の典型的な厚さの少なくとも2倍である、ことを特徴とする請求項18に記載のユニット。
【請求項20】
前記環状部の半径方向の厚さと、前記電流電極と電圧測定電極との間の隙間は、それぞれ少なくとも1mmである、ことを特徴とする請求項19に記載のユニット。
【請求項21】
前記環状部の半径方向の厚さと、前記電流電極と電圧測定電極との間の隙間は、それぞれ少なくとも2mmである、ことを特徴とする請求項20に記載のユニット。
【請求項22】
前記電流電極を囲む環状電極を更に含み、それによって前記環状電極が電流電極と同じ電圧に保持されているときに前記電流電極からの放射状電流を抑制する、請求項17に記載のユニット。
【請求項23】
脳血流量を推定するためのシステムであって、
a)少なくとも一つの請求項15に記載のユニットと、
b)頭部上に配置してインピーダンス・プレチスモグラフィを行うのに適した少なくとも一つの電極を備えたインピーダンス測定ユニットと、
c)前記ユニットが頭部の異なる側面上に配置されたときに、前記一つのユニットの前記少なくとも一つの電極のうちの一つと、前記インピーダンス測定ユニットの前記少なくとも一つの電極のうちの一つとの間で、頭部に電流を通すのに適した電源と、
d)前記一つのユニットの前記少なくとも一つの電極のうちの一つと前記インピーダンス測定ユニットの前記少なくとも一つの電極のうちの一つとの間で測定された電圧差と、前記フォトプレチスモグラフィによって生成されたフォトプレチスモグラフィ・データと、から取得されたインピーダンス・データを使用して脳血流量を計算するデータアナライザと
からなるシステム。
【請求項24】
前記インピーダンス測定ユニットは請求項15に記載のユニットでもある、ことを特徴とする請求項23に記載のシステム。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−506445(P2008−506445A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520969(P2007−520969)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【国際出願番号】PCT/IL2005/000632
【国際公開番号】WO2006/011128
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(507013774)オーサン メディカル テクノロジーズ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】