説明

腎損傷および腎不全の診断および予後のための方法および組成物

本発明は、腎損傷を患っている対象または腎損傷に罹っている疑いのある対象における監視、診断、予後、および治療計画の決定のための方法ならびに組成物に関する。特に、本発明は、腎損傷における診断および予後のバイオマーカーとして、可溶性P−セレクチン、タンパク質NOVホモログ、可溶性上皮増殖因子受容体、ネトリン−4、ハプトグロビン、熱ショックタンパク質β−1、α−1−アンチトリプシン、白血球エラスターゼ、可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6、可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6、可溶性細胞間接着分子2、活性型カスパーゼ−3および可溶性血小板内皮細胞接着分子からなる群から選択される1以上のマーカーを検出するアッセイを使用することに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2008年8月28日に出願された米国特許仮出願第61/092,733号、2008年8月29日に出願された同第61/092,905号、2008年8月29日に出願された同第61/092,912号、2008年8月29日に出願された同第61/092,926号、2008年8月29日に出願された同第61/093,154
号、2008年8月29日に出願された同第61/093,247号、2008年8月29日に出願された同第61/093,249号、2008年8月29日に出願された同第61/093,262号、2008年8月29日に出願された同第61/093,263号、2008年8月29日に出願された同第61/093,264号、2008年8月29日に出願された同第61/093,266号、2008年8月29日に出願された同第61/093,244号、および、2008年8月29日に出願された同第61/093,272号の優先権を主張するものであり、これら各々の全ての表、図面および特許請求の範囲を含む内容全体は本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
〔発明の背景〕
本発明の背景の以下の論議は、読者が本発明を理解するのを助けるためだけに提供されており、本発明に対する先行技術を説明または構成すると認められるものではない。
【0003】
腎臓は、身体から水および溶質を排出する責任がある。腎臓の機能は、酸塩基バランスの維持、電解質濃度の調節、血液量の制御、および、血圧の調節を含む。したがって、損傷および/または疾患による腎臓機能の損失は結果としてかなりの罹患率および死亡率をもたらす。腎臓損傷の詳細な論議は、ハリソン原理の内科学(Harrison’s Principles of
Internal Medicine)、第17版、マグロー・ヒル(McGraw Hill)、ニューヨーク、1741〜1830頁に提供されており、これによりその内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。腎疾患および/または腎損傷は、急性または慢性でありうる。急性および慢性の腎臓疾患は、以下のように説明されている(現代医学診断および治療2008(Current Medical Diagnosis & Treatment 2008)、第47版、マグロー・ヒル、ニューヨーク、785〜815頁より。その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる):「急性腎不全は数時間から数日にわたる腎機能の悪化であり、結果として血中の窒素性廃棄物(尿素窒素など)およびクレアチニンの停留をもたらす。これらの物質の停留は高窒素血症と呼ばれる。慢性腎不全(慢性腎臓疾患)は数ヶ月から数年にわたる腎機能の異常損失によって生じる」。
【0004】
急性腎不全(ARF、急性腎臓損傷すなわちAKIとしても知られている)は、急激な(典型的には約48時間から1週間以内に検出される)糸球体濾過における減少である。この濾過能力の損失は結果として、通常は腎臓によって排出される窒素性(尿素およびクレアチニン)および非窒素性老廃物の停留、尿量の減少、またはその両方をもたらす。ARFは、約5%の入院、4〜15%の心肺バイパス手術、および、最大で30%までの集中治療室入院まで悪化すると報告されている。ARFは、因果関係において、腎前性、内因性腎性、または、腎後性として類別されうる。内因性腎疾患はさらに、糸球体異常、尿細管異常、間質性異常、および血管性異常に分けられうる。ARFの主要原因は、以下の表に記載されており、この表はメルク・マニュアル(Merck Manual)、第17版、第222章より改作されたものであり、これによりその内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【表1】

【0005】
虚血性ARFの場合では、疾患の過程は、4段階に分けられうる。数時間から数日続く開始段階の間、腎臓の灌流減少は損傷に進展する。糸球体限外濾過が減少し、濾液の流れが尿細管内のデブリに起因して減少され、損傷した上皮を通る濾液の逆流が起こる。腎損傷は、この段階で腎臓の再灌流によって媒介されうる。開始の後には、継続した虚血損傷および炎症によって特徴付けられ、内皮障害および血管うっ血を伴うこともある、拡張段階が続く。1〜2週間続く維持段階の間、腎細胞損傷が起こり、糸球体濾過および尿量は最小に達する。腎上皮が修復されてGFRが次第に回復する回復段階が続くことができる。これに関わらず、ARFに罹った対象の生存率は、約60%ほど低いこともある。
【0006】
放射線造影剤(造影剤とも呼ばれる)、ならびに、シクロスポリン、アミノグリコシドおよびシスプラチンなどの抗ガン剤を含む抗生物質などの他の腎毒性物質によって引き起こされる急性腎臓損傷は、数日から約1週間の期間にわたって顕在化する。造影剤誘導ネフロパシー(CIN、これは放射線造影剤によって引き起こされたAKIである)は、(虚血損傷をもたらす)腎内血管収縮によって、および、腎尿細管上皮細胞へ直接的な毒性がある活性酸素種の産生から、引き起こされると考えられている。CINは古典的に、血中尿素窒素および血清クレアチニンにおける急性(24〜48時間以内に発症)であるが可逆的な(ピークは3〜5日間で1週間以内に消散する)上昇として現れる。
【0007】
AKIを定義し検出するための一般的に報告されている判断基準は、血清クレアチニンの急激な(典型的には約2〜7日以内、または入院期間以内の)上昇である。AKIを定義し検出するための血清クレアチニン上昇の使用は良く確立されているが、血清クレアチニン上昇の規模、および、AKIを定義するためにその上昇が測定される期間は、刊行物間でかなり異なる。伝統的に、血清クレアチニンにおける比較的大きな増加、例えば100%、200%、2mg/dLを超える値に対して少なくとも100%の増加、および、他の定義が、AKIを定義するために使用される。しかしながら、最近の傾向は、AKIを定義するためにより小さい血清クレアチニンン上昇を使用することに向かっている。血清クレアチニン上昇と、AKIと、関連する健康リスクとの間の関係は、PraughtおよびShlipakによる、カレント・オピニオン・イン・ネフロロジー・アンド・ハイパーテンション(Curr Opin Nephrol Hypertens)14:265〜270、2005年、ならびに、Chertowらによる、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ソサイエティー・オブ・ネフロロジー(J Am Soc Nephrol)16:3365〜3370、2005年に、概説されており、本明細書に列挙されている参照と共に、それらの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。これら刊行物に記載されているように、急性悪化腎機能(AKI)、ならびに、死および他の有害な転帰のリスク増加は、血清クレアチニンにおける非常に小さい増加に関連することが現在知られている。これらの増加は、相対(%)値、または公称値として決定されうる。損傷前の値から20%ほどの小さい、血清クレアチニンにおける相対増加は、急性に悪化する腎機能(AKI)、および健康リスクの増加を示すということが報告されているが、AKIおよび健康リスク増加を定義するためのより一般的に報告されている値は、少なくとも25%の相対増加である。0.3mg/dL、0.2mg/dLほど、または0.1mg/dLほどさえ小さい公称増加が、腎機能悪化および健康リスク増加を示すことが報告されている。血清クレアチニンがこれらの閾値まで上昇する様々な期間が、AKIを定義するために使用されており、例えば2日、3日、7日、または患者が病院もしくは集中治療室にいる時間として定義される可変期間に及ぶ。これらの研究は、悪化している腎機能またはAKIに対する血清クレアチニン上昇の特定閾値(または上昇の期間)はないが、むしろ血清クレアチニン上昇の規模の増加と共にリスクの連続的増加があるということを示す。
【0008】
ある研究(Lassniggらによる、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ソサイエティー・オブ・ネフロロジー15:1597〜1605、2004年。これによってその内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)が、血清クレアチニンにおける増加および減少の双方を調査した。心臓手術に続いて−0.1〜−0.3mg/dLの血清クレアチニンの穏やかな低下を示す患者は、最も低い死亡率を有した。血清クレアチニンのより大きな低下(−0.4mg/dL以上)、または血清クレアチニンのいかなる増加を示す患者は、より高い死亡率を有した。これらの発見は筆者に、(手術から48時間以内の小さなクレアチニン変化によって検出されるような)腎機能における非常に微妙な変化でさえ、患者の転帰に深刻に影響すると結論付けさせた。臨床治験および臨床診療においてAKIを定義するために血清クレアチニンを使用することに対する統合分類システム関するコンセンサスを達成する目的で、Bellomoらによる、クリティカル・ケア(Crit Care.)8(4):R204〜12、2004年(これよりその内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)が、AKI患者を階級化するための以下の分類を提唱する:
「危険」:血清クレアチニンがベースラインから1.5倍増加した、または、6時間の尿産生が<0.5mL/kg体重/時である;
「損傷」:血清クレアチニンがベースラインから2.0倍増加した、または、12時間の尿産生が<0.5mL/kg/時である;
「不全」:血清クレアチニンがベースラインから3.0倍増加した、または、クレアチニン>355μmol/L(44を超える上昇とともに)、もしくは24時間の尿量が0.3mL/kg/時未満、もしくは少なくとも12時間の無尿;
かつ、2つの臨床転帰が含まれる:
「損失」:4週間を超える腎置換療法の持続的必要性あり。
「ESRD」:末期腎疾患―3ヶ月間を超える透析の必要性あり。
これらの判断基準は、RIFLE判断基準と呼ばれ、腎状態を分類するための有用な臨床ツールを提供するものである。Kellumによるクリティカル・ケア・メディスン(Crit. Care Med.)36:S141〜45、2008年、および、Ricciらによる、キドニー・インターナショナル(Kidney Int.)73、538〜546、2008年(これら各々の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)で論議されたように、RIFLE判断基準は、多数の研究で検証されているAKIの一様な定義を提供する。
【0009】
より最近では、Mehtaらによる、クリティカル・ケア11:R31(doi:10.1186.cc5713)、2007年(この内容全体は参照により本明細書に組み込まれる)が、RIFLEから修正された、AKI患者を階級化するための以下の類似分類を提唱する:
「ステージI」:血清クレアチニンの0.3mg/dL以上の増加(≧26.4μmol/L)、もしくはベースラインから150%(1.5倍)以上への増加、または、6時間を超える間の尿量が1時間当たり0.5mL/kg未満である;
「ステージII」:血清クレアチニンのベースラインから200%を超える(>2倍)増加、または、12時間を超える間の尿量が1時間当たり0.5mL/kg未満
「ステージIII」血清クレアチニンのベースラインから300%を超える(>3倍)増加、または、少なくとも44μmol/Lの急性増加を伴う血清クレアチニン≧354μmol/L、または、24時間の尿量が1時間当たり0.3mL/kg未満であるか、もしくは、12時間の無尿。
【0010】
CINコンセンサス作業パネル(McColloughらによる、レビューズ・イン・カーディオヴァスキュラー・メディスン(Rev Cardiovasc Med.)2006年;7(4):177〜197。この内容全体は参照により本明細書に組み込まれる)は、(AKIの1つのタイプである)造影剤誘導ネフロパシーを定義するために25%の血清クレアチニン上昇を使用する。様々なグループが、AKIを検出するために血清クレアチニンを使用するわずかに異なる判断基準を提唱しているが、コンセンサスは、血清クレアチニンにおける小さな変化、例えば0.3mg/dLまたは25%などは、AKI(腎機能悪化)を検出するのに十分であり、血清クレアチニン変化の規模は、AKIの重篤度および死亡リスクの指標であるということである。
【0011】
数日間にわたる血清クレアチニンの連続測定はAKIを検出し診断する認められた方法であり、AKI患者を評価するための最も重要なツールのうちの1つであると考えられているが、血清クレアチニンは一般的に、AKI患者の診断、査定、および監視において幾つかの限界を有すると見なされている。血清クレアチニンがAKIの症状を示すと考えられる値まで上昇する(例えば0.3mg/dLまたは25%の上昇)期間は、使用される定義に応じて48時間以上でありうる。AKIにおける細胞損傷が数時間にわたって起こることがあるので、48時間以上で検出された血清クレアチニン上昇は、損傷の後期指標であり得、ゆえに血清クレアチニンに頼ることは、AKIの診断を遅らせうる。さらに、血清クレアチニンは、正確な腎臓状態の良い指標ではなく、腎臓機能が急速に変化しているAKIの最急性期の間では治療が必要である。AKIに罹っている幾らかの患者は完全に回復し、幾らかの患者は、透析を必要とし(短期間または長期間のいずれかで)、幾らかの患者は、死、大きな心臓有害事象、および慢性腎臓疾患を含む他の有害な転帰を有するだろう。血清クレアチニンは、濾過率のマーカーであるので、血清クレアチニンは、AKIの原因(腎前性、内因性腎性、腎後性の閉塞、アテローム塞栓など)、あるいは、内因性腎疾患(例えば、尿細管、糸球体もしくは間質由来)における損傷のカテゴリーまたは位置を区別しない。尿量も同様に限定されており、これらのことを知ることは、AKIに罹っている患者を管理し治療することにおいて極めて重要でありうる。
【0012】
これらの限界は、特に初期の無症状段階において、しかしながら腎臓の回復および修復が起こりうる後期段階においても、AKIを検出し査定するためにより良い方法の必要性を強調している。さらに、AKIに罹るリスクがある患者をより良く特定する必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、対象における腎機能を評価するための方法および組成物を提供することである。本明細書において説明されているように、可溶性P−セレクチン、タンパク質NOVホモログ、可溶性上皮増殖因子受容体、ネトリン−4、ハプトグロビン、熱ショックタンパク質β−1、α−1−アンチトリプシン、白血球エラスターゼ、可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6、可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6、可溶性細胞間接着分子2、カスパーゼ−3(および、最も好ましくは活性型カスパーゼ−3)、および、可溶性血小板内皮細胞接着分子(本明細書ではまとめて、および個々に「腎臓損傷マーカー」と呼ばれる)からなる群から選択される1以上のマーカーの測定が、腎機能の損傷、腎機能減少、および/または急性腎不全(急性腎臓損傷とも呼ばれる)を患っている、または患うリスクのある対象に対する、診断、予後、リスク階級化、段階分け、監視、分類、ならびに、さらなる診断および治療計画の決定のために使用されうる。
【0014】
これらの腎臓損傷マーカーは、リスク階級化のため(すなわち腎機能の将来的な損傷、腎機能減少に対する将来的な進行、ARFに対する将来的な進行、腎機能における将来的な改善などへのリスクのある対象を特定するため);現存する疾患の診断のため(すなわち腎機能の損傷を患っている、腎機能減少が進行している、ARFに進行しているなどの、対象を特定するため);腎機能の変質または改善を監視するため;ならびに、腎機能の改善もしくは悪化、死亡リスクの減少もしくは増加、対象が腎置換療法(すなわち、血液透析、腹膜透析、血液濾過および/または腎移植)を必要とするであろうリスクの減少もしくは増加、対象が腎機能の損傷から回復するであろうリスクの減少もしくは増加、対象がARFから回復するであろうリスクの減少もしくは増加、対象が末期腎疾患へ進行するであろうリスクの減少もしくは増加、対象が慢性腎不全に進行するであろうリスクの減少もしくは増加、対象が移植された腎臓の拒絶反応を受けるであろうリスクの減少もしくは増加などの、将来的な医学的転帰を予測するために、個々で、または複数の腎臓損傷マーカーを含むパネルにおいて使用されうる。
【0015】
第1態様において、本発明は、対象における腎状態を評価するための方法に関する。これらの方法は、対象から得た体液サンプル中の、本発明の1つ以上の腎臓損傷マーカーを検出するように構成されたアッセイ方法を実施することを含む。この(1または複数の)アッセイ結果、例えば可溶性P−セレクチン、タンパク質NOVホモログ、可溶性上皮増殖因子受容体、ネトリン−4、ハプトグロビン、熱ショックタンパク質β−1、α−1−アンチトリプシン、白血球エラスターゼ、可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6、可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6、可溶性細胞間接着分子2、カスパーゼ−3(および、最も好ましくは活性型カスパーゼ−3)、および、可溶性血小板内皮細胞接着分子からなる群から選択される1以上のマーカーの測定濃度は、次いで対象の腎状態と相関される。この腎状態に対する相関は、(1または複数の)アッセイ結果を、本明細書で説明されたような対象のリスク階級化、診断、予後、段階分け、分類、および監視のうちの1つ以上と相関させることを含み得る。ゆえに、本発明は、腎損傷の評価のために、本発明の1以上の腎臓損傷マーカーを利用する。
【0016】
いくつかの実施形態において、本明細書において説明される腎状態を評価するための方法は、対象のリスク階級化のための方法;すなわち腎状態における1以上の将来的な変化の見込みを対象に割り当てるための方法である。これらの実施形態において、(1または複数の)アッセイ結果は、1以上のそのような将来的な変化に相関される。以下は、好ましいリスク階級化の実施形態である。
【0017】
好ましいリスク階級化の実施形態において、これらの方法は、腎機能の将来的な損傷についての対象のリスクを決定することを含み、(1または複数の)アッセイ結果は、そのような腎機能の将来的な損傷の見込みに相関される。例えば、測定された濃度は各々、閾値と比較されうる。「陽性進行」腎臓損傷マーカーについて、腎機能の将来的な損傷を患う見込み増加が、測定された濃度が閾値未満の場合に割り当てられる見込みに対して、測定された濃度が閾値を上回る場合に、対象に割り当てられる。「陰性進行」腎臓損傷マーカーについて、腎機能の将来的な損傷を患う見込み増加が、測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる見込みに対して、測定された濃度が閾値未満の場合に、対象に割り当てられる。
【0018】
他の好ましいリスク階級化の実施形態において、これらの方法は、将来的な腎機能減少に対する対象のリスクを決定することを含み、(1または複数の)アッセイ結果は、そのような腎機能減少の見込みに相関される。例えば、測定された濃度は各々、閾値と比較されうる。「陽性進行」腎臓損傷マーカーについて、将来的な腎機能減少を患う見込み増加が、測定された濃度が閾値未満の場合に割り当てられる見込みに対して、測定された濃度が閾値を上回る場合に、対象に割り当てられる。「陰性進行」腎臓損傷マーカーについて、将来的な腎機能減少の見込み増加が、測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる見込みに対して、測定された濃度が閾値未満の場合に、対象に割り当てられる。
【0019】
さらに他の好ましいリスク階級化の実施形態において、これらの方法は、腎機能における将来的な改善に対する対象の見込みを決定することを含み、(1または複数の)アッセイ結果は、そのような腎機能における将来的な改善の見込みに相関される。例えば、測定された濃度は各々、閾値と比較されうる。「陽性進行」腎臓損傷マーカーについて、腎機能における将来的な改善の見込み増加が、測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる見込みに対して、測定された濃度が閾値未満の場合に、対象に割り当てられる。「陰性進行」腎臓損傷マーカーについて、腎機能における将来的な改善の見込み増加が、測定された濃度が閾値未満の場合に割り当てられる見込みに対して、測定された濃度が閾値を上回る場合に、対象に割り当てられる。
【0020】
さらに他の好ましいリスク階級化の実施形態において、これらの方法は、ARFへの進行に対する対象のリスクを決定することを含み、(1または複数の)結果は、そのようなARFへの進行の見込みに相関される。例えば、測定された濃度は各々、閾値と比較されうる。「陽性進行」腎臓損傷マーカーについて、ARFへの進行の見込み増加が、測定された濃度が閾値未満の場合に割り当てられる見込みに対して、測定された濃度が閾値を上回る場合に、対象に割り当てられる。「陰性進行」腎臓損傷マーカーについて、ARFへの進行の見込み増加が、測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる見込みに対して、測定された濃度が閾値未満の場合に、対象に割り当てられる。
【0021】
そして他の好ましいリスク階級化の実施形態において、これらの方法は、対象の転帰リスクを決定することを含み、(1または複数の)アッセイ結果は、対象が患う腎損傷に関連する臨床転帰の発生の見込みに相関される。例えば、測定された濃度は各々、閾値と比較されうる。「陽性進行」腎臓損傷マーカーについて、急性腎臓損傷、AKIの悪化段階への進行、死亡、腎置換治療の必要性、腎毒素の回収の必要性、末期腎疾患、心不全、発作、心筋梗塞、慢性腎臓疾患への進行などのうちの1つ以上の見込み増加が、測定された濃度が閾値未満の場合に割り当てられる見込みに対して、測定された濃度が閾値を上回る場合に、対象に割り当てられる。「陰性進行」腎臓損傷マーカーについて、急性腎臓損傷、AKIの悪化段階への進行、死亡、腎置換治療の必要性、腎毒素の回収の必要性、末期腎疾患、心不全、発作、心筋梗塞、慢性腎臓疾患への進行などのうちの1つ以上の見込み増加が、測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる見込みに対して、測定された濃度が閾値未満の場合に、対象に割り当てられる。
【0022】
そのようなリスク階級化の実施形態において、好ましくは割り当てられる見込みまたはリスクは、体液サンプルが対象から得られた時点から180日以内に関心の事象が多かれ少なかれ起こる可能性があるということである。特に好ましい実施形態において、割り当てられる見込みまたはリスクは、18ヶ月間、120日間、90日間、60日間、45日間、30日間、21日間、14日間、7日間、5日間、96時間、72時間、48時間、36時間、24時間、12時間、またはそれ未満などより短い期間以内に起こる関心の事象に関する。体液サンプルが対象から得られた時点の0時間でのリスクは、現状の診断と同等である。
【0023】
好ましいリスク階級化の実施形態において、対象は、腎前性、内因性腎性、または、腎後性ARFについての1以上の既知リスク因子の対象における先在に基づくリスク階級化のために選択される。例えば、大きな血管手術、冠動脈バイパス術または他の心臓手術を受けているか、または受けたことがある対象;先在のうっ血性心不全、子癇前症、子癇、真性糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、蛋白尿、腎機能不全、正常範囲未満の糸球体濾過、硬変、正常範囲を上回る血清クレアチニン、または敗血症に罹っている対象;あるいは、NSAID、シクロスポリン、タクロリムス、アミノグリコシド、ホスカルネット、エチレングリコール、ヘモグロビン、ミオグロビン、イホスファミド、重金属、メトトレキサート、放射線造影剤またはストレプトゾトシンに曝された対象は全て、本明細書において説明される方法にしたがってリスクを監視するために好ましい対象である。この列挙は、限定していると意味されない。この文脈における「先在」によって、リスク因子が、体液サンプルが対象から得られた時点で存在するということが意味される。特に好ましい実施形態において、対象は、腎機能の損傷、腎機能減少、またはARFの既存の診断に基づくリスク階級化のために選択される。
【0024】
他の実施形態において、本明細書において説明される腎状態を評価するための方法は、対象における腎障害を診断するため、すなわち、対象が腎機能の損傷、腎機能減少、またはARFを患っているか否かを査定するための方法である。これらの実施形態において、(1または複数の)アッセイ結果、例えば可溶性P−セレクチン、タンパク質NOVホモログ、可溶性上皮増殖因子受容体、ネトリン−4、ハプトグロビン、熱ショックタンパク質β−1、α−1−アンチトリプシン、白血球エラスターゼ、可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6、可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6、可溶性細胞間接着分子2、カスパーゼ−3(および、最も好ましくは活性型カスパーゼ−3)、および、可溶性血小板内皮細胞接着分子からなる群から選択される1以上のマーカーの測定された濃度が、腎状態における変化の発生または不発生に相関される。以下は、好ましい診断実施形態である。
【0025】
好ましい診断実施形態において、これらの方法は、腎機能の損傷の発生または不発生を診断することを含み、(1または複数の)アッセイ結果は、そのような損傷の発生または不発生に相関される。例えば、測定された濃度の各々は、閾値と比較されうる。陽性進行マーカーについて、腎機能の損傷の発生の見込み増加が、(測定された濃度が閾値未満である場合に割り当てられる見込みに対して)測定された濃度が閾値を上回る場合に対象に割り当てられ;代替的に、(測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる見込みに対して)測定された濃度が閾値未満である場合、腎機能の損傷の不発生の見込み増加が、対象に割り当てられうる。陰性進行マーカーについて、腎機能に対する損傷の発生の見込み増加が、(測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる見込みに対して)測定された濃度が閾値未満である場合に対象に割り当てられ;代替的に、(測定された濃度が閾値未満である場合に割り当てられる見込みに対して)測定された濃度が閾値を上回る場合に、腎機能の損傷の不発生の見込み増加が、対象に割り当てられうる。
【0026】
他の好ましい診断実施形態において、これらの方法は、腎機能減少の発生または不発生を診断することを含み、(1または複数の)アッセイ結果は、腎機能減少を引き起こす損傷の発生または不発生に相関される。例えば、測定された濃度の各々は、閾値と比較されうる。陽性進行マーカーについて、腎機能減少を引き起こす損傷の発生の見込み増加が、(測定された濃度が閾値未満である場合に割り当てられる見込みに対して)測定された濃度が閾値を上回る場合に対象に割り当てられ;代替的に、(測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる見込みに対して)測定された濃度が閾値未満である場合、腎機能減少を引き起こす損傷の不発生の見込み増加が、対象に割り当てられうる。陰性進行マーカーについて、腎機能減少を引き起こす損傷の発生の見込み増加が、(測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる見込みに対して)測定された濃度が閾値未満である場合に対象に割り当てられ;代替的に、(測定された濃度が閾値未満である場合に割り当てられる見込みに対して)測定された濃度が閾値を上回る場合に、腎機能減少を引き起こす損傷の不発生の見込み増加が、対象に割り当てられうる。
【0027】
さらに他の好ましい診断実施形態において、これらの方法は、ARFの発生または不発生を診断することを含み、(1または複数の)アッセイ結果は、ARFを引き起こす損傷の発生または不発生に相関される。例えば、測定された濃度の各々は、閾値と比較されうる。陽性進行マーカーについて、ARFの発生の見込み増加が、(測定された濃度が閾値未満である場合に割り当てられる見込みに対して)測定された濃度が閾値を上回る場合に対象に割り当てられ;代替的に、(測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる見込みに対して)測定された濃度が閾値未満である場合、ARFの不発生の見込み増加が、対象に割り当てられうる。陰性進行マーカーについて、ARFの発生の見込み増加が、(測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる見込みに対して)測定された濃度が閾値未満である場合に対象に割り当てられ;代替的に、(測定された濃度が閾値未満である場合に割り当てられる見込みに対して)測定された濃度が閾値を上回る場合に、ARFの不発生の見込み増加が、対象に割り当てられうる。
【0028】
さらに他の好ましい診断実施形態において、これらの方法は、腎置換療法の必要があると対象を診断することを含み、(1または複数の)アッセイ結果は、腎置換療法の必要性と相関される。例えば、測定された濃度の各々は、閾値と比較されうる。陽性進行マーカーについて、腎置換療法の必要性を作り出す損傷の発生の見込み増加が、(測定された濃度が閾値未満である場合に割り当てられる見込みに対して)測定された濃度が閾値を上回る場合に対象に割り当てられ;代替的に、(測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる見込みに対して)測定された濃度が閾値未満である場合、腎置換療法の必要性を作り出す損傷の不発生の見込み増加が、対象に割り当てられうる。陰性進行マーカーについて、腎置換療法の必要性を作り出す損傷の発生の見込み増加が、(測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる見込みに対して)測定された濃度が閾値未満である場合に対象に割り当てられ;代替的に、(測定された濃度が閾値未満である場合に割り当てられる見込みに対して)測定された濃度が閾値を上回る場合に、腎置換療法の必要性を作り出す損傷の不発生の見込み増加が、対象に割り当てられうる。
【0029】
さらなる他の好ましい診断実施形態において、これらの方法は、腎移植の必要があると対象を診断することを含み、(1または複数の)アッセイ結果は、腎移植の必要性と相関される。例えば、測定された濃度の各々は、閾値と比較されうる。陽性進行マーカーについて、腎移植の必要性を作り出す損傷の発生の見込み増加が、(測定された濃度が閾値未満である場合に割り当てられる見込みに対して)測定された濃度が閾値を上回る場合に対象に割り当てられ;代替的に、(測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる見込みに対して)測定された濃度が閾値未満である場合、腎移植の必要性を作り出す損傷の不発生の見込み増加が、対象に割り当てられうる。陰性進行マーカーについて、腎移植の必要性を作り出す損傷の発生の見込み増加が、(測定された濃度が閾値を上回る場合に割り当てられる見込みに対して)測定された濃度が閾値未満である場合に対象に割り当てられ;代替的に、(測定された濃度が閾値未満である場合に割り当てられる見込みに対して)測定された濃度が閾値を上回る場合に、腎移植の必要性を作り出す損傷の不発生の見込み増加が、対象に割り当てられうる。
【0030】
さらに他の実施形態において、本明細書において説明される腎状態を評価するための方法は、対象における腎損傷を監視するための方法、すなわち、腎機能の損傷、腎機能減少、またはARFを患っている対象において腎機能が改善または悪化しているか否かを査定する方法である。これらの実施形態において、(1または複数の)アッセイ結果、例えば可溶性P−セレクチン、タンパク質NOVホモログ、可溶性上皮増殖因子受容体、ネトリン−4、ハプトグロビン、熱ショックタンパク質β−1、α−1−アンチトリプシン、白血球エラスターゼ、可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6、可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6、可溶性細胞間接着分子2、カスパーゼ−3(および、最も好ましくは活性型カスパーゼ−3)、および、可溶性血小板内皮細胞接着分子からなる群から選択される1以上のマーカーの測定された濃度は、腎状態における変化の発生または不発生に相関される。以下は好ましい監視実施形態である。
【0031】
好ましい監視実施形態において、これらの方法は、腎機能の損傷を患う対象において腎状態を監視することを含み、(1または複数の)アッセイ結果は、対象における腎状態の変化の発生または不発生と相関される。例えば、(1または複数の)測定された濃度は、閾値と比較されうる。陽性進行マーカーについて、測定された濃度が閾値を上回る場合に、腎機能の悪化が対象に割り当てられうる;代替的に、測定された濃度が閾値未満である場合に、腎機能の改善が対象に割り当てられうる。陰性進行マーカーについて、測定された濃度が閾値未満である場合に、腎機能の悪化が対象に割り当てられうる;代替的に、測定された濃度が閾値を上回る場合に、腎機能の改善が対象に割り当てられうる。
【0032】
他の好ましい監視実施形態において、これらの方法は、腎機能減少を患う対象において腎状態を監視することを含み、(1または複数の)アッセイ結果は、対象における腎状態の変化の発生または不発生に相関される。例えば、(1または複数の)測定された濃度は、閾値と比較されうる。陽性進行マーカーについて、測定された濃度が閾値を上回る場合に、腎機能の悪化が対象に割り当てられうる;代替的に、測定された濃度が閾値未満である場合に、腎機能の改善が対象に割り当てられうる。陰性進行マーカーについて、測定された濃度が閾値未満である場合に、腎機能の悪化が対象に割り当てられうる;代替的に、測定された濃度が閾値を上回る場合に、腎機能の改善が対象に割り当てられうる。
【0033】
さらに他の好ましい監視実施形態において、これらの方法は、急性腎不全を患う対象において腎状態を監視することを含み、(1または複数の)アッセイ結果は、対象における腎状態の変化の発生または不発生に相関される。例えば、(1または複数の)測定された濃度は、閾値と比較されうる。陽性進行マーカーについて、測定された濃度が閾値を上回る場合に、腎機能の悪化が対象に割り当てられうる;代替的に、測定された濃度が閾値未満である場合に、腎機能の改善が対象に割り当てられうる。陰性進行マーカーについて、測定された濃度が閾値未満である場合に、腎機能の悪化が対象に割り当てられうる;代替的に、測定された濃度が閾値を上回る場合に、腎機能の改善が対象に割り当てられうる。
【0034】
他の追加的な好ましい監視実施形態において、これらの方法は、腎前性、内因性腎性、または、腎後性ARFについての1以上の既知リスクの先在に起因して腎機能の損傷のリスクがある対象において腎状態を監視することを含み、(1または複数の)アッセイ結果は、対象における腎状態の変化の発生または不発生に相関される。例えば、(1または複数の)測定された濃度は、閾値と比較されうる。陽性進行マーカーについて、測定された濃度が閾値を上回る場合に、腎機能の悪化が対象に割り当てられうる;代替的に、測定された濃度が閾値未満である場合に、腎機能の改善が対象に割り当てられうる。陰性進行マーカーについて、測定された濃度が閾値未満である場合に、腎機能の悪化が対象に割り当てられうる;代替的に、測定された濃度が閾値を上回る場合に、腎機能の改善が対象に割り当てられうる。
【0035】
さらに他の実施形態において、本明細書において説明される腎状態を評価するための方法は、対象における腎損傷を分類する方法、すなわち、対象における腎損傷が腎前性、内因性腎性もしくは腎後性であるかどうかを決定するため;および/またはこれらのクラスを、急性尿細管損傷、急性糸球体腎炎、急性尿細管間質腎炎、急性血管性ネフロパシーもしくは浸潤性疾患などのサブクラスにさらに細分するため;および/または対象が特定のRIFLE段階へ進行するであろう見込みを割り当てるための、方法である。これらの実施形態において、(1または複数の)アッセイ結果、例えば可溶性P−セレクチン、タンパク質NOVホモログ、可溶性上皮増殖因子受容体、ネトリン−4、ハプトグロビン、熱ショックタンパク質β−1、α−1−アンチトリプシン、白血球エラスターゼ、可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6、可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6、可溶性細胞間接着分子2、カスパーゼ−3(および、最も好ましくは活性型カスパーゼ−3)、および、可溶性血小板内皮細胞接着分子からなる群から選択される1以上のマーカーの測定された濃度は、特定クラスおよび/またはサブクラスに相関される。以下は好ましい分類実施形態である。
【0036】
好ましい分類実施形態において、これらの方法は、対象における腎損傷が腎前性、内因性腎性、または、腎後性であるかどうかを決定すること;および/または、これらのクラスを、急性尿細管損傷、急性糸球体腎炎、急性尿細管間質腎炎、急性血管性ネフロパシーもしくは浸潤性疾患などのサブクラスにさらに細分すること;および/または、対象が特定のRIFLE段階へ進行するであろう見込みを割り当てることを含み、(1または複数の)アッセイ結果は、対象についての損傷分類に相関される。例えば、測定された濃度が閾値と比較され得、測定された濃度が閾値を上回る場合に、特定分類が割り当てられる;代替的に、測定された濃度が閾値未満である場合に、異なる分類が対象に割り当てられうる。
【0037】
これら方法における使用のための所望閾値に到達するために熟練者によって様々な方法が使用され得る。例えば、閾値は、正常対象で測定された腎臓損傷マーカーの第75、第85、第90、第95、または第99百分位数を表す濃度を選択することによってそのような正常対象の集団から決定されうる。代替的に、閾値は、対象の「疾患のある」集団、例えば、損傷を患うか、または損傷の素因(例えば、ARF、もしくは死、透析、腎移植などの幾つかの他の臨床転帰への進行)を有する対象から、そのような対象で測定された腎臓損傷マーカーの第75、第85、第90、第95、または第99百分位数を表す濃度を選択することによって、決定されうる。別の代替形態において、閾値は、同じ対象における腎臓損傷マーカーの先の測定から決定されうる;すなわち、対象における腎臓損傷マーカーのレベルの経時変化が、対象に対してリスクを割り当てるために使用されうる。
【0038】
しかしながら、前述の論議は、本発明の腎臓損傷マーカーが対応する個々の閾値と比較されなければならないということを暗示するようには意味されていない。アッセイ結果を組み合わせるための方法は、多変量ロジスティック回帰、対数線形モデリング、ニューラルネットワーク分析、mのうちのn分析(n-of-m analysis)、決定樹分析、マーカー比の計算などの使用を含むこともできる。この列挙は、限定するように意味されない。これらの方法において、個々のマーカーを組み合わせることによって決定される複合結果は、それ自体がマーカーであるかのように扱われうる。すなわち、個々のマーカーについて本明細書において説明されたように、複合結果についての閾値が決定され得、個々の患者についての複合結果がこの閾値と比較され得る。
【0039】
2つの集団を識別するための特定試験の能力は、ROC分析を使用して確立されうる。例えば、腎状態における1以上の将来的変化の素因となる「第1」サブ集団、および、それほど素因にならない「第2」サブ集団から確立されたROC曲線は、ROC曲線を計算するために使用され得、その曲線下面積は、試験の質の測定を提供する。好ましくは、本明細書において説明される試験は、0.5を超える、好ましくは少なくとも0.6、より好ましくは0.7、依然としてより好ましくは少なくとも0.8、さらにより好ましくは少なくとも0.9、そして最も好ましくは少なくとも0.95の、ROC曲線面積を提供する。
【0040】
幾つかの態様において、1以上の腎臓損傷マーカー、またはそのようなマーカーの複合体の測定された濃度は、連続型変数として扱われうる。例えば、任意の特定の濃度は、対象についての腎機能の将来的な減少の対応する可能性、損傷の発生、分類などに変換されうる。さらに別の代替形態において、ある閾値は、対象の集団を、(例えば腎状態における1以上の将来的な変化、損傷の発生、分類などの素因になる)「第1」サブ集団、および、それほど素因にならない「第2」サブ集団などの「ビン(bins)」に分離させることにおいて、許容可能レベルの特異性および感受性を提供することができる。閾値は、以下の測定の試験精度のうちの1以上によってこの第1および第2の集団を分離するために選択される:
1を超えるオッズ比、好ましくは少なくとも約2以上または約0.5以下、より好ましくは少なくとも約3以上または約0.33以下、依然としてより好ましくは少なくとも約4以上または約0.25以下、さらにより好ましくは少なくとも約5以上または約0.2以下、そして最も好ましくは少なくとも約10以上または約0.1以下のオッズ比:
0.2を超える対応する感受性、好ましくは約0.3を超える、より好ましくは約0.4を超える、依然としてより好ましくは少なくとも約0.5、さらにより好ましくは約0.6、さらにより好ましくは約0.7を超える、依然としてより好ましくは約0.8を超える、より好ましくは約0.9を超える、そして最も好ましくは約0.95を超える対応する感受性を有する、0.5を超える特異性、好ましくは少なくとも約0.6、より好ましくは少なくとも約0.7、依然としてより好ましくは少なくとも約0.8、さらにより好ましくは少なくとも約0.9、そして最も好ましくは少なくとも約0.95である特異性;
0.2を超える対応する特異性、好ましくは約0.3を超える、より好ましくは約0.4を超える、依然としてより好ましくは少なくとも約0.5、さらにより好ましくは約0.6、さらにより好ましくは約0.7を超える、依然としてより好ましくは約0.8を超える、より好ましくは約0.9を超える、そして最も好ましくは約0.95を超える対応する特異性を有する、0.5を超える感受性、好ましくは少なくとも約0.6、より好ましくは少なくとも約0.7、依然としてより好ましくは少なくとも約0.8、さらにより好ましくは少なくとも約0.9、そして最も好ましくは少なくとも約0.95の感受性;
少なくとも約75%の特異性と組み合わせた、少なくとも約75%の感受性;
1を超える陽性尤度比(感受性/(1−特異性)として計算される)、少なくとも約2、より好ましくは少なくとも約3、依然としてより好ましくは少なくとも約5、そして最も好ましくは少なくとも約10の陽性尤度比;あるいは、
1未満の陰性尤度比((1−感受性)/特異性として計算される)、約0.5以下、より好ましくは約0.3以下、そして最も好ましくは約0.1以下の陰性尤度比。
任意の上記測定値の文脈における用語「約」は、与えられた測定値の+/−5%に言及するものである。
【0041】
多重閾値もまた、対象の腎状態を査定するために使用されうる。例えば、腎状態における1以上の将来的な変化、損傷の発生、分類などの素因となる「第1」サブ集団、および、それほど素因にならない「第2」サブ集団は、単一グループに組み合されうる。このグループは次いで、3以上の等しい部分(細分数に応じて、三分位数、四分位数、五分位数などとして知られている)に細分される。オッズ比が、対象が該当する細分区画に基づいて対象に割り当てられる。三分位数が検討される場合、最低または最高の三分位数は、他の細分区画との比較のための基準として使用されうる。この基準細分区画には、オッズ比1が割り当てられる。第2三分位には、その第1三分位に対するオッズ比が割り当てられる。すなわち、第2三分位の人は、第1三分位の人と比較すると、腎状態における1以上の将来的な変化を患う可能性が3倍高いだろう。第3三分位にも、その第1三分位に対するオッズ比が割り当てられる。
【0042】
幾つかの実施形態において、アッセイ方法は、イムノアッセイである。そのようなアッセイで使用される抗体は、関心の完全長腎臓損傷マーカーと特異的に結合するであろうし、また、本明細書において以下でその用語は定義されるように、それらに「関連する」1以上のポリペプチドに結合することもできる。多数のイムノアッセイ形式が当業者に知られている。好ましい体液サンプルは、尿、血液、血清、唾液、涙、および血漿からなる群から選択される。
【0043】
前述の方法のステップは、(1または複数の)腎臓損傷マーカーアッセイ結果は、本明細書で説明される方法において孤立して使用されるということを意味するように解釈されるべきでない。むしろ、追加的変数または他の臨床的指標が、本明細書において説明される方法に含まれうる。例えば、リスク階級化、診断、分類、監視などの方法は、人口学的統計(例えば、体重、性別、年齢、人種)、病歴(例えば、家族歴、手術の種類、動脈瘤、うっ血性心不全、子癇前症、子癇、真性糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、蛋白尿、腎機能不全、または敗血症などの先在疾患、NSAID、シクロスポリン、タクロリムス、アミノグリコシド、ホスカルネット、エチレングリコール、ヘモグロビン、ミオグロビン、イホスファミド、重金属、メトトレキサート、放射線造影剤またはストレプトゾトシンなどの毒素曝露の種類)、臨床的変数(例えば、血圧、体温、呼吸速度)、リスク評点(APACHE評点、PREDICT評点、UA/NSTEMIについてのTIMIリスク評点、フレーミングハム・リスク評点)、糸球体濾過率、推定される糸球体濾過率、尿産生率、血清または血漿クレアチニン濃度、尿クレアチニン濃度、ナトリウム排泄分画、尿中ナトリウム濃度、尿クレアチニン・血清または血漿クレアチニン比、尿比重、尿浸透圧、尿中尿素窒素対血漿中尿素窒素比、血漿BUN・クレアチニン比、尿中ナトリウム/(尿中クレアチニン/血漿クレアチニン)として計算される腎不全指標、血清または血漿好中球ゼラチナーゼ(NGAL)濃度、尿中NGAL濃度、血清または血漿シスタチンC濃度、血清または血漿心筋トロポニン濃度、血清または血漿BNP濃度、血清または血漿NTproBNP濃度、ならびに、血清または血漿proBNP濃度からなる群から選択される、対象のために測定される1以上の変数と、(1または複数の)アッセイ結果を組み合わせることもできる。1以上の腎臓損傷マーカーの(1または複数の)アッセイ結果と組み合わされうる腎機能の他の測定は、本明細書において以下で説明され、また、ハリソン原理の内科学、第17版、マグロー・ヒル、ニューヨーク、1741〜1830頁、および、現代医学診断および治療2008、第47版、マグロー・ヒル、ニューヨーク、785〜815頁において説明されており、これら各々の内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
1を超えるマーカーが測定される場合、個々のマーカーは、同時に得られたサンプルにおいて測定され得るか、あるいは、異なる(例えば初期または後期)時点で得られたサンプルから決定され得る。個々のマーカーはまた、同一または異なる体液サンプルに対して測定されうる。例えば、1つの腎臓損傷マーカーが、血清または血漿サンプルにおいて測定されてよく、別の腎臓損傷マーカーが、尿サンプルにおいて測定されてもよい。加えて、見込みの割り当ては、個々の腎臓損傷マーカーアッセイ結果と、1以上の追加的変数における経時変化と組み合わされうる。
【0045】
様々な関連態様において、本発明はまた、本明細書において説明される方法を実施するための装置およびキットに関する。適するキットは、説明された閾値比較を実施するための器具と共に、説明された腎臓損傷マーカーのうちの少なくとも1つについてのアッセイを実施するのに十分な試薬を含む。
【0046】
幾つかの実施形態において、そのようなアッセイを実施するための試薬は、アッセイ装置に提供されており、そのようなアッセイ装置は、そのようなキットに含まれうる。好ましい試薬は、1以上の固相抗体を含むことができ、この固相抗体は、固体担体に結合された意図されるバイオマーカー標的を検出する抗体を含む。サンドイッチ・イムノアッセイの場合において、そのような試薬はまた、1以上の検出可能に標識された抗体を含むことができ、この検出可能に標識された抗体は、検出可能な標識に結合された意図されるバイオマーカー標的を検出する抗体を含む。アッセイ装置の一部として提供されうる追加的な任意の要素は、本明細書において以下で説明される。
【0047】
検出可能な標識は、それら自体が検出可能な分子(例えば、蛍光部分、電気化学的標識、ecl(電気化学発光)標識、金属キレート、コロイド金属粒子など)、ならびに、検出可能な反応生成物の産生によって(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなどの酵素)または、それ自体が検出可能でありうる特異的結合分子の使用によって(例えば、二次抗体に結合する標識された抗体、ビオチン、ジゴキシゲニン、マルトース、オリゴヒスチジン、2,4−ジニトロベンゼン(2,4-dintrobenzene)、ヒ酸フェニル(phenylarsenate)、ssDNA、dsDNAなど)間接的に検出されうる分子を含み得る。
【0048】
信号発生要素による信号の生成は、当技術分野においてよく知られている様々な光学的、音響的、および電気化学的方法を使用して実施されうる。検出モードの例は、蛍光、放射化学検出、反射率、吸光度、電流測定、伝導性、インピーダンス、干渉法、偏光解析法などを含む。これらの方法の幾つかにおいて、固相抗体が、信号の生成のためにトランスデューサー(例えば、回折格子電気化学センサーなど)に結合されるが、他のものにおいて、信号は、固相抗体とは空間的に別個のトランスデューサーによって生成される(例えば、励起光源および光検出器を利用する蛍光光度計)。この列挙は、限定するようには意味されない。抗体に基づいたバイオセンサーも、標識された分子の必要性を任意に排除する分析物の存在または量を決定するために利用されうる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、1以上の腎臓損傷マーカーの測定による、腎機能の損傷、腎機能減少、および/または急性腎不全を患っている、あるいは患うリスクのある対象における、診断、鑑別診断、リスク階級化、監視、分類、および、治療計画の決定のための方法ならびに組成物に関する。様々な実施形態において、可溶性P−セレクチン、タンパク質NOVホモログ、可溶性上皮増殖因子受容体、ネトリン−4、ハプトグロビン、熱ショックタンパク質β−1、α−1−アンチトリプシン、白血球エラスターゼ、可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6、可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6、可溶性細胞間接着分子2、カスパーゼ−3(および、最も好ましくは活性型カスパーゼ−3)、および、可溶性血小板内皮細胞接着分子からなる群から選択される1以上のマーカー、あるいは、それに関連する1以上のマーカーの測定された濃度は、対象の腎状態に相関される。
【0050】
本文書の目的上、以下の定義を適用する:
本明細書で使用されるように、「腎機能の損傷」は、腎機能の測定における急激な(14日以内、好ましくは7日以内、より好ましくは72時間以内、そして依然としてより好ましくは48時間以内)測定可能な減少である。そのような損傷は、例えば、糸球体濾過率または推定GFRの低下、尿量の減少、血清クレアチニンの増加、血清シスタチンCの増加、腎置換療法の必要性などによって特定され得る。「腎機能における改善」は、腎機能の測定における急激な(14日以内、好ましくは7日以内、より好ましくは72時間以内、そして依然としてより好ましくは48時間以内)測定可能な増加である。GFRを測定および/または推定するための好ましい方法は、本明細書において以下で説明される。
本明細書において使用されるように、「腎機能減少」は、血清クレアチニンにおける0.1mg/dL以上(≧8.8μmol/L)の絶対的増加、血清クレアチニンにおける20%(ベースラインから1.2倍)以上のパーセンテージ増加、あるいは、尿量の減少(1時間当たり0.5mL/kg未満と記述される乏尿)によって特定される腎臓機能における、急激な(14日以内、好ましくは7日以内、より好ましくは72時間以内、そして依然としてより好ましくは48時間以内)減少である。
本明細書において使用されるように、「急性腎不全」または「ARF」は、血清クレアチニンにおける0.3mg/dL以上(≧26.4μmol/L)の絶対的増加、血清クレアチニンにおける50%(ベースラインから1.5倍)以上のパーセンテージ増加、または、尿量の減少(少なくとも6時間における1時間当たり0.5mL/kg未満と記述される乏尿)によって特定される腎臓機能における、急激な(14日以内、好ましくは7日以内、より好ましくは72時間以内、そして依然としてより好ましくは48時間以内)減少である。この用語は、「急性腎臓損傷」または「AKI」と同義である。
【0051】
この点において、熟練者は、イムノアッセイから得られた信号は、1以上の抗体と、標的生体分子(すなわち分析物)と、抗体が結合する必要なエピトープを含有するポリペプチドとの間で形成された複合体の直接的な結果であるということを理解するであろう。そのようなアッセイは、完全長のバイオマーカーを検出することができ、このアッセイ結果は関心のバイオマーカーの濃度として表されるが、アッセイからの信号は実際のところ、サンプル中に存在する全てのそのような「免疫反応性」ポリペプチドの結果である。バイオマーカーの発現は、タンパク質測定(例えばドットブロット、ウェスタンブロット、クロマトグラフ法、質量分析など)、および核酸測定(mRNA定量)を含む、イムノアッセイ以外の手段によっても決定されうる。この列挙は限定するようには意味されない。
【0052】
本明細書において使用されるように、用語「P−セレクチン」は、P−セレクチン前駆体から誘導された生物学的サンプル中に存在する1以上のポリペプチドに言及する(スイスプロットP16109(配列ID番号:1))。
【表2】

【0053】
最も好ましくは、p−セレクチンアッセイは、p−セレクチンの1以上の可溶形態を検出する。P−セクレチンは、大きな細胞外ドメインを有する単一パスI型膜タンパク質であり、そのほとんどまたは全ては、膜貫通ドメインの全てまたは一部を除去する代替的スプライシング現象によるか、あるいは、膜結合型のタンパク質分解によって、生成されたp−セレクチンの可溶形態で存在する。イムノアッセイの場合、この細胞外ドメイン内のエピトープに結合する1以上の抗体は、これらの可溶形態を検出するために使用されうる。以下のドメインは、p−セレクチンにおいて特定されている。
残基 長さ ドメインID
1-41 41 シグナル配列
42-830 789 p−セレクチン
42-771 730 細胞外
772-795 24 膜貫通
796-830 35 細胞質
【0054】
本明細書において使用されるように、用語「タンパク質NOVホモログ」は、タンパク質NOVホモログ前駆体から誘導された生体学的サンプル中に存在する1以上のポリペプチドに言及する(スイスプロットP48745(配列ID番号:2))。
【表3】

【0055】
以下のドメインは、タンパク質NOVホモログにおいて特定されている。
残基 長さ ドメインID
1-31 31 シグナル配列
32-357 326 タンパク質NOVホモログ
【0056】
本明細書において使用されているように、用語「上皮増殖因子受容体」は、上皮増殖因子受容体前駆体から誘導された生体学的サンプル中に存在する1以上のポリペプチドに言及する(スイスプロットP00533(配列ID番号:3))。
【表4】

【0057】
最も好ましくは、上皮増殖因子受容体アッセイは、上皮増殖因子受容体の1以上の可溶形態を検出する。上皮増殖因子受容体は、大きな細胞外ドメインを有する単一パスI型膜タンパク質であり、そのほとんどまたは全ては、膜貫通ドメインの全てまたは一部を除去する代替的スプライシング現象によるか、あるいは、膜結合型のタンパク質分解によって、生成された上皮増殖因子受容体の可溶形態で存在する。イムノアッセイの場合、この細胞外ドメイン内のエピトープに結合する1以上の抗体は、これらの可溶形態を検出するために使用されうる。以下のドメインは、上皮増殖因子受容体において特定されている。
残基 長さ ドメインID
1-24 24 シグナル配列
25-1210 1186 上皮増殖因子受容体
25-645 621 細胞外
646-668 23 膜貫通
669-1210 542 細胞質
【0058】
本明細書において使用されるように、用語「ネトリン−4」は、ネトリン−4前駆体から誘導された生体学的サンプル中に存在する1以上のポリペプチドに言及する(スイスプロットQ9HB63(配列ID番号:4))。
【表5】

【0059】
以下のドメインは、ネトリン−4において特定されている。
残基 長さ ドメインID
1-18 18 開始メチオニン
19-628 610 ネトリン−4
【0060】
本明細書において使用されているように、用語「ハプトグロビン」は、ハプトグロビン前駆体から誘導された生体学的サンプル中に存在する1以上のポリペプチドに言及する(スイスプロットP00738(配列ID番号:5))。
【表6】

【0061】
以下のドメインは、ハプトグロビンにおいて特定されている。
残基 長さ ドメインID
1-18 18 シグナル配列
19-406 388 ハプトグロビン
19-160 142 ハプトグロビンα鎖
162-406 245 ハプトグロビンβ鎖
【0062】
本明細書において使用されているように、用語「α−1−アンチトリプシン」は、α−1−アンチトリプシン前駆体から誘導された生体学的サンプル中に存在する1以上のポリペプチドに言及する(スイスプロットP01009(配列ID番号:6))。
【表7】

【0063】
以下のドメインは、α−1−アンチトリプシンにおいて特定されている。
残基 長さ ドメインID
1-24 24 シグナル配列
25-418 394 α−1−アンチトリプシン
【0064】
本明細書において使用されているように、用語「白血球エラスターゼ」は、白血球エラスターゼ前駆体から誘導された生体学的サンプル中に存在する1以上のポリペプチドに言及する(スイスプロットP08246(配列ID番号:7))。
【表8】

【0065】
以下のドメインは、白血球エラスターゼにおいて特定されている。
残基 長さ ドメインID
1-27 315 シグナル配列
28-29 2 プロペプチド
30-267 238 白血球エラスターゼ
【0066】
本明細書において使用されているように、用語「腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6」は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6前駆体から誘導された生体学的サンプル中に存在する1以上のポリペプチドに言及する(スイスプロットP25445(配列ID番号:8))。
【表9】

【0067】
最も好ましくは、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6アッセイは、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6の1以上の可溶形態を検出する。腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6は、大きな細胞外ドメインを有する単一パスI型膜タンパク質であり、そのほとんどまたは全ては、膜貫通ドメインの全てまたは一部を除去する代替的スプライシング現象によるか、あるいは、膜結合型のタンパク質分解によって、生成された腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6の可溶形態で存在する。イムノアッセイの場合、この細胞外ドメイン内のエピトープに結合する1以上の抗体は、これらの可溶形態を検出するために使用されうる。以下のドメインは、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6において特定されている。
残基 長さ ドメインID
1-25 25 シグナル配列
26-335 310 腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6
26-173 148 細胞外
174-190 17 膜貫通
191-335 145 細胞質
【0068】
本明細書において使用されるように、用語「腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6」は、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6前駆体から誘導された生体学的サンプル中に存在する1以上のポリペプチドに言及する(スイスプロットP48023(配列ID番号:9))。
【表10】

【0069】
最も好ましくは、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6アッセイは、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6の1以上の可溶形態を検出する。腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6は、大きな細胞外ドメインを有する単一パスII型膜タンパク質であり、そのほとんどまたは全ては、膜貫通ドメインの全てまたは一部を除去する代替的スプライシング現象によるか、あるいは、膜結合型のタンパク質分解によって、生成された腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6の可溶形態で存在する。イムノアッセイの場合、この細胞外ドメイン内のエピトープに結合する1以上の抗体は、これらの可溶形態を検出するために使用されうる。以下のドメインは、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6において特定されている。
残基 長さ ドメインID
1-281 281 腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6、膜結合型
130-281 152 腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6、可溶形態
1-180 180 細胞質
81-102 22 膜アンカー信号
103-281 179 細胞外
【0070】
本明細書において使用されるように、用語「細胞間接着分子2」は、細胞間接着分子2前駆体から誘導された生体学的サンプル中に存在する1以上のポリペプチドに言及する(スイスプロットP13598(配列ID番号:10))。
【表11】

【0071】
最も好ましくは、細胞間接着分子2アッセイは、細胞間接着分子2の1以上の可溶形態を検出する。細胞間接着分子2は、大きな細胞外ドメインを有する単一パスI型膜タンパク質であり、そのほとんどまたは全ては、膜貫通ドメインの全てまたは一部を除去する代替的スプライシング現象によるか、あるいは、膜結合型のタンパク質分解によって、生成された細胞間接着分子2の可溶形態で存在する。イムノアッセイの場合、この細胞外ドメイン内のエピトープに結合する1以上の抗体は、これらの可溶形態を検出するために使用されうる。以下のドメインは、細胞間接着分子2において特定されている。
残基 長さ ドメインID
1-21 21 シグナル配列
22-275 254 細胞間接着分子2
22-223 202 細胞外
224-248 25 膜貫通
249-275 27 細胞質
【0072】
本明細書において使用されるように、用語「カスパーゼ−3」は、カスパーゼ−3前駆体から誘導された生体学的サンプル中に存在する1以上のポリペプチドに言及する(スイスプロットP42574(配列ID番号:11))。
【表12】

【0073】
以下のドメインは、カスパーゼ−3において特定されている。
残基 長さ ドメインID
1-9 9 プロペプチド
10-28 19 プロペプチド
29-175 147 カスパーゼ−3 p17サブユニット
176-277 102 カスパーゼ−3 p12サブユニット
【0074】
適するアッセイは、カスパーゼ−3のp17サブユニットのみを認識しうるか、完全長カスパーゼ−3ではないがカスパーゼ−3のp12サブユニットのみを認識しうるか、完全長のカスパーゼ−3のみを認識しうるか、あるいは、1つのサブユニットおよび完全長カスパーゼ−3を認識しうる。この点に関して、熟練者は、イムノアッセイから得た信号は、1以上の抗体と、標的生体分子(すなわち分析物)と、抗体が結合する必要なエピトープを含有するポリペプチドとの間で形成された複合体の直接的な結果であるということを理解するであろう。そのようなアッセイは、完全長のカスパーゼ−3分子を検出することができ、このアッセイ結果はカスパーゼ−3の濃度として表されるが、アッセイからの信号は実際のところ、サンプル中に存在する全てのそのような「免疫反応性」ポリペプチドの結果である。
【0075】
本明細書において使用されるように、用語「血小板内皮細胞接着分子」は、血小板内皮細胞接着分子前駆体から誘導された生体学的サンプル中に存在する1以上のポリペプチドに言及する(スイスプロットP16284(配列ID番号:12))。
【表13】

【0076】
最も好ましくは、血小板内皮細胞接着分子アッセイは、血小板内皮細胞接着分子の1以上の可溶形態を検出する。血小板内皮細胞接着分子は、大きな細胞外ドメインを有する単一パスI型膜タンパク質であり、そのほとんどまたは全ては、膜貫通ドメインの全てまたは一部を除去する代替的スプライシング現象によるか、あるいは、膜結合型のタンパク質分解によって、生成された血小板内皮細胞接着分子の可溶形態で存在する。イムノアッセイの場合、この細胞外ドメイン内のエピトープに結合する1以上の抗体は、これらの可溶形態を検出するために使用されうる。以下のドメインは、血小板内皮細胞接着分子において特定されている。
残基 長さ ドメインID
1-27 27 シグナル配列
28-738 711 血小板内皮細胞接着分子
28-601 574 細胞外
602-620 19 膜貫通
621-738 118 細胞質
【0077】
本明細書において使用されるように、用語「熱ショックタンパク質β−1」は、熱ショックタンパク質β−1前駆体から誘導された生体学的サンプル中に存在する1以上のポリペプチドに言及する(スイスプロットP04792(配列ID番号:13))。
【表14】

【0078】
本明細書において使用されるように、用語「上皮増殖因子受容体」は、上皮増殖因子受容体前駆体から誘導された生体学的サンプル中に存在する1以上のポリペプチドに言及する(スイスプロットP00533(配列ID番号:14))。
【表15】

【0079】
最も好ましくは、上皮増殖因子受容体アッセイは、上皮増殖因子受容体の1以上の可溶形態を検出する。上皮増殖因子受容体は、大きな細胞外ドメインを有する単一パスI型膜タンパク質であり、そのほとんどまたは全ては、膜貫通ドメインの全てまたは一部を除去する代替的スプライシング現象によるか、あるいは、膜結合型のタンパク質分解によって、生成された上皮増殖因子受容体の可溶形態で存在する。イムノアッセイの場合、この細胞外ドメイン内のエピトープに結合する1以上の抗体は、これらの可溶形態を検出するために使用されうる。以下のドメインは、上皮増殖因子受容体において特定されている。
残基 長さ ドメインID
1-24 24 シグナル配列
25-1210 1186 上皮増殖因子受容体
25-645 621 細胞外
646-668 23 膜貫通
669-1210 542 細胞質
【0080】
本明細書において使用されているように、用語、分析物の「存在または量に対する信号に関連する」は、この理解を反映する。アッセイ信号は典型的に、関心の分析物の既知濃度を使用して計算される標準曲線の使用により、分析物の存在または量に関連する。この用語が本明細書において使用されるように、アッセイが生理的に適切な濃度の分析物の存在または量を示す検出可能な信号を生成することができる場合、アッセイは、分析物を「検出するように構成されている」。抗体エピトープは、約8アミノ酸であるので、関心のマーカーを検出するように構成されているイムノアッセイはまた、マーカー配列に関連するポリペプチドを、それらポリペプチドがアッセイで使用される1または複数の抗体に結合する必要がある(1または複数の)エピトープを含有する限り、検出するであろう。用語「関連するマーカー」は、本明細書において説明される腎臓損傷マーカーのうちの1つなどのバイオマーカーに関して本明細書において使用される場合、特定のマーカー、またはそのマーカーそれ自体のための代理として、もしくは独立バイオマーカーとして、検出されうるその生合成親(biosynthetic parent)の、1以上の断片、変異体などに言及する。この用語はまた、結合タンパク質、受容体、ヘパリン、脂質、糖など追加種と複合体を形成するバイオマーカー前駆体から誘導される、生物学的サンプル中に存在する1以上のポリペプチドに言及する。
【0081】
用語「陽性進行(positive
going)」マーカーは、この用語が本明細書において使用される場合、疾患または病気を患っていない対象に対して、その疾患または病気を患っている対象において上昇されると決定されたマーカーに言及する。用語「陰性進行」マーカーは、この用語が本明細書において使用される場合、疾患または病気を患っていない対象に対して、その疾患または病気を患っている対象において減少されると決定されたマーカーに言及する。
【0082】
用語「対象」は本明細書において使用される場合、ヒト、またはヒト以外の生命体に言及する。ゆえに、本明細書において説明される方法および組成物は、ヒトおよび獣医学的疾患の両方に適用可能である。さらに、対象は生存している生命体が好ましいが、本明細書において説明される発明は、死後分析にも使用されうる。好ましい対象はヒトであり、本明細書において使用される場合最も好ましくは「患者」であり、疾患または病気に対する医学的ケアを受けている生存しているヒトに言及する。これは、病態の徴候について調査されている、明確な疾病に罹っていない人物を含む。
【0083】
好ましくは、分析物は、サンプルにおいて測定される。そのようなサンプルは、対象から得られうるか、あるいは、対象に提供されるように意図される生物材料から得られうる。例えば、サンプルは、対象へ移植可能と評価された腎臓、および、先在する障害に対して腎臓を評価するために使用される測定分析物から得られうる。好ましいサンプルは体液サンプルである。
【0084】
用語「体液サンプル」は、本明細書において使用される場合、患者または移植ドナーなど関心の対象の診断、予後、分類、または評価の目的のために得られた体液のサンプルに言及する。幾つかの実施形態において、そのようなサンプルは、進行中の病気の転帰、または病気への治療計画の効果を決定する目的のために得られうる。好ましい体液サンプルは、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、唾液、痰、および胸水貯留を含む。加えて、当業者は、いくつかの体液サンプルが、分画または精製手順、例えば全血の血清成分もしくは血漿成分への分離に続いて、より容易に分析されるであろうことを認識するであろう。
【0085】
用語「診断」は本明細書において使用される場合、患者が所与の疾患または病気を患っているか否かの可能性(見込み)を熟練者が推定および/または決定することができる方法に言及する。本発明の場合において、「診断」は、サンプルが得られアッセイされた対象に対して急性腎損傷またはARFの診断(すなわち、発生または不発生)に到達するために、任意に他の臨床特徴と共に、本発明の腎臓損傷マーカーについてのアッセイ、最も好ましくはイムノアッセイの結果を使用することを含む。そのような診断が「決定される」ことは、診断が100%正確であるということを暗示するようには意味されない。多くのバイオマーカーが多数の病気を示す。熟練した臨床医は、情報の空白にバイオマーカー結果を使用しないが、むしろ試験結果は、診断に到達するために他の臨床指標と共に使用される。ゆえに、所定の診断閾値の一方における測定されたバイオマーカーレベルは、所定の診断閾値の他方における測定されたレベルと比較して、対象における疾患の発生のより高い見込みを示す。
【0086】
同様に、予後リスクは、所与の過程または転帰が起こるだろう可能性(「見込み」)を知らせる。ひいては死亡率増加の可能性(例えば、腎機能悪化、将来的なARF、または死)に関連する、予後指標のレベルまたはレベルにおける変化は、患者における有害転帰の「見込み増加を示す」として見なされる。
【0087】
マーカーアッセイ
【0088】
一般的に、イムノアッセイは、関心のバイオマーカーを含有するか、または含有すると疑われるサンプルを、そのバイオマーカーに特異的に結合する少なくとも1つの抗体と接触させることを伴う。サンプル中のポリペプチドの抗体への結合によって形成された複合体の存在または量を示す信号が次いで生成される。この信号は次いで、サンプル中のバイオマーカーの存在または量に関連される。バイオマーカーの検出および分析のために、多数の方法および装置が熟練者によく知られている。例えば、米国特許第6,143,576号;同第6,113,855号;同第6,019,944号;同第5,985,579号;同第5,947,124号;同第5,939,272号;同第5,922,615号;同第5,885,527号;同第5,851,776号;同第5,824,799号;同第5,679,526号;同第5,525,524号、および、同第5,480,792号、ならびに、イムノアッセイ・ハンドブック(The Immunoassay Handbook)、David Wild編集、ストックトン・プレス(Stockton Press)、ニューヨーク、1994年を参照されたい。これら各々の全ての表、図面および請求項を含む内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0089】
当技術分野において知られているアッセイ装置および方法は、関心のバイオマーカーの存在または量に関連する信号を生成するために、様々なサンドイッチ、競合的、または、非競合的アッセイ形式において標識された分子を利用することができる。適するアッセイ形式は、クロマトグラフ方法、質量分析方法、およびタンパク質「ブロッティング」方法も含む。追加的に、バイオセンサーおよび光学イムノアッセイなど幾つかの方法および装置が、標識された分子を必要とせずに分析物の存在または量を決定するために利用されうる。例えば、米国特許第5,631,171号;および同第5,955,377号を参照されたい。これら各々の全ての表、図面および請求項を含む内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。当業者は、限定するものではないがBeckman ACCESS(登録商標)、Abbott AXSYM(登録商標)、Roche ELECSYS(登録商標)、Dade Behring STRATUS(登録商標)システムを含むロボット器具類が、イムノアッセイを実施することができるイムノアッセイ分析器であるということも認識する。しかしながら、例えば酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、競合的結合アッセイなど、任意の適するイムノアッセイが利用されうる。
【0090】
抗体または他のポリペプチドは、アッセイでの使用のために様々な固体担体上に固定化されうる。特異的結合メンバーを固定化するために使用されうる固相は、固相結合アッセイにおいて固相として開発および/または使用されたものを含む。適する固相の例は、濾過膜、セルロースを基にした紙、ビーズ(重合体、ラテックス、および常磁性の粒子を含む)、ガラス、シリコンウェーハー、微粒子、ナノ粒子、TentaGel、AgroGel、PEGAゲル、SPOCCゲル、ならびに、多ウェルプレートを含む。アッセイストリップは、固体担体上のアレイの1または複数の抗体を被覆することによって調製されうる。このストリップは次いで、有色点など測定可能信号を生成するために、試験サンプル内に浸され、次いで洗浄および検出ステップによりすばやく処理されうる。抗体または他のポリペプチドは、アッセイ装置表面に直接接合するか、あるいは、間接的結合によるかのいずれかで、アッセイ装置の特定領域に結合されうる。後者の場合の例において、抗体または他のポリペプチドは、粒子または他の固体担体上に固定化され、その固体担体は装置表面に固定化されうる。
【0091】
生物学的アッセイは検出のための方法を必要とし、結果の定量のための最も一般的な方法のうちの1つは、研究されている生物系における成分のうちの1つに対して親和性を有するタンパク質または核酸に検出可能標識を接合させることである。検出可能標識は、それら自体が検出可能である分子(例えば、蛍光部分、電気化学標識、金属キレートなど)、ならびに、検出可能な反応生成物の産生によって(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなどの酵素)または、それ自体が検出可能でありうる特異的結合分子によって(例えばビオチン、ジゴキシゲニン、マルトース、オリゴヒスチジン、2,4−ジニトロベンゼン(2,4-dintrobenzene)、ヒ酸フェニル(phenylarsenate)、ssDNA、dsDNAなど)、間接的に検出されうる分子を含み得る。
【0092】
固相および検出可能標識の接合体の調製はしばしば、化学クロスリンカーの使用を含む。クロスリンカー試薬は、少なくとも2つの反応基を含有し、概して(同一反応基を含有する)ホモ官能性クロスリンカー(homofunctional cross-linker)と、(同一でない反応基を含有する)ヘテロ官能性クロスリンカー(heterofunctional cross-linker)とに分けられる。アミンを介してスルフヒドリルを結合する、あるいは非特異的に反応する、ホモ二官能性クロスリンカーは、多くの商業的供給源から入手可能である。マレイミド、ハロゲン化アルキルおよびアリール、α−ハロアシル、ならびにピリジルジスルフィドは、チオール反応基である。マレイミド、ハロゲン化アルキルおよびアリール、ならびにα−ハロアシルは、チオールエーテル結合を結合するためにスルフヒドリルと反応し、一方でピリジルジスルフィドは、混合ジスルフィドを生成するためにスルフヒドリルと反応する。ピリジルジスルフィド生成物は、開裂可能である。イミドエステルも、タンパク質−タンパク質クロスリンクのために非常に有用である。成功した接合のために各々異なる特性を兼ね備える、様々なヘテロ二官能性クロスリンカーが、市販されている。
【0093】
幾つかの態様において、本発明は、説明された腎臓損傷マーカーの分析のためのキットを提供する。キットは、腎臓損傷マーカーの少なくとも1つの抗体を含む少なくとも1つの試験サンプルの分析のための試薬を含む。キットはまた、本明細書において説明される診断および/または予後相関のうちの1以上を実施するための装置および指示書を含むことができる。好ましいキットは分析物のために、サンドイッチアッセイを実施するための抗体の対、または、競合的アッセイを実行するための標識された種を含むであろう。好ましくは、抗体の対は、固相に接合される第1抗体、および、検出可能標識に接合される第2抗体を含み、第1抗体および第2抗体の各々は、腎臓損傷マーカーに結合する。最も好ましくは、抗体の各々は、モノクロナール抗体である。キットの使用のため、および相関を実施するための指示書は、ラベル付けの形態であり得、そのラベル付けは、その製造、輸送、販売、または使用の間の任意の時点で、キットに付着されるか、あるいは別様にキットに添付する任意の記述または記録された材料に言及する。例えば、用語、ラベル付けは、広告リーフレットおよびパンフレット、包装材料、指示書、オーディオまたは映像カセットテープ、コンピューター・ディスク、ならびにキットに直接刷り込まれた記述を含む。
【0094】
抗体
【0095】
用語「抗体」は本明細書において使用される場合、抗原もしくはエピトープに特異的に結合できる1または複数の免疫グロブリン遺伝子またはその断片から誘導されるか、それらによって後にモデル化されるか、あるいは実質的にコード化される、ペプチドまたはポリペプチドに言及する。例えば基礎免疫学(Fundamental Immunology)第3版、W.E.Paul編集、レイブン・プレス(Raven Press)、ニューヨーク(1993年);ウィルソン(Wilson)(1994年;ジャーナル・オブ・イミュノロジカル・メソッズ(J. Immunol. Methods)175:267〜273;Yarmush(1992年)ジャーナル・オブ・バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・メソッズ(J. Biochem. Biophys. Methods)25:85〜97を参照されたい。用語、抗体は、抗原に結合する能力を保有する、抗原結合部分、すなわち「抗原結合部位」(例えば、フラグメント、サブシーケンス、相補性決定領域(CDR))を含み、それらは(i)VL、VH、CL、およびCHlドメインからなる一価フラグメントである、Fabフラグメント;(ii)ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋によってリンクされた2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントである、F(ab’)2フラグメント;(iii)VHおよびCHlドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単位アームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Wardらによる(1989年)ネイチャー(Nature)、341:544〜546)、ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)を含む。単鎖抗体もまた、参照により用語「抗体」に含まれる。
【0096】
本明細書において説明されるイムノアッセイで使用される抗体は好ましくは、本発明の腎臓損傷マーカーに特異的に結合する。用語「特異的に結合する」は、上記で注記されたように抗体は抗体が結合するエピトープを表す任意のポリペプチドに結合するので、抗体はその意図される標的に排他的に結合するということを示すようには意図されない。むしろ、抗体の意図される標的に対する親和性が、適切なエピトープを表さない非標的分子に対する親和性と比較したときに、約5倍大きい場合に、抗体は「特異的に結合する」。好ましくは、抗体の親和性は、その非標的分子に対する親和性よりも、標的分子に対して少なくとも約5倍、好ましくは10倍、より好ましくは25倍、さらにより好ましくは50倍、そして最も好ましくは100倍以上大きいであろう。好ましい実施形態において、好ましい抗体は、少なくとも約10−1、好ましく約10−1から約10−1の間、約10−1から約1010−1の間、または約1010−1から約1012−1の間の親和性により結合する。
【0097】
親和性は、K=koff/kon(koffは、解離速度定数であり、konは、会合速度定数である、Kは、平衡定数である)として計算される。親和性は、様々な濃度(c)において標識リガンドの結合画分(r)を測定することによって平衡状態で決定されうる。データは、スキャッチャードの式:r/c=K(n−r)を使用してグラフ化される:式中、r=平衡状態における、結合リガンドのモル/受容体のモル;c=平衡状態における、遊離リガンド濃度;K=平衡会合定数;および、n=1受容体分子当たりのリガンド結合部位数である。グラフ分析によって、r/cは、X軸上のrと対比して、Y軸上にプロットされており、このようにしてスキャッチャードプロットを生成する。スキャッチャード分析による抗体親和性測定は、当技術分野でよく知られている。例えば、van Erpらによる、ジャーナル・オブ・イムノアッセイ(J. Immunoassay)12:425〜43、1991年;NelsonおよびGriswoldによる、コンピューター・メソッズ・アンド・プログラムス・イン・バイオメディスン(Comput. Methods Programs Biomed.)27:65〜8、1988年を参照されたい。
【0098】
用語「エピトープ」は、抗体に特異的に結合することができる抗原決定基に言及する。エピトープは通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的活性表面群からなり、通常特異的な三次元構造特徴、および特異的な電荷特徴を有する。立体構造および非立体構造エピトープは、変性溶媒の存在下で、前者への結合は失われ、後者への結合は失われないということで識別される。
【0099】
多数の刊行物が、選択された分析物への結合のためのポリペプチドのライブラリを生成およびスクリーニングするために、ファージディスプレイ技術の使用を議論している。例えば、Cwirlaらによる、米国科学アカデミー紀要(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)87,6378〜82,1990年;Devlinらによる、サイエンス(Science)249、404〜6、1990年、ScottおよびSmithによる、サイエンス249、386〜88、1990年;および、Ladnerらによる米国特許第5,571,698号を参照されたい。ファージディスプレイ方法の基本概念は、スクリーニングされるべきポリペプチドをコード化するDNAとそのポリペプチドとの間の物理的結合の確立である。この物理的結合は、ポリペプチドをコード化するファージゲノムを封入するカプシドの一部としてそのポリペプチドを表す、ファージ粒子によって提供される。ポリペプチドとそれらの遺伝子材料との間の物理的結合の確立は、異なるポリペプチドを有する非常に多数のファージの同時マススクリーニングを可能にする。標的に親和性を有するポリペプチドを提示するファージは、その標的に結合し、これらのファージは、標的に対する親和性スクリーニングによって濃縮される。これらのファージから提示されたポリペプチドの同一性は、それらそれぞれのゲノムから決定されうる。これらの方法を使用して、所望の標的に対する結合親和性を有するとして特定されたポリペプチドは次いで、従来手段によって大量に合成されうる。例えば、その全ての表、図面および請求項を含む内容全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,057,098号を参照されたい。
【0100】
これらの方法によって生成される抗体は次いで、まず精製された関心のポリペプチドを用いて親和性および特異性についてスクリーニングし、必要に応じて、抗体の親和性および特異性に対する結果と、結合から排除されるよう望まれるポリペプチドとを比較することによって、選択されうる。スクリーニング手順は、マイクロタイタープレートの別個のウェル内の精製されたポリペプチドの固定化を伴うことができる。潜在的な抗体または抗体群を含有する溶液は次いで、それぞれのマイクロタイターウェル内に置かれ、約30分間から2時間インキュベートされる。マイクロタイターウェルは次いで洗浄され、標識された二次抗体(例えば、産生された抗体がマウス抗体である場合、アルカリホスファターゼに接合された抗マウス抗体)がウェルに加えられ、約30分間インキュベートされ、次いで洗浄される。基質がウェルに加えられ、固定化されたポリペプチドに対する抗体が存在する場所で呈色反応が現れるであろう。
【0101】
そのように特定された抗体は次いで、選択されたアッセイ設計において親和性および特異性についてさらに分析されうる。標的タンパク質についてのイムノアッセイの開発において、精製された標的タンパク質は、選択された抗体を使用したイムノアッセイの感受性および特異性を判断するための標準として働く。様々な抗体の結合親和性は異なることがあり、(例えばサンドイッチアッセイにおいて)幾つかの抗体対は立体的に互いに干渉するなどがあり得るので、抗体のアッセイ性能は、抗体の絶対的な親和性および特異性よりも重要な測定でありうる。
アッセイ相関
【0102】
用語「相関すること」はバイオマーカーの使用に関連して本明細書において使用される場合、患者における(1または複数の)バイオマーカーの存在または量を、所与の病気を患っていると分かったか、または患うリスクがあると分かった人物;あるいは、所与の病気に罹っていないと分かった人物における、そのバイオマーカーの存在もしくは量と比較することに言及する。しばしばこれは、バイオマーカー濃度の形態にあるアッセイ結果を、疾患の発生もしくは不発生、またはいくらかの将来的な転帰の見込みを示すために選択された所定の閾値と比較する形態をとる。
【0103】
診断閾値を選択することは、とりわけ、疾患の可能性の考慮、異なる試験閾値における真偽診断の分配、および、診断に基づく治療の結果(または治療の失敗)の推定を伴う。例えば、高度に効果的であり、低いレベルのリスクを有する特定療法を施すことを考慮する場合、臨床医がかなりの診断の不確実性を受け入れることができるので、少数の試験しか必要とされない。一方で、治療選択肢が、有効性がより低くより危険である状況において、臨床医はしばしば、より高い程度の診断確実性を必要とする。ゆえに、費用対効果分析が診断閾値を選択することにおいて含まれる。
【0104】
適する閾値は、様々な方法で決定されうる。例えば、心筋トロポニンを使用する急性心筋梗塞の診断に対する1つの推奨される診断閾値は、正常集団において見られる濃度の第97.5百分位数である。別の方法は、同一患者からの連続サンプルを検査することであり得、ここで先の「ベースライン」結果が、バイオマーカーレベルにおける経時変化の監視に使用される。
【0105】
集団研究もまた、決定閾値を選択するために使用されうる。受信者動作特徴(「ROC」)が、レーダー画像の分析のために第二次世界大戦中に開発された信号検出理論の分野から生まれ、ROC分析はしばしば、「疾患のない」サブ集団から「疾患のある」サブ集団を最良に識別することができる閾値を選択するために使用される。この場合の偽陽性は、その人物の試験は陽性であるが、実際は疾患に罹っていない場合に起こる。一方で、偽陰性は、その人物の試験は陰性で、彼らは健康であると示唆される場合で、実際には彼らは疾患に罹っている場合に起こる。ROC曲線を描くために、真陽性率(TPR)、および偽陽性率(FPR)が、決定閾値が連続的に変更されるように決定される。TPRは感受性と同等で、FPRは1−特異性と等しいので、ROCグラフは時折、感受性対(1−特異性)プロットと呼ばれる。完璧な試験は、1.0のROC曲線下面積を有するであろうし、ランダム試験は、0.5の面積を有するであろう。閾値は、許容可能レベルの特異性および感受性を提供するように選択される。
【0106】
この文脈において、「疾患のある」は、1つの特徴(疾患または病気の存在、あるいは、幾つかの転帰の発生)を有する集団に言及するように意味され、「疾患のない」は、その特徴を欠く集団に言及するように意味される。単一の決定閾値がそのような方法の最も単純な適用であるが、複数の決定閾値も使用されうる。例えば、第1閾値未満で、疾患の非存在が比較的高い信頼度で割り当てられうるし、第2閾値を上回ると疾患の存在も比較的高い信頼度で割り当てられうる。2つの閾値の間には不確定が考慮されうる。これは、実際には単なる例示であると意味される。
【0107】
閾値比較に加えて、アッセイ結果を患者分類(疾患の発生または不発生、転帰の見込みなど)に相関するための他の方法は、決定樹、規則設定、ベイジアン法、および、ニューラルネットワーク方法を含む。これらの方法は、ある対象が複数の分類のうちの1つの分類に属する程度を表す確率値を生み出すことができる。
【0108】
試験精度の測定は、Fischerらによるインテンシブ・ケア・メディスン(Intensive Care Med.)29:1043〜51、2003年に説明されているように得られ、所与のバイオマーカーの有効性を決定するために使用されうる。これらの測定は、感受性および特異性、予測値、尤度比、診断オッズ比、ならびにROC曲線面積を含む。ROCプロットの曲線下面積(「AUC」)は、分類指標が、ランダムに選択された陰性例よりも高くに、ランダムに選択された陽性例をランク付けるであろう可能性に等しい。ROC曲線下面積は、マン−ホイットニーのU検定、または、ウィルコクソン順位検定と同等であると考えられ得、マン−ホイットニーのU検定は、群が連続データのものである場合に考慮される2つの群において得られた評点の間の中央値差について試験するものである。
【0109】
上記で議論されたように、適する試験は、これらの様々な測定に対する以下の結果の1以上を示すことができる:0.2を超える対応する感受性、好ましくは0.3を超える、より好ましく0.4を超える、依然としてより好ましくは少なくとも0.5、さらにより好ましくは0.6、さらにより好ましくは0.7を超える、依然としてより好ましくは0.8を超える、より好ましくは0.9を超える、そして最も好ましくは0.95を超える対応する感受性を有する、0.5を超える特異性、好ましく少なくとも0.6、より好ましくは少なくとも0.7、依然としてより好ましくは少なくとも0.8、さらにより好ましくは少なくとも0.9、そして最も好ましくは少なくとも0.95の特異性;0.2を超える対応する特異性、好ましくは0.3を超える、より好ましくは0.4を超える、依然としてより好ましくは少なくとも0.5、さらにより好ましくは0.6、さらにより好ましくは0.7を超える、依然としてより好ましくは0.8を超える、より好ましくは0.9を超える、そして最も好ましくは0.95を超える対応する特異性を有する、0.5を超える感受性、好ましくは少なくとも0.6、より好ましくは少なくとも0.7、依然としてより好ましくは少なくとも0.8、さらにより好ましくは少なくとも0.9、そして最も好ましくは少なくとも0.95の感受性;少なくとも75%の特異性と組み合わされた少なくとも75%の感受性;0.5を超えるROC曲線面積、好ましくは少なくとも0.6、より好ましくは0.7、依然としてより好ましくは少なくとも0.8、さらにより好ましくは少なくとも0.9、そして最も好ましくは少なくとも0.95のROC曲線面積;1とは異なるオッズ比、好ましくは少なくとも約2以上または約0.5以下、より好ましくは少なくとも約3以上または約0.33以下、依然としてより好ましくは少なくとも約4以上または約0.25以下、さらにより好ましくは少なくとも約5以上または約0.2以下、そして最も好ましくは少なくとも約10以上または約0.1以下のオッズ比;1を超える陽性尤度(感受性/(1−特異性)で計算される)、少なくとも2、より好ましくは少なくとも3、依然としてより好ましくは少なくとも5、そして最も好ましくは少なくとも10の陽性尤度;および/または、1未満の陰性尤度((1−感受性)/特異性で計算される)、0.5以下、より好ましくは0.3以下、そして最も好ましくは0.1以下の陰性尤度。
【0110】
追加的臨床指標が、本発明の腎臓損傷マーカーアッセイ結果と組み合されうる。これらは、腎状態に関連する他のバイオマーカーを含む。例として以下のものを含み、以下は一般的なバイオマーカー名を列挙し、次にバイオマーカーまたはその親についてのスイスプロットエントリー番号が続いている:アクチン(P68133);アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(DPP4,P27487);α−1−酸性糖タンパク質1(P02763);α−1−グロブリン(P02760);アルブミン(P02768);アンギオテンシノゲナーゼ(レニン,P00797);アネキシンA2(P07355);β−グルクロニダーゼ(P08236);B−2−ミクログロブリン(P61679);β−ガラクトシダーゼ(P16278);BMP−7(P18075);脳性ナトリウム利尿ペプチド(proBNP,BNP−32,NTproBNP;P16860);カルシウム結合タンパク質β(S100−β,P04271);炭酸脱水酵素(Q16790);カゼインキナーゼ2(P68400);カテプシンB(P07858);セルロプラスミン(P00450);クラスタリン(P10909);補体C3(P01024);システインリッチタンパク質(CYR61,O00622);シトクロムC(P99999);上皮増殖因子(EGF,P01133);エンドセリン−1(P05305);Exosomalフェチュイン−A(P02765);脂肪酸結合タンパク質、心臓(FABP3,P05413);脂肪酸結合タンパク質、肝臓(P07148);フェリチン(軽鎖,P02793;重鎖P02794);フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ(Fructose-1,6-biphosphatase)(P09467);GRO−α(CXCL1,(P09341);成長ホルモン(P01241);肝細胞増殖因子(P14210);インスリン様増殖因子I(P01343);免疫グロブリンG;免疫グロブリン軽鎖(κおよびλ);インターフェロンγ(P01308);リゾチーム(P61626);インターロイキン1α(P01583);インターロイキン2(P60568);インターロイキン4(P60568);インターロイキン9(P15248);インターロイキン−12p40(P29460);インターロイキン13(P35225);
インターロイキン16(Q14005);L1細胞接着分子(P32004);乳酸デヒドロゲナーゼ(P00338);ロイシンアミノペプチダーゼ(P28838);メプリンA−αサブユニット(Q16819);メプリンA−βサブユニット(Q16820);ミッドカイン(P21741);MIP2−α(CXCL2,P19875);MMP−2(P08253);MMP−9(P14780);ネトリン−1(O95631);中性エンドペプチダーゼ(P08473);オステオポンチン(P10451);腎乳頭抗原1(RPA1);腎乳頭抗原2(RPA2);レチノール結合タンパク質(P09455);リボヌクレアーゼ;S100カルシウム結合タンパク質A6(P06703);血清アミロイドP成分(P02743);ナトリウム/水素交換アイソフォーム(NHE3,P48764);スペルミジン/スペルミンN1−アセチルトランスフェラーゼ(P21673);TGF−β1(P01137);トランスフェリン(P02787);トレフォイル因子3(TFF3,Q07654);Toll様タンパク質4(O00206);総タンパク;尿細管間質腎炎抗原(Q9UJW2);ウロモジュリン(タム−ホルスフォールタンパク質,P07911)。
【0111】
リスク階級化の目的のために、アディポネクチン(Q15848);アルカリホスファターゼ(P05186);アミノペプチダーゼN(P15144);カルビンジンD28k(P05937);シスタチンC(P01034);F1FO ATPアーゼの8サブユニット(P03928);γ-グルタミルトランスフェラーゼ(P19440);GSTa(α−グルタチオン−S−トランスフェラーゼ,P08263);GSTpi(グルタチオン−S−トランスフェラーゼP;GSTクラスπ;P09211);IGFBP−1(P08833);IGFBP−2(P18065);IGFBP−6(P24592);膜内在性タンパク質1(Itm1,P46977);インターロイキン6(P05231);インターロイキン8(P10145);インターロイキン18(Q14116);IP−10(10kDaインターフェロンγ誘導タンパク質,P02778);IRPR(IFRD1,O00458);イソバレリルCoA脱水素酵素(IVD,P26440);I−TAC/CXCL11(O14625);ケラチン19(P08727);Kim−1(A型肝炎ウイルス細胞受容体1,O43656);L−アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼ(P50440);レプチン(P41159);リポカリン2(NGAL,P80188);MCP−1(P13500);MIG(γインターフェロン誘導モノカインQ07325);MIP−1a(P10147);MIP−3a(P78556);MIP−1β(P13236);MIP−1d(Q16663);NAG(N−アセチル−β−D−グルコサミニダーゼ,P54802);
有機イオン輸送体(OCT2,O15244);オステオプロテゲリン(O14788);P8タンパク質(O60356);プラスミノーゲン活性化因子インヒビター1(PAI−1,P05121);ProANP(1−98)(P01160);プロテインホスファターゼ1β(PPI−β,P62140);Rab GDI−β(P50395);腎カリクレイン(Q86U61);膜内在性タンパク質のRT1.B−1(α)鎖(Q5Y7A8);可溶性TNF受容体スーパーファミリーメンバー1A(sTNFR−I,P19438);可溶性TNF受容体スーパーファミリーメンバー1B(sTNFR−II,P20333);組織メタロプロテアーゼ阻害物質3(TIMP−3,P35625);uPAR(Q03405)が、本発明の腎損傷マーカーアッセイ結果と組み合されうる。
【0112】
本発明の腎臓損傷マーカーアッセイ結果と組み合されうる他の臨床指標は、人口学的情報(例えば、体重、性別、年齢、人種)、病歴(例えば、家族歴、手術の種類、動脈瘤、うっ血性心不全、子癇前症、子癇、真性糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、蛋白尿、腎機能不全、または敗血症などの先在疾患、NSAID、シクロスポリン、タクロリムス、アミノグリコシド、ホスカルネット、エチレングリコール、ヘモグロビン、ミオグロビン、イホスファミド、重金属、メトトレキサート、放射線造影剤またはストレプトゾトシンなどの毒素曝露の種類)、臨床的変数(例えば、血圧、体温、呼吸速度)、リスク評点(APACHE評点、PREDICT評点、UA/NSTEMIについてのTIMIリスク評点、フレーミングハム・リスク評点)、尿中総タンパク量測定、糸球体濾過率、推定される糸球体濾過率、尿産生率、血清または血漿クレアチニン濃度、腎乳頭抗原1(RPA1)測定;腎乳頭抗原2(RPA2)測定、尿クレアチニン濃度、ナトリウム排泄分画、尿中ナトリウム濃度、尿クレアチニン対血清または血漿クレアチニン比、尿比重、尿浸透圧、尿中尿素窒素対血漿中尿素窒素比、血漿BUN対クレアチニン比、および/または、尿中ナトリウム/(尿中クレアチニン/血漿クレアチニン)として計算される腎不全指標を含む。腎臓損傷マーカーアッセイ結果と組み合されうる腎機能の他の測定は、本明細書において以下で説明され、また、ハリソン原理の内科学、第17版、マグロー・ヒル、ニューヨーク、1741〜1830頁、および、現代医学診断および治療2008、第47版、マグロー・ヒル、ニューヨーク、785〜815頁において説明されている。これら各々の内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0113】
この方法においてアッセイ結果/臨床指標を組み合わせることは、多変量ロジスティック回帰、対数線形モデリング、ニューラルネットワーク分析、mのうちのn分析、決定樹分析などの使用を含むことができる。この列挙は限定するようには意味されない。
【0114】
急性腎不全の診断
【0115】
上記で注記されたように、用語「急性腎(または腎臓)損傷」および「急性腎(または腎臓)不全」は本明細書において使用される場合、ベースライン値からの血清クレアチニンの変化の観点に部分的に定義される。ARFの大抵の定義は、血清クレアチニンの使用、およびしばしば尿量の使用を含む共通要素を有する。患者は、この比較において使用するための腎機能の利用可能なベースライン測定値を用いずに腎機能障害を示すことがある。そのような事象において、患者は最初に正常GFRを有していたと仮定することによってベースライン血清クレアチニン値を推定することができる。糸球体濾過率(GFR)は、腎(腎臓)糸球体毛細血管からボーマン嚢内へ濾過される単位時間当たりの流体量である。糸球体濾過率(GFR)は、血中で定常レベルを有し、かつ、腎臓によって自由に濾過されるが再吸収も分泌もされない、任意の化学物質を測定することによって計算されうる。GFRは典型的にmL/分の単位で表される。
【数1】

【0116】
GFRを体表面積に対して標準化することによって、1.73m当たりほぼ75〜100mL/分のGFRが想定されうる。したがって、測定された率は、計算可能な血液量から生じた尿中の物質量である。
【0117】
糸球体濾過率(GFRまたはeGFR)を計算または推定するために使用される幾つかの異なる技術が存在する。しかしながら、臨床診療において、クレアチニンクリアランスがGFRを側定するために使用される。クレアチニンは、身体によって自然に産生される(クレアチニンは、筋肉内に見出されるクレアチンの代謝産物である)。クレアチニンは、糸球体によって自由に濾過され、また非常に少量が尿細管によって活発に分泌され、そのためクレアチニンクリアランスは、実際のGFRを10〜20%過大に推定する。クレアチニンクリアランスが容易に測定されることを考えれば、この誤差の範囲は許容可能である。
【0118】
クレアチニンクリアランス(CCr)は、クレアチニンの尿中濃度(UCr)、尿流量(V)、およびクレアチニンの血漿中濃度(PCr)の値が既知であれば計算されうる。尿中濃度と尿流量の積がクレアチニンの排出率をもたらすので、クレアチニンクリアランスはまた、その血漿中濃度で割られた排出率(UCr×V)であると言われる。これは一般的に以下のように数学的に表される。
【数2】

【0119】
一般的に、ある朝の空の膀胱から明朝の膀胱の内容物まで24時間の採尿が企てられ、次いで比較血液試験が行われる。
【数3】

【0120】
異なる大きさの人々の間で結果を比較することを可能にするために、CCrはしばしば、体表面積(BSA)に対して補正され、平均的な大きさの人と比較してmL/分/1.73m2で表される。大抵の成人は1.7(1.6〜1.9)に近づくBSAを有するが、極度の肥満または極度に細い患者は、彼らの実際のBSAに対して補正されたCCrを有するべきである。
【数4】

【0121】
クレアチニンクリアランス測定の精度は(収集が完全な場合でさえ)、糸球体濾過率(GFR)が低下するとクレアチニン分泌は増加され、ゆえに血清クレアチニンの上昇はより少ないので制限される。ゆえに、クレアチニン排出は、濾過される負荷よりもはるかに多いので、結果として(2倍ほどの差の)GFRの潜在的に大きな過剰推定をもたらす。しかしながら、臨床目的にとって、腎機能が安定であるか、あるいは悪化しているか良くなっているかを決定することは重要である。これはしばしば、血清クレアチニン単独を監視することによって決定される。クレアチニンクリアランスのように、血清クレアチニンは、ARFの非定常状態の状況においてGFRの正確な反映ではないだろう。それにもかかわらず、血清クレアチニンがベースラインから変化する程度は、GFRにおける変化を反映するであろう。血清クレアチニンは、直ちにかつ容易に測定されて腎機能に対して特異的である。
【0122】
mL/kg/時を基にする尿量において尿量を決定する目的のために、1時間毎の尿の収集および測定が適切である。例えば、24時間の累積尿量が利用可能であり、患者の体重が提供されていない場合において、RIFLE尿量判断基準の微修正が説明されている。例えば、Bagshawらによる、ネフロ・ダイヤル・トランスプラント(Nephrol. Dial. Transplant.)23:1203〜1210、2008年は、平均患者体重70kgを仮定し、患者は以下に基づいてRIFLE分類に割り当てられる:
<35mL/時(危険)、<21mL/時(損傷)、または、<4mL/時(不全)
【0123】
治療計画の選択
【0124】
いったん診断が得られたら、臨床医は、例えば腎置換療法を開始すること、腎臓に障害を与えていると分かった化合物の送達を中断すること、腎臓移植、腎臓に障害を与えていると分かった手技を遅らせるか、または避けること、利尿剤投与を修正すること、目標に向けた療法を開始することなどの、診断に適合する治療計画を容易に選択することができる。熟練者は、本明細書において説明される診断方法に関連して議論される多数の疾患のための適切な治療に気づく。例えば、診断および療法のメルク・マニュアル(Merck Manual of Diagnosis and Therapy)第17版、メルク・リサーチ・ラボラトリーズ(Merck Research Laboratories)、ニュージャージー州ホワイトハウス・ステーション(Whitehouse Station, NJ)、1999年を参照されたい。加えて、本明細書において説明される方法および組成物は予後情報を提供するので、本発明のマーカーは、治療の経過を監視するために使用されうる。例えば、改善または悪化された予後状態は、特定の治療が有効であるか、あるいは有効でないということを示すことができる。
【0125】
当業者は、本発明は、本目的を実行し、言及された結果および利点、ならびに本明細書に固有なものを得るように良好に適合されるということを容易に認識する。本明細書において提供された例は、好ましい実施形態の代表であり、例示であり、本発明の範囲を限定するものと意図されない。
【0126】
実施例1:造影剤誘導ネフロパシーサンプル収集
【0127】
このサンプル収集研究の目的は、血管内造影剤を受ける前および受けた後に患者から血漿および尿および臨床データのサンプルを収集することである。ヨード造影剤の血管内投与を伴うX線撮影/血管造影手技を受けたほぼ250人の成人を登録する。本研究に登録されるために、各患者は、以下の包含基準の全てを満たさなければならず、かつ以下の除外基準のいずれも満たしてはならない。
包含基準
18歳以上の男女;
造影剤の血管内投与を伴うX線撮影/血管造影手技(CTスキャンまたは冠動脈インターベンションなど)を受けている;
造影剤投与後少なくとも48時間入院が予想される。
研究参加のための書面によるインフォームドコンセントを提供すること、および全ての研究手順に従うことができ、それらに前向きであること。
除外基準
腎移植レシピエント;
造影剤手技前で腎機能が急性的に悪化している;
すでに透析を受けている(急性または慢性のいずれも)、あるいは、登録時に透析の切迫した必要性がある;
(心肺バイパス術を伴うなどの)大きな外科手術、あるいは、造影剤投与後48時間以内にさらなる腎傷害の重大なリスクを伴う造影剤による追加的撮像手技を、受けると予想される;
30日前以内の実験療法を含むインターベンショナル臨床研究への参加;
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)または肝炎ウイルスによる感染が分かっている。
【0128】
第1造影剤投与の直前に(かつ、いかなる手技前水和後に)、EDTA抗凝固処理血液サンプル(10mL)および尿サンプル(10mL)を各患者から収集する。次いで血液および尿サンプルを指標造影手技の間、造影剤の最終投与後、4(±0.5)時間、8(±1)時間、24(±2)時間、48(±2)時間、および、72(±2)時間に収集する。血液を直接静脈穿刺によるか、あるいは、現存の大腿鞘、中心静脈ライン、末梢静脈内ライン、またはhep−lockなどの他の利用可能な静脈アクセスを介して収集する。これらの研究血液サンプルを、臨床現場で血漿に処理し、凍結させて、カリフォルニア州サンディエゴのAstute Medical, Inc.へ輸送する。研究尿サンプルを凍結させてAstute Medical, Inc.へ輸送する。
【0129】
血清クレアチニンを、第1造影剤投与の直前(いかなる手技前水和後)、ならびに、造影剤の最終投与後の4(±0.5)時間、8(±1)時間、24(±2)時間、および48(±2)時間、および72(±2)時間に現場で査定する(理想的には研究サンプルが得られたのと同時に)。加えて、各患者の状態を、追加的血清および尿中クレアチニン測定、透析の必要性、入院状態、および有害臨床転帰(死亡を含む)に関して30日中、評価する。
【0130】
造影剤投与前に、各患者に以下の査定に基づいてリスクを割り当てる:収縮期血圧<80mmHg=5ポイント;動脈内バルーンポンプ=5ポイント;うっ血性心不全(クラスIII〜IV、または、肺水腫の病歴)=5ポイント;年齢>75歳=4ポイント;男性の場合のヘマトクリット値<39%、女性の場合のヘマトクリット値<35%=3ポイント;糖尿病=3ポイント;造影剤量=100mL毎に1ポイント;血清クレアチニンレベル>1.5g/dL=4ポイント、あるいは、推定GFR40〜60mL/分/1.73m=2ポイント、20〜40mL/分/1.73m=4ポイント、<20mL/分/1.73m=6ポイント。割り当てられたリスクは、以下の通りである:CINおよび透析のリスク:合計ポイント5以下=CINのリスクは−7.5%、透析のリスクは−0.04%;合計ポイント6〜10=CINのリスクは−14%、透析のリスクは−0.12%;合計ポイント11〜16=CINのリスクは−26.1%、透析のリスクは−1.09%;合計ポイント>16=CINのリスクは−57.3%、透析のリスクは−12.8%。
【0131】
実施例2:心臓手術サンプル収集
【0132】
このサンプル収集研究の目的は、腎臓機能に潜在的に障害を与えると知られている手技である、心臓血管手術を受ける前および受けた後に患者から血漿および尿および臨床データのサンプルを収集することである。そのような手術を受けているほぼ900人の成人を登録する。本研究に登録されるために、各患者は、以下の包含基準の全てを満たさなければならず、かつ以下の除外基準のいずれも満たしてはならない。
包含基準
18歳以上の男女;
心臓血管手術を受けている;
腎置換リスク評点のためのトロント/オタワ予測リスク指標が少なくとも2である(Wijeysunderaらによる、JAMA 297:1801〜9、2007年)、ならびに、
研究参加のための書面によるインフォームドコンセントを提供すること、および全ての研究手順に従うことができ、それらに前向きであること。
除外基準
妊娠が分かっている;
腎移植の前歴;
登録前に腎機能が急性的に悪化している(例えばRIFLE判断基準の任意のカテゴリー);
すでに透析を受けている(急性または慢性のいずれも)、あるいは、登録時に透析の切迫した必要性がある;
現在、別の臨床研究に登録されている、あるいは、薬物注入またはAKIのための治療的介入を含む心臓手術の7日以内に別の臨床研究に登録されると予想されている;
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)または肝炎ウイルスによる感染が分かっている。
【0133】
第1切開前3時間以内に(かつ、任意の手技前水和後)、EDTA抗凝固処理血液サンプル(10mL)、全血(3mL)、および、尿サンプル(35mL)を、各患者から収集する。次いで血液および尿サンプルを、手技後3(±0.5)時間、6(±0.5)時間、12(±1)時間、24(±2)時間、および48(±2)時間に、次いで、もし対象が病院内に留まる場合、3日目〜7日目にわたって毎日、収集する。血液を直接静脈穿刺によるか、あるいは、現存の大腿鞘、中心静脈ライン、末梢静脈内ライン、またはhep−lockなどの他の利用可能な静脈アクセスを介して収集する。これらの研究血液サンプルを凍結させてカリフォルニア州サンディエゴのAstute Medical, Inc.へ輸送する。研究尿サンプルを凍結させてAstute Medical, Inc.へ輸送する。
【0134】
実施例3:急性疾病の対象サンプル収集
【0135】
この研究の目的は、急性疾病患者からサンプルを収集することである。少なくとも48時間ICU内にいることを予想されるほぼ900人の成人が登録されるであろう。本研究に登録されるために、各患者は、以下の包含基準の全てを満たさなければならず、かつ以下の除外基準のいずれも満たしてはならない。
包含基準
18歳以上の男女;
研究集団1:ショック(SBP<90mmHg、および/または、MAP>60mmHgを維持するために血管収縮支持が必要、および/または、少なくとも40mmHgのSBPにおける実証された降下);ならびに、
敗血症、
のうちの少なくとも1つを有するほぼ300人の患者;
研究集団2:IV抗生物質が登録の24時間以内にコンピュータ化された医師受注(CPOE)に注文された;
登録の24時間以内での造影剤曝露;
急性非代償性心不全による腹腔内圧の増加;ならびに、
ICU入院の主な理由としての、および登録後48時間ICU内に入院させられる可能性がある、重篤な外傷;
のうちの少なくとも1つを有するほぼ300人の患者;
研究集団3:急性腎損傷についての既知のリスク因子により急性医療環境(ICUまたはED)を通した入院が予想される(例えば、敗血症、低血圧/ショック(ショック=収縮期BP<90mmHg、および/または、MAP>60mmHgを維持するために血管収縮支持が必要、および/または、SBP>40mmHgの実証された降下)、大きな外傷、出血、または大手術);
ならびに/あるいは、登録後少なくとも24時間ICUへの入院が予想される、
ほぼ300人の患者。
除外基準
妊娠が分かっている;
施設に収容された個人;
腎移植の前歴;
登録前に腎機能が急性的に悪化していると分かっている(例えばRIFLE判断基準の任意のカテゴリー);
登録5日前以内に透析を受けた(急性または慢性のいずれも)、あるいは登録時に透析の切迫した必要性がある;
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)または肝炎ウイルスによる感染が分かっている;
上記で明記された包含基準SBP<90mmHgのみを満たす、かつ、参加している医師または主任調査官の意見においてショックを有しない。
【0136】
インフォームドコンセントを提供した後、EDTA抗凝固処理血液サンプル(10mL)および尿サンプル(25〜30mL)を各患者から収集する。次いで血液および尿サンプルを、造影剤投与(適用可能な場合)後、4(±0.5)時間、および、8(±1)時間に;登録後、12(±1)時間、24(±2)時間、および48(±2)時間に、そしてその後は対象が入院させられている間、最長で7日目〜14日目まで毎日、収集する。血液を直接静脈穿刺によるか、あるいは、現存の大腿鞘、中心静脈ライン、末梢静脈内ライン、またはhep−lockなどの他の利用可能な静脈アクセスを介して収集する。これらの研究血液サンプルを、臨床現場で血漿に処理し、凍結させて、カリフォルニア州サンディエゴのAstute Medical, Inc.へ輸送する。研究尿サンプルを凍結させてAstute Medical, Inc.へ輸送する。
【0137】
実施例4:イムノアッセイ形式
【0138】
分析物を標準的なサンドイッチ酵素免疫測定技術を使用して測定する。分析物に結合する第1抗体を、96ウェルのポリスチレンマイクロプレートのウェル内に固定化する。分析物標準および試験サンプルを適切なウェル内にピペットで入れると、存在する任意の分析物が固体化された抗体によって結合される。いかなる非結合物質を洗い流した後、分析物に結合する西洋ワサビペルオキシダーゼ結合第2抗体をウェルに加え、それによって分析物(存在する場合)と第1抗体とのサンドイッチ複合体を形成する。いかなる非結合抗体−酵素試薬も取り除くための洗浄に続いて、テトラメチルベンチジンおよび過酸化水素を含む基質溶液をウェルに加える。サンプル中に存在する分析物の量に比例して色が発展する。発色が止められ色の強度を540nmまたは570nmで測定する。分析物濃度を、分析物標準から決定した標準曲線と比較することによって試験サンプルに割り当てる。
【0139】
濃度を以下の例で以下の通りに表す:可溶性P−セレクチン―ng/mL;タンパク質NOVホモログ―pg.mL;ネトリン−4―ng/mL;ハプトグロビン―mg/mL;α−1−アンチトリプシン―mg/mL;白血球エラスターゼ―ng/mL;可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6―pg/mL;可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6―pg/mL;可溶性細胞間接着分子2―単位/mL;カスパーゼ−3(活性)―ng/mL;可溶性血小板内皮細胞接着分子―ng/mL;熱ショックタンパク質β−1―ng/mL;可溶性上皮増殖因子受容体―pg/mL。
【0140】
実施例5.見掛け上健康なドナーおよび慢性疾患患者のサンプル
【0141】
慢性または急性疾患が分かっていないドナー(「見掛け上健康なドナー」)からのヒト尿サンプルを2つの業者から購入した(92590カリフォルニア州テメキュラ(Temecula)コマース・センター・ドライブ(Commerce Center Dr.)27625の、Golden West Biologicals, Inc.、および、23454バージニア州バージニアビーチ、ファースト・コロニアル・ロード915の、Virginia Medical Research, Inc.)。尿サンプルを−20℃未満で凍結させて輸送および保存した。これら業者は、個々のドナーの性別、人種(黒人/白人)、喫煙状態、および年齢を含む人口学的情報を供給した。
【0142】
うっ血性心不全、冠動脈疾患、慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患、真性糖尿病、および、高血圧を含む様々な慢性疾患に罹っているドナー(「慢性疾患患者」)からのヒト尿サンプルを、23454バージニア州バージニアビーチ、ファースト・コロニアル・ロード915の、Virginia Medical Research, Inc.から購入した。尿サンプルを−20℃未満で凍結させて輸送および保存した。この業者は、各個々のドナーについての、年齢、性別、人種(黒人/白人)、喫煙状態およびアルコール摂取、身長、体重、慢性疾患診断、現在の投薬、ならびに既往手術の症例報告書を提供した。
【0143】
実施例6.RIFLEステージ0における患者の腎状態を評価するための腎臓損傷マーカー
【0144】
集中治療室(ICU)からの患者を、RIFLE判断基準によって決定されるように、登録7日以内に達した最大ステージにしたがい、損傷なし(0)、損傷のリスク(R)、損傷(I)、および不全(F)とする腎臓状態によって分類した。
【0145】
2つのコホートを(コホート1)ステージ0を超えて進行しなかった患者、および(コホート2)10日以内にステージR、I、またはFに達した患者として定義した。ICUにおいて患者内に起こる正常なマーカー変動に取り組み、それによってAKI状態を監視することに対する有用性を査定するために、コホート1の尿サンプルのマーカーレベルを収集した。コホート2において、ステージR、I、またはFに達する前、0時間、24時間、および48時間に対象から収集した尿サンプルのマーカー濃度を測定した。以下の表において、「最大ステージ前」の時間は、±12時間である3群にビン分けされた、特定患者がそのコホートについて定義されたような最低疾患ステージに達する時間に対して、サンプルが収集された時間を表す。例えば、この例(0対R、I、F)について24時間前は、ステージR(あるいは、Rのサンプルがない場合はI、または、RもしくはIのサンプルがない場合はF)に達する24時間前(±12時間)を意味するであろう。
【0146】
市販されているアッセイ試薬を使用して標準的なイムノアッセイ方法によって各マーカーを測定した。受信者動作特性(ROC)曲線を各マーカーについて生成し、各ROC曲線下面積(AUC)を決定した。コホート2の患者もまた、血清クレアチニン測定値(sCr)に基づくか、尿量(UO)に基づくか、あるいは、血清クレアチニン測定値または尿量のいずれか一方に基づくように、ステージR、I、またはFへの判定の理由にしたがって分離した。すなわち、血清クレアチニン測定値単独に基づいてステージR、I、またはFへ判定されたこれらの患者について、ステージ0のコホートは、尿量に基づいてステージR、I、またはFに判定された患者を含んだかもしれない;尿量単独に基づいてステージR、I、またはFへ判定されたこれらの患者について、ステージ0のコホートは、血清クレアチニン測定値に基づいてステージR、I、またはFに判定された患者を含んだかもしれない;ならびに、血清クレアチニン測定値または尿量に基づいてステージR、I、またはFへ判定されたこれらの患者について、ステージ0のコホートは、血清クレアチニン測定値および尿量の両方についてステージ0の患者のみを含む。また、血清クレアチニン測定値または尿量に基づいてステージR、I、またはFへ判定されたこれらの患者について、最も重篤なRIFLEステージをもたらした判定方法を使用した。
【0147】
以下の記述統計を得た:
可溶性P−セレクチン:
【表16】

【表17】

【表18】

タンパク質NOVホモログ:
【表19】

【表20】

【表21】

ネトリン−4:
【表22】

【表23】

【表24】

ハプトグロビン:
【表25】

【表26】

【表27】

α−1−アンチトリプシン:
【表28】

【表29】

【表30】

白血球エラスターゼ:
【表31】

【表32】

【表33】

可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6:
【表34】

【表35】

【表36】

可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6:
【表37】

【表38】

【表39】

可溶性細胞間接着分子2:
【表40】

【表41】

【表42】

カスパーゼ−3(活性):
【表43】

【表44】

【表45】

可溶性血小板内皮細胞接着分子:
【表46】

【表47】

【表48】

熱ショックタンパク質β−1:
【表49】

【表50】

【表51】

可溶性上皮増殖因子受容体:
【表52】

【表53】

【表54】

【0148】
以下の表において、コホート1(RIFLEが0に留まる対象)をコホート2(RIFLEがR、IまたはFに進行する対象)から識別する能力を、ROC分析を使用して決定した。SEは、AUCの標準誤差であり、nは、サンプルまたは個々の患者(「pts」として表示されている)の数である。標準誤差は、Hanley,J.A.およびMcNeil,B.J.による、受信者動作特性(ROC)曲線下面積の意味および使用(The meaning and use of the area under a receiver operating
characteristic (ROC) curve)、放射線学(Radiology)(1982年)143:29〜36において説明されているように計算し;p値は両側Z−検定を用いて計算した。AUC<0.5は、比較のための陰性進行マーカーを示し、AUC>0.5は、比較のための陽性進行マーカーを示す。
可溶性P−セレクチン:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表55】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表56】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表57】

タンパク質NOVホモログ:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表58】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表59】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表60】

ネトリン4:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表61】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表62】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表63】

ハプトグロビン:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表64】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表65】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表66】

α−1−アンチトリプシン:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表67】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表68】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表69】

白血球エラスターゼ:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表70】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表71】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表72】

可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表73】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表74】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表75】

可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表76】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表77】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表78】

可溶性細胞間接着分子2:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表79】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表80】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表81】

カスパーゼ−3(活性型):
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表82】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表83】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表84】

可溶性血小板内皮細胞接着分子:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表85】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表86】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表87】

熱ショックタンパク質β−1:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表88】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表89】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表90】

可溶性上皮増殖因子受容体:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表91】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表92】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表93】

【0149】
様々な閾値(または「カットオフ」)濃度を選択して、コホート1をコホート2から識別するために関連する感受性および特異性を以下の表に示した。ORは、特定のカットオフ濃度について計算したオッズ比であり、95%CIは、オッズ比についての信頼区間である。
可溶性P−セレクチン:
【表94】

【表95】

【表96】

タンパク質NOVホモログ:
【表97】

【表98】

【表99】

ネトリン4:
【表100】

【表101】

【表102】

ハプトグロビン:
【表103】

【表104】

【表105】

α−1−アンチトリプシン:
【表106】

【表107】

【表108】

白血球エラスターゼ:
【表109】

【表110】

【表111】

可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6:
【表112】

【表113】

【表114】


可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6:
【表115】

【表116】

【表117】

可溶性細胞間接着分子2:
【表118】

【表119】

【表120】

カスパーゼ−3(活性型):
【表121】

【表122】

【表123】

可溶性血小板内皮細胞接着分子:
【表124】

【表125】

【表126】

熱ショックタンパク質β−1:
【表127】

【表128】

【表129】

可溶性上皮増殖因子受容体:
【表130】

【表131】

【表132】

【0150】
実施例7.RIFLEステージ0およびRの患者における腎状態を評価するための腎臓損傷マーカー
【0151】
実施例6で説明したように患者を分類し分析した。しかしながら、ステージRに達したがステージIまたはFへは進行しなかった患者を、コホート1での非損傷ステージ0からの患者と共にグループ分けした。この例におけるコホート2は、ステージIまたはFへ進行した患者のみを含んだ。コホート1に対して尿サンプルにおけるマーカー濃度を含めた。コホート2に対してステージIまたはFに達する0時間、24時間、および48時間以内に収集した尿サンプルにおけるマーカー濃度を含めた。
【0152】
以下の記述統計を得た:
可溶性P−セレクチン:
【表133】

【表134】

【表135】

タンパク質NOVホモログ:
【表136】

【表137】

【表138】

ネトリン4:
【表139】

【表140】

【表141】

α−1−アンチトリプシン:
【表142】

【表143】

【表144】

白血球エラスターゼ:
【表145】

【表146】

【表147】

可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6:
【表148】

【表149】

【表150】

可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6:
【表151】

【表152】

【表153】

可溶性細胞間接着分子2:
【表154】

【表155】

【表156】

熱ショックタンパク質β−1:
【表157】

【表158】

【表159】

【0153】
以下の表において、コホート1(RIFLEが0またはRに留まる対象)をコホート2(RIFLEがIまたはFへ進行する対象)から識別する能力を、ROC分析を使用して決定した。
可溶性P−セレクチン:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表160】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表161】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表162】

タンパク質NOVホモログ:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表163】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表164】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表165】

ネトリン4:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表166】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表167】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表168】

α−1−アンチトリプシン:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表169】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表170】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表171】

白血球エラスターゼ:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表172】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表173】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表174】

可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表175】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表176】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表177】

可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表178】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表179】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表180】

可溶性細胞間接着分子2:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表181】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表182】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表183】

熱ショックタンパク質β−1:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表184】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表185】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表186】

【0154】
様々な閾値(または「カットオフ」)濃度を選択して、コホート1をコホート2から識別するために関連する感受性および特異性を以下の表に示した。ORは、特定のカットオフ濃度について計算したオッズ比であり、95%CIは、オッズ比についての信頼区間である。
可溶性P−セレクチン:
【表187】

【表188】

【表189】

タンパク質NOVホモログ:
【表190】

【表191】

【表192】

ネトリン4:
【表193】

【表194】

【表195】

α−1−アンチトリプシン:
【表196】

【表197】

【表198】

白血球エラスターゼ:
【表199】

【表200】

【表201】

可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6:
【表202】

【表203】

【表204】

可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6:
【表205】

【表206】

【表207】

可溶性細胞間接着分子2:
【表208】

【表209】

【表210】

熱ショックタンパク質β−1:
【表211】

【表212】

【表213】

【0155】
実施例8.ステージRからステージIおよびFへ進行している患者における腎状態を評価するための腎臓損傷マーカー
【0156】
実施例6で説明したように患者を分類し分析したが、ステージRへ達したこれらの患者のみをこの例に含んだ。コホート1は、ステージRに達したがステージIまたはFへ10日以内に進行しなかった患者を含み、コホート2は、ステージIまたはFへ進行した患者のみを含んだ。ステージRに達してから12時間以内に収集した尿サンプル中のマーカー濃度をコホート1およびコホート2の双方についての分析に含めた。
【0157】
以下の記述統計を得た:
α−1−アンチトリプシン:
【表214】

【表215】

【表216】

白血球エラスターゼ:
【表217】

【表218】

【表219】

可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6:
【表220】

【表221】

【表222】

【0158】
以下の表において、コホート1(RIFLEがRに留まる対象)をコホート2(RIFLEがIまたはFへ進行する対象)から識別する能力を、ROC分析を使用して決定した。
α−1−アンチトリプシン:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表223】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表224】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表225】

白血球エラスターゼ:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表226】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表227】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表228】

可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表229】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表230】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表231】

【0159】
様々な閾値(または「カットオフ」)濃度を選択して、コホート1をコホート2から識別するために関連する感受性および特異性を以下の表に示した。ORは、特定のカットオフ濃度について計算したオッズ比であり、95%CIは、オッズ比についての信頼区間である。
α−1−アンチトリプシン:
【表232】

【表233】

【表234】

白血球エラスターゼ:
【表235】

【表236】

【表237】

可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6:
【表238】

【表239】

【表240】

【0160】
実施例9.RIFLEステージ0における患者の腎状態を評価するための腎臓損傷マーカー
【0161】
集中治療室(ICU)からの患者を、RIFLE判断基準によって決定されるように、登録7日以内に達した最大ステージにしたがい、損傷なし(0)、損傷のリスク(R)、損傷(I)、および不全(F)とする腎臓状態によって分類した。
【0162】
2つのコホートを(コホート1)ステージ0を超えて進行しなかった患者、および(コホート2)10日以内にステージR、I、またはFに達した患者として定義した。ICUにおいて患者内に起こる正常なマーカー変動に取り組み、それによってAKI状態を監視することに対する有用性を査定するために、コホート1の血液サンプルのマーカーレベルを収集した。コホート2において、ステージR、I、またはFに達する前、0時間、24時間、および48時間に対象から収集した血液サンプルの血漿成分中のマーカー濃度を測定した。以下の表において、「最大ステージ前」の時間は、±12時間である3群にビン分けされた、特定患者がそのコホートについて定義されたような最低疾患ステージに達する時間に対して、サンプルが収集された時間を表す。例えば、この例(0対R、I、F)について24時間前は、ステージR(あるいは、Rのサンプルがない場合はI、または、RもしくはIのサンプルがない場合はF)に達する24時間前(±12時間)を意味するであろう。
【0163】
市販されているアッセイ試薬を使用して標準的なイムノアッセイ方法によって各マーカーを測定した。受信者動作特性(ROC)曲線を各マーカーについて生成し、各ROC曲線下面積(AUC)を決定した。コホート2の患者もまた、血清クレアチニン測定値(sCr)に基づくか、尿量(UO)に基づくか、あるいは、血清クレアチニン測定値または尿量のいずれか一方に基づくように、ステージR、I、またはFへの判定の理由にしたがって分離した。すなわち、血清クレアチニン測定値単独に基づいてステージR、I、またはFへ判定されたこれらの患者について、ステージ0のコホートは、尿量に基づいてステージR、I、またはFに判定された患者を含んだかもしれない;尿量単独に基づいてステージR、I、またはFへ判定されたこれらの患者について、ステージ0のコホートは、血清クレアチニン測定値に基づいてステージR、I、またはFに判定された患者を含んだかもしれない;ならびに、血清クレアチニン測定値または尿量に基づいてステージR、I、またはFへ判定されたこれらの患者について、ステージ0のコホートは、血清クレアチニン測定値および尿量の両方についてステージ0の患者のみを含む。また、血清クレアチニン測定値または尿量に基づいてステージR、I、またはFへ判定されたこれらの患者について、最も重篤なRIFLEステージをもたらした判定方法を使用した。
【0164】
以下の記述統計を得た:
可溶性P−セレクチン:
【表241】

【表242】

【表243】

タンパク質NOVホモログ:
【表244】

【表245】

【表246】

ネトリン4:
【表247】

【表248】

【表249】

ハプトグロビン:
【表250】

【表251】

【表252】

α−1−アンチトリプシン:
【表253】

【表254】

【表255】

白血球エラスターゼ:
【表256】

【表257】

【表258】

可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6:
【表259】

【表260】

【表261】

可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6:
【表262】

【表263】

【表264】

可溶性細胞間接着分子2:
【表265】

【表266】

【表267】

可溶性血小板内皮細胞接着分子:
【表268】

【表269】

【表270】

熱ショックタンパク質β−1:
【表271】

【表272】

【表273】

【0165】
以下の表において、コホート1(RIFLEが0に留まる対象)をコホート2(RIFLEがR、IまたはFに進行する対象)から識別する能力を、ROC分析を使用して決定した。SEは、AUCの標準誤差であり、nは、サンプルまたは個々の患者(「pts」として表示されている)の数である。標準誤差は、Hanley,J.A.およびMcNeil,B.J.による、受信者動作特性(ROC)曲線下面積の意味および使用、放射線学(1982年)143:29〜36において説明されているように計算し;p値は両側Z−検定を用いて計算した。AUC<0.5は、比較のための陰性進行マーカーを示し、AUC>0.5は、比較のための陽性進行マーカーを示す。
可溶性P−セレクチン:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表274】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表275】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表276】

タンパク質NOVホモログ:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表277】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表278】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表279】

ネトリン4:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表280】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表281】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表282】

ハプトグロビン:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表283】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表284】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表285】

α−1−アンチトリプシン:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表286】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表287】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表288】

白血球エラスターゼ:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表289】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表290】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表291】

可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表292】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表293】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表294】

可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表295】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表296】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表297】

可溶性細胞間接着分子2:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表298】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表299】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表300】

可溶性血小板内皮細胞接着分子:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表301】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表302】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表303】

熱ショックタンパク質β−1:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表304】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表305】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表306】

【0166】
様々な閾値(または「カットオフ」)濃度を選択して、コホート1をコホート2から識別するために関連する感受性および特異性を以下の表に示した。ORは、特定のカットオフ濃度について計算したオッズ比であり、95%CIは、オッズ比についての信頼区間である。
可溶性P−セレクチン:
【表307】

【表308】

【表309】

タンパク質NOVホモログ:
【表310】

【表311】

【表312】

ネトリン4:
【表313】

【表314】

【表315】

ハプトグロビン:
【表316】

【表317】

【表318】

α−1−アンチトリプシン:
【表319】

【表320】

【表321】

白血球エラスターゼ:
【表322】

【表323】

【表324】

可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6:
【表325】

【表326】

【表327】

可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6:
【表328】

【表329】

【表330】

可溶性細胞間接着分子2:
【表331】

【表332】

【表333】

可溶性血小板内皮細胞接着分子:
【表334】

【表335】

【表336】

熱ショックタンパク質β−1:
【表337】

【表338】

【表339】

【0167】
実施例10.RIFLEステージ0およびRにおける患者の腎状態を評価するための腎臓損傷マーカー
【0168】
実施例9で説明したように患者を分類し分析した。しかしながら、ステージRへ達したがステージIまたはFへ進行しなかった患者を、コホート1において、非損傷ステージ0からの患者と共にグループ分けした。この例におけるコホート2は、ステージIまたはFに進行した患者のみを含んだ。コホート1について、血液サンプルの血漿成分におけるマーカー濃度を含めた。コホート2について、ステージIまたはFに達してから、0時間、24時間、48時間以内に収集した血液サンプルの血漿成分のマーカー濃度を含めた。
【0169】
以下の記述統計を得た:
可溶性P−セレクチン:
【表340】

【表341】

【表342】

タンパク質NOVホモログ:
【表343】

【表344】

【表345】

ネトリン4:
【表346】

【表347】

【表348】

α−1−アンチトリプシン:
【表349】

【表350】

【表351】

白血球エラスターゼ:
【表352】

【表353】

【表354】

可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6:
【表355】

【表356】

【表357】

可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6:
【表358】

【表359】

【表360】

可溶性細胞間接着分子2:
【表361】

【表362】

【表363】

熱ショックタンパク質β−1:
【表364】

【表365】

【表366】

可溶性上皮増殖因子受容体:
【表367】

【表368】

【表369】

【0170】
以下の表において、コホート1(RIFLEが0またはRに留まる対象)をコホート2(RIFLEがIまたはFへ進行する対象)から識別する能力を、ROC分析を使用して決定した。
可溶性P−セレクチン:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表370】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表371】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表372】

タンパク質NOVホモログ:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表373】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表374】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表375】

ネトリン4:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表376】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表377】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表378】

α−1−アンチトリプシン:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表379】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表380】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表381】

白血球エラスターゼ:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表382】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表383】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表384】

可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表385】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表386】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表387】

可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表388】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表389】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表390】

可溶性細胞間接着分子2:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表391】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表392】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表393】

熱ショックタンパク質β−1:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表394】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表395】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表396】

可溶性上皮増殖因子受容体:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表397】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表398】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表399】

【0171】
様々な閾値(または「カットオフ」)濃度を選択して、コホート1をコホート2から識別するために関連する感受性および特異性を以下の表に示した。ORは、特定のカットオフ濃度について計算したオッズ比であり、95%CIは、オッズ比についての信頼区間である。
可溶性P−セレクチン:
【表400】

【表401】

【表402】

タンパク質NOVホモログ:
【表403】

【表404】

【表405】

ネトリン4:
【表406】

【表407】

【表408】

α−1−アンチトリプシン:
【表409】

【表410】

【表411】

白血球エラスターゼ:
【表412】

【表413】

【表414】

可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6:
【表415】

【表416】

【表417】

可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6:
【表418】

【表419】

【表420】

可溶性細胞間接着分子2:
【表421】

【表422】

【表423】

熱ショックタンパク質β−1:
【表424】

【表425】

【表426】

可溶性上皮増殖因子受容体:
【表427】

【表428】

【表429】

【0172】
実施例11.ステージRからステージIおよびFへ進行した患者の腎状態を評価するための腎臓損傷マーカー
【0173】
実施例9で説明したように患者を分類し分析したが、ステージRへ達したそれらの患者のみをこの例に含めた。コホート1は、ステージRに達したがステージIまたはFに10日以内に進行しなかった患者を含み、コホート2は、ステージIまたはFへ進行した患者のみを含んだ。ステージRに達してから12時間以内に収集した血液サンプルからの血漿成分におけるマーカー濃度を、コホート1およびコホート2の双方についての分析に含めた。
【0174】
以下の記述統計を得た:
α−1−アンチトリプシン:
【表430】

【表431】

【表432】

白血球エラスターゼ:
【表433】

【表434】

【表435】

可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6:
【表436】

【表437】

【表438】

【0175】
以下の表において、コホート1(RIFLEがRに留まる対象)をコホート2(RIFLEがIまたはFへ進行する対象)から識別する能力を、ROC分析を使用して決定した。
α−1−アンチトリプシン:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表439】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表440】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表441】

白血球エラスターゼ:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表442】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表443】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表444】

可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6:
血清クレアチニン測定値または尿量で判定したコホート1対コホート2
【表445】

血清クレアチニンで判定したコホート1対コホート2
【表446】

尿量で判定したコホート1対コホート2
【表447】

【0176】
様々な閾値(または「カットオフ」)濃度を選択して、コホート1をコホート2から識別するために関連する感受性および特異性を以下の表に示した。ORは、特定のカットオフ濃度について計算したオッズ比であり、95%CIは、オッズ比についての信頼区間である。
α−1−アンチトリプシン:
【表448】

【表449】

【表450】

白血球エラスターゼ:
【表451】

【表452】

【表453】

可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6:
【表454】

【表455】

【表456】

【0177】
本発明は、当業者が本発明を作製および使用するために十分詳細に説明され例証されたが、様々な代替形態、修正形態、および改善が本発明の精神および範囲から逸脱することなく明白であるべきである。本明細書において提供された例は、好ましい実施形態の代表であり、例示であり、本発明の範囲を限定するものとして意図されない。それらにおける修正および他の使用が当業者に想起されるだろう。これらの修正は、本発明の精神の範囲内に含まれ、特許請求の範囲によって定義される。
【0178】
様々な代替および修正が、本発明の範囲および精神から逸脱することなく本明細書に開示された本発明に施されうるということが当業者に容易に明白になるであろう。
【0179】
本明細書において言及された全ての特許および刊行物は、本発明が属する技術分野における通常の技術者のレベルを示す。全ての特許および刊行物は、各個々の刊行物が参照により組み込まれるように明確に個々に示されたかのような、それと同程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0180】
本明細書において例証的に説明された本発明は適切に、1または複数の任意の要素を欠如して、本明細書において特に開示されていない1または複数の制限において、実践されうる。ゆえに、例えば、本明細書の各例において、用語「含む」、「から本質的になる」、および、「からなる」のいずれも、他の2つの用語のいずれかと置き換えられうる。使用された用語および表現は、説明の観点で限定の観点でなく使用され、そのような用語および表現の使用において示され説明された特徴物の任意の等価物およびその部分を排除する意図はなく、様々な修正が請求されている本発明の範囲内で可能であることが認識される。ゆえに、本発明は好ましい実施形態および任意の特徴部によって明確に開示されたが、本明細書において開示された概念の修正および変更が当業者によって訴えられうること、ならびに、そのような修正および変更は添付の特許請求の範囲によって定義されているように本発明の範囲に含まれると見なされるということは理解されるべきである。
【0181】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に明記される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における腎状態を評価するための方法であって、
1以上のアッセイ結果を提供するために前記対象から得られた体液サンプルに対して可溶性P−セレクチン、タンパク質NOVホモログ、可溶性上皮増殖因子受容体、ネトリン−4、ハプトグロビン、熱ショックタンパク質β−1、α−1−アンチトリプシン、白血球エラスターゼ、可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6、可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6、可溶性細胞間接着分子2、活性型カスパーゼ−3および可溶性血小板内皮細胞接着分子からなる群から選択される腎臓損傷マーカーを検出するよう構成された1以上のアッセイを実施することと、
(1または複数の)前記アッセイ結果を前記対象の前記腎状態と相関させることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記相関ステップは、(1または複数の)前記アッセイ結果を、前記対象の前記腎状態のリスク階級化、診断、段階分け、予後、分類、および監視のうちの1以上と相関させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記相関ステップは、(1または複数の)前記アッセイ結果に基づいて、腎状態における1以上の将来的な変化の見込みを前記対象に割り当てることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記腎状態における1以上の将来的な変化は、腎機能の将来的な損傷、腎機能の将来的な減少、腎機能における将来的な改善、および、将来的な急性腎不全(ARF)のうちの1以上を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
(1または複数の)前記アッセイ結果は、
(i)可溶性P−セレクチンの測定された濃度、
(ii)タンパク質NOVホモログの測定された濃度、
(iii)可溶性上皮増殖因子受容体の測定された濃度、
(iv)ネトリン−4の測定された濃度、
(v)ハプトグロビンの測定された濃度、
(vi)α−1−アンチトリプシンの測定された濃度、
(vii)白血球エラスターゼの測定された濃度、
(viii)可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6の測定された濃度、
(ix)可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6の測定された濃度、
(x)熱ショックタンパク質β−1の測定された濃度、
(xi)可溶性細胞間接着分子2の測定された濃度、
(xii)活性型カスパーゼ−3の測定された濃度、および、
(xiii)可溶性血小板内皮細胞接着分子の測定された濃度、
のうちの1以上を含み、
前記相関ステップは、各アッセイ結果に対して、前記測定濃度を閾値濃度と比較すること、ならびに、
陽性進行マーカーについて、前記測定された濃度が前記閾値未満である場合に割り当てられる見込みに対して、前記測定された濃度が前記閾値を上回る場合に、腎機能の将来的な損傷、腎機能の将来的な減少、将来的なARF、もしくは腎機能における将来的な改善を患う見込み増加を前記対象に割り当てること、または、前記測定された濃度が前記閾値を上回る場合に割り当てられる見込みに対して、前記測定された濃度が前記閾値未満である場合に腎機能の将来的な損傷、腎機能の将来的な減少、将来的なARF、もしくは腎機能における将来的な改善を患う見込み減少を前記対象に割り当てること、あるいは、
陰性進行マーカーについて、前記測定された濃度が前記閾値を上回る場合に割り当てられる見込みに対して、前記測定された濃度が前記閾値未満である場合に、腎機能の将来的な損傷、腎機能の将来的な減少、将来的なARF、もしくは腎機能における将来的な改善を患う見込み増加を前記対象に割り当てること、または、前記測定された濃度が前記閾値未満である場合に割り当てられる見込みに対して、前記測定された濃度が前記閾値を上回る場合に、腎機能の将来的な損傷、腎機能の将来的な減少、将来的なARF、もしくは腎機能における将来的な改善を患う見込み減少を前記対象に割り当てること、
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記腎状態における1以上の将来的な変化は、前記対象が患う腎損傷に関連する臨床転帰を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
(1または複数の)前記アッセイ結果は、
(i)可溶性P−セレクチンの測定された濃度、
(ii)タンパク質NOVホモログの測定された濃度、
(iii)可溶性上皮増殖因子受容体の測定された濃度、
(iv)ネトリン−4の測定された濃度、
(v)ハプトグロビンの測定された濃度、
(vi)α−1−アンチトリプシンの測定された濃度、
(vii)白血球エラスターゼの測定された濃度、
(viii)可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6の測定された濃度、
(ix)可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6の測定された濃度、
(x)熱ショックタンパク質β−1の測定された濃度、
(xi)可溶性細胞間接着分子2の測定された濃度、
(xii)活性型カスパーゼ−3の測定された濃度、および、
(xiii)可溶性血小板内皮細胞接着分子の測定された濃度、
のうちの1以上を含み、
前記相関ステップは、各アッセイ結果について、前記測定濃度を閾値濃度と比較すること、ならびに、
陽性進行マーカーについて、前記測定された濃度が前記閾値未満である場合に割り当てられる見込みに対して、前記測定された濃度が前記閾値を上回る場合に、後の急性腎臓損傷、AKIステージの悪化、死亡、腎置換療法の必要性、腎毒素の回収の必要性、末期腎疾患、心不全、発作、心筋梗塞、もしくは慢性腎臓疾患の見込み増加を前記対象に割り当てること、または、前記測定された濃度が前記閾値を上回る場合に割り当てられる見込みに対して、前記測定された濃度が前記閾値未満である場合に、後の急性腎臓損傷、AKIステージの悪化、死亡、腎置換療法の必要性、腎毒素の回収の必要性、末期腎疾患、心不全、発作、心筋梗塞、もしくは慢性腎臓疾患の見込み減少を前記対象に割り当てること、あるいは、
陰性進行マーカーについて、前記測定された濃度が前記閾値を上回る場合に割り当てられる見込みに対して、前記測定された濃度が前記閾値未満である場合に、後の急性腎臓損傷、AKIステージの悪化、死亡、腎置換療法の必要性、腎毒素の回収の必要性、末期腎疾患、心不全、発作、心筋梗塞、もしくは慢性腎臓疾患の見込み増加を前記対象に割り当てること、または、前記測定された濃度が前記閾値未満である場合に割り当てられる見込みに対して、前記測定された濃度が前記閾値を上回る場合に、後の急性腎臓損傷、AKIステージの悪化、死亡、腎置換療法の必要性、腎毒素の回収の必要性、末期腎疾患、心不全、発作、心筋梗塞、もしくは慢性腎臓疾患の見込み減少を前記対象に割り当てること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記腎状態における1以上の将来的な変化の見込みとは、関心の事象が、前記体液サンプルを前記対象から得た時点から30日以内に多かれ少なかれ起こる可能性があるということである、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記腎状態における1以上の将来的な変化の見込みとは、関心の事象が、21日、14日、7日、5日、96時間、72時間、48時間、36時間、24時間、および、12時間からなる群から選択される期間以内に多かれ少なかれ起こる可能性があるということである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記対象は、腎前性、内因性腎性、または腎後性ARFについての1以上の既知リスク因子の前記対象における先在に基づく腎状態の評価のために選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記対象は、うっ血性心不全、子癇前症、子癇、真性糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、蛋白尿、腎機能不全、正常範囲未満の糸球体濾過、硬変、正常範囲を上回る血清クレアチニン、敗血症、腎機能の損傷、腎機能減少、もしくはARFのうちの1以上の既存診断に基づいて、または、大きな血管手術、冠動脈バイパス術もしくは他の心臓手術を受けているか、または受けたことがあることに基づいて、または、NSAID、シクロスポリン、タクロリムス、アミノグリコシド、ホスカルネット、エチレングリコール、ヘモグロビン、ミオグロビン、イホスファミド、重金属、メトトレキサート、放射線造影剤もしくはストレプトゾトシンへの曝露に基づいて、腎状態の評価をするために選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記相関ステップは、(1または複数の)前記アッセイ結果に基づいて、腎機能の損傷、腎機能減少、もしくはARFのうちの1以上の発生または不発生の診断を前記対象に割り当てることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
(1または複数の)前記アッセイ結果は、
(i)可溶性P−セレクチンの測定された濃度、
(ii)タンパク質NOVホモログの測定された濃度、
(iii)可溶性上皮増殖因子受容体の測定された濃度、
(iv)ネトリン−4の測定された濃度、
(v)ハプトグロビンの測定された濃度、
(vi)α−1−アンチトリプシンの測定された濃度、
(vii)白血球エラスターゼの測定された濃度、
(viii)可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6の測定された濃度、
(ix)可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6の測定された濃度、
(x)熱ショックタンパク質β−1の測定された濃度、
(xi)可溶性細胞間接着分子2の測定された濃度、
(xii)活性型カスパーゼ−3の測定された濃度、および、
(xiii)可溶性血小板内皮細胞接着分子の測定された濃度、
のうちの1以上を含み、
前記相関ステップは、各アッセイ結果に対して、前記測定濃度を閾値濃度と比較すること、ならびに、
陽性進行マーカーについて、前記測定された濃度が前記閾値を上回る場合に、腎機能の損傷、腎機能減少、もしくはARFの発生を前記対象に割り当てること、または、前記測定された濃度が前記閾値未満である場合に腎機能の損傷、腎機能減少、もしくはARFの不発生を前記対象に割り当てること、あるいは、
陰性進行マーカーについて、前記測定された濃度が前記閾値未満である場合に、腎機能の損傷、腎機能減少、もしくはARFの発生を前記対象に割り当てること、または、前記測定された濃度が前記閾値を上回る場合に、腎機能の損傷、腎機能減少、もしくはARFの不発生を前記対象に割り当てること、
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記相関ステップは、(1または複数の)前記アッセイ結果に基づいて、腎機能の損傷、腎機能減少、もしくはARFを患っている対象において、腎機能が改善しているか、または悪化しているか否かを査定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
(1または複数の)前記アッセイ結果は、
(i)可溶性P−セレクチンの測定された濃度、
(ii)タンパク質NOVホモログの測定された濃度、
(iii)可溶性上皮増殖因子受容体の測定された濃度、
(iv)ネトリン−4の測定された濃度、
(v)ハプトグロビンの測定された濃度、
(vi)α−1−アンチトリプシンの測定された濃度、
(vii)白血球エラスターゼの測定された濃度、
(viii)可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6の測定された濃度、
(ix)可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6の測定された濃度、
(x)熱ショックタンパク質β−1の測定された濃度、
(xi)可溶性細胞間接着分子2の測定された濃度、
(xii)活性型カスパーゼ−3の測定された濃度、および、
(xiii)可溶性血小板内皮細胞接着分子の測定された濃度、
のうちの1以上を含み、
前記相関ステップは、各アッセイ結果について、前記測定濃度を閾値濃度と比較すること、ならびに、
陽性進行マーカーについて、前記測定された濃度が前記閾値を上回る場合に腎機能の悪化を前記対象に割り当てること、または、前記測定された濃度が前記閾値未満である場合に腎機能の改善を割り当てること、あるいは、
陰性進行マーカーについて、前記測定された濃度が前記閾値未満である場合に腎機能の悪化を前記対象に割り当てること、または、前記測定された濃度が前記閾値を上回る場合に腎機能の改善を割り当てることを、
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は、前記対象における腎機能の損傷の発生または不発生を診断する方法である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記方法は、前記対象における腎機能減少の発生または不発生を診断する方法である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記方法は、前記対象における急性腎不全の発生または不発生を診断する方法である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記方法は、前記対象における腎置換療法の必要性の発生または不発生を診断する方法である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、前記対象における腎移植の必要性の発生または不発生を診断する方法である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記方法は、前記対象において腎機能の損傷の将来的な発生または不発生のリスクを割り当てる方法である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記方法は、前記対象において腎機能減少の将来的な発生または不発生のリスクを割り当てる方法である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記方法は、前記対象において急性腎不全の将来的な発生または不発生のリスクを割り当てる方法である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記方法は、前記対象において腎置換療法の必要性の将来的な発生または不発生のリスクを割り当てる方法である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記方法は、前記対象において腎移植の必要性の将来的な発生または不発生のリスクを割り当てる方法である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記腎状態における1以上の将来的な変化は、前記体液サンプルを得た時点から72時間以内の、腎機能の将来的な損傷、腎機能の将来的な減少、腎機能における将来的な改善、および、将来的な急性腎不全(ARF)のうちの1以上を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項27】
前記腎状態における1以上の将来的な変化は、前記体液サンプルを得た時点から48時間以内の、腎機能の将来的な損傷、腎機能の将来的な減少、腎機能における将来的な改善、および、将来的な急性腎不全(ARF)のうちの1以上を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項28】
前記腎状態における1以上の将来的な変化は、前記体液サンプルを得た時点から72時間以内の、腎機能の将来的な損傷、腎機能の将来的な減少、腎機能における将来的な改善、および、将来的な急性腎不全(ARF)のうちの1以上を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項29】
前記腎状態における1以上の将来的な変化は、前記体液サンプルを得た時点から48時間以内の、腎機能の将来的な損傷、腎機能の将来的な減少、腎機能における将来的な改善、および、将来的な急性腎不全(ARF)のうちの1以上を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項30】
前記腎状態における1以上の将来的な変化は、前記体液サンプルを得た時点から24時間以内の、腎機能の将来的な損傷、腎機能の将来的な減少、腎機能における将来的な改善、および、将来的な急性腎不全(ARF)のうちの1以上を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項31】
腎状態の評価のための、可溶性P−セレクチン、タンパク質NOVホモログ、可溶性上皮増殖因子受容体、ネトリン−4、ハプトグロビン、熱ショックタンパク質β−1、α−1−アンチトリプシン、白血球エラスターゼ、可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6、可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6、可溶性細胞間接着分子2、活性型カスパーゼ−3および可溶性血小板内皮細胞接着分子からなる群から選択される1以上の腎臓損傷マーカーの使用。
【請求項32】
急性腎損傷の評価のための、可溶性P−セレクチン、タンパク質NOVホモログ、可溶性上皮増殖因子受容体、ネトリン−4、ハプトグロビン、熱ショックタンパク質β−1、α−1−アンチトリプシン、白血球エラスターゼ、可溶性腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6、可溶性腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6、可溶性細胞間接着分子2、活性型カスパーゼ−3および可溶性血小板内皮細胞接着分子からなる群から選択される1以上の腎臓損傷マーカーの使用。
【請求項33】
前記対象に割り当てられた、後の急性腎臓損傷、AKIステージの悪化、死亡、腎置換療法の必要性、腎毒素の回収の必要性、末期腎疾患、心不全、発作、心筋梗塞、もしくは慢性腎臓疾患の前記見込み増加または減少は、関心の事象が、前記体液サンプルを前記対象から得た時点から30日以内に多かれ少なかれ起こる可能性がある見込みである、請求項7に記載の方法。
【請求項34】
前記対象に割り当てられた、後の急性腎臓損傷、AKIステージの悪化、死亡、腎置換療法の必要性、腎毒素の回収の必要性、末期腎疾患、心不全、発作、心筋梗塞、もしくは慢性腎臓疾患の前記見込み増加または減少は、関心の事象が、前記体液サンプルを前記対象から得た時点から72時間以内に多かれ少なかれ起こる可能性がある見込みである、請求項7に記載の方法。
【請求項35】
前記対象に割り当てられた、後の急性腎臓損傷、AKIステージの悪化、死亡、腎置換療法の必要性、腎毒素の回収の必要性、末期腎疾患、心不全、発作、心筋梗塞、もしくは慢性腎臓疾患の前記見込み増加または減少は、関心の事象が、前記体液サンプルを前記対象から得た時点から24時間以内に多かれ少なかれ起こる可能性がある見込みである、請求項7に記載の方法。

【公表番号】特表2012−501456(P2012−501456A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525260(P2011−525260)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/055449
【国際公開番号】WO2010/025424
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(511053023)アスチュート メディカル,インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】