説明

腎疾患診断支援装置およびコンピュータプログラム

【課題】専門医でない医師であっても、早期に腎疾患の疑いを発見することが可能な腎疾患診断支援装置を提供する。
【解決手段】このデータ解析部4(腎疾患診断支援装置)は、尿試料中の赤血球数を反映した濃度情報および尿試料中の赤血球の形態を示す赤血球形態情報を取得するとともに、尿試料中の蛋白成分および脂質成分の量に基づく定量値情報を取得し、取得された赤血球の濃度情報および赤血球形態情報と、取得された各成分の定量値情報とに基づいて、少なくとも腎疾患に関する腎疾患診断支援情報を提供するCPU411を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿試料の測定結果に基づき診断支援情報を出力する腎疾患診断支援装置およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、腎不全となり透析に移行する患者数が増加しており、腎疾患を早期に発見することによって、透析に移行する患者数を低減することが望まれている。
【0003】
尿検査の結果から何らかの疾患の疑いを発見し、腎疾患を確定するまでの典型的な流れは、たとえば以下のようなものである。まず、最初の段階で、腎疾患の専門医以外の一般医師が、試験紙を用いた尿中成分の検査である尿定性検査を行い、この尿定性検査の結果から何らかの疾患が疑われると次の段階に移される。次の段階では、別の病院の一般医師により、尿定性検査や、尿中の有形成分(赤血球など)の検査である尿沈渣検査が何回か繰り返され、これらの検査でも何らかの疾患が疑われる場合には、さらに次の段階に移される。次の段階では、別の病院の一般医師が精密検査として尿定性検査や尿沈渣検査を行い、これらの検査により腎疾患が疑われた場合は、腎疾患の専門医による診断に移される。そして、尿沈渣検査の結果や、尿中の成分(蛋白質など)の化学定量検査である尿定量検査の結果に基づいて、専門医による腎疾患の確定診断が行われる。
【0004】
上記の尿沈渣検査や尿定量検査を行う技術には種々のものが知られている(たとえば、特許文献1および2参照)。
【0005】
上記特許文献1には、フローサイトメトリにより尿中の白血球、赤血球、上皮細胞、円柱、細菌等の細胞を分類・計数する細胞分析装置が開示されている。
【0006】
また、上記特許文献2には、尿中の蛋白成分や脂質成分の定量測定を行う自動分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−322885号公報
【特許文献2】特開2001−228158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
腎疾患による透析治療への移行を回避するためには、より早い段階で腎疾患の疑いを発見できることが必要である。しかしながら、専門医でない医師が、上述の尿定性検査や尿沈渣検査を行っている段階で早期に腎疾患の疑いを発見することは困難であるため、上述のような腎疾患の診断の流れでは、専門医による確定診断を受ける前に尿沈渣検査や尿定性検査が何回も行われることになり、専門医による確定診断を受けるまでに多くの時間がかかる。そのため、早期に専門医による診断を行うことが困難であり、専門医による腎疾患の確定診断がなされる頃には、腎疾患が亢進し、透析治療への移行の段階に近い状態になっていることもあった。このように、従来、専門医でない医師による検査段階で腎疾患の疑いを発見することが困難であるため、早期に腎疾患の疑いを発見することが困難であるという問題点がある。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、専門医でない医師であっても、早期に腎疾患の疑いを発見することが可能な腎疾患診断支援装置およびコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0010】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における腎疾患診断支援装置は、尿試料中の赤血球数を反映した数値情報および尿試料中の赤血球の形態を示す赤血球形態情報の少なくとも1つを取得する赤血球情報取得手段と、尿試料中の蛋白成分および脂質成分の少なくとも1つの量に基づく定量値情報を取得する定量値情報取得手段と、赤血球情報取得手段により取得された情報と、定量値情報取得手段により取得された定量値情報とに基づいて、少なくとも腎疾患に関する腎疾患診断支援情報を提供する診断支援情報提供手段とを備える。
【0011】
この発明の第1の局面による腎疾患診断支援装置では、上記のように、尿試料中の赤血球数を反映した数値情報および尿試料中の赤血球の形態を示す赤血球形態情報の少なくとも1つと、尿試料中の蛋白成分および脂質成分の少なくとも1つの量に基づく定量値情報とに基づいて、腎疾患に関する腎疾患診断支援情報を提供することによって、従来、専門医による確定診断において行われていた尿沈渣検査および尿定量検査の両方の結果(赤血球情報取得手段により取得された情報および定量値情報取得手段により取得された定量値情報)に基づいて腎疾患に関する腎疾患診断支援情報を提供することができるので、専門医でない医師であっても、提供された腎疾患診断支援情報を用いて腎疾患の疑いを発見することができる。これにより、複数段階を経て行われる腎疾患の診断過程において、専門医による確定診断が行われる前の段階であっても、本発明の腎疾患診断支援装置を用いれば、専門医でない医師によって腎疾患の疑いを発見することができるので、早期に腎疾患の疑いを発見することができる。
【0012】
上記第1の局面による腎疾患診断支援装置において、好ましくは、蛋白成分は、総蛋白質およびアルブミンの少なくとも一方を含み、脂質成分は、コレステロールを含む。このように構成すれば、尿試料中の総蛋白質、アルブミン、および、尿試料中のコレステロールの少なくとも1つの量から取得された定量値情報に基づいて、腎疾患に関する腎疾患診断支援情報を提供することができる。
【0013】
この場合において、好ましくは、腎疾患に関する腎疾患診断支援情報は、腎疾患の疑いに関する腎疾患診断支援情報を含み、診断支援情報提供手段は、赤血球情報取得手段により取得された情報と、定量値情報取得手段により取得された定量値情報とに基づいて、少なくとも腎疾患の疑いに関する腎疾患診断支援情報を提供する。このように構成すれば、赤血球情報取得手段により取得された尿試料中の赤血球に関する情報と、定量値情報取得手段により取得された尿試料中の総蛋白質、アルブミン、および、コレステロールの少なくとも1つの量から取得された定量値情報とに基づいて、腎疾患の疑いに関する腎疾患診断支援情報を提供することができる。
【0014】
上記腎疾患に関する腎疾患診断支援情報が腎疾患の疑いに関する腎疾患診断支援情報を含む構成において、好ましくは、腎疾患の疑いに関する腎疾患診断支援情報は、腎疾患の疑いがあることを示す腎疾患診断支援情報を含み、定量値情報取得手段は、尿試料中のアルブミンの量に基づくアルブミン定量値情報および尿試料中の総蛋白質の量に基づく総蛋白定量値情報の少なくとも一方を取得し、診断支援情報提供手段は、アルブミン定量値情報、および、総蛋白定量値情報の少なくともいずれかに基づいて、少なくとも腎疾患の疑いがあることを示す腎疾患診断支援情報を取得する。このように構成すれば、アルブミン定量値、および、総蛋白定量値の少なくともいずれかに基づいて、少なくとも腎疾患の疑いがあるか否かを発見することができる。
【0015】
上記定量値情報取得手段がアルブミン定量値情報および総蛋白定量値情報の少なくとも一方を取得する構成において、好ましくは、診断支援情報提供手段は、アルブミン定量値情報が第1閾値以上の場合、および、総蛋白定量値情報が第2閾値以上の場合の少なくともいずれかの場合に、少なくとも腎疾患の疑いがあることを示す腎疾患診断支援情報を取得する。このように構成すれば、アルブミン定量値と第1閾値との大小関係および総蛋白定量値と第2閾値との大小関係に基づいて、少なくとも腎疾患の疑いがあることを示す腎疾患診断支援情報を画一的に取得することができる。
【0016】
上記定量値情報取得手段がアルブミン定量値および総蛋白定量値の少なくとも一方を取得する構成において、好ましくは、腎疾患の疑いがあることを示す腎疾患診断支援情報は、腎疾患への疑いの程度を示す情報および腎疾患の進行性に関する情報の少なくとも一方をさらに含み、定量値情報取得手段は、尿試料中のコレステロールの量に基づくコレステロール定量値情報を取得し、診断支援情報提供手段は、アルブミン定量値情報および総蛋白定量値情報の少なくとも一方と、コレステロール定量値情報とに基づいて、腎疾患への疑いの程度を示す情報および腎疾患の進行性に関する情報の少なくとも一方を含む腎疾患の疑いがあることを示す腎疾患診断支援情報を提供する。このように構成すれば、腎疾患の疑いがあることを示す腎疾患診断支援情報によって、さらに腎疾患への疑いの程度を示す情報および腎疾患の進行性に関する情報の少なくとも一方を提供することができる。
【0017】
上記第1の局面による腎疾患診断支援装置において、好ましくは、診断支援情報提供手段は、赤血球情報取得手段により取得された情報と、定量値情報取得手段により取得された定量値情報とに基づいて、腎疾患以外の泌尿器系疾患の疑いに関する泌尿器系疾患診断支援情報をさらに提供する。このように構成すれば、腎疾患に関する腎疾患診断支援情報に加えて、さらに泌尿器系疾患の疑いに関する泌尿器系疾患診断支援情報を提供することができるので、より広範な診断支援情報を提供することができる。
【0018】
この場合において、好ましくは、泌尿器系疾患の疑いに関する泌尿器系疾患診断支援情報は、泌尿器系疾患の疑いがあることを示す泌尿器系疾患診断支援情報を含み、診断支援情報提供手段は、赤血球情報取得手段により取得された情報に基づいて、泌尿器系疾患の疑いがあることを示す泌尿器系疾患診断支援情報を取得する。このように構成すれば、赤血球情報取得手段により取得された情報に基づいて、泌尿器系疾患の疑いがあるか否かを発見することができる。
【0019】
上記赤血球情報取得手段により取得された情報に基づいて、泌尿器系疾患診断支援情報を取得する構成において、好ましくは、赤血球情報取得手段は、少なくとも赤血球形態情報を取得し、診断支援情報提供手段は、赤血球形態情報に基づいて、腎疾患に関する腎疾患診断支援情報、および、泌尿器系疾患の疑いがあることを示す泌尿器系疾患診断支援情報のうちの少なくとも一方を提供する。このように構成すれば、赤血球形態情報から、腎疾患に関する腎疾患診断支援情報および泌尿器系疾患の疑いがあることを示す泌尿器系疾患診断支援情報のうちの少なくとも一方を提供することができる。
【0020】
上記赤血球形態情報に基づいて、腎疾患診断支援情報および泌尿器系疾患診断支援情報のうちの少なくとも一方を提供する構成において、好ましくは、診断支援情報提供手段は、赤血球形態情報に示された尿試料中の赤血球の形態が略均一形態を有するか否かに応じて、腎疾患に関する腎疾患診断支援情報、および、泌尿器系疾患の疑いがあることを示す泌尿器系疾患診断支援情報のうちの少なくとも一方を提供する。このように構成すれば、赤血球形態情報から得られる赤血球の形態の均一性に基づいて、腎疾患に関する腎疾患診断支援情報および泌尿器系疾患の疑いがあることを示す泌尿器系疾患診断支援情報のうちの少なくとも一方を提供することができる。
【0021】
上記第1の局面による腎疾患診断支援装置において、好ましくは、定量値情報取得手段は、尿試料中のクレアチニンの濃度を示すクレアチニン濃度値を取得し、尿試料中の蛋白成分および脂質成分の少なくとも一方の量に対して、クレアチニン濃度値を用いたクレアチニン補正を行うことによって、尿試料中の蛋白成分および脂質成分の少なくとも一方の量に基づく定量値情報を取得する。このように構成すれば、クレアチニン補正を行うことによって定量値情報取得手段により取得される定量値情報の精度を向上させることができるので、定量値情報に基づく腎疾患診断支援情報の精度を向上させることができる。
【0022】
この発明の第2の局面におけるコンピュータプログラムは、尿試料を測定する尿試料測定装置に接続されたコンピュータを、尿試料中の赤血球数を反映した数値情報および尿試料中の赤血球の形態を示す赤血球形態情報の少なくとも1つを取得する赤血球情報取得手段、尿試料中の蛋白成分および脂質成分の少なくとも1つの量に基づく定量値情報を取得する定量値情報取得手段、赤血球情報取得手段により取得された情報と、定量値情報取得手段により取得された定量値情報とに基づいて、少なくとも腎疾患に関する診断支援情報を提供する診断支援情報提供手段、として機能させる。
【0023】
この発明の第2の局面によるコンピュータプログラムでは、上記のように、尿試料中の赤血球数を反映した数値情報および尿試料中の赤血球の形態を示す赤血球形態情報の少なくとも1つと、尿試料中の蛋白成分および脂質成分の少なくとも1つの量に基づく定量値情報とに基づいて腎疾患に関する腎疾患診断支援情報を提供することによって、従来、専門医による確定診断において行われていた尿沈渣検査および尿定量検査の両方の結果(赤血球情報取得手段により取得された情報および定量値情報取得手段により取得された定量値情報)に基づいて腎疾患に関する腎疾患診断支援情報を提供することができるので、専門医でない医師であっても提供された腎疾患診断支援情報によって腎疾患の疑いを発見することができる。これにより、複数段階を経て行われる腎疾患の診断過程において、専門医による確定診断が行われる前の段階であっても、本発明のコンピュータプログラムを用いれば、専門医でない医師によって腎疾患の疑いを発見することができるので、早期に腎疾患の疑いを発見することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態による腎疾患診断支援装置を用いた尿試料分析装置の全体構成を示した斜視図である。
【図2】図1に示した一実施形態による腎疾患診断支援装置を用いた尿試料分析装置の尿試料測定部を示したブロック図である。
【図3】図1に示した一実施形態による腎疾患診断支援装置を用いた尿試料分析装置の尿中有形成分測定部の構成を説明するための概略図である。
【図4】図1に示した一実施形態による腎疾患診断支援装置を用いた尿試料分析装置のデータ解析部を示したブロック図である。
【図5】図1に示した一実施形態による腎疾患診断支援装置を用いた尿試料分析装置との間でデータの送受信が可能な尿定性分析装置を示したブロック図である。
【図6】図1に示した一実施形態による腎疾患診断支援装置を用いた尿試料分析装置の尿試料解析処理動作を示したフローチャートである。
【図7】図6に示したステップS16の診断支援情報取得処理動作を示したフローチャートである。
【図8】図1に示した一実施形態による腎疾患診断支援装置を用いた尿試料分析装置の解析結果・診断支援画面を示した図である。
【図9】図1に示した一実施形態による腎疾患診断支援装置の変形例を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1〜図5を参照して、本発明の一実施形態による尿試料分析装置1の全体構成について説明する。なお、本実施形態では、本発明の腎疾患診断支援装置を尿試料分析装置1のデータ解析部4に適用した場合について説明する。
【0027】
本実施形態による尿試料分析装置1は、図1に示すように、尿試料測定部2と、搬送部3と、データ解析部4とを備えている。また、データ解析部4は、外部に設けられた尿定性分析装置5から尿定性の解析結果を受信可能に構成されている。
【0028】
尿試料測定部2は、図2に示すように、本体部21と、単一の本体部21の内部に設置された尿中有形成分測定部22および生化学測定部23と、通信部24と、制御部25とを含んでいる。また、尿中有形成分測定部22および生化学測定部23の両方は、図1に示すように、単一の筐体211により覆われている。
【0029】
尿中有形成分測定部22は、供給された尿試料に対してフローサイトメトリ方式で、尿中有形成分(赤血球、白血球、上皮細胞、円柱および細菌)に関する各測定項目の測定データを取得可能に構成されている。また、尿中有形成分測定部22は、図3に示すように、図示しない反応部と、搬送部3により搬送された尿試料を吸引する吸引ピペット221(図1参照)と、光学検出部222と、アナログ信号処理回路223と、アナログ信号処理回路223の出力をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ224とを有している。また、尿中有形成分測定部22は、吸引ピペット221により吸引した尿試料を、反応部において希釈液と染色液とで約4倍に希釈するように構成されている。また、反応部は、尿試料、希釈液および染色液を攪拌し、約35℃の一定温度下で約10秒間染色を行うように構成されている。また、尿中有形成分測定部22は、反応部において調製された尿試料をシース液とともに光学検出部222の後述するシースフローセル222c(図3参照)に供給するように構成されている。
【0030】
光学検出部222は、図3に示すように、レーザ光を出射する発光部222aと、照射レンズユニット222bと、レーザ光が照射されるシースフローセル222cと、発光部222aから出射されるレーザ光が進む方向の延長線上に配置されている集光レンズ222d、ピンホール222eおよびPD(フォトダイオード)222fと、発光部222aから出射されるレーザ光が進む方向と交差する方向に配置されている集光レンズ222g、ダイクロイックミラー222h、光学フィルタ222i、ピンホールを有するピンホール板222jおよびPMT(光電子倍増管)222kと、ダイクロイックミラー222hの側方に配置されているPD222lとを含んでいる。
【0031】
発光部222aは、シースフローセル222cの内部を通過する測定試料を含む試料流に対して光を出射するために設けられている。また、照射レンズユニット222bは、発光部222aから出射された光を平行光にするために設けられている。また、PD222fは、シースフローセル222cから出射された前方散乱光を受光するために設けられている。
【0032】
ダイクロイックミラー222hは、シースフローセル222cから出射された側方散乱光および側方蛍光を分離するために設けられている。具体的には、ダイクロイックミラー222hは、シースフローセル222cから出射された側方散乱光をPD222lに入射させるとともに、シースフローセル222cから出射された側方蛍光をPMT222kに入射させるために設けられている。また、PD222lは、側方散乱光を受光するために設けられている。また、PMT222kは、側方蛍光を受光するために設けられている。また、PD222f、222lおよびPMT222kは、それぞれ、受光した光信号を電気信号に変換する機能を有する。
【0033】
アナログ信号処理回路223は、図3に示すように、アンプ223a、223bおよび223cを含んでいる。また、アンプ223a、223bおよび223cは、それぞれ、PD222f、PMT222kおよびPD222lから出力された電気信号を増幅および波形処理するために設けられている。また、増幅および波形処理がなされた電気信号は、A/Dコンバータ224を介して、制御部25に出力される。
【0034】
生化学測定部23は、尿試料に含有されている生化学成分に関する定量的な情報を取得する機能を有している。具体的には、生化学測定部23は、尿試料を装置内部に取り込み、取り込んだ尿試料に試薬を分注するように構成されている。そして、生化学測定部23は、試薬が分注された尿試料に光を照射することによって生じる透過光を計測するように構成されている。このように、生化学測定部23は、光学的手法を用いて尿試料を測定することで、尿試料に含有されている生化学成分に関する定量的な情報を取得するように構成されている。具体的には、生化学測定部23では、尿試料中の総蛋白質、アルブミン、コレステロールおよびクレアチニンの生化学定量測定データを取得可能である。また、生化学測定部23は、搬送部3により搬送された尿試料を吸引ピペット231(図1参照)で吸引して測定部内に取り込むように構成されている。
【0035】
通信部24は、Ethernet(登録商標)インタフェースであり、尿試料測定部2は、通信部24を介してLANケーブルによりデータ解析部4に接続されている。そして、尿試料測定部2は、所定の通信プロトコル(TCP/IP)を用いて、尿中有形成分測定部22および生化学測定部23により取得された各々の測定データをデータ解析部4に送信するように構成されている。
【0036】
制御部25は、CPU25aおよび記憶部25bを有している。CPU25aは、記憶部25bに記憶されているコンピュータプログラムを実行することによって、各部の動作を制御するように構成されている。すなわち、CPU25aは、尿中有形成分測定部22および生化学測定部23の両方の動作を制御するように構成されている。
【0037】
搬送部3は、図1に示すように、尿試料測定部2の前面側(矢印Y1方向側)に配置されている。また、搬送部3は、尿試料測定部2の尿中有形成分測定部22および生化学測定部23のそれぞれに尿試料を搬送するように構成されている。具体的には、搬送部3は、ラック101を搬送することによって、尿中有形成分測定部22の吸引ピペット221の下方の位置(尿中有形成分測定部22の尿試料取込位置)および生化学測定部23の吸引ピペット231の下方の位置(生化学測定部23の尿試料取込位置)に、ラック101に保持されたサンプル容器100を移送するように構成されている。
【0038】
また、搬送部3は、複数のサンプル容器100を保持可能なラック101を、尿中有形成分測定部22の尿試料取込位置および生化学測定部23の尿試料取込位置を通過させながら、循環させることが可能に構成されている。具体的には、搬送部3は、第1横送り部31と、第2横送り部32と、第1横送り部31および第2横送り部32の間に設けられたバッファ部33とを有している。また、搬送部3は、第1横送り部31にラック101を送り込むためのラック送込部34と、第2横送り部32からラック101を送り出すためのラック送出部35と、バッファ部33よりも手前側(矢印Y1方向側)でラック送込部34およびラック送出部35を接続する第3横送り部36とを有している。すなわち、搬送部3は、第1横送り部31、バッファ部33、第2横送り部32、ラック送出部35および第3横送り部36により形成される循環搬送路を有している。これにより、搬送部3は、循環搬送路に沿ってラック101を循環させながら、尿中有形成分測定部22の尿試料取込位置および生化学測定部23の尿試料取込位置にサンプル容器100を配置させることが可能である。
【0039】
また、搬送部3には、各サンプル容器100に貼付された図示しないバーコードを読み取るためのバーコード読取部37および38が設けられている。具体的には、バーコード読取部37は、第1横送り部31沿いで、かつ、尿中有形成分測定部22の尿試料取込位置よりもラック送込部34側(矢印X2方向側)に配置されている。これにより、バーコード読取部37は、吸引ピペット221により尿試料が吸引される前に、第1横送り部31により移送されるサンプル容器100のバーコードを読み取ることが可能である。また、バーコード読取部38は、第2横送り部32沿いで、かつ、生化学測定部23の尿試料取込位置よりもバッファ部33側(矢印X2方向側)に配置されている。これにより、バーコード読取部38は、吸引ピペット231により尿試料が吸引される前に、第2横送り部32により移送されるサンプル容器100のバーコードを読み取ることが可能である。また、バーコード読取部37および38は、それぞれ、読み取った検体ID(バーコード情報)を随時データ解析部4に送信するように構成されている。なお、各サンプル容器100に貼付されたバーコードは、各尿試料に固有に付されたものであり、各尿試料の管理などに使用される。
【0040】
データ解析部4は、図1および図4に示すように、制御部41(図4参照)と、表示部42と、入力デバイス43とから主として構成されたコンピュータによって構成されている。
【0041】
制御部41は、図4に示すように、CPU411と、ROM412と、RAM413と、ハードディスク414と、読出装置415と、入出力インタフェース416と、通信部417と、画像出力インタフェース418とから主として構成されている。CPU411、ROM412、RAM413、ハードディスク414、読出装置415、入出力インタフェース416、通信部417、および画像出力インタフェース418は、バス419によって接続されている。
【0042】
CPU411は、ROM412に記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM413にロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述する尿試料解析プログラム44aおよび診断支援プログラム44bをCPU411が実行することにより、コンピュータがデータ解析部4として機能する。
【0043】
ここで、本実施形態では、データ解析部4のCPU411は、通信部417を介して受信する尿中有形成分測定部22の測定データを解析して、尿有形成分解析結果を得るように構成されている。具体的には、CPU411は、赤血球(RBC)、白血球(WBC)、上皮細胞(EC)、円柱(CAST)および細菌(BACT)の尿有形成分測定データを解析することによって、各細胞数を反映した各細胞の濃度情報、および赤血球の形態情報としての赤血球粒度分布情報を取得するように構成されている。また、CPU411は、通信部417を介して受信する生化学測定部23の測定データを解析して、生化学定量解析結果を得るように構成されている。具体的には、CPU411は、総蛋白質、アルブミン、コレステロールおよびクレアチニンの生化学定量測定データを解析することによって、尿試料中の総蛋白質(マイクロ総蛋白質)の濃度を示すマイクロ総蛋白質濃度、尿試料中のアルブミン(マイクロアルブミン)の濃度を示すマイクロアルブミン濃度、尿試料中のコレステロール(マイクロコレステロール)の濃度を示すマイクロコレステロール濃度、および、尿試料中のクレアチニン(マイクロクレアチニン)の濃度を示すマイクロクレアチニン濃度を取得するように構成されている。このように尿中有形成分測定部22による測定データおよび生化学測定部23による測定データの両方が共通のCPU411により解析される。
【0044】
また、CPU411は、取得したマイクロクレアチニン濃度を用いたクレアチニン補正を行うことによって、マイクロ総蛋白質、マイクロアルブミンおよびマイクロコレステロールの1日あたりの排泄量推定値を取得可能に構成されている。
【0045】
具体的には、CPU411は、以下の式(1)に基づいて、1日あたりのマイクロ総蛋白質排泄量推定値(m−TP)、1日あたりのマイクロアルブミン排泄量推定値(m−ALB)、および、1日あたりのマイクロコレステロール排泄量推定値(m−CHO)を取得する。
【0046】
Z=X×a÷Y・・・・・(1)
上記式(1)において、Zは、対象成分の1日あたりの排泄量推定値(mg)、Xは、対象成分の濃度(mg/dL)、Yは、マイクロクレアチニン濃度(g/dL)、aは、被験者の体格、年齢および性別を考慮した係数をそれぞれ表す。なお、上記式(1)においては、標準的な筋肉量の被験者の1日あたりの尿中へのクレアチニン排泄量が1gであると仮定している。また、クレアチニン濃度は、被験者の筋肉量に比例することが知られており、被験者が、たとえば筋肉量が多い若年成人男性の場合には、a>1とし、筋肉量が少ない高齢女性の場合には、a<1とすることが好ましい。
【0047】
ROM412は、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなどによって構成されており、CPU411に実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータなどが記録されている。
【0048】
RAM413は、SRAMまたはDRAMなどによって構成されている。RAM413は、ROM412およびハードディスク414に記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU411の作業領域として利用される。
【0049】
ハードディスク414は、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムなど、CPU411に実行させるための種々のコンピュータプログラムおよびそのコンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。尿試料解析プログラム44aおよび診断支援プログラム44bも、このハードディスク414にインストールされている。
【0050】
読出装置415は、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブなどによって構成されており、可搬型記録媒体44に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体44には、尿試料解析プログラム44aおよび診断支援プログラム44bが格納されており、コンピュータがその可搬型記録媒体44から尿試料解析プログラム44aおよび診断支援プログラム44bを読み出してハードディスク414にインストールすることが可能である。
【0051】
なお、上記尿試料解析プログラム44aおよび診断支援プログラム44bは、それぞれ、可搬型記録媒体44によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータと通信可能に接続された外部の機器から上記電気通信回線を通じて提供することも可能である。たとえば、上記尿試料解析プログラム44aおよび診断支援プログラム44bがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータがアクセスして、尿試料解析プログラム44aおよび診断支援プログラム44bをダウンロードし、これらをハードディスク414にインストールすることも可能である。
【0052】
また、ハードディスク414には、たとえば、米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)などのグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、尿試料解析プログラム44aおよび診断支援プログラム44bは、それぞれ上記オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0053】
入出力インタフェース416は、たとえば、USB、IEEE1394、RS−232Cなどのシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインタフェース、およびD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインタフェースなどから構成されている。入出力インタフェース416には、入力デバイス43が接続されており、ユーザがその入力デバイス43を使用することにより、コンピュータにデータを入力することが可能である。これにより、ユーザは、データ解析部4に対して尿中有形成分測定部22の測定指示(測定オーダの入力)および生化学測定部23の測定指示(測定オーダの入力)を行うことが可能である。
【0054】
通信部417は、たとえば、Ethernet(登録商標)インタフェースである。データ解析部4は、通信部417を介して、尿中有形成分測定部22および生化学測定部23のそれぞれから測定データを受信可能に構成されている。また、データ解析部4は、通信部417を介して、外部に設けられた尿定性分析装置5から尿定性解析結果の情報を受信可能に構成されている。さらに、データ解析部4は、通信部417を介して、搬送部3および尿試料測定部2のそれぞれに制御信号を送信可能である。
【0055】
画像出力インタフェース418は、LCDまたはCRTなどで構成された表示部42に接続されており、CPU411から与えられた画像データに応じた映像信号を表示部42に出力するように構成されている。表示部42は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示するように構成されている。
【0056】
尿定性分析装置5は、図5に示すように、CPU、ROM、RAMなどからなる制御部51と、データ解析部4との間でデータの送受信を行う通信部52と、尿試料の測定を行う第1測定部53および第2測定部54とを有している。また、尿定性分析装置5は、潜血濃度、蛋白濃度、白血球濃度、亜硝酸塩濃度およびブドウ糖濃度について定性評価する機能を有している。
【0057】
制御部51は、後述するように第1測定部53により測定を行う潜血濃度、蛋白濃度、白血球濃度、亜硝酸塩濃度およびブドウ糖濃度について、(−)、(±)、(+)、(2+)、(3+)、(4+)、(5+)、(6+)、(7+)の9段階に分類するように構成されている。この際、制御部51は、第1測定部53で用いられる試験紙の変色度合いに基づいて、各尿試料を上記の9段階に分類するように構成されている。また、制御部51は、上記の分類結果(解析結果)の情報および第2測定部54により得られる比重の情報を通信部52を介してデータ解析部4に送信可能である。
【0058】
第1測定部53は、尿試料に対して、潜血濃度、蛋白濃度、白血球濃度、亜硝酸塩濃度およびブドウ糖濃度の測定を行うように構成されている。また、第2測定部54は、尿試料の比重を測定するように構成されている。
【0059】
次に、図6を参照して、本実施形態による尿試料分析装置1の尿試料解析プログラム44aによる尿試料解析処理動作について説明する。
【0060】
まず、ステップS1において、CPU411は、バーコード読取部37から測定対象の尿試料の検体ID(バーコード情報)を受信する。そして、ステップS2において、CPU411は、ユーザから尿中有形成分測定部22の測定指示(測定オーダ)があったか否かを判定し、測定指示がある場合には、ステップS6に進む。一方、測定指示がない場合には、ステップS3において、CPU411は、外部データを受け付けたか否かを判定し、受け付けていない場合には、ステップS9に進む。ここで、外部データとは、外部に設けられた尿定性分析装置5などから取得するデータである。外部データを受け付けた場合には、ステップS4において、CPU411は、外部データに基づいて尿中有形成分測定部22による測定の要否判定を行う。具体的には、たとえば尿定性分析装置5から尿定性解析結果の情報を受け付けた場合に、CPU411は、9段階に分類された潜血濃度の度合いに基づいて、尿中有形成分測定部22による測定の要否判定を行う。そして、ステップS5において、尿中有形成分測定部22による測定が必要であれば、ステップS6に進み、尿中有形成分測定部22による測定が不要であれば、ステップS9に進む。
【0061】
ステップS6において、CPU411は、尿中有形成分測定部22に対して測定指示を行う。具体的には、CPU411が通信部417を介して送信した測定指示信号を、尿試料測定部2の制御部25が通信部24を介して受信し、制御部25が尿中有形成分測定部22に測定動作を開始させる。これにより、尿中有形成分測定部22は、尿試料取込位置でサンプル容器100から測定対象の尿試料を吸引して、尿試料中の赤血球(RBC)、白血球(WBC)、上皮細胞(EC)、円柱(CAST)および細菌(BACT)に関する測定データを取得する。そして、制御部25は、尿中有形成分測定部22により取得された尿中有形成分測定データを通信部24を介してデータ解析部4に送信する。その後、ステップS7において、CPU411は、尿中有形成分測定部22から尿試料中の赤血球(RBC)、白血球(WBC)、上皮細胞(EC)、円柱(CAST)および細菌(BACT)に関する尿中有形成分測定データを受信する。そして、ステップS8において、CPU411は、受信した尿中有形成分測定データの解析を行う。これにより、尿中有形成分解析結果として、赤血球(RBC)、白血球(WBC)、上皮細胞(EC)、円柱(CAST)および細菌(BACT)の各細胞数を反映した各細胞の濃度情報、および赤血球の形態情報としての赤血球粒度分布情報が取得される。
【0062】
そして、ステップS9において、CPU411は、ユーザから生化学測定部23の測定指示(測定オーダ)があったか否かを判定し、測定指示がある場合には、ステップS12に進む。一方、測定指示がない場合には、ステップS10において、CPU411は、尿中有形成分解析結果に基づいて、生化学測定部23による測定の要否判定を行う。具体的には、CPU411は、赤血球濃度が所定の閾値未満であれば、生化学測定部23による測定が不要であると判定し、赤血球濃度が所定の閾値以上であれば、生化学測定部23による測定が必要であると判定する。この場合、赤血球以外の細胞の濃度情報に基づいて生化学測定部23による測定の要否判定を行ってもよいし、複数種類の細胞の濃度情報に基づいて生化学測定部23による測定の要否判定を行ってもよい。また、赤血球粒度分布情報に基づいて生化学測定部23による測定の要否判定を行ってもよい。そして、ステップS11において、生化学測定部23による測定が必要であれば、ステップS12に進み、生化学測定部23による測定が不要であれば、ステップS15に進む。
【0063】
ステップS12において、CPU411は、生化学測定部23に対して測定指示を行う。具体的には、CPU411が通信部417を介して送信した測定指示信号を、尿試料測定部2の制御部25が通信部24を介して受信し、制御部25が生化学測定部23に測定動作を開始させる。これにより、生化学測定部23は、尿試料取込位置でサンプル容器100から測定対象の尿試料を吸引して、尿試料中の総蛋白質、アルブミン、コレステロールおよびクレアチニンの生化学定量測定データを取得する。そして、制御部25は、生化学測定部23により取得された生化学定量測定データを通信部24を介してデータ解析部4に送信する。その後、ステップS13において、CPU411は、生化学測定部23から尿試料中の総蛋白質、アルブミン、コレステロールおよびクレアチニンの生化学定量測定データを受信する。そして、ステップS14において、CPU411は、受信した生化学定量測定データの解析を行う。これにより、生化学定量解析結果として、マイクロ総蛋白質濃度、マイクロアルブミン濃度、マイクロコレステロール濃度およびマイクロクレアチニン濃度が取得される。さらに、マイクロクレアチニン濃度を用いたクレアチニン補正を行うことにより、生化学定量解析結果として、1日あたりのマイクロ総蛋白質排泄量推定値(m−TP)、1日あたりのマイクロアルブミン排泄量推定値(m−ALB)、および、1日あたりのマイクロコレステロール排泄量推定値(m−CHO)が取得される。
【0064】
そして、ステップS15において、CPU411は、尿中有形成分解析結果および生化学定量解析結果の両方を取得したか否かを判断し、いずれか一方でも取得していない場合には、ステップS17に進む。両方の解析結果を取得した場合には、ステップS16において、CPU411により、診断支援情報取得処理動作が実行される。
【0065】
ここで、図7を参照して、図6に示すステップS16の診断支援プログラム44bによる診断支援情報取得処理動作について説明する。
【0066】
まず、ステップS161において、CPU411は、生化学定量解析結果として取得されたマイクロ総蛋白質排泄量推定値(m−TP)が閾値Pよりも小さいか否かを判断し、小さい場合には、ステップS162に進む。そして、ステップS162において、CPU411は、生化学定量解析結果として取得されたマイクロアルブミン排泄量推定値(m−ALB)が閾値M1よりも小さいか否かを判断し、小さい場合には、ステップS163に進む。
【0067】
ステップS163において、CPU411は、尿中有形成分解析結果として取得された赤血球濃度が所定濃度L1よりも小さいか否かを判断し、小さい場合には、ステップS164において、CPU411は、診断支援情報なしと判定する。すなわち、対象の尿試料について、(1)マイクロ総蛋白質排泄量推定値(m−TP)が閾値Pよりも小さい、(2)マイクロアルブミン排泄量推定値(m−ALB)が閾値M1よりも小さい、(3)赤血球濃度が所定濃度L1よりも小さいという(1)〜(3)のすべての条件を満たす場合には、CPU411により、診断支援情報なしと判定される。
【0068】
一方、ステップS163で赤血球濃度が所定濃度L1以上の場合には、ステップS165において、CPU411は、尿試料中の赤血球が均一赤血球であるか否かを判断する。具体的には、CPU411により、尿中有形成分解析結果として取得された赤血球の形態情報としての赤血球粒度分布情報に基づいて、尿試料中の赤血球の大部分が、形態の変形度合いが小さい(変形量が少ない)均一赤血球であるか、または形態の変形度合いが大きい(変形量が多い)赤血球(均一赤血球でない赤血球)であるかが判断される。均一赤血球である場合には、ステップS166において、CPU411は、泌尿器系疾患(腎疾患を含まない)の疑いがあると判定し、均一赤血球でない場合には、ステップS167において、CPU411は、腎疾患の疑いがあると判定する。なお、均一赤血球であるか否かを判断することによって、赤血球が尿中に長時間存在していたか否かを推定することが可能であり、赤血球が尿中に長時間存在していた場合は、腎疾患が疑われ、赤血球が尿中に短時間しか存在していない場合には、少なくとも泌尿器系疾患が疑われる。
【0069】
すなわち、赤血球が尿中に長時間存在している場合には、形態の変形度合いが大きくなり、均一赤血球ではなくなるので、腎疾患が疑われると判定可能であり、赤血球が尿中に短時間しか存在していない場合には、形態の変形度合いが小さく、均一赤血球になるので、少なくとも泌尿器系疾患が疑われると判定可能である。なお、後述するように、赤血球が尿中に短時間しか存在しておらず形態の変形量が少ない場合(均一赤血球である場合)でも、泌尿器系疾患に加えて腎疾患の疑いがあると判定する場合もある。このように、本実施形態では、腎疾患だけでなく泌尿器系疾患の疑いに関する診断支援情報も取得され、赤血球の形態情報に基づいて、腎疾患の疑いおよび泌尿器系疾患の疑いがあることを判定する。
【0070】
マイクロ総蛋白質排泄量推定値(m−TP)が閾値P以上であるか、または、マイクロアルブミン排泄量推定値(m−ALB)が閾値M1以上であれば、ステップS168において、CPU411は、生化学定量解析結果として取得されたマイクロコレステロール排泄量推定値(m−CHO)が閾値Nよりも小さいか否かを判断する。閾値Nよりも小さい場合には、ステップS169において、CPU411は、尿中有形成分解析結果として取得された赤血球濃度が所定濃度L2よりも小さいか否かを判断し、小さい場合には、ステップS170において、CPU411は、非進行性の腎疾患の疑いがあると判定する。
【0071】
ステップS169で赤血球濃度が所定濃度L2以上の場合には、ステップS171において、CPU411は、尿試料中の赤血球が均一赤血球であるか否かを判断し、均一赤血球である場合には、ステップS172において、CPU411は、泌尿器系疾患の疑いがあり、かつ、腎疾患の疑いもあると判定する。均一赤血球でない場合には、ステップS173において、CPU411は、腎疾患の疑いがあると判定する。なお、所定濃度L1は、所定濃度L2と同値であってもよいが、所定濃度L2よりも小さい濃度とすることが好ましい。
【0072】
ステップS168でマイクロコレステロール排泄量推定値(m−CHO)が閾値N以上である場合には、ステップS174において、CPU411は、尿中有形成分解析結果として取得された赤血球濃度が所定濃度L2よりも小さいか否かを判断し、小さい場合には、ステップS175において、CPU411は、進行性の腎疾患の疑いがあると判定する。
【0073】
ステップS174で赤血球濃度が所定濃度L2以上の場合には、ステップS176において、CPU411は、尿試料中の赤血球が均一赤血球であるか否かを判断し、均一赤血球である場合には、ステップS177において、CPU411は、泌尿器系疾患の疑いがあり、かつ、腎疾患の強い疑いがあると判定する。均一赤血球でない場合には、ステップS178において、CPU411は、腎疾患の強い疑いがあると判定する。
【0074】
上記のように、本実施形態においては、マイクロ総蛋白質排泄量推定値(m−TP)が閾値Pより小さくない、または、マイクロアルブミン排泄量推定値(m−ALB)が閾値M1より小さくない場合には、マイクロコレステロール排泄量推定値(m−CHO)および赤血球濃度の値と、均一赤血球か否かとにかかわらず、腎疾患の疑い(強い疑いも含む)があると判定される。
【0075】
また、マイクロ総蛋白質排泄量推定値(m−TP)が閾値Pより小さくない、または、マイクロアルブミン排泄量推定値(m−ALB)が閾値M1より小さくない場合で、かつ、マイクロコレステロール排泄量推定値(m−CHO)が閾値Nよりも小さい場合には、赤血球濃度の値および均一赤血球か否かにかかわらず、腎疾患の疑いはあるが、腎疾患の強い疑いはないと判定される。すなわち、マイクロコレステロール排泄量推定値(m−CHO)に基づいて、腎疾患の程度が判定される。また、マイクロ総蛋白質排泄量推定値(m−TP)が閾値Pより小さくない、または、マイクロアルブミン排泄量推定値(m−ALB)が閾値M1より小さくない場合で、かつ、マイクロコレステロール排泄量推定値(m−CHO)が閾値N以上の場合には、赤血球濃度の値および均一赤血球か否かにかかわらず、進行性の腎疾患であると判定される。このように、本実施形態では、マイクロコレステロール排泄量推定値(m−CHO)に基づいて、腎疾患の進行性が判定される。
【0076】
なお、本実施形態おいては、上述のように、尿中有形成分の検査と併せて、尿中生化学成分の定量検査を実施することにより、生化学定量検査において異常値を呈する腎疾患、例えば、IgA腎症、急速進行性腎炎、糖尿病性腎症等の腎疾患の疑いに関する診断支援情報を取得することが可能となる。また、腎臓以外の泌尿器系の疾患としては、膀胱炎、尿道炎等の疾患の疑いに関する診断支援情報を取得することが可能である。
【0077】
ステップS16の診断支援情報取得処理の後、図6のステップS17において、CPU411は、図8に示すように、表示部42に解析結果・診断支援画面421を表示させ、尿試料解析処理動作を終了する。解析結果・診断支援画面421には、対応する尿試料の再検査が望ましい場合には、REVIEW表示421aが目立つ赤色で表示される。また、解析結果・診断支援画面421には、外部の尿定性分析装置5から受信した尿定性解析結果を表示する定性データ領域421b、尿中有形成分解析結果を表示する有形成分解析領域421cおよびコメント欄421dが設けられている。さらに、解析結果・診断支援画面421には、生化学定量解析結果を表示する定量データ領域421e、診断支援情報を表示する診断支援情報領域421fおよび被験者情報を表示する被験者情報領域421gが設けられている。
【0078】
定性データ領域421bには、成分ごとに前回および今回の両方の尿定性解析結果が表示される。また、有形成分解析領域421cには、赤血球(RBC)、白血球(WBC)、上皮細胞(EC)、円柱(CAST)および細菌(BACT)の細胞ごとに、前回および今回の両方の濃度値が表示される。さらに、有形成分解析領域421cには、散乱光強度や蛍光強度等に基づいて尿試料中の粒子がプロットされた二次元のスキャッタグラムが表示される。
【0079】
定量データ領域421eには、マイクロ総蛋白質濃度(TP)、マイクロアルブミン濃度(ALB)、マイクロコレステロール濃度(CHO)およびマイクロクレアチニン濃度(CRE)の成分ごとに、前回および今回の両方の濃度値が表示される。なお、表示設定を変更することによって、定量データ領域421eには、1日あたりのマイクロ総蛋白質排泄量推定値(m−TP)、1日あたりのマイクロアルブミン排泄量推定値(m−ALB)、および、1日あたりのマイクロコレステロール排泄量推定値(m−CHO)を表示させることも可能である。また、診断支援情報領域421fには、図7に示す診断支援情報取得処理により取得された今回の診断支援情報と、前回の診断支援情報との両方が表示される。また、被験者情報領域421gには、被験者の氏名や生年月日などの被験者識別情報が表示される。
【0080】
本実施形態では、上記のように、データ解析部4のCPU411を、尿試料中の赤血球数を反映した赤血球の濃度情報および赤血球形態情報としての赤血球粒度分布情報と、尿試料中の総蛋白質の量に基づく1日あたりのマイクロ総蛋白質排泄量推定値(m−TP)、尿試料中のアルブミンの量に基づく1日あたりのマイクロアルブミン排泄量推定値(m−ALB)、および、尿試料中のコレステロールの量に基づく1日あたりのマイクロコレステロール排泄量推定値(m−CHO)とに基づいて、腎疾患の疑いに関する診断支援情報を取得し、表示部42の解析結果・診断支援画面421における診断支援情報領域421fに出力するように構成することによって、出力された診断支援情報により、専門医でない医師であっても腎疾患の疑いを発見することができる。これにより、複数段階を経て行われる腎疾患の診断過程において、専門医による確定診断が行われる前の段階であっても、本発明の腎疾患診断支援装置としてのデータ解析部4を用いれば、専門医でない医師によって腎疾患の疑いを発見することができるので、早期に腎疾患の疑いを発見することができる。
【0081】
また、本実施形態では、データ解析部4のCPU411が、マイクロアルブミン排泄量推定値(m−ALB)が閾値M1以上の場合、および、マイクロ総蛋白質排泄量推定値(m−TP)が閾値P以上の場合の少なくともいずれかの場合に、少なくとも腎疾患の疑いがあると判定するように構成することによって、マイクロアルブミン排泄量推定値(m−ALB)と閾値M1との大小関係、および、マイクロ総蛋白質排泄量推定値(m−TP)と閾値Pとの大小関係に基づいて、少なくとも腎疾患の疑いがあることを画一的に判定することができる。
【0082】
また、本実施形態では、データ解析部4のCPU411が、マイクロアルブミン排泄量推定値(m−ALB)が閾値M1以上の場合、および、マイクロ総蛋白質排泄量推定値(m−TP)が閾値P以上の場合の少なくともいずれかの場合に、マイクロコレステロール排泄量推定値(m−CHO)に基づいて、腎疾患への疑いの程度(疑い、または強い疑い)および腎疾患の進行性(進行性、または非進行性)を判定するように構成することによって、腎疾患の疑いがあることに加えて、さらに腎疾患への疑いの程度および腎疾患の進行性についても判定することができる。
【0083】
また、本実施形態では、データ解析部4のCPU411が、赤血球の形態情報としての赤血球粒度分布情報から、形態の変形度合いが小さい(変形量が少ない)均一赤血球であるか、または形態の変形度合いが大きい(変形量が多い)赤血球(均一赤血球でない赤血球)であるかに応じて、腎疾患の疑いおよび泌尿器系疾患の疑い(または腎疾患および泌尿器形疾患の両方の疑い)があることを判定するように構成することによって、赤血球形態情報としての赤血球粒度分布情報に基づいて、腎疾患に関する診断支援情報および泌尿器系疾患に関する診断支援情報のうちの少なくとも一方を提供することができる。
【0084】
また、本実施形態では、データ解析部4のCPU411が、尿試料中の総蛋白質、アルブミンおよびコレステロールの量に対して、クレアチニン濃度を用いたクレアチニン補正を行うことによって、尿試料中の総蛋白質、アルブミンおよびコレステロールの量に基づく総蛋白質、アルブミンおよびコレステロールの1日あたりの推定の排泄量を取得するように構成することによって、採取時間によってばらつく尿試料中の成分量に基づく定量値(1日あたりの排泄量推定値)の精度を向上させることができるので、定量値に基づく診断支援情報の精度を向上させることができる。
【0085】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0086】
たとえば、上記実施形態では、データ解析部により、赤血球、白血球、上皮細胞、円柱および細菌の濃度情報と、赤血球粒度分布情報とを取得する場合の例を示したが、本発明はこれに限らず、尿試料中の赤血球濃度および赤血球粒度分布情報のいずれか一方だけを取得する構成であってもよい。また、この際、尿試料中の赤血球数に基づく赤血球数値であれば、赤血球濃度の代わりに、たとえば、赤血球数であってもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、尿中有形成分測定部はフローサイトメトリ方式で赤血球を測定し、この尿中有形成分測定部で得られた測定情報に基づいて、データ解析部が赤血球の形態情報を取得する構成を示したが、本発明はこれに限らず、たとえば、尿中有形成分測定部が尿試料中の赤血球を撮像し、尿中有形成分測定部で得られた赤血球画像の画像処理をデータ解析部が行うことにより、赤血球の形態情報(均一赤血球であるか否かを示す情報)を取得する構成であってもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、データ解析部により、尿試料中の赤血球、白血球、上皮細胞、円柱および細菌に関する測定データを取得する構成を示したが、本発明はこれに限らず、尿試料中の赤血球に関する測定データを取得可能であれば、尿試料中の白血球、上皮細胞、円柱および細菌に関する測定データを取得しない構成であってもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、データ解析部により、マイクロ総蛋白質濃度、マイクロアルブミン濃度、マイクロコレステロール濃度およびマイクロクレアチニン濃度を取得する構成を示したが、本発明はこれに限らず、マイクロ総蛋白質濃度、マイクロアルブミン濃度およびマイクロコレステロール濃度のうちの少なくとも1つを取得可能であれば、他の成分濃度を取得しない構成であってもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、データ解析部により、赤血球の濃度情報および赤血球の粒度分布情報と、マイクロ総蛋白質排泄量推定値(m−TP)、マイクロアルブミン排泄量推定値(m−ALB)、および、マイクロコレステロール排泄量推定値(m−CHO)とに基づいて、腎疾患に関する診断支援情報を提供する構成を示したが、本発明はこれに限らず、赤血球の濃度情報および赤血球の粒度分布情報のうちの少なくとも1つと、マイクロ総蛋白質排泄量推定値、マイクロアルブミン排泄量推定値およびマイクロコレステロール排泄量推定値のうちの少なくとも1つとに基づき、診断支援情報を提供すれば、赤血球の濃度情報および粒度分布情報のうちの他の1つと、各成分の排泄量推定値のうちの他の少なくとも1つとに基づくことなく診断支援情報を提供する構成であってもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、データ解析部により、腎疾患に関する診断支援情報と、泌尿器形疾患の疑いに関する診断支援情報とを提供する構成を示したが、本発明はこれに限らず、データ解析部が、腎疾患に関する診断支援情報だけを提供する構成であってもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、データ解析部により「腎疾患(疑)」または「腎疾患(強疑)」と判定することにより、腎疾患への疑いがあること、および腎疾患への疑いの程度を示す例を示したが、本発明はこれに限らず、腎疾患への疑いの程度を、たとえば1〜10の数値で表示することにより、腎疾患への疑いの程度を示す構成であってもよい。また、たとえば「IgA腎症」などの具体的な疾患名を表示することにより、腎疾患への疑いがあることを示す構成であってもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、データ解析部により、腎疾患の疑いに関する診断支援情報として、腎疾患への疑いがあること、および、腎疾患への疑いの程度と、腎疾患の進行性に関する情報とを取得し、出力する例を示したが、本発明はこれに限らず、腎疾患の疑いに関する上記以外の情報を取得して、診断支援情報として出力する構成であってもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、尿中有形成分測定部と生化学測定部とを1つの装置内に収容した例を示したが、本発明はこれに限らず、図9に示す変形例のように、それぞれが搬送部を有する別個の尿中有形成分測定装置と生化学測定装置とを備える構成であってもよい。この変形例では、腎疾患診断支援装置の一例であるシステム制御部800は、尿中有形成分測定装置622および生化学測定装置623と、それぞれコンピュータからなるデータ解析部604aおよび604bを介して接続されている。また、システム制御部800は、尿中有形成分測定装置622および生化学測定装置623に尿試料を搬送するための搬送ライン700と接続され、これらの各装置を制御するホストコンピュータとしての機能を有する。また、尿中有形成分測定装置622(生化学測定装置623)は、測定部22(23)と、通信部624a(624b)と、搬送部603a(603b)と、制御部625a(625b)とを有する。尿中有形成分測定装置622により測定された測定データは、データ解析部604aにより解析され、システム制御部800に送信される。また、生化学測定装置623により測定された測定データは、データ解析部604bにより解析され、システム制御部800に送信される。システム制御部800は、データ解析部604aおよび604bから取得した尿中有形成分解析結果と、生化学定量解析結果とに基づいて、診断支援情報を取得し、出力するように構成されている。このように、別個の尿中有形成分測定装置と生化学測定装置とから構成される尿試料分析システムのシステム制御部(ホストコンピュータ)に、本発明の腎疾患支援装置を適用する構成であってもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、尿中有形成分測定部により測定された測定データと生化学測定部により測定された測定データとを、単一のデータ解析部により取得されるように構成した例を示したが、本発明はこれに限らず、図9の変形例に示したように、尿中有形成分測定装置により測定された測定データと生化学測定装置により測定された測定データとが、それぞれ別々のコンピュータ(データ解析部)により取得されてもよい。この場合に、上記のように、それぞれのデータ解析部と接続されたホストコンピュータ(システム制御部)によって腎疾患(泌尿器系疾患)に関する診断支援情報が取得され、出力(表示)される構成であってもよい。また、一方のデータ解析部に本発明の腎疾患診断支援装置を適用し、一方のデータ解析部が他方のデータ解析部から測定データを取得して診断支援情報を出力(表示)する構成であってもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、データ解析部により、生化学測定部に対するユーザからの測定指示がない場合に、尿中有形成分解析結果の赤血球濃度に基づいて、生化学測定部による測定の要否を判断する構成の例を示したが、本発明はこれに限らず、図9の変形例に示したように、データ解析部以外のシステム制御部(ホストコンピュータ)により、生化学測定部(生化学測定装置)に対するユーザからの測定指示がない場合に、生化学測定部(生化学測定装置)による測定の要否を判断する構成であってもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、データ解析部により、尿中有形成分測定部および生化学測定部のそれぞれについて、測定指示を受け付ける構成の例を示したが、本発明はこれに限らず、測定指示の受け付けを行わず、常に尿中有形成分測定部および生化学測定部の両方で測定を行う構成であってもよい。この場合には、常に腎疾患(泌尿器系疾患)に関する診断支援情報を出力することが可能である。
【0098】
また、上記実施形態では、データ解析部4のCPU411が、本発明の定量値情報として、クレアチニン補正により取得されたマイクロ総蛋白質排泄量推定値(m−TP)、マイクロアルブミン排泄量推定値(m−ALB)およびマイクロコレステロール排泄量推定値(m−CHO)の大きさに基づいて診断支援情報の取得を行う構成の例を示したが、本発明はこれに限らず、データ解析部4のCPU411が、本発明の定量値情報として、マイクロ総蛋白質濃度、マイクロアルブミン濃度およびマイクロコレステロール濃度の大きさに基づいて判定を行う構成であってもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、データ解析部4のCPU411が、診断支援情報取得処理において、赤血球粒度分布情報に基づいて均一赤血球の判断を行う構成の例を示したが、本発明はこれに限らず、データ解析部4のCPU411が、尿試料中の赤血球の撮像画像に基づいて均一赤血球の判断を行う構成であってもよい。
【符号の説明】
【0100】
4 データ解析部(腎疾患診断支援装置)
44b 診断支援プログラム(コンピュータプログラム)
411 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿試料中の赤血球数を反映した数値情報および前記尿試料中の赤血球の形態を示す赤血球形態情報の少なくとも1つを取得する赤血球情報取得手段と、
前記尿試料中の蛋白成分および脂質成分の少なくとも1つの量に基づく定量値情報を取得する定量値情報取得手段と、
前記赤血球情報取得手段により取得された情報と、前記定量値情報取得手段により取得された定量値情報とに基づいて、少なくとも腎疾患に関する腎疾患診断支援情報を提供する診断支援情報提供手段とを備える、腎疾患診断支援装置。
【請求項2】
前記蛋白成分は、総蛋白質およびアルブミンの少なくとも一方を含み、
前記脂質成分は、コレステロールを含む、請求項1に記載の腎疾患診断支援装置。
【請求項3】
前記腎疾患に関する腎疾患診断支援情報は、腎疾患の疑いに関する腎疾患診断支援情報を含み、
前記診断支援情報提供手段は、前記赤血球情報取得手段により取得された情報と、前記定量値情報取得手段により取得された定量値情報とに基づいて、少なくとも前記腎疾患の疑いに関する腎疾患診断支援情報を提供するように構成されている、請求項2に記載の腎疾患診断支援装置。
【請求項4】
前記腎疾患の疑いに関する腎疾患診断支援情報は、腎疾患の疑いがあることを示す腎疾患診断支援情報を含み、
前記定量値情報取得手段は、前記尿試料中のアルブミンの量に基づくアルブミン定量値情報および前記尿試料中の総蛋白質の量に基づく総蛋白定量値情報の少なくとも一方を取得し、
前記診断支援情報提供手段は、前記アルブミン定量値情報、および、前記総蛋白定量値情報の少なくともいずれかに基づいて、少なくとも前記腎疾患の疑いがあることを示す腎疾患診断支援情報を取得する、請求項3に記載の腎疾患診断支援装置。
【請求項5】
前記診断支援情報提供手段は、前記アルブミン定量値情報が第1閾値以上の場合、および、前記総蛋白定量値情報が第2閾値以上の場合の少なくともいずれかの場合に、少なくとも前記腎疾患の疑いがあることを示す腎疾患診断支援情報を取得する、請求項4に記載の腎疾患診断支援装置。
【請求項6】
前記腎疾患の疑いがあることを示す腎疾患診断支援情報は、腎疾患への疑いの程度を示す情報および腎疾患の進行性に関する情報の少なくとも一方をさらに含み、
前記定量値情報取得手段は、前記尿試料中のコレステロールの量に基づくコレステロール定量値情報を取得し、
前記診断支援情報提供手段は、前記アルブミン定量値情報および前記総蛋白定量値情報の少なくとも一方と、前記コレステロール定量値情報とに基づいて、前記腎疾患への疑いの程度を示す情報および前記腎疾患の進行性に関する情報の少なくとも一方を含む前記腎疾患の疑いがあることを示す腎疾患診断支援情報を提供する、請求項4または5に記載の腎疾患診断支援装置。
【請求項7】
前記診断支援情報提供手段は、前記赤血球情報取得手段により取得された情報と、前記定量値情報取得手段により取得された定量値情報とに基づいて、腎疾患以外の泌尿器系疾患の疑いに関する泌尿器系疾患診断支援情報をさらに提供する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の腎疾患診断支援装置。
【請求項8】
前記泌尿器系疾患の疑いに関する泌尿器系疾患診断支援情報は、泌尿器系疾患の疑いがあることを示す泌尿器系疾患診断支援情報を含み、
前記診断支援情報提供手段は、前記赤血球情報取得手段により取得された情報に基づいて、前記泌尿器系疾患の疑いがあることを示す泌尿器系疾患診断支援情報を取得する、請求項7に記載の腎疾患診断支援装置。
【請求項9】
前記赤血球情報取得手段は、少なくとも前記赤血球形態情報を取得し、
前記診断支援情報提供手段は、前記赤血球形態情報に基づいて、前記腎疾患に関する腎疾患診断支援情報、および、前記泌尿器系疾患の疑いがあることを示す泌尿器系疾患診断支援情報のうちの少なくとも一方を提供する、請求項8に記載の腎疾患診断支援装置。
【請求項10】
前記診断支援情報提供手段は、前記赤血球形態情報に示された前記尿試料中の赤血球の形態が略均一形態を有するか否かに応じて、前記腎疾患に関する腎疾患診断支援情報、および、前記泌尿器系疾患の疑いがあることを示す泌尿器系疾患診断支援情報のうちの少なくとも一方を提供する、請求項9に記載の腎疾患診断支援装置。
【請求項11】
前記定量値情報取得手段は、前記尿試料中のクレアチニンの濃度を示すクレアチニン濃度値を取得し、前記尿試料中の前記蛋白成分および前記脂質成分の少なくとも一方の量に対して、前記クレアチニン濃度値を用いたクレアチニン補正を行うことによって、前記尿試料中の前記蛋白成分および前記脂質成分の少なくとも一方の量に基づく前記定量値情報を取得する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の腎疾患診断支援装置。
【請求項12】
尿試料を測定する尿試料測定装置に接続されたコンピュータを、
前記尿試料中の赤血球数を反映した数値情報および前記尿試料中の赤血球の形態を示す赤血球形態情報の少なくとも1つを取得する赤血球情報取得手段、
前記尿試料中の蛋白成分および脂質成分の少なくとも1つの量に基づく定量値情報を取得する定量値情報取得手段、
前記赤血球情報取得手段により取得された情報と、前記定量値情報取得手段により取得された定量値情報とに基づいて、少なくとも腎疾患に関する診断支援情報を提供する診断支援情報提供手段、として機能させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−237001(P2010−237001A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84657(P2009−84657)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】